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  • 特開-紐状体、布帛、および回路基板 図1
  • 特開-紐状体、布帛、および回路基板 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049603
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】紐状体、布帛、および回路基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20240403BHJP
   D01F 6/12 20060101ALI20240403BHJP
   D02G 3/06 20060101ALI20240403BHJP
   D01D 5/42 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H05K1/03 630C
D01F6/12 A
D02G3/06
D01D5/42
H05K1/03 650
H05K1/03 630G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155919
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390005050
【氏名又は名称】ダイキンファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】川戸 進
(72)【発明者】
【氏名】塚本 忠和
【テーマコード(参考)】
4L035
4L036
4L045
【Fターム(参考)】
4L035BB45
4L036MA04
4L036MA37
4L036PA21
4L045BA01
4L045BA10
4L045BB02
4L045BB12
4L045BB17
(57)【要約】
【課題】電気特性に優れ、且つ機械的強度が高い回路基板を作製可能な材料を提供する。
【解決手段】本開示の紐状体1は、回路基板材料として用いられる紐状体である。紐状体1は、ポリテトラフルオロエチレンのフラットファイバ11を含む線体の撚り紐状体であり、繊度あたりの引張強度(引張強度A)が1.0cN/dtex以上である。本開示の布帛は前記紐状体を含む。前記布帛は、織物であることが好ましい。本開示の回路基板は前記布帛を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板材料として用いられる、ポリテトラフルオロエチレンのフラットファイバを含む線体の撚り紐状体であり、繊度あたりの引張強度(引張強度A)が1.0cN/dtex以上である紐状体。
【請求項2】
前記紐状体の引張強度の絶対値(引張強度B)は1400cN以上である請求項1に記載の紐状体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の紐状体を含む布帛。
【請求項4】
織物である請求項3に記載の布帛。
【請求項5】
請求項3に記載の布帛を備える回路基板。
【請求項6】
前記布帛と金属箔とがフッ素系接着剤を介して接合している請求項5に記載の回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は紐状体、布帛、および回路基板に関する。より具体的には、本開示は、回路基板材料として用いられる紐状体、当該紐状体を原糸として用いて得られる布帛、および当該布帛を備える回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
通信の高速化に伴い、電気機器、電子機器、通信機器等に用いられる回路基板には、低誘電、低損失等の電気特性に優れる材料が求められている。
【0003】
回路基板材料として電気特性に優れる材料であるフッ素樹脂を用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、フッ素樹脂繊維から主としてなり、繊維が交絡している、基布を有さない不織布が開示されている。そして、当該不織布を基材とし、これに熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を含浸させ、表面に銅箔を貼り付けることにより回路基板として利用できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2003/000977号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の回路基板は、不織布を使用しているため機械的強度に劣る。一方、機械的強度を高くするためにガラス繊維等の他の材料を組み合わせる方法があるが、この場合、電気特性が低下するという問題がある。このため、電気特性に優れ、且つ機械的強度が高い回路基板を作製可能な材料が求められる。
【0006】
従って、本開示の目的は、電気特性に優れ、且つ機械的強度が高い回路基板を作製可能な材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定のポリテトラフルオロエチレンのフラットファイバの撚り紐状体を用いることにより、電気特性に優れ、且つ機械的強度が高い回路基板を作製可能であることを見出した。本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本開示は、回路基板材料として用いられる、ポリテトラフルオロエチレンのフラットファイバを含む線体の撚り紐状体であり、繊度あたりの引張強度(引張強度A)が1.0cN/dtex以上である紐状体を提供する。
【0009】
上記紐状体の引張強度の絶対値(引張強度B)は1400cN以上であることが好ましい。
【0010】
また、本開示は、上記紐状体を含む布帛を提供する。
【0011】
上記布帛は織物であることが好ましい。
【0012】
また、本開示は、上記布帛を備える回路基板を提供する。
【0013】
上記回路基板は、上記布帛と金属箔とがフッ素系接着剤を介して接合していることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本開示の紐状体によれば、電気特性に優れ、且つ機械的強度が高い回路基板を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の紐状体の一実施形態を示す外観図である。
図2】本開示の紐状体の他の一実施形態を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[紐状体]
本開示の紐状体は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のフラットファイバを含む線体の撚り紐状体であり、繊度あたりの引張強度が1.0cN/dtex以上である。上記紐状体は線体を撚って得られる。なお、「繊度」は紐状体1000mあたりの質量[g]を表し、単位は[tex]である。上記線体は、PTFEフラットファイバのみの線体であってもよいし、PTFEフラットファイバおよび他の線体を組み合わせたものであってもよい。また、上記撚り紐状体は、1本の線体を撚ったものであってもよいし、複数本の線体を重ねて同時に撚ったものであってもよい。中でも、上記紐状体は、PTFEフラットファイバのみからなる1本または2本以上の線体を撚った紐状体であることが好ましい。上記紐状体が2本以上の線体を撚ったものである場合、既に撚られた線体を1本以上用いてさらに撚ってもよい。なお、本明細書において、繊度あたりの引張強度を「引張強度A」と称する場合がある。
【0017】
図1に、本開示の紐状体の一実施形態を示す。図1に示す紐状体1は、1本のPTFEフラットファイバ11を撚って得られた紐状体である。紐状体1はフラットフィルムを撚ったものであるため、断面はフラットフィルムが折り畳まれた形状となっている。
【0018】
図2に、本開示の紐状体の一実施形態を示す。図2に示す紐状体2は、3本のPTFEフラットファイバ21,22,23を重ね合わせた状態から撚って得られた紐状体であり、結果として各フラットファイバ21,22,23の断面は折り畳まれた形状となっている。
【0019】
上記紐状体の引張強度Aは、1.0cN/dtex以上であり、好ましくは1.3cN/dtex以上である。上記引張強度Aは繊度あたりの強度であり、1.0cN/dtex以上であることにより、より機械的強度の高い回路基板を得ることができる。
【0020】
上記PTFEフラットファイバは、半焼成されたPTFEフィルム(半焼成フィルム)を延伸して得られるものであることが好ましい。このようなフラットファイバを用いることにより、撚ることで繊度あたりの引張強度Aが1.0cN/dtex以上である紐状体を容易に得ることができる。
【0021】
上記PTFEフラットファイバの結晶化度は、29%以下が好ましく、より好ましくは26%以下、さらに好ましくは23%以下である。上記結晶化度が29%以下であると、撚ることで引張強度Aが1.0cN/dtex以上である紐状体を容易に得ることができる。上記結晶化度は、例えば20%以上である。上記結晶化度はDSC測定により得られる熱量から算出することができる。
【0022】
上記PTFEフラットフィルム中のポリテトラフルオロエチレンの含有割合は、PTFEフラットフィルムの質量(100質量%)に対して、80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは96質量%以上である。上記含有割合は100質量%であってもよい。上記含有割合が80質量%以上であると、他の成分(例えばガラス繊維等の無機充填材)の混入割合が低く、電気特性により優れる。
【0023】
上記紐状体の引張強度の絶対値は、1400cN以上が好ましく、より好ましくは1500cN以上、さらに好ましくは1800cN以上である。なお、本明細書において、上記引張強度の絶対値を「引張強度B」と称する場合がある。上記引張強度Bが1400cN以上であると、より機械的強度の高い回路基板を得ることができる。上記紐状体の引張強度Bは、PTFEフラットファイバを撚る際の程度により調整することができ、例えばちぎれない程度に強く撚るほど強度が高くなる傾向がある。
【0024】
上記紐状体の空隙率は、20%以上が好ましく、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。上記空隙率が20%以上であると、上記紐状体から形成される布帛は低誘電、低損失となり電気特性により優れる傾向がある。撚りをかける線体としてフラットファイバを用い、フラットファイバを撚ることで紐状体中に空隙を形成することができる。上記空隙率は、撚る際の程度により調整することができ、例えば強く撚るほど空隙率は低下し、適度に撚ることで引張強度A,Bと空隙率とを適切に調節することができる。上記空隙率は、上記紐状体を幅方向に切断して得られた断面における空隙部の断面積の割合として求めることができる。
【0025】
上記紐状体の繊度は、300dtex以上が好ましく、より好ましくは500dtex以上である、上記繊度が300dtex以上であると、機械的強度および布帛の柔軟性に優れる。
【0026】
上記紐状体の撚り回数は、100mmあたり、20回以上が好ましく、より好ましくは40回以上である。上記撚り回数が20回以上であると、機械的強度がより向上する。上記撚り回数は、線体がちぎれない限り特に限定されないが、例えば100回以下である。
【0027】
上記紐状体中のポリテトラフルオロエチレンの含有割合は、紐状体の質量(100質量%)に対して、80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは96質量%以上である。上記含有割合は100質量%であってもよい。上記含有割合が80質量%以上であると、他の成分(例えばガラス繊維等の無機充填材)の混入割合が低く、電気特性により優れる。
【0028】
上記紐状体は、PTFEフラットファイバを1本以上含む線体を撚る工程(撚り工程)を少なくとも備える方法により製造することができる。上記紐状体が上記引張強度Aを有するようにするために、上記製造方法は、未焼成フィルムを半焼成して半焼成フィルムを得る工程(半焼成工程)、上記半焼成フィルムを延伸する工程(延伸工程)を備えることが好ましい。また、上記半焼成工程および上記延伸工程の間に、上記半焼成フィルムをスリットする工程(スリット工程)を備えていてもよい。
【0029】
上記半焼成工程において、上記半焼成フィルムは、未焼成のPTFEフィルム(未焼成フィルム)を未焼成フィルムの融点以下で焼成フィルムの融点以上の温度で加熱処理して得るのが好ましい。なお、上記未焼成フィルムは、通常345℃付近に融点ピークが示差熱分析計で測定され、上記焼成フィルムは、通常327℃付近に融点ピークが示差熱分析計で測定されるが、上記半焼成工程における加熱温度は必ずしも両融点ピーク間の温度である必要はなく、両融点ピーク外の温度であっても、融点ピークの立ち上がり等のピーク肩に該当する程度の、融点ピークに近い温度を含む範囲(例えば、315~345℃程度、好ましくは315~330℃)であってもよい。半焼成フィルムの焼成の割合は結晶転化率で0.2~0.8の範囲が好ましい。上記結晶転化率は、未焼成フィルムの結晶融解熱と半焼成フィルムの結晶融解熱の差を未焼成フィルムの結晶融解熱と焼成フィルムの融解結晶熱の差で除した値で表される。半焼成を行うための加熱処理装置は、均一な結晶転化率の半焼成フィルムが得られやすい観点で、ソルトバスで行うのが好ましい。上記未焼成フィルムは、通常のPTFEのペースト押出圧延加工によって得られる。未焼成フィルムおよび半焼成フィルムの厚さは例えば50~200μmである。
【0030】
上記スリット工程では、上記半焼成フィルムを幅の細いテープ(リボンテープ)にスリットする。スリット幅は、その後の延伸によってネッキングが起こる延伸倍率によって決められるが、取り扱い性により優れる観点から、5~12mm程度が好ましい。
【0031】
上記延伸工程における延伸倍率は、強度により優れる観点から、15~50倍程度が好ましく、より好ましくは20~50倍程度である。また、延伸温度は、スリットされたリボンテープの通過速度や時間によって左右されるが、未焼成フィルムの融解熱ピーク温度以下であることが好ましい。但し、未焼成フィルムの融解熱ピーク温度を部分的に超えていても支障はない。延伸装置としては、加熱しながら延伸ができる円弧状の熱板上で行う方法が好ましい。
【0032】
上記撚り工程では、1本のPTFEフラットファイバを少なくとも含む線体を撚って上記紐状体を得る。上記撚りを行うそれぞれの線体はフラットであってもよいし、撚られていてもよい。撚りの程度は、得られる紐状体の引張強度A,Bや空隙率等を考慮して適切に設定される。
【0033】
このようにして、上記紐状体を製造することができる。
【0034】
上記紐状体は回路基板材料として用いられる。具体的には、例えば、上記紐状体を原糸として布帛を得ることができ、当該布帛を回路基板の基材材料として用いることができる。
【0035】
上記布帛は上記紐状体を少なくとも含む。上記布帛としては、例えば、上記紐状体を原糸として含む織物が挙げられる。上記織物としては、公知乃至慣用のものが挙げられ、例えば、平織、綾織、朱子織、若しくはノンクリンプファブリックに代表される繊維束を一方向に引き揃えたシートや角度を変えて積層したようなシートをほぐれないようにステッチしたステッチングシートなどが挙げられる。
【0036】
上記布帛の周波数60Hzにおける誘電率(ε’)は、1.5以下が好ましく、より好ましくは1.3以下である。上記誘電率が1.5以下であると、誘電率が低く、電気特性により優れる。
【0037】
上記布帛の周波数60Hzにおける誘電正接(tanδ)は、0.0001以下が好ましい。上記誘電正接が0.0001以下であると、電気特性により優れる。
【0038】
<回路基板>
上記布帛を用いて上記回路基板を製造することができる。上記回路基板において、上記布帛は上記回路基板における基材材料として用いることができる。また、上記布帛を他の基板に貼り合わせて基材としてもよい。例えば、上記布帛に熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を含浸させて回路基板を作製することができる。
【0039】
例えば上記回路基板に銅箔等の金属箔を貼り合わせることによりプリント基板を製造することができる。上記貼り合わせには公知乃至慣用の接着剤を用いることができる。プリント基板においては、例えば上記布帛の金属箔とは反対側に、熱プレスによってプリプレグ等の積層対象物を積層することがある。プリプレグの耐熱温度が上記布帛中のPTFEの融点よりも低い場合、熱プレスはフッ素樹脂の融点よりも低い耐熱温度に近い温度で行う必要がある。このため、上記接着剤は、低融点にて接着性を発揮し得る接着剤が好ましい。
【0040】
上記接着剤としては、特に限定されず、例えば、ポリエステル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ユリア系接着剤、メラミン系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、酢酸ビニル系樹脂接着剤、エチレン-酢酸ビニル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、フッ素系接着剤などが挙げられる。中でも、布帛を構成するPTFEとの同じくフッ素系樹脂が主成分であることで上記布帛の接着性により優れ、また電気特性を損ないにくい観点から、フッ素系接着剤が好ましい。上記接着剤はホットメルト型や硬化型であってもよい。また、上記接着剤の形状は、特に限定されず、フィルム状(シート状)や液状であってもよい。
【0041】
また、上記フッ素系接着剤として、PTFEよりも融点が低いフッ素系樹脂、例えば、ヘキサフルオロプロピレン-エチレン共重合体(EFEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロポリプロピレン共重合体(FEP)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)なども使用することもできる。上記フッ素系樹脂の融点は、例えば300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0042】
上記金属箔および/または上記布帛の接着側表面には表面処理が施されていてもよい。上記表面処理としては、プラズマ処理、エッチング処理、親水化処理など、物理的、化学的改質を加えた表面処理が挙げられる。このように表面処理を行うことで、接着力を高めることができる。
【0043】
上記プリント基板は、低誘電率および低誘電正接等の電気特性に優れるため、高周波回路用基板として好ましく利用できる。また、上記回路基板に上記布帛を用いることにより、電気特性および機械的強度に優れる。
【実施例0044】
以下に実施例を挙げて本開示の発明をより詳細に説明するが、本開示の発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0045】
実施例1
(紐状体の作製)
PTFEファインパウダー(商品名「F104」、ダイキン工業株式会社製)から作製された未焼成フィルムを、338℃に加熱したソルトバスを用いて半焼成フィルムを作製した。この半焼成フィルムは幅160mm、厚さ100μmであった。この半焼成フィルムを幅10mmのテープに裁断し、320℃に加熱した円弧形状の熱板上で長さ方向に25倍に延伸して幅約2mm、厚さ20μmのフラットファイバを作製した。
上記フラットファイバ1本を200mmの長さに切断し、100回撚りをかけて実施例1の紐状体を作製した。
【0046】
(布帛の作製)
上記で得られた紐状体を原糸(縦糸および緯糸)として用い、機織り機を使用して平織により布帛を作製した。機織り機は縦糸を固定するフレームと縦糸を2本に1本のペースで交互に上下させる綜絖、横糸を巻き付ける平たい緯糸棒、縦糸に挿入した横糸を整えるための櫛からなり、フレームにはL字溝と呼ばれる溝が設けられている。このL字溝に上記紐状体を1本ずつ緩まないように取り付け固定した。これを縦糸(経糸)とする。綜絖を上げることで綜絖に通した縦糸が山となり、逆に綜絖を下げると谷となる。こうすることで横糸を挿入しやすく出来る。次に上記紐状体を緯糸棒に巻き付け、横糸(緯糸)とした。まず綜絖を上げて横糸を端から端まで挿入した。挿入し終えたら櫛などで横糸を引き下げて押さえた。これで1段目の織りが完了となる。続いて綜絖を今度は逆に下げて横糸を端から端まで挿入した。同じく挿入し終えたら櫛で横糸を引き下げ押さえて整えた。これで2段目の織りが完了となる。平織であるため、1段目と2段目では縦糸、横糸が交互に表に現れた。この工程(1段目の織りと2段目の織り)を繰り返すことにより、実施例1の布帛(PTFEフラットファイバ布帛1)を作製した。
【0047】
実施例2
実施例1で作製したフラットファイバ2本を重ね合わせて200mmの長さに切断し、100回撚りをかけたこと以外は実施例1と同様にして実施例2の紐状体および布帛(PTFEフラットファイバ布帛2)を作製した。
【0048】
実施例3
実施例1で作製したフラットファイバ3本を重ね合わせて200mmの長さに切断し、100回撚りをかけたこと以外は実施例1と同様にして実施例3の紐状体および布帛(PTFEフラットファイバ布帛3)を作製した。
【0049】
比較例1
PTFEファインパウダー(商品名「F104」、ダイキン工業株式会社製)から作製された未焼成フィルムを、338℃に加熱したソルトバスを用いて半焼成フィルムを作製した。この半焼成フィルムは幅160mm、厚さ100μmであった。この半焼成フィルムを、320℃に加熱した円弧形状の熱板上で長さ方向に25倍に延伸して幅約2mm、厚さ20μmのシート(PTFEフラットファイバ)を作製した。
【0050】
比較例2
PTFEシート(商品名「スカイプドテープ」、中興化成工業株式会社製)を比較例2のシートとした。
【0051】
比較例3
ポリイミドシート(商品名「カプトン」、東レ・デュポン株式会社製)を比較例3のシートとした。
【0052】
比較例4
ガラスクロス(商品名「NEガラス」、日東紡績株式会社製)を比較例4のシートとした。
【0053】
比較例5
紡糸したPTFE繊維(商品名「PTFE YARN」、Shanghai JINYOU Fluorine Materials Co.,Ltd.製)1本を200mmの長さに切断し、100回撚りをかけて紐状体の作製を試みたが、繊維が細く強度が低いため撚ることができず布帛を作製することができなかった。
【0054】
比較例6
紡糸したPTFE繊維(商品名「PTFE YARN」、Shanghai JINYOU Fluorine Materials Co.,Ltd.製)3本を重ね合わせて200mmの長さに切断し、100回撚りをかけて比較例6の紐状体を作製した。そして、当該紐状体を使用したこと以外は実施例1と同様にして比較例6の布帛(PTFE紡糸布帛)を作製した。
【0055】
<評価>
実施例および比較例で作製した紐状体、布帛、およびシートについて、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0056】
(1)繊度
実施例および比較例で作製した紐状体(長さ10cm)の重量を測定し、繊度を算出した。
【0057】
(2)引張強度
実施例および比較例で作製した紐状体を、日本計測システム株式会社製 汎用荷重試験機「HIT-L」を使用し引張強度を測定した。サンプルは60mm長さの紐状体を滑らないように端部を台紙に貼り付けたものを荷重試験機のチャックに挟んで固定した。そしてロードセル1kN、試験速度200mm/minで、引張強度(cN)(引張強度B)を測定した。なお、繊度あたりの引張強度(引張強度A)は得られた上記引張強度Bおよび上記繊度から算出した。
【0058】
(3)結晶化度
実施例および比較例で作製した布帛またはシートについて、DSC測定を行った。DSC測定により得られたスペクトルから、340℃付近および370℃付近で確認されたピークの融解エンタルピーの合計値を算出した。そして、PTFEの完全結晶化融解エンタルピー(ΔH=92.9)を用いて結晶化度を求めた。なお、DSC測定は、示差走査熱量計(型番「DSC8230」、株式会社リガク製)を用い、基準材料はアルミナを用い、窒素雰囲気下、温度範囲は250~400℃、昇温速度10℃/minの条件で行った。
【0059】
(4)空隙率
実施例および比較例で作製した紐状体について、幅方向に切断して得られた断面を電子顕微鏡(型番「Flex SEM 1000」、株式会社日立製作所製)で観察した。そして、得られた断面写真から、紐状体の全面積に対する紐状体内の空隙の割合を算出し、空隙率とした。
【0060】
(5)誘電率および誘電正接
実施例および比較例で作製した布帛またはシートについて、ベクトルネットワークアナライザー(N5290A)とスプリットシリンダ共振器またはSパラメータ法測定治具を接続したシステムを使用し、60GHzの条件で、誘電率および誘電正接を測定した。
【0061】
(6)耐摩耗試験
実施例および比較例で作製した紐状体について、往復摩耗試験機を用い、荷重量100g、反復速度1r/min、摩耗材料#800サンドペーパーの条件で摩耗させて摩耗試験を行った。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示すように、実施例の紐状体は、布帛の誘電率および誘電正接が低く電気特性に優れており、また耐摩耗試験において5000回切断せず、機械的強度にも優れると評価された。一方、撚りを行っていないPTFEシート(比較例1,2)および他のシート(比較例3,4)は誘電率および誘電正接が高く電気特性に劣ると評価された。また、引張強度Aが低いPTFE繊維を用いた場合(比較例5,6)、撚りを行っていても誘電正接が高い、あるいは機械的強度が不充分であると評価された。
【符号の説明】
【0064】
1,2 紐状体
11,21,22,23 PTFEフラットファイバ
図1
図2