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  • 特開-構造物の構築方法および構造物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004957
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】構造物の構築方法および構造物
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20240110BHJP
   E04C 5/12 20060101ALI20240110BHJP
   E04H 7/20 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E04G21/12 104C
E04C5/12
E04H7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104875
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】岩本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松浦 正典
(72)【発明者】
【氏名】吉原 知佳
(72)【発明者】
【氏名】及川 雅司
(72)【発明者】
【氏名】笠原 玲
(72)【発明者】
【氏名】岸本 祐香
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164DA01
2E164DA03
2E164DA12
2E164DA26
2E164DA27
(57)【要約】
【課題】施工が容易な構造物の構築方法等を提供する。
【解決手段】PC鋼撚り線31の束をタンクの壁体2に通し、その下端部を、タンクの基礎版1に設けられた、下方に向かって拡径する中空の拡径部111を有する定着部材11の内部に挿入する。その後、定着部材11に硬化材4aを充填し、複数のPC鋼撚り線31からなるPC鋼材3の下端部を定着部材11に定着し、PC鋼材3を緊張してその上端部を壁体2に固定する。PC鋼材3の下端部ではPC鋼撚り線31に定着体32が設けられ、定着体32の高さがPC鋼撚り線31によって異なる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊張材の束を構造物の上部部材に通し、その下端部を、構造物の下部部材に設けられた、下方に向かって拡径する中空の拡径部を有する定着部材の内部に挿入する工程(a)と、
前記定着部材に硬化材を充填し、複数の前記緊張材からなるPC鋼材の下端部を前記定着部材に定着し、前記PC鋼材を緊張してその上端部を前記上部部材に固定する工程(b)と、
を含み、
前記PC鋼材の下端部では前記緊張材に定着体が設けられ、前記定着体の高さが前記緊張材によって異なることを特徴とする構造物の構築方法。
【請求項2】
前記上部部材がタンクの壁体であり、前記下部部材がタンクの基礎版であることを特徴とする請求項1記載の構造物の構築方法。
【請求項3】
前記工程(a)において、前記PC鋼材を構成する全ての前記緊張材の束を前記構造物に通し、その下端部を前記定着部材の内部に挿入することを特徴とする請求項1または請求項2記載の構造物の構築方法。
【請求項4】
複数の緊張材からなるPC鋼材が構造物の上部部材に通され、
前記PC鋼材の下端部が、構造物の下部部材に設けられた、下方に向かって拡径する中空の拡径部を有する定着部材の内部に挿入され、
前記定着部材に硬化材が充填され、前記PC鋼材は、緊張した状態でその上端部が前記上部部材に固定され、
前記PC鋼材の下端部では前記緊張材に定着体が設けられ、前記定着体の高さが前記緊張材によって異なることを特徴とする構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の構築方法および構造物等に関する。
【背景技術】
【0002】
タンクの壁体に縦方向のプレストレスを導入する手法として、壁体内のシースに通されたマルチストランドの下端部を、タンクの基礎版に設けた定着部材に定着したうえで、マルチストランドを緊張してその上端部を壁体に固定することが知られている。
【0003】
マルチストランドは複数本のPC鋼撚り線の束である。特許文献1には上記した定着部材の例が開示されており、拡径部を有するフラスコ状の定着部材の内部に、下端に定着体を有するPC鋼撚り線を1本ずつ挿入した後、定着部材内に硬化材を充填してマルチストランドの下端部の定着を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3215381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
定着体はPC鋼撚り線に対して拡径しており、PC鋼撚り線を束にしたマルチストランドの下端の径は、各PC鋼撚り線の定着体によって大きくなる。そのため、仮に、マルチストランドを構成する複数のPC鋼撚り線を一括して定着部材に挿入しようとすれば、大きな開口径を有する定着部材や太径のシース等が必要となり、必要な硬化材の量も多くなる。
【0006】
特許文献1においてPC鋼撚り線を定着部材に1本ずつ挿入するのは、主に上記の理由による。しかしながら、PC鋼撚り線を定着部材内に1本ずつ挿入するのは手間が掛かり、施工効率が低下する。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、施工が容易な構造物の構築方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための第1の発明は、緊張材の束を構造物の上部部材に通し、その下端部を、構造物の下部部材に設けられた、下方に向かって拡径する中空の拡径部を有する定着部材の内部に挿入する工程(a)と、前記定着部材に硬化材を充填し、複数の前記緊張材からなるPC鋼材の下端部を前記定着部材に定着し、前記PC鋼材を緊張してその上端部を前記上部部材に固定する工程(b)と、を含み、前記PC鋼材の下端部では前記緊張材に定着体が設けられ、前記定着体の高さが前記緊張材によって異なることを特徴とする構造物の構築方法である。
【0009】
第1の発明では、複数本の緊張材の束を定着部材に挿入することで、緊張材を1本ずつ挿入する場合と比較して施工効率が向上する。またPC鋼材の下端部では、各緊張材に異なる高さで定着体が設けられているため、各緊張材の下端に同一の高さで定着体が設けられた従来のマルチストランドと比較して緊張材の束としての径が小さくなり、定着部材の開口径やシースの径等を小さくしても挿入時の障害とならず、硬化材の量も減らすことができて施工が容易となる。さらに、定着体同士の相対位置を固定した状態で定着部材内に定着体を配置できるので、品質管理も容易である。
【0010】
例えば、前記上部部材はタンクの壁体であり、前記下部部材はタンクの基礎版である。
本発明の手法を用いれば、プレストレスが壁体に導入されたタンクを容易に構築することができる。
【0011】
前記工程(a)において、前記PC鋼材を構成する全ての前記緊張材の束を前記構造物に通し、その下端部を前記定着部材の内部に挿入することが望ましい。
このように、全ての緊張材を一括挿入することで、施工が短時間で済む。また、緊張材を1本ずつ挿入した場合には、後に挿入する緊張材が、先に挿入した緊張材に絡まり挿入不能になるリスクがあるが、そのようなリスクを避けることができる。
【0012】
第2の発明は、複数の緊張材からなるPC鋼材が構造物の上部部材に通され、前記PC鋼材の下端部が、構造物の下部部材に設けられた、下方に向かって拡径する中空の拡径部を有する定着部材の内部に挿入され、前記定着部材に硬化材が充填され、前記PC鋼材は、緊張した状態でその上端部が前記上部部材に固定され、前記PC鋼材の下端部では前記緊張材に定着体が設けられ、前記定着体の高さが前記緊張材によって異なることを特徴とする構造物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、施工が容易な構造物の構築方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】タンク10を示す図。
図2】タンク10の構築方法について説明する図。
図3】PC鋼材3の断面を示す図。
図4】各PC鋼撚り線31に同じ高さで定着体32が設けられた場合の断面を示す図。
図5】定着部材11aを示す図。
図6】突起116を示す図。
図7】板バネ34を示す図。
図8】PC鋼材3を構成するPC鋼撚り線31とその定着体32を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
(1.タンク10)
図1(a)は、本発明の実施形態に係る構築方法で構築される構造物であるタンク10を示す図である。
【0017】
タンク10では、下部部材である円盤状の基礎版1の上に、上部部材である円筒状の壁体2が設けられ、壁体2の上端部に鋼製屋根5が設けられる。基礎版1と壁体2はコンクリートによって構築される。
【0018】
壁体2内には縦方向のPC鋼材3が通され、これにより壁体2に縦方向のプレストレスが導入される。PC鋼材3は、緊張材である複数本のPC鋼撚り線を束にしたマルチストランドであり、壁体2の周方向に間隔を空けて複数本設けられる。特に図示しないが、壁体2内には周方向のPC鋼材も配置されており、これにより壁体2には周方向のプレストレスも導入される。
【0019】
図1(b)は壁体2の厚さ方向の鉛直断面の概略を示す図である。PC鋼材3は、壁体2の内部に設けたシース21に通され、その下端部が、基礎版1の内部に設けた定着部材11に挿入される。定着部材11およびシース21の内部には、モルタル等の硬化材4a、4b(4)が充填される。PC鋼材3は、緊張された状態で、その上端部が固定部33によって壁体2の上に固定される。
【0020】
(2.タンク10の構築方法)
タンク10を構築する際は、まず図2(a)に示すように基礎版1を構築し、その後、基礎版1の上に壁体2を構築する。
【0021】
基礎版1は定着部材11を埋設した状態で構築され、壁体2はシース21を埋設した状態で構築される。定着部材11の上端はシース21の下端と連通している。
【0022】
本実施形態では、定着部材11として既知のリブキャストアンカが用いられる。リブキャストアンカは、下方に向かってフラスコ状に拡径する中空の拡径部111と、拡径部111の下端から連続するように設けられるキャップ114とを有する。キャップ114は円筒状の中空部材であり、その底部が閉じられている。拡径部111の外周には、当該外周から外方に突出するリング状のリブ115が形成される。
【0023】
定着部材11は、基礎版1の上面から所定のかぶり厚さDを設けて埋設される。これにより、定着部材11を基礎版1内に強固に定着させ、図1(b)の壁体2に曲げや引張が生じた際に、定着部材11の引き抜きを防止することができる。
【0024】
なお、基礎版1内には、定着部材11内に硬化材4aを注入するための注入孔12と、定着部材11内から硬化材4aを排出するためのオーバーフロー管13も予め設けられる。注入孔12は、基礎版1の外面とキャップ114の下端部とを連通させ、オーバーフロー管13は、基礎版1の外面と拡径部111の上端付近とを連通させる。注入孔12やオーバーフロー管13は、ホース等により形成される。
【0025】
図2(a)に示すように基礎版1と壁体2を構築した後、図2(b)に示すように、PC鋼材3をシース21に通し、その下端部を定着部材11に挿入する。
【0026】
PC鋼材3の下端部では、各PC鋼撚り線31に定着体32が設けられる。定着体32はPC鋼撚り線31に対して拡径した部分であり、例えば圧着グリップ等が用いられる。
【0027】
本実施形態では、これらのPC鋼撚り線31の定着体32の高さがPC鋼撚り線31によって異なり、定着体32はPC鋼材3の下端部において異なる高さに分散して配置される。
【0028】
本実施形態では、PC鋼材3を構成する全てのPC鋼撚り線31が結束バンド(不図示)等で結束され、束となった状態で壁体2の上からシース21内に通され、その下端部が定着部材11内に挿入される。
【0029】
この後、図2(c)に示すように、定着部材11にモルタル等の硬化材4aを充填し、硬化材4aの硬化によりPC鋼材3の下端部が定着部材11に定着される。硬化材4aは注入孔12から定着部材11内に注入され、オーバーフロー管13から硬化材4aが排出されたことを確認する。これにより、硬化材4aが定着部材11の上端付近まで確実に充填される。
【0030】
こうしてPC鋼材3の下端部の定着を行った後、PC鋼材3を緊張してその上端部を固定部33(図1(b)参照)により壁体2の上に固定する。そして、図2(d)に示すように、シース21内に硬化材4bを充填する。図2(a)~(d)の符号22は、シース21内に硬化材4bを注入するための注入孔であり、ホース等により形成される。図2(a)~(d)の例では注入孔22を基礎版1に設けているが、壁体2に設けても良い。
【0031】
この後、鋼製屋根5などの必要な部材の設置を行うことで、図1(a)に示すタンク10が構築される。
【0032】
(3.PC鋼材3の径)
図3(a)~(d)は、それぞれ、図2(b)の高さH1~H4におけるPC鋼材3の断面を示す図である。本実施形態では、PC鋼材3が19本のPC鋼撚り線31の束であり(図3(a)参照)、このうち6本のPC鋼撚り線31の定着体32は上段に配置され(図3(b)参照)、7本のPC鋼撚り線31の定着体32は中段に配置され(図3(c)参照)、残りの6本のPC鋼撚り線31の定着体32は下段に配置される(図3(d)参照)。
【0033】
このように、定着体32を高さ方向に分散して配置することで、PC鋼材3の径が大きくなるのを防止できる。すなわち、本実施形態のPC鋼材3の各高さH1~H4における外接円の半径R1~R4は、いずれも、図4に示すように、各PC鋼撚り線31の定着体32の高さを同じとした場合の外接円の半径Rより小さくなる。
【0034】
結果、本実施形態のPC鋼材3は定着部材11への挿入が容易となり、定着部材11の上端の開口径を小さくしても挿入時の障害とならない。例えば、定着部材11の上端の開口は、図3(a)~(d)に示すPC鋼材3の各高さH1~H4における外接円を包含する大きさであるが、これは、図4のPC鋼撚り線31の外接円よりも小さくできる。またシース21も細径化でき、必要な硬化材4a、4b(4)の量も減らすことができる。なお、図1図3では図示を省略しているが、PC鋼材3の下端部では、各PC鋼撚り線31が、複数の孔を有するプレートのそれぞれの孔に通される場合もあり、これによりPC鋼撚り線31同士の間隔が固定され、PC鋼材3の形状が保持される。
【0035】
以上説明したように、本実施形態では、複数本のPC鋼撚り線31の束を定着部材11に挿入することで、PC鋼撚り線31を1本ずつ挿入する場合と比較して施工効率が向上する。またPC鋼材3の下端部では、各PC鋼撚り線31に異なる高さで定着体32が設けられているため、各PC鋼撚り線31の下端に同一の高さで定着体32が設けられた従来のマルチストランドと比較してPC鋼撚り線31の束としての径が小さくなり、定着部材11の開口径やシース21の径を小さくしても挿入時の障害とならず、硬化材4a、4b(4)の量も減らすことができて施工が容易になる。さらに、定着体32同士の相対位置を固定した状態で定着部材11内に定着体32を配置できるので、品質管理も容易である。
【0036】
しかしながら、本発明は上記の実施形態に限らない。例えば、基礎版1に埋設される定着部材11は、下方に向かって拡径する中空の拡径部111を有するものであればよく、前記した形状に限らない。例えば図5の定着部材11aに示すように、キャップ114を省略し、拡径部111の底部を閉じた形状としてもよい。注入孔12は、拡径部111の下端部と基礎版1の外面とを連通するように設けられる。
【0037】
また図6(a)に示すように、定着部材11の底面に錐状の突起116を設け、図6(b)に示すように、PC鋼撚り線31の束を定着部材11へ挿入した時に、当該束の下端が突起116により広がって前記の結束バンドが開放され、個々のPC鋼撚り線31がばらけるようにしてもよい。これにより、PC鋼撚り線31の定着効果が高まる。突起116の形状はPC鋼撚り線31の束を広げることができるものであればよく、特に限定されない。例えば図6(c)に示すように、底面を円形とした円錐状の突起116や、四方に突出した星形の底面を有する錘状の突起116を用いてもよい。
【0038】
またPC鋼撚り線31の束の内部に、図7(a)に例示する板バネ34を仕込んだ状態で、当該束を定着部材11に挿入しても良い。板バネ34は、弾性体である帯状の鋼板341を円形に丸め、その状態で水溶性ビニロンなど水溶性の結束材342を用いて結束したものである。図3(d)に対応する図7(b)の断面で示すように、板バネ34を仕込んだPC鋼撚り線31の束を定着部材11に挿入した後、定着部材11に水を注入するか、あるいは硬化材4aとしてグラウトを定着部材11に注入することで、結束材342が溶解して鋼板341が広がり、前記と同様、個々のPC鋼撚り線31がばらけて定着効果が向上する。板バネ34を仕込む高さは、例えば図2(b)のH4で示す高さとするが、PC鋼材3の下端部であれば特に限定されない。
【0039】
また本実施形態では、PC鋼材3において定着体32を上下3段に配置したが、定着体32が配置される段数および各段の定着体32の位置や数はこれに限らず、PC鋼撚り線31の本数等に応じて適宜定めることができる。
【0040】
また本実施形態では、図8(a)に示すように、同一長さのPC鋼撚り線31によってPC鋼材3を構成し、各PC鋼撚り線31の上端および下端の高さを揃えたうえで、各PC鋼撚り線31に定着体32を取り付ける高さを変えているが、図8(b)に示すように、PC鋼材3を構成するPC鋼撚り線31の下端の高さを異ならせたうえで、各PC鋼撚り線31の下端に定着体32を設けてもよい。
【0041】
また本実施形態では、壁体2を場所打ちコンクリートによって構築しているが、工場等で予め製作されたコンクリート製のプレキャストブロックを現地で積層して壁体2を構築してもよい。
【0042】
また本実施形態では、前記の図2(b)に示す工程において、PC鋼材3を構成する全てのPC鋼撚り線31を束にして定着部材11に一括挿入しており、これにより施工が短時間で済み、また、PC鋼撚り線31を1本ずつ挿入した場合に、後に挿入するPC鋼撚り線31が、先に挿入したPC鋼撚り線31に絡まり挿入不能になるリスクを避けることができるが、PC鋼材3の一部を構成する複数本のPC鋼撚り線31を束にして定着部材11に挿入する工程を繰り返しても良い。
【0043】
また、本実施形態ではPC鋼材3によってタンク10の壁体2にプレストレスが導入され、これによりプレストレスが壁体2に導入されたタンク10を容易に構築できるが、本発明の適用対象の構造物はタンク10に限らず、プレストレスを導入する部材を有していればよい。この部材が壁体に限られることもなく、本発明は各種の構造物に適用することが可能である。例えば橋脚の上にゴム支承を介して配置された橋桁の仮固定用途として、橋桁(上部部材)にPC鋼材3を通してその下端部を橋脚(下部部材)に設けた定着部材11に定着し、PC鋼材3を緊張させてその上端部を橋桁に固定することも可能である。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0045】
1:基礎版
2:壁体
3:PC鋼材
4、4a、4b:硬化材
5:鋼製屋根
10:タンク
11、11a:定着部材
21:シース
31:PC鋼撚り線
32:定着体
33:固定部
111:拡径部
114:キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8