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特開2024-49652数値制御装置、数値制御システム、制御方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049652
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】数値制御装置、数値制御システム、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/404 20060101AFI20240403BHJP
   B23Q 15/26 20060101ALI20240403BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G05B19/404 G
B23Q15/26
B23Q3/155 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156001
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174344
【弁理士】
【氏名又は名称】安井 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 優伍
【テーマコード(参考)】
3C001
3C002
3C269
【Fターム(参考)】
3C001KA01
3C001KB04
3C001KB09
3C001TA01
3C001TB01
3C002AA03
3C002DD14
3C002HH01
3C269AB01
3C269AB31
3C269BB03
3C269CC02
3C269EF10
3C269EF15
3C269MN16
3C269PP02
3C269PP05
3C269QE23
(57)【要約】
【課題】マガジンの旋回補正を実行する際に主軸を適切な位置に退避できる数値制御装置、数値制御システム、制御方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】工具交換経路52上のM4点に主軸が停止した状態で、主軸の位置を加工領域に復旧させる為、CPUはマガジンに旋回ずれがあるか判定する。旋回ずれがあると判定した場合、CPUは主軸のZ軸を検出し、その検出した位置がATC原点Z軸に有るか判断する。ATC原点Z軸になければ、主軸はマガジン旋回領域内に位置する可能性がある。この場合、CPUは主軸をATC原点Z軸まで退避させてから、マガジンを基準位置に戻す旋回補正を実行させる動作又は作業を要求する。旋回補正が行われた後、CPUは主軸を工具交換経路52,51に沿って加工領域に向けて移動させる。
【選択図】図31
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の主軸に装着させる工具を把持可能な複数の把持部が周方向に沿って設けられ、旋回軸を中心に旋回可能なマガジンを旋回駆動して任意の前記把持部を割り出させる旋回駆動部と、
前記把持部の割出位置に対応する前記マガジンの旋回位置座標を、前記マガジンの基準位置を示す基準座標として記憶する記憶部と、
前記マガジンの旋回位置座標を検出する座標検出部と、
前記座標検出部により検出された前記マガジンの旋回位置座標の、前記記憶部に記憶された前記基準座標に対する前記旋回軸の周方向のずれである旋回ずれがあるか判定するずれ判定部と、
前記主軸の位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部が検出した前記主軸の位置が、前記マガジンが旋回する領域であるマガジン旋回領域内に位置するか判断する判断部と、
前記ずれ判定部により前記旋回ずれがあると判定され、前記判断部により前記主軸の位置が前記マガジン旋回領域内に位置すると判断された場合に、前記主軸を前記マガジン旋回領域から退避させた後、前記マガジンを前記基準位置に戻す旋回補正を実行させる動作又は作業を要求する補正要求部と
を備えたことを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記補正要求部は、前記旋回ずれの大きさが閾値未満である場合に、前記旋回駆動部に対して、前記旋回補正の動作を指示し、前記旋回ずれの大きさが前記閾値以上である場合に、作業者に対して、前記旋回補正の作業を報知すること
を特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記旋回ずれの大きさが閾値未満である場合に、前記旋回補正が不要であると判定する一方、前記旋回ずれの大きさが前記閾値以上である場合に、前記旋回補正を行う必要があると判定する補正判定部を更に備え、
前記補正要求部は、前記補正判定部により前記旋回補正を行う必要があると判定された場合に、前記旋回補正を実行させる動作又は作業を要求すること
を特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記補正要求部は、前記主軸を、前記把持部との間で工具交換を行うときに前記主軸を移動させる経路である工具交換経路に沿って前記マガジン旋回領域から離れる方向に退避させた後、前記旋回補正を実行させる動作又は作業を要求すること
を特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記工具交換経路は、前記主軸が前記マガジンとの間で前記工具交換を行う工具交換位置と、前記工具交換位置から前記主軸の軸方向に直交する方向に離間する位置であって前記軸方向において前記工具交換位置と同一位置である工具交換準備位置とを結ぶ所定経路を含み、
前記補正要求部は、前記主軸が前記所定経路で且つ前記マガジン旋回領域内に位置する場合に、前記主軸を前記所定経路に沿って前記工具交換準備位置に退避させた後、前記旋回補正を実行させる動作又は作業を要求すること
を特徴とする請求項4に記載の数値制御装置。
【請求項6】
前記工作機械は、前記工具交換経路上の工具交換位置と、前記工具交換位置から前記主軸の軸方向において離間する原点位置とに前記主軸を往復移動させることによって、前記マガジンとの間で前記主軸の前記工具交換を行うものであって、
前記補正要求部は、前記主軸が前記工具交換位置と前記原点位置との間で且つ前記マガジン旋回領域内に位置する場合に、前記主軸を前記原点位置に退避させた後、前記旋回補正を実行させ動作又は作業を要求すること
を特徴とする請求項4に記載の数値制御装置。
【請求項7】
前記ずれ判定部は、前記工具交換が途中で停止した場合に、前記旋回ずれがあるか判定すること
を特徴とする請求項4に記載の数値制御装置。
【請求項8】
前記ずれ判定部は、前記工具交換の途中で前記工作機械の電源がオフされた後、前記電源がオンされた場合に、前記旋回ずれがあるか判定すること
を特徴とする請求項4に記載の数値制御装置。
【請求項9】
前記主軸の軸方向は水平方向であること
を特徴とする請求項1から3の何れか一に記載の数値制御装置。
【請求項10】
工作機械と数値制御装置を備える数値制御システムであって、
前記数値制御装置は、
前記工作機械の主軸に装着させる工具を把持可能な複数の把持部が周方向に沿って設けられ、旋回軸を中心に旋回可能なマガジンを旋回駆動して任意の前記把持部を割り出させる旋回駆動部と、
前記把持部の割出位置に対応する前記マガジンの旋回位置座標を、前記マガジンの基準位置を示す基準座標として記憶する記憶部と、
前記マガジンの旋回位置座標を検出する座標検出部と、
前記座標検出部により検出された前記マガジンの旋回位置座標の、前記記憶部に記憶された前記基準座標に対する前記旋回軸の周方向のずれである旋回ずれがあるか判定するずれ判定部と、
前記主軸の位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部が検出した前記主軸の位置が、前記マガジンが旋回する領域であるマガジン旋回領域内に位置するか判断する判断部と、
前記ずれ判定部により前記旋回ずれがあると判定され、前記判断部により前記主軸の位置が前記マガジン旋回領域内に位置すると判断された場合に、前記主軸を前記マガジン旋回領域から退避させた後、前記マガジンを前記基準位置に戻す旋回補正を実行させる動作又は作業を要求する補正要求部と
を備えたことを特徴とする数値制御システム。
【請求項11】
工作機械の動作を制御する数値制御装置の制御方法において、
前記工作機械の主軸に装着させる工具を把持可能な複数の把持部が周方向に沿って設けられ、旋回軸を中心に旋回するマガジンを旋回駆動して任意の前記把持部を割り出させる旋回駆動工程と、
前記マガジンの旋回位置座標を検出する座標検出工程と、
前記座標検出工程で検出された前記マガジンの旋回位置座標の、前記把持部の割出位置に対応する前記マガジンの旋回位置座標を、前記マガジンの基準位置を示す基準座標として記憶する記憶部に記憶された前記基準座標に対する前記旋回軸の周方向のずれである旋回ずれがあるか判定するずれ判定工程と、
前記主軸の位置を検出する位置検出工程と、
前記位置検出工程で検出した前記主軸の位置が、前記マガジンが旋回する領域であるマガジン旋回領域内に位置するか判断する判断工程と、
前記ずれ判定工程で前記旋回ずれがあると判定され、前記判断工程で前記主軸の位置が前記マガジン旋回領域内に位置すると判断された場合に、前記主軸を前記マガジン旋回領域から退避させた後、前記マガジンを前記基準位置に戻す旋回補正を実行させる動作又は作業を要求する補正要求工程と
を備えたことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
工作機械の動作を制御する数値制御装置を機能させるプログラムにおいて、
コンピュータに、
前記工作機械の主軸に装着させる工具を把持可能な複数の把持部が周方向に沿って設けられ、旋回軸を中心に旋回するマガジンを旋回駆動して任意の前記把持部を割り出させる旋回駆動処理と、
前記マガジンの旋回位置座標を検出する座標検出処理と、
前記座標検出処理で検出された前記マガジンの旋回位置座標の、前記把持部の割出位置に対応する前記マガジンの旋回位置座標を、前記マガジンの基準位置を示す基準座標として記憶する記憶部に記憶された前記基準座標に対する前記旋回軸の周方向のずれである旋回ずれがあるか判定するずれ判定処理と、
前記主軸の位置を検出する位置検出処理と、
前記位置検出処理で検出した前記主軸の位置が、前記マガジンが旋回する領域であるマガジン旋回領域内に位置するか判断する判断処理と、
前記ずれ判定処理で前記旋回ずれがあると判定され、前記判断処理で前記主軸の位置が前記マガジン旋回領域内に位置すると判断された場合に、前記主軸を前記マガジン旋回領域から退避させた後、前記マガジンを前記基準位置に戻す旋回補正を実行させる動作又は作業を要求する補正要求処理と
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項13】
制御部と、
プログラムを記憶する記憶部と
を備え、
前記制御部は、前記プログラムを実行して、請求項11の制御方法を実現すること
を特徴とする数値制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置、数値制御システム、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
タレット式のマガジンを備える工作機械が知られている。マガジンは旋回軸を中心に旋回可能であり、その外周部には複数の把持部が周方向に沿って設けられる。把持部は工具を把持可能である。マガジンは旋回することで任意の把持部を割出位置に割出し可能である。主軸の工具交換時、工作機械は主軸を工具交換経路に沿って移動させ、工具交換経路上における工具交換位置と工具交換原点との間を往復移動させることで、主軸とマガジンの把持部との間で工具の受け渡しを行う。工具交換位置はマガジンの割出位置に対応し且つ主軸と把持部との間で工具を受け渡しする位置である。工具交換原点は、把持部が把持している工具と主軸とが干渉せずマガジンが旋回可能な位置である。
【0003】
工具交換時においてマガジンに旋回ずれが発生する場合がある。旋回ずれとは、マガジンが基準位置から周方向にずれる現象である。マガジンの基準位置は、把持部が割出位置に割出された状態のマガジンの旋回位置である。マガジンに旋回ずれが発生すると、その旋回ずれの大きさによっては主軸に対して把持部の位置が大きくずれるので、工具の受け渡しができない。そこで、例えばタレット(マガジン)の旋回ずれに応じて、タレットを基準位置に戻す旋回補正を行う必要があるか否かを判定し、旋回補正を行う必要があると判定された場合、旋回補正に関わる動作又は作業を要求する位置補正システムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6396380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の工作機械においてマガジンの旋回補正を実施する際に、主軸の位置がマガジンに近接している場合、マガジンの旋回時において、マガジンの機構や把持部に把持されている工具と、主軸や主軸に装着された工具とが干渉する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、マガジンの旋回補正を実行する際に主軸を適切な位置に退避できる数値制御装置、数値制御システム、制御方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の数値制御装置は、工作機械の主軸に装着させる工具を把持可能な複数の把持部が周方向に沿って設けられ、旋回軸を中心に旋回可能なマガジンを旋回駆動して任意の前記把持部を割り出させる旋回駆動部と、前記把持部の割出位置に対応する前記マガジンの旋回位置座標を、前記マガジンの基準位置を示す基準座標として記憶する記憶部と、前記マガジンの旋回位置座標を検出する座標検出部と、前記座標検出部により検出された前記マガジンの旋回位置座標の、前記記憶部に記憶された前記基準座標に対する前記旋回軸の周方向のずれである旋回ずれがあるか判定するずれ判定部と、前記主軸の位置を検出する位置検出部と、前記位置検出部が検出した前記主軸の位置が、前記マガジンが旋回する領域であるマガジン旋回領域内に位置するか判断する判断部と、前記ずれ判定部により前記旋回ずれがあると判定され、前記判断部により前記主軸の位置が前記マガジン旋回領域内に位置すると判断された場合に、前記主軸を前記マガジン旋回領域から退避させた後、前記マガジンを前記基準位置に戻す旋回補正を実行させる動作又は作業を要求する補正要求部とを備えたことを特徴とする。数値制御装置は旋回ずれを生じているマガジンを基準位置に戻す際に、主軸の位置がマガジン旋回領域内と判断した場合は、主軸をマガジン旋回領域から退避させたのちにマガジンを基準位置に戻すことができる。これにより、数値制御装置は、マガジンや把持部に把持されている工具と、主軸や主軸に装着された工具との干渉を回避できるので、旋回補正を適切に行うと共にマガジンや主軸及び工具が破損する可能性を低減できる。
【0008】
請求項2の数値制御装置の前記補正要求部は、前記旋回ずれの大きさが閾値未満である場合に、前記旋回駆動部に対して、前記旋回補正の動作を指示し、前記旋回ずれの大きさが前記閾値以上である場合に、作業者に対して、前記旋回補正の作業を報知してもよい。旋回ずれの大きさが閾値未満であれば旋回補正が自動で行われるので、旋回補正を手動で行う場合に比べて手間を省略できる。他方、旋回ずれの大きさが閾値以上である場合は、数値制御装置は作業者に対して旋回補正の作業を報知するので、作業者はマガジンの周囲を確認しながらマガジンを慎重に旋回させることができる。
【0009】
請求項3の数値制御装置は、前記旋回ずれの大きさが閾値未満である場合に前記旋回補正が不要であると判定する一方、前記旋回ずれの大きさが前記閾値以上である場合に、前記旋回補正を行う必要があると判定する補正判定部を更に備え、前記補正要求部は、前記補正判定部により前記旋回補正を行う必要があると判定された場合に、前記旋回補正を実行させる動作又は作業を要求してもよい。旋回ずれの大きさが閾値未満の場合、そのまま主軸を移動させても、工具の受け渡しに対して影響が小さいことから旋回補正は不要とする。他方、旋回ずれの大きさが閾値以上である場合は、数値制御装置は作業者に対して旋回補正の作業を報知するので、作業者はマガジンの周囲を確認しながらマガジンを慎重に旋回させることができる。
【0010】
請求項4の数値制御装置の前記補正要求部は、前記主軸を、前記把持部との間で工具交換を行うときに前記主軸を移動させる経路である工具交換経路に沿って前記マガジン旋回領域から離れる方向に退避させた後、前記旋回補正を実行させる動作又は作業を要求してもよい。数値制御装置は主軸をマガジン旋回領域内から退避させる際、工具交換経路に沿って主軸を移動させることによって、主軸や主軸に装着された工具が他部材と干渉する可能性を低減できる。
【0011】
請求項5の数値制御装置の前記工具交換経路は、前記主軸が前記マガジンとの間で前記工具交換を行う工具交換位置と、前記工具交換位置から前記主軸の軸方向に直交する方向に離間する位置であって前記軸方向において前記工具交換位置と同一位置である工具交換準備位置とを結ぶ所定経路を含み、前記補正要求部は、前記主軸が前記所定経路で且つ前記マガジン旋回領域内に位置する場合に、前記主軸を前記所定経路に沿って前記工具交換準備位置に退避させた後、前記旋回補正を実行させる動作又は作業を要求してもよい。停止状態の主軸が工具交換経路中の所定経路で且つマガジン旋回領域内に位置する場合、数値制御装置は、所定経路に沿って工具交換準備位置まで退避することで、マガジンの旋回補正を安全に行うことができる。
【0012】
請求項6の数値制御装置において、前記工作機械は、前記工具交換経路上の工具交換位置と、前記工具交換位置から前記主軸の軸方向において離間する原点位置とに前記主軸を往復移動させることによって、前記マガジンとの間で前記主軸の前記工具交換を行うものであって、前記補正要求部は、前記主軸が前記工具交換位置と前記原点位置との間で且つ前記マガジン旋回領域内に位置する場合に、前記主軸を前記原点位置に退避させた後、前記旋回補正を実行させ動作又は作業を要求してもよい。停止状態の主軸が工具交換位置と原点位置との間で且つマガジン旋回領域内に位置する場合、数値制御装置は主軸を原点位置に退避することで、マガジンの旋回補正を安全に行うことができる。
【0013】
請求項7の数値制御装置の前記ずれ判定部は、前記工具交換が途中で停止した場合に、前記旋回ずれがあるか判定してもよい。例えばアラーム等が発生し、工具交換が途中で停止した場合、主軸は停止した状態である。この場合、数値制御装置はマガジンの旋回ずれを判定し、停止した主軸の位置がマガジン旋回領域内と判断した場合は、主軸をマガジン旋回領域から退避させたのちにマガジンを基準位置に戻すことができる。
【0014】
請求項8の数値制御装置の前記ずれ判定部は、前記工具交換の途中で前記工作機械の電源がオフされた後、前記電源がオンされた場合に、前記旋回ずれがあるか判定してもよい。工具交換の途中で工作機械の電源がオフされた後、電源がオンされた場合、主軸は停止した状態である。この場合、数値制御装置はマガジンの旋回ずれを判定し、停止した主軸の位置がマガジン旋回領域内と判断した場合は、主軸をマガジン旋回領域から退避させたのちにマガジンを基準位置に戻すことができる。
【0015】
請求項9の数値制御装置において、前記主軸の軸方向は水平方向であってもよい。本態様の数値制御装置は主軸が水平方向に延びる横形の工作機械に適用できる。
【0016】
請求項10の数値制御システムは、工作機械と数値制御装置を備える数値制御システムであって、前記数値制御装置は、前記工作機械の主軸に装着させる工具を把持可能な複数の把持部が周方向に沿って設けられ、旋回軸を中心に旋回可能なマガジンを旋回駆動して任意の前記把持部を割り出させる旋回駆動部と、前記把持部の割出位置に対応する前記マガジンの旋回位置座標を、前記マガジンの基準位置を示す基準座標として記憶する記憶部と、前記マガジンの旋回位置座標を検出する座標検出部と、前記座標検出部により検出された前記マガジンの旋回位置座標の、前記記憶部に記憶された前記基準座標に対する前記旋回軸の周方向のずれである旋回ずれがあるか判定するずれ判定部と、前記主軸の位置を検出する位置検出部と、前記位置検出部が検出した前記主軸の位置が、前記マガジンが旋回する領域であるマガジン旋回領域内に位置するか判断する判断部と、前記ずれ判定部により前記旋回ずれがあると判定され、前記判断部により前記主軸の位置が前記マガジン旋回領域内に位置すると判断された場合に、前記主軸を前記マガジン旋回領域から退避させた後、前記マガジンを前記基準位置に戻す旋回補正を実行させる動作又は作業を要求する補正要求部とを備えたことを特徴とする。これにより、数値制御システムは請求項1と同様の効果を得ることができる。なお、数値制御装置は工作機械の動作を制御するものであるが、複数の工作機械の動作を制御するものであってもよい。
【0017】
請求項11の制御方法は、工作機械の動作を制御する数値制御装置の制御方法において、前記工作機械の主軸に装着させる工具を把持可能な複数の把持部が周方向に沿って設けられ、旋回軸を中心に旋回するマガジンを旋回駆動して任意の前記把持部を割り出させる旋回駆動工程と、前記マガジンの旋回位置座標を検出する座標検出工程と、前記座標検出工程で検出された前記マガジンの旋回位置座標の、前記把持部の割出位置に対応する前記マガジンの旋回位置座標を、前記マガジンの基準位置を示す基準座標として記憶する記憶部に記憶された前記基準座標に対する前記旋回軸の周方向のずれである旋回ずれがあるか判定するずれ判定工程と、前記主軸の位置を検出する位置検出工程と、前記位置検出工程で検出した前記主軸の位置が、前記マガジンが旋回する領域であるマガジン旋回領域内に位置するか判断する判断工程と、前記ずれ判定工程で前記旋回ずれがあると判定され、前記判断工程で前記主軸の位置が前記マガジン旋回領域内に位置すると判断された場合に、前記主軸を前記マガジン旋回領域から退避させた後、前記マガジンを前記基準位置に戻す旋回補正を実行させる動作又は作業を要求する補正要求工程とを備えたことを特徴とする。数値制御装置は各工程を行うことで請求項1に記載の効果を得ることができる。
【0018】
請求項12のプログラムは、工作機械の動作を制御する数値制御装置を機能させるプログラムにおいて、コンピュータに、前記工作機械の主軸に装着させる工具を把持可能な複数の把持部が周方向に沿って設けられ、旋回軸を中心に旋回するマガジンを旋回駆動して任意の前記把持部を割り出させる旋回駆動処理と、前記マガジンの旋回位置座標を検出する座標検出処理と、前記座標検出処理で検出された前記マガジンの旋回位置座標の、前記把持部の割出位置に対応する前記マガジンの旋回位置座標を、前記マガジンの基準位置を示す基準座標として記憶する記憶部に記憶された前記基準座標に対する前記旋回軸の周方向のずれである旋回ずれがあるか判定するずれ判定処理と、前記主軸の位置を検出する位置検出処理と、前記位置検出処理で検出した前記主軸の位置が、前記マガジンが旋回する領域であるマガジン旋回領域内に位置するか判断する判断処理と、前記ずれ判定処理で前記旋回ずれがあると判定され、前記判断処理で前記主軸の位置が前記マガジン旋回領域内に位置すると判断された場合に、前記主軸を前記マガジン旋回領域から退避させた後、前記マガジンを前記基準位置に戻す旋回補正を実行させる動作又は作業を要求する補正要求処理とを実行させることを特徴とする。数値制御装置のコンピュータは各処理を実行することで、数値制御装置は請求項1に記載の効果を得ることができる。
【0019】
請求項13の数値制御装置は、制御部と、プログラムを記憶する記憶部とを備え、前記制御部は、前記プログラムを実行して、請求項11に記載の制御方法を実現することを特徴とする。これにより、数値制御装置は請求項11に記載の効果を得ることができる。
【0020】
上記プログラムが記憶されたコンピュータによって読取可能な記憶媒体も新規で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】工作機械1の斜視図である。
図2】工作機械1(シャッタ103:閉)の斜視図である。
図3】工作機械1(シャッタ:開)の斜視図である。
図4】工作機械1(マガジンカバー省略)の斜視図である。
図5】工作機械1(マガジンカバー省略)の右側面図である。
図6】加工領域、ATC領域、各基準点を示す図である。
図7】マガジン旋回領域のイメージ図である。
図8】工作機械1の電気的構成を示すブロック図である。
図9】NC制御処理のフローチャートである。
図10】電源ON時処理のフローチャートである。
図11】アラーム検出時処理のフローチャートである。
図12】アプリ制御処理のフローチャートである。
図13】ATC復旧処理のフローチャートである。
図14図13の続きを示すフローチャートである。
図15】YM軸復旧処理のフローチャートである。
図16】YZM軸復旧処理のフローチャートである。
図17】軸戻し先判定処理のフローチャートである。
図18】復旧領域W1を示す図である。
図19】復旧領域W2を示す図である。
図20】復旧領域W3を示す図である。
図21】復旧領域W4,W5を示す図である。
図22】復旧領域W6を示す図である。
図23】軸戻し画面81を示す図である。
図24】M1点からの移動経路(1)とマガジンの位置(2)を示すイメージ図である。
図25】Y軸復旧画面82を示す図である。
図26】M2点からの移動経路(1)とマガジンの位置(2)を示すイメージ図である。
図27】YM軸復旧画面83(旋回ずれが閾値未満のとき)を示す図である。
図28】YM軸復旧画面83(旋回ずれが閾値以上のとき)を示す図である。
図29】M3点からの移動経路(1)とマガジンの位置(2)を示すイメージ図である。
図30】YZ軸復旧画面84を示す図である。
図31】M4点からの移動経路(1)とマガジンの位置(2)を示すイメージ図である。
図32】YZM軸復旧画面85(旋回ずれが閾値未満のとき)を示す図である。
図33】YZM軸復旧画面85(旋回ずれが閾値以上のとき)を示す図である。
図34】ATC原点からの移動経路(1)とマガジンの位置(2)を示すイメージ図である。
図35】M6点からの移動経路(1)とマガジンの位置(2)を示すイメージ図である。
図36】YZM軸復旧画面86(旋回ずれが閾値未満のとき)を示す図である。
図37】YZM軸復旧画面86(旋回ずれが閾値以上のとき)を示す図である。
図38】M7点の位置を示すイメージ図である。
図39】復旧不可画面87を示す図である。
図40】割出工具確認画面88を示す図である。
図41】終了画面89を示す図である。
図42】YM軸復旧処理(変形例)のフローチャートである。
図43】数値制御システム200(変形例)の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態を説明する。以下説明は図中に矢印で示す左右、上下、前後を使用する。工作機械1の左右方向、上下方向、前後方向は夫々工作機械1のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向である。図1に示す工作機械1は、主軸7が前後方向(Z軸方向)に延びる横形マシニングセンタである。本実施形態に記載する「ATC」とは「Automatic Tool Changer」の略称である。また、本実施形態に記載する「NC」とは「Numerical Control」の略称である。
【0023】
図1図4を参照し、工作機械1の構造を説明する。図1図2に示すように、工作機械1はベース2、コラム5、主軸ヘッド6、主軸7、制御箱8、回転テーブル9、X軸移動機構11、Z軸移動機構12、Y軸移動機構13、工具交換装置30(図4参照、以下「ATC装置30」と呼ぶ)、マガジンカバー10等を備える。ベース2はZ軸方向に長い平面視略矩形状の鉄製土台である。X軸移動機構11はベース2の上面後部に設け、キャリッジ15をX軸モータ62(図8参照)の動力でX軸方向に移動可能に支持する。Z軸移動機構12はキャリッジ15の上面に設け、コラム5をZ軸方向にZ軸モータ64(図8参照)の動力で移動可能に支持する。コラム5は上下方向に延びる立柱である。Y軸移動機構13はコラム5の前面5Bに設けられ、主軸ヘッド6をコラム5の前面5Bに沿ってY軸方向にY軸モータ63(図8参照)の動力で移動可能に支持する。これにより、主軸ヘッド6はX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に移動可能である。主軸ヘッド6はZ軸方向に延びる。主軸7は主軸ヘッド6内に設けられ、主軸ヘッド6と同軸上にZ軸方向に延びる。主軸ヘッド6は主軸7を前方に備え且つ回転可能に支持する。主軸ヘッド6は主軸モータ61(図8参照)を備える。主軸モータ61の出力軸(図示略)は、カップリング(図示略)を介して主軸7と同軸上に連結される。主軸7の先端部には、工具91を保持する工具ホルダ90が装着される(図7参照)。なお、以下説明の中で、説明の便宜上、「主軸7の先端部に工具91が装着される」と表現する箇所があるが意味は同じである。
【0024】
図4に示すように、ベース2の後部には、一対の支持部材17,18が設けられる。支持部材17,18は左右方向に互いに離間し且つベース2の後部から上方に延び、制御箱8を下方から支持する。制御箱8は内部に数値制御装置40(図8参照)を収納する。数値制御装置40は工作機械1の動作を制御する。ベース2の上面の前側には固定台16が設けられる。回転テーブル9は固定台16上に設置され、主軸ヘッド6の前方に配置される。回転テーブル9の上面にはワーク(図示略)が治具(図示略)で固定される。回転テーブル9はY軸に平行な回転軸を中心に360°回転及び位置決め可能である。回転テーブル9上に固定されたワークに対し、工作機械1は主軸7に装着された工具91をX軸、Y軸、Z軸の3軸方向から接触させることでワークの切削加工を行う。
【0025】
ベース2の上面前側で且つ左右両側には、一対の支持柱21,22が設けられる。支持柱21はベース2上面の右側から上方に延び且つ上部が左方に略90°屈曲する。支持柱22はベース2上面左側から上方に延び且つ上部が右方に略90°屈曲する。支持柱21と22の互いに対向する夫々の上部の間には連結板23が固定される。
【0026】
ATC装置30は連結板23の前面に固定され、主軸ヘッド6の上方に支持される。ATC装置30は、マガジン31、減速機32、マガジンモータ33等を備える。マガジン31は、マガジンベース37と複数のグリップアーム38を備える。マガジンベース37は略円盤状であり、旋回軸37A(図5参照)を中心に連結板23の前面に旋回可能に支持される。旋回軸37Aは、Z軸方向に対して前側に向けてやや下り傾斜する。減速機32とマガジンモータ33は、マガジンベース37に取り付けられる。マガジンモータ33の出力軸(図示略)は、減速機32を介して旋回軸37Aと接続する。これにより、マガジンモータ33の動力は減速機32を介してマガジンベース37の旋回軸37Aに伝達される。複数のグリップアーム38はマガジンベース37の外周部に沿って並び、径方向外側に向けて放射状に延びる。グリップアーム38の先端部は、工具ホルダ90を水平に寝かせた姿勢で、工具ホルダ90に直交する方向から工具ホルダ90を把持する。マガジン31の最下部の位置は、工具受渡位置(本発明の「割出し位置」の一例)である。工具受渡位置に割出されたグリップアーム38は、主軸7との間で工具の受け渡しを行う。
【0027】
マガジンカバー10は、支持柱21,22の夫々の上部の前面に固定される。マガジンカバー10は箱状でありマガジン31の周囲を覆う。マガジンカバー10は切粉と切削液の飛沫がマガジン31に付着するのを低減する。マガジンカバー10の底壁101には矩形状の開口102が設けられる。開口102はマガジン31の工具受渡位置の直下に位置する。開口102にはマガジンシャッタ103(以下「シャッタ103」と呼ぶ)が設けられる。シャッタ103は制御盤のCPU41の制御により開口102を開閉する。
【0028】
上記の工作機械1にはカバー(図示略)が取り付けられる。カバーは工作機械1の周囲を取り囲み、切削加工中に生じる切粉やクーラントの飛沫が周囲に飛散するのを防止する。カバーの正面にはワークの出し入れ等を行う為の開口(図示略)と、その開口を開閉する為の扉(図示略)が設けられる。開口の隣には、操作パネル25(図8参照)が設けられる。ユーザは操作パネル25で工作機械1の各種入力と操作を行う。
【0029】
図5に示すように、工作機械1には、加工領域と工具交換領域(以下「ATC領域」と呼ぶ)がY軸方向に並んで設けられる。加工領域はY軸原点よりもベース2側(下側)の空間に設けられる。Y軸原点はY軸の機械座標が0の位置(Y=0mm)である。加工領域は回転テーブル9上面に固定されたワークの加工を行う領域である。ATC領域はY軸原点に対して加工領域とは反対側(上側)の空間であって、Z軸方向にて加工領域と重なる位置に設けられる。ATC領域はATC装置30により主軸7の工具交換を行う領域である。工作機械1は主軸ヘッド6を上下動させることで、主軸7を加工領域とATC領域の夫々に移動できる。
【0030】
図6図7を参照し、機械原点、及びATC領域に設定される複数の基準点について説明する。なお、図7において、主軸7の向きを示す為に、主軸ヘッド6を省略して、主軸7、工具ホルダ90、工具91を簡略化して図示している。工作機械1の機械原点は、X軸とY軸の夫々の機械座標が0の位置で且つZ軸の機械座標が加工領域の後端位置であり、工作機械1の構造に応じて決まる。X軸の機械原点はX軸原点(X=0mm)、Y軸の機械原点はY軸原点(Y=0mm)、Z軸の機械原点はZ軸原点(Z=後端位置)である。なお、機械原点は工作機械1の構造によって位置が変わるので、その機械原点を基準に設定される加工領域とATC領域の大きさも工作機械1の構造によって変わる。
【0031】
ATC領域には、工具交換位置(以下「ATC位置」と呼ぶ)、ATC原点、ATC準備位置が設定される。これらATC位置、ATC原点、ATC準備位置は、工具交換動作(以下「ATC動作」と呼ぶ)を行うときに、主軸7を移動して位置決めする基準点である。ATC位置は、マガジン31の工具受渡位置に割出されたグリップアーム38との間で工具を受け渡しする位置である。ATC原点は、ATC位置からZ軸+方向(後方)に移動した位置であり、ATC領域の後端の位置である。ATC原点は、グリップアーム38が把持する工具と主軸7が干渉せずにマガジン31が旋回可能な位置である。ATC準備位置は、ATC位置からY軸-方向(下方)に移動した位置であり、加工領域とATC領域の境界の位置である。ATC準備位置は、ATC位置とZ軸方向において同一座標の位置である。
【0032】
上記3つの基準点に基づき、ATC領域には、工具交換経路51,52が設定される。工具交換経路51,52は逆L字状の経路を形成する。工具交換経路51は、ATC準備位置からATC位置までY軸+方向に(上方)に延びる経路である。工具交換経路52は、ATC位置からATC原点までZ軸+方向(後方)に延びる経路である。工具交換経路51,52は、ATC動作時に主軸ヘッド6を移動させる経路である。本実施形態では原則、ATC領域において、主軸7は工具交換経路51,52上のみ移動でき、それ以外は移動できないように動作制限がかけられている。
【0033】
図7に示すように、ATC位置の周囲には、マガジン旋回領域が設定される。マガジン旋回領域は、マガジン31のグリップアーム38が旋回軸37Aを中心に旋回する領域である。なお、マガジン旋回領域は、グリップアーム38に把持される工具ホルダ90及び工具91を含めた領域であってもよい。Z軸方向において、マガジン旋回領域の後端の座標位置は、ATC位置とATC原点の間に位置する。Y軸方向において、マガジン旋回領域の下端の座標位置は、ATC位置とATC準備位置の間に位置する。主軸7の少なくとも一部がマガジン旋回領域内に位置する場合、主軸7はグリップアーム38、工具ホルダ90、及び工具91と干渉する可能性が高い。なお、本実施形態では、工具交換経路52上において主軸7のZ軸をATC原点まで後退させれば、主軸7はマガジン旋回領域から外れるようになっている。また、工具交換経路51上において主軸7のY軸をATC準備位置まで下降させれば、主軸7はマガジン旋回領域から外れるようになっている。
【0034】
図6を参照し、工作機械1のATC動作の一例を説明する。本実施形態はATC動作中における主軸7の位置を説明する為、主軸ヘッド6の移動を「主軸7の移動」と表現して説明する。また、以下説明において、X軸におけるATC位置をATC位置X軸、Y軸におけるATC位置をATC位置Y軸、Z軸におけるATC位置をATC位置Z軸と呼ぶ。
【0035】
ワーク加工中、主軸7は例えば加工領域内のP0に位置する。このとき、マガジンカバー10のシャッタ103は閉じた状態である(図2参照)。主軸7には、工具91を保持する工具ホルダ90が装着されている(図7参照)。主軸7内に設けられたクランプ機構(図示略)は、主軸7に装着された工具ホルダ90を固定する。
【0036】
工作機械1は、P0に位置する主軸7のZ軸をZ軸原点に向けて後退しつつ(図6中の矢印A1参照)、主軸7のオリエント動作を行う。なお、オリエント動作とは、主軸7の角度を基準位置(例えば0度)に戻す動作である。主軸7はP1に到達する。次いで、マガジンカバー100のシャッタ103を開き(図3参照)、P1に位置する主軸7のX軸をATC位置X軸まで移動しつつY軸をY軸原点(Y=0mm)まで移動する(図6中の矢印A2参照)。主軸7はP2に到達する。次いで、P2に位置する主軸7のZ軸をATC位置Z軸まで前進する(図6中の矢印A3参照)。主軸7はATC準備位置に到達する。
【0037】
次いで、主軸7をATC準備位置から工具交換経路51に沿って上昇させる(図6中の矢印A4参照)。このとき、マガジンカバー100の開口102を介して、工具受渡位置に割出されたグリップアーム38が下方に向けて露出する。主軸7の上昇により、主軸7に装着された工具ホルダ90は開口102を通過し、グリップアーム38に対して下方から押し込まれる。主軸7がATC位置に到達すると、主軸7に装着された工具ホルダ90がグリップアーム38に係合して把持される。これと同時に、主軸7内のクランプ機構は工具ホルダ90の固定を解除する。これで、工具ホルダ90は主軸7から取り外し可能となる。
【0038】
工作機械1は、グリップアーム38が主軸7に装着する工具ホルダ90を挟持した状態で、主軸7をATC位置から工具交換経路52に沿って後退させる(図6中の矢印A5参照)。主軸7がATC原点に到達すると、主軸7から工具ホルダ90が抜ける。次いで、ATC装置30はマガジン31を旋回し、次に装着する工具(以下「次工具」と呼ぶ)の工具ホルダを保持するグリップアーム38を工具受渡位置に割り出す(図6中の旋回する矢印A6参照)。これにより、次工具の工具ホルダはZ軸方向において主軸7の前方に配置される。
【0039】
次いで、工作機械1は、主軸7をATC原点から工具交換経路52に沿って前進させる(図6中の矢印A7参照)。これにより、次工具の工具ホルダが主軸7に挿入される。ATC位置に到達すると同時に、次工具の工具ホルダが主軸7に装着される。主軸7内のクランプ機構は主軸7に装着された工具ホルダを固定する。
【0040】
次いで、工作機械1は、次工具の工具ホルダが装着された主軸7をATC位置から工具交換経路51に沿って下降させ、ATC準備位置に位置決めする(図6中の矢印A8参照)。これで主軸7のATC動作が完了する。工作機械1はワーク加工を引き続き行う為、次工具の工具ホルダが装着された主軸7をATC準備位置から加工領域内の次の指令点に向けて移動させる。指令点とは、ATC動作完了後に主軸7を移動させる目標位置であり、例えばNCプログラムの制御コマンドで設定してもよい。
【0041】
なお、上記の例では、P0に位置する主軸7のZ軸をZ軸原点まで後退させたが、例えば主軸7に装着された工具91が回転テーブル9上のワーク及び治具に接触しないR点(復帰点)を設定し、そのR点まで後退させてもよい。この場合、R点はZ軸原点よりも前方に位置してもよい。
【0042】
図8を参照し、工作機械1の電気的構成について説明する。工作機械1は、数値制御装置40、主軸モータ61、X軸モータ62、Y軸モータ63、Z軸モータ64、マガジンモータ33、駆動回路71~75、エンコーダ61A,62A,63A,64A,33A、操作パネル25等を備える。
【0043】
数値制御装置40はCPU41、ROM42、RAM43、記憶装置44、通信I/F45、入出力インターフェイス46等を備える。CPU41は工作機械1の動作を統括制御する。ROM42は、NC制御プログラム、電源ON時プログラム、アラーム検出時プログラム、アプリ制御プログラム等の各種プログラム等を記憶する。NC制御プログラムは、後述のNC制御処理(図9参照)を実行するものである。電源ON時プログラムは、後述の電源ON時処理(図10参照)を実行するものである。アラーム検出時プログラムは、後述のアラーム検出時処理(図11参照)を実行するものである。アプリ制御プログラムは、後述のアプリ制御処理(図12参照)を実行するものである。なお、これらプログラムは、ROM42以外の他の記憶媒体に記憶してもよく、例えば記憶装置44に記憶してもよい。RAM43は各種処理実行中の各種データを記憶する。記憶装置44は不揮発性メモリであり、例えばワークを加工する為のNCプログラム、後述の停止フラグ等の各種データを記憶する。通信I/F45は、有線又は無線で端末(図示略)と接続可能である。入出力インターフェイス46は操作パネル25と駆動回路71~75と接続する。
【0044】
記憶装置44には、グリップアーム38の割出位置を示す番号(以下、割出番号)と、割出位置に対応する座標(以下、旋回位置座標と呼ぶ)が対応付けて記憶される。この割出位置及び旋回位置座標を参照することで、CPU41は任意の工具91を保持する工具ホルダ90を把持するグリップアーム38を割り出すことができる。
【0045】
主軸モータ61、X軸モータ62、Y軸モータ63、Z軸モータ64、マガジンモータ33はサーボモータである。駆動回路71はCPU41からの制御信号に基づき主軸モータ61を制御する。駆動回路72はCPU41からの制御信号に基づきX軸モータ62を制御する。駆動回路73はCPU41からの制御信号に基づきY軸モータ63を制御する。駆動回路74はCPU41からの制御信号に基づきZ軸モータ64を制御する。駆動回路75はCPU41からの制御信号に基づきマガジンモータ33を制御する。
【0046】
エンコーダ61Aは主軸モータ61の回転位置を検出し、該検出信号を駆動回路71に送信する。駆動回路71は検出信号に基づき主軸モータ61のフィードバック制御を行う。CPU41は駆動回路71からエンコーダ61Aの検出信号を受信し、受信した検出信号を主軸7の回転座標に変換することで、主軸の回転位置を検出する。エンコーダ62AはX軸モータ62の回転位置を検出し、該検出信号を駆動回路72に送信する。駆動回路72は検出信号に基づきX軸モータ62のフィードバック制御を行う。CPU41は駆動回路72からエンコーダ62Aの検出信号を受信し、受信した検出信号を主軸7のX軸の座標位置に変換することで、X軸の位置を検出する。エンコーダ63AはY軸モータ63の回転位置を検出し、該検出信号を駆動回路73に送信する。駆動回路73は検出信号に基づきY軸モータ63のフィードバック制御を行う。CPU41は駆動回路73からエンコーダ63Aの検出信号を受信し、受信した検出信号を主軸7のY軸の座標位置に変換することで、Y軸の位置を検出する。エンコーダ64AはZ軸モータ64の回転位置を検出し、該検出信号を駆動回路74に送信する。駆動回路74は検出信号に基づきZ軸モータ64のフィードバック制御を行う。CPU41は駆動回路74からエンコーダ64Aの検出信号を受信し、受信した検出信号を主軸7のZ軸の座標位置に変換することで、Z軸の位置を検出する。エンコーダ33Aはマガジンモータ33の回転位置を検出し、該検出信号を駆動回路75に送信する。駆動回路75は検出信号に基づきマガジンモータ33のフィードバック制御を行う。CPU41は駆動回路75から受信したエンコーダ33Aの検出信号をマガジン31の旋回位置座標に変換することで、マガジン31の旋回位置を検出する。操作パネル25は表示部26と操作部27を備える。表示部26はタッチパネルであり、CPU41からの制御信号に基づき各種情報を表示すると共に各種入力を受け付けてCPU41に送信する。操作部27は例えば物理的な押下キー(図示略)を複数備え、各種操作を受け付けてCPU41に送信する。
【0047】
図9を参照し、NC制御処理について説明する。ユーザが操作パネル25によりNCプログラムを選択すると、CPU41はROM42からNC制御プログラムを読み出して本処理を実行する。CPU41は選択されたNCプログラムを記憶装置44から読み出す(S1)。CPU41は操作部27にてユーザによるNCプログラム実行の操作を受け付け、読み出したNCプログラムを実行するか否か判断する(S2)。実行の操作を受け付けるまで(S2:NO)、CPU41はS2に戻って待機する。実行の操作を受け付けた場合(S2:YES)、CPU41は記憶装置44に記憶された停止フラグを0に初期化してオフし(S3)、NCプログラムを先頭から1ブロック解釈する(S4)。
【0048】
CPU41は解釈したブロックが終了コマンドか否か判断する(S5)。終了コマンドでない場合(S5:NO)、CPU41は解釈したブロックに基づき制御指令(内部指令)を生成する(S6)。CPU41は生成した制御指令が工具交換指令か否か判断する(S7)。生成した制御指令が位置決め等の制御指令であった場合(S7:NO)、CPU41は生成した制御指令を実行する(S8)。制御指令実行後、CPU41は次ブロックに移行し、S4に戻って上記処理を繰り返す。
【0049】
生成した制御指令が工具交換指令の場合(S7:YES)、CPU41は上記のATC動作を開始する(S9)。CPU41はATC動作中に電源がオフされたか否か判断する(S10)。ATC動作中に電源がオフされた場合(S10:YES)、CPU41は記憶装置44に記憶された停止フラグを1に設定してオンし(S12)、本処理を終了する。ATC動作中に電源がオフされない場合(S10:NO)、CPU41はATC動作が終了したか否か判断する(S11)。ATC動作が終了するまで(S11:NO)、CPU41はS10に戻って電源の監視を継続する。ATC動作が終了した場合(S11:YES)、CPU41は次ブロックに移行しS4に戻って上記処理を繰り返す。解釈したブロックが終了コマンドの場合(S5:YES)、CPU41は本処理を終了する。
【0050】
図10を参照し、電源ON時処理について説明する。ユーザが操作パネル25で電源をオンすると、CPU41はROM42から電源ON時プログラムを読み出して本処理を実行する。CPU41は前回の電源オン時においてATC動作中に電源がオフされたか否か判断する(S21)。CPU41は記憶装置44に記憶された停止フラグを参照する。停止フラグが0の場合、ATC動作中に電源はオフされていないので(S21:NO)、CPU41は手動運転モードに切り替え(S23)、操作パネル25の表示部26に手動条件画面(図示略)を表示する(S4)。手動条件画面では、主軸7の移動と回転を手動操作で行うときの各種条件を設定できる。例えば、高速移動速度、高速回転速度、定速移動速度、低速回転速度、ステップ移動量、ステップ回転量、主軸回転数等である。CPU41は本処理を終了する。
【0051】
停止フラグが1の場合、ATC動作中に電源がオフされている(S21:NO)。この場合、ATC動作中に各種サーボモータがオフされているので、主軸7がATC領域内で停止した状態である。サーボモータがオフされた状態で主軸7に外力がかかった場合、主軸7の位置が工具交換経路51,52からX軸方向、Y軸方向、又はZ軸方向にずれる可能性がある。また、マガジン31の旋回位置が周方向にずれる可能性もある。このような異常が発生した状態で主軸7を動かそうとすると、主軸7とグリップアーム38との位置関係がずれているので、例えば主軸7に装着された工具ホルダ90がグリップアーム38と係合せず、主軸7内のクランプ機構が工具ホルダ90の固定を解除してしまうことで、主軸7から工具ホルダ90と工具91が落下する可能性がある。
【0052】
そのような理由から、ユーザは手動操作で主軸7の位置を工具交換経路51,52に復旧させ、マガジン31の位置を正常な位置に戻す必要があるが、熟練した技術が無ければその復旧操作は難しい。本実施形態のCPU41は後述のATC復旧処理(図13図17参照)を実行することで(S22)、ユーザに対して復旧操作のガイダンス表示を行う。ATC復旧処理の完了後、CPU41は本処理を終了する。
【0053】
図11を参照し、アラーム検出時処理について説明する。工作機械1の起動中に、非常停止等のアラームが発生した場合、CPU41はROM42からアラーム検出時プログラムを読み出して本処理を実行する。CPU41はアラームを表示部26に表示し(S31)、ユーザにアラームが発生したことを報知する。CPU41はATC動作中に主軸7の移動が停止したか否か判断する(S32)。ATC動作中に主軸7の移動が停止していない場合(S32:NO)、CPU41は本処理を終了する。ATC動作中に主軸7の移動が停止した場合(S32:YES)、CPU41は後述のATC復旧処理を実行し(S33)、本処理を終了する。
【0054】
図12を参照し、アプリ制御処理について説明する。ユーザが操作パネル25の操作部27により復旧支援のアプリを選択すると、CPU41はROM42からアプリ制御プログラムを読み出して本処理を実行する。CPU41は表示部26にメニューを表示する(S35)。メニューには、例えば、同期タップ戻し、主軸慣らし運転、自動扉調整、位置復旧、原点位置調整、ATC復旧等の各種項目が含まれる。CPU41はメニューから項目の選択を受け付ける(S36)。CPU41はATC復旧の項目が選択されたか否か判断する(S37)。ATC復旧の項目が選択された場合(S37:YES)、CPU41は後述のATC復旧処理を実行し(S38)、本処理を終了する。ATC復旧以外の項目が選択された場合(S37:NO)、CPU41はその選択された項目を実行し(S39)、本処理を終了する。
【0055】
図13図17を参照し、ATC復旧処理について説明する。なお、本実施形態において、グリップアーム38は工具91を一体的に取り付けた工具ホルダ90を把持するが、説明の便宜上、「グリップアーム38が工具91を把持する」と表現する箇所がある。図13に示すように、CPU41は軸戻し画面81を表示部26に表示する(S40)。
【0056】
<STEP1>
図23に示すように、軸戻し画面81には、表示領域81A~81Dが設けられる。表示領域81Aには、STEP1の復旧手順が表示される。STEP1は軸戻しの工程である。軸戻しとは、ATC領域内に停止した主軸7を工具交換経路51,52上に戻す動作である。表示領域81Bには、機械座標位置、ATC位置、Y軸原点、ATC原点位置等の座標情報が表示される。機械座標位置は、主軸7の現在の位置情報である。表示領域81Cには、マガジン番号、マガジンシャッタ位置、マガジン旋回領域が表示される。マガジン番号の欄には、マガジン31の工具受渡位置に現在割出されているグリップアーム38に対応するマガジン番号が表示される。マガジンシャッタ位置の欄には、シャッタ103の開閉状態が表示される。マガジン旋回領域の欄には、主軸7の位置がマガジン旋回領域内にある場合はオフ、マガジン旋回領域外にある場合はオンが表示される。表示領域81Dには手動条件が表示される。手動条件とは、上記の手動条件画面に表示される手動条件の項目と同じである。
【0057】
表示領域81Aには、軸戻しに必要な4つの手順が表示される。先ず、手順1として、手動運転モードに切り替える。手順2として、復旧操作有効キー811を押して復旧操作を有効にする。復旧操作有効キー811は軸戻し画面81の右下に設けられる。手順3として、サーボモータがオフしている場合、操作部27の[解除]キーを押しながら[リセット]キーを押すことによりサーボモータがオンした際に軸戻しが実行される。このとき、アラームが解除される。手順4として、サーボモータがオンしている場合、操作部27の[解除]キーを押しながら[R]キーを押すことによって軸戻しが実行される。なお、手順3のステップで軸戻しを行った場合もこのステップを行う。ユーザは表示領域81Aに表示された復旧手順に沿って操作を行えばよい。
【0058】
図13に戻り、CPU41は軸戻しを実行するか否か判断する(S41)。手順3若しくは手順4の操作が行われるまでは軸戻しを実行しないので(S41:NO)、CPU41はS40に戻って待機する。手順3若しくは手順4の操作が行われた場合(S41:YES)、主軸7の軸戻し先を判定する為、軸戻し先判定処理を実行する(S42)。
【0059】
図17図22を参照し、軸戻し先判定処理について説明する。なお、図18図22では、後述の復旧領域W1~W6を見易くする為、ATC領域の範囲を示す枠線を省略している。図17に示すように、CPU41は主軸7の位置を検出する(S81)。主軸7の位置とは、例えば主軸7の先端の位置であって、X軸、Y軸、Z軸の座標位置である。検出した主軸7の位置はRAM43に一旦記憶する。CPU41は検出した主軸7のY軸がY軸原点よりも上か否か判断する(S82)。Y軸がY軸原点以下の場合(S82:NO)、主軸7は加工領域内にある。この場合、仮に主軸7の位置が指令位置からずれていたとしても、そのずれを補正する必要性が低いことから、CPU41は、主軸7のX軸,Y軸,Z軸の戻し先を現在の座標位置に設定する(S98)。なお、このS98の処理に代えて、例えばサーボオフする直前の主軸7の座標位置を記憶しておき、その座標位置に主軸7のX軸,Y軸,Z軸の戻し先を設定してもよい。サーボオフとは、主軸モータ61、X軸モータ62、Y軸モータ63、Z軸モータ64、マガジンモータ33等のサーボモータの動作がオフすることである。S98の座標位置の設定後、CPU41は本処理を終了し、図13のフローのS43に処理を進める。
【0060】
Y軸がY軸原点より上の場合(S82:YES)、主軸7はATC領域内にあるが、主軸7が工具交換経路51,52からずれている可能性がある。よって、主軸7の現在の位置について工具交換経路51,52から復旧距離以内にあるか否かをX軸、Y軸、Z軸の軸毎に判定する。
【0061】
CPU41は、主軸7のX軸がATC位置X軸±復旧距離内か否か判断する(S83)。図18に示すように、ATC領域には、復旧領域W1が設けられる。復旧領域W1は、ATC位置X軸±復旧距離の範囲で規定される空間である。復旧距離は、例えば主軸7をその距離だけ動かしても他の部材等に衝突する等して破損しない程度の微小の距離であり、例えば2mm程度である。例えば主軸7がK1点で停止している場合、K1点のX軸は復旧領域W1内に位置する(S83:YES)。この場合、CPU41は主軸7のX軸の戻し先をATC位置X軸に設定する(S84)。X軸の戻し先は、RAM43に一旦記憶するとよい。主軸7のX軸が復旧領域W1の外側に位置する場合(S83:NO)、CPU41はX軸の戻し先を現在の座標位置に設定する(S85)。
【0062】
次いで、CPU41は、主軸7のY軸がY軸原点+復旧距離よりも下か否か判断する(S86)。図19に示すように、ATC領域には、復旧領域W2が更に設けられる。復旧領域W2は、Y軸原点+復旧距離の範囲で規定される空間である。例えば主軸7がK2点で停止している場合、K2点のY軸は復旧領域W2内に位置する(S86:YES)。この場合、CPU41は主軸7のY軸の戻し先をY軸原点に設定する(S88)。
【0063】
他方、主軸7のY軸がY軸原点+復旧距離以上の場合(S86:NO)、CPU41は、主軸7のY軸がATC位置Y軸±復旧距離内か否か判断する(S87)。図20に示すように、ATC領域には、復旧領域W3が更に設けられる。復旧領域W3は、ATC位置Y軸±復旧距離の範囲で規定される空間である。例えば主軸7がK3点で停止している場合、K3点のY軸は復旧領域W3内に位置する(S87:YES)。この場合、CPU41は主軸7のY軸の戻し先をATC位置Y軸に設定する(S89)。Y軸の戻し先は、RAM43に一旦記憶するとよい。なお、主軸7のY軸が復旧領域W3の外側に位置する場合(S87:NO)、CPU41はY軸の戻し先を現在の座標位置に設定する(S90)。
【0064】
次いで、CPU41は、主軸7のZ軸が、ATC位置Z軸―復旧距離≦Z軸<ATC位置Z軸の範囲内か否か判断する(S91)。図21に示すように、ATC領域には、復旧領域W4が更に設けられる。復旧領域W4は、ATC位置Z軸―復旧距離≦Z軸<ATC位置Z軸の範囲で規定される空間である。例えば主軸7がK4点で停止している場合、K4点のZ軸は復旧領域W4内に位置する(S91:YES)。この場合、CPU41は主軸7のZ軸の戻し先をATC位置Z軸に設定する(S94)。他方、主軸7のZ軸が復旧領域W4の外側である場合(S91:NO)、CPU41は、主軸7のZ軸が、ATC位置Z軸<Z軸≦ATC位置Z軸+復旧距離の範囲内で且つマガジン31が正常に割出されているか否か判断する(S92)。
【0065】
ここで、S92のマガジン31が正常に割出されているかの判断について、CPU41はマガジン31に閾値以上の旋回ずれが生じているかで判断するとよい。旋回ずれとは、マガジン31の基準座標に対する旋回軸37Aを中心とする周方向のずれである。マガジン31の基準座標とは、グリップアーム38の割出位置に対応するマガジン31の旋回位置座標であり、記憶装置44に記憶されている。CPU41は駆動回路75から受信したエンコーダ33Aの検出信号をマガジン31の旋回位置座標に変換し、記憶装置44に記憶された基準座標と比較することで、マガジン31に閾値以上の旋回ずれが生じているか否か判断できる。CPU41は、旋回ずれが閾値未満であればマガジン31は正常に割出された状態と判断でき、旋回ずれが閾値以上であればマガジン31は正常に割りされていない状態と判断できる。
【0066】
図21に示すように、ATC領域には、復旧領域W5が更に設けられる。復旧領域W5は、ATC位置Z軸<Z軸≦ATC位置Z軸+復旧距離の範囲で規定される空間である。例えば主軸7がK5点で停止している場合、K5点のZ軸は復旧領域W5内に位置する。これに加えて、マガジン31が正常に割出されている場合(S92:YES)、CPU41は主軸7のZ軸の戻し先をATC位置Z軸に設定する(S94)。
【0067】
また、主軸7のZ軸の位置が復旧領域W5の外側である場合(S92:NO)、CPU41は、主軸7のZ軸が、ATC原点<Z軸≦ATC原点+復旧距離の範囲内か否か判断する(S93)。また、Z軸の位置が復旧領域W5内であってもマガジン31が正常に割出された状態でない場合(S92:NO)、グリップアーム38の位置がY軸方向においてずれている。この状態で、主軸7のZ軸をATC位置Z軸に動かした際、主軸7がグリップアーム38が把持する工具ホルダ90と干渉する可能性がある。よって、CPU41はこの場合もZ軸の戻し先をATC位置Z軸に設定せずに、主軸7のZ軸が、ATC原点<Z軸≦ATC原点+復旧距離の範囲内か否か判断する(S93)。
【0068】
図22に示すように、ATC領域には、復旧領域W6が更に設けられる。復旧領域W6は、ATC原点<Z軸≦ATC原点+復旧距離の範囲で規定される空間である。例えば主軸7がK6点で停止している場合、K6点のZ軸は復旧領域W6内に位置する(S93:YES)。この場合、CPU41は主軸7のZ軸の戻し先をATC原点に設定する(S96)。Z軸の戻し先は、RAM43に一旦記憶するとよい。Z軸の戻し先を設定した場合(S94、S95、S96)、CPU41は本処理を終了し、図13のフローのS43に処理を進める。なお、主軸7のZ軸が復旧領域W6の外側である場合(S93:NO)、復旧領域W4~6の何れの範囲内にも無いので、CPU41はZ軸の戻し先を現在の座標位置に設定して(S97)本処理を終了し、図13のフローのS43に処理を進める。
【0069】
図13のフローに戻り、CPU41はS42の軸戻し先判定処理を終了したので、上記の軸戻し先判定処理で設定したX軸、Y軸、Z軸の夫々の戻し先に従い、主軸7の軸戻しを実行する(S43)。なお、X軸、Y軸、Z軸の軸戻しについて、1軸ずつ順番に実施してもよいし、2軸又は3軸同時に実施してもよい。実施する順番についても規定しない。また、図17の軸戻し先判定処理のS85、S90、S97の各処理で移動軸の戻し先を現在の座標位置に設定した場合、図13のS43の軸戻しの処理では、CPU41は現在の座標位置に戻し先を設定した移動軸において主軸7を移動しない。つまり、CPU41は、主軸7の移動を制限する。
【0070】
CPU41は軸戻しが完了したか否か判断する(S44)。軸戻しが完了するまでは(S44:NO)、CPU41はS43に戻って引き続き実行する。軸戻しが完了した場合(S44:YES)、CPU41は、主軸7のY軸がY軸原点以下か否か判断する(S45)。主軸7のY軸がY軸原点以下の場合(S45:YES)、主軸7は既に加工領域に位置するので、CPU41は主軸7の位置を変更せずに、処理を後述のS54に進める。Y軸がY軸原点より上の場合(S45:NO)、主軸7はATC領域内の工具交換経路51,52上に位置する。よって、CPU41は、工具交換経路51,52上の主軸7の位置に応じて主軸7を加工領域に向けて安全に移動させる必要がある。
【0071】
そこで、CPU41は、主軸7の位置について、Z=ATC位置Z軸で且つY<ATC位置Y軸且つX=ATC位置X軸の条件を満たすか否か判断する(S46)。例えば図24(1)に示すように、主軸7はM1点に位置する。M1点は工具交換経路51上であるので、主軸7は工具交換経路51において上昇又は下降途中で停止したことが推測される。M1点は、Z=ATC位置Z軸で且つY<ATC位置Y軸且つX=ATC位置X軸の条件を満たすので(S46:YES)、CPU41はマガジン31の位置が正常か否か判断する(S47)。なお、マガジン31の位置が正常か否かの判断方法は、図17のS92の判断処理において、マガジン31が正常に割出されているか否かの判断方法と同じである。
【0072】
例えば図24(2)に示すように、マガジン31の位置が正常の場合、工具受渡位置に割出されたグリップアーム38はY軸方向に平行な向きで配置される。主軸7に装着された工具ホルダ90及び工具91はZ軸方向に延びる。この状態では、工具ホルダ90に対してグリップアーム38が直交する位置関係に配置される。この場合、マガジン31の位置は正常なので(S47:YES)、CPU41は主軸7の復旧手順を後述のSTEP2―aの動作パターンに決定し、その動作パターンに対応するY軸復旧画面82を表示部26に表示する(S48)。
【0073】
<STEP2-a>
図25に示すように、Y軸復旧画面82には、表示領域82A~82Dが設けられる。表示領域82Aには、STEP2―aの復旧手順が表示される。STEP2―aは、工具交換経路51上の主軸7を工具交換経路51に沿って加工領域まで下降させる動作パターンである。なお、表示領域82B~82Dは、図23に示す軸戻し画面81の表示領域81B~81Dと同じなので説明を省略する。
【0074】
表示領域81Aには、Y軸の位置が異常であること、また(通告)として、操作中にアラームが発生した場合は、操作部27の[解除]キーを押しながら[リセット]キーを押し、アラームを解除してから手順を進めることについて注意喚起される。そして、その下側に、STEP2―aに必要な4つの手順がガイダンス表示される。先ず、手順1として、工作機械1のカバーの扉を閉める。手順2として、シャッタ103が閉じていれば操作部27の[解除]キーを押しながら[P]キーを押してシャッタ103を開ける。保守モードの場合はシャッタ103が自動で開かないので、手でシャッタ103を開くか、保守モード以外のモード(例えば自動運転モード又は段取りモード)に変更してからシャッタ103を開ける。手順3として、操作部27の[解除]キーを押しながら[-Y]キーを押して、Y軸をY軸原点より下に移動させる。手順4として、手順1~3の復旧操作が完了したら次へキー821を押す。次へキー821は、Y軸復旧画面82の右下に表示される。
【0075】
図13に戻り、CPU41はユーザによる手順1~3の操作に従い、Y軸復旧処理を実行する(S49)。Y軸復旧処理により、主軸7はY軸原点より下に移動する。これにより、CPU41は、ATC領域内で停止した主軸7を工具交換経路51に沿って加工領域まで安全且つ適切に復旧させることができる。CPU41は復旧操作が完了したか否か判断する(S50)。ユーザが次へキー821を押すまでは復旧操作が完了していないので(S50:NO)、CPU41はS50に戻って待機する。次へキー821が押された場合、復旧操作が完了したので(S50:YES)、CPU41は後述の割出工具確認画面88(図40参照)を表示部26に表示する(S54)。
【0076】
また、主軸7の位置について、Z=ATC位置Z軸で且つY<ATC位置Y軸且つX=ATC位置X軸の条件を満たしていても(S46:YES)、マガジン31の位置が正常でない場合(S47:NO)、旋回ずれが生じている。例えば図26(1)に示すように、主軸7が工具交換経路51上のM2点に位置する場合、主軸7はATC位置よりも下側にある。しかしながら、図26(2)に示すように、マガジン31の位置がずれていると、工具受渡位置に割出されたグリップアーム38はY軸に対して周方向にずれてしまう。この状態で、仮にグリップアーム38を正常な位置に戻してしまうと、グリップアーム38が主軸7に装着された工具ホルダ90にと干渉する可能性がある。このような場合、グリップアーム38に対して、主軸7をY軸方向においてマガジン31から離れる方向に移動してから、マガジン31を正常な位置に戻すのがよい。そこで、CPU41は、主軸7の復旧手順を後述のSTEP2―bの動作パターンに決定し、その動作パターンに対応するYM軸復旧画面83を表示部26に表示し(S51)、YM軸復旧処理を実行する(S52)。
【0077】
<STEP2-b>
図27に示すように、YM軸復旧画面83には、表示領域83A~83Dが設けられる。表示領域83Aには、Y軸とマガジン31の位置が異常であること、下記の手順で復旧すること、また(通告)として、操作中にアラームが発生した場合は、操作部27の[解除]キーを押しながら[リセット]キーを押し、アラームを解除してから手順を進めることについて注意喚起される。そして、その下側に、STEP2―bの復旧手順がガイダンス表示される。STEP2―bは、工具交換経路51上に位置する主軸7を工具交換経路51に沿って加工領域まで下降させた後、マガジン31の位置を正常に戻す動作パターンである。なお、表示領域83B~83Dは、図23に示す軸戻し画面81の表示領域81B~81Dと同じなので説明を省略する。STEP2―bでは、マガジン31の位置がずれているので、表示領域83Cにはマガジン番号が表示されていない。
【0078】
図15を参照し、YM軸復旧処理について説明する。図27に示すように、CPU41は表示領域83Aに、5つの手順のうち手順1~3を表示する(S101)。手順1~3は、図25に示すY軸復旧画面82の表示領域82Aに表示されたSTEP2―aの手順1~3と同じ内容である。ユーザは手順1~3に従って操作する。手順3において、ユーザは主軸7のY軸をY軸原点に向けて下降させる。CPU41は主軸7のY軸の位置を検出する(S102)。CPU41は検出したY軸がY軸原点以下か否か判断する(S103)。Y軸がY軸原点以下になるまでCPU41はS102に戻って待機する。Y軸がY軸原点以下になった場合(S103:YES)、主軸7はマガジン旋回領域から外れている。よって、この状態で、マガジン31を旋回してもグリップアーム38が主軸7と干渉しない。
【0079】
そこで、CPU41はマガジン31に生じている旋回ずれが閾値未満か否か判断する(S104)。旋回ずれが閾値未満の場合(S104:YES)、図27に示すように、表示領域83Aに手順4を更に表示する(S105)。手順4として、操作部27の[解除]キーを押しながら[マガジン正転]キーを押すことで、マガジン31が自動で正しい位置に戻る。CPU41は手順4の操作がなされたか否か判断する(S106)。手順4の操作がなされるまでは(S106:NO)、CPU41はS106に戻って待機する。手順4の操作がなされた場合(S106:YES)、CPU41はマガジン31の自動補正指令を生成して駆動回路75に出力することにより、マガジン31の自動旋回補正を行う(S107)。自動旋回補正とは、マガジン31を旋回して基準位置に戻す補正である。これにより、マガジン31の旋回ずれが自動的に解消される。CPU41は表示領域83Aに手順5を更に表示する(S112)。
【0080】
他方、旋回ずれが閾値以上の場合(S104:NO)、ずれ量が大きいので補正が必要であるアラームを報知し(S108)、図28に示すように、表示領域83Aに手順4を更に表示する(S109)。この場合の手順4は、図27の手順4とは異なり、操作部27の[解除]キーを押しながら[マガジン正転]キー若しくは[マガジン逆転]キーを押すことによって、工具が取り付けられていないグリップアーム38を正しい位置に手動で移動させる。ユーザは手順4に従って操作し、旋回ずれが解消するように、マガジン31を基準位置に向けて旋回させる。
【0081】
CPU41はマガジン31の位置を検出し(S110)、マガジン31の位置が基準位置になったか否か判断する(S111)。マガジン31の位置が基準位置になるまで(S111:NO)、CPU41はS110に戻って待機する。マガジン31の位置が基準位置に戻った場合(S111:YES)、工具が取り付けられていないグリップアーム38は工具受渡位置に割出されたので、CPU41は表示領域83Aに手順5を更に表示する(S112)。手順5は、次へキー831を押す操作である。次へキー831は、YM軸復旧画面83の右下に表示される。CPU41は本処理を終了し、図13のS53に戻って処理を進める。
【0082】
図13に示すように、CPU41は復旧操作が完了したか否か判断する(S53)。ユーザが次へキー831を押すまでは復旧操作が完了していないので(S53:NO)、CPU41はS53に戻って待機する。次へキー831が押された場合、復旧操作が完了したので(S53:YES)、CPU41は後述の割出工具確認画面88(図40参照)を表示部26に表示する(S54)。
【0083】
また、S46の判断処理において、主軸7の位置について、Z=ATC位置Z軸で且つY<ATC位置Y軸且つX=ATC位置X軸の条件を満たさない場合(S46:NO)、図14に示すように、CPU41は、主軸7の位置について、ATC位置Z軸≦Z≦ATC原点Z軸且つY=ATC位置Y軸且つX=ATC位置X軸の条件を満たすか否か判断するS(S61)。ATC位置Z軸≦Z≦ATC原点且つY=ATC位置Y軸且つX=ATC位置X軸の条件を満たす場合(S61:YES)、例えば図29(1)に示すように、主軸7はM3点に位置する。M3点は工具交換経路52上であることから、主軸7は工具交換経路52上を前進又は後退の途中で停止したと推測される。
【0084】
次いで、CPU41はマガジン31の位置が正常か否か判断する(S62)。例えば図29(2)に示すように、マガジン31の位置が正常の場合、工具受渡位置に割出されたグリップアーム38は工具ホルダ90を把持した状態で、Y軸方向に平行な向きで配置されるので、工具ホルダ90及び工具91はZ軸方向に平行に配置される。よって、主軸7に対して工具ホルダ90はZ軸方向において同軸上に配置される。このように、マガジン31の位置が正常の場合(S62:YES)、CPU41は主軸7の復旧手順を後述のSTEP2―cの動作パターンに決定し、その動作パターンに対応するYZ軸復旧画面84を表示部26に表示する(S63)。
【0085】
<STEP2-c>
図30に示すように、YZ軸復旧画面84には、表示領域84A~84Dが設けられる。STEP2―cは、工具交換経路52上に位置する主軸7を工具交換経路52に沿ってATC原点に一旦後退させてからATC位置に前進させ、そのATC位置からATC準備位置まで移動させた後、Z軸をATC原点に復帰させる動作パターンである。なお、表示領域84B~84Dは、図23に示す軸戻し画面81の表示領域81B~81Dと同じなので説明を省略する。
【0086】
表示領域84Aには、Y軸とZ軸の位置が異常であること、下記の手順で復旧すること、また(通告)として、操作中にアラームが発生した場合は、操作部27の[解除]キーを押しながら[リセット]キーを押し、アラームを解除してから手順を続けることについて注意喚起される。そして、その下側に、STEP2―cに必要な5つの手順がガイダンス表示される。手順1、2は、図25に示すY軸復旧画面82の表示領域82Aに表示されたSTEP2―aの手順1、2と同じ内容である。手順3として、操作部27の[解除]キーを押しながら[+Z]キーを押して、主軸7のZ軸をATC原点に合わせる。手順4として、操作部27の[工具交換単動]キーを押す。[工具交換単動]キーを押すことで、主軸7のZ軸がATC位置に移動し、Y軸がY軸原点に移動した後、Z軸が機械原点に復帰する。手順1~4の復旧操作が完了したら、手順5として、次へキー841を押す。次へキー841は、YZ軸復旧画面84の右下に表示される。ユーザはこれら5つの手順に沿って操作する。
【0087】
図14に戻り、CPU41はユーザによる手順1~4の操作に従い、YZ軸復旧処理を実行する(S64)。Z軸復旧処理により、主軸7のY軸がY軸原点に移動した後、Z軸が機械原点に復帰する。これにより、CPU41は、ATC領域内で停止した主軸7を工具交換経路52、51に沿って加工領域まで安全且つ適切に復旧させることができる。CPU41は復旧操作が完了したか否か判断する(S65)。ユーザが次へキー841を押すまでは復旧操作が完了していないので(S65:NO)、CPU41はS65に戻って待機する。次へキー841が押された場合、復旧操作が完了したので(S65:YES)、図13に戻り、CPU41は後述の割出工具確認画面88(図40参照)を表示部26に表示する(S54)。
【0088】
また、S61の判断処理において、主軸7の位置が、ATC位置Z軸≦Z≦ATC原点且つY=ATC位置Y軸且つX=ATC位置X軸の条件を満たしていても(S61:YES)、マガジン31の位置が正常でなく(S62:NO)、旋回ずれが生じている場合がある。例えば図31(1)に示すように、主軸7が工具交換経路52上のM4点に位置していても、図31(2)に示すように、マガジン31に旋回ずれが生じていると、主軸7に対して、グリップアーム38に把持された工具ホルダ90及び工具91の位置がY軸+方向にずれ、さらにはX軸+方向又は―方向にもずれる場合がある。この状態で仮にSTEP2-cと同様に、主軸7を工具交換経路52に沿ってATC原点に一旦後退させてからATC位置に向けて前進させた場合、主軸7の先端に対して、グリップアーム38に把持された工具ホルダ90が干渉する可能性がある。
【0089】
そこで、図14に示すように、CPU41は主軸7のZ軸がATC原点で無いか否か判断する(S66)。例えば図31(1)に示すように、主軸7が工具交換経路52上のM4点に位置する場合、Z軸はATC原点で無いので(S66:YES)、CPU41は主軸7の復旧手順を後述のSTEP2―dの動作パターンに決定し、その動作パターンに対応するYZM軸復旧画面85を表示部26に表示し(S67)、YZM軸復旧処理を実行する(S68)。
【0090】
<STEP2-d>
図32に示すように、YZM軸復旧画面85には、表示領域85A~85Dが設けられる。表示領域85Aには、Y軸とZ軸とマガジンの位置が異常であること、下記の手順で復旧すること、また(通告)として、操作中にアラームが発生した場合は、操作部27の[解除]キーを押しながら[リセット]キーを押し、アラームを解除してから手順を続けることについて注意喚起される。そして、その下側に、STEP2―dの復旧手順が表示される。STEP2―dは、工具交換経路52上に位置する主軸7を工具交換経路52に沿ってATC原点に一旦後退させた後、マガジン31の位置を正常に戻してからZ軸をATC位置に前進させ、そのATC位置からATC準備位置まで移動させた後、Z軸をATC原点に復帰させる動作パターンである。なお、表示領域85B~85Dは、図23に示す軸戻し画面81の表示領域81B~81Dと同じなので説明を省略する。なお、STEP2―dでは、マガジン31の位置がずれているので、表示領域85Cにはマガジン番号が表示されていない。また、主軸7のM4点はマガジン旋回領域内にあるので、表示領域81Cのマガジン旋回領域の欄にはオフと表示されている。
【0091】
図16を参照し、YZM軸復旧処理について説明する。CPU41は表示領域85Aに、6つの手順のうち手順1~3を表示する(S121)。手順1~3は、図30に示すYZ軸復旧画面84の表示領域84Aに表示されたSTEP2―cの手順1~3と同じ内容である。ユーザは手順1~3に従って操作する。手順3は、主軸7のZ軸をATC原点に向けて移動させる操作である。CPU41は主軸7のZ軸を検出する(S122)。CPU41は検出したZ軸がATC原点か否か判断する(S123)。Z軸がATC原点になるまで(S123:NO)、CPU41はS122に戻ってZ軸を監視する。Z軸がATC原点に到達した場合(S123:YES)、主軸7はマガジン旋回領域よりも後方に退避したので、この状態で、マガジン31を旋回してもグリップアーム38は主軸7と干渉しない。
【0092】
次いで、CPU41はマガジン31に生じている旋回ずれが閾値未満か否か判断する(S124)。旋回ずれが閾値未満の場合(S124:YES)、図32に示すように、表示領域83Aに手順4を更に表示する(S125)。手順4として、操作部27の[解除]キーを押しながら[マガジン正転]キーを押すことで、マガジン31が自動で正しい位置に戻る。CPU41は手順4の操作がなされたか否か判断する(S126)。手順4の操作がなされるまでは(S126:NO)、CPU41はS126に戻って待機する。手順4の操作がなされた場合(S126:YES)、CPU41はマガジン31の自動補正指令を生成して駆動回路75に出力することにより、マガジン31の自動旋回補正を行う(S127)。これにより、マガジン31の旋回ずれが自動的に解消される。なお、旋回ずれが閾値未満の場合(S124:YES)、CPU41は例えばS125,S126の各処理を実行せずに、そのままマガジン31の自動旋回補正を行ってもよい。CPU41は表示領域85Aに手順5を更に表示する(S132)。
【0093】
他方、旋回ずれが閾値以上の場合(S124:NO)、ずれ量が大きいので補正が必要であるアラームを報知し(S128)、図33に示すように、表示領域85Aに手順4を更に表示する(S129)。この場合の手順4は、図32の手順4とは異なり、操作部27の[解除]キーを押しながら[マガジン正転]キー若しくは[マガジン逆転]キーを押すことによって、工具が取り付けられていないグリップアーム38を正しい位置に手動で移動させる。ユーザは手順4に従って操作し、旋回ずれが解消するように、マガジン31を基準位置に向けて旋回させる。
【0094】
CPU41はマガジン31の位置を検出し(S130)、マガジン31の位置が基準位置になったか否か判断する(S131)。マガジン31の位置が基準位置になるまで(S131:NO)、CPU41はS130に戻って待機する。図34(2)に示すように、マガジン31の位置が基準位置に戻った場合(S131:YES)、工具が取り付けられていないグリップアーム38は工具受渡位置に割出されたので、CPU41は表示領域85Aに手順5を更に表示する(S132)。
【0095】
手順5は、操作部27の[工具交換単動]キーを押す操作である。[工具交換単動]キーを押すことで、図34(1)に示すように、主軸7のZ軸がATC原点からATC位置に移動し、Y軸がY軸原点に移動した後、Z軸が機械原点に復帰する。CPU41は主軸7の位置を検出する(S133)。CPU41は検出した主軸7の位置が加工領域か否か判断する(S134)。主軸7が加工領域に到達するまで(S134:NO)、CPU41はS133に戻って主軸7の位置を監視する。
【0096】
工具交換単動が完了すると主軸7は加工領域に位置するので(S134:YES)、CPU41は表示領域85Aに手順6を更に表示する(S135)。手順6は、次へキー851を押す操作である。次へキー851は、YZM軸復旧画面85の右下に表示される。これにより、CPU41は、ATC領域内で停止した主軸7を工具交換経路52,51に沿って加工領域まで安全且つ適切に復旧させることができる。CPU41はYZM軸復旧処理を終了し、図14のS69に処理を進める。
【0097】
図14に示すように、CPU41は復旧操作が完了したか否か判断する(S69)。ユーザが次へキー851を押すまでは復旧操作が完了していないので(S69:NO)、CPU41はS69に戻って待機する。次へキー851が押された場合、復旧操作が完了したので(S69:YES)、図13に戻り、CPU41は後述の割出工具確認画面88を表示部26に表示する(S54)。
【0098】
また、図14に示すように、マガジン31の位置が正常でない状態で(S62:NO)、主軸7のZ軸が工具交換経路52上のATC原点に位置する場合がある(S66:NO)。例えば図35(1)に示すように、主軸7は工具交換経路52上のATC原点であるM6点に位置する。この状態で、図35(2)に示すように、マガジン31の位置がずれていることから、主軸7に対して、グリップアーム38に把持された工具ホルダ90の位置がY軸+方向にずれ、さらにはX軸+方向又は―方向にもずれている。この場合(S62:NO、S66:NO)、CPU41は主軸7の復旧手順を後述のSTEP2―eの動作パターンに決定し、その動作パターンに対応するYZM軸復旧画面86を表示部26に表示する(S70)。
【0099】
<STEP2-e>
図36に示すように、YZM軸復旧画面86には、表示領域86A~86Dが設けられる。表示領域86Aには、マガジンの位置が異常であること、下記の手順で復旧すること、また(通告)として、操作中にアラームが発生した場合は、操作部27の[解除]キーを押しながら[リセット]キーを押し、アラームを解除してから手順を続けることについて注意喚起される。そして、その下側に、STEP2―eの復旧手順が表示される。STEP2―eは、主軸7がATC原点に位置する状態で、マガジン31の位置を正常に戻してからZ軸をATC位置に前進させ、そのATC位置からATC準備位置まで移動させた後、Z軸をATC原点に復帰させる動作パターンである。なお、表示領域86B~86Dは、図23に示す軸戻し画面81の表示領域81B~81Dと同じなので説明を省略する。なお、STEP2―eでは、マガジン31の位置がずれているので、表示領域86Cにはマガジン番号が表示されていない。また、主軸7のM6点はマガジン旋回領域外にあるので、表示領域81Cのマガジン旋回領域の欄にはオンと表示されている。
【0100】
表示領域86Aには、STEP2―eに必要な5つの手順が表示される。手順1、2は、図32に示すYZM軸復旧画面85の表示領域85Aに表示されたSTEP2―dの手順1、2と同じ内容である。なお、詳述しないが、STEP2―eにおいても、STEP2―cと同様に、マガジン31に生じている旋回ずれが閾値未満の場合、図36に示すように、表示領域83Aに表示される手順3は、操作部27の[解除]キーを押しながら[マガジン正転]キーを押すことで、マガジン31の自動旋回補正を実行する内容となる。他方、マガジン31に生じている旋回ずれが閾値以上の場合、図37に示すように、表示領域83Aに表示される手順3は、操作部27の[解除]キーを押しながら[マガジン正転]キー若しくは[マガジン逆転]キーを押すことによって、工具が取り付けられていないグリップアーム38を正しい位置に手動で移動させる内容となる。
【0101】
何れの手順3を行うことにより、主軸7に対して、グリップアーム38に把持された工具ホルダ90の位置がZ軸方向において対向する。図36又は図37に示すように、手順4は、操作部27の[工具交換単動]キーを押す操作である。[工具交換単動]キーを押すことで、図35(1)に示すように、主軸7のZ軸がATC原点からATC位置に移動し、Y軸がY軸原点に移動した後、Z軸が機械原点に復帰する。手順1~4の復旧操作が完了したら、手順5として、次へキー861を押す。次へキー861は、YZM軸復旧画面86の右下に表示される。
【0102】
図14に戻り、CPU41はユーザによる手順1~4の操作に従い、YZM軸復旧処理を実行する(S71)。YZM軸復旧処理により、主軸7のZ軸がATC原点からATC位置に移動し、Y軸がY軸原点に移動した後、Z軸が機械原点に復帰する。これにより、CPU41は、ATC領域内で停止した主軸7を工具交換経路52、51に沿って加工領域まで安全且つ適切に復旧させることができる。CPU41は復旧操作が完了したか否か判断する(S72)。ユーザが次へキー861を押すまでは復旧操作が完了していないので(S72:NO)、CPU41はS72に戻って待機する。次へキー861が押された場合、復旧操作が完了したので(S72:YES)、図13に戻り、CPU41は後述の割出工具確認画面88を表示部26に表示する(S54)。
【0103】
また、S61の判断処理において、主軸7の位置が、ATC位置Z軸≦Z≦ATC原点且つY=ATC位置Y軸且つX=ATC位置X軸の条件を満たさない場合がある(S61:NO)。例えば図38に示すように、主軸7がM7点に位置する場合を想定する。M7点はATC領域内であるが、工具交換経路51,52上には位置していない。つまり主軸7は、軸戻しで工具交換経路51,52上に復帰できず、加工領域に向けて復旧するのは困難な状況であり、ユーザによる復旧操作は不可能である。この場合、CPU41は復旧不可画面87を表示部26に表示する(S73)。
【0104】
<STEP2-f>
図39に示すように、復旧不可画面87には、表示領域87A~87Dが設けられる。表示領域87Aには、STEP2―fの復旧手順が表示される。STEP2―fは、主軸7の移動を制限し、復旧操作を終了させる工程である。なお、表示領域87B~87Dは、図23に示す軸戻し画面81の表示領域81B~81Dと同じなので説明を省略する。次へキー871、及び復旧操作有効キー872は、復旧不可画面87の右下に表示される。終了キー873は、復旧不可画面87の左下に表示される。
【0105】
表示領域87Aには、ATC復旧ができないこと、ATCメンテナンスモードで復旧すること、ATCメンテナンスモードではメンテナンス教育を受けた熟練者のみが操作有効であること、について注意喚起される。なお、ATCメンテナンスモードでは、ATC領域における主軸7の動作制限が解除されるので、熟練者の操作による復旧作業が可能となる。注意喚起の下には、復旧操作を終了させる為に必要な3つの手順が表示される。手順1として、復旧操作有効キー872を押して、復旧操作を無効にする。手順2として操作部27の[リセット]キーを押す。手順3として、終了キー873を押す。
【0106】
図14に戻り、CPU41はユーザによる手順1~3の操作に従い、復旧無効処理を実行する(S74)。復旧無効処理により、復旧操作が無効となる。CPU41は復旧無効処理が終了したか否か判断する(S75)。ユーザが終了キー873を押すまでは復旧無効処理が完了していないので(S75:NO)、CPU41はS75に戻って待機する。終了キー873が押された場合、復旧無効処理が終了したので(S75:YES)、CPU41はATC復旧処理を終了する。
【0107】
また、主軸7の復旧操作が完了した場合(図13のS50:YES,S53:YES,図14のS65:YES,S69:YES,S72:YES)、主軸7は加工領域に位置する。この状態で、マガジン31の工具受渡位置に割出したグリップアーム38に工具が取り付けられていると、次回ATC動作を実施した場合、主軸7が工具ホルダ90及び工具91に衝突する可能性があるので、グリップアームから工具を取り外す必要がある。そこで、図13に示すように、CPU41は割出工具確認画面88を表示部26に表示する(S54)。
【0108】
<STEP3>
図40に示すように、割出工具確認画面88には、表示領域88A~88Dが設けられる。表示領域88Aには、STEP3の復旧手順が表示される。STEP3は、工具受渡位置に割出したグリップアーム38から工具が取り外されているか確認する工程である。なお、表示領域87B~87Dは、図23に示す軸戻し画面81の表示領域81B~81Dと同じなので説明を省略する。次へキー881は、割出工具確認画面88の右下に表示される。
【0109】
表示領域88Aには、STEP3に必要な2つの手順が表示される。手順1として、マガジン番号のグリップアーム38に工具が取り付けられている場合は工具を取り外す。
さらに(通告)として、工具が取り付けられている状態で次回ATC動作を実施した場合、機械や工具が破損することについて注意喚起される。手順2として、グリップアーム38に工具が取り付けられていないことを確認したら次へキー881を押す。
【0110】
図13に戻り、CPU41はユーザによる確認が完了したか否か判断する(S55)。ユーザが次へキー881を押すまでは確認が完了していないので(S55:NO)、CPU41はS54に戻って待機する。次へキー881が押された場合、ユーザによる確認が完了したので(S55:YES)、CPU41は終了画面89を表示部26に表示する(S56)
【0111】
<STEP4>
図41に示すように、終了画面89には、表示領域89A~89Dが設けられる。STEP4の復旧手順が表示される。STEP4は、ATC復旧処理を終了させる工程である。なお、表示領域89B~89Dは、図23に示す軸戻し画面81の表示領域81B~81Dと同じなので説明を省略する。次へキー891と復旧操作有効キー892は、終了画面89の右下に表示される。終了キー893は、終了画面89の左下に表示される。
【0112】
表示領域89Aには、ATC復旧が完了したこと、さらに(通告)として、ATC工具画面(図示略)の工具割り当てとマガジン31に取り付けている工具の関係がずれている可能性があるので、ATC工具画面の工具割り当てを確認するようにガイダンスでユーザに注意喚起される。ATC工具画面は、操作パネル25の操作で表示部26に表示される。ATC工具画面には、マガジン31の各グリップアームに割り当てられた工具の種類を示す表である工具割り当てが表示される。さらにその下に、ATC復旧処理を終了させるために必要な3つの手順が表示される。手順1として、復旧操作有効キー892を押して、復旧操作を有効にする。手順2として、操作部27の[リセット]キーを押す。手順3として、手順1と2の操作を確認したら終了キー893を押す。
【0113】
図13に戻り、CPU41はユーザによる確認が完了したか否か判断する(S57)。ユーザが終了キー893を押すまでは確認が完了していないので(S57:NO)、CPU41はS56に戻って待機する。終了キー893が押された場合、ユーザによる確認が完了したので(S57:YES)、CPU41はATC復旧処理を終了する。
【0114】
上記説明において、グリップアーム38は本発明の「把持部」の一例である。マガジンモータ33は本発明の「旋回駆動部」の一例である。記憶装置44は本発明の「記憶部」の一例である。図13のS47の処理を実行するCPU41は本発明の「座標検出部」とずれ判定部」の一例である。図15のS102の処理を実行するCPU41は本発明の「位置検出部」の一例である。S103の処理を実行するCPU41は本発明の「判断部」の一例である。S101、S104、S105、S107、S109の処理を実行するCPU41は本発明の「補正要求部」の一例である。また、図14のS62の処理を実行するCPU41は本発明の「座標検出部」とずれ判定部」の一例である。図15のS122の処理を実行するCPU41は本発明の「位置検出部」の一例である。S123の処理を実行するCPU41は本発明の「判断部」の一例である。S121、S124、S125、S127、S129の処理を実行するCPU41は本発明の「補正要求部」の一例である。CPU41は本発明の「制御部」の一例である。記憶装置44は本発明の「記憶部」の一例である。
【0115】
以上説明したように、本実施形態の数値制御装置40は工作機械1の動作を制御する。工作機械1は旋回軸37Aを中心に旋回可能なマガジン31を備える。マガジン31の外周部には複数のグリップアーム38が周方向に沿って設けられる。グリップアーム38は工作機械1の主軸7に装着させる工具91を把持可能である。数値制御装置40のCPU41はマガジン31を旋回駆動して任意のグリップアーム38を割り出させる。記憶装置44には、グリップアーム38の割出位置に対応するマガジン31の旋回位置座標が、マガジン31の基準位置を示す基準座標として記憶される。主軸7が停止した状態で、主軸7の位置を復旧させる為、CPU41はマガジン31の旋回位置座標を検出し、記憶装置44に記憶された基準位置と比較してマガジン31に旋回ずれがあるか判定する。
【0116】
旋回ずれがあると判定した場合、CPU41は主軸7の位置を検出し、その検出した位置がマガジン旋回領域内に位置するか判断する。上記実施形態では、主軸7が工具交換経路51上であってATC準備位置に無ければマガジン旋回領域内と判断し、ATC準備位置にあればマガジン旋回領域外と判断する。また、主軸7が工具交換経路52上であってATC原点に無ければマガジン旋回領域内と判断し、ATC原点にあれば旋回領域外と判断する。
【0117】
このような判断方法で、主軸7の位置がマガジン旋回領域内に位置すると判断した場合、CPU41は主軸7が工具交換経路51上にあれば主軸7をATC準備位置まで移動させ、工具交換経路52上にあれば主軸7をATC原点まで移動させることで、主軸7をマガジン旋回領域から退避させる。その後、CPU41はマガジン31を基準位置に戻す旋回補正を実行させる動作又は作業を要求する。なお、旋回補正を実行させる動作とは、マガジンモータ33に旋回補正を実行させる動作である。旋回補正を実行させる作業とは、作業者に旋回補正を実行させる作業を意味する。これにより、数値制御装置40は、旋回補正を行う際に、マガジン31やグリップアーム38に把持されている工具91と、主軸7や主軸7に装着された工具91との干渉を回避できるので、旋回補正を適切に行うと共にマガジン31や主軸7及び工具91の破損する可能性を低減できる。
【0118】
CPU41は、マガジン31に生じている旋回ずれの大きさが閾値未満の場合に旋回補正指令を生成し、マガジンモータ33に対して旋回補正の動作を指示する。旋回ずれの大きさが閾値未満であれば旋回補正を自動で行うので、数値制御装置40は旋回補正を作業者が手動で行う場合に比べて手間を省略できる。また、旋回ずれの大きさが微小であってもマガジン31を適切に基準位置に戻すので、マガジン31や主軸7及び工具91が破損する可能性をより低減できる。他方、旋回ずれの大きさが閾値以上である場合はマガジン31を旋回する距離が長いことから、マガジン31を慎重に旋回して基準位置に戻す必要がある。この場合、CPU41は作業者に対して旋回補正の作業を表示部26に表示して報知するので、作業者はマガジン31の周囲を確認しながらマガジン31を慎重に旋回させることができる。
【0119】
CPU41は主軸7をマガジン旋回領域内から退避させる際、工具交換経路51,52に沿って主軸7を移動させる。工具交換経路51,52は工具交換時に主軸を移動させる経路である。これにより、CPU41は主軸7や主軸7に装着された工具91が他部材と干渉する可能性を低減できる。
【0120】
逆L字状の工具交換経路51,52のうち工具交換経路51はATC準備位置とATC位置の間をY軸方向に延びる所定経路である。停止状態の主軸7が工具交換経路51上で且つATC準備位置に無い場合、主軸7はマガジン旋回領域内に位置する可能性がある。この場合、CPU41は、主軸7を工具交換経路51に沿ってATC準備位置まで退避することでマガジン旋回領域から退避できる。これにより、CPU41はマガジン31の旋回補正を安全に行うことができる。
【0121】
停止状態の主軸7がATC位置とATC原点との間で且つマガジン旋回領域内に位置する場合、CPU41は主軸7をATC原点に退避する。これにより、CPU41はマガジン31の旋回補正を安全に行うことができる。
【0122】
例えばアラーム等が発生し、工具交換が途中で停止した場合、主軸7は停止した状態である。この場合、CPU41はマガジン31の旋回ずれを判定し、停止した主軸7の位置がマガジン旋回領域内と判断した場合は、主軸7をマガジン旋回領域から退避させたのちにマガジンを基準位置に戻すことができる。
【0123】
工具交換の途中で工作機械1の電源がオフされた後、電源がオンされた場合、主軸7は停止した状態である。この場合、CPU41はマガジン31の旋回ずれを判定する。旋回ずれがあると判定し、且つ停止した主軸7の位置がマガジン旋回領域内と判断した場合は、主軸7をマガジン旋回領域から退避させたのちにマガジン31を基準位置に戻すことで、旋回補正を安全に行うことができる。
【0124】
本発明は上記実施形態に限らず各種変形が可能である。工作機械1は横形の工作機械であるが、主軸の軸方向が上下方向に延びる縦形の工作機械であってもよい。工作機械1はワークに対して主軸7に装着された工具91をX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に相対的に移動させる機構を備えるが、3軸に限定せず、1軸又は2軸でもよく、3軸以上であってもよい。また、工作機械1は、回転テーブル9上に治具で固定されたワークに対し、コラム5をX軸方向とZ軸方向、主軸ヘッド6(主軸7)をコラム5の前面5Bに沿ってY軸方向に移動することで、ワークと工具を相対的にX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に移動する構造であるが、これ以外の構造でもよい。例えば、コラム5をX軸方向、主軸ヘッド6(主軸7)をZ軸方向に移動し、コラム5と主軸ヘッド6を支持する支持台(図示略)をY軸方向に移動させてもよい。
【0125】
上記実施形態のATC復旧処理(図13参照)では、軸戻し先判定処理を実行してから軸戻しを実行し(S40~S43)、その後、工具交換経路51,52上に軸戻しされた主軸7の位置を工具交換経路51,52に沿って加工領域まで安全且つ適切に移動させる為、主軸7の停止位置に対応した復旧画面82~86を表示部26に表示するが(S45~S72)、S45以降の処理を省略し、軸戻しまでの処理としてもよい。
【0126】
例えば、ATC領域で停止した主軸7の位置がW2領域の範囲内であるが、X軸が復旧領域W1の範囲内にない場合、若しくはZ軸が復旧領域W4~W6の何れの範囲内にも無い場合、S43の軸戻しをすることで、主軸7のY軸は加工領域に直接的に移動する。この場合、CPU41は主軸7を加工領域に復旧させる処理は不要である。
【0127】
上記実施形態では、軸戻し先判定処理において、X軸、Y軸、Z軸の全ての移動軸において戻し先を指定した後で全軸について軸戻しを実行するが、各移動軸で戻し先を指定しながら軸戻しを順次実行してもよい。
【0128】
図15のYM軸復旧処理のS104の処理において、旋回ずれが閾値値未満の場合は(S104:YES)、CPU41はマガジン31の自動旋回補正を実行するが(S105~S107)、例えば図42に示す変形例のように、旋回ずれが閾値値未満の場合は(S104:YES)、そのまま主軸7を移動させても工具の受け渡しに対して影響が小さいので、マガジン31の旋回ずれを補正しないようにしてもよい。この場合、CPU41は、図27のYM軸復旧画面83の表示領域82Aにおいて、手順3の後に手順4として、次へキー831を押す操作についてガイダンス表示するようにしてもよい(S105)。他方、旋回ずれの大きさが閾値以上である場合は(S104:NO)、CPU41は作業者に対して旋回補正の作業を報知するので(S108,S109)、作業者はマガジン31の周囲を確認しながらマガジン31を慎重に旋回させることができる。
【0129】
軸戻し画面81、復旧画面82~86、復旧不可画面87、割出工具確認画面88、終了画面89の夫々のレイアウト、各表示領域に表示される文言の表現等は自由に変更可能である。
【0130】
図15のYM軸復旧処理において、マガジン31の旋回ずれが閾値未満の場合は(S104:YES)、マガジン31の自動旋回補正を実行するが(S107)、例えば旋回ずれの大小に関わらず、ユーザの操作パネル25の操作により一律で、マガジン31を旋回して基準位置に戻すようにしてもよい(S108~S111)。図16のYZM軸復旧処理、図14のYZM復旧処理(S71)においても同様である。
【0131】
上記実施形態の図31(1)に示すSTEP2―dの工程では、工具交換経路52上のM4点に位置する主軸7を工具交換経路52に沿ってATC原点に一旦後退させた後、マガジン31の位置を正常に戻して、[工具交換単動]キーを押すことによって、主軸7をATC位置Z軸に前進させているが、例えばM4点がマガジン旋回領域よりも後方であれば、マガジン31の位置を正常に戻してから主軸7をM4点から工具交換経路52に沿ってそのまま前進させてもよい。この場合、[工具交換単動]キーを押すのではなく、[解除]キーを押しながら[-Z]キーを押して主軸7をATC位置軸に前進させればよい。
【0132】
図16のYZM軸復旧処理の中で、主軸7のZ軸がATC原点に到達した場合(S123:YES)、主軸7はマガジン旋回領域よりも後方に退避したと見做して、CPU41はマガジン31の旋回補正を実行するが(S124~S127、S128~S131)、例えば主軸7の現在の機械座標を検出して、記憶装置44に記憶されたマガジン旋回領域の座標情報を参照して、現在の主軸7のZ軸がマガジン旋回領域内か否かを判断するようにしてもよい。また、図15のYM軸復旧処理の中で、主軸7のY軸をY軸原点に向けて下降する場合(S101~S103)においても同様に、記憶装置44に記憶されたマガジン旋回領域の座標情報を参照して、現在の主軸7のY軸がマガジン旋回領域内か否かを判断するようにしてもよい。
【0133】
本実施形態は工作機械1に設けられた数値制御装置40であるが、例えば図43に示す数値制御システム200であってもよい。数値制御システム200は、数値制御装置201と工作機械1A,1B,1Cを備える。数値制御装置201のCPUは、例えば工場等に設置された工作機械1A,1B,1Cの夫々の動作を制御して管理する。このような数値制御システム200の場合、数値制御装置201のCPUが本発明の「検出部」、「判断部」、「移動制御部」、「表示制御部」等を構成してもよい。
【符号の説明】
【0134】
1 工作機械
7 主軸
26 表示部
30 ATC装置
31 マガジン
37A 旋回軸
38 グリップアーム
40 数値制御装置
41 CPU
51,52 工具交換経路
90 工具ホルダ
91 工具
200 数値制御システム
201 数値制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43