(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049574
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】モータシリンダ装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B60T 13/138 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
B60T13/138 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155868
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】315019735
【氏名又は名称】日立Astemo上田株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】下園 責平
(72)【発明者】
【氏名】小堀 哲生
【テーマコード(参考)】
3D048
【Fターム(参考)】
3D048BB51
3D048CC54
3D048HH13
3D048HH18
(57)【要約】
【課題】モータシリンダ装置の基体の汎用性を高め、コスト低減を図るモータシリンダ装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】モータシリンダ装置3は、ブレーキ操作に応じた電気信号に基づいてモータ36を駆動させ、シリンダ穴31内でブレーキ液圧を発生させる装置である。基体30には、外部で発生したブレーキ液圧の供給口となる入口ポート301,302と、ブレーキ液圧の外部への吐出口となる出口ポート311,312とが備わる。基体30には、入口ポート301,302または出口ポート311,312を形成可能なポート形成スペース38が複数形成されている。ポート形成スペース38の数は、基体30に形成される入口ポート301,302及び出口ポート311,312の合計数よりも、少なくとも1つ多いことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ穴が形成された基体を備え、
ブレーキ操作に応じた電気信号に基づいてモータを駆動させ、前記シリンダ穴内でブレーキ液圧を発生させるモータシリンダ装置であって、
前記基体に設けられ、外部で発生したブレーキ液圧の供給口となる入口ポートと、
前記基体に設けられ、前記シリンダ穴内で発生したブレーキ液圧の外部への吐出口となる出口ポートと、を備え、
前記基体には、前記入口ポートまたは前記出口ポートを形成可能なポート形成スペースが複数形成されており、
前記ポート形成スペースの数は、前記基体に形成される前記入口ポート及び前記出口ポートの合計数よりも、少なくとも1つ多いことを特徴とするモータシリンダ装置。
【請求項2】
前記シリンダ穴は、底側圧力室と開口側圧力室とに区画されていることを特徴とする請求項1に記載のモータシリンダ装置。
【請求項3】
前記底側圧力室に接続される液圧路は、前記シリンダ穴の軸線を含む基準面を設定したときに一方側の領域に配置されており、
前記開口側圧力室に接続される液圧路は、前記基準面を設定したときに他方側の領域に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のモータシリンダ装置。
【請求項4】
前記底側圧力室及び前記開口側圧力室に対応するように、前記入口ポートと前記出口ポートとが1組ずつ設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のモータシリンダ装置。
【請求項5】
前記基体は、前記シリンダ穴が内部に備わるシリンダ部と、前記シリンダ部の軸方向の端部に設けられ前記シリンダ部の軸方向に直交して上下面、左右面、前後面を有するフランジ部とを備えており、
前記ポート形成スペースは、前記シリンダ部の左面及び右面、並びに前記フランジ部の上面、前面、左面及び右面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のモータシリンダ装置。
【請求項6】
シリンダ穴が形成された基体を備え、
ブレーキ操作に応じた電気信号に基づいてモータを駆動させ、前記シリンダ穴内でブレーキ液圧を発生させるモータシリンダ装置の製造方法であって、
外部で発生したブレーキ液圧の供給口となる入口ポートまたは前記シリンダ穴内で発生したブレーキ液圧の外部への吐出口となる出口ポートを形成可能なポート形成スペースを前記基体に対して複数形成するポートスペース形成工程と、
前記ポート形成スペースに前記入口ポートまたは前記出口ポートを形成するポート形成工程と、を含み、
前記ポート形成スペースの数は、前記ポート形成工程において形成される前記入口ポート及び前記出口ポートの合計数よりも少なくとも1つ多い、ことを特徴とするモータシリンダ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキシステムに用いられるモータシリンダ装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ブレーキシステムとして、ブレーキペダルの操作によって作動するマスタシリンダを備えた入力装置と、ブレーキペダルの操作量に応じてブレーキ液圧を発生するモータシリンダ装置と、液圧制御装置とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。モータシリンダ装置は、電動モータを駆動源として作動するピストンによりブレーキ液圧を発生するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、モータシリンダ装置の基体には、ブレーキ液用の配管の接続口となる入力ポートや出口ポートが形成されている。入力ポートや出口ポートの基体における形成位置は、エンジンルーム内における入力装置と液圧制御装置との位置関係や他の機器等の位置関係を考慮して適宜設定される。このため、車種毎のレイアウトに合わせてモータシリンダ装置の基体を個別に製造する必要があり、コストの増大を招いていた。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、モータシリンダ装置の基体の汎用性を高め、コスト低減を図ることができるモータシリンダ装置及び製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明のモータシリンダ装置は、シリンダ穴が形成された基体を備え、ブレーキ操作に応じた電気信号に基づいてモータを駆動させ、前記シリンダ穴内でブレーキ液圧を発生させるものである。前記基体には、外部で発生したブレーキ液圧の供給口となる入口ポートと、前記シリンダ穴内で発生したブレーキ液圧の外部への吐出口となる出口ポートと、が設けられている。前記基体には、前記入口ポートまたは前記出口ポートを形成可能なポート形成スペースが複数形成されている。前記ポート形成スペースの数は、前記基体に形成される前記入口ポート及び前記出口ポートの合計数よりも、少なくとも1つ多いことを特徴とする。
【0007】
本発明のモータシリンダ装置では、複数備わるポート形成スペースのうち、適宜のポート形成スペースを選んで入口ポート及び出口ポートを形成できる。これにより、車種毎のレイアウト等に合わせて入口ポート及び出口ポートを設置でき、基体の汎用性を高めることができる。したがって、モータシリンダ装置のコスト低減を図ることができる。
【0008】
また、本発明のモータシリンダ装置は、前記シリンダ穴が、底側圧力室と開口側圧力室とに区画されていることが好ましい。
【0009】
この構成では、タンデム型のシリンダを形成しつつ、複数備わるポート形成スペースのうち、適宜のポート形成スペースを選んで入口ポート及び出口ポートをそれぞれ形成できる。したがって、基体の汎用性を高めることができ、コスト低減を図ることができる。
【0010】
また、前記底側圧力室に接続される液圧路は、前記シリンダ穴の軸線を含む基準面を設定したときに一方側の領域に配置されていることが好ましく、前記開口側圧力室に接続される液圧路は、前記基準面を設定したときに他方側の領域に配置されていることが好ましい。
【0011】
この構成では、底側圧力室に接続される液圧路と開口側圧力室に接続される液圧路とをシリンダ穴の軸線を含む基準面の両側にバランスよく配置できる。また、両液圧路の配置が明確になるので、入口ポート及び出口ポートに通じる液路の設計成形が簡単になる。
【0012】
また、前記底側圧力室及び前記開口側圧力室に対応するように、前記入口ポートと前記出口ポートとが1組ずつ設けられていることが好ましい。
【0013】
この構成では、複数備わるポート形成スペースのうち適宜のポート形成スペースを選んで入口ポート及び出口ポートを1組ずつ形成できる。
【0014】
また、前記基体は、前記シリンダ穴が内部に備わるシリンダ部と、前記シリンダ部の軸方向の端部に設けられ前記シリンダ部の軸方向に直交して上下面、左右面、前後面を有するフランジ部とを備えることが好ましい。そして、前記ポート形成スペースは、前記シリンダ部の左面及び右面、並びに、前記フランジ部の上面、前面、左面及び右面に形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成では、シリンダ部及びフランジ部に複数備わるポート形成スペースのうち、適宜のポート形成スペースを選んで入口ポート及び出口ポートを形成できる。これにより、車種毎のレイアウト等に合わせて入口ポート及び出口ポートを設置でき、基体の汎用性を高めることができる。したがって、モータシリンダ装置のコスト低減を図ることができる。
【0016】
また、前記課題を解決するため、本発明のモータシリンダ装置の製造方法は、シリンダ穴が形成された基体を備え、ブレーキ操作に応じた電気信号に基づいてモータを駆動させ、前記シリンダ穴内でブレーキ液圧を発生させるモータシリンダ装置の製造方法である。モータシリンダ装置の製造方法は、外部で発生したブレーキ液圧の供給口となる入口ポートまたは前記シリンダ穴内で発生したブレーキ液圧の外部への吐出口となる出口ポートを形成可能なポート形成スペースを前記基体に対して複数形成するポートスペース形成工程と、前記ポート形成スペースに前記入口ポートまたは前記出口ポートを形成するポート形成工程と、を含む。前記ポート形成スペースの数は、前記ポート形成工程において形成される前記入口ポート及び前記出口ポートの合計数よりも少なくとも1つ多い、ことを特徴とする。
【0017】
本発明のモータシリンダ装置の製造方法では、複数備わるポート形成スペースのうち、適宜のポート形成スペースを選んで入口ポート及び出口ポートを形成できる。これにより、車種毎のレイアウト等に合わせて入口ポート及び出口ポートを設置でき、基体の汎用性を高めることができる。したがって、モータシリンダ装置のコスト低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明モータシリンダ装置及び製造方法は、モータシリンダ装置の基体の汎用性を高め、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るモータシリンダ装置を用いた車両用ブレーキシステムを示した全体構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るモータシリンダ装置を前方左上から見た斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るモータシリンダ装置の基体を前方左上から見た斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るモータシリンダ装置の基体を前方右上から見た斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るモータシリンダ装置の基体における第一パターンのポート形成スペースの配置例を示した斜視図である。
【
図6】同じく第一パターンのポート形成スペースの配置例における流路構成部に形成された各装着穴及び流路の内面を可視化した図であり、前方左上から見た斜視図である。
【
図7】同じく第一パターンのポート形成スペースの配置例における流路構成部に形成された各装着穴及び流路の内面を可視化した図であり、前方右上から見た斜視図である。
【
図8】同じく第一パターンのポート形成スペースの配置例における流路構成部に形成された各装着穴及び流路の内面を可視化した図であり、前方から見た正面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るモータシリンダ装置の基体における第二パターンのポート形成スペースの配置例を示した斜視図である。
【
図10】同じく第二パターンのポート形成スペースの配置例における流路構成部に形成された各装着穴及び流路の内面を可視化した図であり、前方左上から見た斜視図である。
【
図11】同じく第二パターンのポート形成スペースの配置例における流路構成部に形成された各装着穴及び流路の内面を可視化した図であり、前方右上から見た斜視図である。
【
図12】同じく第二パターンのポート形成スペースの配置例における流路構成部に形成された各装着穴及び流路の内面を可視化した図であり、前方から見た正面図である。
【
図13】本発明の実施形態に係るモータシリンダ装置の基体における第三パターンのポート形成スペースの配置例を示した斜視図である。
【
図14】同じく第三パターンのポート形成スペースの配置例における流路構成部に形成された各装着穴及び流路の内面を可視化した図であり、前方左上から見た斜視図である。
【
図15】同じく第三パターンのポート形成スペースの配置例における流路構成部に形成された各装着穴及び流路の内面を可視化した図であり、前方右上から見た斜視図である。
【
図16】同じく第三パターンのポート形成スペースの配置例における流路構成部に形成された各装着穴及び流路の内面を可視化した図であり、前方から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、本発明のモータシリンダ装置を車両用ブレーキシステムに適用した場合を例として説明する。
【0021】
車両用ブレーキシステムAは、
図1に示すように、原動機(エンジンや電動モータなど)の起動時に作動するバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、原動機の停止時などに作動する油圧式のブレーキシステムの双方を備えるものである。
【0022】
車両用ブレーキシステムAは、モータを併用するハイブリッド自動車やモータのみを動力源とする電気自動車・燃料電池自動車や、エンジン(内燃機関)のみを動力源とする自動車に搭載することができる。
【0023】
車両用ブレーキシステムAは、ブレーキペダルP(特許請求の範囲における「ブレーキ操作子」)のストローク量(作動量)に応じてブレーキ液圧を発生させるとともに、車両挙動の安定化を支援する。
【0024】
車両用ブレーキシステムAは、ブレーキペダルPのストローク量に応じてブレーキ液圧を発生させる入力装置1と、ブレーキペダルPに擬似的な操作反力を付与するストロークシミュレータ2と、モータ36を駆動源としてブレーキ液圧を発生させるモータシリンダ装置3と、入力装置1及びストロークシミュレータ2の構成部品が取り付けられる第一の基体10と、モータシリンダ装置3の構成部品が取り付けられる第二の基体30とを備えている。
また、車両用ブレーキシステムAは、車輪ブレーキの各ホイールシリンダWに作用するブレーキ液の液圧を制御し、車両挙動の安定化を支援する液圧制御装置100を備えている。
【0025】
入力装置1は、基体10の第一シリンダ穴11に挿入された二つのピストン12a,12bを備えている。
第一シリンダ穴11の底面と底側のピストン12aとの間に底側圧力室14aが形成されている。また、底側のピストン12aと開口側のピストン12bとの間に開口側圧力室14bが形成されている。
【0026】
ブレーキペダルPのロッドRの先端部は、開口側のピストン12bに連結されている。両ピストン12a,12bは、ブレーキペダルPの踏力を受けて第一シリンダ穴11内を摺動し、底側圧力室14a内および開口側圧力室14b内のブレーキ液を加圧する。
【0027】
入力装置1の基体10内には、ストロークシミュレータ2が設けられている。
ストロークシミュレータ2は、基体10の第二シリンダ穴21に挿入されたピストン22と、第二シリンダ穴21の開口部を閉塞する蓋部材24と、ピストン22と蓋部材24との間に収容されたコイルばね23と、を備えている。
【0028】
第二シリンダ穴21の底面とピストン22との間に圧力室25が形成されている。圧力室25は、後記する第一分岐液圧路1c、第二分岐液圧路1dおよび第二メイン液圧路1bを介して、第一シリンダ穴11の開口側圧力室14bに通じている。
【0029】
ストロークシミュレータ2では、開口側圧力室14bで加圧されたブレーキ液圧によって、ピストン22がコイルばね23の付勢力に抗して移動する。そして、付勢されたピストン22によってブレーキペダルPに擬似的な操作反力が付与される。
【0030】
モータシリンダ装置3は、シリンダ穴31が形成された基体30と、シリンダ穴31に挿入された二つのピストン32a,32bと、モータ36と、駆動伝達部35と、を備えている。シリンダ穴31は、底側圧力室34aと開口側圧力室34bとに区画されている。
底側圧力室34aは、シリンダ穴31の底面と底側のピストン32aとの間に形成されている。開口側圧力室34bは、底側のピストン32aと開口側のピストン32bとの間に形成されている。
【0031】
モータ36は、後記する電子制御装置4によって駆動制御される電動サーボモータである。
駆動伝達部35は、モータ36の出力軸の回転駆動力を直線方向の軸力に変換する機構である。駆動伝達部35は、例えば、ボールねじ機構によって構成されている。
モータ36の出力軸が回転し、その回転駆動力が駆動伝達部35に入力されると、駆動伝達部35のロッド35aが進退移動する。ロッド35aの先端部は、開口側のピストン32bに当接している。
両ピストン32a,32bは、ロッド35aからの入力を受けてシリンダ穴31内を摺動し、底側圧力室34a内および開口側圧力室34b内のブレーキ液を加圧する。
【0032】
電子制御装置4は、基体30の側面に取り付けられており、ハウジング内に制御基板を収容させたものである。電子制御装置4は、各種センサから得られた情報や予め記憶させておいたプログラム等に基づいて、モータ36の作動や各弁の開閉を制御する。
【0033】
液圧制御装置100は、アンチロックブレーキ制御、車両の挙動を安定化させる横滑り制御、トラクション制御などを実行し得る構成を備えている。なお、図示は省略するが、液圧制御装置100は、電磁弁やポンプなどが設けられた液圧ユニット、ポンプを駆動するためのモータ、電磁弁やモータなどを制御するための電子制御装置などを備えている。
【0034】
次に、入力装置1の基体10内に形成された各液圧路について説明する。
第一メイン液圧路1aは、第一シリンダ穴11の底側圧力室14aを起点とする液圧路である。第一メイン液圧路1aの終点である出口ポートには、モータシリンダ装置3の基体30に至る配管Haが連結されている。
【0035】
第二メイン液圧路1bは、第一シリンダ穴11の開口側圧力室14bを起点とする液圧路である。第二メイン液圧路1bの終点である出口ポートには、モータシリンダ装置3の基体30に至る配管Hbが連結されている。
【0036】
第一分岐液圧路1cは、第二メイン液圧路1bから分岐して、ストロークシミュレータ2の圧力室25に至る液圧路である。
第一分岐液圧路1cには、常閉型の電磁弁5が設けられている。この電磁弁5は第一分岐液圧路1cを開閉するものである。
【0037】
第二分岐液圧路1dは、第二メイン液圧路1bから分岐して、第一分岐液圧路1cに至る液圧路である。第二分岐液圧路1dは、第一分岐液圧路1cにおいて電磁弁5よりも圧力室25側の部位に連通している。
第二分岐液圧路1dには、チェック弁6が設けられている。チェック弁6は、電磁弁5に並列に接続されている。このチェック弁6は、圧力室25側から第一シリンダ穴11側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁である。
【0038】
次に、モータシリンダ装置3の基体30内に形成された各液圧路について説明する。モータシリンダ装置3は、第三メイン液圧路3a、第四メイン液圧路3b、第一連通路3c及び第二連通路3dを備えている。
第三メイン液圧路3aは、基体30の入力ポート301から出口ポート311に至る液圧路である。第三メイン液圧路3aの始点である入力ポート301には、入力装置1の基体10に連結された配管Haが連結されている。これより、入力装置1の第一メイン液圧路1aと、モータシリンダ装置3の第三メイン液圧路3aとが配管Haを介して連通している。第三メイン液圧路3aの終点である出口ポート311には、液圧制御装置100に至る配管Hcが接続されている。
【0039】
第四メイン液圧路3bは、基体30の入力ポート302から出口ポート3012に至る液圧路である。第四メイン液圧路3bの始点である入力ポート302には、入力装置1の基体10に連結された配管Hbが連結されている。これより、入力装置1の第二メイン液圧路1bと、モータシリンダ装置3の第四メイン液圧路3bとが配管Hbを介して連通している。第四メイン液圧路3bの終点である出口ポート312には、液圧制御装置100に至る配管Hdが接続されている。
【0040】
第一連通路3cは、シリンダ穴31の底側圧力室34aから第三メイン液圧路3aに至る液圧路である。
第二連通路3dは、シリンダ穴31の開口側圧力室34bから第四メイン液圧路3bに至る液圧路である。
【0041】
第三メイン液圧路3aと第一連通路3cとの連結部には、三方向弁である第一切替弁7aが設けられている。第一切替弁7aは、2ポジション3ポートの電磁弁である。
第一切替弁7aが
図1に示す第一ポジションの状態では、第三メイン液圧路3aの上流側(入力装置1側)と下流側(ホイールシリンダW側)とが連通し、第三メイン液圧路3aと第一連通路3cとが遮断される。
第一切替弁7aが第二ポジションの状態では、第三メイン液圧路3aの上流側と下流側とが遮断され、第一連通路3cと第三メイン液圧路3aの下流側とが連通する。
【0042】
第四メイン液圧路3bと第二連通路3dとの連結部には、三方向弁である第二切替弁7bが設けられている。第二切替弁7bは、2ポジション3ポートの電磁弁である。
第二切替弁7bが
図1に示す第一ポジションの状態では、第四メイン液圧路3bの上流側(入力装置1側)と下流側(ホイールシリンダW側)とが連通し、第四メイン液圧路3bと第二連通路3dとが遮断される。
第二切替弁7bが第二ポジションの状態では、第四メイン液圧路3bの上流側と下流側とが遮断され、第二連通路3dと第四メイン液圧路3bの下流側とが連通する。
【0043】
第一圧力センサP1および第二圧力センサP2は、ブレーキ液圧の大きさを検知するものである。第一圧力センサP1および第二圧力センサP2で取得された情報は電子制御装置4に出力される。
【0044】
第三メイン液圧路3aに設けられた第一圧力センサP1は、第一切替弁7aよりも上流側(入力ポート301側)に配置されており、入力装置1で発生したブレーキ液圧を検知する。
第二連通路3dに設けられた第二圧力センサP2は、第二切替弁7bよりも上流側(シリンダ穴31側)に配置されており、モータシリンダ装置3で発生したブレーキ液圧を検知する。
【0045】
液圧制御装置100は、配管Hc,Hdを介してモータシリンダ装置3に接続されている。さらに、液圧制御装置100は、配管を介して各ホイールシリンダWに接続されている。
【0046】
次に車両用ブレーキシステムAの動作について概略説明する。
図1に示す車両用ブレーキシステムAでは、システムが起動されると、モータシリンダ装置3の第一切替弁7aおよび第二切替弁7bが励磁されて、前記した第一ポジションから第二ポジションに切り替わる。
これにより、第三メイン液圧路3aの下流側と第一連通路3cとが通じるとともに、第四メイン液圧路3bの下流側と第二連通路3dとが通じる。これにより、入力装置1と各ホイールシリンダWとが遮断されるとともに、モータシリンダ装置3と各ホイールシリンダWとが連通する。
【0047】
また、システムが起動されると、入力装置1の第一分岐液圧路1cの常閉型の電磁弁5は開弁される。これにより、ブレーキペダルPの操作によって入力装置1で発生した液圧は、ホイールシリンダWには伝達されずに、ストロークシミュレータ2に伝達される。
そして、ストロークシミュレータ2の圧力室25の液圧が大きくなり、ピストン22がコイルばね23の付勢力に抗して移動することで、ブレーキペダルPのストロークが許容される。これにより、擬似的な操作反力がブレーキペダルPに付与される。
【0048】
また、ストロークセンサ50によって、ブレーキペダルPの踏み込みが検知されると、モータシリンダ装置3のモータ36が駆動され、モータシリンダ装置3で液圧が発する。
電子制御装置4は、モータシリンダ装置3の発生液圧(第二圧力センサP2で検出された液圧)と、ブレーキペダルPの操作量に対応した要求液圧とを対比し、その対比結果に基づいてモータ36の回転速度等を制御する。
このようにして、車両用ブレーキシステムAではブレーキペダルPの操作量に応じて液圧を昇圧させる。そして、モータシリンダ装置3の発生液圧は液圧制御装置100に入力される。
【0049】
ブレーキペダルPの踏み込みが解除されると、モータシリンダ装置3のモータ36が逆転駆動され、モータシリンダ装置3の発生液圧が降圧される。
液圧制御装置100では、入口弁および出口弁の開閉状態を制御することで、各ホイールシリンダWのホイールシリンダ圧が調整される。
なお、モータシリンダ装置3が作動しない状態(例えば、イグニッションOFFや、電力が得られない場合など)においては、入力装置1で発生した液圧が、液圧制御装置100を介して、各ホイールシリンダWに伝達される。
【0050】
次に、本実施形態のモータシリンダ装置3について詳細に説明する。
モータシリンダ装置3は、
図2に示すように、基体30と、駆動伝達部35と、モータ36と、電子制御装置4と、リザーバタンク37とを備えている。
基体30は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の鋳造品からなるブロックである。基体30は、内部にシリンダ穴31(
図1参照)が形成されたシリンダ部30Aと、シリンダ部30Aの端部である後部に一体に設けられたフランジ部30Bとを有している。
【0051】
基体30には、入力装置1(
図1参照、以下同じ)で加圧されたブレーキ液の供給口となる入口ポート301,302と、シリンダ31穴内で加圧されたブレーキ液の液圧制御装置100への吐出口となる出口ポート311,312とが形成されている。本実施形態では、シリンダ穴31の底側圧力室34a及び前記開口側圧力室34bに対応するように、入口ポート301,302と出口ポート311,312とが1組ずつ形成されている。
【0052】
入口ポート301は、
図1に示すように、入力装置1の第一メイン液圧路1aからのブレーキ液が供給される供給口であり、配管Haが接続される。同様に、入口ポート302は、入力装置1の第二メイン液圧路1bからのブレーキ液が供給される供給口であり、配管Hbが接続される。
出口ポート311は、モータシリンダ装置3の第三メイン液圧路3aからのブレーキ液が吐出される吐出口であり、液圧制御装置100に至る配管Hcが接続される。同様に、出口ポート312は、モータシリンダ装置3の第四メイン液圧路3bからのブレーキ液が吐出される吐出口であり、液圧制御装置100に至る配管Hdが接続される。
【0053】
図2に示すように、基体30には、これらの入口ポート301,302または出口ポート311,312を形成可能なポート形成スペース38が複数形成されている。以下では、基体30の上下左右の側方に向く面を、それぞれ上面、下面、左面、右面と称し、基体30の前後の側方に向く面を、前面、後面と称する。
【0054】
シリンダ部30Aは、
図3,
図4に示すように、前後方向に延在する略円柱状のブロックである。シリンダ部30Aの左面及び右面には、複数のポート形成スペース38が形成されている。具体的に、シリンダ部30Aの左面には、前後に2つのポート形成スペース38が形成され、右面には、後方にポート形成スペース38が1つ形成されている。
【0055】
シリンダ部30Aの上面には、前後方向に間隔を空けてリザーバユニオンポート30a,30bが形成されている。リザーバユニオンポート30a,30bには、
図2に示すように、リザーバタンク37が取り付けられる。リザーバタンク37は、
図1に示すように、入力装置1に付設されたリザーバ15と配管チューブ15aで接続され、リザーバ15内に貯留されたブレーキ液が配管チューブ15aを介してリザーバタンク37内に供給される。リザーバユニオンポート30a,30bの間には、リザーバタンク37を取り付けるための取付部30cが設けられている。
【0056】
フランジ部30Bは、
図2に示すように、シリンダ部30Aの軸方向に直交する前面及び後面を備えた略四角板状のブロックである。フランジ部30Bの前面の下部には、
図3,
図4に示すように、モータ36が取り付けられる取付面36aが形成されている。取付面36aには、モータ36の図示しない出力軸が挿入される挿入穴36bと、モータ36と接続される図示しないコネクタの挿入穴36cが形成されている。
【0057】
フランジ部30Bの前面の左上部には、
図3に示すように、前方へ突出する略四角形状の突出部36dが形成されている。突出部36dは、シリンダ部30Aの左面とも一体である。突出部36dには、計3つのポート形成スペース38が形成されている。そのうちの2つは、突出部36dの前面の上下に形成され、残りの1つは、突出部36dの左上部の傾斜面に形成されている。
【0058】
フランジ部30Bの後面には、
図2に示すように、駆動伝達部35のハウジングが取り付けられている。ハウジング内には、モータ36の出力軸の回転駆動力をロッド35aに伝達するための図示しないギアアッシー等が収容されている。ギアアッシーの一部は、フランジ部30Bに形成された収容穴36e(
図6,
図8参照)内に収容されている。収容穴36eは、
図8に示すように、正面視でシリンダ穴31と挿入穴36bとの間に形成されている。
【0059】
次に、モータシリンダ装置3の基体30の製造方法について説明する。モータシリンダ装置3の基体30の製造方法は、ポートスペース形成工程及びポート形成工程を含んでいる。
ポートスペース形成工程は、基体30の外面(シリンダ部30A及びフランジ部30Bの外面)に対してポート形成スペース38を複数形成する工程である。ポート形成スペース38は、入口ポート301,302または出口ポート311,312を形成できる平らな面を有する。
ポート形成工程は、ポートスペース形成工程により基体30に対して複数形成されたポート形成スペース38に対して、入口ポート301,302または出口ポート311,312を形成する工程である。入口ポート301,302または出口ポート311,312は、いずれも、ポート形成スペース38の平らな面に直交して形成される有底円筒状の穴である。
【0060】
ポートスペース形成工程において、ポート形成スペース38の形成数は、入口ポート301,302及び出口ポート311,312の合計数(計4個)よりも少なくとも1つ多い数である。本実施形態では、前記した合計数(計4個)よりも多い、計8個のポート形成スペース38を基体30の外面に形成している。これにより、複数備わるポート形成スペース38のうち、適宜のポート形成スペース38を選んで入口ポート301,302または出口ポート311,312を形成することが可能となる。
【0061】
次に、ポート形成スペース38の配置例について詳細に説明する。
(第一パターンのポート形成スペース38の配置例)
初めに、
図5~
図8を参照して、第一パターンのポート形成スペース38の配置例(以下、「第一パターンの配置例」という。)について説明する。
図5に示すように、第一パターンの配置例は、シリンダ部30Aの左面の前後のポート形成スペース38を利用して、第四メイン液圧路3b用の入口ポート302及び出口ポート312を形成している。また、フランジ部30Bの突出部36dの前面における上下のポート形成スペース38を利用して、第三メイン液圧路3a用の入口ポート301及び出口ポート311を形成している。つまり、この配置例では、シリンダ部30Aの左面と、これに連続するフランジ部30Bの突出部36dの前面との相互に近接する領域に対して、4つのポートをまとめて配置している。
【0062】
以下、上記入口ポート301,302及び上記出口ポート311,312を実現するための基体30に備わる流路構成部の流路について、詳細に説明する。
図6~
図8において、各流路を示す符号は、
図1において説明した、第三メイン液圧路3a、第四メイン液圧路3b、第一連通路3c及び第二連通路3dに対応している。具体的に、
図6に示した流路3a1~3a9が第三メイン液圧路3aに相当し、
図7に示した流路3b1~3b10が第四メイン液圧路3bに相当する。また、
図6に示した流路3c1~3c5が第一連通路3cに相当し、
図7に示した流路3d1~3d9が第二連通路3dに相当する。
【0063】
第一パターンの配置例では、
図8に示すように、シリンダ穴31の軸線O1を含む鉛直の基準面S1を設定したときに、一方の左領域R1に第三メイン液圧路3a、第一連通路3cを構成する流路を主として配置している。また、他方の右領域R2に第四メイン液圧路3b、第二連通路3dを構成する流路を主として配置している。
【0064】
図5,
図6に示すように、入口ポート301は、フランジ部30Bの突出部36dの前面からフランジ部30Bの後面に向かって穿設された有底円筒状の穴である。入口ポート301は、第三メイン液圧路3aを構成する流路3a1~3a4を介して第一切替弁装着穴7a1と連通している。また、入口ポート301は、第三メイン液圧路3aを構成する流路3a1~3a3,3a5~3a7を介して第一圧力センサ装着穴3Hと連通している。また、入口ポート301は、第三メイン液圧路3aを構成する流路3a1~3a4、第一切替弁装着穴7a1及び第三メイン液圧路3aを構成する流路3a8,3a9を介して出口ポート311に連通している。
【0065】
流路3a1は、入口ポート301の底面からフランジ部31Bの後面に向かって穿設された横孔である。流路3a2は、突出部36dの左面からフランジ部30Bの右面に向かって穿設された横孔である。流路3a2は、流路3a1に交差して流路3a1の右側方に延びている。流路3a3は、突出部36dの下面から上面に向かって穿設された縦孔である。流路3a3の上端は、流路3a2に連通している。流路3a4は、第一切替弁装着穴7a1の底面から突出部36dの前面に向かって穿設された横孔である。流路3a4の前端は、流路3a3に連通している。第一切替弁装着穴7a1は、フランジ部30Bの後面から突出部36dの前面向かって穿設された有底円筒状の穴である。第一切替弁装着穴7a1には、第一切替弁7aが装着される。
【0066】
流路3a5は、フランジ部30Bの後面から突出部36dの前面に向かって穿設された横孔である。流路3a5の前端は、流路3a4に連通している。流路3a6は、フランジ部30Bの下面から上面に向かって穿設された縦孔である。流路3a6の上端は、流路3a5に連通している。流路3a7は、第一圧力センサ装着穴3Hの底面からフランジ部30Bの前面に向かって穿設された横孔である。流路3a7の前端は、流路3a6に連通している。第一圧力センサ装着穴3Hには、第一圧力センサP1が装着される。
【0067】
流路3a8は、フランジ部30Bの左面から右面に向かって穿設された横孔である。流路3a8は、第一切替弁装着穴7a1の下側周壁を貫通している。流路3a9は、出口ポート311の底面からフランジ部31Bの後面に向かって穿設された横孔である。流路3a9の後端は、流路3a8と交差している。出口ポート311は、突出部36dの前面からフランジ部30Bの後面に向かって穿設された有底円筒状の穴である。
【0068】
このように、本配置例において、第三メイン液圧路3aを構成する流路3a1~3a9は、左領域R1に配置されている。また、これに対応して、第一切替弁装着穴7a1及び第一圧力センサ装着穴3Hも左領域R1に配置されている。
【0069】
図7に示すように、入口ポート302は、シリンダ部30Aの左面から右面に向かって穿設された有底円筒状の穴である。入口ポート302は、流路3b1~3b6を介して第二切替弁装着穴7b1と連通している。また、入口ポート302は、流路3b1~3b6、第二切替弁装着穴7b1及び流路3b7,3b8を介して第二圧力センサ装着穴3iと連通している。また、入口ポート302は、流路3b1~3b6、第二切替弁装着穴7b1及び流路3b9~3b12を介して出口ポート312と連通している。
【0070】
流路3b1は、入口ポート301の底面からシリンダ部31Aの右面に向かって穿設された横孔である。流路3b2は、フランジ部30Bの後面からシリンダ部30Aの前面に向かって穿設された横孔である。流路3b2の前端は、流路3b1に連通している。流路3b3は、フランジ部30Bの右面から左面に向かって穿設された横孔である。流路3b3の左端は、流路3a2に連通している。流路3b4は、フランジ部30Bの下面から上面に向かって穿設された縦孔である。流路3b4の上端は、流路3b3に連通している。
【0071】
流路3b5は、フランジ部30Bの右面から左面に向かって穿設された横孔である。流路3b5の途中部分は、流路3b4の下部に交差している。流路3b6は、第二切替弁装着穴7b1の底面からフランジ部30Bの前面に向かって穿設された横孔である。流路3b6の後端は、流路3b5に連通している。第二切替弁装着穴7b1は、フランジ部30Bの後面から前面に向かって穿設された有底円筒状の穴である。第二切替弁装着穴7a1には、第二切替弁7bが装着される。
【0072】
流路3b7は、フランジ部30Bの下面から上面に向かって穿設された縦孔である。流路3b7の上部は、第二切替弁装着穴7a1の右側周壁を貫通して第二切替弁装着穴7a1の上側に延びている。流路3b8は、フランジ部30Bの後面からシリンダ部30Aの前面に向かって穿設された横孔である。流路3b8は、流路3b7の上端に交差して前方に延びている。流路3b9は、シリンダ部30Aの右側において下面から上面に向かって穿設された縦孔である。流路3b9の下部は、流路3b8の前端に交差している。流路3b10は、出口ポート312の底面からシリンダ部30Aの右面に向かって穿設された横孔である。流路3b10右端は、流路3b9の上端に連通している。出口ポート312は、シリンダ部30Aの左面から右面に向かって穿設された有底円筒状の穴である。
【0073】
このように、第四メイン液圧路3bを構成する流路3b1~3b10は、主として基体30の右領域R2に配置されている。また、これに対応して第二切替弁装着穴7b1及び第二圧力センサ装着穴3iも右領域R2に配置されている。
【0074】
シリンダ穴31の底側圧力室34aは、
図6に示すように、第一連通路3cを構成する流路3c1~3c5を介して第一切替弁装着穴7a1に連通している。流路3c1は、シリンダ部30Aの前側の上部において右側部から左側部に向かって穿設された横孔である。流路3c1は、底側圧力室34aの上側周壁を貫通している。流路3c2は、シリンダ部30Aの左側において、シリンダ部30Aの前面の左上部からフランジ部30Bの後面に向かって斜め下方に穿設された傾斜状の孔である。
【0075】
流路3c3は、シリンダ部30Aの左面から右面に向かって穿設された横孔である。流路3c3の後端は、流路3c2の後端に連通している。流路3c4は、フランジ部30Bの後面からシリンダ部30Aの後面に向かって穿設された横孔である。流路3c4の前端は、流路3c3に連通している。流路3c5は、フランジ部30Bの左面から右面に向かって穿設された横孔である。流路3c5は、第一切替弁装着穴7a1の下側周壁を貫通し、右端が流路3c4に連通している。
このように、シリンダ穴31の底側圧力室34aを基端とした第一連通路3cの各流路3c1~3c5は、主として基体30の左領域R1に配置されている。
【0076】
シリンダ穴31の開口側圧力室34bは、
図7に示すように、第二連通路3dを構成する流路3d1~3d7を介して第二切替弁装着穴7b1に連通し、続けて、流路3d8,3d9を介して第二圧力センサ装着穴3iと連通している。
【0077】
流路3d1は、流路3c1の後方において、シリンダ部30Aの右面から左面に向かって穿設された横孔である。流路3d1は、底側圧力室34aの上側周壁を貫通している。流路3d2は、シリンダ部30Aの右側において下面から上面に向かって穿設された縦孔である。流路3d2の上端は、流路3dに連通している。
【0078】
流路3d3は、シリンダ部30Aの右側において、シリンダ部30Aの前面からフランジ部30Bの後面に向かって穿設された横孔である。流路3d3は、流路3d2の下部に交差している。流路3d4は、シリンダ部30Aの右面から左面に向かって穿設された横孔である。流路3d4の左端は、流路3d3の後端に交差している。流路3d5は、シリンダ部30Aの下面から上面に向かって穿設された縦孔である。流路3d5の上端は、流路3d4の左端に連通している(
図8参照)。
【0079】
流路3d6は、フランジ部30Bの後面から前面に向かって穿設された横孔である。流路3d6の前端は、流路3d5に連通している。流路3d7は、フランジ部30Bの右面から左面に向かって穿設された横孔である。流路3d7は、第二切替弁装着穴7b1の上側周壁を貫通し、左端が流路3d6に連通している。流路3d8は、フランジ部30Bの右面から左面に向かって穿設された横孔である。流路3d8は、第二切替弁装着穴7b1の下側周壁を貫通し、左端が第二切替弁装着穴7b1の左側方に延びている。流路3d9は、フランジ部30Bの下面から上面に向かって穿設された縦孔である。流路3d9は、第二圧力センサ装着穴3iの前端を交差して、上端が流路3d8の左端に連通している。
【0080】
なお、シリンダ部30Aにおいて、リザーバユニオンポート30aは、シリンダ部30Aの上面の前側に形成された有底円筒状の穴である。リザーバユニオンポート30aは、縦流路31a(
図6,
図7参照)を介してシリンダ穴31の底側圧力室34aと連通している。一方、リザーバユニオンポート30bは、シリンダ部30Aの上面の後側に形成された有底円筒状の穴である。リザーバユニオンポート30bは、縦流路31b(
図7参照)を介してシリンダ穴31の開口側圧力室34bと連通している。
【0081】
このような第一パターンの配置例によれば、シリンダ部30Aの左面とフランジ部30Bの突出部36dの前面との相互に近接する領域に4つのポートをまとめて配置しているので、各ポートへの配管の接続が行いやすい。また、基体30の右面に配管が接続されないので、基体30の右面をエンジンルームの側壁や機器等に対向させるようにしてモータシリンダ装置3を配置できる。
【0082】
(第二パターンのポート形成スペース38の配置例)
次に、
図9~
図12を参照して、第二パターンのポート形成スペース38の配置例(以下、「第二パターンの配置例」という。)について説明する。なお、前記した第一パターンの配置例と同様の流路には、同様の符号を付し重複する説明は省略する。
【0083】
図9に示すように、第二パターンの配置例は、フランジ部30Bの突出部36dの傾斜面におけるポート形成スペース38を利用して、第三メイン液圧路3aに通じる入口ポート301を形成している。また、シリンダ部30Aの右面後部のポート形成スペース38を利用して、第三メイン液圧路3aの出口ポート311を形成している。
【0084】
さらに、第二パターンの配置例は、フランジ部30Bの上面右部のポート形成スペース38を利用して、第四メイン液圧路3bに通じる入口ポート302を形成している。また、フランジ部30Bの右面下部のポート形成スペース38を利用して、第四メイン液圧路3bの出口ポート312を形成している。つまり、第三パターンの配置例では、シリンダ部30Aの右面及びフランジ部30Bの左面(突出部36dの傾斜面)、上面、右面のポート形成スペース38をそれぞれ利用して、基体30の後部周囲に4つのポートをまとめて配置している。
【0085】
以下、本配置例において、上記入口ポート301,302及び上記出口ポート311,312を実現するための基体30に備わる流路構成部の流路について、詳細に説明する。
図9~
図12においても同様に、各流路を示す符号は、
図1において説明した、第三メイン液圧路3a、第四メイン液圧路3b、第一連通路3c及び第二連通路3dに対応している。具体的に、
図10に示した流路3a8,3a9,3a3~3a7,3a10~3a13が第三メイン液圧路3aに相当し、
図11に示した流路3b4~3b6,3b11~3b13が第四メイン液圧路3bに相当する。また、
図10に示した流路3c1~3c5が第一連通路3cに相当し、
図11に示した流路3d1~3d9が第二連通路3dに相当する。本配置例において、第一連通路3c及び第二連通路3dは、前記した第一パターンの配置例で示したものと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0086】
図12に示すように、本配置例においても、一方の左領域R1に第三メイン液圧路3a、第一連通路3cを構成する流路を主として配置している。また、他方の右領域R2に第四メイン液圧路3b、第二連通路3dを構成する流路を主として配置している。
【0087】
図9,
図10に示すように、入口ポート301は、フランジ部30Bの突出部36dの傾斜面からシリンダ部30Aの右面下部に向かって穿設された有底円筒状の穴である。入口ポート301は、第三メイン液圧路3aを構成する流路3a8,3a9,3a3,3a4を介して第一切替弁装着穴7a1と連通している。また、入口ポート301は、第三メイン液圧路3aを構成する流路3a8,3a9,3a3,3a5~3a7を介して第一圧力センサ装着穴3Hと連通している。また、入口ポート301は、第三メイン液圧路3aを構成する流路3a8,3a9,3a3,3a4、第一切替弁装着穴7a1及び第三メイン液圧路3aを構成する流路3a10~3a13を介して出口ポート311に連通している。
【0088】
流路3a8は、入口ポート301の底面からシリンダ部30Aの右面下部に向かって穿設された傾斜状の孔である。流路3a9は、フランジ部30Bの後面から前面に向かって穿設された横孔である。流路3a9の前端は、流路3a8に連通している。流路3a8の前部には流路3a3の上端が連通している。
【0089】
流路3a10から流路3a13は、本配置例用に設けられた流路であり、第一切替弁装着穴7a1から出口ポート311に至る流路である。
流路3a10は、フランジ部30Bの左面から右面に向かって穿設された横孔である。流路3a10は、第一切替弁装着穴7a1の上側周壁を貫通している。流路3a11は、フランジ部30Bの後面から前面に向かって穿設された横孔である。流路3a11の後部には、流路3a10の右端が連通している。
【0090】
流路3a12は、シリンダ部30Aの左面の下部からシリンダ部30Aの上面の左右中央部に向かって穿設された傾斜状の孔である。流路3a12の下部は、流路3a11の前端に連通している。流路3a13は、
図11に示すように、出口ポート311の底面からシリンダ部30Aの左面に向かって穿設された横孔である。出口ポート311は、シリンダ部30Aの右面から左面に向かって穿設された有底円筒状の穴である。
【0091】
このように、第三メイン液圧路3aを構成する流路3a8,3a9,3a3~3a7,3a10~3a13は、主として左領域R1に配置されている。そして、本配置例では、第三メイン液圧路3aの入口ポート301と出口ポート311とがシリンダ部30Aを挟んで左右に配置されている。
【0092】
図11に示すように、入口ポート302は、フランジ部30Bの上面から下面に向かって穿設された有底円筒状の穴である。本配置例の流路3b4は、入口ポート302の底面からフランジ部30Bの下面に向かって穿設された縦孔である。流路3b4の下端は、流路3b5に連通している。
【0093】
流路3b11~3b13は、本配置例用に設けられた流路であり、第二切替弁装着穴7b1から出口ポート312に至る流路である。
流路3b11は、フランジ部30Bの右面から左面に向かって穿設された横孔である。流路3b11は、第二切替弁装着穴7b1の下周壁を貫通している。流路3b12は、フランジ部30Bの下面から上面に向かって穿設された縦孔である。流路3b12の上端は、流路3b11の左端に連通している。流路3b13は、出口ポート312の底面からフランジ部30Bの左面に向かって穿設された横孔である。流路3b13の左端は、流路3b12に連通している。出口ポート312は、フランジ部30Bの右面から左面に向かって穿設された有底円筒状の穴である。
【0094】
このような第二パターンの配置例によれば、シリンダ部30Aの右面及びフランジ部30Bの左面(突出部36dの傾斜面)、上面、右面のポート形成スペース38を利用して、基体30の後部周囲に、4つのポートをまとめて配置しているので、各ポートへの配管の接続が行いやすい。また、基体30の右側は、ポートが1つだけであるので、基体30の右側における配管の誤接続が生じにくい。また、基体30の左面に配管が接続されないので、シリンダ部30Aの左面をエンジンルームの側壁や機器等に対向させるようにしてモータシリンダ装置3を配置できる。
【0095】
(第三パターンのポート形成スペース38の配置例)
次に、
図13~
図16を参照して、第三パターンのポート形成スペース38の配置例(以下、「第三パターンの配置例」という。)について説明する。第三パターンの配置例は、前記した第一,第二パターンの配置例における流路構成部の流路を複合的に用いたものである。なお、前記した第一,第二パターンの配置例と同様の流路には、同様の符号を付し重複する説明は省略する。
【0096】
図13に示すように、第三パターンの配置例は、前記した第二パターンの配置例(
図9参照)と同様に、フランジ部30Bの突出部36dの傾斜面におけるポート形成スペース38を利用して、第三メイン液圧路3aに通じる入口ポート301を形成している。また、シリンダ部30Aの右面後部のポート形成スペース38を利用して、第三メイン液圧路3aの出口ポート311を形成している。さらに、前記した第一パターンの配置例(
図5参照)と同様に、シリンダ部30Aの左面の前後のポート形成スペース38を利用して、入口ポート302及び出口ポート312を形成している。つまり、第三パターンの配置例では、シリンダ部30Aの左面及びフランジ部30Bの左面(突出部36dの傾斜面)を利用して、基体30の左面に3つのポートをまとめて配置し、残りのポートをシリンダ部30Aの右面に配置している。
【0097】
以下、本配置例において、上記入口ポート301,302及び上記出口ポート311,312を実現するための基体30に備わる流路構成部の流路について、詳細に説明する。
図14~
図16においても同様に、各流路を示す符号は、
図1において説明した、第三メイン液圧路3a、第四メイン液圧路3b、第一連通路3c及び第二連通路3dに対応している。具体的に、前記第二パターンの配置例と同様に、
図14に示した流路3a8,3a9,3a3~3a7,3a10~3a13が第三メイン液圧路3aに相当する。そして、前記第一パターンの配置例と同様に、
図15に示した流路3b1~3b10が第四メイン液圧路3bに相当する。また、
図14に示した流路3c1~3c5が第一連通路3cに相当し、
図15に示した流路3d1~3d9が第二連通路3dに相当する。本配置例において、第一連通路3c及び第二連通路3dは、前記した第一パターンの配置例及び第二パターンの配置例で示したものと同様である。
【0098】
図16に示すように、本配置例においても、一方の左領域R1に第三メイン液圧路3a、第一連通路3cを構成する流路を主として配置している。また、他方の右領域R2に第四メイン液圧路3b、第二連通路3dを構成する流路を主として配置している。本配置例における左領域R1の流路の配置は、第二パターンの配置例における流路の配置とほぼ同様であり、第二パターンの配置例の流路にプラスして、第一パターンの配置例の入口ポート302及びこれに連通する流路3b1を設けたものである。一方、右領域R2の流路の配置は、第一パターンの配置例における流路の配置とほぼ同様であり、第一パターンの配置例の流路にプラスして、第二パターンの配置例の出口ポート311及びこれに連通する流路3b13を設けたものである。なお、第三パターンの配置例の各流路の構成は、第一,第二パターンの配置例の該当する部分の各流路の構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0099】
このような第三パターンの配置例によれば、シリンダ部30Aの左面及びフランジ部30Bの左面(突出部36dの傾斜面)を利用して、基体30の左面の前後方向に3つのポートを並べることができる。したがって、基体30の左面における各ポートへの配管の接続が行いやすい。また、基体30の右面は、ポートが1つだけであるので、基体30の右面における配管の誤接続が生じにくい。また、基体30の右面の前部や後部をエンジンルームの側壁や機器等に対向させるようにしてモータシリンダ装置3を配置できる。
【0100】
以上説明した本実施形態のモータシリンダ装置3及び製造方法では、複数備わるポート形成スペース38のうち、適宜のポート形成スペース38を選んで入口ポート301,302及び出口ポート311,312を形成できる。これにより、車種毎のレイアウト等に合わせて入口ポート301,302及び出口ポート311,312を設置でき、基体30の汎用性を高めることができる。したがって、モータシリンダ装置3のコスト低減を図ることができる。
【0101】
また、シリンダ穴31が、タンデム型の底側圧力室34aと開口側圧力室34bとを備えているので、独立した2つの液圧路を形成しつつ、複数備わるポート形成スペース38のうち、適宜のポート形成スペース38を選んで入口ポート301,302及び出口ポート311,312をそれぞれ形成できる。したがって、基体30の汎用性をより高めることができ、コスト低減を図ることができる。
【0102】
また、底側圧力室34aに接続される第三メイン液圧路3aと開口側圧力室34bに接続される第四メイン液圧路3bとをシリンダ穴31の軸線O1を含む基準面S1を境にして両領域R1,R2にバランスよく配置できる。また、第三メイン液圧路3a及び第四メイン液圧路3bの配置が明確になるので、入口ポート301,302及び出口ポート311,312に通じる液路の設計や形成が簡単になる。
【0103】
また、底側圧力室34a及び開口側圧力室34bに対応するように、入口ポート301,302及び出口ポート311,312が1組ずつ備わる構成においても、複数備わるポート形成スペース38のうち、適宜のポート形成スペース38を選ぶことにより、ポートを容易に形成できる。
【0104】
また、シリンダ部30A及びフランジ部30Bの外面の広範囲にポート形成スペース38が複数備わるので、車種毎のレイアウト等に合わせて入口ポート301,302及び出口ポート311,312を適宜設置でき、基体30の汎用性を高めることができる。したがって、モータシリンダ装置3のコスト低減を図ることができる。
【0105】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
本実施形態のモータシリンダ装置3では、基体30のシリンダ部30A及びフランジ部30Bに対してポート形成スペース38を複数形成したが、これに限られることはなく、シリンダ部30A及びフランジ部30Bの一方に設けてもよい。
【0106】
また、シリンダ形成ポート38の形成位置や数は、前記実施形態で説明したものに限られることはなく、適宜設定することができる。この場合、基体30の下面を利用してポート形成スペース38を形成してもよい。
【0107】
また、前記実施形態で示した第一~第三パターンの配置例は、配置例の一部に過ぎず、適宜のポート形成スペース38を選択して、入口ポート301,302及び出口ポート311,312を設置できる。
【0108】
また、前記実施形態では、シリンダ穴31がタンデム型のものを例にして示したが、これに限られることはなく、シリンダ穴がシングル型のものにも本発明を適用できる。
【0109】
また、前記実施形態の基体30は、略円柱状のシリンダ部30Aと略四角板状のフランジ部30Bとからなる構成としたが、これに限られることはなく、種々の形状のものを採用することができる。
【符号の説明】
【0110】
3 モータシリンダ装置
3a 第三メイン液圧路(液圧路)
3b 第四メイン液圧路(液圧路)
3c 第一連通路(液圧路)
3d 第二連通路(液圧路)
30 基体
30A シリンダ部
30B フランジ部
31 シリンダ穴
31A シリンダ部
31B フランジ部
34b 底側圧力室
34b 開口側圧力室
36 モータ
38 ポート形成スペース
301 入口ポート
302 入口ポート
311 出口ポート
312 出口ポート
O1 軸線
R1 左領域(一方側の領域)
R2 右領域(他方側の領域)
S1 基準面