(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049576
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】CO2熱分解触媒の製造方法、CO2熱分解方法、再生CO2熱分解触媒の製造方法、及びCO2熱分解触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 21/16 20060101AFI20240403BHJP
C01B 33/32 20060101ALI20240403BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20240403BHJP
B01J 21/20 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B01J21/16 M
C01B33/32
C01B32/05
B01J21/20 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155870
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】土岐 隆太郎
【テーマコード(参考)】
4G073
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G073CB05
4G073CB06
4G073FD21
4G073FD30
4G073UA01
4G146AA01
4G146BA09
4G146BB10
4G146BC03
4G146BC32A
4G146BC32B
4G146BC33A
4G146BC33B
4G146CA11
4G169BA15A
4G169BA15B
4G169BC02A
4G169BC02B
4G169CB81
4G169FB48
4G169FB57
4G169GA13
(57)【要約】
【課題】触媒を充填する容器のサイズを大型化することがなく、触媒製造段階でのCO
2排出量を抑制し、且つ高効率でCO
2を吸収及び分解可能なCO
2熱分解触媒の製造方法、CO
2熱分解方法、再生CO
2熱分解触媒の製造方法、及びCO
2熱分解触媒を提供する。
【解決手段】本発明の第一実施形態に係るCO
2熱分解触媒の製造方法は、化学式mNa
2O・SiO
2で表現される、1種以上のナトリウム珪酸化物を含む原材料を水に溶解させる工程と、原材料を溶解させた水溶液から水を蒸発させて、CO
2熱分解触媒であるnNa
2O・SiO
2を得る工程と、を備え、nを1.1~1.7の範囲内とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式mNa2O・SiO2で表現される、1種以上のナトリウム珪酸化物を含む原材料を水に溶解させる工程と、
前記原材料を溶解させた水溶液から前記水を蒸発させて、CO2熱分解触媒であるnNa2O・SiO2を得る工程と、
を備え、
前記nを1.1~1.7の範囲内とする
CO2熱分解触媒の製造方法。
【請求項2】
前記原材料に含まれる前記ナトリウム珪酸化物が、Na2SiO3、及びNa4SiO4の混合物であることを特徴とする請求項1に記載のCO2熱分解触媒の製造方法。
【請求項3】
前記原材料に含まれる前記ナトリウム珪酸化物が、前記nNa2O・SiO2であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
室温の、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたCO2熱分解触媒に、CO2を吸収させる工程と、
前記CO2を吸収させた前記CO2熱分解触媒を非酸化性ガス雰囲気中で加熱することにより、前記CO2を熱分解する工程と、
を備え、
前記CO2を吸収させる際に、前記CO2熱分解触媒の温度を450℃未満とし、
前記CO2を熱分解する際に、前記CO2熱分解触媒の加熱温度を450~700℃とする
CO2熱分解方法。
【請求項5】
前記CO2の熱分解によって生成した副生炭素が付着した前記CO2熱分解触媒を水に溶解させることにより、前記CO2熱分解触媒から前記副生炭素を分離する工程
をさらに備える請求項4に記載のCO2熱分解方法。
【請求項6】
請求項5に記載のCO2熱分解方法によって得られた、前記CO2熱分解触媒が溶解され、且つ前記副生炭素が混入した水溶液から前記副生炭素を除去する工程と、
前記副生炭素が除去された前記水溶液から前記水を蒸発させて、再生CO2熱分解触媒を得る工程と、
を備える再生CO2熱分解触媒の製造方法。
【請求項7】
室温の、請求項6に記載の製造方法によって得られた再生CO2熱分解触媒に、CO2を吸収させる工程と、
前記CO2を吸収した前記再生CO2熱分解触媒を非酸化性ガス雰囲気中で加熱することにより、前記CO2を熱分解する工程と、
を備え、
前記CO2を吸収させる際に、前記再生CO2熱分解触媒の温度を450℃未満とし、
前記CO2を熱分解する際に、前記再生CO2熱分解触媒の加熱温度を450~700℃とする
CO2熱分解方法。
【請求項8】
前記CO2の熱分解によって生成した副生炭素が付着した前記再生CO2熱分解触媒を水に溶解させることにより、前記再生CO2熱分解触媒から前記副生炭素を分離する工程
をさらに備える請求項7に記載のCO2熱分解方法。
【請求項9】
請求項8に記載のCO2熱分解方法によって得られた、前記再生CO2熱分解触媒が溶解され、且つ前記副生炭素が混入した水溶液から前記副生炭素を除去する工程と、
前記副生炭素が除去された前記水溶液から前記水を蒸発させて、再生CO2熱分解触媒を得る工程と、
を備える再生CO2熱分解触媒の製造方法。
【請求項10】
nNa2O・SiO2を含み、
前記nが1.1~1.7の範囲内であり、
前記nNa2O・SiO2は、化学式mNa2O・SiO2で表現される、1種以上のナトリウム珪酸化物を含む原材料を水に溶解させて得られた水溶液から、前記水を蒸発させることによって製造される
CO2熱分解触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2熱分解触媒の製造方法、CO2熱分解方法、再生CO2熱分解触媒の製造方法、及びCO2熱分解触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中の二酸化炭素(CO2)は増加の一途を辿っており、これが地球温暖化の一因であると言われて久しい。大気中のCO2を炭素(C)に分解(還元)することができれば、この問題解決の一助となると共に、分解したCを工業材料や燃料等の炭素源として使用できることから、工業的にも極めて有利である。従って、CO2を容易に吸収、及び分解することが可能な技術が求められている。また、触媒を用いてCO2を吸収及び分解する場合は、触媒の再利用が容易であることも求められる。
【0003】
特許文献1には、CO2を含んだCO2含有ガスをアルカリ珪酸化物に接触させて、アルカリ珪酸化物にCO2を吸収させ、このアルカリ珪酸化物を非酸化性雰囲気中で700℃以上1600℃以下に加熱してCO2を炭素に分解して、炭素を分離することによる、CO2を回収して炭素を分離する方法において、炭素を分離する工程を経た後のアルカリ珪酸化物を酸化雰囲気中で融点以上1600℃以下に加熱して、該アルカリ珪酸化物に残存した炭素を除去することを特徴とする、アルカリ珪酸化物の再生方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、アルカリ珪酸化物と石英ウールとが質量割合で50:1~1:10の比率となるようにし、かつ少なくとも一部で互いに接触させて反応系内に存在させ、これら反応系内材料を450℃以上650℃以下に加熱した状態で、CO2を含んだCO2含有ガスを接触させることで、該CO2含有ガス中のCO2を反応系内材料に吸収させる工程Aと、反応系内を非酸化性雰囲気にして450℃以上700℃以下に加熱することで、前記反応系内材料が吸収したCO2を炭素に分解する工程Bとを有することを特徴とする、CO2を吸収して炭素に分解する方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、アルカリ珪酸化物と石英ウールとが質量割合で1:40~1:6000の比率となるようにし、かつ少なくとも一部で互いに接触した状態で反応系内に存在させ、これら反応系内材料にCO2を含んだCO2含有ガスを接触させることで、該CO2含有ガス中のCO2を反応系内材料に吸収させる工程Aと、反応系内を非酸化性雰囲気にして350℃以上700℃以下に加熱することで、前記反応系内材料が吸収したCO2を炭素に分解する工程Bとを有することを特徴とする、CO2を吸収して炭素に分解する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-177339号公報
【特許文献2】特開2020-196653号公報
【特許文献3】特開2020-196654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、CO2を吸収して炭素に分解するための触媒として、珪酸ナトリウム(Na2O・nSiO2)が用いられている。珪酸ナトリウムは、水酸化ナトリウムとケイ砂とを混合し、溶融凝固させることにより製造されている。
【0008】
しかしながら、当該触媒を用いてCO2を分解する際には、大きな熱エネルギーが必要とされる。具体的には、特許文献1の技術では、CO2を分解するために、触媒であるアルカリ珪酸化物を非酸化性雰囲気中で700℃以上1600℃以下に加熱しなければならない。さらに、CO2分解後の当該触媒に付着した副生炭素を除去し、触媒を再生する際にも、大きな熱エネルギーが必要とされる。具体的には、特許文献1の技術では、アルカリ珪酸化物から副生炭素を除去するために、アルカリ珪酸化物を酸化雰囲気中で融点以上1600℃以下に加熱しなければならない。
【0009】
このように、特許文献1の技術においては、CO2の分解及び触媒の再生のために大きな熱エネルギーが必要とされる。特許文献1には、加熱なしにCO2を分解し、且つ熱溶融なしに再生可能なCO2分解触媒やCO2分解方法について、開示されていない。
【0010】
特許文献2の技術では、CO2を吸収して炭素に分解するための触媒として、アルカリ珪酸化物、特に好ましくはLiの珪酸化物とKの珪酸化物との混合物が用いられている。アルカリ珪酸化物は、水酸化カリウム及び/又は水酸化リチウムと珪砂とを混合し、溶融凝固させることにより製造されている。また、特許文献2の技術では、触媒及び石英ウールを反応系内で接触させる。特許文献2の技術では、触媒と石英ウールとの接触部においてCO2分解反応が促進される。
【0011】
しかしながら、特許文献2の技術では、石英ウールの使用が必須であるので、触媒を充填する容器のサイズを大きくする必要がある。また、特許文献2の技術では、CO2を吸収する際に、熱エネルギーが必要とされる。具体的には、特許文献2の技術では、CO2を吸収するために、触媒及び石英ウールの混合物を450~650℃まで加熱しなければならない。
【0012】
従って、特許文献2の技術においては、CO2の吸収のために熱エネルギーが必要とされる。さらに特許文献2の技術においては、CO2の吸収設備の大型化が避けられない。特許文献2には、石英ウールの使用を省略する方法、並びに加熱なしにCO2を吸収可能なCO2分解触媒、及びCO2分解方法について、開示されていない。
【0013】
特許文献3の技術では、CO2を吸収して炭素に分解するための触媒として、アルカリ珪酸化物が用いられている。アルカリ珪酸化物とは、例えばnが2.6~4.6のnNa2O・SiO2である。nNa2O・SiO2は、水酸化ナトリウムと珪砂とを混合し、溶融凝固させることにより製造されている。また、特許文献3の技術では、触媒及び石英ウールを反応系内で接触させる。特許文献3の技術では、触媒と石英ウールとの接触部においてCO2分解反応が促進される。
【0014】
しかしながら、特許文献3の技術では、石英ウールの使用が必須であるので、触媒を充填する容器のサイズを大きくする必要がある。従って、特許文献3の技術においては、CO2の吸収のために熱エネルギーが必要とされる。特許文献3には、石英ウールの使用を省略する方法について開示されていない。
【0015】
以上の事情に鑑みて本発明は、触媒を充填する容器のサイズを大型化することがなく、触媒製造段階でのCO2排出量を抑制し、且つ高効率でCO2を吸収及び分解可能なCO2熱分解触媒の製造方法、CO2熱分解方法、再生CO2熱分解触媒の製造方法、及びCO2熱分解触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0017】
(1)本発明の第一実施形態に係るCO2熱分解触媒の製造方法は、化学式mNa2O・SiO2で表現される、1種以上のナトリウム珪酸化物を含む原材料を水に溶解させる工程と、前記原材料を溶解させた水溶液から前記水を蒸発させて、CO2熱分解触媒であるnNa2O・SiO2を得る工程と、を備え、前記nを1.1~1.7の範囲内とする。
(2)上記(1)に記載のCO2熱分解触媒の製造方法では、好ましくは、前記原材料に含まれる前記ナトリウム珪酸化物が、Na2SiO3、及びNa4SiO4の混合物である。
(3)上記(1)に記載の製造方法では、好ましくは、前記原材料に含まれる前記ナトリウム珪酸化物が、前記nNa2O・SiO2である。
【0018】
(4)本発明の第二実施形態に係るCO2熱分解方法は、室温の、上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたCO2熱分解触媒に、CO2を吸収させる工程と、前記CO2を吸収させた前記CO2熱分解触媒を非酸化性ガス雰囲気中で加熱することにより、前記CO2を熱分解する工程と、を備え、前記CO2を吸収させる際に、前記CO2熱分解触媒の温度を450℃未満とし、前記CO2を熱分解する際に、前記CO2熱分解触媒の加熱温度を450~700℃とする。
(5)上記(4)に記載のCO2熱分解方法は、好ましくは、前記CO2の熱分解によって生成した副生炭素が付着した前記CO2熱分解触媒を水に溶解させることにより、前記CO2熱分解触媒から前記副生炭素を分離する工程をさらに備える。
【0019】
(6)本発明の第三実施形態に係る再生CO2熱分解触媒の製造方法は、上記(5)に記載のCO2熱分解方法によって得られた、前記CO2熱分解触媒が溶解され、且つ前記副生炭素が混入した水溶液から前記副生炭素を除去する工程と、前記副生炭素が除去された前記水溶液から前記水を蒸発させて、再生CO2熱分解触媒を得る工程と、を備える。
【0020】
(7)本発明の第四実施形態に係るCO2熱分解方法は、室温の、上記(6)に記載の製造方法によって得られた再生CO2熱分解触媒に、CO2を吸収させる工程と、前記CO2を吸収した前記再生CO2熱分解触媒を非酸化性ガス雰囲気中で加熱することにより、前記CO2を熱分解する工程と、を備え、前記CO2を吸収させる際に、前記再生CO2熱分解触媒の温度を450℃未満とし、前記CO2を熱分解する際に、前記再生CO2熱分解触媒の加熱温度を450~700℃とする。
(8)上記(7)に記載のCO2熱分解方法は、好ましくは、前記CO2の熱分解によって生成した副生炭素が付着した前記再生CO2熱分解触媒を水に溶解させることにより、前記再生CO2熱分解触媒から前記副生炭素を分離する工程をさらに備える。
【0021】
(9)本発明の第五実施形態に係る再生CO2熱分解触媒の製造方法は、上記(8)に記載のCO2熱分解方法によって得られた、前記再生CO2熱分解触媒が溶解され、且つ前記副生炭素が混入した水溶液から前記副生炭素を除去する工程と、前記副生炭素が除去された前記水溶液から前記水を蒸発させて、再生CO2熱分解触媒を得る工程と、を備える。
【0022】
(10)本発明の第六実施形態に係るCO2熱分解触媒は、nNa2O・SiO2を含み、前記nが1.1~1.7の範囲内であり、前記nNa2O・SiO2は、化学式mNa2O・SiO2で表現される、1種以上のナトリウム珪酸化物を含む原材料を水に溶解させて得られた水溶液から、前記水を蒸発させることによって製造される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、触媒を充填する容器のサイズを大型化することがなく、触媒製造段階でのCO2排出量を抑制し、且つ高効率でCO2を吸収及び分解可能なCO2熱分解触媒の製造方法、CO2熱分解方法、再生CO2熱分解触媒の製造方法、及びCO2熱分解触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】CO
2熱分解触媒の製造方法、CO
2熱分解方法、及び再生CO
2熱分解触媒の製造方法のフローチャートである。
【
図2A】水処理法によって得られた3.6Na
2O・SiO
2の電子顕微鏡写真である。
【
図2B】水処理法によって得られた3.6Na
2O・SiO
2の電子顕微鏡写真である。
【
図2C】水処理法によって得られた3.6Na
2O・SiO
2の電子顕微鏡写真である。
【
図3A】溶融凝固法によって得られた3.6Na
2O・SiO
2の電子顕微鏡写真である。
【
図3B】溶融凝固法によって得られた3.6Na
2O・SiO
2の電子顕微鏡写真である。
【
図3C】溶融凝固法によって得られた3.6Na
2O・SiO
2の電子顕微鏡写真である。
【
図4A】CO
2を吸収させ、当該CO
2を熱分解させた後の、水処理法によって得られた3.6Na
2O・SiO
2の外観写真である。
【
図4B】水処理法によって得られた3.6Na
2O・SiO
2に付着した副生炭素を採取した後の、PTFE製フィルタの外観写真である。
【
図5A】CO
2を吸収させ、当該CO
2を熱分解させた後の、溶融凝固法によって得られた3.6Na
2O・SiO
2の外観写真である。
【
図5B】溶融凝固法によって得られた3.6Na
2O・SiO
2に付着した副生炭素を採取した後の、PTFE製フィルタの外観写真である。
【
図6】CO
2吸収及び熱分解をしなかった、水処理法によって得られた3.6Na
2O・SiO
2の水溶液を濾過した後の、PTFE製フィルタの外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(1.CO
2熱分解触媒の製造方法)
本発明の第一実施形態に係るCO
2熱分解触媒の製造方法は、
図1に示されるように、
(S1)化学式mNa
2O・SiO
2で表現される、1種以上のナトリウム珪酸化物を含む原材料を水に溶解させる工程と、
(S2)原材料を溶解させた水溶液から水を蒸発させて、CO
2熱分解触媒であるnNa
2O・SiO
2を得る工程と、
を備え、nを1.1~1.7の範囲内とする。以下、第一実施形態に係る製造方法の技術思想について説明する。
【0026】
(CO2熱分解触媒の製造方法の技術思想)
本発明者は、CO2熱分解触媒の最適な製造方法について鋭意検討を重ねた。その結果、以下の知見を得た。
(A)水処理によって得られ、且つ化学成分がnNa2O・SiO2で表される触媒は、従来の溶融凝固法よりもはるかに多孔化されている。
(B)nNa2O・SiO2のnを1.1~1.7の範囲内にすることにより、触媒の製造段階におけるCO2排出量を低減し、さらに、触媒のCO2分解効率を一層向上させることができる。
【0027】
(A 水処理について)
本発明者は、化学式3.6Na2O・SiO2で表される珪酸ナトリウムからなるCO2熱分解触媒を、以下の2種類の方法により作成した。
(溶融凝固法)Na2CO3とSiO2とを混合して、温度1100℃のAr雰囲気中で溶融凝固させた。これにより得られた試料を粉砕して、触媒を得た。
(水処理法)溶融凝固法によって得られた試料を、さらに水に溶解させた。そして、水溶液の水を蒸発させた。試料を粉砕して、触媒を得た。
以下、nNa2O・SiO2を水に溶解させ、次いで水溶液の水を蒸発させる処理を「水処理」と称する。
【0028】
図2A、
図2B、及び
図2Cに、水処理法によって得られた3.6Na
2O・SiO
2の電子顕微鏡写真を示す。また、
図3A、
図3B、及び
図3Cに、水処理を行わない溶融凝固法によって得られた3.6Na
2O・SiO
2の一例の電子顕微鏡写真を示す。これらの写真を比較すると、水処理によって、極めて微細な孔が触媒に多数形成されていることがわかった。触媒の多孔化の度合いを定量評価することは困難であるが、文献等に基づいて本発明者が推測したところでは、溶融凝固法によって得られた3.6Na
2O・SiO
2の比表面積は0.1~0.9m
2/gの範囲内にあり、水処理法によって得られた3.6Na
2O・SiO
2の比表面積は50~500m
2/gの範囲内にあると考えられる。
【0029】
さらに本発明者は、これらのCO2熱分解触媒のCO2分解効率を比較した。まず、以下の手順で、CO2熱分解触媒にCO2を吸収させ、次いで、CO2を分解した。
【0030】
(CO2の吸収及び分解のための装置)
CO2の吸収及びCO2の分解は、同じ触媒分析装置(マイクロトラックベル製、BELCAT-A)を用いて実施した。ここでは、U字型の石英ガラスセルを使用した。触媒粉末は、石英ガラスセル内に充填した。触媒粉末充填部の形状は、本体の内径12.5mm、長さ50mmであった。充填した触媒粉末の重量は約1gであった。触媒粉末は、湿度5%のAr雰囲気に制御されたグローブボックス内で、石英ガラスセル内に充填した。石英ガラスセルの触媒粉末充填部は、ヒーターで加熱することができる。また、石英ガラスセルを装置に設置した後、設定した流量で、各ガスを石英ガラスセル内に流入させることができる。
【0031】
(CO2の吸収)
本装置を使用して、室温にて、反応ガス(ガス成分:5%CO2-95%He)を40ml/分で触媒粉末充填部に流通し、60分間保持した。CO2の吸収後に、CO2熱分解が充填されたU字の石英ガラスセルを装置から取り外した後、その重量を測定した。CO2吸収前後の重量差を、CO2熱分解触媒に吸収されたCO2の重量とみなした。
【0032】
(CO2の分解)
上述の手順にてCO2を吸収したCO2熱分解触媒が充填されたU字の石英ガラスセルを、再度触媒分析装置に取付け、Heを40ml/分の流量で流し、室温から550℃まで15℃/分で昇温し、550℃到達後に60分間保持した。保持終了後、炉冷した。十分に温度が下がったのを確認し、U字の石英ガラスセルを装置から取り外した後、充填された触媒粉末を石英ガラスセルから取り出した。
【0033】
上述の手順を経た触媒は、いずれも黒く変色した。変色は、触媒に吸収されたCO2が炭素に分解され、この炭素が触媒に付着することによって生じたものである。以下、CO2の分解によって発生した炭素を副生炭素と称する。
【0034】
次に、これらの触媒を純水に溶解させた。これによって得られた水溶液を、PTFE製フィルタを用いて吸引濾過した。これにより、PTFEフィルタには副生炭素が付着した。濾過前後のPTFE製フィルタの重量変化量を測定することにより、副生炭素の生成量を特定した。さらに、副生炭素の重量に(44/12)を乗じた値を、触媒が分解したCO2量(単位:g-CO2)とみなした。触媒が分解したCO2量を、触媒重量(単位:g-cat)及び分解作業の時間(単位:h)で割った値を、CO2分解効率(単位:g-CO2/g-cat・h)とみなした。結果を表1に示す。
【0035】
【0036】
水処理法によって得られた触媒のCO2分解効率は、溶融凝固法によって得られたサンプルの7倍近い値となった。水処理による3.6Na2O・SiO2の多孔化は、CO2分解効率を飛躍的に向上させる効果を有することが、本実験によって確認された。なお、参考のために、水処理法によって製造され、かつCO2を吸収させなかった触媒に対しても濾過処理を行ったところ、PTFEフィルタの重量は変化しなかった。従って、PTFE製フィルタには触媒が残らないことも確認された。
【0037】
(B 触媒組成について)
水処理によって3.6Na2O・SiO2のCO2吸収効率及び分解効率が飛躍的に向上することを、本発明者は見出した。しかしながら、3.6Na2O・SiO2には、製造段階でのCO2排出量が大きいという問題点がある。CO2排出量が増大する原因の一つは、3.6Na2O・SiO2の原材料としてNa2CO3が用いられている点にある。Na2CO3とSiO2との混合物を溶融凝固させる際に、CO2が排出される。CO2排出量が増大するもう一つの原因は、原材料を溶融凝固させるために熱エネルギーが投入される点にある。
【0038】
上述の問題点を解消するために、本発明者は一層の検討を重ねた。その結果、触媒組成をnNa2O・SiO2(1.1≦n≦1.7)とすることにより、触媒の製造を容易とし、製造段階でのCO2排出量を抑制し、さらにCO2分解効率を一層高められることを本発明者は知見した。
【0039】
nNa2O・SiO2(1.1≦n≦1.7)の製造にあたっては、Na2SiO3(メタ珪酸ナトリウム)及びNa4SiO4(オルト珪酸ナトリウム)を原材料として用いることができる。Na2SiO3は、n=1のnNa2O・SiO2であり、Na4SiO4は、n=2のnNa2O・SiO2である。両者を任意の重量比で混合することにより、nNa2O・SiO2におけるnを、1以上2以下の範囲内で自由に調整することができる。これらの珪酸ナトリウムは、Cを含まないので、CO2を排出しない。
【0040】
また、Na2SiO3及びNa4SiO4を触媒の原材料として用いる場合、これらの混合物を溶融凝固させてから水処理をする必要はない。これらの混合物に対して水処理を行うことにより、多孔化されたnNa2O・SiO2(1.1≦n≦1.7)が得られるのである。Na2SiO3及びNa4SiO4を触媒の原材料として用いる場合、原材料から触媒を製造する段階での熱エネルギーが不要となる。
【0041】
以上説明されたように、nNa2O・SiO2(1.1≦n≦1.7)の製造段階でのCO2排出量は、3.6Na2O・SiO2よりもはるかに小さい。加えて、本発明者が調査した結果、nが1.1以上1.7の範囲内にあるnNa2O・SiO2のCO2分解効率は、表1に示される、水処理法によって得られた3.6Na2O・SiO2よりも優れていた。成分組成がCO2分解効率に及ぼす影響を示す実験結果は、後述される。
【0042】
以上の知見に基づき、本発明者は第一実施形態に係るCO2熱分解触媒の製造方法を得た。以下に、第一実施形態に係るCO2熱分解触媒の製造方法の詳細について説明する。
【0043】
(S1 溶解)
(S2 蒸発)
第一実施形態に係る製造方法では、まず、化学式mNa2O・SiO2で表現される、1種以上のナトリウム珪酸化物を含む原材料を水に溶解させて、水溶液を得る。
【0044】
原材料に含まれるナトリウム珪酸化物の好適な一例は、Na2SiO3、及びNa4SiO4の混合物である。Na2SiO3は、1Na2O・SiO2と表記することができる。Na4SiO4は、2Na2O・SiO2と表記することができる。従って、Na2SiO3、及びNa4SiO4はいずれも、化学式mNa2O・SiO2で表現されるナトリウム珪酸化物の一種である。
【0045】
原材料に含まれるナトリウム珪酸化物の別例は、nNa2O・SiO2である。この場合、CO2熱分解触媒の原材料の成分と、CO2熱分解触媒の成分とは同一である。例えば、後述する再生CO2熱分解触媒の製造方法は、原材料としてnNa2O・SiO2を用いるCO2熱分解触媒の製造方法に該当する。
【0046】
また、原材料が、3種類以上のナトリウム珪酸化物を含んでもよい。例えばNa2SiO3、及びNa4SiO4と、後述する副生炭素の分離が行われたCO2熱分解触媒との混合物を、原材料としてもよい。
【0047】
加えて、上述した3.6Na2O・SiO2などの、mが1.7超のmNa2O・SiO2を、原材料の一部として用いることもできる。mが1.7超のmNa2O・SiO2と、mが十分に小さいmNa2O・SiO2との混合物を含む原材料から、1.1≦n≦1.7であるnNa2O・SiO2を得ることができる。従って、原材料に含まれるmNa2O・SiO2において、mの値は0超の任意の値とすることができる。
【0048】
次いで、原材料を溶解させた水溶液から水を蒸発させる。先行技術、例えば上述の先行技術文献1~3に記載の技術においては、原材料を加熱して溶融させ、次いで凝固させることにより、触媒を製造している。表1の実験で用いられた3.6Na2O・SiO2も、溶融凝固を経て製造される。しかし第一実施形態に係る製造方法では、原材料を溶融させる代わりに、原材料を水に溶解させ、次いで水を蒸発させる処理、即ち水処理を行う。
【0049】
(nNa2O・SiO2の組成)
第一実施形態に係る製造方法によって得られる触媒は、nが1.1~1.7のnNa2O・SiO2である。換言すると、nを1.1~1.7の範囲内とするように、1種以上のナトリウム珪酸化物の組成及び混合比が選択される。nが1.1未満である場合、CO2の吸収能が不足する。また、nが1.1未満である場合、後述する方法によってCO2を炭素に分解することが困難である。一方、nが1.7超である場合も、後述する方法によってCO2を炭素に分解することが困難である。nの下限値を1.2、1.3、又は1.4としてもよい。nの上限値を1.6、又は1.5としてもよい。
【0050】
原材料に含まれる1種以上のナトリウム珪酸化物の組成及び混合比は、計算により容易に選択することができる。原材料における、1種以上のナトリウム珪酸化物mNa2O・SiO2に含まれるNa及びSiの総モル数をそれぞれ「MNa」及び「MSi」と定義した場合、当該原材料から得られるnNa2O・SiO2の「n」は、下記式によって得られる値と実質的に同じ値となるからである。
n=(MNa÷2)÷MSi
例えば、原材料に含まれるナトリウム珪酸化物がNa2SiO3及びNa4SiO4の混合物であり、Na2SiO3及びNa4SiO4のモル比M(=MNa2SiO3/MNa4SiO4)が0.43である場合、n=1.7のnNa2O・SiO2が得られる。原材料に含まれるナトリウム珪酸化物がNa2SiO3及びNa4SiO4の混合物であり、Na2SiO3及びNa4SiO4のモル比Mが8.93である場合、n=1.1のnNa2O・SiO2が得られる。原材料に含まれるナトリウム珪酸化物が3種類以上である場合にも、上記計算式を用いることにより、nNa2O・SiO2(1.1≦n≦1.7)を得ることができる混合比を容易に選択することができる。原材料が、mNa2O・SiO2以外の成分を含む場合であっても、所望のnを得るための適切な組成及び混合比を適宜選択することができる。
【0051】
(その他の構成)
原材料の水処理のために用いられる水は、例えば一般的な工業用精製水とすることができる。水の純度は高いほど好ましいが、水が若干の不純物を含むことは許容される。水と同様にNa2SiO3及びNa4SiO4の純度も高いほど好ましいが、これらが若干の不純物を含むことは許容される。また、触媒の作用が失われない範囲内で、Na2SiO3及びNa4SiO4以外の物質を水に溶解させてもよい。
【0052】
なお、先行技術においては、Na以外のアルカリ金属から構成されるアルカリ珪酸化物をCO2熱分解触媒として用いる場合がある。例えば先行技術文献1~3においては、アルカリ珪酸化物をリチウム珪酸化物、及びカリウム珪酸化物とする旨が開示されている。しかし本発明者が確認した限りでは、水処理によって得られたリチウム珪酸化物、及びカリウム珪酸化物は、CO2熱分解触媒としての効果を発揮しなかった。具体的には、水処理によって得られた4.4K2O・SiO2は、室温においてCO2を吸収する作用を有しておらず、また、CO2を分解する作用も有していなかった。また、水処理によって得られた3.4Li2O・SiO2は、室温においてCO2を吸収する作用を有していたが、CO2を分解する作用を有していなかった。また、3.4Li2O・SiO2は難水溶性であるので、これに後述する再生CO2熱分解触媒の製造方法を適用することは困難であった。しかしながら、組成を最適化することにより、水処理されたリチウム珪酸化物又はカリウム珪酸化物をCO2熱分解触媒として使用できる可能性はあると推定される。また、複数のアルカリ珪酸化物の混合物、(例えば、ナトリウム珪酸化物とカリウム珪酸化物の混合物や、リチウム珪酸化物とカリウム珪酸化物の混合物)を水処理することでCO2熱分解触媒として使用できる可能性もあると推定される。
【0053】
原材料の水処理の際に、特段の熱処理は不要である。触媒のCO2排出原単位を低減する観点から、水処理は室温で行われることが好ましい。室温とは、外部系から加熱も冷却もしていない状態にある雰囲気の温度のことである。一方、例えば原材料の溶解を促進したり、水を蒸発させるための時間を短縮したりするために、水及び/又は水溶液を加熱してもよい。
【0054】
(2.CO
2熱分解方法)
本発明の第二実施形態に係るCO
2熱分解方法は、
図1に示されるように、
(S3)室温の、第一実施形態に係る製造方法によって得られたCO
2熱分解触媒に、CO
2を吸収させる工程と、
(S4)CO
2を吸収させたCO
2熱分解触媒を非酸化性ガス雰囲気中で加熱することにより、CO
2を熱分解する工程と、
を備え、CO
2を吸収させる際に、CO
2熱分解触媒の温度を450℃未満とし、CO
2を熱分解する際に、CO
2熱分解触媒の加熱温度を450~700℃とする。以下、第二実施形態に係る方法について詳細に説明する。
【0055】
(S3 吸収)
第二実施形態に係るCO2熱分解方法では、まず、CO2熱分解触媒にCO2を吸収させる。CO2熱分解触媒は、上述した第一実施形態に係る製造方法によって得られるものとされる。また、CO2をCO2熱分解触媒に吸収させる際に、CO2熱分解触媒の温度を450℃未満とする。CO2を吸収する際の使用エネルギーを削減する観点からは、CO2をCO2熱分解触媒に吸収させる際のCO2熱分解触媒の温度は、低いほど好ましい。当該温度は好適には400℃以下、250℃以下、150℃以下、100℃以下、又は室温である。第一実施形態に係る製造方法によって得られるCO2熱分解触媒は、450℃以下の低い温度下においても、活発にCO2を吸収する効果を発揮する。
【0056】
(S4 加熱)
第二実施形態に係るCO2熱分解方法では、次に、CO2熱分解触媒に吸収させたCO2を熱分解する。CO2の熱分解は、CO2を吸収させたCO2熱分解触媒を、非酸化性ガス雰囲気中で加熱することにより行われる。これにより、CO2を副生炭素として固定することができる。非酸化性雰囲気とは例えば、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスの雰囲気や窒素雰囲気等である。
【0057】
(加熱温度)
CO2を熱分解する際に、CO2熱分解触媒の加熱温度を450~700℃とする。加熱温度が450℃未満である場合、熱分解反応が生じない。一方、加熱温度が700℃超である場合、CO2熱分解触媒の一部または全部が溶融する。例えば先行技術文献1に示されるような、原材料を溶融凝固させることによって製造されるCO2熱分解触媒を用いるCO2熱分解方法では、熱分解を700℃以上で行うことが通常である。一方、第二実施形態に係るCO2熱分解方法では、CO2熱分解触媒を溶融させないことが好ましい。CO2を熱分解する際のCO2熱分解触媒の加熱温度を480℃以上、500℃以上、又は550℃以上としてもよい。CO2を熱分解する際のCO2熱分解触媒の加熱温度を680℃以下、650℃以下、又は600℃以上としてもよい。
【0058】
(S5 溶解)
CO2を熱分解することによって、副生炭素が生じる。副生炭素は、CO2熱分解触媒に付着する。第二実施形態に係るCO2熱分解方法は、CO2熱分解触媒から副生炭素を分離する工程をさらに備えてもよい。
【0059】
副生炭素の分離は、副生炭素が付着したCO2熱分解触媒を水に溶解させることによって実施可能である。第二実施形態に係るCO2熱分解方法において用いられる触媒は易水溶性である一方で、副生炭素は水に溶解しないからである。これにより、CO2熱分解触媒が溶解され、且つ副生炭素が混入した水溶液が得られる。この水溶液は、後述する再生CO2熱分解触媒の製造方法において、触媒の原材料として用いることができる。
【0060】
(その他の構成)
副生炭素をCO2熱分解触媒から分離する際に、CO2熱分解触媒を溶融させたり、CO2熱分解触媒を溶解させる水を加熱したりする必要はない。一方、溶解を促進するために水を加熱してもよい。副生炭素を分離するための水は、例えば一般的な工業用精製水とすることができる。水の純度は高いほど好ましいが、水が若干の不純物を含むことは許容される。
【0061】
CO2熱分解触媒を、他の物質に担持させたり、他の物質と混合させたりしてもよい。例えば、CaO、Na2O等のアルカリ元素の酸化物やアルカリ土類元素の酸化物をnNa2O・SiO2と共に用いるようにしてもよい。しかしながら、第二実施形態に係るCO2熱分解方法では、CO2熱分解触媒を他の物質と混合させることなく反応系内に配置することが最も好ましい。これにより、触媒を充填する容器のサイズを小型化することができる。また、第二実施形態に係るCO2熱分解方法では、触媒を他の物質と混合させることなく、高効率でCO2を分解することができる。
【0062】
CO2の分解を行うための非酸化性雰囲気は特に限定されない。例えば上述された、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスの雰囲気や窒素雰囲気等を、非酸化性雰囲気として採用することができる。使用する非酸化性ガスの純度としては、一般的なガスボンベの純度、例えば、99.99%程度で十分である。このような純度があれば、加熱する際に用いる加熱炉などの一般的な加熱装置に収容される反応装置内において、生成した炭素が酸化することを実質的に無視することができる。なお、非酸化性ガスの流量としては特に制限はなく、経済的な観点から少量で構わない。例えば、加熱による反応装置内での圧力の上昇・破損を防ぐ目的から、ガスフロー系にて本発明を実施する場合は、排気管から非酸化性ガスが逆流しない流量であればよく、この流量として、数10mL~数10L/分程度、好ましくは、100mL~2L/分程度の流量を示すことができる。
【0063】
CO2の分解の際の昇温速度は特に制限されないが、例えば、一般に使用される通常の加熱炉の昇温速度である1~40℃/分を選択でき、好ましくは、10~20℃/分であるのがよい。また、それぞれの加熱における最高温度到達後の保持時間についても特に制限はない。経済的な観点から短時間の保持時間を選択し、例えば、1~180分、好ましくは、10~60分程度で十分である。更には、最高温度到達後の冷却速度についても同様に制限されず、最高到達温度での保持時間が終了した後、直ちに加熱を止めて、装置の自然冷却に任せてよく、もし、装置の構造上から冷却速度に制約があれば、それに従ってもよい。
【0064】
(3.再生CO
2熱分解触媒の製造方法)
本発明の第三実施形態に係る再生CO
2熱分解触媒の製造方法は、
図1に示されるように、
(S6)第二実施形態に係るCO
2熱分解方法及び副生炭素の分離方法によって得られた、CO
2熱分解触媒が溶解され、且つ副生炭素が混入した水溶液から副生炭素を除去する工程と、
(S7)副生炭素が除去された水溶液から水を蒸発させて、再生CO
2熱分解触媒を得る工程と、
を備える。以下、第二実施形態に係る方法について詳細に説明する。なお、第一実施形態に係る製造方法によって得られるCO
2熱分解触媒と区別するために、便宜的に、第三実施形態に係る製造方法によって得られる触媒は再生CO
2熱分解触媒と称される。
【0065】
(S6 炭素除去)
本発明の第三実施形態に係る再生CO2熱分解触媒の製造方法では、まず、CO2熱分解触媒が溶解され、且つ副生炭素が混入した水溶液から、副生炭素を除去する。この水溶液は、上述した、CO2熱分解方法の一層好ましい態様によって得られたものとされる。水溶液から副生炭素を除去する方法は特に限定されない。例えばPTFE製のフィルタを用いて水溶液をろ過することにより、副生炭素を容易に除去することができる。
【0066】
(S7 蒸発)
本発明の第三実施形態に係る再生CO2熱分解触媒の製造方法では、次に、副生炭素が除去された水溶液から水を蒸発させる。これにより、再生CO2熱分解触媒を得ることができる。従って、第一実施形態に係るCO2熱分解触媒の製造方法において行われた水処理が、第三実施形態に係る再生CO2熱分解触媒の製造方法においても行われる。第三実施形態に係る製造方法によって得られた再生CO2熱分解触媒は、第一実施形態に係る製造方法によって得られたCO2熱分解触媒と同様に、良好なCO2分解特性を発揮する。
【0067】
(その他の構成)
再生CO2熱分解触媒の製造の際に、特段の熱処理は不要である。触媒のCO2排出原単位を低減する観点から、水処理は室温で行われることが好ましい。一方、水を蒸発させるための時間を短縮したりするために、水溶液を加熱してもよい。
【0068】
(4.再生CO
2熱分解触媒を用いた、CO
2熱分解方法)
本発明の第四実施形態に係るCO
2熱分解方法は、
図1に示されるように、室温の、第三位実施形態に係る製造方法によって得られた再生CO
2熱分解触媒に、CO
2を吸収させる工程と、CO
2を吸収した再生CO
2熱分解触媒を非酸化性ガス雰囲気中で加熱することにより、CO
2を熱分解する工程と、を備え、CO
2を吸収させる際に、再生CO
2熱分解触媒の温度を450℃未満とし、CO
2を熱分解する際に、再生CO
2熱分解触媒の加熱温度を450~700℃とする。本発明の第四実施形態に係るCO
2熱分解方法は、CO
2の熱分解によって生成した副生炭素が付着した再生CO
2熱分解触媒を水に溶解させることにより、再生CO
2熱分解触媒から副生炭素を分離する工程をさらに備えてもよい。
【0069】
第四実施形態に係るCO2熱分解方法は、再生CO2熱分解触媒を用いる点においてのみ、第二実施形態に係るCO2熱分解方法とは異なるが、その他の構成は同一である。第三実施形態に係る製造方法によって得られた再生CO2熱分解触媒は、第一実施形態に係る製造方法によって得られたCO2熱分解触媒と同一の作用効果を有する。そのため、再生CO2熱分解触媒は、CO2熱分解触媒と全く同じように利用することができる。
【0070】
(5.再生CO
2熱分解触媒を用いた、再生CO
2熱分解触媒の製造方法)
本発明の第五実施形態に係る再生CO
2熱分解触媒の製造方法は、
図1に示されるように、第四実施形態に係るCO
2熱分解方法及び副生炭素の分離方法によって得られた、再生CO
2熱分解触媒が溶解され、且つ副生炭素が混入した水溶液から副生炭素を除去する工程と、副生炭素が除去された水溶液から水を蒸発させて、再生CO
2熱分解触媒を得る工程と、を備える。
【0071】
第五実施形態に係る再生CO2熱分解触媒の製造方法は、出発物質として再生CO2熱分解触媒を用いる点においてのみ、第三実施形態に係る再生CO2熱分解触媒の製造方法とは異なるが、その他の構成は同一である。第三実施形態に係る製造方法によって得られた再生CO2熱分解触媒は、第一実施形態に係る製造方法における原材料と同じく易水溶性である。また、上述した一連の工程において、触媒の組成比は変化しない。そのため、再生CO2熱分解触媒は、CO2熱分解触媒の原材料と全く同じように利用することができる。
【0072】
(6.CO2熱分解触媒)
第六実施形態に係るCO2熱分解触媒は、nNa2O・SiO2を含み、nが1.1~1.7の範囲内であり、化学式mNa2O・SiO2で表現される、1種以上のナトリウム珪酸化物を含む原材料を水に溶解させて得られた水溶液から、水を蒸発させることによって製造される。以下、第六実施形態に係るCO2熱分解触媒について詳細に説明する。
【0073】
第六実施形態に係るCO2熱分解触媒は、nNa2O・SiO2と表現されるNaケイ酸塩から構成される。nは1.1~1.7の範囲内とされる。nが1.1未満である場合、CO2の吸収能が不足する。また、nが1.1未満である場合、CO2を炭素に分解することが困難である。一方、nが1.7超である場合も、CO2を炭素に分解することが困難である。nの下限値を1.2、1.3、又は1.4としてもよい。nの上限値を1.6、又は1.5としてもよい。CO2熱分解触媒は、触媒としての作用が失われない範囲内で、不純物を含んでもよいし、また、nNa2O・SiO2以外の物質が添加されていてもよい。
【0074】
また、第六実施形態に係るCO2熱分解触媒に含まれるnNa2O・SiO2は、化学式mNa2O・SiO2で表現される、1種以上のナトリウム珪酸化物を含む原材料を水に溶解させて得られた水溶液から、水を蒸発させることによって製造されたものである。水溶液の好適な例は、以下に挙げる水溶液A又はBである。
・水溶液A:Na2SiO3、及びNa4SiO4を水に溶解させて得られた水溶液
・水溶液B:nNa2O・SiO2を水に溶解させて得られた水溶液
【0075】
水溶液Aは、例えば第一実施形態に係るCO2熱分解触媒の製造方法における原材料の好適例として挙げられた、Na2SiO3(メタ珪酸ナトリウム)、及びNa4SiO4(オルト珪酸ナトリウム)を水に溶解させたものである。水溶液Bは、例えば第二実施形態に係るCO2熱分解方法を実施し、次いで副生炭素を水溶液から除去することによって得られたものである。いずれの水溶液からも、第六実施形態に係るCO2熱分解触媒を好適に得ることができる。もっとも、第一実施形態に係るCO2熱分解触媒の製造方法において説明されたように、mが0超の値である任意のmNa2O・SiO2を、第六実施形態に係るCO2熱分解触媒の原材料として用いることができる。
【0076】
なお、第六実施形態に係るCO
2熱分解触媒に含まれるnNa
2O・SiO
2(1.1≦n≦1.7)は、
図2A~
図2Cに示される3.6Na
2O・SiO
2と同様に、極めて微細な孔が多数形成された多孔質構造を有する蓋然性が高い。第六実施形態に係るCO
2熱分解触媒は、
図2A~
図2Cに示される3.6Na
2O・SiO
2と同様に水処理法によって製造され、しかも、3.6Na
2O・SiO
2よりも高いCO
2分解効率を発揮しているからである。
【0077】
しかしながら、第六実施形態に係るCO
2熱分解触媒が有する特有の多孔質形状を、物の構造又は特性により直接特定することは不可能、又は非実際的である。
図2A~
図2Cに示されるように、水処理法によって製造されたnNa
2O・SiO
2は入り組んだ構造を有している。また、
図2A~
図2Cに示されるように、水処理法によって製造されたnNa
2O・SiO
2に形成される孔の形状及びサイズは千差万別である。従って、電子顕微鏡による表面観察、及びX線回折のような構造解析を行ったとしても、孔の平均円相当径及び個数密度等といった多孔質体の構成を定量的に評価することは、極めて困難である。また、本発明者はnNa
2O・SiO
2の比表面積がCO
2吸収能に強い影響を及ぼしていると推定しているが、nNa
2O・SiO
2の比表面積を特定することもまた、極めて困難である。第六実施形態に係るCO
2熱分解触媒に適切な測定及び解析の手段は、現時点において存在しない。仮に、nNa
2O・SiO
2の試料を切断し内部を表出させるなどして、当該内部における孔の存在状態を測定し得たとしても、その特定の試料の微視的な状態が判明するだけである。そのような困難な操作と測定を多数回繰り返し、統計的処理を行い、上記した特徴を特定する指標を見いだすには、著しく多くの試行錯誤を重ねることが必要であり、およそ実際的ではない。従って、第六実施形態に係るCO
2熱分解触媒においては、nNa
2O・SiO
2の構成が、その製造方法によって特定される。
【0078】
(作用効果)
本実施形態に係るCO2熱分解触媒の製造方法では、炭酸塩等のCO2を排出するような原材料を用いる必要はなく、また、原材料を溶融させるための熱エネルギーも必要ではないので、触媒製造段階でのCO2排出量が抑制される。加えて、本実施形態に係るCO2熱分解触媒の製造方法では、水処理法によって、触媒のCO2分解効率が飛躍的に高められる。加えて、本実施形態に係るCO2熱分解方法においては、触媒物質を他の物質、例えば石英ウール等と混合させる必要が無いので、触媒を充填する容器のサイズを大型化する必要が無い。
【実施例0079】
実施例により本発明の一態様の効果を更に具体的に説明する。ただし、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例に過ぎない。本発明は、この一条件例に限定されない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限り、種々の条件を採用し得る。
【0080】
Na2SiO3、及び/又はNa4SiO4を含む原材料を水に溶解させる工程と、原材料を溶解させた水溶液から水を蒸発させて、CO2熱分解触媒であるnNa2O・SiO2を得る工程とを含む製造方法によって、Na2OとSiO2との比率を相違させた種々の粉末状のCO2熱分解触媒を製造した。次に、CO2熱分解触媒にCO2を吸収させ、さらに、当該CO2を分解した。CO2の吸収及び分解は、上述した表1の実験と同じ手順で行った。
【0081】
次に、これらの触媒を純水に溶解させた。これによって得られた水溶液を、PTFE製フィルタを用いて吸引濾過した。これにより、PTFEフィルタには副生炭素が付着した。濾過前後のPTFE製フィルタの重量変化量を測定することにより、副生炭素の生成量を特定した。さらに、副生炭素の重量に(44/12)を乗じた値を、触媒が分解したCO2量(単位:g-CO2)とみなした。触媒が分解したCO2量を、触媒重量(単位:g-cat)及び分解作業の時間(単位:h)で割った値を、CO2分解効率(単位:g-CO2/g-cat・h)とみなした。
【0082】
また、参考のために、CO2を吸収させる際に触媒を通過したガスの成分を分析した。ガスに含まれるCO2の濃度の経時変化に基づいて、触媒がCO2吸収効果を発揮しているか否かを確認した。加えて、CO2を吸収させる作業の前後の触媒重量を測定することにより、触媒がCO2吸収効果を発揮しているか否かを確認した。
【0083】
実験結果を表2に示す。
【0084】
【0085】
n=1の触媒(Na2O・SiO2)は、Na2SiO3のみに対して水処理をすることにより得られたものである。n=1の触媒では、加熱後も黒色化が全く生じなかった。従って、n=1の触媒は、CO2を分解する効果を全く発揮しなかったと推定される。以上の理由により、n=1の触媒に関する副生炭素量の測定は省略した。なお、ガス成分の分析結果によれば、n=1の触媒は、CO2を吸収する効果もほとんど発揮しなかった。
【0086】
n=2の触媒(2Na2O・SiO2)は、Na4SiO4のみに対して水処理をすることにより得られたものである。n=2の触媒では、加熱後に若干の黒色化が生じた。しかしながら、加熱後のn=2の触媒は凝集固化された状態をなしており、石英管から取り出すことができなかった。加えて、加熱後のn=2の触媒の一部は、石英管と反応していた。以上の理由により、n=2の触媒に関する副生炭素量の測定は省略した。
【0087】
なお、ガス成分の分析結果等によれば、n=2の触媒はCO2吸収効果を発揮していた。また、n=2の触媒の一部では、加熱後に若干の黒色化が生じていた。従って、n=2の触媒は、CO2の分解効果も発揮していた。しかしながら、上述の通り著しい凝集固化、及び石英管との反応が生じていたので、n=2の触媒は、再利用可能なものではなかった。
【0088】
n=1.75の触媒(1.75Na2O・SiO2)は、Na2SiO3及びNa4SiO4のモル比率(Na2SiO3/Na4SiO4)を0.33とした混合物に対して水処理をすることにより得られたものである。n=1.75の触媒は、ガス成分の分析結果等によれば、CO2吸収効果を発揮していた。しかしながら、n=1.75の触媒では、加熱後に黒色化が生じていなかった。従って、n=1.75の触媒は、CO2の分解効果を発揮していなかった。加えて、加熱後のn=1.75の触媒は凝集固化された状態をなしており、石英管から取り出すことができなかった。以上の理由により、n=1.75の触媒に関する副生炭素量の測定は省略した。
【0089】
n=1.3の触媒(1.3Na2O・SiO2)は、Na2SiO3及びNa4SiO4のモル比率を2.4とした混合物に対して水処理をすることにより得られたものである。n=1.5の触媒(1.5Na2O・SiO2)は、Na2SiO3及びNa4SiO4のモル比率を1.0とした混合物に対して水処理をすることにより得られたものである。これらの触媒は、加熱後も粉体形状を維持していた。また、これらの触媒に濾過処理を行ったところ、副生炭素が回収された。従って、これらの触媒は、CO2の吸収効果及び分解効果を発揮していた。
【0090】
(比較例)
比較例として、特許文献3にある、石英ウールが接触した溶融凝固法により得られた3.6Na2O・SiO2のCO2熱分解結果を示す。
【0091】
溶融凝固法で合成した3.6Na2O・SiO2の粉末の0.1gを秤量し、石英製の反応皿の内面に塗布した。次いで、3.6Na2O・SiO2を塗布した反応皿に石英ウール20gを装入し、塗布した3.6Na2O・SiO2に石英ウールが接触するようにして反応系内材料とし、反応皿ごと石英管からなる反応容器内に配した。ここで石英ウールとしては市販品(東ソー社製石英ウール、ファイン)を使用し、直径2~6μm、長さは数10mmであるが、反応系内材料として挿入する際に、一部は折れて数~数10mm程度の長さとなる。
【0092】
反応系材料が装入された反応容器については、一方の端部にガス供給用のガス導入管が接続され、他方の端部にはガス排出用のガス排出管が接続されている。このうち、ガス導入管の上流側は二股に分かれており、CO2含有ガスを供給するCO2供給管とヘリウムガスを供給するヘリウム供給管とが、それぞれバルブを介して接続されている。そして、この反応容器は加熱炉に入れられて、反応容器に装入された反応皿内の反応系材料が所定の温度に加熱できるようになっており、CO2吸収および分解の反応装置を構成している。
【0093】
このような反応装置において、まず、反応系内材料が装入された反応皿を有する反応容器に対して、室温にて、CO2供給管から100%濃度のCO2ガスを10ml/分の流量で2時間流通させた後、CO2供給管からのCO2ガスの供給を止めた。次に、反応容器内から反応皿を取り外して秤量したところ、約0.011gのCO2が反応系内材料に吸収された。
【0094】
次に、この反応皿を素早く反応容器内に装入して、ヘリウム供給管からヘリウムガスを20ml/分の流量で流通させながら、反応容器を350℃に加熱し、その温度で60分間保持し、その後、自然冷却した。
【0095】
自然冷却した反応容器から反応系内材料が収容された反応皿を取り出し、反応皿から石英ウールを取り出し、3.6Na2O・SiO2の表面が黒色化しているのを確認した。次に、小型のスパチュラで反応皿の内面の3.6Na2O・SiO2表面に析出していた黒色物のかなりの部分、約0.0006gを掻き出した。このようにして回収した黒色物を燃焼赤外線吸収法で炭素分析したところ、90%以上が炭素であった。
【0096】
ここで、副生炭素の重量に(44/12)を乗じた値を、触媒が分解したCO2量(単位:g-CO2)とみなした。触媒が分解したCO2量を、触媒重量(単位:g-cat)及び分解作業の時間で(単位:h)割った値を、CO2分解効率(単位:g-CO2/g-cat・h)とみなすと、CO2分解効率は0.0220g-CO2/g-cat・hと算出された。
【0097】
本発明例の触媒のCO2分解効率は、特許文献3の石英ウールが接触した溶融凝固法により得られた3.6Na2O・SiO2のCO2分解効率よりも高かった。加えて、これらの触媒のCO2分解効率は、表1に示される、水処理法によって得られた3.6Na2O・SiO2の分解効率(0.0243g-CO2/g-cat・h)よりも高かった。従って、これらの触媒は、CO2分解効率及び製造段階でのCO2排出量の両方に関して、3.6Na2O・SiO2よりも優れていた。