(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049577
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/12 20060101AFI20240403BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B01J19/12 C
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155873
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 公人
(72)【発明者】
【氏名】日野 弘喜
(72)【発明者】
【氏名】前田 晶子
【テーマコード(参考)】
4C058
4G075
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK23
4C058KK26
4G075AA22
4G075AA30
4G075AA61
4G075BA04
4G075BB10
4G075CA33
4G075DA02
4G075EB33
4G075EC09
4G075ED13
4G075FA03
4G075FB02
4G075FC04
(57)【要約】
【課題】発光素子の数を少なくしても、紫外線の照射領域を実質的に大きくすることができる紫外線照射装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る紫外線照射装置は、箱状を呈する筐体と;前記筐体の内部に設けられ、処理対象物を載置可能な載置部と;前記筐体の内部に設けられ、第1の方向において、前記載置部と対向し、前記載置部側に紫外線を照射可能な発光素子を有する照射部と;前記筐体の内部に設けられ、前記第1の方向と直交する第2の方向において、前記照射部の位置を移動させる移動部と;を具備している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状を呈する筐体と;
前記筐体の内部に設けられ、処理対象物を載置可能な載置部と;
前記筐体の内部に設けられ、第1の方向において、前記載置部と対向し、前記載置部側に紫外線を照射可能な発光素子を有する照射部と;
前記筐体の内部に設けられ、前記第1の方向と直交する第2の方向において、前記照射部の位置を移動させる移動部と;
を具備した紫外線照射装置。
【請求項2】
前記筐体の内部に設けられ、前記載置部を支持する一対の支持部をさらに具備し、
前記第1の方向において、前記一対の支持部は、所定の間隔をあけて複数組設けられている請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記載置部は、金網状を呈している請求項1または2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記筐体の内部に設けられ、板状を呈し、前記載置部が設けられる空間と、前記照射部が設けられる空間と、を仕切り、前記紫外線を透過可能な仕切り部をさらに具備した請求項1または2に記載の紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線を照射する発光ダイオードなどの発光素子を備えた紫外線照射装置がある。従来においては、この様な紫外線照射装置は、例えば、紫外線硬化型のインク、塗料、接着剤などの硬化、材料の表面改質、液晶の光配向などに用いられていた。また、紫外線には殺菌作用がある。そのため、紫外線照射装置は、部材の表面に付着した細菌の殺菌やウイルスの不活性化などにも用いられるようになってきている。
【0003】
ここで、紫外線照射の目的によっては、ピーク波長の短い紫外線を照射する発光素子を用いるのが好ましい場合がある。例えば、紫外線硬化型のインクや接着剤などの成分によっては、ピーク波長が300nm以下の紫外線を照射した方が好ましい場合がある。また、細菌やウイルスのDNAやRNAは、波長が260nm程度の紫外線を吸収し易い。そのため、細菌の殺菌やウイルスの不活性化を行う場合には、ピーク波長が260nm程度の紫外線を照射することが好ましい。
【0004】
そのため、紫外線照射装置の用途などによっては、ピーク波長が300nm以下の紫外線を照射する発光素子を用いる場合がある。しかしながら、ピーク波長が300nm以下の紫外線を照射する発光素子は、価格が高いという問題がある。
【0005】
また、ピーク波長にかかわらず、発光素子の光の出射面の面積は小さい。そのため、1つの発光素子による紫外線の照射領域は小さくなる。そのため。例えば、表面積の大きな処理対象物や、多数の処理対象物を処理する際には、多数の発光素子が必要となる。紫外線照射装置に多数の発光素子を設けると、紫外線照射装置の大型化、重量化、高価格化を招くことになる。また、前述した様に、ピーク波長が300nm以下の紫外線を照射する発光素子は価格が高いので、紫外線照射装置に多数の発光素子を設けると、紫外線照射装置のさらなる高価格化を招くことになる。
【0006】
そこで、発光素子の数を少なくしても、紫外線の照射領域を実質的に大きくすることができる紫外線照射装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、発光素子の数を少なくしても、紫外線の照射領域を実質的に大きくすることができる紫外線照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る紫外線照射装置は、箱状を呈する筐体と;前記筐体の内部に設けられ、処理対象物を載置可能な載置部と;前記筐体の内部に設けられ、第1の方向において、前記載置部と対向し、前記載置部側に紫外線を照射可能な発光素子を有する照射部と;前記筐体の内部に設けられ、前記第1の方向と直交する第2の方向において、前記照射部の位置を移動させる移動部と;を具備している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、発光素子の数を少なくしても、紫外線の照射領域を実質的に大きくすることができる紫外線照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係る処理装置を例示するための模式断面図である。
【
図2】本実施の形態に係る処理装置を例示するための模式断面図である。
【
図4】
図3における照射部をC-C線方向から見た模式平面図である。
【
図5】発光素子から照射された紫外線の分光分布曲線の一例を例示するためのグラフである。
【
図6】他の実施形態に係る処理装置を例示するための模式断面図である。
【
図7】他の実施形態に係る処理装置を例示するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。また、各図中の矢印X、Y、Zは、互いに直交する三方向を表している。例えば、X方向(第2の方向の一例に相当する)と、Y方向(第2の方向の一例に相当する)は水平方向とし、Z方向(第1の方向の一例に相当する)は鉛直方向としている。
【0013】
本実施の形態に係る紫外線照射装置(以下、処理装置1と称する)は、処理対象物100に、紫外線を照射する。
処理対象物100は、紫外線による処理を行うものであれば特に限定はない。例えば、処理対象物100は、紫外線硬化型のインク、塗料、接着剤などが付着したもの、表面改質を行うもの、光配向を行う液晶、細菌の殺菌やウイルスの不活性化を行うものなどとすることができる。
【0014】
ここで、例えば、細菌の殺菌やウイルスの不活性化を行う場合には、ピーク波長が300nm以下の紫外線を照射する発光素子を用いることが好ましい。しかしながら、この様な波長を有する発光素子は、価格が高くなる。そのため、この様な波長を有する発光素子の数を少なくしても、紫外線の照射領域を実質的に大きくすることができれば、さらに大きな利益を得ることができる。
【0015】
図1、および
図2は、本実施の形態に係る処理装置1を例示するための模式断面図である。
図1は、
図2における処理装置1のB-B線方向の模式断面図である。
図2は、
図1における処理装置1のA-A線方向の模式断面図である。
図1、および
図2に示すように、処理装置1は、例えば、筐体10、仕切り部20、照射部30、載置部40、移動部50、およびコントローラ60を有する。
【0016】
筐体10は、箱状を呈し、内部に、処理対象物100、仕切り部20、照射部30、載置部40、および移動部50を収納する空間を有する。筐体10には、孔10a1を設けることができる。孔10a1は、例えば、筐体10の天井の近傍に設けることができる。孔10a1は、筐体10の外部の雰囲気と、筐体10の内部空間を繋いでいる。また、孔10a1を覆うフィルタを設けることもできる。筐体10の外形形状には特に限定はない。筐体10の外形形状は、例えば、直方体とすることができる。
【0017】
筐体10は、照射部30から照射された紫外線を透過しない材料から形成される。例えば、筐体10は、金属や紫外線を透過しない樹脂から形成される。筐体10が、照射部30から照射された紫外線を透過しない材料から形成されていれば、照射部30から照射された紫外線が筐体10の外部に漏れるのを抑制することができる。
【0018】
なお、筐体10は一体に形成することもできるし、骨組み構造体の外面に、紫外線を透過しない材料を用いた板材を、接合したり、取り付けたりしてもよい。
【0019】
また、後述する筐体10の処理室10bとなる部分の内壁と、後述する開閉扉10dの内壁には、反射部10eを設けることができる。例えば、反射部10eは、板状を呈し、照射部30(発光素子31b)から照射された紫外線に対する反射率が高い材料から形成される。反射部10eは、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金から形成される。
【0020】
なお、筐体10の内壁が、反射部10eで覆われる場合には、筐体10の材料は、ある程度の剛性を有するものであれば特に限定はない。また、筐体10が、アルミニウム合金などの紫外線に対する反射率が高い材料から形成される場合には、反射部10eを省くこともできる。この場合、少なくとも、筐体10の、処理室10bとなる部分の内壁にバフ研磨などを施すことが好ましい。
【0021】
図1、および
図2に示すように、照射部30から照射され、処理対象物100に入射しなかった紫外線の一部は、載置部40を介して、反射部10eや、反射率の高い材料から形成された処理室10bの内壁に入射する。反射部10eなどに入射した紫外線は反射されて、載置部40を介して、処理対象物100の裏側に入射する。そのため、反射部10eが設けられていたり、処理室10bの内壁における反射率が高かったりすれば、処理対象物100の裏側の処理を行うことができる。また、照射部30から照射された紫外線の利用効率を向上させることができる。
【0022】
また、処理対象物100を載置部40の載置面に載置する際には、処理対象物100が筐体10(処理室10b)の内部に搬入される。そのため、
図2に示すように、筐体10の側面の処理室10bの位置には開閉扉10dを設けることができる。また、筐体10には、開閉扉10dの開閉状態を検出するセンサを設けることができる。
【0023】
仕切り部20は、板状を呈し、筐体10の内部に着脱可能に設けられている。例えば、仕切り部20の面は、X方向、およびY方向に平行となっている。Z方向において、仕切り部20は、筐体10の内部空間を仕切っている。仕切り部20は、載置部40が設けられる空間(処理室10b)と、照射部30および移動部50が設けられる空間(照射室10a)と、を仕切っている。仕切り部20の周縁は、例えば、筐体10の内壁に取り付けることができる。仕切り部20は、照射部30から照射された紫外線を透過する材料から形成されている。仕切り部20は、例えば、ガラスや、アクリル樹脂などから形成することができる。
【0024】
ここで、載置部40に載置された処理対象物100から揮発成分が放出される場合がある。また、載置部40に載置された処理対象物100に紫外線が照射されると、揮発成分が放出される場合がある。放出された揮発成分が筐体10の内部空間を漂って、照射部30の紫外線が出射する部分に付着すると、紫外線の照射量が減少するおそれがある。仕切り部20により、筐体10の内部空間が、照射室10aと処理室10bとに仕切られていれば、処理対象物100から放出された揮発成分が照射部30に到達するのを抑制することができる。また、仕切り部20が筐体10の内部に着脱可能に設けられていれば、揮発成分が付着した仕切り部20を、筐体10の外部に取り出して洗浄したり、揮発成分が付着した仕切り部20に代えて他の仕切り部20を筐体10の内部に取り付けたりするのが容易となる。すなわち、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0025】
照射部30は、筐体10(照射室10a)の内部に設けられている。照射部30の紫外線の出射側は、仕切り部20を介して、載置部40(処理対象物100)と対向している。照射部30は、載置部40に載置された処理対象物100に、仕切り部20を介して紫外線を照射する。
すなわち、Z方向において、照射部30は、載置部40と対向し、載置部40側に紫外線を照射可能な発光素子31bを有する。
【0026】
図3は、照射部30を例示するための模式断面図である。
図4は、
図3における照射部30をC-C線方向から見た模式平面図である。
図3に示すように、照射部30は、例えば、発光モジュール31、冷却部32、ケース33、およびハンガー34を有する。
【0027】
図3、および
図4に示すように、発光モジュール31は、ケース33の内部に設けられている。発光モジュール31は、少なくとも1つ設けることができる。複数の発光モジュール31を設ける場合には、
図4に示すように、複数の発光モジュール31を、後述する照射部30の移動方向(例えば、X方向)と直交する方向(例えば、Y方向)に並べて設けることができる。
【0028】
発光モジュール31の数は、例えば、Y方向における、処理対象物100の寸法などに応じて適宜変更することができる。例えば、並べて設けられた複数の発光モジュール31の、Y方向における合計寸法は、Y方向における処理対象物100の寸法、または、Y方向における複数の処理対象物100が載置された領域の寸法と、同じとするか、若干長くするか、若干短くすることが好ましい。すなわち、発光モジュール31から照射された紫外線が、処理対象物100のY方向における全領域に入射するようにすることが好ましい。
【0029】
発光モジュール31は、例えば、基板31a、および複数の発光素子31bを有する。 基板31aは、板状を呈している。基板31aの平面形状は、例えば、四角形である。基板31aの材料は、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどの無機材料、紙フェノールやガラスエポキシなどの有機材料、金属板の表面を絶縁材料で被覆したメタルコア基板などとすることができる。この場合、発光素子31bにおいて発生した熱の放熱を考慮すると、基板31aは、熱伝導率の高い材料から形成することが好ましい。例えば、基板31aは、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどのセラミックス、高熱伝導性樹脂、メタルコア基板などから形成することができる。なお、高熱伝導性樹脂は、例えば、PET(polyethylene terephthalate)やナイロンなどの樹脂に、酸化アルミニウムなどを含むフィラーを混合させたものである。
【0030】
図4に示すように、基板31aは、例えば、ネジなどの締結部材を用いて、放熱部32aに取り付けられる。この場合、基板31aと放熱部32aとの間に、弾性を有する伝熱シートを設けたり、シリコーングリスからなる層などを設けたりすることができる。この様にすれば、発光素子31bにおいて発生した熱が放熱部32aに伝わり易くなるので、発光素子31bの温度が最大ジャンクション温度を超えるのを抑制することができる。
【0031】
また、基板31aは、例えば、熱伝導率の高い接着剤を用いて、放熱部32aに接着することもできる。熱伝導率の高い接着剤を用いて、基板31aが放熱部32aに接着されていれば、基板31aと放熱部32aとの間に隙間が生じるのを抑制することができるので、発光素子31bにおいて発生した熱が放熱部32aに伝わり易くなる。また、発光モジュール31の構成が簡易なものとなる。
【0032】
複数の発光素子31bは、基板31aの、放熱部32a側とは反対側の面に設けられている。複数の発光素子31bの光の出射面は、ケース33に設けられた窓33aに向けられている。複数の発光素子31bから照射された紫外線は、窓33aを介して照射部30の外部に照射される。
【0033】
複数の発光素子31bは、並べて設けられている。例えば、
図4に示すように、複数の発光素子31bは、マトリクス状に並べて設けられる。複数の発光素子31bの配設形態や数は、
図4に例示をしたものに限定されるわけではなく、処理対象物100の大きさなどに応じて適宜変更することができる。
【0034】
発光素子31bは、紫外線を照射可能なものであれば特に限定はない。例えば、発光素子31bは、紫外線を照射可能な発光ダイオードや、レーザダイオードなどである。複数の発光素子31bは、チップ状の発光素子であってもよいし、表面実装型の発光素子であってもよいし、砲弾型などのリード線を有する発光素子であってもよい。
【0035】
また、紫外線による処理の目的などに応じて、適切なピーク波長の紫外線を照射する発光素子31bを選択することができる。例えば、細菌やウイルスのDNAやRNAは、波長が260nm程度の紫外線を吸収し易い。そのため、細菌の殺菌やウイルスの不活性化を行う場合には、ピーク波長が260nm程度の紫外線を照射可能な発光素子31bを選択すればよい。例えば、ピーク波長が、200nm以上、300nm以下の紫外線を照射可能な発光素子31bとすればよい。
【0036】
図5は、発光素子31bから照射された紫外線の分光分布曲線の一例を例示するためのグラフである。
分光分布のデータは、例えば、浜松ホトニクス株式会社製の分光測定器(型番:C7473-36)を用い、周囲温度が25℃の雰囲気で測定した。
【0037】
図5から分かるように、紫外線を照射する発光素子31bとすれば、紫外線領域(例えば、ピーク波長が300nm以下、波長帯域が200nm以上、400nm以下)における分光特性がナローになる。そのため、例えば、処理対象物100の表面に付着した細菌の殺菌や、ウイルスの不活性化を効率よく行うことができる。
【0038】
図3に示すように、冷却部32は、ケース33の内部に設けられている。冷却部32は、発光モジュール31の、発光素子31bが設けられる側とは反対側に設けられている。
冷却部32は、例えば、放熱部32a、および送風部32bを有する。
放熱部32aは、発光モジュール31と送風部32bとの間に設けられている。放熱部32aは、例えば、発光モジュール31が取り付けられるブロック状のベースと、ベースの、発光モジュール31側とは反対側に設けられた複数のフィンと、を有する。放熱部32aは、例えば、アルミニウム合金などの熱伝導率の高い材料から形成される。
【0039】
送風部32bは、例えば、Z方向におけるケース33の開口33bと、放熱部32aとの間に設けられている。送風部32bは、ケース33の開口33bを介して吸引した気体Gを、放熱部32aに設けられた複数のフィンに供給する。気体Gは、例えば、筐体10の照射室10aの雰囲気に含まれている空気である。送風部32bは、例えば、軸流ファンとすることができる。
【0040】
ケース33は、箱状を呈し、Z方向における一方の端部には窓33aが設けられている。窓33aは、板状を呈し、発光モジュール31(発光素子31b)から照射された紫外線を透過する。窓33aは、例えば、紫外線透過ガラス(ultraviolet transmitting glass)、アクリル樹脂などから形成される。
尚、窓33aを設けた構成を例示したが、窓33aを設けない構成とすることもできる。
【0041】
X方向におけるケース33の側面には、複数の排気口33cが設けられている。送風部32bにより、ケース33の開口33bを介して吸引された気体Gは、放熱部32aに設けられた複数のフィンの間を流れて、排気口33cからケース33の外部に排出される。ケース33の外部に排出された気体Gは、照射室10aの内部空間を流れて、筐体10の天井の近傍に設けられた孔10a1を介して筐体10の外部に排出される。また、筐体10の外部にある気体が孔10a1を介して筐体10の内部空間に導入される。この様な気体Gの流れが形成されれば、発光モジュール31(発光素子31b)の冷却効率を向上させることができる。
【0042】
図2に示すように、ハンガー34は、一対設けることができる。一対のハンガー34は、板状を呈し、Z方向に延びている。一対のハンガー34の一方の端部側は、後述する移動部50のスライダーに取り付けられている。一対のハンガー34の他方の端部側は、照射部30のケース33の側面に取り付けられている。また、一対のハンガー34のそれぞれには、Z方向に延びる孔が設けられている。照射部30のケース33は、Z方向に延びる孔に挿入されたネジなどの締結部材により、一対のハンガー34に取り付けられている。そのため、Z方向において、ケース33(発光素子31b)と、載置部40に載置された処理対象物100との間の距離Lを調整可能となっている。例えば、距離Lを小さくすれば、処理対象物100の表面における紫外線の照度を高くすることができる。距離Lを大きくすれば、紫外線が照射される範囲を大きくすることができる。
【0043】
また、一対のハンガー34の間を延びる補強バー34aを設けることができる。補強バー34aの端部は、Z方向に延びるハンガー34の孔に挿入されたネジなどの締結部材により、ハンガー34に取り付けられる。補強バー34aが設けられていれば、一対のハンガー34の剛性を大きくすることができ、ひいては、照射部30の姿勢や位置を安定させることができる。
【0044】
載置部40は、板状を呈し、筐体10(処理室10b)の内部に設けられている。例えば、載置部40は、X方向、およびY方向に平行となっている。載置部40には、処理対象物100が載置される。載置部40の周縁は、例えば、筐体10の内壁に取り付けることができる。
【0045】
前述したように、照射部30から照射された紫外線が載置部40を透過することができれば、処理室10bの内部において紫外線を反射させて処理対象物100の裏面側に入射させることができる。
そのため、載置部40は、紫外線を透過する材料から形成したり、複数の孔を有する部材から形成したりすることができる。この場合、複数の孔を有する部材から載置部40を形成すれば、紫外線が孔の内部を透過することになる。そのため、紫外線が載置部40を透過する際に減衰するのを抑制することができるので、処理対象物100の裏面側の処理効果を高めることができる。
【0046】
この場合、載置部40が金網状(金網を用いて形成された載置部40)であれば、紫外線の減衰をさらに抑制することができるので、処理対象物100の裏面側の処理効果をさらに高めることができる。
【0047】
また、例えば、処理対象物100が農産物などの場合には、処理対象物100にゴミなどが付着している場合がある。処理対象物100に付着していたゴミなどが、載置部40の載置面に溜まると、処理対象物100への紫外線の入射が妨げられることになる。載置部40が金網状であれば、理対象物100に付着していたゴミなどを載置部40の下方に排出することができる。そのため、ゴミなどにより、処理対象物100への紫外線の入射が妨げられるのを抑制することができる。
【0048】
図1、および
図2に示すように、移動部50は、筐体10(照射室10a)の内部に設けられている。移動部50は、照射部30の、載置部40(処理対象物100)側とは反対側に設けられている。例えば、移動部50は、照射部30と、筐体10の天井との間に設けられている。移動部50は、例えば、X方向において、照射部30(発光素子31b)の位置を移動させる。移動部50は、例えば、筐体10の内部をX方向に延びる梁10cなどに取り付けることができる。
【0049】
移動部50は、例えば、ガイド、スライダー、および駆動部を有する。ガイドは、例えば、梁10cに取り付けられる。ガイドは、例えば、X方向に延びている。スライダーは、ガイドに沿って、X方向に移動可能となっている。駆動部は、スライダーの位置を移動させる。駆動部は、例えば、エアシリンダとすることができる。
【0050】
前述した様に、照射部30のケース33は、一対のハンガー34を介して、移動部50のスライダーに接続されている。そのため、駆動部によりスライダーの位置を移動させれば、紫外線を照射している状態の照射部30(発光素子31b)の位置を移動させることができる。そのため、照射部30(発光素子31b)による紫外線の照射領域を移動させることができるので、紫外線の照射領域を実質的に大きくすることができる。
【0051】
また、照射部30(発光素子31b)の位置を移動させて、載置部40に載置された処理対象物100の全域に紫外線を照射する様にしている。そのため、処理対象物100の全域に対向する位置に発光素子31bを設ける必要がない。すなわち、発光素子31bの数を少なくすることができる。前述した様に、紫外線を照射可能な発光素子31bの価格は高いので、発光素子31bの数が少なくなれば、処理装置1(照射部30)の低価格化を図ることができる。また、処理装置1(照射部30)の小型化や軽量化を図ることもできる。
【0052】
また、以上においては、エアシリンダを備えた移動部50を例示したが、移動部50は、例えば、ガイド、スライダー、ボールネジなどの伝導部、およびサーボモータなどの制御モータを有するものであってもよい。例えば、移動部50は、一軸ロボットなどとすることもできる。移動部50が制御モータを有するものであれば、照射部30(発光素子31b)の移動位置や移動速度を変更するのが容易となる。そのため、処理対象物100の大きさや数などに応じて、紫外線の照射領域の大きさや位置を変えたり、後述する積算光量を変えたりするのが容易となる。
【0053】
また、照射部30(発光素子31b)を、一方向(例えば、X方向)に移動させる移動部50を例示したが、照射部30(発光素子31b)を、二方向(例えば、X方向、およびY方向)に移動させる移動部としてもよい。例えば、前述した一方向に移動させる移動部50を、Z方向に重ねるなどして、照射部30(発光素子31b)を、二方向に移動させる移動部とすることもできる。例えば、移動部は、二軸ロボットなどとしてもよい。照射部30(発光素子31b)を、二方向に移動させる移動部とすれば、発光素子31bの数をさらに少なくすることができる。
【0054】
以上に説明した様に、本実施の形態に係る処理装置1とすれば、発光素子31bの数を少なくしても、紫外線の照射領域を実質的に大きくすることができる。
【0055】
コントローラ60は、処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。コントローラ60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、半導体メモリなどの記憶部を有する。コントローラ60は、例えば、コンピュータである。記憶部には、例えば、処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する制御プログラムを格納することができる。
【0056】
例えば、コントローラ60は、作業者が操作スイッチなどを操作することで、載置部40に処理対象物100が載置されたと判断した場合には、照射部30を制御して照射部30に紫外線を照射させる。この場合、コントローラ60は、開閉扉10dの開閉状態を検出するセンサからの信号に基づいて、開閉扉10dが閉まっていると判断した場合には、照射部30に紫外線を照射させ、開閉扉10dが閉まっていないと判断した場合には、照射部30に紫外線を照射させないようにする。この様にすれば、筐体10の外部に紫外線が漏れるのを抑制することができる。
【0057】
また、コントローラ60は、移動部50を制御して、照射部30(発光素子31b)による紫外線の照射領域を移動させる。この場合、処理対象物100に照射される紫外線の積算光量が少なすぎると所望の処理効果が得られなくなるおそれがある。積算光量が多すぎると処理対象物100が劣化するおそれがある。
【0058】
そのため、コントローラ60は、発光素子31bに印加する電圧、および移動部50による照射部30(発光素子31b)の移動速度の少なくともいずれかを制御して、処理対象物100に照射される紫外線の積算光量を制御することができる。積算光量の適正値は、処理の目的、処理対象物100の種類、大きさ、数などにより異なるものとなる場合がある。そのため、予め実験やシミュレーションを行うことで、積算光量の適正値を求め、求められた積算光量の適正値をコントローラ60の記憶部に格納することができる。コントローラ60は、記憶部に格納されている積算光量の適正値に基づいて、発光素子31bに印加する電圧、および移動部50による照射部30(発光素子31b)の移動速度の少なくともいずれかを制御することができる。
【0059】
図6、および
図7は、他の実施形態に係る処理装置1aを例示するための模式断面図である。
図6は、
図7における処理装置1aのE-E線方向の模式断面図である。
図7は、
図6における処理装置1aのD-D線方向の模式断面図である。
図6、および
図7に示すように、処理装置1aは、例えば、筐体11、仕切り部20、照射部30、載置部40、移動部50、およびコントローラ60を有する。
【0060】
筐体11は、例えば、前述した筐体10に、複数の支持部11aをさらに加えたものとすることができる。
複数の支持部11aは、筐体11の処理室10bとなる部分の内壁に設けられている。複数の支持部11aは、例えば、X方向における筐体11の2つの内壁のそれぞれに設けられている。2つの内壁のそれぞれにおいて、複数の支持部11aは、所定の間隔を空けてZ方向に並べて設けられている。また、Z方向において、一方の内壁に設けられた支持部11aと、他方の内壁に設けられた支持部11aは、同じ位置に設けられている。Z方向において、同じ位置に設けられた支持部11aと、支持部11aとの上には、載置部40が着脱可能に支持される。
すなわち、筐体11の内部には、載置部40を支持する一対の支持部11aを設けることができる。Z方向において、一対の支持部11aは、所定の間隔をあけて複数組設けることができる。
【0061】
開閉扉10dを開くと、Z方向に並ぶ複数の支持部11aが露出する。そのため、作業者は、一対の支持部11aの上に載置部40を載置することができる。なお、処理対象物100が載置された載置部40を、一対の支持部11aの上に載置してもよいし、一対の支持部11aの上に載置部40を載置し、その後、載置部40の上に処理対象物100を載置してもよい。
【0062】
ここで、一対の支持部11aは、Z方向において、所定の間隔を空けて並べて設けられている。そのため、載置部40を載置する一対の支持部11aを選択することで、照射部30(発光素子31b)と、載置部40に載置された処理対象物100との間の距離L1を変化させることができる。例えば、距離L1を小さくすれば、処理対象物100の表面における紫外線の照度を高くすることができる。距離L1を大きくすれば、紫外線が照射される範囲を大きくすることができる。
【0063】
そのため、作業者は、処理の目的、処理対象物100の種類、大きさ、数などに応じて、載置部40を載置する一対の支持部11aを選択することができる。
【0064】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0065】
以下、前述した実施形態に関する付記を示す。
【0066】
(付記1)
箱状を呈する筐体と;
前記筐体の内部に設けられ、処理対象物を載置可能な載置部と;
前記筐体の内部に設けられ、第1の方向において、前記載置部と対向し、前記載置部側に紫外線を照射可能な発光素子を有する照射部と;
前記筐体の内部に設けられ、前記第1の方向と直交する第2の方向において、前記照射部の位置を移動させる移動部と;
を具備した紫外線照射装置。
【0067】
(付記2)
前記筐体の内部に設けられ、前記載置部を支持する一対の支持部をさらに具備し、
前記第1の方向において、前記一対の支持部は、所定の間隔をあけて複数組設けられている付記1記載の紫外線照射装置。
【0068】
(付記3)
前記載置部は、金網状を呈している付記1または2に記載の紫外線照射装置。
【0069】
(付記4)
前記筐体の内部に設けられ、板状を呈し、前記載置部が設けられる空間と、前記照射部が設けられる空間と、を仕切り、前記紫外線を透過可能な仕切り部をさらに具備した付記1~3のいずれか1つに記載の紫外線照射装置。
【符号の説明】
【0070】
1 処理装置、1a 処理装置、10 筐体、10a 照射室、10b 処理室、11 筐体、11a 支持部、20 仕切り部、30 照射部、40 載置部、50 移動部、60 コントローラ、100 処理対象物