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  • 特開-ボイラ 図1
  • 特開-ボイラ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049626
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/04 20060101AFI20240403BHJP
   F22D 5/26 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F22B35/04
F22D5/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155968
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 務
【テーマコード(参考)】
3L021
【Fターム(参考)】
3L021EA04
3L021FA01
(57)【要約】
【課題】燃焼開始後において供給される蒸気の乾き度が過度に低くなってしまうことを防止するボイラを提供することである。
【解決手段】蒸気を生成するボイラ本体2と、前記ボイラ本体2からの蒸気を気水分離するセパレータ9と、前記セパレータ9の下部と前記ボイラ本体2の下部とを接続する降水管7と、前記降水管7に設けられる弁7aと、ボイラの停止状態又は待機状態から燃焼要求があったときに、前記弁7aを制御することで前記セパレータ9に流れる給水を制限する制御部5とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を生成するボイラ本体と、
前記ボイラ本体からの蒸気を気水分離するセパレータと、
前記セパレータの下部と前記ボイラ本体の下部とを接続する降水管と、
前記降水管に設けられる弁と、
ボイラの停止状態又は待機状態から燃焼要求があったときに、前記弁を制御することで前記セパレータに流れる給水を制限する制御部とを備える、ボイラ。
【請求項2】
前記制御部は、前記燃焼要求に応じて前記ボイラ本体への給水が開始された後において所定条件が成立したときに、前記セパレータに流れる給水を制限する制御を終了する、請求項1に記載のボイラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ボイラが停止状態又は待機状態にあるときから、給水開始をする際に、水管過熱を防止するために、缶内水位を所定水位まで引き上げてから燃焼を開始するボイラがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-296408
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のボイラにおいては、ボイラが停止状態又は待機状態にあるときから、燃焼開始するために給水を開始すると、缶内水位とともに降水管を介してセパレータ内の水位も上昇することとなる。そのため、燃焼開始後において缶内水位が乾き度限界水位にまで低下するまでの間は、ボイラ本体からセパレータに持ち出された飽和水を当該セパレータで十分に分離しきれなくなり、乾き度の低い蒸気が供給されてしまう虞がある。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、燃焼開始後において供給される蒸気の乾き度が過度に低くなってしまうことを防止するボイラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うボイラは、蒸気を生成するボイラ本体と、前記ボイラ本体からの蒸気を気水分離するセパレータと、前記セパレータの下部と前記ボイラ本体の下部とを接続する降水管と、前記降水管に設けられる弁と、ボイラの停止状態又は待機状態から燃焼要求があったときに、前記弁を制御することで前記セパレータに流れる給水を制限する制御部とを備える。
【0007】
上記の構成によれば、燃焼要求があったときに、降水管に設けられる弁を制御することで、セパレータ内へ余剰な給水がされることを制限することによりセパレータ内の水位が高くなり過ぎることを防止できる。これにより、燃焼開始後においてもボイラ本体からセパレータに持ち出された飽和水を分離できる。その結果、燃焼開始後において供給される蒸気の乾き度が過度に低くなることを抑止できる。
【0008】
好ましくは、前記制御部は、前記燃焼要求に応じて前記ボイラ本体への給水が開始された後において所定条件が成立したときに、前記セパレータに流れる給水を制限する制御を終了する。
【0009】
上記の構成によれば、燃焼要求に応じてボイラ本体への給水が開始された後において所定条件が成立すれば、セパレータに流れる給水の制限を終了する。これにより、ボイラの通常運転を開始し、降水管を介して水を循環させることができるようになるため、質の高い蒸気を供給することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ボイラの概略構成を模式的に示す図である。
図2】給水開始時制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<概略構成について>
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。まず、図1を参照して、本実施の形態に係るボイラの概略構成について説明する。
【0012】
ボイラ1は、図1に示すように、燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラ本体2と、ボイラ1の運転・動作を制御する制御装置5と、ボイラ本体2に給水を行う給水ライン6と、空気供給路2eを介してボイラ本体2の燃焼室内に空気を送り込む送風機3と、セパレータ(気水分離器)9と、ボイラ本体2からの排ガスを導出する排気通路(図示せず)と、ボイラ本体2に燃料を供給する燃料供給ライン(図示せず)とを備えている。なお、燃料は、油である例について説明するが、油などの液体に限らず、ガスなどの気体であってもよい。
【0013】
ボイラ本体2は、略円筒状に形成されており、その内部にバーナ2a、複数の水管2b、上部ヘッダ2c、および、下部ヘッダ2dなどを備えている。複数の水管2bは、ボイラ本体2の内部に収容されており、ボイラ本体2の円周方向に所定の間隔で立設されている。これにより、ボイラ本体2の略中央部に、燃焼室が形成される。
【0014】
バーナ2aは、燃焼室の上方に設けられている。バーナ2aは、複数の水管2bの内部に導入された缶水を加熱して、蒸気を生成する。また、バーナ2aは、燃料供給ラインを介して燃料タンク(図示せず)と接続されている。燃料供給ラインには、流量調整弁が設けられている。ボイラ1の燃焼量は、制御装置5により流量調整弁の開度が制御されることにより、連続的又は段階的に調整される。例えば、高燃焼時には、流量調整弁の開度が100%に制御され、低燃焼時には、流量調整弁の開度が50%に制御される。
【0015】
下部ヘッダ2dは、ボイラ本体2の下部に設けられ、複数の水管2bの下部と連結されている。下部ヘッダ2dは、給水ライン6と接続されている。給水ライン6には、給水ポンプ61が設けられている。給水ポンプ61から給水ライン6を介して下部ヘッダ2dへ給水され、給水された水は水管2bにおいて加熱される。
【0016】
上部ヘッダ2cは、ボイラ本体2の上部に設けられ、複数の水管2bの上部と連結されている。上部ヘッダ2cは、複数の水管2bにおいて生成した蒸気を集め、連絡路4を介してセパレータ9へ導出する。セパレータ9の上部には、蒸気を取り出すための蒸気配管(図示せず)が接続されて、セパレータ9により分離された蒸気は、蒸気配管から取り出される。また、セパレータ9の下部と下部ヘッダ2dとを接続する降水管7が設けられており、セパレータ9により分離された水は、降水管7から下部ヘッダ2dを通してボイラ本体2に戻される。
【0017】
降水管7には、降水管7内の流路を制限する開閉弁7aと、ボイラ本体2の缶水を排出するブロー配管8とが接続されている。ブロー配管8にはブロー弁8aが設けられている。ブロー弁8aを開くことにより、ボイラ本体2内の缶水の排出(ブロー)を行うことができる。
【0018】
制御装置5は、内部にメモリ、タイマ、および演算処理部を含むコンピュータにより実現され、ボイラ1の運転・動作等を制御するものであり、例えば、着火時および停止時の動作、燃焼量が異なる複数種類の燃焼状態(例えば、低燃焼、高燃焼)、給水ポンプ61の動作(給水制御)、開閉弁7aの開閉動作、および、ブロー弁8aの開閉動作などを制御する。制御装置5には、給水ポンプ61、開閉弁7a、および、ブロー弁8aが電気的に接続されている。
【0019】
制御装置5は、ボイラの停止状態又は待機状態から燃焼要求があったときには、水管2bが過熱されて損傷されることを抑止するために、水管2b内の水位が燃焼開始時において過熱を防止するための水位(例えば、水管2b内の上部であって水位を引き上げることが可能な最高水位まで)に到達するまでボイラ本体2内への給水をしてから燃焼を開始する。そのため、従来においては、ボイラ本体内への給水に伴い、セパレータ内へも降水管を介し、連動するように給水(降水管を介しセパレータ内へ水が上昇)されてしまっていた。そうすると、燃焼を開始する頃には、セパレータ内の水位が、水管から上部ヘッダに吹きあげられた飽和水をセパレータで十分に分離しきれない水位まで高くなってしまい、乾き度が過度に低い蒸気が供給されてしまう虞が生じる実情があった。
【0020】
そこで、上記実情に鑑み、本実施の形態において、制御装置5は、ボイラの運転が停止されている状態、又は、ボイラの燃焼(運転)待機状態にあるときから、燃焼要求があったとき(起蒸時)であって、給水ポンプ61を駆動させてボイラ本体2内への給水を開始する際に、降水管7を介してセパレータ9内へも連動して流れる給水を制限(遮断)するために、開閉弁7aを閉状態とする制御を行う。これにより、セパレータ9内の水位が高くなってしまうことを防止でき、上部ヘッダ2cに吹きあげられた飽和水をセパレータ9内で分離することができるため、乾き度が過度に低い蒸気が供給されてしまうことを抑止することができる。
【0021】
また、制御装置5は、燃焼要求に応じてボイラ本体2内への給水を開始した後において、所定条件が成立したときに、開閉弁7aを開状態とする制御を行う。これにより、セパレータ9内へ流れる給水を制限する制御を終了することができる。所定条件とは、水管2b内の水位が所定位置(例えば、乾き度限界水位)よりも下がった場合である。このように、セパレータ9内へ流れる給水を制限する制御を終了することで、ボイラ1の通常運転を開始し、降水管7を介して水を循環させることができるようになるため、質の高い蒸気を供給することができるようになる。
【0022】
本実施の形態では、水管2b内の水位が所定位置よりも下がっているか否か、例えば、乾き度限界水位よりも下がっているか否かを、上部ヘッダ2cと下部ヘッダ2dとを連通する水管水位検出装置(図示しない)によって検出するものとすることができる。乾き度限界水位とは、水管2b内の水位が当該乾き度限界水位よりも上昇した場合に、乾き度の高い蒸気を生成することができなくなる虞がある水位であり、ボイラを通常運転する際に上回らないようにすることが望ましい水位である。なお、乾き度限界水位は、燃焼量に応じて予め定められているものであってもよく、これに加えて、缶水の濃縮度などに応じた水位が予め定められているものであってもよい。
【0023】
水管水位検出装置は、導通可能な金属により形成される水位制御筒と、互いに長さの異なる複数の電極棒とを備え、水位制御筒内の水位は、ボイラ本体2内の水管2bの水位と略一致するものとする。この場合、複数の電極棒は、燃焼量に応じて水位制御筒内の複数の水位を、電極棒の先端で段階的に検出可能に構成されている。例えば、L棒と、L棒よりも長さが短くL棒よりも高い水位を検出するS棒とを設け、燃焼量が低燃焼の場合にはS棒によって水位が検出されなくなった場合に水管2b内の水位が所定位置よりも下がったものとし、燃焼量が高燃焼の場合にはL棒によって水位が検出されなくなった場合に水管2b内の水位が所定位置よりも下がったものとすることができる。なお、水管水位検出装置は、上部ヘッダ2cと下部ヘッダ2dとを直接接続するものに限らず、水管2b内の水位を推測することが可能なものであれば、例えば、セパレータ9と、下部ヘッダ2dとの間に設けられているものでもよい。
【0024】
図2は、給水開始時制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。給水開始時制御処理は、ボイラの停止状態又は待機状態から燃焼要求があったとき(起蒸時)に、制御装置5により実行される。
【0025】
ボイラの停止状態又は待機状態から燃焼要求があったとき(起蒸時)に、ステップS01では、給水ポンプ61を駆動させてボイラ本体2への給水を開始する。
【0026】
ステップS02では、ステップS01において給水が開始されるとともに、開閉弁7aを閉状態とする制御が行われる。これにより、降水管7を介してセパレータ9内へ流れる給水を制限(遮断)することができる。
【0027】
ステップS03では、所定条件が成立したか否かを判定する。例えば、水管2d内の水位が所定位置よりも下がった場合に所定条件が成立したと判定される。ステップS03において所定条件が成立したと判定されなかったときには、処理をステップS03の前に戻す。
【0028】
ステップS03において、所定条件が成立したと判定されたときには、ステップS04で、開閉弁7aを開状態とする制御が行われる。すなわち、セパレータ9へ流れる給水の制限をする処理を終了する。
【0029】
以上のように、本実施の形態では、降水管7に設けられる開閉弁7aを制御することで、セパレータ9内へ余剰な給水がされることを制限することによりセパレータ9内の水位が高くなり過ぎることを防止できる。これにより、燃焼開始後においてもボイラ本体2からセパレータ9に持ち出された飽和水を分離できる。その結果、燃焼開始後において供給される蒸気の乾き度が過度に低くなることを抑止できる。
【0030】
また、燃焼要求に応じてボイラ本体3への給水が開始された後において所定条件が成立すれば、セパレータ9に流れる給水の制限を終了する。これにより、ボイラの通常の運転を開始し、降水管7を介して水を循環させることができるようになるため、質の高い蒸気を供給することができるようになる。
【0031】
本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施の形態の変形例などについて説明する。
【0032】
上記実施形態では、図2のステップS03において、水管2d内の水位が所定位置よりも下がった場合に所定条件が成立したと判定される例を説明した。しかし、これに限らず、例えば、セパレータ9内の水位が所定位置に達した場合、あるいは、給水開始後(あるいは燃焼開始後)所定時間が経過した場合などに成立するものであってもよい。なお、例示した所定条件は、いずれかのみを所定条件としてもよく、あるいは、例示した条件を複数組み合わせ、複数の条件が成立した場合に所定条件が成立したものとしてもよい。
【0033】
所定条件の一例として上述した、セパレータ9内の水位が所定位置に達したか否かの判断は、例えばセパレータ9内に電極棒を設け、電極棒の先端に水位が検出された場合に、セパレータ9内の水位が所定位置に達したものとするものとしてもよい。上部ヘッダ2cに吹きあげられた飽和水がセパレータ9内に一定量持ち出されていれば、水管2b内の水位が下がっていると考えられ、開閉弁7aを開けても、乾き度の低い蒸気が過度に供給される虞が低くなるためである。そのため、この場合の所定位置は、水管2b内の水位が下がっており、かつ、セパレータ9内に持ち出された飽和水を十分に分離できるとみなすことができる水位とすることができる。すなわち、セパレータ9内で検出される所定位置とは、乾き度の低い蒸気が供給されてしまう虞が低くなると推定できる位置である。
【0034】
所定条件の一例として上述した、給水開始後(あるいは燃焼開始後)の所定時間とは、例えば、水管2b内の水位が、乾き度限界水位などの、乾き度の低い蒸気が供給されてしまう虞が低くなる所定位置に水位が下がるまでに平均的に要する時間よりも長い時間を、燃焼状態(例えば、低燃焼、高燃焼)に応じて予め定めるものとしてもよい。
【0035】
上述した所定条件が成立したか否かの判定において、水管水位検出装置の電極棒、および、セパレータ9内の水位を検出する電極棒について、電極棒の先端で水位を検知するものを例示した。しかし、これに限らず、例えば水位を検知する電極棒の表面に誘電体となる絶縁被膜を形成し、水位制御筒内、または、セパレータ9内で水が電極棒に接触する部分をもってコンデンサとし、通電して電極棒に接触する水の変化による電極棒と水位制御筒等との間の静電容量を測定すれば、この測定された静電容量により水位制御筒内等における電極棒と接触する水の水位をアナログ的に検知することができるものであってもよい。
【0036】
上記実施形態では、図2のステップS01およびステップS02における、ボイラ本体2内への給水の開始と、開閉弁7aを閉状態とするための制御とが、同時に行われる例について説明した。しかし、これに限らず、例えば、開閉弁7aを閉状態とする制御を開始して閉状態なった後、所定時間経過後に、給水を開始するものとしてもよい。
【0037】
上記実施形態においては、図2のステップS02で、開閉弁7aをセパレータ9内への給水が遮断されるように、すなわち完全に閉じるようにする(開度0%)例について説明した。しかし、これに限らず、完全に遮断されるものではなく、所定開度(例えば開度15%)まで閉じられるものであってもよい。
【0038】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0039】
1 ボイラ
2 ボイラ本体
2a バーナ
2b 水管
2c 上部ヘッダ
2d 下部ヘッダ
2e 空気供給路
3 送風機
4 連結管
5 制御装置
6 給水ライン
61 給水ポンプ
7 降水管
8 ブロー配管
8a ブロー弁
9 セパレータ

図1
図2