(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004965
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】内燃機関および鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
F01M 11/00 20060101AFI20240110BHJP
F01M 1/02 20060101ALI20240110BHJP
F01M 1/16 20060101ALI20240110BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F01M11/00 S
F01M1/02 A
F01M1/16 A
F02F7/00 N
F02F7/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104891
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】西田 憲司
【テーマコード(参考)】
3G015
3G024
3G313
【Fターム(参考)】
3G015BA03
3G015BA05
3G015BA14
3G015CA06
3G015DA02
3G015DA05
3G015DA10
3G015FA01
3G015FB03
3G024AA48
3G024AA71
3G024BA23
3G024DA22
3G024EA04
3G024FA07
3G313AB04
3G313BB04
3G313BB08
3G313BB18
3G313BD24
3G313BD49
3G313CA01
3G313FA01
3G313FA08
(57)【要約】
【課題】内燃機関の始動直後から油を良好に供給できるドライサンプ式の内燃機関を提供すること。
【解決手段】内燃機関5は、少なくとも一部がクランクケース12によって仕切られたオイルタンク13と、スカベンジポンプ14と、フィードポンプ16と、スカベンジポンプ14の吐出口14bとオイルタンク13とをつなぐスカベンジ吐出通路20と、オイルタンク13とフィードポンプ16の吸入口16aとをつなぐフィード吸入通路22とを備える。ポンプ軸15の軸線方向から見て、フィードポンプ16の少なくとも一部とオイルタンク13とが重なっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸を支持するクランクケースと、
少なくとも一部が前記クランクケースによって仕切られたオイルタンクと、
第1吸入口および第1吐出口を有するスカベンジポンプと、
ポンプ軸と第2吸入口と第2吐出口とを有し、前記ポンプ軸の回転に伴って前記第2吸入口から吸い込んだ油を前記第2吐出口から吐出するフィードポンプと、
前記スカベンジポンプの前記第1吐出口と前記オイルタンクとをつなぐスカベンジ吐出通路と、
前記オイルタンクと前記フィードポンプの前記第2吸入口とをつなぐフィード吸入通路と、を備え、
前記ポンプ軸の軸線方向から見て、前記フィードポンプの少なくとも一部と前記オイルタンクとが重なっている、内燃機関。
【請求項2】
前記ポンプ軸の軸線方向から見て、前記フィードポンプの前記第2吸入口と前記オイルタンクとが重なっている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記ポンプ軸の軸線方向から見て、前記ポンプ軸と前記オイルタンクとが重なっている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記フィード吸入通路は真っ直ぐに延びている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記フィード吸入通路は前記ポンプ軸と平行に配置されている、請求項4に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記フィードポンプから吐出された油を前記オイルタンクに導くリリーフ通路と、
前記リリーフ通路に設けられたリリーフバルブと、を備え、
前記リリーフ通路は、前記フィード吸入通路と平行な平行部を有している、請求項4に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記クランクケースに設けられたオイルパンと、
前記オイルパンと前記スカベンジポンプの前記第1吸入口とをつなぐスカベンジ吸入通路と、を備え、
前記スカベンジ吸入通路は、前記フィード吸入通路と平行な平行部を有している、請求項4に記載の内燃機関。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一つに記載の内燃機関を備えた鞍乗型車両。
【請求項9】
前記フィードポンプおよび前記オイルタンクの一方は車両中心線の左方に配置され、前記フィードポンプおよび前記オイルタンクの他方は車両中心線の右方に配置されている、請求項8に記載の鞍乗型車両。
【請求項10】
前記オイルタンクは、前記クランク軸よりも車両前後方向の前方に配置されている、請求項8に記載の鞍乗型車両。
【請求項11】
前記オイルタンクの車両上下方向の寸法は、前記オイルタンクの車両前後方向の寸法よりも大きい、請求項8に記載の鞍乗型車両。
【請求項12】
前記オイルタンクの上端は、前記クランク軸の中心よりも上方に位置する、請求項8に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライサンプ式の内燃機関およびそれを備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、少なくとも一部がクランクケースによって仕切られたオイルタンクを有するドライサンプ式の内燃機関が知られている。例えば、特開2010-53852号公報に、そのような内燃機関が開示されている。
【0003】
特開2010-53852号公報に開示された内燃機関は、オイルパンの後方に配置されたオイルタンクと、オイルパンの前方に配置されたフィードポンプとを備えている。オイルタンクとフィードポンプとの間にオイルパンが配置されている。オイルパンの下方に、オイルタンクとフィードポンプとをつなぐオイル通路が形成されている(特開2010-53852号公報の
図8参照)。オイルポンプの駆動軸は左右方向に延び、オイル通路はオイルタンクから前方に延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記内燃機関では、フィードポンプは下方に開いた吸入口を有している。オイルタンクの油は、オイルパンの下方に配置されたオイル通路を前方に向かって流れた後、上向きに流れ、フィードポンプの吸入口に上向きに吸い込まれる。ところで、内燃機関の始動直後から、フィードポンプがオイルタンクの油を迅速に吸い込むことができれば、フィードポンプから吐出される油の圧力を迅速に高めることができる。そのため、内燃機関の始動直後から、内燃機関の摺動部分に油を良好に供給することができる。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の始動直後から油を良好に供給できるドライサンプ式の内燃機関およびそれを備えた鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される内燃機関は、クランク軸を支持するクランクケースと、少なくとも一部が前記クランクケースによって仕切られたオイルタンクと、第1吸入口および第1吐出口を有するスカベンジポンプと、ポンプ軸と第2吸入口と第2吐出口とを有し、前記ポンプ軸の回転に伴って前記第2吸入口から吸い込んだ油を前記第2吐出口から吐出するフィードポンプと、前記スカベンジポンプの前記第1吐出口と前記オイルタンクとをつなぐスカベンジ吐出通路と、前記オイルタンクと前記フィードポンプの前記第2吸入口とをつなぐフィード吸入通路と、を備える。前記ポンプ軸の軸線方向から見て、前記フィードポンプの少なくとも一部と前記オイルタンクとが重なっている。
【0008】
上記内燃機関によれば、ポンプ軸の軸線方向から見て、フィードポンプはオイルタンクの近くに配置されている。よって、オイルタンクとフィードポンプとをつなぐフィード吸入通路を短縮することができる。フィード吸入通路が比較的短いので、内燃機関の始動直後からフィードポンプはオイルタンクの油を迅速に吸い込むことができる。フィードポンプから吐出される油の圧力を迅速に高めることができるので、内燃機関の始動直後から摺動部分に油を良好に供給することができる。
【0009】
前記ポンプ軸の軸線方向から見て、前記フィードポンプの前記第2吸入口と前記オイルタンクとが重なっていてもよい。
【0010】
このことにより、ポンプ軸の軸線方向から見て、フィードポンプの第2吸入口はオイルタンクの近くに配置されている。よって、内燃機関の始動直後からフィードポンプはオイルタンクの油を迅速に吸い込むことができる。内燃機関の始動直後から摺動部分に油を良好に供給することができる。
【0011】
前記ポンプ軸の軸線方向から見て、前記ポンプ軸と前記オイルタンクとが重なっていてもよい。
【0012】
前記フィード吸入通路は真っ直ぐに延びていてもよい。
【0013】
このことにより、フィード吸入通路が曲がっている場合に比べて、内燃機関の始動直後にフィードポンプはオイルタンクの油を迅速に吸い込むことができる。よって、内燃機関の始動直後から摺動部分に油を良好に供給することができる。
【0014】
前記フィード吸入通路は前記ポンプ軸と平行に配置されていてもよい。
【0015】
このことにより、フィード吸入通路およびポンプ軸をコンパクトに配置することができる。
【0016】
前記内燃機関は、前記フィードポンプから吐出された油を前記オイルタンクに導くリリーフ通路と、前記リリーフ通路に設けられたリリーフバルブと、を備えていてもよい。前記リリーフ通路は、前記フィード吸入通路と平行な平行部を有していてもよい。
【0017】
このことにより、フィードポンプから吐出された余剰の油をオイルタンクに迅速に戻すことができる。よって、オイルタンクのオイル消費量を抑えることができる。また、フィードポンプから吐出された余剰の油をフィード吸入通路に戻すインナーリリーフ機構と異なり、油圧の脈動のリスクを回避することができる。また、リリーフ通路はフィード吸入通路と平行な平行部を有しているので、リリーフ通路およびフィード吸入通路をコンパクトに配置することができる。
【0018】
前記内燃機関は、前記クランクケースに設けられたオイルパンと、前記オイルパンと前記スカベンジポンプの前記第1吸入口とをつなぐスカベンジ吸入通路と、を備えていてもよい。前記スカベンジ吸入通路は、前記フィード吸入通路と平行な平行部を有していてもよい。
【0019】
このことにより、スカベンジ吸入通路およびフィード吸入通路をコンパクトに配置することができる。
【0020】
ここに開示される鞍乗型車両は、前記内燃機関を備えたものである。
【0021】
前記フィードポンプおよび前記オイルタンクの一方は車両中心線の左方に配置され、前記フィードポンプおよび前記オイルタンクの他方は車両中心線の右方に配置されていてもよい。
【0022】
前記オイルタンクは、前記クランク軸よりも車両前後方向の前方に配置されていてもよい。
【0023】
前記オイルタンクの車両上下方向の寸法は、前記オイルタンクの車両前後方向の寸法よりも大きくてもよい。
【0024】
前記オイルタンクの上端は、前記クランク軸の中心よりも上方に位置していてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、内燃機関の始動直後から油を良好に供給できるドライサンプ式の内燃機関およびそれを備えた鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。
【
図4】
図4は、内燃機関の前部の車両中心線に沿った鉛直断面図である。
【
図5】
図5は、内燃機関の左前部分の鉛直断面図である。
【
図6】
図6は、内燃機関の右前部分の鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る内燃機関および鞍乗型車両について説明する。
図1は、鞍乗型車両の一例である自動二輪車1の右側面図である。
図2は、自動二輪車1の左側面図である。
【0028】
以下の説明では特に断らない限り、前、後、左、右、上、下とは、乗員が乗車せずかつ荷物が載せられていない自動二輪車1が水平面上に直立した状態で停止している場合に、シート2に着座した仮想的な乗員から見た前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図中のF、Re、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。
【0029】
自動二輪車1は、ヘッドパイプ3Aを有する車体フレーム3と、乗員が座るシート2と、内燃機関(以下、エンジンという)5と、前輪6と、後輪8とを備えている。ヘッドパイプ3Aには、図示しないステアリング軸が左右に回転可能に支持されている。ステアリング軸の上部にはハンドルバー4が固定されている。ステアリング軸の下部にはフロントフォーク7が固定されている。前輪6はフロントフォーク7に支持されている。
【0030】
図2に示すように、エンジン5は、クランク軸11を支持するクランクケース12と、少なくとも一部がクランクケース12によって仕切られたオイルタンク13とを備えている。オイルタンク13はエンジン5の前部に形成されている。オイルタンク13は、クランク軸11よりも前方に配置されている。
【0031】
図3は、エンジン5の前部の断面図であり、
図6のIII-III線断面に相当する断面図である。
図3の符号CLは車両中心線を表している。
図4は、エンジン5の前部の車両中心線CLを通る鉛直断面図である。
図5は、エンジン5の前部の車両中心線CLよりも左方の部分の鉛直断面図である。すなわち、
図5は、エンジン5の左前部分の鉛直断面図である。
図6は、エンジン5の前部の車両中心線CLよりも右方の部分の鉛直断面図である。すなわち、
図6は、エンジン5の右前部分の鉛直断面図である。
【0032】
図3に示すように、オイルタンク13は車両中心線CLよりも左方に配置されている。
図5に示すように、オイルタンク13の一部はクランクケース12の前壁12Fによって形成されている。オイルタンク13の形状は特に限定されないが、本実施形態では、オイルタンク13は縦長の形状に形成されている。オイルタンク13の車両上下方向の寸法13Hは、車両前後方向の寸法13Lよりも大きい。オイルタンク13は比較的上方に形成されている。オイルタンク13の上端13tは、クランク軸11の中心よりも上方に位置している。オイルタンク13は、クランクケース12の一部からなる縦壁13Cにより、前室13Aと後室13Bとに分けられている。前室13Aと後室13Bとは、縦壁13Cの上方においてつながっている。
【0033】
図3に示すように、エンジン5は、スカベンジポンプ14およびフィードポンプ16を備えている。スカベンジポンプ14およびフィードポンプ16は、車両中心線CLの右方に配置されている。スカベンジポンプ14は、吸入口14aと、吐出口14bと、スカベンジロータ14cとを有している。フィードポンプ16は、吸入口16aと、吐出口16bと、ポンプ軸15と、ポンプ軸15に固定されたフィードロータ16cとを有している。ポンプ軸15は、左右方向に延びている。ポンプ軸15はクランク軸11と平行に配置されている。本実施形態では、ポンプ軸15はスカベンジポンプ14のポンプ軸を兼ねている。スカベンジロータ14cはポンプ軸15に固定されている。ポンプ軸15は、歯車35等を介してクランク軸11に連結されている。ポンプ軸15はクランク軸11の駆動力を受けて回転し、スカベンジロータ14cおよびフィードロータ16cを回転させる。
図4および
図6に示すように、スカベンジポンプ14およびフィードポンプ16は、エンジン5の前部に配置されている。スカベンジポンプ14およびフィードポンプ16は、クランク軸11(
図2参照)よりも前方に配置されている。
【0034】
図4に示すように、クランクケース12の底部にはオイルパン18が形成されている。オイルパン18にはストレーナ19が設けられている。
【0035】
ストレーナ19とスカベンジポンプ14の吸入口14aとは、スカベンジ吸入通路24によって接続されている。スカベンジポンプ14の吸入口14aは、スカベンジ吸入通路24およびストレーナ19を介してオイルパン18に接続されている。スカベンジ吸入通路24は、前方かつ上方に延びる部分24Aを有している。また、スカベンジ吸入通路24は、右方に延びる部分24B(
図3参照)を有している。当該部分24Bは、後述するフィード吸入通路22と平行な平行部となっている。
【0036】
図5に示すように、スカベンジポンプ14の吐出口14bとオイルタンク13とは、スカベンジ吐出通路20によって接続されている。
図5において、符号20bはスカベンジ吐出通路20の出口を表している。なお、スカベンジ吐出通路20の出口20bは、オイルタンク13の入口でもある。
【0037】
図3に示すように、オイルタンク13とフィードポンプ16の吸入口16aとは、フィード吸入通路22によって接続されている。フィード吸入通路22は曲がっていてもよいが、本実施形態では真っ直ぐに延びている。フィード吸入通路22は、左右方向に真っ直ぐに延びている。フィード吸入通路22は、ポンプ軸15と平行に配置されている。
図5において、符号22aはフィード吸入通路22の入口を表している。なお、フィード吸入通路22の入口22aは、オイルタンク13の出口でもある。
【0038】
図3に示すように、フィードポンプ16の吐出口16bにはフィード吐出通路25が接続されている。フィード吐出通路25は、クランクピン31や軸受32等のエンジン5の摺動部分に接続されている。フィードポンプ16から吐出された油は、上記摺動部分に供給される。
【0039】
エンジン5は、フィードポンプ16から吐出された油をオイルタンク13に導くリリーフ通路23を備えている。
図5において、符号23bはリリーフ通路23の出口を表している。
図3に示すように、リリーフ通路23にはリリーフバルブ27が設けられている。リリーフバルブ27は、フィードポンプ16の吐出圧力が閾値未満の場合は閉じ、閾値以上になると開くように構成されている。フィードポンプ16の吐出圧力が閾値以上になると、フィードポンプ16から吐出される油の一部がリリーフ通路23を通じてオイルタンク13に戻される。リリーフ通路23は、フィード吸入通路22と平行な平行部23Aを有している。平行部23Aはフィード吸入通路22と同様、左右方向に延びている。
【0040】
前述したように、フィードポンプ16およびオイルタンク13は、エンジン5の前部に配置されている。
図6に示すように、ポンプ軸15の軸線方向から見て、フィードポンプ16の少なくとも一部とオイルタンク13とは重なっている。ここでは、ポンプ軸15の軸線方向から見て、フィードポンプ16の吸入口16aとオイルタンク13とが重なっている。また、ポンプ軸15の軸線方向から見て、ポンプ軸15とオイルタンク13とが重なっている。また、
図5に示すように、ポンプ軸15の軸線方向から見て、スカベンジポンプ14の少なくとも一部とオイルタンク13とは重なっている。
【0041】
次に、エンジン5における油の循環動作について説明する。オイルパン18の油はストレーナ19によって浄化され、スカベンジ吸入通路24を通ってスカベンジポンプ14に吸い込まれる。スカベンジポンプ14から吐出された油は、スカベンジ吐出通路20を通ってオイルタンク13に供給される。オイルタンク13の油は、フィード吸入通路22を通ってフィードポンプ16に吸い込まれる。フィードポンプ16から吐出された油は、フィード吐出通路25を通って摺動部分に供給される。フィードポンプ16の吐出圧力が閾値以上になると、リリーフバルブ27が開き、フィードポンプ16から吐出された油の一部はリリーフ通路23を通ってオイルタンク13に戻る。摺動部分に供給された油は、摺動部分の潤滑を行った後、オイルパン18に回収される。
【0042】
以上が本実施形態に係るエンジン5の構成である。本実施形態に係るエンジン5によれば、ポンプ軸15の軸線方向から見て、フィードポンプ16の少なくとも一部とオイルタンク13とが重なっているので、ポンプ軸15の軸線方向から見てフィードポンプ16はオイルタンク13の近くに配置されている。よって、オイルタンク13とフィードポンプ16とをつなぐフィード吸入通路22を短縮することができる。フィード吸入通路22が比較的短いので、エンジン5の始動直後からフィードポンプ16はオイルタンク13の油を迅速に吸い込むことができる。フィードポンプ16は、油の圧力を迅速に高めることができる。したがって、本実施形態に係るエンジン5によれば、始動直後から摺動部分に油を良好に供給することができる。
【0043】
本実施形態によれば、ポンプ軸15の軸線方向から見て、フィードポンプ16の吸入口16aとオイルタンク13とが重なっている(
図6参照)。ポンプ軸15の軸線方向から見て、フィードポンプ16の吸入口16aはオイルタンク13の近くに配置されている。よって、エンジン5の始動直後からフィードポンプ16はオイルタンク13の油を迅速に吸い込むことができる。エンジン5の始動直後から摺動部分に油を良好に供給することができる。
【0044】
本実施形態によれば、フィード吸入通路22は真っ直ぐに延びている(
図3参照)。フィード吸入通路22が曲がっている場合に比べて、フィードポンプ16はエンジン5の始動直後からオイルタンク13の油を迅速に吸い込むことができる。よって、エンジン5の始動直後から摺動部分に油を良好に供給することができる。
【0045】
本実施形態によれば、フィード吸入通路22はポンプ軸15と平行に配置されている。フィード吸入通路22およびポンプ軸15をコンパクトに配置することができる。
【0046】
本実施形態によれば、エンジン5はリリーフ通路23およびリリーフバルブ27を備えている。リリーフ通路23により、フィードポンプ16から吐出された余剰の油をオイルタンク13に迅速に戻すことができる。よって、オイルタンク13のオイル消費量を抑えることができる。また、フィードポンプ16から吐出された余剰の油をフィード吸入通路22に戻すインナーリリーフ機構と異なり、油圧の脈動のリスクを回避することができる。更に、本実施形態によれば、リリーフ通路23はフィード吸入通路22と平行な平行部23Aを有している。リリーフ通路23およびフィード吸入通路22をコンパクトに配置することができる。
【0047】
本実施形態によれば、スカベンジ吸入通路24は、フィード吸入通路22と平行な平行部24Bを有している。このことにより、スカベンジ吸入通路24およびフィード吸入通路22をコンパクトに配置することができる。
【0048】
以上、一実施形態について説明したが、前記実施形態は例示に過ぎず、他にも様々な実施形態が可能である。
【0049】
前記実施形態では、ポンプ軸15の軸線方向から見て、フィードポンプ16の一部がオイルタンク13と重なっているが、フィードポンプ16の全部がオイルタンク13と重なっていてもよい。ポンプ軸15の軸線方向から見て、フィードポンプ16の吸入口16aはオイルタンク13と重なっていなくてもよい。ポンプ軸15の軸線方向から見て、ポンプ軸15とオイルタンク13とが重なっていなくてもよい。
【0050】
フィード吸入通路22とポンプ軸15とは平行でなくてもよい。
【0051】
リリーフ通路23は、フィード吸入通路22と平行な平行部23Aを有していなくてもよい。また、エンジン5はリリーフ通路23を備えていなくてもよい。
【0052】
スカベンジ吸入通路24は、フィード吸入通路22と平行な平行部24Bを有していなくてもよい。
【0053】
フィードポンプ16の少なくとも一部とオイルタンク13の少なくとも一部との両方が、車両中心線CLの左方に配置されていてもよく、車両中心線CLの右方に配置されていてもよい。
【0054】
オイルタンク13の少なくとも一部は、クランク軸11よりも後方に配置されていてもよい。オイルタンク13の形状は、必ずしも縦長でなくてもよい。オイルタンク13の上下方向の寸法13Hは、オイルタンク13の前後方向の寸法13L以下であってもよい。オイルタンク13の上端13tは、クランク軸11の中心よりも下方に位置していてもよい。
【0055】
鞍乗型車両とは、乗員が跨がって乗車する車両のことである。鞍乗型車両は自動二輪車1に限定されない。鞍乗型車両は、例えば、自動三輪車、ATV(All Terrain vehicle)、スノーモービルであってもよい。
【0056】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、実施形態がここに記載されている。ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0057】
1…自動二輪車(鞍乗型車両)、5…内燃機関、11…クランク軸、12…クランクケース、13…オイルタンク、14…スカベンジポンプ、14a…スカベンジポンプの吸入口(第1吸入口)、14b…スカベンジポンプの吐出口(第1吐出口)、15…ポンプ軸、16…フィードポンプ、16a…フィードポンプの吸入口(第2吸入口)、16b…フィードポンプの吐出口(第2吐出口)、18…オイルパン、20…スカベンジ吐出通路、22…フィード吸入通路、23…リリーフ通路、23A…リリーフ通路の平行部、24…スカベンジ吸入通路、24B…スカベンジ吸入通路の平行部、27…リリーフバルブ、CL…車両中心線