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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049654
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】パネル部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/12 20060101AFI20240403BHJP
   B60K 37/20 20240101ALI20240403BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G09F13/12
B60K37/00 G
B60R13/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156003
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】591178517
【氏名又は名称】株式会社三和スクリーン銘板
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】太田 肇
(72)【発明者】
【氏名】常盤 一成
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 賢士
【テーマコード(参考)】
3D023
3D344
5C096
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BE12
3D344AA11
3D344AB01
3D344AC13
5C096AA14
5C096BA01
5C096CC06
5C096FA05
5C096FA11
(57)【要約】
【課題】美観を損なうことなく、必要な図形等を表示することができるパネル部材の製造方法を提供する。
【解決手段】パネル部材1の製造方法は、透明シート3の表面側に意匠用の表面印刷層5を印刷する工程と、透明シート3の裏面側にマーキング用のレーザ光に反応する顔料を添加したインクからなる遮光層7を印刷する工程と、表面印刷層5及び遮光層7が印刷された透明シート3を樹脂基板の形状に合わせて形作るフォーミング加工を行う工程と、遮光層7にレーザ光を照射して図形10の形状を除去して端面が垂直な孔部7aを形成する工程を備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明シートの表面側及び裏面側に印刷が施されたパネル部材の製造方法であって、
前記透明シートの表面側に、少なくとも1層で構成される第1印刷層を印刷する工程と、
前記透明シートの裏面側に、マーキング用のレーザ光に反応する顔料を添加したインクからなる第2印刷層を印刷する工程と、
前記第1印刷層及び前記第2印刷層が印刷された透明シートを、前記パネル部材を構成する樹脂基板の形状に合わせて形作るフォーミング加工を行う工程と、
前記第2印刷層に前記レーザ光を照射し、図形、記号又は文字を構成するように前記第2印刷層を部分的に除去して、端面が垂直な孔部を形成する工程と、
を備えていることを特徴とするパネル部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1印刷層は、前記レーザ光に反応しない顔料を添加したインクからなる、請求項1に記載のパネル部材の製造方法。
【請求項3】
前記孔部を形成する工程を前記フォーミング加工の工程の後に実行する、請求項1又は2に記載のパネル部材の製造方法。
【請求項4】
前記透明シートと前記第1印刷層との間に、光透過性のインクからなる第1中間層を印刷する工程をさらに備えている、請求項1に記載のパネル部材の製造方法。
【請求項5】
前記第1中間層は、前記第1印刷層と補色の関係にある色彩のインクが添加されている、又は前記第2印刷層側から照射されて前記第1中間層を透過する光と補色の関係にある、請求項4に記載のパネル部材の製造方法。
【請求項6】
前記透明シートと前記第2印刷層との間に、光透過性のインクからなる第2中間層を印刷する工程をさらに備えている、請求項1に記載のパネル部材の製造方法。
【請求項7】
所定の色彩のインクからなり、前記孔部を埋める第3印刷層を印刷する工程をさらに備えている、請求項1に記載のパネル部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の内装加飾部品等に用いられるパネル部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両の内装加飾部品等として、光源からの光で裏面側から照明されるパネル部材が用いられている。このようなパネル部材の意匠を印刷する方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等が良く知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1の照明カバー部材は、自動車のエンジンのスタートボタンを構成するベゼルであり、パネル部材の表側には、金属光沢を有する金属調装飾部が全周に亘って設けられている。金属調装飾部の中には、「OFF」、「ACC」、「ON」の文字からなる3つの照明部が設けられている。すなわち、照明カバー部材は、照明部の形成部分を光が透過可能に構成されており、LED等の光源を用いて照明部の裏側から照らすことで、各照明部を発光させ得るよう構成されている。
【0004】
また、照明カバー部材は、主体となる短円筒形状の支持基材と、支持基材の表側に積層一体化されて金属調装飾部を形成する装飾フィルムとを備えている。照明カバー部材は、フィルムインサート成型によって容易に製造でき、具体的には、薄膜金属層の両面に保護層を有するフィルムを製造し、しかる後に、当該フィルムの裏面に印刷層を印刷することにより、凹凸のない装飾フィルムを得ている。
【0005】
印刷層は、光不透過性の黒色インキで形成される遮光印刷層と、光透過性の青色インキで形成される着色印刷層とで構成される。遮光印刷層は、照明部を形成する部分を欠落させることにより、裏側から照射される光が、照明部のみを透過する。一方、着色印刷層は、光透過性の青色インキで形成されるものであり、照明部を透過する光を青く着色する(段落0015~0020、図1図4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6050056号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
また、近年においては、表面に木目調やカーボン調の意匠が施された高級志向のパネル部材の需要が高まっている。車両用のパネル部材の場合、その表面に図形、文字等を表示することがあるが、常に図形等が見えていると美観が損なわれるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、美観を損なうことなく、必要な図形等を表示することができるパネル部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、透明シートの表面側及び裏面側に印刷が施されたパネル部材の製造方法であって、
前記透明シートの表面側に、少なくとも1層で構成される第1印刷層を印刷する工程と、前記透明シートの裏面側に、マーキング用のレーザ光に反応する顔料を添加したインクからなる第2印刷層を印刷する工程と、前記第1印刷層及び前記第2印刷層が印刷された透明シートを、前記パネル部材を構成する樹脂基板の形状に合わせて形作るフォーミング加工を行う工程と、前記第2印刷層に前記レーザ光を照射し、図形、記号又は文字を構成するように前記第2印刷層を部分的に除去して、端面が垂直な孔部を形成する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明は、透明シートの表面側及び裏面側に印刷が施され、例えば裏面側に配設された光源の光により照明されるパネル部材であり、車両用の内装加飾部品等として用いられる。本パネル部材を製造するため、まず、透明シートの表面側に、少なくとも1層で構成される第1印刷層を印刷する。これにより、透明シートの表面側に所定の意匠を施すことができる。次に、透明シートの裏面側に第2印刷層を印刷する。第2印刷層は、マーキング用のレーザ光に反応する顔料を添加したインクからなるため、レーザ光による加工が可能である。
【0011】
次に、透明シートをパネル部材の樹脂基板の形状に合わせて形作るフォーミング加工を行う。さらに、第2印刷層にレーザ光を照射し、図形、記号又は文字を構成するように第2印刷層を部分的に除去して、端面が垂直な孔部を形成する。これにより、パネル部材の裏面側から光を照射すると、光が当該孔部を透過するため、図形等が現れる。また、当該孔部とパネル部材の表面までの間には透明シートと第1印刷層の分の厚みがあるため、光が照射されていないときは図形等が見えないようにすることができる。
【0012】
本発明のパネル部材の製造方法において、前記第1印刷層は、前記レーザ光に反応しない顔料を添加したインクからなることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、レーザ光による加工時に、第1印刷層がレーザ光の影響を受けず、変色又は劣化が生じない。
【0014】
また、本発明のパネル部材の製造方法において、前記孔部を形成する工程を前記フォーミング加工の工程の後に実行することが好ましい。
【0015】
フォーミング加工後のパネル部材を、例えば治具に固定してレーザ光により孔部を加工する。これにより、歪み等を発生させずに図形等を形成することができる。
【0016】
また、本発明のパネル部材の製造方法において、前記透明シートと前記第1印刷層との間に、光透過性のインクからなる第1中間層を印刷する工程をさらに備えていることが好ましい。
【0017】
透明シートとその表面側の第1印刷層との間に第1中間層を設けると、レーザ光による加工時に第1印刷層の変色や劣化を確実に防止することができる。
【0018】
また、本発明のパネル部材の製造方法において、前記第1中間層は、前記第1印刷層と補色の関係にある色彩のインクが添加されている、又は前記第2印刷層側から照射されて前記第1中間層を透過する光と補色の関係にあることが好ましい。
【0019】
第1中間層の色彩は、第1印刷層の色彩と補色の関係とするとよい。これにより、パネル部材の上方から見た図形等は、各層の色彩の組合せから生じる所定の色彩で視認される。また、第1中間層の色彩は、第2印刷層側から照射されて第1中間層を透過する光と補色の関係にあってもよい。
【0020】
また、本発明のパネル部材の製造方法において、前記透明シートと前記第2印刷層との間に、光透過性のインクからなる第2中間層を印刷する工程をさらに備えていることが好ましい。
【0021】
透明シートとその裏面側の第2印刷層との間に第2中間層を設けると、レーザ光による加工時に透明シートを確実に保護することができる。
【0022】
また、本発明のパネル部材の製造方法において、所定の色彩のインクからなり、前記孔部を埋める第3印刷層を印刷する工程をさらに備えていることが好ましい。
【0023】
透明シートの裏面側の第2印刷層の孔部を埋めるように、所定の色彩の第3印刷層を設ける。これにより、パネル部材の裏面側から光を照射したとき、図形等を第3印刷層の色彩に着色して表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】本発明の実施形態に係るパネル部材の正面図(光源消灯)である。
図1B】本発明の実施形態に係るパネル部材の正面図(光源点灯)である。
図2】(a)樹脂シートの表面側に積層印刷層を印刷したときの断面図である。(b)樹脂シートの裏面側に遮光層を印刷したときの断面図である。
図3A】印刷された樹脂シートのフォーミング加工を説明する図である。
図3B】印刷された樹脂シートを治具にセットした状態を示す図である。
図4】(a)樹脂シートの裏面側にレーザ光を照射したときの断面図である。(b)遮光層に孔部が形成された樹脂シートの断面図である。
図5】樹脂シートの裏面側に裏面印刷層を印刷したときの断面図である。
図6】樹脂シートの裏面側に成型樹脂部を形成したときの断面図(図1BのVI-VI線断面図)である。
図7】パネル部材の裏面側に光源を配設した状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、図面を参照して、本発明に係るパネル部材の実施形態について説明する。
【0026】
[第1実施形態]
図1Aは、本発明の本実施形態に係るパネル部材1の全体図である。パネル部材1は、後述する透明シート3に意匠を印刷した後、圧力を加えて成型樹脂部2と一体化する、いわゆるフィルムインサート成型により製造される。パネル部材1は、例えば、車両用の内装加飾部品等として利用される。
【0027】
成型樹脂部2は、厚みが約3mmのプラスチック製の板状部材である。成型樹脂部2の表面側には、フォーミング加工後の透明シート3の形状と一致する浅い窪みが形成されている。また、成型樹脂部2は、その裏面側に光源(LED)を収納可能な形状を有しているか、その裏面側に光源が収納された別の筐体(部品)を取付け可能な構造を有している。
【0028】
透明シート3の表面側には、高精細のスクリーン印刷により印刷した表面印刷層5(本発明の「第1印刷層」)が形成されている。表面印刷層5は、少なくとも1層の印刷層で構成される。図1Aでは、パネル部材1の表面に木目調の意匠が施されている。このため、表面印刷層5は、茶色の印刷層や木目の細線の印刷層等、2~5層の印刷層を重ね合わせて形成される。なお、意匠は木目調に限られず、カーボン調やピアノブラック(光沢ブラック)等、様々なデザインとすることができる。
【0029】
図1Bは、パネル部材1の裏面側から光を照射したときの様子を示している。このとき、パネル部材1の表面に図形10が出現する(いわゆる、ステルスフォント)。詳細は後述するが、透明シート3裏面側の遮光層7(本発明の「第2印刷層」)にレーザ光を照射し、所望の図形を描くように遮光層7を部分的に除去する。これにより、遮光層7に図形10を形成することができる。
【0030】
図形10は四つ葉マークの縁部のみが孔部となっており、光源の光が透過する。図形10の代わりに、記号又は文字を表す孔部が形成されていてもよい。
【0031】
次に、図2図4を参照して、パネル部材1の断面構造と製造方法を説明する。
【0032】
図2(a)は、透明シート3の表面側に表面印刷層5を印刷したときの断面図を示している。透明シート3は、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、アクリル、又はポリカーボネートとアクリルの複層シート、ポリプロピレン等の透過性を有する樹脂フィルムである。透明シート3の厚みは、通常0.1~1.0mmであり、好ましくは0.2~0.5mmである。
【0033】
透明シート3の表面側は、光透過性のインクからなる中間層4(本発明の「第1中間層」)と、主に意匠を構成する表面印刷層5(印刷層5a,5b)とからなる。意匠が単色(特に、黒色系)である場合、印刷層5aのみでも構成可能である(単層の印刷層)が、通常は2層以上の印刷層を重ね合わせて意匠を構成する(複層の印刷層)。
【0034】
製造方法としては、まず透明シート3の表面側に中間層4をスクリーン印刷する。さらに、中間層4の表面側に下層から印刷層5a,5bの順にスクリーン印刷して、表面印刷層5を形成する。スクリーン印刷の代わりに、グラビア印刷を行ってもよい。
【0035】
中間層4は、レーザマーキング装置のレーザ光から表面印刷層5を保護する目的で設けられている。中間層4は、レーザ光に反応しない顔料を添加したインクが好ましいが、当該顔料を含まないインクであってもよい。中間層4を設けることで、レーザ加工時の表面印刷層5の変色や劣化を防止することができる。
【0036】
表面印刷層5(印刷層5a,5b)は、レーザ光に反応しない顔料を添加したインクからなる。印刷層5a,5bはパネル部材1の意匠を構成する層であり、例えば印刷層5aが木目の茶色の層、印刷層5bが木目の細線の層となっている。木目調の意匠を作る場合、実際は、3層以上の印刷層を重ね合わせる必要があるが、ここでは、説明のため簡略化した2層の構造としている。
【0037】
中間層4は、表面印刷層5と補色の関係にある色彩のインクが添加されていることが好ましい。このようにすることで、パネル部材1の上方から見た図形10は、各層の色彩の組合せから生じる所定の色彩で視認されるようになる。
【0038】
中間層4は、パネル部材1の裏面側から照射され、中間層4を透過する光源の光と補色の関係とすることが好ましい。例えば、当該光源の光が黄色の場合、中間層4に青色の顔料を添加させる。これにより、表面印刷層5に入射する光が白色となり、図形10は、パネル部材1の上方から白色で視認される。
【0039】
図2(b)は、透明シート3の裏面側に遮光層7を印刷したときの断面の様子を示している。透明シート3の裏面側は、中間層6(本発明の「第2中間層」)と、遮光層7とからなる。
【0040】
製造方法としては、まず透明シート3の裏面側に中間層6をスクリーン印刷する。中間層6は透明シート3をレーザ光から保護する目的で設けられ、光透過性のインクからなる。なお、中間層6は上述の中間層4と異なり、光源の光と補色の関係とする必要はない。
【0041】
次に、中間層6の上面側に遮光層7をスクリーン印刷する。遮光層7は、マーキング用のレーザ光に反応する顔料を添加したインク(例えば、カーボンブラックを含む黒色顔料の層)からなる。
【0042】
図3Aは、透明シート3をパネル部材1の樹脂基板の形状に合わせて形作るフォーミング加工の様子を示している。なお、図3Aにおいては、中間層4,6の図示を省略している。
【0043】
両面側に印刷が施された透明シート3は、製品のフォーミング型Pを用いて加工される。フォーミング加工の方法としては、プレス、真空成型、真空圧空成型、超高圧成型等がよく用いられる。これにより、パネル部材1(図1A参照)の枠形状が形成される。なお、製品形状となる部分を除いたパネル部材1の周辺部は、フォーミング加工後に切り離される。
【0044】
図3Bは、パネル部材1の図形10を描くため、レーザ加工前に透明シート3を治具Qにセットした状態を示している。なお、図3Bにおいても、中間層4,6の図示を省略している。
【0045】
透明シート3は非常に柔軟な材料であるため、そのままの状態でレーザ加工を行うと、位置ずれが生じてしまう。そのため、図示するように、フォーミング加工された透明シート3の表面側を下にして位置決めの治具Qに取り付ける。治具Qには、複数の位置決めピン(qa,qb,…)が設けられている。
【0046】
フォーミング加工された透明シート3は、小穴開け機、トムソン加工機等により当該位置決めピンに合わせた小孔を開けておく。当該小穴を位置決めピンに挿入することにより、レーザ加工時に透明シート3が動かないように固定することができる。治具Qが透明シート3を真空引き(吸引)する機能を備えていれば、レーザ加工時の位置決めがより安定する。なお、当該小孔の形成は透明シート3の印刷後、フォーミング加工前に行うことも可能である。
【0047】
図4は、透明シート3のレーザ加工時の様子を示している。図4(a)は、透明シート3の裏面側にレーザ光を照射したときの断面図である。
【0048】
遮光層7にレーザマーキング装置によりレーザ光(例えば、Nd:YAGの波長;1,064μm)を照射したとき、遮光層7が当該レーザ光の熱で溶解し、レーザ波長の振動により破壊される。レーザ光が遮光層7で吸光されるため、化学反応により遮光層7が除去(アブレーション)される。
【0049】
図4(b)は、遮光層7に孔部7aが形成された透明シート3の断面図を示している。レーザ光を走査して、遮光層7の一部を図形10の形状となるようにトリミングする。レーザ光径を絞ることにより、極めて小さい孔部7aを形成することができるので、孔部7aの端面は垂直となる。
【0050】
孔部7aの端面が垂直でない場合、光源の光が透過する領域が部分的に狭くなるため、図形等が不鮮明に見えることがある。しかし、本発明の製造方法では、孔部7aの端面が垂直に加工できるため、図形等の輪郭は鮮明になる。孔部7aが除去された部分は、図1Bの図形10(四つ葉マークの縁部)である。
【0051】
図5に示すように、孔部7aを埋める裏面印刷層8を印刷又は塗装してもよい。裏面印刷層8は所定の色彩のインクからなるため、パネル部材1の裏面側から光源の光を照射したとき、図形等を裏面印刷層8の色彩で表示させることができる。裏面印刷層8は、例えば印刷層を2~3層重ね合わせることで、所望の色彩を得るようにしてもよい。
【0052】
図6は、透明シート3の裏面側に成型樹脂部2を形成したときの断面図(図1BのVI-VI線断面図)を示している。成型樹脂部2は、フォーミング加工及びレーザ加工を行った透明シート3(図4(b)参照)を専用の金型にセットし、いわゆるフィルムインサート成型を行うことで形成される。
【0053】
成型樹脂部2はプラスチック製の板状部材であり、成型樹脂部2の裏面は、光源(LED)が収納可能な形状を有しているか、その裏面側に光源が収納された別の筐体(部品)を取付け可能な構造を有している。成型樹脂部2は、光源からの光が透過する透明又は半透明の材料であることが好ましい。
【0054】
最後に、図7を参照して、完成したパネル部材1の裏面側に光源11を配設した状態を示す。
【0055】
光源11(LED)を消灯させているとき、パネル部材1の上方からは図形10は視認されず、木目だけが視認される(図1A参照)。一方、光源11を点灯させると、成型樹脂部2及び透明シート3が透過性を有する材料であるため、遮光層7の孔部7aから光源11の光がパネル部材1の前面側に出射され、視認可能になる。
【0056】
このように、パネル部材1は、光源11が消灯された不使用時等は図形10が視認されず、美観を損なうことがない。また、光源11が点灯された使用時等は図形10が視認されるため、必要な表示を行うことができる。
【0057】
以上で説明したように、本発明のパネル部材1の製造方法は、透明シート3の表面側に表面印刷層5を印刷する工程と、透明シート3の裏面側にマーキング用のレーザ光に反応する顔料を添加したインクからなる遮光層7を印刷する工程と、表面印刷層5及び遮光層7が印刷された透明シート3を樹脂基板の形状に合わせて形作るフォーミング加工を行う工程と、遮光層7にレーザ光を照射し、図形、記号又は文字を構成するように遮光層7を部分的に除去して、端面が垂直な孔部7aを形成する工程とを備えている。
【0058】
また、製造されたパネル部材1は、透明シート3と、透明シート3の表面側に印刷され、少なくとも1層で構成される表面印刷層5と、透明シート3の裏面側に印刷され、レーザ光に反応する顔料を添加したインクからなる遮光層7と、を備えており、遮光層7には、図形、記号又は文字を構成するように部分的に除去された、端面が垂直な孔部7aが設けられている。
【0059】
パネル部材1の表面印刷層5(印刷層5a,5b)は、高精細のスクリーン印刷で形成するため、従来のグラビア印刷と遜色のない、木目調等の美しい意匠をパネル部材1に施すことができる。遮光層7は、レーザ光を照射することでパネル部材1の図形10を形成することができる。そして、パネル部材1の裏面側から光を照射していないとき図形10は視認されないが、当該光を照射したとき輪郭が鮮明な図形10が視認される。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0061】
例えば、上述の中間層4、中間層6は、パネル部材1の目的に合わせて適宜形成すればよい。各層の印刷手法、フォーミング加工の手法、透明シートの種類、トリミング用のレーザ光の種類についても適宜選択可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…パネル部材、2…成型樹脂部、3…透明シート、4…中間層(第1中間層)、5…表面印刷層(第1印刷層)、5a,5b…印刷層、6…中間層(第2中間層)、7…遮光層(第2印刷層)、7a…孔部、8…裏面印刷層(第3印刷層)、10…図形、11…光源。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
透明シートの表面側及び裏面側に印刷が施され、前記表面側及び前記裏面側がそれぞれ前面側及び光源側とされるパネル部材の製造方法であって、
前記透明シートの前記表面側に、少なくとも1層で構成され意匠が施されている第1印刷層を印刷する工程と、
前記透明シートの前記裏面側に、マーキング用のレーザ光に反応する顔料を添加したインクからなり裏面側が露出した遮光印刷層として第2印刷層を印刷する工程と、
前記第1印刷層及び前記第2印刷層が印刷された透明シートを、前記パネル部材を構成する樹脂基板の形状に合わせて形作るフォーミング加工を行う工程と、
裏面側が露出している前記第2印刷層に該裏面側から前記レーザ光を照射し、図形、記号又は文字を構成するように前記第2印刷層を部分的に除去して、端面が垂直な孔部を形成する工程と、
を備えていることを特徴とするパネル部材の製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明シートの表面側及び裏面側に印刷が施され、前記表面側及び前記裏面側がそれぞれ前面側及び光源側とされるパネル部材の製造方法であって、
前記透明シートの前記表面側に、少なくとも1層で構成され意匠が施されている第1印刷層を印刷する工程と、
前記透明シートの前記裏面側に、光透過性のインクからなる第2中間層を印刷する工程と、
前記第2中間層の裏面側に、マーキング用のレーザ光に反応する顔料を添加したインクからなり裏面側が露出した遮光印刷層として第2印刷層を印刷する工程と、
前記第1印刷層及び前記第2印刷層が印刷された透明シートを、前記パネル部材を構成する樹脂基板の形状に合わせて形作るフォーミング加工を行う工程と、
裏面側が露出している前記第2印刷層に該裏面側から前記レーザ光を照射し、図形、記号又は文字を構成するように前記第2印刷層を部分的に除去して、端面が垂直な孔部を形成する工程と、
を備えていることを特徴とするパネル部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1印刷層は、前記レーザ光に反応しない顔料を添加したインクからなる、請求項1に記載のパネル部材の製造方法。
【請求項3】
前記孔部を形成する工程を前記フォーミング加工の工程の後に実行する、請求項1又は2に記載のパネル部材の製造方法。
【請求項4】
前記透明シートと前記第1印刷層との間に、光透過性のインクからなる第1中間層を印刷する工程をさらに備えている、請求項1に記載のパネル部材の製造方法。
【請求項5】
前記第1中間層は、前記第1印刷層と補色の関係にある色彩のインクが添加されている、又は前記第2印刷層側から照射されて前記第1中間層を透過する光と補色の関係にある、請求項4に記載のパネル部材の製造方法。
【請求項6】
所定の色彩のインクからなり、前記孔部を埋める第3印刷層を印刷する工程をさらに備えている、請求項1に記載のパネル部材の製造方法。