(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049556
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】減圧器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/135 20060101AFI20240403BHJP
A61M 39/24 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61B17/135
A61M39/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155847
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】呂 筱薇
(72)【発明者】
【氏名】澤田 賢志
(72)【発明者】
【氏名】末原 達
【テーマコード(参考)】
4C066
4C160
【Fターム(参考)】
4C066JJ02
4C160DD33
4C160DD35
4C160MM22
(57)【要約】
【課題】拡張部材から流体を排出する作業を簡単に行うことができる減圧器具を提供する。
【解決手段】減圧器具100は、止血器具200のコネクタ部240に接続可能であって、コネクタ部に対する接続に伴ってコネクタ部の逆止弁241を開く開通部110と、開通部と流体連通しており、開通部が逆止弁を開いた状態において拡張部材230の内腔231から排出される流体を充填可能な充填部120と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肢体に巻き付けることが可能な帯体と、
前記帯体を前記肢体に巻き付けた状態で固定する固定手段と、
流体が注入可能な内腔を備え、前記流体の注入に伴って拡張して、前記肢体の穿刺部位を圧迫する拡張部材と、
前記拡張部材の前記内腔からの前記流体の排出を制御するための逆止弁を備えるコネクタ部と、を有する止血器具の前記拡張部材の前記内腔から前記流体を排出させるための減圧器具であって、
前記コネクタ部に接続可能であって、前記コネクタ部に対する接続に伴って前記逆止弁を開く開通部と、
前記開通部と流体連通しており、前記開通部が前記逆止弁を開いた状態において前記拡張部材の前記内腔から排出される前記流体を充填可能な充填部と、を有する減圧器具。
【請求項2】
前記充填部は、前記流体を個別に収容可能な複数の空間と、前記複数の空間の連通状態と非連通状態を切り替え可能な第1切り替え部と、を有する、請求項1に記載の減圧器具。
【請求項3】
前記第1切り替え部は、前記複数の空間の各々を密閉した状態で前記複数の空間の間を非連通状態に維持可能なシール部を有する、請求項2に記載の減圧器具。
【請求項4】
前記第1切り替え部は、前記複数の空間の各々に着脱可能に構成された複数のクランプ部材を有する、請求項2に記載の減圧器具。
【請求項5】
前記充填部は、前記開通部と流体連通する排出流路と、前記開通部側から見て、前記排出流路よりも前記流体の排出方向の下流側に配置された単一の空間と、前記排出流路に配置され、前記排出流路と前記単一の空間との間の連通状態と非連通状態とを切り替え可能な第2切り替え部と、を有する、請求項1に記載の減圧器具。
【請求項6】
前記単一の空間の内部と前記充填部の外部との間の連通状態と非連通状態とを切り替え可能な第3切り替え部をさらに有する、請求項5に記載の減圧器具。
【請求項7】
前記充填部は、前記開通部よりも前記流体の排出方向の下流側に配置された単一の空間と、前記単一の空間内に配置された可動部材と、を有し、
前記可動部材は、前記単一の空間の一部に陰圧状態に維持された陰圧領域を区画するとともに、前記単一の空間内に前記流体が流入した際、前記陰圧領域を狭めるように前記単一の空間内を移動可能に構成されている、請求項1に記載の減圧器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、腕の橈骨動脈等の血管を穿刺し、穿刺部位にイントロデューサーシースを導入し、イントロデューサーシースの内腔を介してカテーテル等を血管等の病変部に挿入して、経皮的に治療・検査などが行われている。このような方法を行った場合、イントロデューサーシースを抜去した後の穿刺部位を止血する必要がある。
【0003】
上記の止血を行うための医療器具として、腕の穿刺部位に巻き付けるための帯体と、この帯体を穿刺部位に巻き付けた状態で固定する固定部と、流体を注入することにより拡張して、穿刺部位を圧迫可能な拡張部材と、を備える止血器具が知られている。この止血器具は、拡張させた拡張部材から穿刺部位に対して圧迫力を付与することで止血を行うことができる。
【0004】
上記の止血器具を使用した止血方法において、長時間に亘る穿刺部位の圧迫による血管閉塞などの合併症を回避するために、止血を行っている最中に拡張部材が穿刺部位に対して付与する圧迫力を低下させることが求められる。
【0005】
これに関連して、例えば下記の特許文献1には、拡張部材に注入した流体の漏洩を防止する逆止弁付きのコネクタ部を備える止血器具が開示されている。医師や看護師(以下、「術者」とする)は、拡張部材を収縮させて圧迫力を低下させる際、コネクタ部にシリンジ等の注入器具を接続し、逆止弁を開く。術者は、逆止弁を開いた状態で注入器具の押し子等を操作することにより拡張部材から流体を排出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の止血器具では、拡張部材から流体を排出させる減圧操作を行う度にコネクタ部に注入器具を接続する必要があるうえに、所望量の流体の排出を実現するために注入器具の押し子の移動量を正確に調整するように細心の注意を払わなければならない。したがって、特許文献1の止血器具を使用した止血方法では、術者の負担が大きいばかりではなく、医療現場での臨床サービスの効率性の低下も招く。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、拡張部材から流体を排出する作業を簡単に行うことができる減圧器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0010】
(1)
肢体に巻き付けることが可能な帯体と、
前記帯体を前記肢体に巻き付けた状態で固定する固定手段と、
流体が注入可能な内腔を備え、前記流体の注入に伴って拡張して、前記肢体の穿刺部位を圧迫する拡張部材と、
前記拡張部材の前記内腔からの前記流体の排出を制御するための逆止弁を備えるコネクタ部と、を有する止血器具の前記拡張部材の前記内腔から前記流体を排出させるための減圧器具であって、
前記コネクタ部に接続可能であって、前記コネクタ部に対する接続に伴って前記逆止弁を開く開通部と、
前記開通部と流体連通しており、前記開通部が前記逆止弁を開いた状態において前記拡張部材の前記内腔から排出される前記流体を充填可能な充填部と、を有する減圧器具。
【0011】
(2)
前記充填部は、前記流体を個別に収容可能な複数の空間と、前記複数の空間の連通状態と非連通状態を切り替え可能な第1切り替え部と、を有する、上記(1)の減圧器具。
【0012】
(3)
前記第1切り替え部は、前記複数の空間の各々を密閉した状態で前記複数の空間の間を非連通状態に維持可能なシール部を有する、上記(2)の減圧器具。
【0013】
(4)
前記第1切り替え部は、前記複数の空間の各々に着脱可能に構成された複数のクランプ部材を有する、上記(2)又は上記(3)の減圧器具。
【0014】
(5)
前記充填部は、前記開通部と流体連通する排出流路と、前記開通部側から見て、前記排出流路よりも前記流体の排出方向の下流側に配置された単一の空間と、前記排出流路に配置され、前記排出流路と前記単一の空間との間の連通状態と非連通状態とを切り替え可能な第2切り替え部と、を有する、上記(1)~(4)のいずれか1つの減圧器具。
【0015】
(6)
前記単一の空間の内部と前記充填部の外部との間の連通状態と非連通状態とを切り替え可能な第3切り替え部をさらに有する、上記(5)の減圧器具。
【0016】
(7)
前記充填部は、前記開通部よりも前記流体の排出方向の下流側に配置された単一の空間と、前記単一の空間内に配置された可動部材と、を有し、前記可動部材は、前記単一の空間の一部に陰圧状態に維持された陰圧領域を区画するとともに、前記単一の空間内に前記流体が流入した際、前記陰圧領域を狭めるように前記単一の空間内を移動可能に構成されている、上記(1)~(6)のいずれか1つの減圧器具。
【発明の効果】
【0017】
上記のように構成した減圧器具によれば、止血器具のコネクタ部に開通部を接続することによりコネクタ部が備える逆止弁を開くことができる。術者は、開通部によって逆止弁を開くことにより、コネクタ部に開通部を接続した状態を維持しつつ、拡張部材の内腔に注入された流体を所望量だけ充填部へ流入させることができる。そのため、術者は、拡張部材から流体を排出する操作を行う度にシリンジ等の注入器具をコネクタ部に接続する作業を行う手間を省くことができる。また、術者は、拡張部材から所望量の流体を排出させるためにシリンジ等の注入器具を正確に操作する必要が無くなるため、減圧操作に要する作業負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る減圧器具の使用状態を簡略化して示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る減圧器具の平面図である。
【
図3】
図2に示す矢印3A-3Aに沿う減圧器具の断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る減圧器具の断面図であって、拡張部材から流体を排出させる際の様子を示す断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る減圧器具の断面図であって、拡張部材から流体を排出させる際の様子を示す断面図である。
【
図6】第1実施形態の変形例に係る減圧器具の断面図である。
【
図7】第1実施形態の変形例に係る減圧器具の断面図であって、拡張部材から流体を排出させる際の様子を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る減圧器具の断面図である。
【
図9】第2実施形態に係る減圧器具の断面図であって、拡張部材から流体を排出させる際の様子を示す図である。
【
図10】第2実施形態に係る減圧器具の断面図であって、充填部から流体を排出させる際の様子を示す図である。
【
図11】第3実施形態に係る減圧器具の斜視図である。
【
図12】第3実施形態に係る減圧器具の斜視図であって、拡張部材から流体を排出させる際の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、
図1~
図5を参照して、本発明の第1実施形態に係る減圧器具100を説明する。
図1は、減圧器具100の使用例を示す斜視図である。
図2~
図5は、減圧器具100の各部の構造を説明するための平面図及び断面図である。なお、各図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0020】
図1に示すように、減圧器具100は、所定の穿刺部位pを止血するための止血器具200が備える拡張部材230からの流体の排出を操作するために使用される器具である。
【0021】
<止血器具200>
止血器具200は、治療・検査などを行うカテーテル等を血管内に挿入する目的で患者の肢体A(例えば、手首や前腕部等)に形成された穿刺部位pに留置していたイントロデューサーシースを抜去した後、穿刺部位pを止血するために使用される医療器具である。
【0022】
図1を参照して止血器具200の一例を説明する。なお、減圧器具100の適用対象となる止血器具200の具体的な構成は、本明細書内で説明されたものに限定されることはない。
【0023】
止血器具200は、肢体Aに巻き付けることが可能な帯体210と、帯体210を肢体Aに巻き付けた状態で固定する固定手段220と、流体が注入可能な内腔231を備え、流体の注入に伴って拡張して、肢体Aの穿刺部位pを圧迫する拡張部材230と、拡張部材230の内腔231からの流体の排出を制御するための逆止弁241を備えるコネクタ部240と、を有する。
【0024】
帯体210は、例えば、肢体Aに巻き付けることが可能な可撓性を備える樹脂材料等で構成することができる。
【0025】
固定手段220は、例えば、帯体210の所定の部位同士を接続・分離可能な面ファスナーで構成することができる。
【0026】
拡張部材230は、例えば、可撓性を備える樹脂材料等で構成されたバルーンで構成することができる。拡張部材230は、内腔231に注入される流体の体積に応じて拡張及び収縮可能な構成を有する。
【0027】
コネクタ部240は、例えば、内部に逆止弁241が配置された硬質な樹脂製のコネクタで構成することができる。逆止弁241は、例えば、外力が付与されていない状態では閉じた状態を維持し、ノズル等の部材が挿通されることで開くスリットを備える公知の逆止弁で構成することができる。なお、コネクタ部240には、拡張部材230の内腔231に流体を注入させるための流体注入具(シリンジ等)を接続することができる。術者は、流体注入具のノズル(先筒部)をコネクタ部240に挿入することで逆止弁241を開くことができる。
【0028】
コネクタ部240の内部は、所定のチューブ250を介して拡張部材230の内腔231と連通している。
【0029】
<減圧器具100>
図1に示すように、減圧器具100は、拡張部材230の内腔231から流体を排出させるために使用される。
【0030】
図1、
図2に示すように、減圧器具100は、コネクタ部240に接続可能であって、コネクタ部240に対する接続に伴って逆止弁241を開く開通部110と、開通部110と流体連通しており、開通部110が逆止弁241を開いた状態において拡張部材230の内腔231から排出される流体を充填可能な充填部120と、を有する。
【0031】
開通部110は、内部に流路110aが形成されたノズルで構成することができる。術者は、
図2に示すように開通部110をコネクタ部240に挿入することにより、開通部110の先端がコネクタ部240の内部に配置された逆止弁241に接触し、逆止弁241を開くことができる。また、術者は、開通部110をコネクタ部240に挿入した状態を維持することにより、逆止弁241を開いた状態に維持することができる。術者は、コネクタ部240から開通部110を抜き出すことにより逆止弁241を閉じることができる。
【0032】
充填部120は、開通部110の流路110aと流体連通している。したがって、開通部110をコネクタ部240に挿入して逆止弁241を開くと、拡張部材230の内腔231に注入された流体が流路110aを経由して充填部120側へ流れ込む。
【0033】
図2、
図3に示すように、充填部120は、流体を個別に収容可能な複数の空間131、132、133(以下、「第1空間131」、「第2空間132」、「第3空間133」とも記載する)と、複数の空間131、132、133の連通状態と非連通状態を切り替え可能な第1切り替え部140と、を有する。
【0034】
本実施形態では、充填部120は、複数の空間131、132、133を備える可撓性の樹脂材料で構成している。充填部120は、開通部110側から見て、略同一の容積を備える袋状の3つの空間131、132、133を備える。なお、各空間131、132、133の容積の大きさ、空間の個数等について制限はなく、任意に変更することが可能であるが、空間131、132、133の各容積は、1ml~5ml、空間131、132、133の容積の合計は、5ml~15mlが好ましい。
【0035】
第1切り替え部140は、複数の空間131、132、133の各々を密閉した状態で複数の空間131、132、133の間を非連通状態に維持可能なシール部141、142(以下、「第1シール部141」、「第2シール部142」とも記載する)を有する。
【0036】
各シール部141、142は、例えば、充填部120を構成する樹脂材料の一部を加熱して形成される熱シール部や充填部120の一部を固定する接着剤等で構成することができる。ただし、シール部141、142の具体的な構造について特に制限はない。
【0037】
図2に示すように、術者は、減圧器具100の使用に際して、第1空間131と第2空間132を非連通状態に維持する第1シール部141と、第2空間132と第3空間133を非連通状態に維持する第2シール部142と、が形成された状態で減圧器具100を準備する。
【0038】
術者は、拡張部材230の減圧を開始するにあたり、
図3に示すように、コネクタ部240に開通部110を挿入する。術者がコネクタ部240に開通部110を挿入すると、開通部110の先端部分が逆止弁241に接触し、逆止弁241が開いて、
図4に示すように、拡張部材230の内腔231に注入された流体が第1空間131へ流れ込む。第1空間131は、当該第1空間131に流体が流れ込むと、流れ込んだ流体の体積に応じて拡張する。拡張部材230は、第1空間131に流れ込んだ流体の体積に応じて収縮する。それにより、拡張部材230が穿刺部位pに対して付与する圧迫力が低下する。
【0039】
図5に示すように、術者は、止血の進行に応じて第1シール部141を手指等で破断して第1空間131と第2空間132を連通させる。術者は、第1空間131と第2空間132を連通させることにより、拡張部材230の内腔231に注入された流体を充填部120側へ移動させることができる。この際、充填部120側に移動する流体の体積は、第1空間131と第2空間132の容積に応じて調整される。拡張部材230は、第1空間131、第2空間132に流れ込んだ流体の体積に応じてさらに収縮する。それにより、拡張部材230が穿刺部位pに対して付与する圧迫力がさらに低下する。術者は、拡張部材230をさらに減圧させる場合、第2シール部142を破断させて、第1空間131、第2空間132、第3空間133の各々を連通させる。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る減圧器具100によれば、止血器具200のコネクタ部240に開通部110を接続することによりコネクタ部240が備える逆止弁241を開くことができる。術者は、開通部110によって逆止弁241を開くことにより、コネクタ部240に開通部110を接続した状態を維持しつつ、拡張部材230の内腔231に注入された流体を所望量だけ充填部120へ流入させることができる。そのため、術者は、拡張部材230から流体を排出する操作を行う度にシリンジ等の注入器具をコネクタ部240に接続する作業を行う手間を省くことができる。また、術者は、拡張部材230から所望量の流体を排出させるためにシリンジ等の注入器具を正確に操作する必要が無くなるため、減圧操作に要する作業負担を大幅に軽減することができる。
【0041】
また、減圧器具100は、第1切り替え部140によって各空間131、132、133の連通-非連通状態を切り替えることによって、拡張部材230の減圧量を多段階に調整することができる。また、減圧器具100は、各空間131、132、133の容積に応じた所望量の流体を拡張部材230の内腔231から正確に、かつ、2段階目以降は、減圧器具100のコネクタ部240への取り付け作業を行うことなく簡単に排出させることができる。
【0042】
また、減圧器具100は、各シール部141、142を破断させる簡単な作業によって各空間131、132、133の連通-非連通状態を切り替えることができる。
【0043】
なお、各シール部141、142は、それぞれを破断させるための強度がシール部141、142ごとに異なっていてもよい。また、各シール部141、142は、充填部120に備えられる空間の個数に応じて設置数を任意に増減させることができる。また、減圧器具100は、術者がコネクタ部240に開通部110を挿入するのと同時に流体が充填部120側へ直ちに流れ込むことを防止するために、第1空間131よりも流体の排出方向の上流側(開通部110側)にシール部がさらに形成されていてもよい。
【0044】
本実施形態で使用される流体は、空気のような気体でも、水のような液体でもかまわないが、取り扱い易く、容易に入手できる空気が好ましい。
【0045】
次に、本発明に係る減圧器具の変形例及び他の実施形態を説明する。以下の説明では前述した実施形態の説明において既に説明した部材等についての説明は適宜省略する。また、以下の説明において特に詳細な説明が無い内容は、前述した実施形態と同一のものとすることができる。
【0046】
(第1実施形態の変形例)
図6及び
図7には、第1実施形態の変形例に係る減圧器具100Aを示す。
図6及び
図7は、前述した実施形態の
図3に示す断面図に対応した図である。
【0047】
変形例に係る減圧器具100Aの第1切り替え部140は、複数の空間131、132、133の各々に着脱可能に構成された複数のクランプ部材143、144、145を有する。
【0048】
図6、
図7に示すように、減圧器具100Aの充填部120は、各空間131、132、133を連通する流路150Aを備える。
【0049】
術者は、減圧を開始するにあたり、
図7に示すように、コネクタ部240に開通部110を挿入し、逆止弁241を開く。術者は、逆止弁241を開いた状態でクランプ部材143を取り外すことにより、流路150Aと第1空間131とを連通させることができる。術者は、流路150Aと第1空間131を連通させることにより、拡張部材230の内腔231に注入された流体を第1空間131へ流入させることができる。この操作により、術者は、拡張部材230を減圧することができる。術者は、拡張部材230をさらに減圧させる場合、他のクランプ部材144、145を取り外して、流路150Aと他の空間132、133を連通させる。
【0050】
変形例に係る減圧器具100Aは、各空間131、132、133の各々に着脱可能に構成された複数のクランプ部材143、144、145で第1切り替え部140を構成している。そのため、クランプ部材143、144、145を一度取り外した後、クランプ部材143、144、145を再度取り付けることにより、充填部120側の流体を保持可能な容積を可逆的に増減させることができる。そのため、術者は、減圧器具100Aを再利用することができる。また、減圧器具100Aは前述した実施形態と同様に複数の空間131、132、133を備える。そのため、術者は、流路150Aと各空間131、132、133との連通状態を選択的に切り替えることによって拡張部材230の減圧量を段階的に調整することができる。
【0051】
なお、変形例1に係る減圧器具100Aにおいて、流路150Aにクランプ部材を追加で配置してもよい。このように構成することにより、各空間131、132、133の非連通状態をより確実に維持することができる。
【0052】
また、変形例1に係る減圧器具100Aに使用されるクランプ部材は、充填部120において空間を形成する部位を挟み込むことで流体の移動を阻害しうるように構成されている限り、具体的な構成は限定されない。例えば、クリップや磁石等で構成することも可能である。
【0053】
(第2実施形態)
図8~
図10には、第2実施形態に係る減圧器具100Bを示す。
図8~
図10は、前述した実施形態の
図3に示す断面図に対応した図である。
【0054】
図8~
図10に示すように、第2実施形態に係る減圧器具100Bが備える充填部120Bは、開通部110と流体連通する排出流路160と、開通部110側から見て、排出流路160よりも流体の排出方向の下流側に配置された単一の空間131Bと、排出流路160に配置され、排出流路160と単一の空間131Bとの間の連通状態と非連通状態とを切り替え可能な第2切り替え部140Bと、を有する。
【0055】
減圧器具100Bは、単一の空間131Bの内部と充填部120の外部との間の連通状態と非連通状態とを切り替え可能な第3切り替え部150をさらに有する。第3切り替え部150は、単一の空間131Bから流体の排出方向の下流側に延びる排出流路170に配置されている。排出流路170の遠位端は外部に開放されている。
【0056】
第2切り替え部140B及び第3切り替え部150は、例えば、手指等の操作で開放と閉鎖を容易に切り替えることができるスイッチ型の弁機構で構成することができる。
【0057】
術者は、拡張部材230の減圧を開始するにあたり、
図9に示すように、コネクタ部240に開通部110を挿入し、逆止弁241を開く。術者は、逆止弁241を開いた状態で第2切り替え部140Bを開放することにより、拡張部材230の内腔231に注入された流体を単一の空間131B内に流入させることができる。これにより、術者は、拡張部材230を減圧させることができる。
【0058】
また、術者は、
図10に示すように、第2切り替え部140Bを閉鎖させた状態で第3切り替え部150を開放させることにより、単一の空間131B内に流入させた流体を充填部120の外部(単一の空間131Bの下流側の外部)へ放出させることができる。なお、術者は、単一の空間131B内に流入させた流体を外部に放出させた後、第3切り替え部150を閉鎖した状態に切り替え、さらに第2切り替え部140Bを開放した状態に切り替えることにより、拡張部材230を再度減圧させることができる。
【0059】
また、術者は、単一の空間131B内に流体を流入させた状態で第3切り替え部150を閉鎖させ、かつ第2切り替え部140Bを開放させることにより、単一の空間131B内に一度流入させた流体を拡張部材230の内腔231に戻すことができる。それにより、術者は、拡張部材230が穿刺部位pに付与する圧迫力を減圧前の大きさに戻すことができる。
【0060】
なお、単一の空間131B内に流入させた流体を外部に放出するための機構は、排出流路170を利用した形態に限定されない。例えば、減圧器具100Bは、充填部120Bにおいて単一の空間131Bを形成する部分に逆止弁機構を設け、手指等で把持する操作で当該逆止弁機構を開放することによって流体を外部に放出するように構成されていてもよい。
【0061】
(第3実施形態)
図11及び
図12には、第3実施形態に係る減圧器具100Cの簡略的な斜視図を示す。
【0062】
第3実施形態に係る減圧器具100Cが備える充填部120Cは、開通部110よりも流体の排出方向の下流側に配置された単一の空間131Cと、単一の空間131C内に配置された可動部材180と、を有する。
【0063】
図11に示すように、可動部材180は、単一の空間131Cの一部に陰圧状態に維持された陰圧領域135aを区画するように単一の空間131C内に配置されている。可動部材180は、例えば、樹脂製の弾性部材等で構成することができる。
【0064】
図12に示すように、可動部材180は、開通部110がコネクタ部240に接続されて逆止弁241が開き、単一の空間131C内に流体が流入すると、拡張部材230の内腔231の圧力(内圧)に応じて流体の排出方向の下流側(開通部110が位置する側と反対側)へ移動する。可動部材180が上記のように移動すると、単一の空間131C内に区画された陰圧領域135aの容積が減少する。減圧器具100Cは、可動部材180の移動量に対応する陰圧領域135aの容積の減少に応じた分だけ拡張部材230を減圧させることができる。
【0065】
なお、可動部材180を単一の空間131C内で移動させるために必要な圧力(流体の流入圧)は、減圧対象となる拡張部材230の容積等に応じて任意に設定することができる。
【0066】
以上、複数の実施形態及び変形例を通じて本発明に係る減圧器具を説明したが、本発明は明細書において説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0067】
例えば、明細書内の説明では、止血器具200は手首等の肢体に装着して使用する形態のものを例示したが、止血器具は手、腕、脚(本明細書では、これらを総称して「肢体」という)のいかなる部分へ装着されるものであってもよい。
【0068】
また、本発明の減圧機構は、開通部及び充填部を少なくとも備える限りにおいて、各実施形態及び各変形例で説明した構成を任意に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
100 減圧器具
100A 減圧器具
100B 減圧器具
100C 減圧器具
110 開通部
120 充填部
120B 充填部
120C 充填部
131 第1空間(空間)
131B 単一の空間
131C 単一の空間
132 第2空間(空間)
133 第3空間(空間)
135a 陰圧領域
140 第1切り替え部
140B 第2切り替え部
141 第1シール部
142 第2シール部
143 クランプ部材
144 クランプ部材
145 クランプ部材
150 第3切り替え部
160 排出流路
170 排出流路
180 可動部材
200 止血器具
230 拡張部材
231 内腔
240 コネクタ部
241 逆止弁
A 肢体
p 穿刺部位