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特開2024-49621自覚式検眼装置および自覚式検眼プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049621
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】自覚式検眼装置および自覚式検眼プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/028 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
A61B3/028 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155962
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】寺部 尋久
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316AB16
4C316FA03
4C316FA14
4C316FY05
(57)【要約】
【課題】 被検眼の光学特性を精度よく取得できる自覚式検眼装置および自覚式検眼プログラムを提供する。
【解決手段】 自覚式検眼装置は、焦点距離が可変の可変焦点部材を有し、視標呈示手段から出射した視標光束の光学特性を前記可変焦点部材によって変化させる矯正手段と、矯正手段による光学特性の変化量を設定する設定手段と、設定手段が設定した変化量に基づいて、矯正手段における可変焦点部材を制御する矯正制御手段と、矯正制御手段が変化量に基づいて可変焦点部材を制御し、光学特性の変化設定が完了した後において、可変焦点部材による光学特性の変化を示す変化情報を取得する取得手段と、取得手段が取得した変化情報と、焦点部材の劣化を較正するための較正値と、を比較処理する比較処理手段と、比較処理手段による比較結果に基づいて、可変焦点部材の較正を行うための制御を実行する較正制御手段と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の光学特性を自覚的に測定するための自覚式検眼装置であって、
焦点距離が可変の可変焦点部材を有し、視標呈示手段から出射した視標光束の光学特性を前記可変焦点部材によって変化させる矯正手段と、
前記矯正手段による光学特性の変化量を設定する設定手段と、
前記設定手段が設定した前記変化量に基づいて、前記矯正手段における前記可変焦点部材を制御する矯正制御手段と、
前記矯正制御手段が前記変化量に基づいて前記可変焦点部材を制御し、前記光学特性の変化設定が完了した後において、前記可変焦点部材による前記光学特性の変化を示す変化情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記変化情報と、前記可変焦点部材の劣化を較正するための較正値と、を比較処理する比較処理手段と、
前記比較処理手段による比較結果に基づいて、前記可変焦点部材の較正を行うための制御を実行する較正制御手段と、
を備えることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項2】
請求項1の自覚式検眼装置において、
前記較正制御手段は、前記可変焦点部材の較正を行うための制御として、前記矯正制御手段が制御する前記可変焦点部材の屈折力を変更させることによって、前記可変焦点部材の較正を実行することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項3】
請求項1または2の自覚式検眼装置において、
前記較正制御手段は、前記可変焦点部材の較正を行うための制御として、前記可変焦点部材の較正に関する較正関連情報を出力することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項4】
請求項3の自覚式検眼装置において、
前記較正関連情報は、検者に前記可変焦点部材の較正を促すための誘導情報であることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項5】
請求項4の自覚式検眼装置において、
前記較正値は、前記設定手段が設定した前記変化量に応じた異なる値であることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかの自覚式検眼装置において、
前記比較処理手段は、前記変化情報と前記較正値との前記比較処理として、前記変化量と前記変化情報とのずれを示すずれ情報と、前記較正値と、の前記比較処理を実行することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかの自覚式検眼装置において、
光源から出射し、前記可変焦点部材を介した光束を検出する検出手段を備え、
前記取得手段は、前記検出手段による検出結果に基づいて、前記変化情報を取得することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項8】
請求項7の自覚式検眼装置において、
前記検出手段は、前記光源から被検物に向けて照射され、前記被検物にて前記光束が反射された反射光束を検出し、
前記取得手段は、前記検出手段が検出した前記反射光束に基づいて、前記変化情報を取得することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項9】
請求項7の自覚式検眼装置において、
前記光源は前記視標呈示手段であって、
前記検出手段は、前記視標呈示手段から出射し、前記可変焦点部材を介した前記視標光束を検出し、
前記取得手段は、前記検出手段による前記視標光束の前記検出結果に基づいて、前記変化情報を取得することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項10】
請求項7~9のいずれかの自覚式検眼装置において、
前記矯正手段は、前記視標光束の光路内に切り換えて配置することが可能な固定光学部材を有し、
前記検出手段は、前記光源から出射し、前記可変焦点部材と前記固定光学部材とを介した前記光束を検出し、
前記取得手段は、前記検出手段による前記検出結果に基づいて、前記変化情報を取得することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項11】
焦点距離が可変の可変焦点部材を有し、視標呈示手段から出射した視標光束の光学特性を前記可変焦点部材によって変化させる矯正手段を備え、
被検眼の光学特性を自覚的に測定するための自覚式検眼装置にて用いる自覚式検眼プログラムであって、
前記自覚式検眼装置のプロセッサに実行されることで、
前記矯正手段による光学特性の変化量を設定する設定ステップと、
前記設定ステップが設定した前記変化量に基づいて、前記矯正手段における前記可変焦点部材を制御する矯正制御ステップと、
前記矯正制御ステップが前記変化量に基づいて前記可変焦点部材を制御し、前記光学特性の変化設定が完了した後において、前記可変焦点部材による前記光学特性の変化を示す変化情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップが取得した前記変化情報と、前記可変焦点部材の劣化を較正するための較正値と、を比較処理する比較処理ステップと、
前記比較処理ステップによる比較結果に基づいて、前記可変焦点部材の較正を行うための制御を実行する較正制御ステップと、
を前記自覚式検眼装置に実行させることを特徴とする自覚式検眼プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の光学特性を自覚的に測定するための自覚式検眼装置および自覚式検眼プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の眼前に光学部材を配置し、被検眼に光学部材を通した検査視標を呈示することによって、被検眼の光学特性を測定する自覚式検眼装置が知られている。特許文献1では、光学部材として焦点距離を変化させることが可能な可変焦点レンズを用いて、視標光束の屈折力を変更することによって、被検眼を矯正する矯正量を変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-510384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、可変焦点レンズは、その屈折力の変化量が劣化によって低下する可能性は否定できない。例えば、可変焦点レンズが経年変化等で劣化すると、検者が所望する屈折力に変更されず、被検眼を適切に矯正することができないため、被検眼の光学特性を精度よく得られない場合がある。
【0005】
本開示は、上記の問題点を鑑み、被検眼の光学特性を精度よく取得できる自覚式検眼装置および自覚式検眼プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 本開示の第1態様に係る自覚式検眼装置は、被検眼の光学特性を自覚的に測定するための自覚式検眼装置であって、焦点距離が可変の可変焦点部材を有し、視標呈示手段から出射した視標光束の光学特性を前記可変焦点部材によって変化させる矯正手段と、前記矯正手段による光学特性の変化量を設定する設定手段と、前記設定手段が設定した前記変化量に基づいて、前記矯正手段における前記可変焦点部材を制御する矯正制御手段と、前記矯正制御手段が前記変化量に基づいて前記可変焦点部材を制御し、前記光学特性の変化設定が完了した後において、前記可変焦点部材による前記光学特性の変化を示す変化情報を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記変化情報と、前記可変焦点部材の劣化を較正するための較正値と、を比較処理する比較処理手段と、前記比較処理手段による比較結果に基づいて、前記可変焦点部材の較正を行うための制御を実行する較正制御手段と、を備えることを特徴とする。
(2) 本開示の第2態様に係る自覚式検眼プログラムは、焦点距離が可変の可変焦点部材を有し、視標呈示手段から出射した視標光束の光学特性を前記可変焦点部材によって変化させる矯正手段を備え、被検眼の光学特性を自覚的に測定するための自覚式検眼装置にて用いる自覚式検眼プログラムであって、前記自覚式検眼装置のプロセッサに実行されることで、前記矯正手段による光学特性の変化量を設定する設定ステップと、前記設定ステップが設定した前記変化量に基づいて、前記矯正手段における前記可変焦点部材を制御する矯正制御ステップと、前記矯正制御ステップが前記変化量に基づいて前記可変焦点部材を制御し、前記光学特性の変化設定が完了した後において、前記可変焦点部材による前記光学特性の変化を示す変化情報を取得する取得ステップと、前記取得ステップが取得した前記変化情報と、前記可変焦点部材の劣化を較正するための較正値と、を比較処理する比較処理ステップと、前記比較処理ステップによる比較結果に基づいて、前記可変焦点部材の較正を行うための制御を実行する較正制御ステップと、を前記自覚式検眼装置に実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】自覚式検眼装置の外観図である。
図2】投影光学系の概略図である。
図3】測定光学系の構成について説明する図である。
図4】眼屈折力測定ユニットの概略図である。
図5】レンズユニットの概略図である
図6】自覚式検眼装置の制御系の概略図である。
図7】球面矯正量と較正値との対応関係について説明する図である。
図8】検査視標を検出するための撮像素子をレンズユニットに配置した図である。
図9】前眼部画像を検出するための撮像素子をレンズユニットに配置した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
本実施形態に係る自覚式検眼装置の概要について説明する。以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用され得る。
【0009】
本実施形態の自覚式検眼装置は、被検眼の光学特性を自覚的に測定するための装置である。例えば、被検眼の光学特性は、眼屈折力(一例として、球面屈折力、円柱屈折力、乱視軸角度、等の少なくともいずれか)、両眼視機能(一例として、プリズム量、立体視機能、等の少なくともいずれか)、コントラスト感度、等であってもよい。
【0010】
<矯正手段>
本実施形態の自覚式検眼装置は、矯正手段を備えてもよい。矯正手段は、焦点距離が可変の可変焦点部材を有し、視標呈示手段から出射した視標光束の光学特性を変化させる。例えば、可変焦点部材は、1つであってもよいし、複数であってもよい。例えば、可変焦点部材は、可変焦点レンズであってもよい。可変焦点レンズとしては、液体レンズ、液晶レンズ、アルバレッツレンズ、等の少なくともいずれかを用いることができる。例えば、視標呈示手段からの視標光束は、被検眼に向けて投光光学系(例えば、投光光学系30)を介して導光されてもよい。例えば、投光光学系は、視標呈示手段から出射された視標光束を経由させるための光学部材を、少なくとも1つ有してもよい。一例として、レンズ、ミラー、等の少なくともいずれかを有してもよい。
【0011】
例えば、矯正手段は、視標光束の光学特性を変化させることができる構成であればよい。
【0012】
例えば、矯正手段は、光学素子を有してもよい。例えば、光学素子は、球面レンズ、円柱レンズ、クロスシリンダーレンズ、ロータリプリズム、波面変調素子、可変焦点部材、等の少なくともいずれかであってもよい。もちろん、光学素子は、これらとは異なってもよい。この場合、光学素子を制御することによって、視標光束の光学特性が変化される。
【0013】
また、例えば、矯正手段は、被検眼に対する視標の呈示位置(呈示距離)を光学的に変更するための構成を有してもよい。一例としては、視標呈示手段を光軸方向に移動させる構成を有してもよいし、光路中の光学素子(例えば、球面レンズ等)を光軸方向に移動させる構成を有してもよい。この場合、視標呈示手段及び光学素子の少なくともいずれかを制御するための駆動手段を制御することによって、視標光束の光学特性が変化される。
【0014】
また、例えば、矯正手段は、被検眼の眼前に、検査窓(例えば、検査窓43)を介して光学素子(例えば、光学素子51)を切り換え配置する、眼屈折力測定ユニット(例えば、眼屈折力測定ユニット40)であってもよい。例えば、眼屈折力測定ユニットは、複数の光学素子が同一円周上に配置されたレンズディスク(例えば、レンズディスク50)を有してもよい。この場合、レンズディスクを制御するための駆動手段(例えば、駆動部51、駆動部53、等)を制御することによって、視標光束の光学特性が変化される。
【0015】
なお、矯正手段として眼屈折力測定ユニットを用いる場合、眼屈折力測定ユニットは可変焦点部材を有し、可変焦点部材が視標光束の光路中に配置された状態で、可変焦点部材の焦点距離を変化させることで、視標光束の光学特性を変化させる構成であってもよい。例えば、被検眼の眼前に可変焦点部材が固定配置されてもよい。一例として、この場合には、可変焦点部材が検査窓へ常に配置されてもよい。また、例えば、被検眼の眼前に可変焦点部材が切り換えて配置されてもよい。一例として、この場合には、可変焦点部材がレンズディスクに設けられてもよい。
【0016】
<設定手段>
本実施形態の自覚式検眼装置は、設定手段(例えば、制御部60)を備えてもよい。設定手段は、矯正手段による光学特性の変化量を設定する。例えば、矯正手段による光学特性の変化量とは、可変焦点部材によって視標光束の光学特性を変化させるために指定する所定の屈折力と所定の角度の少なくともいずれかであってもよい。一例として、矯正手段による光学特性の変化量は、検者が指定する任意の球面屈折力、円柱屈折力、および乱視軸角度の少なくともいずれかであってもよい。また、一例として、矯正手段による光学特性の変化量は、実験やシミュレーションによって予め設定された球面屈折力、円柱屈折力、および乱視軸角度の少なくともいずれかであってもよい。また、一例として、矯正手段による光学特性の変化量は、被検眼を他覚的に測定した光学特性(他覚値)に基づく、球面屈折力(球面矯正量)、円柱屈折力(円柱矯正量)、および乱視軸角と(乱視軸矯正量)の少なくともいずれかであってもよい。
【0017】
例えば、設定手段は、検者による操作手段(例えば、検者用コントローラ70)の操作によって入力された、任意の変化量を設定してもよい。また、例えば、設定手段は、可変焦点部材の劣化を較正するための較正モードが選択されることで、自動的に所定の変化量を設定してもよい。また、例えば、設定手段は、被検者毎の識別子を読み取り、識別子に格納された変化量を設定してもよい。一例として、識別子には、ID、文字列、1次元コード、2次元コード、カラーコード、等を利用してもよい。また、例えば、設定手段は、本実施形態の自覚式検眼装置とは異なる装置を用いて測定したデータを受信することで、変化量を設定してもよい。
【0018】
<矯正制御手段>
本実施形態の自覚式検眼装置は、矯正制御手段(例えば、制御部60)を備えてもよい。矯正制御手段は、設定手段が設定した光学特性の変化量に基づいて、矯正手段における可変焦点部材を制御する。例えば、矯正制御手段は、可変焦点部材を制御し、視標光束の光学特性をシームレスに(継ぎ目なく)変化させる。例えば、制御手段は、可変焦点部材が視標光束の光路中に配置された状態で、可変焦点部材の焦点距離を変化させることによって、視標光束の光学特性を変化させてもよい。一例として、制御手段は、被検眼の眼前に可変焦点部材が固定配置されている場合、可変焦点部材の焦点距離を変化させてもよい。また、一例として、制御手段は、眼屈折力測定ユニットのレンズディスクに可変焦点部材が設けられている場合、眼屈折力測定ユニットのレンズディスクを回転させ、レンズディスク上の可変焦点部材を検査窓に配置させるとともに、可変焦点部材の焦点距離を変化させてもよい。
【0019】
<取得手段>
本実施形態の自覚式検眼装置は、取得手段(例えば、制御部60)を備えてもよい。取得手段は、矯正制御手段が光学特性の変化量に基づいて可変焦点部材を制御し、光学特性の変化設定が完了した後において、可変焦点部材による光学特性の変化を示す変化情報を取得する。例えば、可変焦点部材による光学特性の変化を示す変化情報とは、可変焦点部材による視標光束の光学特性の変化設定が完了する前と完了した後の間で変化する情報であってもよい。
【0020】
例えば、可変焦点部材による光学特性の変化を示す変化情報は、可変焦点部材が制御されることによって変化した、視標光束の光学特性に関する光学特性情報であってもよい。一例としては、設定手段が設定した視標光束の光学特性の変化量に対する、実際の光学特性の値であってもよい。言い換えると、可変焦点部材による視標光束の光学特性の変化設定が完了した後における、実際の視標光束の光学特性の値であってもよい。例えば、このような光学特性情報は屈折力(一例として、球面屈折力、円柱屈折力、乱視軸角度、等の少なくともいずれか)であってもよく、取得手段は、可変焦点部材による視標光束の屈折力の変化設定が完了した後における、実際の視標光束の屈折力の値を取得してもよい。
【0021】
また、例えば、可変焦点部材による光学特性の変化を示す変化情報は、可変焦点部材が制御されることによって変化した、光源からの光束の像に関する画像情報であってもよい。例えば、光源からの光束の像は、光源から照射されて可変焦点部材を介した撮影光束に基づく、被検眼の前眼部を撮影した前眼部画像であってもよい。また、例えば、光源からの光束の像は、光源から照射されて可変焦点部材を介したパターン光束に基づくパターン画像であってもよい。一例として、この場合には、光源からの光束を任意のパターン光束に変換するために多数の孔をもつスクリーン(いわゆるハルトマン板)を設け、パターン画像として複数の点画像を取得してもよい。また、この場合には、光源からの光束を任意のパターン光束に変換するためにリング光学部材(例えば、リングレンズ等)を設け、パターン画像としてリング画像を取得してもよい。例えば、光源からの光束の像は、このような前眼部画像とパターン画像(ここでは、点画像、リング画像、等)のいずれかであってもよいし、組み合わせであってもよいし、前眼部画像およびパターン画像とは異なる画像を含んでもよい。
【0022】
例えば、光源からの光束の像に関する画像情報は、各々の画像における輝度情報、コントラスト情報、等の少なくともいずれかであってもよい。例えば、輝度情報は、輝度値、輝度分布、ヒストグラム、ぼけ量、等の少なくともいずれかであってもよい。もちろん、輝度情報は、これらの組み合わせであってもよい。例えば、コントラスト情報は、コントラスト値、コントラスト感度、ぼけ量、等の少なくともいずれかの情報であってもよい。もちろん、コントラスト情報は、これらの組み合わせであってもよい。例えば、光源からの光束の像に関する画像情報は、このような輝度情報とコントラスト情報のいずれかであってもよいし、組み合わせであってもよいし、輝度情報およびコントラスト情報とは異なる情報を含んでもよい。
【0023】
なお、例えば、光源からの光束の像に関する画像情報は、各々の画像における輝度情報やコントラスト情報の差分処理によって得られる、類似度、一致度、等の少なくともいずれかであってもよい。例えば、予め準備された前眼部画像やパターン画像等の基準となる画像と、取得手段が取得した前眼部画像やパターン画像等の対象となる画像と、の差分処理として、エッジ検出、テンプレートマッチング、等の手法を用いることで、類似度、一致度、等の少なくともいずれかを算出し、取得してもよい。
【0024】
取得手段は、可変焦点部材による光学特性の変化を示す変化情報として、視標光束の光学特性に関する光学特性情報と、光源からの光束の像に関する画像情報と、いずれか一方を取得してもよい。もちろん、視標光束の光学特性に関する光学特性情報と、光源からの光束の像に関する画像情報と、の双方を取得してもよい。
【0025】
<比較処理手段>
本実施形態の自覚式検眼装置は、比較処理手段(例えば、制御部60)を備えてもよい。比較処理手段は、取得手段が取得した変化情報と、可変焦点部材の劣化を較正するための較正値と、を比較処理する。
【0026】
例えば、較正値は、可変焦点部材に劣化が生じているか否かを検出するための値であってもよい。例えば、較正値は、検者が任意に設定することが可能な値であってもよいし、実験やシミュレーションによって予め設定された固定の値であってもよい。例えば、較正値は所定の閾値として設けられてもよい。一例として、所定の閾値は、設定手段が設定した変化量と同一の値であってもよい。また、一例として、所定の閾値は、設定手段が設定した変化量とは異なる値であってもよい。このような所定の閾値は、1つであってもよいし、複数であってもよい。例えば、較正値として所定の閾値を複数設ける場合には、較正値が所定の許容範囲として設けられてもよい。
【0027】
例えば、較正値は、設定手段が設定した視標光束の光学特性の変化量にかかわらず、一律の値として設けられてもよい。また、例えば、較正値は、設定手段が設定した視標光束の光学特性の変化量に応じた異なる値として設けられてもよい。例えば、この場合には、設定手段が設定した変化量が、所定の変化量を超えるか否かに応じて、較正値が変更されてもよい。一例としては、5.0D未満と5.0D以上で、較正値が変更されてもよい。また、例えば、この場合には、設定手段が設定した変化量の段階に応じて、較正値が変更されてもよい。一例としては、設定手段が設定した変化量が、0.25D単位、1.0D単位、5.0D単位、等で変化する毎に、較正値が変更されてもよい。なお、設定手段によって設定される、可変焦点部材による光学特性の変化量の絶対値が大きい(すなわち、光学特性の変化量が高度数である)ほど、取得手段によって取得される可変焦点部材の変化情報は、経年変化していた場合に大きくずれる可能性がある。このため、本実施例のように、変化量毎の異なる較正値を設定しておくことで、可変焦点部材を精度よく較正できる。
【0028】
例えば、比較処理手段は、取得手段が取得した変化情報と、可変焦点部材の劣化を較正するための較正値とを、直接的に比較処理してもよい。例えば、比較処理手段は、取得手段が取得した変化情報と、可変焦点部材の劣化を較正するための較正値と、の比較処理として、差分処理を実行してもよい。これによって、例えば、取得手段が取得した変化情報と、可変焦点部材の劣化を較正するための較正値と、におけるパラメータの差分結果が取得されてもよい。例えば、前述の取得手段が、可変焦点部材による光学特性の変化を示す変化情報として光学特性情報を取得する場合、パラメータは屈折力(例えば、球面屈折力、円柱屈折力、および乱視軸角度の少なくともいずれか)であってもよい。例えば、前述の取得手段が、可変焦点部材による光学特性の変化を示す変化情報として画像情報を取得する場合、パラメータは、輝度値、輝度分布、ヒストグラム、コントラスト値、コントラスト感度、ぼけ量、類似度、一致度、等の少なくともいずれかであってもよい。
【0029】
例えば、比較処理手段は、設定手段が設定した光学特性の変化量と、取得手段が取得した変化情報と、のずれを示すずれ情報と、可変焦点部材の劣化を較正するための較正値と、の比較処理を実行することによって、取得手段が取得した変化情報と、可変焦点部材の劣化を較正するための較正値と、を間接的に比較処理してもよい。例えば、設定手段が設定した光学特性の変化量と、取得手段が取得した変化情報と、に基づくずれ情報は、これらの差分処理によって求めてもよい。一例としては、光学特性の変化量と、変化情報における光学特性情報と、の差分処理によって求めてもよい。また、一例としては、光学特性の変化量と、変化情報における画像情報と、の差分処理によって求めてもよい。なお、この場合には、設定手段が設定した視標光束の光学特性の変化量に対する、実際の光学特性の値を、画像情報に基づいて算出してもよい。例えば、可変焦点部材に経年変化等が生じると、設定手段にて設定した光学特性の変化量と、取得手段が取得した変化情報と、が互いに異なる場合がある。このため、このようなずれ情報を用いて、変化量と変化情報の間のずれを容易に検出してもよい。
【0030】
なお、比較処理手段は、上記の構成に限定されず、取得手段が取得した変化情報と、可変焦点部材の劣化を較正するための較正値と、が比較できる構成であればよい。
【0031】
<較正制御手段>
本実施形態の自覚式検眼装置は、較正制御手段(例えば、制御部60)を備えてもよい。較正制御手段は、比較処理手段による比較結果に基づいて、可変焦点部材の較正を行うための制御を実行する。例えば、比較処理手段による比較結果は、取得手段が取得した変化情報と、可変焦点部材の劣化を較正するための較正値と、の差分結果であってもよい。また、例えば、比較処理手段による比較結果は、取得手段が取得した変化情報が、可変焦点部材の劣化を較正するための較正値と一致するか否かを検出した検出結果であってもよい。また、例えば、比較処理手段による比較結果は、取得手段が取得した変化情報が、可変焦点部材の劣化を較正するための較正値を超えるか否かを検出した検出結果であってもよい。例えば、較正制御手段は、このような比較処理手段による比較結果に基づき、可変焦点部材の較正を行うための制御を実行することによって、可変焦点部材に経年変化等にともなう劣化が生じた場合でも、可変焦点部材の屈折力の精度を維持することができる。
【0032】
例えば、較正制御手段は、可変焦点部材の較正を行うための制御として、矯正制御手段が制御する可変焦点部材の屈折力を変更させることによって、可変焦点部材の較正を実行してもよい。例えば、較正制御手段は、取得手段が取得する視標光束の光学特性の変化情報が、可変焦点部材の劣化を較正するための較正値におさまるように、可変焦点部材に対して追加的な屈折力を付加してもよい。また、例えば、較正制御手段は、設定手段にて設定した視標光束の光学特性の変化量と、取得手段が取得する視標光束の光学特性の変化情報と、のずれが可変焦点部材の劣化を較正するための較正値におさまるように、可変焦点部材に対して追加的な屈折力を付加してもよい。例えば、較正制御手段は、可変焦点部材の駆動量を調整することにより、可変焦点部材の屈折力を変更させて、可変焦点部材の較正を実行してもよい。一例として、較正制御手段は、可変焦点部材に所定の印加電圧を与えた際に正しい屈折力が発生するように、印加電圧を調整することによって、較正を実行してもよい。これによって、可変焦点部材の屈折力の精度を維持することができる。
【0033】
例えば、較正制御手段は、可変焦点部材の較正を行うための制御として、可変焦点部材の較正に関する較正関連情報を出力してもよい。例えば、較正制御手段は、表示手段を制御し、表示手段に較正関連情報を表示させてもよい。また、例えば、較正制御手段は、音声発生手段(一例として、スピーカ)を制御し、音声発生手段に較正関連情報を音声として発生させてもよい。また、例えば、較正制御手段は、報知手段(一例として、ランプ)を制御し、報知手段の点灯や点滅により較正関連情報を表してもよい。また、例えば、較正制御手段は、印刷手段を制御し、印刷手段に較正関連情報を印刷させてもよい。もちろん、例えば、較正制御手段は、これらを組み合わせた制御を実行してもよいし、これらとは異なる制御を実行してもよい。これによって、可変焦点部材の較正を容易に行うことができる。
【0034】
例えば、較正制御手段は、較正関連情報として、比較処理手段による比較結果を出力してもよい。また、例えば、較正制御手段は、較正関連情報として、検者に対して可変焦点部材の較正を実行する旨を報知する報知情報を出力してもよい。この場合、較正制御手段は、検者が報知情報を確認し、操作手段を操作することによって入力される操作信号に基づいて、可変焦点部材の屈折力を変更させるようにしてもよい。また、例えば、較正制御手段は、較正関連情報として、検者に可変焦点部材の較正を促すための誘導情報を出力してもよい。この場合、較正制御手段は、誘導情報として、可変焦点部材の較正が必要な旨を表すアイコン、検者の次の操作を示すメッセージ、検者が次の操作を実行するために選択するボタンの位置を示す誘導マーク、等の少なくともいずれかを出力してもよい。なお、誘導情報は、可変焦点部材の較正を促すことができるものであればよく、アイコン、メッセージ、誘導マーク、等とは異なるものであってもよい。これによって、検者は、誘導情報を確認し、可変焦点部材を較正するか否かを容易に判断できる。
【0035】
<検出手段>
本実施形態の自覚式検眼装置は、検出手段を備えてもよい。例えば、検出手段は、自覚式検眼装置における任意の位置に配置することが可能であってもよい。例えば、自覚式検眼装置は、検出手段を一体的に備えてもよい。また、例えば、自覚式検眼装置は、自覚式検眼装置に装着するアタッチメントとして検出手段を備えてもよい。
【0036】
例えば、検出手段は、光源から出射し、可変焦点部材を介した光束を検出する。例えば、検出手段は、可変焦点部材に対して被検眼側に配置されてもよいし、可変焦点部材に対して被検眼とは反対側に配置されてもよい。この場合、取得手段は、検出手段による検出結果に基づいて、可変焦点部材による光学特性の変化を示す変化情報を取得してもよい。例えば、可変焦点部材が劣化していない状態と劣化した状態とでは、光源からの光束が可変焦点部材を介すことによって得られる検出結果が異なるため、このような構成を備えることによって、可変焦点部材の変化情報を容易に取得することができる。
【0037】
例えば、検出手段は、光源から被検物に向けて照射され、被検物にて光束が反射された反射光束を検出してもよい。例えば、被検物は、被検眼、模型眼、等の少なくともいずれかであってもよい。この場合、取得手段は、検出手段が検出した反射光束に基づいて、可変焦点部材による光学特性の変化を示す変化情報を取得してもよい。
【0038】
例えば、被検物が被検眼または模型眼である場合、検出手段は、光源から被検眼(模型眼)に向けて照射され、被検眼(模型眼)の角膜にて光束が反射された角膜反射光束を検出してもよい。これによって、例えば、光源から照射されて可変焦点部材を介した撮影光束に基づき、被検眼に投影された角膜輝点像、被検眼の前眼部画像、角膜輝点像を含む前眼部画像、等の少なくともいずれかが検出されてもよい。
【0039】
また、例えば、被検物が被検眼または模型眼である場合、検出手段は、光源から被検眼(模型眼)に向けて照射され、被検眼(模型眼)の眼底にて光束が反射された眼底反射光束を検出してもよい。この場合、光源から照射されて可変焦点部材を介した撮影光束を任意のパターン光束として取り出すための光学部材が、撮影光束の光路中に設けられていてもよい。一例として、多数の孔をもつスクリーン、リング光学部材、等の光学部材が撮影光束の光路中に設けられていてもよい。これによって、例えば、検出手段は、光源から照射されて可変焦点部材を介したパターン光束に基づくパターン画像として、点画像やリング画像を検出してもよい。例えば、可変焦点部材が劣化していない状態と劣化した状態とでは、被検物にて光束が反射された反射光束によって得られる検出結果が異なる。より詳細には、パターン画像の形状が異なる。このため、このような構成を備えることによって、可変焦点部材の変化情報を容易に取得することができる。
【0040】
例えば、検出手段は、視標呈示手段から出射し、可変焦点部材を介した視標光束を検出してもよい。この場合、取得手段は、検出手段による視標光束の検出結果に基づいて、可変焦点部材による光学特性の変化を示す変化情報を取得してもよい。すなわち、光源として視標呈示手段が用いられ、視標呈示手段から照射されて可変焦点部材を介した視標光束が、視標呈示手段に表示された視標の像として検出され、視標の像に基づいて変化情報が取得されてもよい。例えば、可変焦点部材が劣化していない状態と劣化した状態とでは、このような視標の像の見え方が異なって検出されるため、このような構成であることにより、可変焦点部材の変化情報を容易に取得することができる。
【0041】
なお、本実施形態の自覚式検眼装置において、矯正手段は、視標呈示手段から出射した視標光束の光路内に切り換えて配置することが可能な固定光学部材を有してもよい。例えば、固定光学部材は、焦点距離が一定の光学部材であってもよい。一例としては、球面レンズ、円柱レンズ、等であってもよい。この場合、検出手段は、光源から出射し、可変焦点部材と固定光学部材とを介した光束を検出してもよい。また、取得手段は、検出手段による検出結果に基づいて、可変焦点部材による光学特性の変化を示す変化情報を取得してもよい。例えば、可変焦点部材が経年変化等により劣化する一方で、固定光学部材は一定の屈折力をもつため、経年変化等による劣化の影響を受けにくい。このため、例えば、可変焦点部材で調整した屈折力を相殺するように固定光学部材を配置し、可変焦点部材と固定光学部材とを介した光束を検出することによって、可変焦点部材の変化情報を容易に取得することができる。
【0042】
なお、本開示は、本実施形態に記載する装置に限定されない。例えば、上記実施形態の機能を行う端末制御ソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種記憶媒体等を介して装置あるいはシステムに供給し、装置あるいはシステムの制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出して実行することも可能である。
【0043】
<実施例>
本実施例における自覚式検眼装置の構成について説明する。本実施例では、自覚式検眼装置として、視標を表示するディスプレイと、被検眼の屈折力を自覚的に測定する眼屈折力測定ユニットと、を一体に備えた自覚式検眼装置を例示する。もちろん、例えば、ディスプレイが自覚式検眼装置とは別の筐体として設けられてもよい。
【0044】
<装置外観>
図1は、自覚式検眼装置100の外観図である。図1(a)は、眼屈折力測定ユニット40が待機位置に支持された状態である。図1(b)は、眼屈折力測定ユニット40が測定位置に支持された状態である。例えば、自覚式検眼装置100は、筐体1、呈示窓2、スピーカ3、保持ユニット4、検者用コントローラ70、眼屈折力測定ユニット40、等を備える。
【0045】
筐体1は、投光光学系30を内部に有する。呈示窓2は、投光光学系30による視標光束を透過させる。被検眼Eには、呈示窓2を介して視標光束が投影される。なお、被検眼Eと呈示窓2の間に眼屈折力測定ユニット40が配置された場合(図1(b)参照)、被検眼Eには、呈示窓2および後述の検査窓43を介して視標光束が投影される。これによって、被検眼Eに検査視標が呈示される。スピーカ3は、音声ガイド等を出力する。
【0046】
保持ユニット4は、眼屈折力測定ユニット40を保持する。例えば、保持ユニット4は、図示なき駆動部(モータ等)の駆動によりアームを移動させることで、アームに連結された眼屈折力測定ユニット40を移動させる。これによって、眼屈折力測定ユニット40の待機位置と測定位置が切り換えられる。
【0047】
検者用コントローラ70は、検者が自覚式検眼装置100を操作するために用いる。検者用コントローラ70は、スイッチ部71、モニタ72、等を備える。スイッチ部71は、各種の設定(例えば、眼屈折力測定ユニット40の移動、等)を行うための信号を入力する。モニタ72は、各種の情報(例えば、被検眼Eの測定結果、等)が表示される。なお、モニタ72は、スイッチ部71を兼ねたタッチパネルとして機能してもよい。検者用コントローラ70からの信号は、有線通信あるいは無線通信により、後述する制御部60へ出力される。
【0048】
<投光光学系>
以下、投影光学系30について説明する。例えば、図2は、投影光学系の概略図である。図2(a)は、遠用検査時における光学配置を示している。図2(b)は、近用検査時における光学配置を示している。例えば、投影光学系30は、視標呈示部を有し、視標呈示部から出射された視標光束を被検眼Eに向けて投影する。例えば、本実施例において、視標呈示部として、ディスプレイ(例えば、ディスプレイ11)が用いられる。例えば、投影光学系30は、ディスプレイ11、平面ミラー12、凹面ミラー13、遠近切換部20等を備える。
【0049】
例えば、ディスプレイ11には、ランドルト環視標や固視標等の検査視標が表示される。例えば、ディスプレイ11の表示は、後述する制御部60によって制御される。例えば、ディスプレイとしては、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)、プラズマディスプレイ等を用いてもよい。
【0050】
例えば、図2(a)に示す遠用検査時には、ディスプレイ11の画面が筺体2の奥側を向き、視標光束が奥方向に向けて出射される。なお、視標光束は、ディスプレイから水平方向(Z方向)に出射されてもよいし、斜め方向(YZ方向)に出射されてもよい。例えば、図2(b)に示す近用検査時には、ディスプレイ11の画面が上側を向き、視標光束が上方向に向けて出射される。なお、視標光束は、ディスプレイから垂直方向(Y方向)に出射されてもよいし、斜め方向(YZ方向)に出射されてもよい。このようにして、ディスプレイ11からの視標光束は被検眼Eに向けて投影される。
【0051】
例えば、平面ミラー12は、ディスプレイ11からの視標光束を反射させ、凹面ミラー13に導光する。また、例えば、平面ミラー12は、ディスプレイ11からの視標光束を反射させ、被検眼Eに導光する。例えば、平面ミラー12は、その下部(図2における平面ミラー12の実線部)にのみミラーコートを施しており、上部(図2における平面ミラー12の点線部)にはミラーコートを施していない。
【0052】
このため、本実施例では平面ミラー12の上部が透明な構成となっている。例えば、近用検査時における平面ミラー12の焦点距離は、ディスプレイから被検眼Eまでの光学距離が40cmとなるように設計されている。なお、本実施例においては、視標光束を反射させることが可能であればよく、平面ミラーを用いる構成に限定されない。例えば、反射部材であればよい。この場合、例えば、プリズム、ビームスプリッタ、ハーフミラー等を用いる構成であってもよい。
【0053】
例えば、凹面ミラー13は、ディスプレイ11からの視標光束を平面ミラー12に向けて反射する。例えば、凹面ミラー13は、ディスプレイ11に表示された検査視標の呈示距離を遠用検査距離に設定する。例えば、凹面ミラー13の焦点距離は、ディスプレイ11から被検眼Eまでの光学距離が5mとなるように設計されている。なお、本実施例においては、凹面ミラー13を用いる構成に限定されない。例えば、視標光束を反射することのできる反射部材であってもよい。この場合、例えば、非球面ミラーや自由曲面ミラー等を用いる構成であってもよい。また、例えば、レンズを用いる構成であってもよい。この場合、例えば、ディスプレイ11からレンズを介して、被検眼Eに視標光束が投影されることで、レンズによって、ディスプレイ11から被検眼Eまでの光学距離が5mとなるように設計されている構成であってもよい。
【0054】
例えば、ビームスプリッタ150は、平面ミラー12によって反射されたディスプレイ11からの視標光束を透過し、被検眼Eに導く。また、例えば、ビームスプリッタ150は、後述する測定光学系100の測定光源130から出射された測定光を反射し、被検眼Eへ導光する。
【0055】
例えば、図2(a)に示す遠用検査時において、被検者の被検眼Eには、ディスプレイ11から出射し、平面ミラー12、凹面ミラー13、平面ミラー12、ビームスプリッタ150の順に光学部材を経由した視標光束が投影される。すなわち、ディスプレイ11から出射した視標光束は、光軸L1を通って平面ミラー12に入射すると、光軸L2方向に反射されて、凹面ミラー13へと向かう。この視標光束が凹面ミラー13に入射すると、光軸L3方向に反射されて、平面ミラー12へと向かう。さらに、視標光束が平面ミラー12に入射すると、光軸L4方向に反射されて、ビームスプリッタ150を通過して、被検者の被検眼Eに投影される。また、例えば、図2(b)に示す近用検査時において、被検者の被検眼Eには、ディスプレイ11から出射し、平面ミラー12に反射された視標光束がビームスプリッタ150を通過して投影される。すなわち、ディスプレイ11から出射した視標光束は、光軸L3を通って平面ミラー12に入射し、光軸L4方向に反射され、ビームスプリッタ150を介して、被検者の被検眼Eに投影される。例えば、投影光学系30は、このようにして、筺体2の内部から外部へと視標光束を射出する。
【0056】
例えば、遠近切換部20は、遠用検査時における遠用検査光路と近用検査時における近用検査光路とを切り換えるために用いられる。例えば、遠用検査光路は、ディスプレイ11から出射された視標光束を、凹面ミラー13を介して被検眼に向けて投影することで、遠用検査距離にて視標光束を前記被検眼に投影する光路である。また、例えば、近用検査光路は、ディスプレイ11からの視標光束の像が凹面ミラー13を介すことなく近用検査距離にて被検眼に投影する光路である。
【0057】
例えば、遠近切換部20は、遠用検査時と近用検査時とにおいて、ディスプレイ11の位置を変更する。例えば、遠近切換部20は、保持部21、ギヤ22、モータ23等を備える。例えば、保持部21は、ディスプレイ11を保持する。例えば、ギヤ22は、ウォーム部24とホイール部25を有する。例えば、ウォーム部24とホイール部25は、互いが噛み合うギヤで形成されている。例えば、ウォーム部24にはモータ23が連結されており、ホイール部25には保持部21が連結されている。例えば、モータ23が駆動することでウォーム部24が回転し、これに伴ってホイール部25が矢印方向に回転する。これによって、ディスプレイ11を保持部21とともに一体的に移動させることが可能であり、ディスプレイ11の画面に表示される検査視標の呈示位置を、遠用検査時と近用検査時とで切り換えることができる。なお、ギヤ22及びモータ23は筐体2の側壁に配置されており、ディスプレイ11から被検眼Eに向かう視標光束を妨げない位置に配置されている。
【0058】
<測定光学系>
図3は、測定光学系100の構成について説明する図である。以下、図2図3を用いて測定光学系100について説明する。例えば、測定光学系100は、被検眼の光学特性を他覚的に測定する。例えば、被検眼の光学特性としては、眼屈折力、眼軸長、角膜形状、等が挙げられる。なお、本実施形態においては、被検眼の眼屈折力を測定する測定光学系を例に挙げて説明する。
【0059】
例えば、測定光学系100は、投光光学系105、受光光学系120を備える。なお、本実施形態において、例えば、投光光学系105は、測定光源130、対物光学系110を備える。もちろん、例えば、投光光学系105は、測定光源130のみで構成されていてもよい。例えば、受光光学系120は、受光用対物光学系140、CCD等の検出器121を備える。
【0060】
例えば、本実施例において、測定光学系100は、測定光源130から測定光を出射し、対物光学系110を介して、被検眼Eの瞳孔中心部を介して被検眼Eの眼底にスポット状の測定光を投影する。例えば、測定光学系100は、受光用対物光学系140によって、眼底から反射された眼底反射光を、瞳孔周辺部を介してリング状に取り出し、リング状の眼底反射像を検出器121によって検出する。なお、測定光学系100は上記のものに限らず、測定光源から出射された測定光を被検者眼眼底に向けて投光する投光光学系と、測定光の眼底での反射によって取得される反射光を検出器によって受光する受光光学系と、を有する測定光学系であればよい。
【0061】
例えば、対物光学系110は、投光光学系105の光軸L5上に配置された、リレーレンズ111、ホールミラー112、対物レンズ113を含む。例えば、測定光源130も投光光学系105の光軸L5上に配置される。例えば、測定光源130は被検眼眼底と共役な関係となっており、ホールミラー112のホール部は瞳孔と共役な関係となっている。
【0062】
例えば、受光用対物光学系140は、対物光学系110の対物レンズ113、ホールミラー112を共用し、ホールミラー112の反射方向の受光光学系120の光軸L6に配置されたリレーレンズ126、ミラー125、受光絞り124、コリメータレンズ123、リングレンズ122を含む。例えば、受光絞り124及び検出器121は、被検眼眼底と共役な関係となっている。例えば、リングレンズ122は、リング状に形成されたレンズ部と、レンズ部以外の領域に遮光用のコーティングを施した遮光部と、から構成され、被検眼の瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。例えば、検出器121からの出力は、制御部60に入力される。本実施例において、例えば、受光光学系120の光軸L6がホールミラー112によって、投光光学系105の光軸L5と同軸とされる。もちろん、例えば、受光光学120の光軸L6と、投光光学系105の光軸L5とが同軸でない構成であってもよい。
【0063】
上記構成において、測定光源130から出射された測定光は、リレーレンズ111、ホールミラー112、対物レンズ113を経て、ビームスプリッタ150に照射される。例えば、ビームスプリッタ150に照射された測定光は、ビームスプリッタ150によって被検眼Eの方向へ反射される。被検眼Eの方向へ反射された測定光は、眼屈折力測定ユニット5の検眼窓43及び検眼窓に配置される光学部材(例えば、後述するレンズディスク50の光学部材)を介して、被検眼Eの眼底上にスポット状の点光源像を形成する。すなわち、測定光は、投光光学系105の光軸L5に沿って被検眼に照射される。
【0064】
例えば、被検眼眼底に照射された点光源像は反射・散乱されて被検眼Eを射出し、ビームスプリッタ150によって反射され、対物レンズ113によって集光される。対物レンズ113によって集光された反射光は、ホールミラー112によって、リレーレンズ126方向に反射され、リレーレンズ126、ミラー125を介して、受光絞り124の位置に再び集光される。受光絞り124に集光された反射光は、コリメータレンズ123及びリングレンズ122によって、検出器121にリンク状の像を結像させる。
【0065】
<眼屈折力測定ユニット(矯正光学系)>
図4は、眼屈折力測定ユニット40の概略図である。眼屈折力測定ユニット40は、被検眼Eの屈折力を自覚的に測定する。また、眼屈折力測定ユニット40は、矯正光学系として用いられる。矯正光学系は、投光光学系30の光路中に配置され、視標光束の光学特性を変化させる。例えば、眼屈折力測定ユニット40は、額当て41、レンズユニット42、検査窓43、移動ユニット44、等を備える。
【0066】
額当て41は、被検者の頭部を当接させることで、被検眼Eを所定の検査位置に固定し、被検眼Eから検査窓43までの距離を一定に保つ。レンズユニット42は、左右一対の左レンズユニット42Lと右レンズユニット42Rを有する。レンズユニット42は、検査窓43(左検査窓43Lおよび右検査窓43R)を有する。
【0067】
移動ユニット44は、左レンズユニット42Lと右レンズユニット42Rの間隔、および、左レンズユニット42Lと右レンズユニット42Rの輻輳角(内寄せ角)、を調整する。例えば、移動ユニット44は、駆動部45(左駆動部45Lおよび右駆動部45R)の駆動により、左レンズユニット42Lと右レンズユニット42Rの間隔を調整する。また、例えば、移動ユニット44は、駆動部46の駆動により、左レンズユニット42Lと右レンズユニット42Rの輻輳角を調整する。なお、移動ユニット44の詳細な構成は、例えば、特開2004-329345号公報を参考されたい。
【0068】
図5は、レンズユニット42の概略図である。図5(a)は、レンズユニット42の内部の構成図である。図5(b)は、レンズユニット42における水平方向の断面図である。なお、図5(a)および図5(b)は、左レンズユニット42Lのみを図示し、右レンズユニット42Rの図示を省略している。例えば、レンズユニット42は、可変焦点レンズ61、ストークスレンズ62、およびレンズディスク50を備える。
【0069】
可変焦点レンズ91は、レンズユニット42内にて固定配置される。可変焦点レンズ91は、球面屈折力を印加電圧の大きさに応じて調整し、焦点位置を変更することによって、所定の範囲内を連続的に変化する球面屈折力を発生させることができる。例えば、本実施例では、-5.00D~+5.00Dの球面屈折力を発生させることができる。
【0070】
ストークスレンズ92は、レンズユニット42内にて回転可能に配置される。ストークスレンズ92は、2枚の円柱レンズ92aと92bで構成される。例えば、円柱レンズ92aと92bは、焦点距離の等しい、正の円柱レンズと負の円柱レンズである。なお、円柱レンズ92aと92bは、焦点距離の等しい、2枚の正の円柱レンズとすることも可能である。
【0071】
円柱レンズ92aと円柱レンズ92bは、それぞれ、回転機構54aと54bの駆動によって、光軸L4を中心として各々が独立に回転される。円柱レンズ92aと円柱レンズ92bの少なくとも一方の回転角度を変更し、各円柱レンズの軸角度に差を設けることによって、所定の範囲内を連続的に変化する円柱屈折力を発生させることができる。例えば、本実施例では、-10.00D~+10.00Dの円柱屈折力を発生させることができる。また、円柱レンズ92aと円柱レンズ92bの軸角度の差を維持した状態で双方の回転角度を一体的に変更することによって(すなわち、円柱レンズ92aと円柱レンズ92bの合成軸角度を変更することによって)、所定の範囲内を連続的に変化する乱視軸角度を調整することができる。例えば、本実施例では、1度~180度の乱視軸角度を調整することができる。
【0072】
レンズディスク50は、開口(または、0Dのレンズ)と複数の光学素子51を同一円周上に有する。レンズディスク50は、駆動部52の駆動によって、ディスク中心を基準に回転される。また、各光学素子51は、駆動部53の駆動によって、光軸L4を中心として回転される。これによって、所望の光学素子51が、所望の角度で、検査窓43に切り換え配置される。
【0073】
例えば、本実施例では、第1補助レンズディスク50aと、第2補助レンズディスク50bと、が設けられる。第1補助レンズディスク50aには、光学素子51として、偏光フィルタ、赤フィルタ/緑フィルタ、分散プリズム、マドックスレンズ、等が設けられる。第2補助レンズディスク50bには、光学素子51として、素通しレンズ、ロータリプリズム、オートクロスシリンダレンズ、第1球面レンズ51a、第2球面レンズ51b、等が設けられる。例えば、素通しレンズには、被検眼Eの瞳孔間距離を位置合わせするためのマークが付されている。例えば、第1球面レンズ51aは、眼鏡装用位置の換算で-10.00Dとなる球面度数を有したレンズである。例えば、第2球面レンズ51bは、眼鏡装用位置の換算で+10.00Dとなる球面度数を有したレンズである。例えば、第1球面レンズ51aと第2球面レンズ51bの球面屈折力は、可変焦点レンズ61の球面屈折力の所定の範囲よりも大きい屈折力である。
【0074】
<球面屈折力の調整範囲>
本実施例においては、可変焦点レンズ91と、第1球面レンズ51aまたは第2球面レンズ51bのいずれかと、を組み合わせた場合には、可変焦点レンズ91のみで調整可能な球面屈折力の範囲を拡大することができる。例えば、可変焦点レンズ91を0.0D~-5.00Dのいずれかに設定し、第1球面レンズ51a(-10.00D)を組み合わせることによって、-10.00D~-15.00Dの球面屈折力を発生させることができる。例えば、可変焦点レンズ91を0.0D~+5.00Dのいずれかに設定し、第2球面レンズ51b(+10.00D)を組み合わせることによって、+10.00D~+15.00Dの球面屈折力を発生させることができる。
【0075】
つまり、本実施例では、可変焦点レンズのみを用いて、-5.00D~+5.00Dの球面屈折力をシームレスに発生させることができる。また、可変焦点レンズ91に加えて、第1球面レンズ51aまたは第2球面レンズ51bを検査窓43に配置することによって、-10.00D~-15.00Dの球面屈折力、および、+10.00D~+15.00Dの球面屈折力を、シームレスに発生させることができる。従って、全体としては、-15.00D~+15.00Dの球面屈折力をシームレスに発生させることができる。
【0076】
例えば、被検眼Eの球面矯正量と、可変焦点レンズ91の球面屈折力と、第1球面レンズ51aおよび第2球面レンズ51bの球面屈折力と、は予め対応付けられていてもよい。例えば、被検眼Eの球面矯正量が、可変焦点レンズ91にて調整可能な球面屈折力を超える場合に、第1球面レンズ51aおよび第2球面レンズ51bで球面屈折力を発生させる(言い換えると、第1球面レンズ51aまたは第2球面レンズ51bを配置する)ように、予め対応付けられていてもよい。一例としては、被検眼Eの球面矯正量に基づいて、可変焦点レンズ91の球面屈折力の値と、第1球面レンズ51aおよび第2球面レンズ51bの球面屈折力の値と、を参照するための参照テーブル等が予め準備され、メモリ75に記憶されていてもよい。
【0077】
<制御部>
図6は自覚式検眼装置100の制御系の概略図である。例えば、制御部60は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等を備える。例えば、CPUは、自覚式検眼装置1における各部材の制御を司る。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、自覚式検眼装置100の動作を制御するための各種プログラムや、検査視標データ等が記憶されている。なお、制御部60は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0078】
制御部60には、スピーカ3、ディスプレイ11、検者用コントローラ70、不揮発性メモリ80(以下、メモリ80)、光源91、検出器121、光源130等が接続されている。また、制御部60には、保持ユニット4の駆動部、遠近切換部34の駆動部、眼屈折力測定ユニット40の駆動部(駆動部45、46、52、53)、等が接続されている。
【0079】
メモリ80は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる、非一過性の記憶媒体である。例えば、メモリ80としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等を用いることができる。
【0080】
<制御動作>
以上のような構成を備える自覚式検眼装置100の制御動作について説明する。例えば、本実施例における自覚式検眼装置100の可変焦点レンズ91は、球面屈折力をシームレスに(継ぎ目を生じることなく)変化させることができる。しかしながら、可変焦点レンズ91が劣化すると、検者が所望する屈折力に変更されず、被検眼Eを適切に矯正することができない。このため、可変焦点レンズ91の劣化を検出して、可変焦点レンズ91を必要に応じて較正する。
【0081】
なお、本実施例では、被検眼を他覚的に測定した測定結果を利用し、可変焦点レンズ91における視標光束の光学特性の変化量(すなわち、可変焦点レンズ91の屈折力)として、被検眼を0Dに矯正するための矯正量を指定する。また、制御部60が、被検眼を0Dに矯正するための矯正量に基づいて可変焦点レンズ91を制御し、可変焦点レンズ91による光学特性(屈折力)の調整が完了した後に、可変焦点レンズ91による視標光束の光学特性の変化を示す変化情報として、可変焦点レンズ91の実際の屈折力を取得することで、可変焦点レンズ91に劣化が生じているかを検出する。以下、詳細に説明する。
【0082】
<被検眼の位置合わせ>
まず、検者は、検者用コントローラ70を操作して、眼屈折力測定ユニット40を下降させるための図示無きスイッチを選択する。例えば、制御部60は、検者用コントローラ70からの操作信号の出力に基づいて、保持ユニット4の駆動部を駆動させる。例えば、これによって眼屈折力測定ユニット40が検査位置(図1(b)参照)へと移動し、眼屈折力測定ユニット40が光軸L4、光軸L5、および光軸L6上に配置される。
【0083】
続いて、検者は、眼屈折力測定ユニット40に対する被検眼Eの位置合わせを行う。例えば、検者は被検者に対し、額当て41に顔を当接させて検査窓43を覗くよう指示する。被検者は、検者の指示に応じて検査窓43を覗き込む。検者は、被検眼の角膜頂点間距離VDが所定の距離(例えば、12mm)となるように、図示無き額当て調整ノブを操作して、額当て41の位置を調整する。また、例えば、検者は、検者用コントローラ70を操作して、予め測定した被検眼Eの瞳孔間距離PDを入力する。例えば、制御部60は、駆動部45を駆動させ、左右レンズユニット42の間隔を調整し、検査窓43の間隔を被検眼の瞳孔間距離PDに合わせて変更する。これによって、被検眼Eの位置合わせが終了する。
【0084】
<被検眼の他覚眼屈折力の取得>
続いて、検者は、被検眼Eの他覚眼屈折力を取得する。例えば、他覚眼屈折力測定装置を用いて予め測定した他覚眼屈折力を取得する。例えば、検者は、検者用コントローラ70を操作して被検者IDを入力し、所定のスイッチを操作する。例えば、制御部60は、スイッチからの入力信号に基づいて、被検者IDに対応付けられた他覚眼屈折力を送信させるように、他覚眼屈折力測定装置に向けて操作信号を出力する。例えば、他覚眼屈折力測定装置の制御部は、自覚式検眼装置100から被検者IDを受信すると、被検者IDに対応する他覚眼屈折力をメモリから呼び出し、自覚式検眼装置100に向けて送信する。自覚式検眼装置100の制御部60は、他覚眼屈折力測定装置から送信された他覚眼屈折力を受信する。これによって、被検眼Eの他覚眼屈折力を取得することができる。例えば、本実施例では、被検眼Eの第1他覚眼屈折力として、第1球面屈折力-2.0D、第1円柱屈折力0.0D、第1乱視軸角度0度、が得られた場合を例に挙げる。
【0085】
<被検眼の矯正量の設定>
例えば、制御部60は、被検眼Eの他覚眼屈折力を取得すると、他覚眼屈折力に基づいて、被検眼Eを矯正するための矯正量を設定する。また、例えば、制御部60は、被検眼Eを矯正するための矯正量に基づいて、可変焦点レンズ91、ストークスレンズ92、レンズディスク50、等の少なくともいずれかを制御する。本実施例では、被検眼Eを0.0Dに矯正するために、他覚眼屈折力に基づいて、球面矯正量-2.0D、円柱矯正量0.0D、乱視軸矯正量(乱視軸矯正角度)0度、がそれぞれ設定される。制御部60は、可変焦点レンズ91を制御して、可変焦点レンズ91の球面屈折力が-2.0Dとなる所定の印加電圧を与える。また、制御部60は、ストークスレンズ92を制御して、ストークスレンズ92による円柱屈折力が0.0D、乱視軸角度が0度となるように、円柱レンズ92aと円柱レンズ92bを回転させる。また、制御部60は、レンズディスク50を制御して、検査窓43に開口を合わせる。これによって、可変焦点レンズ91が劣化していなければ、可変焦点レンズ91の球面屈折力は-2.0Dに調整され、結果として被検眼Eは0.0Dに矯正される。
【0086】
<可変焦点レンズの実際の屈折力の取得>
続いて、検者は、自覚式検眼装置100が備える測定光学系100を用いて、被検眼Eの眼屈折力を他覚的に測定する。例えば、検者によって検者用コントローラ70が操作され、測定を開始するためのスイッチが選択される。例えば、制御部60は、検者用コントローラ70からの操作信号の出力に基づいて、投光光学系105の測定光源130から測定光を出射させる。この場合、測定光は、対物光学系110、ビームスプリッタ150、眼屈折力測定ユニット40を介して、被検眼Eの眼底に投影される。眼底から反射された測定光の反射光は、眼屈折力測定ユニット40、ビームスプリッタ150、受光光学系120を介して、受光光学系120の検出器121により、リング状の像(リング像)として検出される。
【0087】
例えば、検出器121からの出力信号は、メモリ80に画像データ(測定画像)として記憶される。その後、制御部60は、メモリ80に記憶されたリング像を画像解析して、各経線方向の屈折力の値を求めるとともに、これらの屈折力に対して所定の処理を行うことで、被検眼の眼屈折力を取得する。なお、ここでは、測定光学系100における測定光および反射光が眼屈折力測定ユニット40(可変焦点レンズ91)を介していることで、可変焦点レンズ91の球面屈折力が反映された状態での第2他覚眼屈折力が取得される。例えば、本実施例では、被検眼Eの第2他覚眼屈折力として、第2球面屈折力-0.25D、第2円柱屈折力0.0D、第2乱視軸角度0度、が得られた場合を例に挙げる。
【0088】
例えば、制御部60は、第1他覚眼屈折力と第2他覚眼屈折力とを比較することによって、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力を求める。より詳細には、第1球面屈折力と第2球面屈折力との差分を求め、被検眼を矯正するために設定した球面矯正量に差分を足し合わせることによって、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力を求める。例えば、本実施例では、可変焦点レンズ91が劣化していない場合、可変焦点レンズ91が適切に駆動されるので、被検眼Eは0.0Dに矯正され、第2球面屈折力は0.0Dとなる。しかし、本実施例での第2球面屈折力は-0.25Dであり、第1球面屈折力と第2球面屈折力の間にずれが生じている。制御部60は、第1球面屈折力と第2球面屈折力との差分(-0.25D)を求めて、被検眼を矯正するために設定した球面矯正量(-2.0D)に差分を足し合わせる。これによって、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力が、-2.0Dではなく、-2.25Dであると取得される。
【0089】
<可変焦点レンズの実際の屈折力と較正値の比較>
図7は、被検眼を矯正するために設定した球面矯正量と較正値との対応関係を説明する図である。例えば、本実施例では、被検眼を矯正するために設定した球面矯正量と較正値とを対応付けたルックアップテーブル81が、実験やシミュレーションを予め行うことで作成され、メモリ80に記憶されている。すなわち、被検眼を矯正するために設定した球面矯正量毎の較正値が、ルックアップテーブルとしてメモリ80に記憶されている。例えば、較正値は、可変焦点レンズ91の実際の屈折力の許容範囲として示されてもよい。
【0090】
制御部60は、ルックアップテーブル81を参照し、被検眼を矯正するために設定した球面矯正量(-2.0D)に対応する較正値を取得する。ここでは、較正値が-1.94Dから-2.06Dまでとされ、許容範囲として±0.06Dが取得される。次に、制御部60は、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力(-2.25D)と、較正値(-1.95D~-2.05D)と、を比較処理する。一例としては、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力が、較正値の上限以下であり、かつ、較正値の下限以上であるかを求める。これによって、例えば、可変焦点レンズ91の実際の屈折力が較正値におさまるかどうかが検出される。
【0091】
<可変焦点レンズの較正の報知>
例えば、制御部60は、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力と較正値を比較処理した比較結果を、検者用コントローラ70のモニタ72に表示してもよい。例えば、制御部60は、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力が較正値におさまる場合は、可変焦点レンズ91を較正する必要がないとみなし、その旨を示すメッセージを表示してもよい。また、例えば、制御部60は、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力が較正値におさまらない場合は、可変焦点レンズ91を較正する必要があるとみなし、その旨を示すメッセージを表示してもよい。
【0092】
本実施例では、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力は-2.25Dであり、較正値の-1.95D~-2.05Dにおさまらないため、可変焦点レンズ91の較正を開始することを示すメッセージがモニタ72に表示される。また、このようなメッセージとともに、検者がメッセージを確認した際に操作する操作ボタンがモニタ72に表示される。例えば、検者がメッセージの内容を確認し、操作ボタンを押すと、可変焦点レンズの較正が自動的に実行される。
【0093】
<可変焦点レンズの較正の実行>
例えば、制御部60は、操作ボタンからの入力信号に基づいて、可変焦点レンズ91の較正を実行する。例えば、制御部60は、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力と較正値との差分に基づいて、可変焦点レンズ91の駆動量を取得する。例えば、本実施例では、可変焦点レンズ91の駆動量として、可変焦点レンズ91へ追加的に与える印加電圧(つまり、印加電圧の補正量)を取得する。例えば、制御部60は、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力と較正値との差分と、可変焦点レンズ91に与える印加電圧と、を対応付けたルックアップテーブルを用いて、印加電圧の補正量を取得する。例えば、このようなルックアップテーブルは、実験やシミュレーションから予め設定され、メモリ80に記憶されていてもよい。例えば、制御部60は、ルックアップテーブルを呼び出し、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力と較正値との差分に対応する印加電圧の補正量を取得する。
【0094】
例えば、制御部60は、被検眼Eを矯正するための球面矯正量に基づいた、可変焦点レンズ91の球面屈折力を調整するための所定の印加電圧に対して、さらに、補正量として得られた印加電圧を足し合わせることによって、可変焦点レンズ91を較正してもよい。例えば、被検眼Eを矯正するための球面矯正量にかかわらず、可変焦点レンズ91の球面屈折力を調整するための所定の印加電圧に対して、補正量として得られた印加電圧を一律に付加してもよい。
【0095】
本実施例では、可変焦点レンズ91の球面屈折力が-2.0Dとなる所定の印加電圧に加えて、補正量として得られた印加電圧を付加することによって、可変焦点レンズ91を較正してもよい。例えば、可変焦点レンズ91が劣化しており、被検眼Eを矯正するための球面矯正量として-2.0Dを設定したにもかかわらず、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力が-2.25Dに調整されるような場合であっても、本実施例のように可変焦点レンズ91の較正が実行されることによって、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力は-2.0Dに正しく調整される。
【0096】
以上、説明したように、例えば、本実施例の自覚式検眼装置は、焦点距離が可変の可変焦点部材を有し、視標呈示手段から出射した視標光束の光学特性を可変焦点部材によって変化させる矯正手段と、矯正手段による光学特性の変化量を設定する設定手段と、設定手段が設定した変化量に基づいて、矯正手段における可変焦点部材を制御する矯正制御手段と、矯正制御手段が変化量に基づいて可変焦点部材を制御し、光学特性の変化設定が完了した後において、可変焦点部材による光学特性の変化を示す変化情報を取得する取得手段と、取得手段が取得した変化情報と、可変焦点部材の劣化を較正するための較正値と、を比較処理する比較処理手段と、比較処理手段による比較結果に基づいて、可変焦点部材の較正を行うための制御を実行する較正制御手段と、を備える。これによって、可変焦点部材に経年変化等にともなう劣化が生じた場合でも、可変焦点部材の屈折力の精度を維持することができる。
【0097】
また、例えば、本実施例の自覚式検眼装置において、較正制御手段は、可変焦点部材の較正を行うための制御として、矯正制御手段が制御する可変焦点部材の屈折力を変更させることによって、可変焦点部材の較正を実行する。例えば、可変焦点部材の駆動量を調整することにより、可変焦点部材の屈折力を変更させて、可変焦点部材の較正を実行してもよい。一例としては、可変焦点部材に所定の印加電圧を与えた際に正しい屈折力が発生するように、印加電圧を調整することによって、較正を実行してもよい。これによって、可変焦点部材の屈折力の精度を維持することができる。
【0098】
また、例えば、本実施例の自覚式検眼装置において、較正制御手段は、可変焦点部材の較正を行うための制御として、可変焦点部材の較正に関する較正関連情報を出力する。例えば、較正関連情報として、経年変化等により可変焦点部材の屈折力が変化した変化量、可変焦点部材の較正を実施する必要がある旨を示す情報、等を出力してもよい。例えば、較正制御手段が、検者が確認するための較正関連情報を出力することで、検者は、可変焦点部材の較正が行われることを把握したり、可変焦点部材の較正を行うかどうかを判断したりできるため、可変焦点部材の較正を容易に行うことができる。また、例えば、較正制御手段が、自覚式検眼装置に向けた較正関連情報を出力することで、自動的に可変焦点部材の駆動量を調整することができる、可変焦点部材の較正を容易に行うことができる。
【0099】
また、例えば、本実施例の自覚式検眼装置において、可変焦点部材の劣化を較正するための較正値は、設定手段が設定した変化量に応じた異なる値である。例えば、可変焦点部材による光学特性の変化量の絶対値が大きい(すなわち、光学特性の変化量が高度数である)ほど、可変焦点部材が経年変化していた場合の実際の屈折力の変化が大きくなる可能性が有る。このため、例えば、可変焦点部材による光学特性の変化量にかかわらず一律に較正値を設定した場合、光学特性の変化量が小さい値に対する較正値は大きくなるので、適正に較正が行われない可能性がある。また、光学特性の変化量が大きい値に対する較正値は小さくなるので、頻繁に較正を行う必要が生じる可能性がある。従って、矯正手段による光学特性の変化量毎に異なる較正値を設定しておくことで、適正タイミングでの較正、頻度や手間の軽減、等に繋がり、可変焦点部材を容易に較正することができる。
【0100】
また、例えば、本実施例の自覚式検眼装置は、光源から出射し、可変焦点部材を介した光束を検出する検出手段を備え、取得手段は、検出手段による検出結果に基づいて、変化情報を取得する。例えば、可変焦点部材が劣化していない状態と劣化した状態とでは、光源からの光束が可変焦点部材を介すことによって得られる検出結果が異なるため、このような構成を備えることによって、可変焦点部材の変化情報を容易に取得することができる。
【0101】
また、例えば、本実施例の自覚式検眼装置において、検出手段は、光源から被検物に向けて照射され、被検物にて光束が反射された反射光束を検出し、取得手段は、検出手段が検出した反射光束に基づいて、変化情報を取得する。例えば、可変焦点部材が劣化していない状態と劣化した状態とでは、被検物にて光束が反射された反射光束によって得られる検出結果が異なる。一例としては、被検眼の眼底反射光束を検出することによって得られるパターン像(本実施例では、リング像)の形状が異なる。例えば、パターン像の形状の違いを利用することで、光学特性の変化を示す変化情報として、光学特性の屈折力を求めることができる。このような構成を備えることによって、可変焦点部材の変化情報(ここでは、光学特性の屈折力)と較正値とを容易に比較処理することができる。
【0102】
<変容例>
本実施例では、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力と較正値を比較処理した比較結果として、可変焦点レンズ91の較正を自動的に開始することを示すメッセージを表示する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力と較正値を比較処理した比較結果として、検者に可変焦点レンズ91の較正を促すための誘導情報を表示してもよい。一例として、誘導情報は、検者に可変焦点レンズ91の較正が必要な旨を報知するメッセージ、検者に可変焦点レンズ91の較正を実行するか否かを問うメッセージ、検者の次の操作を示すメッセージ、検者が次の操作を実行するために選択するボタンの位置を示す誘導マーク、等であってもよい。
【0103】
例えば、本実施例の自覚式検眼装置は、可変焦点部材の較正を行うための制御として、可変焦点部材の較正に関する較正関連情報を出力することが可能であり、較正関連情報は、検者に可変焦点部材の較正を促すための誘導情報である。例えば、検者は、誘導情報を確認することによって、可変焦点部材較正するか否かを容易に判断することができる。
【0104】
本実施例では、被検眼を矯正するために設定した球面矯正量毎に、可変焦点レンズ91の劣化を較正するための較正値(言い換えると、可変焦点レンズ91の実際の屈折力の許容範囲)が設定されている構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検眼を矯正するために設定した球面矯正量にかかわらず、このような較正値が一律に設定されてもよい。つまり、被検眼を矯正するために設定した球面矯正量が異なっていても、可変焦点レンズ91の実際の屈折力に対して、常に同じ較正値(同じ許容範囲)が適用されてもよい。
【0105】
本実施例では、可変焦点レンズ91の劣化を較正するための較正値として、可変焦点レンズ91の実際の屈折力の許容範囲が設定されている構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検眼を矯正するために設定した球面矯正量を基準とした、プラス方向またはマイナス方向のいずれかに対する所定の球面矯正量(すなわち、所定の閾値)が、較正値として設定されていてもよい。この場合、制御部60は、可変焦点レンズ91の実際の屈折力と、所定の閾値(較正値)と、を比較処理し、可変焦点レンズ91の実際の屈折力が所定の閾値を超えるか否かを比較結果として取得してもよい。また、例えば、被検眼を矯正するために設定した球面矯正量と同じ値が、較正値として設定されていてもよい。この場合、制御部60は、可変焦点レンズ91の実際の屈折力と、被検眼を矯正するために設定した球面矯正量(較正値)と、を比較処理し、可変焦点レンズ91の実際の屈折力と球面矯正量とが一致するか否かを比較結果として取得してもよい。
【0106】
本実施例では、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力と、可変焦点レンズ91を較正するための較正値と、を比較処理する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力と較正値との比較処理として、被検眼を矯正するために設定した球面矯正量と、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力と、のずれ量を求め、このずれ量と較正値とを比較処理する構成としてもよい。この場合、ずれ量に対する許容範囲が較正値として設けられてもよい。
【0107】
例えば、本実施例では、被検眼を矯正するために設定した球面矯正量が-2.0Dであり、可変焦点レンズ91の実際の球面屈折力が-2.25Dである。このため、まず、制御部60はこれらのずれ量(-0.25D)を求める。次に、制御部60は、被検眼を矯正するために設定した球面矯正量(-2.0D)に対応する較正値として、ずれ量に対する許容範囲を取得する。一例として、較正値は-0.06Dから+0.06Dまでとされてもよい(つまり、許容範囲は±0.06Dとされてもよい)。次に、制御部60は、ずれ量(-0.25D)と較正値(-0.06D~+0.06D)とを比較処理し、ずれ量が較正値の上限以下および較正値の下限以上であるかを検出する。例えば、このような比較処理による比較結果に基づいて、可変焦点レンズ91の較正を行うための制御が実行されてもよい。
【0108】
例えば、このように、本実施例の自覚式検眼装置において、比較処理手段は、可変焦点部材による光学特性の変化を示す変化情報と、可変焦点部材の劣化を較正するための較正値と、の比較処理として、変化量と変化情報とのずれを示すずれ情報と、較正値と、の比較処理を実行する。例えば、可変焦点部材は、経年変化等にともなう劣化によって、可変焦点部材で変化させるように設定した光学特性の変化量に対し、実際の光学特性の変化量(変化情報)が異なる値となることがあり、このような変化量と変化情報の間にずれが発生する。このため、例えば、比較処理にずれ情報を用いることでずれの有無を容易に検出でき、結果として可変焦点部材を精度よく較正することができる。
【0109】
本実施例では、光源130から出射し、可変焦点レンズ91を介した光束を検出することによって、可変焦点レンズ91の実際の屈折力を取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。より詳細には、測定光学系100を用いて、被検眼Eの眼底に向けて、可変焦点レンズ91を介した測定光束を照射するとともに、眼底による測定光束の反射光束を、可変焦点レンズ91を介して検出することによって、可変焦点レンズ91の実際の屈折力を取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、光源としてディスプレイ11を利用し、ディスプレイ11からの可変焦点レンズ91を介した視標光束を検出することによって、可変焦点レンズ91の実際の屈折力を取得する構成としてもよい。本実施例では、ディスプレイ11に表示される検査視標やパターン像を検出するための検出ユニットをレンズユニット42に設け、検出された検査視標やパターン像に基づいて、可変焦点レンズ91の実際の屈折力が反映されたぼけ量を取得する場合を例に挙げる。
【0110】
図8は、検査視標を検出するために、検出ユニット200をレンズユニット42に配置した図である。なお、図8は、左レンズユニット42Lのみを図示し、右レンズユニット42Rの図示を省略している。例えば、検出ユニット200は、図8に点線で示す待機位置に配置されており、可変焦点レンズ91が劣化しているか否かを確認する場合等、必要時にのみ、図8に実線で示す検出位置へと移動させることができる。例えば、検出ユニット200は、ディスプレイ11に表示される検査視標やパターン像を検出するために用いる。例えば、検出ユニット200は、レンズユニット42の前面(すなわち、被検眼E側であり、呈示窓3とは反対側)に配置される。例えば、検出ユニット200は、駆動部55、平面ミラー93、撮像素子94、等を備える。
【0111】
例えば、駆動部55は、レンズユニット42に対して検出ユニット200を移動させる。これによって、検出ユニット200は、被検眼Eを自覚式検査が行われる際の待機位置と、ディスプレイ11の検査視標を検出するための検出位置と、が切り換えられる。例えば、被検眼Eの自覚式測定が行われる際には、検出ユニット200を図8に示す点線の待機位置に移動させることで、被検眼Eの眼前に検査窓43を配置することができる。例えば、可変焦点レンズ91の劣化を確認する際には、検出ユニット200を図8に示す実線の検出位置に移動させることで、ディスプレイ11からの視標光束を撮像素子94へ導光することができる。例えば、平面ミラー93は、可変焦点レンズ91の前方(被検眼E側)に配置される。なお、平面ミラー93は、プリズム、ビームスプリッタ等を用いる構成であってもよい。例えば、撮像素子94は、ディスプレイ11からの視標光束の像を撮像する。例えば、検出ユニット200を検出位置に移動させた場合、ディスプレイ11から出射した視標光束は、光軸L1~光軸L4(図2参照)を通って平面ミラー93に入射し、光軸L7方向に反射されて、撮像素子94に撮像される。なお、本実施例における検出ユニット200は一例であり、被検眼E側において光軸L4上に配置されることで、可変焦点レンズ91を通してディスプレイ11から出射した視標光束を撮像できる構成であればよい。
【0112】
例えば、検者は、検者用コントローラ70を操作して、検出ユニット200を検出位置に移動させるための図示無きスイッチを選択する。例えば、制御部60は、検者用コントローラ70からの操作信号に基づいて、駆動部55を駆動させ、検出ユニット200を検出位置に移動させる。また、例えば、検者は、検者用コントローラ70を操作して、可変焦点レンズ91の球面屈折力を変化させるための球面矯正量を指定する。ここでは、一例として、球面矯正量-5.0Dを指定する。例えば、制御部60は、検者用コントローラ70からの操作信号に基づいて、検者が指定した球面矯正量となる所定の印加電圧を可変焦点レンズ91に付加する。これによって、可変焦点レンズ91が劣化していなければ、可変焦点レンズ91の球面屈折力は-5.0Dに調整された状態になる。
【0113】
例えば、制御部60は、可変焦点レンズ91に所定の印加電圧が付加されると、ディスプレイ11からの視標光束を撮像するためのトリガ信号を発する。また、例えば、制御部60は、トリガ信号に基づいて、視標光束の像を撮像素子94に撮像させる。例えば、本実施例では、ディスプレイ11に点群視標が表示され、可変焦点レンズ91を介した点群視標像が撮像される。例えば、このような点群視標像はメモリ70に記憶される。
【0114】
例えば、制御部60は、基準とする点群視標像(基準画像)と、検出ユニット200を用いて撮影した対象の点群視標像(対象画像)と、に基づいて、基準とする点群視標像に対する対象の点群視標像のぼけ量を検出する。例えば、可変焦点レンズ91の球面屈折力毎に、対応する基準画像が予めメモリ80に記憶されている。このため、例えば、制御部60は、可変焦点レンズ91の球面屈折力が-5.0Dであるときの基準画像と、実際に取得された対象画像と、を画像処理する。一例としては、基準画像におけるエッジの検出量と、対象画像におけるエッジの検出量と、を求め、それぞれのエッジの検出量を差分処理することにより、基準画像に対する対象画像のぼけ量を求める。なお、可変焦点レンズ91が劣化しておらず、可変焦点レンズ91に所定の印加電圧が正しく与えられた場合、基準画像と対象画像は同一(略同一)となり、基準画像に対する対象画像のぼけ量は0となる。
【0115】
例えば、制御部60は、上記のぼけ量が得られた場合、基準画像に対する対象画像のぼけ量と、可変焦点レンズ91の劣化を較正するための較正値と、を比較処理する。例えば、較正値は、対象画像のぼけ量に対する所定の閾値として設けられてもよい。例えば、制御部60は、対象画像のぼけ量が較正値(閾値)を超えるかどうかを、対象画像のぼけ量と較正値との差分を求めることによって、検出してもよい。また、例えば、制御部60は、対象画像のぼけ量と較正値を比較処理した比較結果に基づいて、可変焦点レンズ91の較正の有無の報知、可変焦点レンズ91の較正の実行、等を行う。一例としては、検者用コントローラ70のモニタ72に比較結果を表示してもよい。また、一例としては、可変焦点レンズ91へ追加的に与える印加電圧(つまり、印加電圧の補正量)を比較結果に基づいて取得することで、可変焦点レンズ91を較正してもよい。この場合、対象画像のぼけ量と較正値との差分と、可変焦点レンズ91に与える印加電圧と、を対応付けたルックアップテーブルを用いて印加電圧の補正量を求め、印加電圧の補正量に基づいて可変焦点レンズ91を較正してもよい。
【0116】
例えば、このように、本実施例の自覚式検眼装置において、光源は視標呈示手段であって、検出手段は、視標呈示手段から出射し、可変焦点部材を介した視標光束を検出し、取得手段は、検出手段による視標光束の検出結果に基づいて、変化情報を取得する。例えば、光源として視標呈示手段を用いることにより、視標呈示手段からの光束が可変焦点部材を介すことによって得られる検出結果として、視標呈示手段に呈示された検査視標等の像を得ることができる。可変焦点部材が劣化していない状態と劣化した状態とでは、このような像の見え方が異なって検出される。従って、このような構成を備えることで、可変焦点部材の変化情報を容易に取得することができる。
【0117】
本実施例では、ディスプレイ11における視標像を検出ユニット200で検出することによって、可変焦点レンズ91の実際の屈折力が反映されたぼけ量を取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検眼Eの前眼部を照明し、被検眼Eの前眼部を撮像した前眼部画像を検出ユニット200で検出することによって、可変焦点レンズ91の実際の屈折力が反映されたぼけ量を取得する構成としてもよい。
【0118】
図9は、前眼部画像を検出するために、検出ユニット200をレンズユニット42に配置した図である。なお、図9は、左レンズユニット42Lのみを図示し、右レンズユニット42Rの図示を省略している。例えば、検出ユニット200は、可変焦点レンズ91が劣化しているか否かを確認する場合等、必要時にのみ、レンズユニット42へ取り付けることが可能である。もちろん、検出ユニット200を待機位置に配置しておき、必要時にのみ、検出位置へと移動させるようにしてもよい。例えば、検出ユニット200は、被検眼Eの前眼部を撮像するために用いる。例えば、検出ユニット200は、レンズユニット42の後面(すなわち、呈示窓3側であり、被検眼Eとは反対側)に配置される。検出ユニット200の内部の構成は、図8と同様であり、説明を省略する。
【0119】
なお、このような構成では、検出ユニット200とともに、被検眼Eの前眼部を照明するための図示なき照明ユニットが設けられていてもよい。例えば、照明ユニットは、少なくとも照明光源を備えてもよい。例えば、照明光源は、レンズユニット42の前面(被検眼E側)に配置される。一例としては、検査窓43の周辺に配置されてもよい。例えば、照明光源は、検出ユニット200の装着(あるいは、検出ユニット200の検出位置への移動)にともなって、点灯されてもよい。例えば、検出ユニット200が検出位置にある場合、照明光源から出射した照明光束は、被検眼Eの前眼部にて反射され、この反射光束は光軸L4を通ってハーフミラー93に入射し、光軸L8方向に反射されて、撮像素子94に撮像される。
【0120】
例えば、検者は、検者用コントローラ70を操作して、可変焦点レンズ91の球面屈折力を変化させるための球面矯正量を指定する。ここでは、一例として、球面矯正量0.0Dを指定する。例えば、制御部60は、検者用コントローラ70からの操作信号の出力に基づいて、検者が指定した球面矯正量となるように、印加電圧の付加を停止する。これによって、可変焦点レンズ91が劣化していなければ、可変焦点レンズ91の球面屈折力は0.0Dに調整された状態になる。例えば、制御部60は、可変焦点レンズ91における印加電圧の付加が停止されると、前眼部画像を撮影するためのトリガ信号を発する。また、例えば、制御部60は、トリガ信号が発せられると、前眼部画像を撮像素子94に撮影させる。例えば、このように撮影された前眼部画像はメモリ80に記憶される。
【0121】
例えば、制御部60は、基準とする前眼部画像(基準画像)と、検出ユニット200を用いて撮影した対象の前眼部画像(対象画像)と、に基づいて、基準画像に対する対象画像のぼけ量を検出する。例えば、可変焦点レンズ91の球面屈折力毎に、対応する基準画像が予めメモリ80に記憶されている。このため、例えば、制御部60は、可変焦点レンズ91の球面屈折力が0.0Dであるときの基準画像と、実際に取得された対象画像と、を画像処理(一例として、エッジ検出等)する。例えば、可変焦点レンズ91に付加する印加電圧が停止され、可変焦点レンズ91の球面屈折力が0.0Dとなれば、基準画像と対象画像は同一(略同一)となり、基準画像に対する対象画像のぼけ量は0となる。しかし、可変焦点レンズ91に付加する印加電圧が停止されても、可変焦点レンズ91の球面屈折力が戻り切らず0.0Dとならない場合、基準画像に対する対象画像のぼけ量が得られる。
【0122】
例えば、制御部60は、上記のぼけ量が得られた場合、基準画像に対する対象画像のぼけ量と、可変焦点レンズ91の劣化を較正するための較正値と、を比較処理する。一例として、制御部60は、対象画像のぼけ量が較正値(所定の閾値)を超えるかどうかを、対象画像のぼけ量と較正値との差分を求めることによって、検出してもよい。また、例えば、制御部60は、対象画像のぼけ量と較正値を比較処理した比較結果に基づいて、可変焦点レンズ91の較正の有無の報知、可変焦点レンズ91の較正の実行、等を行う。例えば、このように、可変焦点レンズ91が劣化していない状態と劣化した状態とでは前眼部画像の見え方が異なって検出されるため、前眼部画像を利用して、可変焦点レンズ91の状態を判断するようにしてもよい。
【0123】
なお、被検眼Eの前眼部画像を利用する場合、図示なき照明ユニットが備える照明光源は、被検眼の角膜に輝点を投影するためのユニットを兼ねてもよい。この場合、検出ユニット200の撮像素子94は、角膜に輝点像が投影された状態の前眼部画像を撮像することが可能である。例えば、制御部60は、基準画像と対象画像を画像処理し、それぞれに含まれる輝点像に基づいて、基準画像に対する対象画像のぼけ量を求めてもよい。例えば、角膜に複数の輝点像が投影される場合には、輝点像の間隔の違いから、基準画像に対する対象画像のぼけ量を求めてもよい。
【0124】
本実施例では、被検眼の眼底反射光束、被検眼の角膜反射光束、あるいはディスプレイ11からの視標光束が、可変焦点レンズ91を介すことによって得られる像を利用して、可変焦点レンズ91の実際の屈折力を取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検眼の眼底反射光束、被検眼の角膜反射光束、あるいはディスプレイ11からの視標光束が、可変焦点レンズ91と、固定レンズと、を介すことによって得られる像を利用して、可変焦点レンズ91の実際の屈折力を取得する構成としてもよい。例えば、可変焦点レンズ91の球面屈折力を固定レンズの球面屈折力で相殺することによって、可変焦点レンズ91の実際の屈折力を取得する構成としてもよい。
【0125】
本実施例では、ディスプレイ11の視標像を得る場合を例に挙げて、可変焦点レンズ91と固定レンズとを利用した、可変焦点レンズ91の実際の屈折力の取得について説明する。例えば、本実施例では、ディスプレイ11に点群視標が表示され、可変焦点レンズ91と固定レンズとを介した点群視標像が撮像される。例えば、このような点群視標像はメモリ70に記憶される。もちろん、リング像や前眼部画像を得る場合でも適用することが可能である。例えば、眼屈折力測定ユニット40において、第1補助レンズディスク50aまたは第2補助レンズディスク50bには、光学素子51として、可変焦点レンズ91にて調整可能な球面屈折力の範囲におさまる、所定の球面屈折力を有した固定レンズが設けられてもよい。例えば、固定レンズは焦点距離が一定であり、印加電圧の付加は不要であるため、経年変化等の影響を受けにくい。例えば、本実施例では、固定レンズの球面屈折力は+5.0Dである。
【0126】
例えば、検者は、検者用コントローラ70を操作して、検出ユニット200を検出位置に移動させるための図示無きスイッチを選択する。例えば、制御部60は、検者用コントローラ70からの操作信号に基づいて、駆動部55を駆動させ、検出素子ユニット200を検出位置に移動させる。また、例えば、制御部60は、検出ユニット200の検出位置への移動が完了すると、可変焦点レンズ91の球面屈折力を-5.0Dに調整するとともに、固定レンズを検査窓43に配置する。これによって、可変焦点レンズ91が劣化していなければ、可変焦点レンズ91の球面屈折力が固定レンズの球面屈折力で相殺され、ぼけのない点群視標像が撮像される。可変焦点レンズ91が劣化してれば、可変焦点レンズ91の球面屈折力と固定レンズの球面屈折力との差に相当する球面屈折力の分、ぼやけた点群視標像が撮像される。
【0127】
例えば、制御部60は、基準となる0.0Dの点群視標像(基準画像)に対する、各検出ユニット200を用いて撮影した対象の点群視標像(対象画像)のぼけ量を、エッジ検出等の画像処理にて検出する。また、例えば、制御部60は、基準画像に対する対象画像のぼけ量と、可変焦点レンズ91の劣化を較正するための較正値と、を比較処理する。一例として、制御部60は、対象画像のぼけ量が較正値(所定の閾値)を超えるかどうかを、対象画像のぼけ量と較正値との差分を求めることによって、検出してもよい。また、例えば、制御部60は、対象画像のぼけ量と較正値を比較処理した比較結果に基づいて、可変焦点レンズ91の較正の有無の報知、可変焦点レンズ91の較正の実行、等を行う。例えば、対象画像のぼけ量と較正値との差分と、可変焦点レンズ91に与える印加電圧と、を対応付けたルックアップテーブルを用いて、印加電圧の補正量を求めることによって、可変焦点レンズ91を較正してもよい。
【0128】
なお、例えば、基準画像のぼけ量に対象画像のぼけ量が近づく(つまり、対象画像がぼけなくなる)ように、可変焦点レンズ91に与える印加電圧を徐々に変更することで、可変焦点レンズ91を較正してもよい。例えば、制御部60は、基準画像のピントと、対象画像のピントと、が同程度となるまで、可変焦点レンズ91に与える印加電圧を徐々に変更してもよい。このとき、対象画像のぼけ量を常に検出し、モニタリングしてもよい。さらに、制御部60は、基準画像のピントと、対象画像のピントと、が同程度となった際の印加電圧の量を取得し、この印加電圧の量に基づいて、可変焦点レンズ91を較正してもよい。
【0129】
例えば、このように、本実施例の自覚式検眼装置において、矯正手段は、視標光束の光路内に切り換えて配置することが可能な固定光学部材を有し、検出手段は、光源から出射し、可変焦点部材と固定光学部材とを介した光束を検出し、取得手段は、検出手段による検出結果に基づいて、変化情報を取得する。例えば、可変焦点部材は印加電圧の付加で屈折力を調整するため、経年変化等により劣化する一方で、固定光学部材は一定の屈折力をもつため、経年変化等による劣化の影響を受けにくい。このため、可変焦点部材で調整した屈折力を相殺するように固定光学部材を配置し、可変焦点部材と固定光学部材とを介した光束を検出することによって、可変焦点部材の変化情報を容易に取得することができる。
【0130】
なお、本実施例の自覚式検眼装置は、被検眼Eに対する検査視標の呈示位置を光学的に変更することが可能に構成されてもよい。例えば、被検眼Eに対するディスプレイ11の位置を光軸方向に移動させることが可能に構成されてもよい。この場合には、上記の固定レンズに代えて、ディスプレイ11を光軸方向に移動させることによって、可変焦点レンズ91の球面屈折力を相殺してもよい。
【0131】
本実施例では、被検眼Eの光学特性を利用することによって、可変焦点レンズ91の実際の屈折力を取得することを例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、模型眼の光学特性を利用することによって、可変焦点レンズ91の実際の屈折力を取得してもよい。例えば、被検眼Eには個人差があるため、基準とする前眼部画像等に誤差が生じる可能性がある。一方で、例えば、模型眼の設計条件は既知であるため、模型眼を用いることによって、可変焦点レンズ91の実際の屈折力を、より精度よく取得することができる。
【0132】
本実施例では、被検眼Eを矯正するための矯正量(可変焦点レンズ91を変化させるための屈折力)として、1つの値を設定する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検眼Eを矯正するための矯正量として、複数の値を設定してもよい。例えば、この場合、可変焦点レンズ91の球面屈折力を、0.0D、プラスの値(例えば、+5.0D等)、マイナスの値(例えば、-5.0D等)、のうちの少なくとも2つの値を取得してもよい。例えば、制御部60は、可変焦点レンズ91を変化させるための屈折力として、これらの複数の値を設定し、複数の値のそれぞれに対する実際の屈折力を求めてもよい。例えば、これによって、可変焦点レンズ91が劣化しているかどうかがより把握しやすくなり、可変焦点レンズ91を較正することによって、被検眼の光学特性を精度よく取得できる。
【0133】
なお、例えば、被検眼Eを矯正するための矯正量として、少なくとも2つの値を取得する場合には、2つの値に対する実際の屈折力を用いて補間処理(例えば、直線補間等)を行うことで、2つの値とは異なる値における実際の屈折力を、近似的に求めてもよい。より詳細には、例えば、可変焦点レンズ91の球面屈折力を、プラスの値(+5.0D)とマイナスの値(-5.0D)の2つとした場合、これらの値に対する実際の屈折力を用いて補間処理を行うことで、+5.0Dから-5.0Dの間の少なくともいずれかの値における実際の屈折力を近似的に求めることができる。
【0134】
上記では、被検眼Eを矯正するための矯正量に対する実際の屈折力を用いて補間処理を行っているが、これらの実際の屈折力と較正値との比較結果(例えば、差分)に基づいて取得される印加電圧の補正量を用いて補間処理を行ってもよい。すなわち、可変焦点レンズ91の球面屈折力を調整するための印加電圧の補正量として、少なくとも2つの値を取得してもよい。例えば、この場合、可変焦点レンズ91の球面屈折力をプラスの値(+5.0D)とマイナスの値(-5.0D)に設定した際の、それぞれに対する印加電圧の補正量が取得される。例えば、制御部60は、これらの2つの印加電圧の補正量を用いて補間処理を行うことで、+5.0Dから-5.0Dの間の少なくともいずれかの値における印加電圧の補正量を、近似的に求めてもよい。
【0135】
本実施例では、他覚眼屈折力装置を用いて、被検眼Eの他覚眼屈折力を取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、前述した測定光学系100を用いて、被検眼Eの他覚眼屈折力を取得してもよい。この場合、制御部60は、可変焦点レンズ91、ストークスレンズ92、レンズディスク50、等の少なくともいずれかを制御する。例えば、可変焦点レンズ91の球面屈折力を0.0Dに調整し、ストークスレンズ92による円柱屈折力を0.0Dに調整し、ストークスレンズ92による乱視軸角度を0度に調整し、レンズディスク50の開口を検査窓43に合わせる。例えば、このような状態で、被検眼に向けて光源130から測定光束を照射することによって、可変焦点レンズ91の球面屈折力が反映されていない他覚眼屈折力を取得してもよい。
【0136】
本実施例の自覚式検眼装置は、可変焦点レンズ91の駆動量を調整することによって、球面屈折力を0.0Dに変更させる構成であってもよい。より詳細には、可変焦点レンズ91に印加電圧を付加することによって球面屈折力を0.0Dに変更させる構成であってもよい。この場合、被検眼を矯正するために設定する球面矯正量としては、球面屈折力が未矯正の状態(例えば、球面屈折力が0.0D)を含んでもよい。もちろん、被検眼を矯正するために設定する円柱矯正量としては、円柱屈折力が未矯正の状態(例えば、円柱屈折力が0.0D)を含んでもよい。また、被検眼を矯正するために設定する乱視軸矯正量としては、乱視軸角度が未矯正の状態(例えば、乱視軸角度が0度)を含んでもよい。
【0137】
なお、本実施例の自覚式検眼装置は、可変焦点レンズ91の較正を定期的に実行するようにしてもよい。例えば、装置の起動時、被検眼の測定終了時、所定の測定回数が経過した時、所定の期間が経過した時(例えば、1週間、1ヵ月、等)等のいずれかのタイミングにおいて、定期的に、可変焦点レンズ91の較正が必要か否かを確認するためのトリガ信号が発せられてもよい。制御部60は、このようなトリガ信号に基づいて、可変焦点レンズの較正を行うための制御を実行してもよい。
【符号の説明】
【0138】
1 筐体
2 呈示窓
3 スピーカ
30 投光光学系
40 眼屈折力測定ユニット
43 検査窓
60 制御部
70 検者用コントローラ
100 自覚式検眼装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9