(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004960
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】レイアウト図の作成方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20240110BHJP
E04H 1/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G06F30/13
E04H1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104880
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】小山 幸乃
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢一
(72)【発明者】
【氏名】千田 紗菜
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DG01
5B146DG05
5B146DG06
5B146DL02
5B146EA07
5B146FA02
(57)【要約】
【課題】フロア内の一部に斜め方向に沿って什器を配したレイアウト図を簡便に作成して可視化できるようにする。
【解決手段】縦方向及び横方向を明確にしたベース面と、一または複数の什器を設置した状態を示す複数のユニット
図U1、U2とを用意しておき、前記ベース面には、複数の静止基点Sを所定のピッチで設定するとともに、前記各ユニット
図U1、U2には可動基点Pを設定しておき、選択された前記各ユニット
図U1、U2を前記ベース面に、前記可動基点Pが前記静止基点Sに対応または合致するようにして配置してゆく。前記ユニット
図U1、U2の幾つかは、前記什器の設置方向が前記縦方向及び前記横方向に対して傾斜するように配置され得る。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向及び横方向を明確にしたベース面と、一または複数の什器を設置した状態を示す複数のユニット図とを用意しておき、
前記ベース面には、複数の静止基点を所定のピッチで設定するとともに、前記各ユニット図には可動基点を設定しておき、
選択された前記各ユニット図を前記ベース面に、前記可動基点が前記静止基点に対応または合致するようにして配置してゆく方法であって、
前記ユニット図の幾つかは、前記什器の設置方向が前記縦方向及び前記横方向に対して傾斜するように配置されるものであるレイアウト図の作成方法。
【請求項2】
前記ベース面に、前記縦方向のグリッド線と、前記横方向のグリッド線と、前記縦方向及び前記横方向の何れに対しても傾斜したグリッド線とを設定しておき、
前記各ユニット図は、前記什器の設置方向が前記グリッド線の何れかと平行になるようにして前記ベース面に配置されるものである請求項1記載のレイアウト図の作成方法。
【請求項3】
前記ユニット図は、三本以上の辺を有する多角形状のものであり、各辺が前記グリッド線の何れかと合致または平行となるように前記ベース面に配置されるものである請求項2記載のレイアウト図の作成方法。
【請求項4】
前記ユニット図に、相互に位置が異なる複数の可動基点を有するものが含まれ、そのユニット図は何れかの可動基点を選択してベース面に配置されるものである請求項1記載のレイアウト図の作成方法。
【請求項5】
前記ユニット図の一部または全部は、少なくとも一辺に動線形成領域が設けられたものであり、それら複数のユニット図の動線形成領域を近接または連続させることによって、動線を形成し得るものである請求項3記載のレイアウト図の作成方法。
【請求項6】
特定のユニット図の動線形成領域を連続させることによって、直角以外の角度で屈曲する動線を形成し得るものである請求項5記載のレイアウト図の作成方法。
【請求項7】
前記グリッド線に対応した四角形のユニット図を主体とし、それら四角形のユニット図を配置した結果生じる余剰空間を埋めるための三角形のユニット図を補助的に加えている請求項3記載のレイアウト図の作成方法。
【請求項8】
前記三角形のユニット図の何れかは、通りがかった人を短時間滞在させまたは人同士を交流させるための什器配置がなされたものである請求項7記載のレイアウト図の作成方法。
【請求項9】
縦方向及び横方向を明確にし複数の静止基点を所定のピッチで設定したベース面上に、一または複数の什器を設置した状態を示す複数のユニット図を配置してなるレイアウト図を作成するために用いられるシステムであって、
複数の種別の前記ユニット図に関するデータであり、当該ユニット図の種別を識別する識別子及び当該ユニット図に含まれる一または複数の什器の配置、什器の外側にある動線形成領域、当該ユニット図が表す領域の外周の形状及びその辺の寸法、当該ユニット図内に設定される一または複数の可動基点の位置を示す座標情報を定義するデータを記憶するユニット図データ記憶部と、
レイアウト図を作成しようとするユーザの手による操作入力であり、前記ベース面上に配置するべきユニット図の種別を選択する操作、当該ユニット図のベース面上での向きまたは角度を指定する操作、当該ユニット図を配置するべき位置を規定するベース面上の一つの静止基点を選択する操作、その静止基点に対応または合致させるべき当該ユニット図内の一つの可動基点を選択する操作を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部を介して受け付けたユーザの手による操作入力に基づき、前記ベース面上に配置される一または複数のユニット図の各々に関する、当該ユニット図を種別を識別する識別子、当該ユニット図が配置されるベース面上の静止基点の位置座標、当該ユニット図のベース面上での向きまたは角度、当該ユニット図内のどの可動基点をベース面上の静止基点に合致させるかを定義するデータを記憶するレイアウト図データ記憶部と、
前記レイアウト図データ記憶部に記憶しているデータに応じた、ベース面及び同ベース面上にユーザの手により配置された一または複数のユニット図を含むレイアウト図を出力する出力制御部と
を具備するレイアウト図作成システム。
【請求項10】
縦方向及び横方向を明確にし複数の静止基点を所定のピッチで設定したベース面上に、一または複数の什器を設置した状態を示す複数のユニット図を配置してなるレイアウト図を作成するために用いられるものであって、コンピュータを、
複数の種別の前記ユニット図に関するデータであり、当該ユニット図の種別を識別する識別子及び当該ユニット図に含まれる一または複数の什器の配置、什器の外側にある動線形成領域、当該ユニット図が表す領域の外周の形状及びその辺の寸法、当該ユニット図内に設定される一または複数の可動基点の位置を示す座標情報を定義するデータを記憶するユニット図データ記憶部、
レイアウト図を作成しようとするユーザの手による操作入力であり、前記ベース面上に配置するべきユニット図の種別を選択する操作、当該ユニット図のベース面上での向きまたは角度を指定する操作、当該ユニット図を配置するべき位置を規定するベース面上の一つの静止基点を選択する操作、その静止基点に対応または合致させるべき当該ユニット図内の一つの可動基点を選択する操作を受け付ける入力受付部、
前記入力受付部を介して受け付けたユーザの手による操作入力に基づき、前記ベース面上に配置される一または複数のユニット図の各々に関する、当該ユニット図を種別を識別する識別子、当該ユニット図が配置されるベース面上の静止基点の位置座標、当該ユニット図のベース面上での向きまたは角度、当該ユニット図内のどの可動基点をベース面上の静止基点に合致させるかを定義するデータを記憶するレイアウト図データ記憶部、並びに、
前記レイアウト図データ記憶部に記憶しているデータに応じた、ベース面及び同ベース面上にユーザの手により配置された一または複数のユニット図を含むレイアウト図を出力する出力制御部
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロア内に複数の什器(家具を含む)を配置した状態を示すレイアウト図の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス等のフロアには、種々の什器、例えば机や椅子、収納家具または什器、パーティション等が配置され、執務スペースやミーティングルーム、カフェスペース等が構築される。それにあたり、コンピュータを使用してレイアウト図を作成し提案することが現に行われている。下記特許文献には、複数の什器をフロア内に配置する際のレイアウトの基本計画を可視化する手法の具体例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平08-012674号公報
【特許文献2】特許第6880722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、フロアに複数の什器を配置しようとする際には、当該フロアにおける直交した前後左右方向、同フロアを平面視するならば縦横方向に沿って配列することが通例である。このとき、什器間に形成される通路、換言すればフロア内を移動する人の動線もまた、一定の前後左右方向、即ち平面視における縦横方向に沿って伸びることになる。
【0005】
上掲の特許文献に開示されている発明では、什器を含む正方形状または長方形状の領域を模したユニット図をタイルの如く縦横に並べることによって、レイアウト図を作成することとしている。
【0006】
これに対し、フロア内の一部に、前後左右とは異なる斜めの方向に沿って什器を配列したレイアウトを構築しては、という試みがある。その企図は、フロア内の動線に変化をもたらし、フロア内で執務その他の活動を行う人と人とのコミュニケーションを活発化させ、ひいては新たな創発現象を誘発し創造的な成果を生み出そうとすることにある。
【0007】
本発明は、フロア内の一部に斜め方向に沿って什器を配したレイアウト図を簡便に作成して可視化できるようにすることを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るレイアウト図の作成方法は、縦方向及び横方向を明確にしたベース面と、一または複数の什器を設置した状態を示す複数のユニット図とを用意しておき、前記ベース面には、複数の静止基点を所定のピッチで設定するとともに、前記各ユニット図には可動基点を設定しておき、選択された前記各ユニット図を前記ベース面に、前記可動基点が前記静止基点に対応または合致するようにして配置してゆくものであって、前記ユニット図の幾つかは、前記什器の設置方向が前記縦方向及び前記横方向に対して傾斜するように配置される。
【0009】
より詳しくは、前記ベース面に、前記縦方向のグリッド線と、前記横方向のグリッド線と、前記縦方向及び前記横方向の何れに対しても傾斜したグリッド線とを設定しておく。前記各ユニット図は、前記什器の設置方向が前記グリッド線の何れかと平行になるようにして前記ベース面に配置される。
【0010】
前記ユニット図は、例えば、三本以上の辺を有する多角形状のものであり、各辺が前記グリッド線の何れかと合致または平行となるように前記ベース面に配置される。
【0011】
前記ユニット図には、相互に位置が異なる複数の可動基点を有するものが含まれることがある。そのユニット図は、何れかの可動基点を選択してベース面に配置することができる。
【0012】
前記ユニット図の一部または全部は、少なくとも一辺に動線形成領域が設けられたものであり、それら複数のユニット図の動線形成領域を近接または連続させることにより、動線を形成し得るものである。
【0013】
さらに言えば、特定のユニット図の動線形成領域を連続させることによって、直角以外の角度で屈曲する動線を形成することができる。
【0014】
前記ユニット図は、前記グリッド線に対応した四角形のものを主体とする。そして、補助的に、複数の四角形のユニット図を配置した結果生じる余剰空間を埋めるための三角形のユニット図を加えている。
【0015】
前記三角形のユニット図の何れかは、通りがかった人を短時間(例えば、数分ないし十分程度、数十分程度、一時間未満)滞在させ及び/または人同士を交流させるための什器配置がなされたものとすることが好ましい。
【0016】
本発明に係るレイアウト図の作成方法を具現するためのシステムは、例えば、複数の種別の前記ユニット図に関するデータであり、当該ユニット図の種別を識別する識別子及び当該ユニット図に含まれる一または複数の什器の配置、什器の外側にある動線形成領域、当該ユニット図が表す領域の外周の形状及びその辺の寸法、当該ユニット図内に設定される一または複数の可動基点の位置を示す座標情報を定義するデータを記憶するユニット図データ記憶部と、レイアウト図を作成しようとするユーザの手による操作入力であり、前記ベース面上に配置するべきユニット図の種別を選択する操作、当該ユニット図のベース面上での向きまたは角度を指定する操作、当該ユニット図を配置するべき位置を規定するベース面上の一つの静止基点を選択する操作、その静止基点に対応または合致させるべき当該ユニット図内の一つの可動基点を選択する操作を受け付ける入力受付部と、前記入力受付部を介して受け付けたユーザの手による操作入力に基づき、前記ベース面上に配置される一または複数のユニット図の各々に関する、当該ユニット図を種別を識別する識別子、当該ユニット図が配置されるベース面上の静止基点の位置座標、当該ユニット図のベース面上での向きまたは角度、当該ユニット図内のどの可動基点をベース面上の静止基点に合致させるかを定義するデータを記憶するレイアウト図データ記憶部と、前記レイアウト図データ記憶部に記憶しているデータに応じた、ベース面及び同ベース面上にユーザの手により配置された一または複数のユニット図を含むレイアウト図を出力する出力制御部とを具備する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フロア内の一部に、平面視縦横方向とは傾斜した斜め方向に沿って什器を配したレイアウト図を簡便に作成して可視化できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態のレイアウト図作成方法におけるベース面を例示する図。
【
図2】同実施形態における各種のユニット図の外形を例示する図。
【
図3】同実施形態における各種のユニット図を例示する図。
【
図4】同実施形態における、ユニット図をベース面に配置する手法を説明する図。
【
図5】同実施形態における、ユニット図をベース面に配置した結果形成される動線を示す図。
【
図6】同実施形態における、ユニット図をベース面に配置した結果形成される動線を示す図。
【
図7】同実施形態のレイアウト図作成方法により作成されるレイアウト図を例示する図。
【
図8】同実施形態におけるシステムの構成例を示す図。
【
図9】同実施形態におけるシステムの構成要素となるコンピュータが有するハードウェア資源を示す図。
【
図10】同実施形態におけるコンピュータの機能ブロック図。
【
図11】同実施形態におけるユニット図データ格納部が格納するデータを例示する図。
【
図12】同実施形態におけるレイアウト図データ格納部が格納するデータを例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。まず、本実施形態におけるレイアウト図の作成方法の基本を述べる。
図1に、複数の什器が配置されるべきフロアを模擬するベース面を例示する。ベース面は、フロアを平面視したものである。ベース面には、縦方向に沿って延伸するグリッド線G1と、横方向に沿って延伸するグリッド線G2とが表されている。ベース面の縦方向は、フロアにおける所定の前後方向に対応し、ベース面の横方向は、同フロアにおける前後方向と直交する左右方向に対応している。
【0020】
ベース面の縦方向に沿って延伸する複数本のグリッド線G1は、横方向に沿って所定間隔に間欠的に並んでいる。隣り合う二本のグリッド線G1の間隔は、フロアにおける左右方向に沿った所定の距離、例えば3200mmに相当する。横方向に沿って延伸する複数本のグリッド線G2は、縦方向に沿って所定間隔に間欠的に並んでいる。隣り合う二本のグリッド線G2の間隔は、フロアにおける前後方向に沿った所定の距離、例えば3200mmに相当する。図示例では、グリッド線G1の間隔とグリッド線G2の間隔とが等しく、これらグリッド線G1、G2により正方形状の格子目が描かれているが、グリッド線G1の間隔とグリッド線G2の間隔とを異ならせ、長方形状の格子目にしてもよい。
【0021】
加えて、ベース面には、縦方向及び横方向の両方に対して傾斜するグリッド線G3、G4が表されている。グリッド線G3は、グリッド線G1、G2が描く格子目の左上と右下とを結ぶ対角線の方向に沿って延伸する。グリッド線G4は、グリッド線G1、G2が描く格子目の右上と左下とを結ぶ対角線の方向に沿って延伸する。
【0022】
グリッド線G1、G2が描く格子目の隅、つまりグリッド線G1とグリッド線G2との交点Sは、ベース面における静止基点Sとなる。
図1、
図4ないし
図7中、静止基点Sを黒丸で表現している。但し、あるユニット
図U1、U2の少なくとも一つの可動基点Pをベース面における少なくとも一つの静止基点Sに対応または合致させているとき、重なり合う当該基点P、Sは黒丸で表現している。静止基点Sとは、ユーザが下記のユニット
図U1、U2をベース面上に配置するための基準点を意味する。グリッド線G3とグリッド線G4との交点Sもまた、ベース面における静止基点Sとなり得る。それら静止基点Sは、ベース面上で縦横に所定のピッチで多数点在している。
【0023】
図2に、ベース面上に配されるユニット
図U1、U2を例示する。各ユニット
図U1、U2はそれぞれ、フロアに設置する一または複数の什器の表現を含むものであって、外周に三本以上の辺を有する平面視多角形状の占有域を模擬する。ユニット
図U1、U2には、複数の種別が存在する。各ユニット
図U1、U2は、その種別毎に、当該ユニット
図U1、U2が示す占有域内に配される什器の種類及び/または数や、当該ユニット
図U1、U2の占有域の寸法、占有域の外周の形状、当該ユニット
図U1、U2がベース面上に配されるときの向きまたは角度(いわば、フロア内に設置される什器の向く方向)、等のうち少なくとも一つが異なっている。
【0024】
四角形状のユニット
図U1は、本実施形態におけるレイアウト図を作成するための主体となるもので、什器を含んだ平面視四角形状の占有域を表現する。対して、三角形状のユニット
図U2は、什器を含んだ平面視三角形状の占有域を表現する。三角形状のユニット
図U2は、四角形状のユニット
図U1をベース面上に配置した結果生じる余剰空間を埋めるための、補助的なものである。
【0025】
前者の四角形のユニット
図U1のうちの何れか少なくとも一種は、デスクや背凭れのある椅子等、人が着席し腰を据えて比較的長時間執務を行うような用途に供される什器配置がなされたものである。対して、後者の三角形のユニット
図U2のうちの何れか少なくとも一種は、前者のユニット
図U1が含む什器配置とは異なり、例えばカウンタや背凭れのない椅子、あるいは椅子がそもそも存在しないカフェスペース等の、人が腰を据えて執務を行うのではない、通りがかった複数の人を短時間(例えば、数分ないし十分程度、数十分程度、一時間未満)滞在させ及び/または交流させるための什器配置がなされたものである。このユニット
図U2が含む什器配置は、ちょっとした休憩や掲示板、サイネージ(電子看板、ディジタルサイネージ)の閲覧等一人で滞在するための空間、または少数人による短時間のスポットミーティングや偶発的コミュニケーション等に利用されるための空間域を模擬する。
【0026】
各ユニット
図U1、U2の外形寸法、特に外周の辺の長さは、ベース面におけるグリッド線G1、G2、G3、G4が描く格子目の寸法に対応している。四角形のユニット
図U1であれば、その一辺が格子目の寸法に等しいかその整数倍、または半分等の方形状をなす。三角形のユニット
図U2であれば、その一辺が格子目の寸法に等しいかその整数倍、または半分等の直角三角形状をなす。
【0027】
各ユニット
図U1、U2にはそれぞれ、可動基点Pが設定される。
図2ないし
図7中、可動基点Pを白丸で表現している。但し、繰り返しになるが、あるユニット
図U1、U2の少なくとも一つの可動基点Pをベース面における少なくとも一つの静止基点Sに対応または合致させているとき、当該重なり合う基点P、Sは黒丸で表現している。可動基点Pは、各種別のユニット
図U1、U2毎に少なくとも一つ設けられている。尤も、一つのユニット
図U1、U2に一つではなく、複数の可動基点Pが設けられることを妨げない。図示例のユニット
図U1、U2は、外周の辺と辺との交点、または頂点のうち少なくとも一つに、可動基点Pが設定される。さらに、外周の辺の上の所定位置(例えば、一辺の中点)や、外周の辺に囲まれた内側の所定位置(ユニット
図U1、U2が表現する占有域の中心や重心、占有域の隅角部等)に、可動基点Pが設定されてもよい。可動基点Pとは、ユニット
図U1、U2をベース面上に配置するための基準点である。
【0028】
個々のユニット
図U1、U2は、その可動基点Pをベース面上の何れかの静止基点Sに対応または合致させるように配置される。別の言い方をすれば、対象のユニット
図U1、U2の一つの可動基点Pと、ベース面上の一つの静止基点Sとの離間距離が、所定の極小範囲内に収まるか0となるように配置されることになる。
【0029】
ユーザがレイアウト図を作成するにあたっては、ユーザが、フロア内に設置したい什器を模した任意のユニット
図U1、U2を選択し、そのユニット
図U1、U2をフロアを模したベース面上に配置する。このとき、配置する対象のユニット
図U1、U2は、それが有する可動基点Pをベース面の何れかの静止基点Sに対応または合致するように位置づける。それとともに、配置する対象のユニット
図U1、U2の外周の少なくとも一辺を、ベース面上のグリッド線G1、G2、G3、G4の何れかと平行になるような姿勢として、グリッド線G1、G2、G3、G4に沿わせる。
【0030】
具体例を挙げると、平面視正方形、長方形等の四角形状をなすユニット
図U1の辺を、グリッド線G1またはグリッド線G2に平行な姿勢で配置すれば、フロア内の前後方向または左右方向に沿って什器を設置するようなレイアウトを作成できる。四角形状をなすユニット
図U1の辺を、グリッド線G3またはグリッド線G4に平行な姿勢で配置すれば、フロア内の前後左右に対して傾斜した斜めの方向に沿って什器を設置するようなレイアウトを作成できる。
【0031】
平面視三角形状をなすユニット
図U2については、その長辺または短辺を、グリッド線G1またはグリッド線G2に平行な姿勢で配置してもよいし、グリッド線G3またはグリッド線G4に平行な姿勢で配置してもよい。既に述べた通り、三角形状をなすユニット
図U2は、ベース面に四角形のユニット
図U1を配置した結果生じる余剰空間を埋めることができる。
【0032】
ユーザがベース面上に配置するユニット
図U1、U2に関しては、まず、
図3中に示すユニット
図U1a、U2aのように、什器がその外周の辺に平行な方向に配される(当該ユニット
図U1a、U2a内で、什器の使用端縁または反使用端縁が、あるいは什器の正面方向と交差若しくは直交する幅方向が、ユニット
図U1a、U2aの外形の辺に平行であるように、同什器が設置されている)ものが考えられる。予め用意されるこのユニット
図U1a、U2aのデータは、後述するように、例えばプリセットのテンプレートデータに含まれる形で、ユニット図データ記憶部102に格納される。
【0033】
ユーザは、そのようなユニット
図U1a、U2aを回転させる操作を行った上、その回転させたU1b、U2bをベース面上に配置することができる。これにより、回転させずにベース面上に配置したユニット
図U1a、U2aに比べて、傾いた方向に向けて什器を設置することができる。当該ユニット
図U1b、U2bに含まれる什器は、ベース面上の縦方向及び横方向に対して傾斜した、つまりはフロア内の前後左右に対して傾斜した方向に設置されるそれを模したものとなる。
【0034】
加えて、
図3中に示すユニット
図U1c、U2cのように、元来什器がその外周の辺に対して斜め方向に配されている(当該ユニット
図U1c、U2c内で、什器の使用端縁または反使用端縁が、あるいは什器の正面方向と交差若しくは直交する幅方向が、ユニット
図U1c、U2cの外形の辺に非平行であるように、同什器が設置されている)ものも考えられる。予め用意されるこのユニット
図U1c、U2cのデータもまた、例えばプリセットのテンプレートデータに含まれる形で、ユニット図データ記憶部102に格納される。
【0035】
ユーザが、ユニット
図U1c、U2cの辺をグリッド線G1またはグリッド線G2に平行な姿勢で配置すれば、フロア内の前後左右に対して傾斜した斜めの方向に沿って当該ユニット
図U1c、U2c内の什器を設置し得る。または、ユニット
図U1c、U2cを回転させる操作を行い、その辺をグリッド線G3またはグリッド線G4に平行な姿勢で配置することにより、フロア内の前後または左右方向に沿って当該ユニット
図U1、U2内の什器を設置し得る。
【0036】
図4及び
図5に例示するように、ベース面に配置される各ユニット
図U1、U2には、それが表現する占有域内に配される一または複数の什器と、当該什器の外側にある什器が存在しない動線形成領域Aとが含まれる。
図4及び
図5中、動線形成領域Aを、網点を付して表す。各ユニット
図U1、U2の動線形成領域Aは、当該ユニット
図U1、U2の外周の少なくとも一辺に接するように存在している。
【0037】
それ故、ベース面上に複数のユニット
図U1、U2を互いに隣接または近接するように配置することによって、あるユニット
図U1、U2の動線形成領域A若しくは同領域Aが接する辺と、これに隣接または近接する他のユニット
図U1、U2の動線形成領域A若しくは同領域Aが接する辺とが、断続的にまたは連続的に接することになる。結果、
図5ないし
図7に示すように、それらユニット
図U1、U2が並ぶ方向に沿って、つまりはそれらユニット
図U1、U2の動線形成領域Aに接する辺に沿って、フロア内で人が通過ないし通行可能な(什器の存在しない)動線L(の少なくとも一部)が形成されることになる。
【0038】
図5は、互いに近接しているが多少離間し完全に連接してはいない複数のユニット
図U1、U2の動線形成領域A間に動線Lが形成される例である。翻って、
図6は、互いに隣接しまたは極一部が重なり合って連接している複数のユニット
図U1、U2の動線形成領域Aを介して動線Lが形成される例である。その動線Lは、グリッド線G1、G2に平行な、フロア内の前後左右方向に沿って伸びる部分もあれば、グリッド線G1、G2に対して非平行な(または、グリッド線G3、G4に対して平行な)、フロア内の前後左右に対して傾斜した斜め方向に沿って伸びる部分もある。
【0039】
以降、本実施形態のレイアウト図の作成方法を実施するために使用されるコンピュータ1またはシステムについて述べる。
図8に示すように、ユーザの使用するコンピュータ1は、電気通信回線3を介して外部のコンピュータ2と接続し、当該コンピュータ2との間でデータ通信を行うことが可能である。電気通信回線3は、インターネット、公衆電話網、携帯電話網、PHS(Personal Handyphone System)網、公衆無線LAN(Local Area Network)やWiMAX(登録商標)のような移動体無線通信網、Bluetooth(登録商標)等を利用した短距離無線通信網を含む。ユーザの使用するコンピュータ1と外部のコンピュータ2とを繋ぐ通信路の全体が、公開のネットワークであるとは限らない。例えば、コンピュータ1が、直接には非公開の有線LANまたは無線LANに接続しており、そのLANを経由して間接的にインターネット等の公開ネットワークに接続することがある。
【0040】
コンピュータ1、2は、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、サーバコンピュータ、タブレット、ウェアラブルコンピュータ、携帯電話端末等である。
図9に示すように、コンピュータ1、2は、CPU(Central Processing Unit)1a、メインメモリ1b、補助記憶デバイス1c、操作入力デバイス1d、オーディオコーデック1e、ビデオコーデック1f、通信インタフェース1g、スピーカ1h、ディスプレイ1i、マイク1j、カメラ(イメージセンサ)1k等のハードウェア資源を備え、これらがコントローラ(システムコントローラ、I/Oコントローラ等)1lにより制御されて連携動作するものである。
【0041】
補助記憶デバイス1cは、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、光学ディスクドライブ、その他である。操作入力デバイス1dは、手指で操作可能なタッチパネル、トラックパッド、マウス等のポインティングデバイスや、押下ボタン、キーボード等である。タッチパネル1dは、ディスプレイ1iの画面に重ねて設けられていることがある。オーディオコーデック1eは、マイク1jを介して入力される音声を符号化する一方、符号化されている音声データを復号化してスピーカ1hから音声出力する。ビデオコーデック1fは、CPU1aより受けた描画指示をもとに表示させるべき画面を生成しその画面信号をディスプレイ1iに向けて送出するGPU(Graphics Processing Unit)、画面や画像のデータを一時的に格納しておくビデオメモリ等を要素とする。オーディオコーデック1e、ビデオコーデック1fはそれぞれ、ハードウェアでなくソフトウェアとして実装することも可能である。
【0042】
通信インタフェース1gは、電気通信回線3を介して外部のコンピュータ2と情報の授受を行うためのデバイスであって、無線LAN用のWi-Fi(登録商標)デバイスや移動体無線通信網用の無線デバイス、短距離通信用のBluetoothトランシーバ、Ethernet(登録商標)用のNIC(Network Interface Card)等である。これら以外に、USB(Universal Serial Bus)等のインタフェースを実装することもある。
【0043】
CPU1aによって実行されるべきプログラムは補助記憶デバイス1cに格納されており、プログラムの実行の際には補助記憶デバイス1cからメインメモリ1bに読み込まれ、CPU1aによって解読される。本実施形態では、既知のOS(Operating System)プログラムやこれに付帯する各種デバイスドライバプログラムが予めインストールされ、他のプログラムによる上記ハードウェア資源の利用を仲介する。
【0044】
しかして、コンピュータ1には、本実施形態のシステムを構築するために必要となるプログラムやデータがインストールされる。なお、プログラムやデータは、ウェブサーバその他の外部のコンピュータ2から電気通信回線3を介して提供されることがある。また、プログラムとして、既製のCAD(Computer-Aided/Assisted Design/Drafting/Drawing)ソフトウェア(例えば、AUTOCAD(登録商標))がコンピュータ1にインストールされ、当該CADソフトウェアにより所要のテンプレートデータが読み込みまれることによって、同CADソフトウェアを援用して本実施形態のシステムを具現することがある。あるいは、既知のウェブブラウザ上で起動する(ウェブブラウザにより解釈、実行される)、HTML(HyperText Markup Language)やJavaScript(登録商標)等で記述されたスクリプトによって、本実施形態のシステムを具現することもあり得る。
【0045】
コンピュータ1は、上記のプログラム及び/またはデータに従い、
図10に示す入力受付部101、ユニット図データ記憶部102、レイアウト図データ記憶部103、出力制御部104としての機能を発揮する。
【0046】
入力受付部101は、レイアウト図を作成しようとするユーザの手による操作入力を、操作入力デバイス1dを介して受け付ける。入力受付部101が受け付ける操作は、ベース面上に配置するべきユニット
図U1、U2を選択する操作、当該ユニット
図U1、U2のベース面上での向きまたは角度を指定する操作、当該ユニット
図U1、U2を配置するべき位置を規定するベース面上の一つの静止基点Sを選択する操作、並びに、その静止基点Sに対応または合致させるべき当該ユニット
図U1、U2内の一つの可動基点Pを選択する操作等である。
【0047】
付言すると、ユーザは、ベース面上で、一旦配置したユニット
図U1、U2を任意に回転させ、その向きまたは角度を変更する操作を行うことが可能である。その際、ユーザは、操作の対象となるユニット
図U1、U2、つまりはある可動基点Pをベース面上のある静止基点Sに対応または合致させるように配置したユニット
図U1、U2を、当該可動基点P(または、当該静止基点S)を中心としてベース面上で回動させることができる。入力受付部101は、そのような操作をも受け付け得る。
【0048】
ユニット図データ記憶部102は、メインメモリ1b若しくは補助記憶デバイス1cの所要の記憶領域を利用して、フロア内に配置されるべき各種のユニット
図U1、U2自体に関するデータを記憶する。
図11に例示するように、ユニット図データ記憶部102は、各ユニット
図U1、U2の主種毎に、当該ユニット
図U1、U2の種別を識別する識別子や、当該ユニット
図U1、U2に含まれる什器の配置及び什器の外側にある動線形成領域Aを定義する情報(例えば、二次元のベクトル画像データまたはビットマップ画像データ、三次元オブジェクトデータ等)、当該ユニット
図U1、U2が表す領域の外周の形状(四角形、三角形等)及びその辺の寸法、当該ユニット
図U1、U2内に設定される一または複数の可動基点Pの位置を示す座標情報、等を定義するデータを格納し記憶保持する。
【0049】
レイアウト図データ記憶部103は、メインメモリ1b若しくは補助記憶デバイス1cの所要の記憶領域を利用して、ユーザの手によってフロアを模擬するベース面上に配置された一または複数のユニット
図U1、U2の各々に関するデータを記憶する。
図12に例示するように、レイアウト図データ記憶部103は、ユーザがベース面上に配置する各ユニット
図U1、U2毎に、当該ユニット
図U1、U2の種別を識別する識別子や、当該ユニット
図U1、U2が配置されるベース面上の静止基点Sの位置座標、当該ユニット
図U1、U2のベース面上での向きまたは角度、そして当該ユニット
図U1、U2内のどの可動基点Pをベース面上の静止基点Sに合致させるか、等を定義するデータを格納し記憶保持する。レイアウト図データ記憶部103が記憶するこのデータは、入力受付部101を介して受け付けた、ユーザによる操作入力に基づき生成される。
【0050】
出力制御部104は、ベース面及び同ベース面上にユーザの手により配置された一または複数のユニット
図U1、U2を含むレイアウト図を出力する。出力制御部104は、レイアウト図を、例えばユーザが使用するコンピュータ1のディスプレイ1iの画面に表示させたり、プリンタを介してハードコピー出力したり、あるいは、当該レイアウト図をディスプレイ1i若しくはプリンタ等に出力するために必要となるデータをコンピュータ1のメインメモリ1b若しくは補助記憶デバイス1cに格納したり、そのデータを電気通信回線3を介して外部のコンピュータ2に送信したりする。
【0051】
図7に、そのレイアウト図の画面表示例を示す。
図7中の太線が、フロア内の人が移動可能な動線Lに相当する。この動線Lは、什器を含むユニットU1、U2の動線形成領域Aを利用して構築される。動線Lの少なくとも一部は、縦横のグリッド線G1、G2に対して傾斜した方向、即ちフロアの前後方向に対して傾いた斜め方向に沿って伸ばすことができる。
【0052】
尤も、出力制御部104が出力するレイアウト図上で、このような太線等の形態で動線Lを視覚的に明示するとは限られない。什器と什器との間の空白の領域は、当然に動線Lとしてユーザに視覚的に認識されるであろう。
【0053】
並びに、出力制御部104が出力するレイアウト図上で、グリッド線G1、G2、G3、G4を視覚的に明示するとも限られない。静止基点Sのみを明示し、グリッド線G1、G2、G3、G4を明示しない態様もとり得る。静止基点S及び/または可動基点Pを明示しないこともあり得る。
【0054】
従来のレイアウト図の作成行為では、レイアウトの計画または設計者個々人が、自己の経験や直感に基づいて感覚的にフロア内に什器を配置していた。即ち、個々の案件毎に、什器を法則性なくアトランダムに配置してレイアウトを構築しているという実情があった。このため、レイアウト設計の作業負担が恒常的に大きいままで、しかも個々人のノウハウであるために再現性に乏しく、企図するレイアウト構築の高質化、同質化が容易でない。その帰結として、属人的な尽力を必要としていた。
【0055】
本実施形態の手法及びシステムを用いれば、好適なレイアウトを簡便に構築することができる。また、作成したレイアウトを、ノウハウとして多人数の計画または設計者で共有でき、顧客に対して高いクオリティの提案を行うことがより容易となる。
【0056】
また、ベース面上に任意のユニット
図U1、U2を任意に斜めに配置できることは、レイアウト計画、特にフロア上で人が通行する動線Lの設計の自由度を一層向上させることに繋がる。
【0057】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、
図10に示す各部の機能が複数のコンピュータ1、2に分散され、それらが協働することで本発明に係るレイアウト図作成方法を実施するためのシステムとして成立する態様を妨げない。
【0058】
さらに、本発明に係るレイアウト図作成方法は、コンピュータを使用して実施されるとも限られない。ベース面や各ユニット
図U1、U2を、紙や樹脂薄板等により作製し、ベース面上に所望のユニット
図U1、U2をユーザの手ずから配置して、レイアウト図を作成しても構わない。
【0059】
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…コンピュータ
1d…操作入力デバイス
1i…ディスプレイ
2…外部のコンピュータ
3…電気通信回線
A…動線形成領域
G1、G2、G3、G4…ベース面のグリッド線
L…動線
P…ユニット図内の可動基点
S…ベース面の静止基点
U1、U2…ユニット図