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  • 特開-内燃機関および鞍乗型車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004961
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】内燃機関および鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   F02B 61/02 20060101AFI20240110BHJP
   F02N 15/02 20060101ALI20240110BHJP
   F02B 77/00 20060101ALI20240110BHJP
   F16F 15/26 20060101ALI20240110BHJP
   F16D 7/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F02B61/02 C
F02N15/02 D
F02B77/00 L
F16F15/26 H
F16D7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104882
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】西田 憲司
(57)【要約】
【課題】スターターモータおよびバランサーを備えた内燃機関であって、クランク軸の軸線方向の寸法を小さくすることができ、重量の低減を図ることができる内燃機関を提供すること。
【解決手段】内燃機関5は、クランク軸11と、スターターモータ12と、クランク軸11に固定されたスターターギヤ21と、スターターギヤ21からクランク軸11への駆動力を伝達し、クランク軸11からスターターギヤ21への駆動力を遮断するワンウェイクラッチ30と、クランク軸11に固定されたバランサードライブギヤ41を有するバランサー40と、を備える。ワンウェイクラッチ30とバランサードライブギヤ41とは、一体的に形成されている。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸と、
モータ軸を有するスターターモータと、
前記クランク軸に固定され、前記モータ軸の駆動力を受けるスターターギヤと、
前記クランク軸と前記スターターギヤとの間に介在し、前記スターターギヤから前記クランク軸への駆動力を伝達し、前記クランク軸から前記スターターギヤへの駆動力を遮断するワンウェイクラッチと、
前記クランク軸に固定されたバランサードライブギヤと、前記バランサードライブギヤの駆動力を受けることにより回転するバランサードリブンギヤと、を有するバランサーと、を備え、
前記ワンウェイクラッチと前記バランサードライブギヤとは、一体的に形成されている、内燃機関。
【請求項2】
前記ワンウェイクラッチは、筒状のインナーレースと、前記インナーレースの径方向の外方に配置された筒状のアウターレースと、前記インナーレースと前記アウターレースとの間に配置されたクラッチエレメントと、を有し、
前記アウターレースは、前記クランク軸に固定され、
前記インナーレースは、前記スターターギヤに一体的に形成され、
前記バランサードライブギヤは、前記アウターレースに一体的に形成されたギヤ歯を有している、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記ギヤ歯は、前記アウターレースの径方向の外側部分に形成されている、請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記クランク軸と平行に配置されたメイン軸と、
前記メイン軸に同軸状に配置され、前記クランク軸と前記メイン軸とを断続可能に接続するクラッチと、
前記スターターギヤと噛み合い、前記モータ軸の駆動力を前記スターターギヤに伝達するスターターアイドルギヤと、を備え、
前記スターターアイドルギヤは、前記メイン軸に同軸状に配置されている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記クラッチは、前記クランク軸に連結されたクラッチハウジングと、前記クラッチハウジングに対して回転可能なクラッチボスと、を有し、
前記スターターアイドルギヤは、前記クラッチハウジングに固定され、
前記モータ軸と前記スターターアイドルギヤとの間に介在するトルクリミッターを備えた、請求項4に記載の内燃機関。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一つに記載の内燃機関を備え、
前記内燃機関は、前記クランク軸を支持するクランクケースと、前記クランクケースから車両前後方向の後方かつ車両上下方向の上方に延びるシリンダボディと、を備え、
前記スターターモータは、前記シリンダボディの後方に配置されている、鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項4または5に記載の内燃機関を備え、
前記内燃機関は、前記クランク軸を支持するクランクケースと、前記クランクケースから車両前後方向の後方かつ車両上下方向の上方に延びるシリンダボディと、を備え、
前記スターターモータは、前記シリンダボディの後方に配置され、
前記メイン軸の軸心は、前記クランク軸の軸心に対して、車両前後方向の後方かつ車両上下方向の上方に位置し、
前記モータ軸の軸心は、前記メイン軸の軸心に対して、車両前後方向の後方かつ車両上下方向の上方に位置している、鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関およびそれを備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特開2020-159325号公報に開示されているように、スターターモータおよびバランサーを備えた内燃機関が知られている。スターターモータを備えた内燃機関では、始動時にはスターターモータの駆動力をクランク軸に伝達し、始動後はクランク軸からスターターモータへの駆動力を遮断する必要がある。そこで、従来から、スターターモータとクランク軸との間に、ワンウェイクラッチが設けられている。バランサーは、クランク軸に設けられたバランサードライブギヤと、バランサードライブギヤと噛み合うバランサードリブンギヤとを有する。
【0003】
特開2020-159325号公報に開示された内燃機関では、ワンウェイクラッチおよびバランサードライブギヤはクランク軸に固定されている。クランク軸は左右方向に延びており、ワンウェイクラッチはバランサードライブギヤの右方に配置されている。すなわち、ワンウェイクラッチおよびバランサードライブギヤは、互いに別部品であり、クランク軸の軸線方向に並んで配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-159325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記内燃機関では、ワンウェイクラッチおよびバランサードライブギヤがクランク軸の軸線方向に並んでいるので、内燃機関のクランク軸の軸線方向の寸法が大きくなる傾向があった。また、ワンウェイクラッチおよびバランサードライブギヤが互いに別部品であるため、部品点数が増え、重量が増加する傾向があった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、スターターモータおよびバランサーを備えた内燃機関であって、クランク軸の軸線方向の寸法を小さくすることができ、重量を低減できる内燃機関およびそれを備えた鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される内燃機関は、クランク軸と、モータ軸を有するスターターモータと、前記クランク軸に固定され、前記モータ軸の駆動力を受けるスターターギヤと、ワンウェイクラッチと、バランサーと、を備える。前記ワンウェイクラッチは、前記クランク軸と前記スターターギヤとの間に介在し、前記スターターギヤから前記クランク軸への駆動力を伝達し、前記クランク軸から前記スターターギヤへの駆動力を遮断する。前記バランサーは、前記クランク軸に固定されたバランサードライブギヤと、前記バランサードライブギヤの駆動力を受けることにより回転するバランサードリブンギヤと、を有する。前記ワンウェイクラッチと前記バランサードライブギヤとは、一体的に形成されている。
【0008】
上記内燃機関によれば、ワンウェイクラッチとバランサードライブギヤとが一体的に形成されているので、ワンウェイクラッチとバランサードライブギヤとが互いに別部品であってクランク軸の軸線方向に並んで配置されている場合に比べて、内燃機関のクランク軸の軸線方向の寸法を小さくすることができる。また、内燃機関の重量を低減することができる。
【0009】
前記ワンウェイクラッチは、筒状のインナーレースと、前記インナーレースの径方向の外方に配置された筒状のアウターレースと、前記インナーレースと前記アウターレースとの間に配置されたクラッチエレメントと、を有していてもよい。前記アウターレースは、前記クランク軸に固定されていてもよい。前記インナーレースは、前記スターターギヤに一体的に形成されていてもよい。前記バランサードライブギヤは、前記アウターレースに一体的に形成されたギヤ歯を有していてもよい。
【0010】
前記ギヤ歯は、前記アウターレースの径方向の外側部分に形成されていてもよい。
【0011】
前記内燃機関は、前記クランク軸と平行に配置されたメイン軸と、前記メイン軸に同軸状に配置され、前記クランク軸と前記メイン軸とを断続可能に接続するクラッチと、前記スターターギヤと噛み合い、前記モータ軸の駆動力を前記スターターギヤに伝達するスターターアイドルギヤと、を備えていてもよい。前記スターターアイドルギヤは、前記メイン軸に同軸状に配置されていてもよい。
【0012】
このことにより、モータ軸とスターターギヤとの間にスターターアイドルギヤが介在するので、スターターモータをクランク軸から遠い位置に配置することができる。スターターアイドルギヤはメイン軸に同軸状に配置されているので、メイン軸の軸線方向から見て内燃機関の大型化を避けることができる。スターターアイドルギヤはメイン軸に支持されるので、スターターアイドルギヤを支持するための専用の軸は不要である。よって、部品点数を削減することができ、内燃機関の重量を低減することができる。
【0013】
前記クラッチは、前記クランク軸に連結されたクラッチハウジングと、前記クラッチハウジングに対して回転可能なクラッチボスと、を有していてもよい。前記スターターアイドルギヤは、前記クラッチハウジングに固定されていてもよい。前記内燃機関は、前記モータ軸と前記スターターアイドルギヤとの間に介在するトルクリミッターを備えていてもよい。
【0014】
ここに開示される鞍乗型車両は、前記内燃機関を備えたものである。前記内燃機関は、前記クランク軸を支持するクランクケースと、前記クランクケースから車両前後方向の後方かつ車両上下方向の上方に延びるシリンダボディと、を備えていてもよい。前記スターターモータは、前記シリンダボディの後方に配置されていてもよい。
【0015】
上記鞍乗型車両によれば、スターターモータがシリンダボディの後方に配置されているので、鞍乗型車両のマスの集中化を促進することができる。
【0016】
前記メイン軸の軸心は、前記クランク軸の軸心に対して、車両前後方向の後方かつ車両上下方向の上方に位置していてもよい。前記モータ軸の軸心は、前記メイン軸の軸心に対して、車両前後方向の後方かつ車両上下方向の上方に位置していてもよい。
【0017】
このことにより、スターターモータはクランク軸から比較的遠い位置に配置される。しかし、モータ軸とスターターギヤとの間にスターターアイドルギヤが介在するので、スターターモータによって内燃機関を良好に始動させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スターターモータおよびバランサーを備えた内燃機関であって、クランク軸の軸線方向の寸法を小さくすることができ、重量の低減を図ることができる内燃機関およびそれを備えた鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。
図2】内燃機関の一部を抽出して示す鉛直断面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る内燃機関および鞍乗型車両について説明する。図1は、鞍乗型車両の一例である自動二輪車1の右側面図である。
【0021】
以下の説明では特に断らない限り、前、後、左、右、上、下とは、乗員が乗車せずかつ荷物が載せられていない自動二輪車1が水平面上に直立した状態で停止している場合に、シート2に着座した仮想的な乗員から見た前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図中のF、Re、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。
【0022】
自動二輪車1は、ヘッドパイプ3Aを有する車体フレーム3と、乗員が座るシート2と、内燃機関(以下、エンジンという)5と、前輪6と、後輪8とを備えている。ヘッドパイプ3Aには、図示しないステアリング軸が左右に回転可能に支持されている。ステアリング軸の上部にはハンドルバー4が固定されている。ステアリング軸の下部にはフロントフォーク7が固定されている。前輪6はフロントフォーク7に支持されている。
【0023】
図2は、エンジン5の一部を抽出して示す鉛直断面図である。エンジン5は、クランクケース61と、クランクケース61から後方かつ上方に延びるシリンダボディ62とを備えている。エンジン5は、クランクケース61に支持されたクランク軸11と、図示しないコンロッドを介してクランク軸11に連結されたピストン(図示せず)とを備えている。ピストンはシリンダボディ62の内部に配置されている。
【0024】
図3図2のIII-III線断面図である。クランク軸11は左右方向に延びている。クランク軸11と平行にメイン軸13が配置されている。メイン軸13にはクラッチ50が取り付けられている。クラッチ50はメイン軸13に同軸状に配置されている。クラッチ50は、クランク軸11とメイン軸13とを断続可能に接続する。クラッチ50は、クラッチハウジング51と、クラッチハウジング51に対して回転可能なクラッチボス52と、クラッチハウジング51に支持された複数のプレート53と、クラッチボス52に支持された複数のプレート54と、プレート53とプレート54とを圧着させるプレッシャプレート55とを有している。プレート53とプレート54とは、互い違いに配置されている。クランク軸11にはギヤ17が固定されている。クラッチハウジング51には、ギヤ17と噛み合うギヤ57が形成されている。クラッチハウジング51は、ギヤ57およびギヤ17を介してクランク軸11と連結されている。クラッチハウジング51はクランク軸11と共に回転する。
【0025】
図2に示すように、エンジン5は、スターターモータ12と、トルクリミッター15と、スターターアイドルギヤ14と、スターターギヤ21と、ワンウェイクラッチ30とを備えている。また、エンジン5は、バランサードライブギヤ41およびバランサードリブンギヤ42を有するバランサー40を備えている。
【0026】
スターターモータ12は、シリンダボディ62の後方に配置されている。スターターモータ12は、クランク軸11の軸心11cよりも後方かつ上方に配置されている。スターターモータ12は、モータ軸12Aを有している。モータ軸12Aは左右方向に延びている。
【0027】
トルクリミッター15はモータ軸12Aに接続されている。トルクリミッター15は、モータ軸12Aとスターターアイドルギヤ14との間に介在する。図3に示すように、トルクリミッター15は、左右方向に延びる軸15Aと、軸15Aに摺動可能に支持されたギヤ15Bと、軸15Aに一体的に設けられたギヤ15Cとを有している。軸15Aとギヤ15Bとの間の伝達トルクが閾値以下の場合、軸15Aとギヤ15Bとは共に回転する。軸15Aとギヤ15Bとの間の伝達トルクが閾値よりも大きい場合、軸15Aとギヤ15Bとは互いに回転する。言い換えると、ギヤ15Bは軸15A上において空回りする。これにより、スターターモータ12に過大な負荷がかかることが防止されている。
【0028】
スターターアイドルギヤ14は、スターターモータ12の駆動力をスターターギヤ21に伝達するギヤである。スターターアイドルギヤ14は、スターターギヤ21と噛み合っている。スターターアイドルギヤ14は、メイン軸13に回転可能に支持されている。ここでは、スターターアイドルギヤ14は、クラッチハウジング51に固定されている。スターターアイドルギヤ14は、クラッチハウジング51を介してメイン軸13に支持されている。スターターアイドルギヤ14は、メイン軸13に同軸状に配置されている。スターターアイドルギヤ14は、トルクリミッター15のギヤ15Cと噛み合っている。スターターアイドルギヤ14は、トルクリミッター15のギヤ15Cと共に回転する。
【0029】
スターターギヤ21は、スターターモータ12の駆動力をクランク軸11に伝達するギヤである。スターターギヤ21は、クランク軸11に固定されている。スターターギヤ21は、トルクリミッター15およびスターターアイドルギヤ14を介して、モータ軸12Aの駆動力を受けるようになっている。
【0030】
ワンウェイクラッチ30は、クランク軸11とスターターギヤ21との間に介在している。ワンウェイクラッチ30は、スターターギヤ21からクランク軸11への駆動力を伝達し、クランク軸11からスターターギヤ21への駆動力を遮断する。
【0031】
バランサー40のバランサードライブギヤ41は、クランク軸11に固定されている。バランサードライブギヤ41はクランク軸11と共に回転する。図2に示すように、バランサードリブンギヤ42はバランサー軸18に支持されている。バランサードリブンギヤ42は、バランサードライブギヤ41と噛み合っている。バランサードリブンギヤ42は、バランサードライブギヤ41の駆動力を受けることにより回転する。バランサードリブンギヤ42はバランサードライブギヤ41と共に回転する。なお、図2の矢印は回転方向を表している。
【0032】
本実施形態では、ワンウェイクラッチ30とバランサードライブギヤ41とは、一体的に形成されている。図3に示すように、ワンウェイクラッチ30は、筒状のインナーレース31と、インナーレース31の径方向の外方に配置された筒状のアウターレース32と、インナーレース31とアウターレース32との間に配置されたクラッチエレメント33とを有している。アウターレース32はクランク軸11に固定されている。インナーレース31はスターターギヤ21に一体的に形成されている。インナーレース31とスターターギヤ21とは一部品となっている。ただし、インナーレース31とスターターギヤ21とは別体であってもよい。バランサードライブギヤ41は、アウターレース32と一体化されている。バランサードライブギヤ41とアウターレース32とは一部品となっている。バランサードライブギヤ41は、アウターレース32に一体的に形成された複数のギヤ歯41Aを有している。ギヤ歯41Aは、アウターレース32の径方向の外側部分に形成されている。
【0033】
図2に示すように、トルクリミッター15の軸15Aの軸心15Acは、モータ軸12Aの軸心12Acよりも後方かつ下方に位置している。メイン軸13の軸心13cは、軸15Aの軸心15Acよりも前方かつ下方に位置している。クランク軸11の軸心11cは、メイン軸13の軸心13cよりも前方かつ下方に位置している。バランサー軸18の軸心18cは、クランク軸11の軸心11cよりも前方かつ上方に位置している。ただし、上述の軸の配置は一例に過ぎず、特に限定される訳ではない。
【0034】
以上が本実施形態に係るエンジン5および自動二輪車1の構成である。次に、本実施形態によってもたらされる様々な効果について説明する。
【0035】
本実施形態に係るエンジン5によれば、図3に示すように、ワンウェイクラッチ30とバランサードライブギヤ41とが一体的に形成されている。バランサードライブギヤ41は、ワンウェイクラッチ30のアウターレース32に一体的に形成されたギヤ歯41Aを有している。ギヤ歯41Aはアウターレース32の径方向の外側部分に形成されている。本実施形態によれば、ワンウェイクラッチ30およびバランサードライブギヤ41の合計の上記軸線方向の寸法L34は、ワンウェイクラッチ30単体の上記軸線方向の寸法L30と等しい。ワンウェイクラッチ30およびバランサードライブギヤ41の合計の上記軸線方向の寸法L34は、ワンウェイクラッチ30とバランサードライブギヤ41とが互いに別部品であってクランク軸11の軸線方向に並んで配置されている場合に比べて小さい。よって、本実施形態によれば、エンジン5のクランク軸11の軸線方向の寸法を小さくすることができる。本実施形態では、クランク軸11は左右方向に延びているので、エンジン5の左右方向の寸法を小さくすることができる。また、部品点数が削減されるので、エンジン5の重量を低減することができる。
【0036】
本実施形態によれば、エンジン5はメイン軸13に同軸状に配置されたスターターアイドルギヤ14を備えている。モータ軸12Aとスターターギヤ21との間にスターターアイドルギヤ14が介在するので、スターターモータ12をクランク軸11から遠い位置に配置することができる。スターターモータ12の位置の制約が少ないので、スターターモータ12の設置自由度を高めることができる。また、スターターアイドルギヤ14はメイン軸13に同軸状に配置されているので、メイン軸13の軸線方向から見てエンジン5の大型化を避けることができる。また、スターターアイドルギヤ14はメイン軸13に支持されるので、スターターアイドルギヤ14を支持するための専用の軸は不要である。よって、部品点数を削減することができる。エンジン5の重量を低減することができる
【0037】
本実施形態によれば、図2に示すように、スターターモータ12がシリンダボディ62の後方に配置されているので、自動二輪車1のマスの集中化を促進することができる。
【0038】
本実施形態によれば、メイン軸13の軸心13cはクランク軸11の軸心11cよりも後方かつ上方に位置し、モータ軸12Aの軸心12Acはメイン軸13の軸心13cよりも後方かつ上方に位置している。スターターモータ12はクランク軸11から比較的遠い位置に配置されているが、モータ軸12Aとスターターギヤ21との間にスターターアイドルギヤ14が介在するので、スターターモータ12によってエンジン5を良好に始動させることができる。
【0039】
以上、一実施形態について説明したが、前記実施形態は例示に過ぎず、他にも様々な実施形態が可能である。
【0040】
前記実施形態では、エンジン5はスターターアイドルギヤ14を備えているが、モータ軸12Aとスターターギヤ21との距離が短い場合は、スターターアイドルギヤ14は無くてもよい。前記実施形態では、スターターアイドルギヤ14は、クラッチ50を支持するメイン軸13に支持されているが、スターターアイドルギヤ14はメイン軸13以外の軸に支持されていてもよい。
【0041】
シリンダボディ62は、必ずしもクランクケース61から後方かつ上方に延びていなくてもよい。例えば、シリンダボディ62は、クランクケース61から前方かつ上方に延びていてもよい。
【0042】
鞍乗型車両とは、乗員が跨がって乗車する車両のことである。鞍乗型車両は自動二輪車1に限定されない。鞍乗型車両は、例えば、自動三輪車、ATV(All Terrain vehicle)、スノーモービルであってもよい。
【0043】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、実施形態がここに記載されている。ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0044】
1…自動二輪車(鞍乗型車両)、5…内燃機関、11…クランク軸、12…スターターモータ、12A…モータ軸、13…メイン軸、14…スターターアイドルギヤ、15…トルクリミッター、21…スターターギヤ、30…ワンウェイクラッチ、31…インナーレース、32…アウターレース、33…クラッチエレメント、40…バランサー、41…バランサードライブギヤ、41A…ギヤ歯、42…バランサードリブンギヤ、50…クラッチ、51…クラッチハウジング、52…クラッチボス、61…クランクケース、62…シリンダボディ
図1
図2
図3