(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004964
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】APJ発現促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240110BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240110BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240110BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61K36/185
A61P17/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104889
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】加治屋 美加
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083CC02
4C083EE12
4C088AB55
4C088AC02
4C088BA10
4C088CA03
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
(57)【要約】
【課題】新たなAPJ発現促進剤、皮膚弾力改善剤、及びそれを用いた皮膚弾力を改善する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明はゲンノショウコエキスを含むAPJ発現促進剤を提供する。APJの発現が促進されると、血管の安定化が図られ、皮膚弾力の改善に有効である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲンノショウコエキスからなる、APJ発現促進剤。
【請求項2】
請求項1に記載のAPJ発現促進剤を含む、皮膚弾力改善剤。
【請求項3】
請求項2に記載の皮膚弾力改善剤を対象に投与することによりAPJ発現促進を介して対象の皮膚弾力を改善するための美容目的の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、APJ発現促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚弾力は、見た目の年齢や外観に影響が大きく、皮膚弾力を維持、改善することは、美容上の大きな課題である。皮膚弾力は、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸といった、真皮層のマトリックスに関する研究が多くなされている。例えば、真皮層のコラーゲンの量が大きく影響することはよく知られており、これまでに、コラーゲンの産生促進させることで皮膚の加齢変化を予防・改善する各種成分がみいだされている。また、線維芽細胞において発現するインテグリンなどの接着分子を介して、線維芽細胞が細胞外マトリクスと相互作用し、かかる相互作用がハリに関与することも知られている。
【0003】
更に、7回膜貫通型のGタンパク質共役型の受容体であるAPJ(AGTRL1:Angiotensin receptor like 1)の発現を増強させ血管を安定化することにより皮膚弾力を改善できることが本発明者らにより発見された。本発明者らはかかる発見に基づき、APJ発現を指標とした皮膚弾力改善剤のスクリーニング方法、並びにジュウヤクエキス、サクラリーフエキス、ニームリーフエキスを含むAPJ発現促進剤およびそれを含む皮膚弾力改善剤を報告している(特許文献1)。APJ発現を指標とした皮膚弾力を改善する物質の更なる探索が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/230331号
【特許文献2】特許第7040833号公報
【特許文献3】特許第6988016号公報
【特許文献4】特開2022-41762号公報
【特許文献5】特開2013-209339号公報
【特許文献6】国際公開第2012/133825号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新たなAPJ発現促進剤、それを含む皮膚弾力改善剤、及びそれを用いた皮膚弾力を改善するための方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはAPJの発現を促進する新規な物質を探索すべく鋭意研究した結果、本発明に至った。
【0007】
本発明は、下記の発明に関する:
(1)ゲンノショウコエキスからなる、APJ発現促進剤。
(2)(1)に記載のAPJ発現促進剤を含む、皮膚弾力改善剤。
(3)(2)に記載の皮膚弾力改善剤を対象に投与することによりAPJ発現促進を介して対象の皮膚弾力を改善するための美容目的の方法。
【発明の効果】
【0008】
ゲンノショウコエキスによりAPJの発現を促進することができる。APJの発現が促進されると、血管の安定化が図られ、皮膚弾力が改善される。皮膚弾力を改善することにより、シワ、たるみといった肌の問題を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、ゲンノショウコエキスを用いた場合のAPJの発現を、対照(ctrl)を1とした場合の相対値として示す。図中、*は、Studentのt検定により対照に対し有意差があることを示す(*p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ゲンノショウコエキスがAPJ発現促進作用を有するという発明者らの知見に基づくものであり、皮膚弾力を改善するためのAPJ発現促進剤に関する。一実施形態では、本発明のAPJ発現促進剤は、ゲンノショウコエキスからなる又は含む。
【0011】
ゲンノショウコ(Geranium thunbergii)は、「現(験)之証拠」「玄草」「ロウカクソウ」「ミコシグサ」「ウメズル」等とも称され、日本各地、中国などのアジア地域に広く分布するフウロソウ科フウロソウ属の多年草である。ゲンノショウコは、内服による整腸、止瀉、胃弱、食欲不振、消化不良等に対する効果、塗布によるかぶれ、霜焼け,腫れ等に対する効果、抗光老化、グランザイムB抑制効果、JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害効果等が知られている(特許文献2~4)。ゲンノショウコエキスは、ゲンノショウコの葉、茎、花、根などの植物体、特に地上部を抽出した抽出物をいう。
【0012】
抽出物は、化粧品原料や健康食品材料として市販のものを使用してもよく、常法により得てもよい。抽出方法は特に限定されるものではないが、溶媒を用いた抽出法が好ましい。抽出を行う際には、原料植物を抽出溶媒とともに常温又は加熱して浸漬または加熱還流した後、濾過し、濃縮して得ることができる。植物体をそのまま使用することもできるが、顆粒状や粉末状に粉砕して抽出に供した方が、穏和な条件で短時間に高い抽出効率で有効成分の抽出を行うことができる。抽出温度は特に限定されるものではなく、粉砕物の粒径や溶媒の種類等に応じて適宜設定すればよい。通常は、室温から溶媒の沸点までの範囲内で設定される。また、抽出時間も特に限定されるものではなく、粉砕物の粒径、溶媒の種類、抽出温度等に応じて適宜設定すればよい。さらに、抽出時には、撹拌を行ってもよいし、撹拌せず静置してもよいし、超音波を加えてもよい。
【0013】
抽出溶媒としては、通常抽出に用いられる溶媒であれば任意に用いることができ、例えば、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液などの水性溶媒、エタノール、プロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、クロロホルム、ジクロルエタン、四塩化炭素、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン等の有機溶媒、含水エタノール、含水プロピレングリコール、含水1、3-ブチレングリコール、含水グリセリン等の含水アルコール類といった含水有機溶媒を、それぞれ単独あるいは組み合わせて用いることができる。
【0014】
含水有機溶媒の例として、含水1,3-ブチレングリコール等の含水低級アルコール(例えば、C1~C4)を用いてもよく、その場合の含水率は、例えば0~10v/v%、10~40v/v%、20~30v/v%、30~40v/v%、30~50v/v%、60~70v/v%、50~80v/v%、80~99.5v/v%等であってもよい。
【0015】
このような抽出操作により、有効成分が抽出され、溶媒に溶け込む。抽出物を含む溶媒は、そのまま使用してもよいが、滅菌、洗浄、濾過、脱色、脱臭等の慣用の精製処理を加えてから使用してもよい。また、必要により凍結乾燥といった乾燥処理などにより濃縮あるいは任意の溶媒で希釈してから使用してもよい。さらに、溶媒を全て揮発させて固体状(乾燥物)としてから使用してもよいし、該乾燥物を任意の溶媒に再溶解してから使用してもよい。
【0016】
また、原料の植物を圧搾することにより得られる圧搾液にも抽出物と同様の有効成分が含まれているので、抽出物の代わりに圧搾液を使用することもできる。
【0017】
本発明のAPJ発現促進剤は、ゲンノショウコエキスからなってもよく、又は有効成分として含有してもよい。また、本発明の皮膚弾力改善剤は、本発明のAPJ発現促進剤を含有する。本発明の皮膚弾力改善剤は、APJ発現を促進し、発現が促進されたAPJが血管に作用し安定化することにより、血管周囲でコラーゲン合成が促進され、皮膚弾力を改善することができる。
【0018】
APJは、血管系、神経系、脂肪細胞などで広く発現が報告されている7回膜貫通型のGタンパク質共役型の受容体である。APJの発現は、心臓では心筋収縮作用、神経系ではバソプレシンの発現の制御、血管やリンパ管の安定、血管形成、体液の調節機構等に関与することが示されている。
【0019】
更に、本発明者らにより、APJの発現を促進することにより血管の安定化が起こり血管周囲でコラーゲンが合成され、皮膚弾力が改善することが発見された(特許文献1)。本発明の皮膚弾力改善剤は、APJの発現を増強させることにより皮膚弾力を改善させる。一実施形態では、皮膚弾力の改善は、APJ発現促進による血管の安定化を介する。本発明において、血管の安定化とは、特許文献1に記載のように、皮膚の血管におけるAPJ発現とコラーゲン合成による皮膚弾力との密接な相互作用により、生体内でAPJが周囲のマトリックス環境の物性に応じて発現増強する結果起こる血管構造の安定化を指す。
【0020】
APJ発現の促進は、例えば、生体試料におけるAPJのmRNA量又はタンパク質量が、本発明のAPJ発現促進剤を添加すると、添加しない場合と比べて増加することを指す。増加は、例えば、有意水準を5%とした統計学的有意差(例えばスチューデントのt検定)を有する増加であってもよく、及び/又は、例えば10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上の増加であってもよい。
【0021】
APJ発現の測定は、生体試料におけるAPJのmRNA量又はタンパク質量を測定することにより決定されうる。mRNA量の測定としては、定量的PCRやノーザンブロティングなど本技術分野に既知の手法を用いて行うことができる。例えば、実施例に記載のように、APJ mRNAに対するプローブを用いてもよい。タンパク質量についは、ウエスタンブロッティング、免疫染色、FACSなどの本技術分野に既知の任意の手法を用いて行うことができる。例えば、APJに特異的に結合する抗体を使用してもよい。あるいは、例えば特許文献5、特許文献6に記載のようなAPJ発現細胞を用いたスクリーニング系を確立して使用してもよい。
【0022】
生体試料としては、血管内皮細胞、脂肪細胞など任意であり、APJ発現が測定できれば限定されない。例えば、特許文献1に記載のようにヒト等の動物の皮下脂肪組織から血管形成を誘導して作成した血管モデルにおける血管内皮細胞、ペリサイトといった血管構成細胞でもよく、生体から取得された血管内皮細胞、ペリサイト、又はそれらの継代された細胞であってもよく、株化された細胞であってもよく、実施例に記載のようにヒト臍帯血静脈内皮細胞(HUVEC)、ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)、ヒト肺微小血管内皮細胞(HMVEC)等を用いてもよい。あるいは、特許文献5、特許文献6に記載のように、APJ発現細胞を用いてもよい。
【0023】
本発明のAPJ発現促進剤及び皮膚弾力改善剤(以降これらを総称して「本発明の剤」という場合がある。)は、ゲンノショウコエキスを有効成分として含有するが、さらに1種又は2種以上の他の成分、例えば賦形剤、担体及び/又は希釈剤等と組み合わせた組成物とすることもできる。組成物の組成や形態は任意であり、有効成分や用途等の条件に応じて適切に選択すればよい。当該組成物は、その剤形に応じ、賦形剤、担体及び/又は希釈剤等及び他の成分と適宜組み合わせた処方で、常法を用いて製造することができる。
【0024】
本発明の剤は、化粧品、医薬品、医薬部外品等に配合してヒト及び動物に使用してもよく、各種の飲食品、例えばサプリメントなどの栄養補助食品に配合してヒト及び動物に摂取させてもよいし、或いは医薬製剤としてヒト及び動物に投与してもよい。本発明の剤は経口的にあるいは非経口的(経皮投与、静脈投与、腹腔内投与、等)に適宜に使用され、任意の経路で投与されてもよい。しかしながら、皮膚の血管に作用するよう経皮投与が好ましい。
【0025】
本発明を化粧品、医薬品、医薬部外品等の皮膚外用剤に適用する場合、ゲンノショウコエキスの配合量(乾燥質量)は、それらの種類、目的、形態、利用方法などに応じて、適宜決めることができる。例えば、化粧料全量中に、ゲンノショウコエキスをそれぞれ約0.000001重量%~50.0重量%(乾燥量)を配合でき、約0.0001重量%~10.0重量%(乾燥量)、約0.001重量%~1.0重量%(乾燥量)、約0.005重量%~1.0重量%(乾燥量)、約0.01重量%~1.0重量%(乾燥量)、約0.05重量%~0.5重量%(乾燥量)、約0.1重量%~0.5重量%(乾燥量)となるように添加してもよい。
【0026】
上記成分に加えて、さらに必要により、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常化粧品、医薬品、医薬部外品等等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば酸化防止剤、油分、紫外線防御剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0027】
さらに、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属イオン封鎖剤、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸及びその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、カリンの果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸及びその誘導体又はその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸等の美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類なども適宜配合することができる。
【0028】
本発明の皮膚外用剤は、外皮に適用される化粧料、医薬部外品等、特に好適には化粧料として適用可能であり、その剤型も皮膚に適用できるものであれば限定されず、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水-油二層系、水-油-粉末三層系、軟膏、化粧水、ゲル、エアゾール等、任意の剤型が適用される。
【0029】
本発明の剤を化粧品として用いる場合は、例えば、フェイスクリーム、マッサージクリーム、ボディクリーム、乳液、ローション、美容液、ジェル、パック、クレンジングクリーム、ハンドクリーム、化粧水、ファンデーション、口紅、リップクリーム、ハンドパウダー、ボディシャンプー、浴用化粧品等の形態として用いてもよい。外用製剤であれば、ローション剤、懸濁剤・乳剤、液剤、軟膏剤、貼付剤等の各種形態として使用できる
【0030】
しかしながら、本発明の剤の採り得る形態は、上述のものに限定されるものではなく、例えば錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤、又は、注射剤などの非経口用液体製剤など、いずれの形態にも公知の方法により適宜調製することができる。
【0031】
本発明は、それを必要とする対象に本発明のAPJ発現促進剤又は皮膚弾力改善剤を投与することによりAPJ発現促進を介して皮膚弾力を改善する方法にも関する。一実施形態では、それを必要とする対象は、例えば、皮膚における血管の減少、血管構造の不安定化、皮膚弾力の低下、又はAPJ発現の低下が起こっている対象である。皮膚弾力が改善されれば、しわ、たるみの改善が期待される。本明細書の皮膚弾力を改善する方法は、美容を目的とする美容方法に関しており、医師や医療関係者により行われる治療とは区別できる。このような美容方法は、個人的に行われてもよいし、美容室や、化粧品の販売店、エステサロンなどで行われてもよい。
【0032】
さらに、本発明は、皮膚弾力の改善のための薬剤の製造におけるゲンノショウコの使用も提供する。本発明は、APJ発現を促進することにより、皮膚弾力の改善に使用するためのゲンノショウコも提供する。
【0033】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【0034】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例0035】
実験1:試料の調製
ゲンノショウコエキスは、含水1,3ブチレングリコールを抽出溶媒としてゲンノショウコの地上部を抽出し、溶媒を留去後、抽出物を乾燥して得た。このゲンノショウコエキスをジメチルスルホキシド(DMSO)で溶解して調製し、下記培地に最終濃度が0.1%(w/w)となるように添加した。対照として、ゲンノショウコエキスを含まない同量のDMSO溶液を使用した。
【0036】
実験2:APJ発現の解析
12wellプレートにヒト臍帯血静脈内皮細胞(HUVEC)を105cells/wellで播種し、EGMTM-2(Endothelial cell Growth Medium-2)BulletKit (Lonza, Switzerland)を用いて、コンフルエントまで培養した。その後、実験1で作成したゲンノショウコエキスを含む試料は最終濃度が0.1%(w/w)となるように、又は対照としてのDMSO溶液を添加し、更に培養を行った。培養4時間後、RNeasy(登録商標) Mini Kit(Qiagen,Germany) を用いて、細胞回収、及びトータルRNAを得た。得られたトータルRNAをnano dropにより濃度測定し、RNase free waterで100ng/μlに調整した。その後、TaqManTM RNA-to-CT
TM 1-Step Kit(Applied Biosystems、CA)とヒトAPJ mRNAに対するTaqmanプローブ(Hs00270873、Applied Biosystems、CA)を用いて、APJのmRNA発現量を検出し、内部標準であるβアクチンのmRNA発現量で割った値を比較した。
【0037】
結果を
図1に示す。
図1よりゲンノショウコエキスを用いた場合に、対照と比較してAPJの発現が有意に増加した。よって、ゲンノショウコエキスを、APJの発現促進作用を有する物質として特定した。
本発明は、ゲンノショウコエキスを有効成分として含有するAPJ発現促進剤の投与により、APJの発現を促進することができ、APJ発現促進により皮膚弾力の改善に有効である。