(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049657
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】カメラ装置
(51)【国際特許分類】
G03B 17/02 20210101AFI20240403BHJP
【FI】
G03B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156008
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】川口 英之
【テーマコード(参考)】
2H100
【Fターム(参考)】
2H100AA18
2H100AA20
2H100AA21
2H100AA24
2H100AA51
(57)【要約】
【課題】安価かつコンパクトな構成で所望のカウント表示を実現することが可能なカメラ装置を提供する。
【解決手段】カメラ装置1は、ドア部材20の内側でY方向に沿って移動可能なスライダ50を備える。スライダ50は、Y方向に沿って表示が変化する表示面59と、Y方向に沿って並んで形成される凹部53と、Y方向に沿って並んで形成されるフック部54とを有する。カメラ装置1は、スライダ50をY方向に付勢するコイルバネ41と、スライダ50のフック部54に係合してスライダ50を移動するように構成される駆動部80と、駆動部80によるスライダ50の移動を許容するような力でスライダ50に向けて押されて凹部53と係合可能な係合部73を有するストッパ部材70とを備える。ドア部材20は、スライダ50の表示面の一部を外側から視認させるための窓21を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの内部で移動方向に沿って移動可能なスライダであって、
前記移動方向に沿って表示が変化する表示面と、
前記移動方向に沿って並んで形成される複数の凹部と、
前記移動方向に沿って並んで形成される複数のフック部と
を有するスライダと、
前記スライダを前記移動方向に付勢する付勢部材と、
前記スライダの前記複数のフック部のうちの1つのフック部に係合して前記付勢部材が付勢する方向とは反対の方向に前記スライダを移動するように構成される駆動部と、
前記駆動部による前記スライダの移動を許容するような力で前記スライダに向けて押されて前記複数の凹部のうちの1つの凹部と係合可能な係合部を有するストッパ部材と
を備え、
前記ハウジングは、前記スライダの前記表示面の一部を外側から視認させるための窓を有する、
カメラ装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、開口を開閉可能なドア部材を含み、
前記スライダは、前記ドア部材の内側に配置される、
請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記ハウジングの前記開口を通じて写真フィルムパックを出し入れできるように構成される、請求項2に記載のカメラ装置。
【請求項4】
前記ストッパ部材は、前記ハウジングの内部に収容された前記写真フィルムパックにより前記スライダに向けて押されるように構成される、請求項3に記載のカメラ装置。
【請求項5】
前記スライダの前記表示面には、前記ハウジングの内部に収容された前記写真フィルムパック内の写真フィルムの残枚数を表す表示が前記移動方向に沿って順番に形成されている、請求項3又は4に記載のカメラ装置。
【請求項6】
前記駆動部は、撮影動作に連動して前記スライダを移動させるように構成される、請求項5に記載のカメラ装置。
【請求項7】
前記スライダの前記複数の凹部の前記移動方向に沿ったピッチと前記複数のフック部の前記移動方向に沿ったピッチとは同一である、請求項1に記載のカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ装置に係り、特にカウント表示が可能なカメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から撮影後に自動的に現像を行うことができる写真フィルムを用いたカメラ、いわゆるインスタントカメラが知られている。このようなインスタントカメラには、複数の写真フィルムを収容した写真フィルムパックを装填できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。写真フィルムパックに収容される写真フィルムの枚数は決まっており、写真フィルムの残枚数を撮影者に知らせる必要があるため、特許文献1に開示されているカメラでは、排出される写真フィルムをカウントして写真フィルムの残枚数をLCDパネルに表示するようになっている。
【0003】
しかしながら、このようなLCDパネルは高価なものであるため、LCDパネルを付けることによりカメラの製造コストが増大してしまう。また、カメラ内にLCDパネルに関連する回路基板や配線を配置するスペースを確保する必要があるため、カメラを小型化することが難しい。したがって、写真フィルムの残枚数などのカウント表示を安価かつコンパクトな構成で実現することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、安価かつコンパクトな構成で所望のカウント表示を実現することが可能なカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、安価かつコンパクトな構成で所望のカウント表示を実現することが可能なカメラ装置が提供される。このカメラ装置は、ハウジングと、上記ハウジングの内部で移動方向に沿って移動可能なスライダとを備える。上記スライダは、上記移動方向に沿って表示が変化する表示面と、上記移動方向に沿って並んで形成される複数の凹部と、上記移動方向に沿って並んで形成される複数のフック部とを有する。上記カメラ装置は、上記スライダを上記移動方向に付勢する付勢部材と、上記スライダの上記複数のフック部のうちの1つのフック部に係合して上記付勢部材が付勢する方向とは反対の方向に上記スライダを移動するように構成される駆動部と、上記駆動部による上記スライダの移動を許容するような力で上記スライダに向けて押されて上記複数の凹部のうちの1つの凹部と係合可能な係合部を有するストッパ部材とを備える。上記ハウジングは、上記スライダの上記表示面の一部を外側から視認させるための窓を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態におけるカメラ装置を示す前方斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すカメラ装置のドア部材を開いた状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すカメラ装置からフィルムパックを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図5に示すドア部材から表示器のカバーを取り外した状態を示す部分拡大正面図である。
【
図8】
図8は、
図5に示す表示器を含むドア部材の部分拡大断面図である。
【
図9】
図9は、
図5に示す表示器を含むカメラ装置の一部を示す部分拡大背面図である。
【
図10】
図10は、
図9におけるスライダ、駆動部、及び可動部材の関係を模式的に示す左側面図である。
【
図11】
図11は、
図9に示すスライダと駆動レバーの動作を説明する模式的背面図である。
【
図12】
図12は、
図9に示すスライダとストッパ部材70の動作を説明する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係るカメラ装置の実施形態について
図1から
図12を参照して詳細に説明する。
図1から
図12において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図12においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態におけるカメラ装置1を示す前方斜視図、
図2は後方斜視図である。本実施形態におけるカメラ装置1は、撮影後に自動的に現像が可能な複数の写真フィルムを収容した写真フィルムパック(以下、単にフィルムパックという)を装填できるカメラ(インスタントカメラ)であるが、本発明は、このようなカメラに限られず、任意のカメラに適用できるものである。なお、本実施形態では、便宜的に、
図1における+Z方向を「前」又は「前方」、-Z方向を「後」又は「後方」、+Y方向を「上」又は「上方」、-Y方向を「下」又は「下方」ということとする。
【0010】
図1に示すように、カメラ装置1は、フロントカバー2と、フロントカバー2の後方に装着されるリアカバー3と、フロントカバー2とリアカバー3とに挟まれるトップカバー4と、フロントカバー2の筒状部2Aの内側に収容されるレンズ鏡筒5と、フロントカバー2及びリアカバー3の側面に配置されるバッテリカバー6と、リアカバー3の後面に取り付けられるドア部材20とを備えている。フロントカバー2、リアカバー3、トップカバー4、バッテリカバー6、及びドア部材20によりカメラ装置1のハウジングが構成されている。
【0011】
フロントカバー2にはファインダ窓7が形成されており、このファインダ窓7に隣接してフラッシュ窓8が配置されている。また、ファインダ窓7の-Y方向側にはレリーズボタン9が配置されている。トップカバー4には、Y方向に延びる排出スリット4Aが形成されており、この排出スリット4Aから撮影後に現像された写真フィルムが排出されるようになっている。本実施形態のレンズ鏡筒5は、撮影をしないときにはフロントカバー2の筒状部2Aの内側に収容され、撮影時には、
図1に示すように前方に繰り出すように構成されている。
【0012】
図2に示すように、リアカバー3には、ファインダ窓7を通じて前方の被写体の像が結像するファインダ部10が設けられている。撮影者は、このファインダ部10をのぞき込むことによって撮影する被写体及び構図を確認することができる。ドア部材20は、リアカバー3に対して回転可能に取り付けられている。このドア部材20には例えば円形の窓21が形成されている。
【0013】
図3は、
図2に示す状態からドア部材20を回転させた状態を示す斜視図である。
図3に示すように、ドア部材20は、リアカバー3に設けられたシャフト3Bが挿通されるヒンジ部22を有しており、このヒンジ部22を介してシャフト3B周りに回転可能となっている。ドア部材20がシャフト3B周りに回転することで、ドア部材20は、リアカバー3に形成された開口S(
図3参照)を開閉できるようになっている。ドア部材20は、弾性変形可能なノブ23を備えており、リアカバー3には、ドア部材20のノブ23に係合可能なドアフック3Cが形成されている。ドア部材20のノブ23がリアカバー3のドアフック3Cに係合することで、リアカバー3の開口Sが閉じられた状態(
図2)が保持される。この状態でドア部材20のノブ23に力を加えて弾性変形させることで、ノブ23とリアカバー3のドアフック3Cとの係合を解除して、ドア部材20をシャフト3B周りに回転させることができる。
【0014】
図3に示すリアカバー3の開口Sが開放された状態で、複数の写真フィルムFを収容したフィルムパック30を開口Sを通じてハウジングの内部に装填し、あるいは
図4に示すようにハウジングの内部から取り外すことができるようになっている。本実施形態におけるフィルムパック30は、10枚の写真フィルムを含んでおり、合計で10枚の写真を撮影することができるものである。ここで、ドア部材20は、縮退可能に突出する押圧バー24を有しており、この押圧バー24は、フィルムパック30に形成された矩形孔31を通ってフィルムパック30内の写真フィルムFを押圧し、カメラ装置1内での写真フィルムFの位置を調整するようになっている。
【0015】
ここで、ドア部材20は、ハウジングの内部に収容されたフィルムパック30内の写真フィルムFの残枚数を表示するための表示器40を有している。
図5は、ドア部材20の部分分解斜視図である。
図5に示すように、ドア部材20の前面にはY方向に沿って延びるガイド溝25が形成されている。
図5に示すように、表示器40は、ドア部材20のガイド溝25内をY方向(移動方向)に沿って移動可能なスライダ50と、スライダ50に形成されたピン51とガイド溝25の-Y方向の端部に形成されたピン26との間に引っ張り状態で架け渡されるコイルバネ41(付勢部材)と、ドア部材20の前面に形成された保持部27にシャフト(図示せず)を中心として回転可能に収容されるストッパ部材70と、スライダ50の+Z方向側を覆うカバー42と、ストッパ部材70を+Z方向側から弾性的に支持する支持プレート44と、支持プレート44をドア部材20に固定するネジ46とを含んでいる。カバー42は、ドア部材20のガイド溝25に形成されたピン28と上述したピン26とをカバー42に形成されたピン孔43に挿通することによりドア部材20に固定される。
【0016】
ストッパ部材70は、シャフト(図示せず)によってドア部材20の保持部27に回転可能に保持される軸部71と、軸部71から延びる腕部72と、腕部の先端に設けられる係合部73とを有している。係合部73の-Z方向側の先端は尖った形状となっている。
【0017】
図6Aは、スライダ50の正面図、
図6Bは左側面図、
図6Cは右側面図、
図6Dは背面図である。
図6Aから
図6Dに示すように、スライダ50は、ドア部材20のガイド溝25に収容されるスライダ本体52と、スライダ本体52から-X方向に突出する複数のフック部54とを備えている。スライダ本体52には、-Z方向に凹んだ複数の凹部53が形成されている。複数のフック部54はY方向に沿って並んで形成されており、複数の凹部53もY方向に沿って並んで形成されている。本実施形態では、隣接する凹部53のY方向のピッチP1(
図6C参照)と隣接するフック部54のY方向のピッチP2(
図6D参照)は同一である。スライダ本体52の-Z方向側の面59(表示面)には、フィルムパック30内の写真フィルムFの残枚数を表す表示56が形成されている。本実施形態では、このような表示56として「S」の文字と「10」から「0」までの数字を表すエンボスが-Y方向に向かって順番に形成されている。このような表示56はエンボスである必要はなく、印刷やシールであってもよい。
【0018】
図7は、表示器40のカバー42を取り外した状態を示す部分拡大正面図である。
図7以降の図においてはコイルバネ41を簡略化して示している。上述のように、コイルバネ41は、スライダ50に形成されたピン51とガイド溝25の端部に形成されたピン26との間に引っ張り状態で架け渡されている。したがって、スライダ50は、コイルバネ41の付勢力によって-Y方向に付勢されている。ガイド溝25内のピン26の近傍には規制ピン29が形成されており、スライダ50の下縁が規制ピン29に当接することによりスライダ50の-Y方向への移動が規制されている。
【0019】
図8は、表示器40を含むドア部材20の部分拡大断面図である。
図8に示す状態では、ストッパ部材70の係合部73がフィルムパック30の後側フレーム32によって-Z方向側に押されており、これによりストッパ部材70の係合部73がスライダ50の複数の凹部53のうちの1つに係合するようになっている。
図8に示す例では、ストッパ部材70の係合部73は、最も上側に位置する凹部53Aに係合している。
【0020】
図9は、表示器40を含むカメラ装置1の一部を示す部分拡大背面図である。
図4及び
図9に示すように、フロントカバー2、リアカバー3、トップカバー4、バッテリカバー6、及びドア部材20により形成されるハウジング内には、フィルムパック30を収容する矩形枠状のフレーム部材12が収容されている。このフレーム部材12には、スライダ50を+Y方向に移動するための駆動部80が設けられている。
【0021】
駆動部80は、フレーム部材12に設けられたシャフト13の周囲に配置される軸部81と軸部から延びる腕部82とを含む駆動レバー83と、シャフト13の周囲に配置されるねじりコイルバネ85とを有している。ねじりコイルバネ85は、駆動レバー83を+X方向に付勢し、駆動レバー83をフレーム部材12の内側壁18に押し付けるとともに、X軸方向に沿って見たときに駆動レバー83を反時計回りに付勢している。駆動レバー83の回転は、フレーム部材12の内側壁18に形成された規制ピン19に当接することにより規制されている。駆動レバー83は、ねじりコイルバネ85からの付勢力を受けつつフレーム部材12のシャフト13周りに回転可能に構成されている。
図9に示す状態では、駆動レバー83の腕部82はスライダ50のフック部54と係合していないが、後述するように、駆動レバー83がシャフト13周りに回転することで、駆動レバー83の腕部82がスライダ50のフック部54に係合するようになっている。
【0022】
また、フレーム部材12には、図示しない駆動機構によりY方向に移動される可動部材14が取り付けられている。
図4に示すように、この可動部材14は、撮影後の写真フィルムFの縁部に係合可能なフック15を有しており、撮影に使用したフィルムの下縁部をこのフック15に係合させた状態で可動部材14が+Y方向に移動することで、写真フィルムFが+Y方向に移動され、トップカバー4の排出スリット4A(
図1参照)から写真フィルムが排出されるようになっている。
【0023】
図9は、カメラ装置1のハウジングの内部に新しいフィルムパック30を装填したばかりの状態を示している。この状態では、ドア部材20の窓21の+Z方向側にスライダ50の「S」の表示56Aが位置している。この「S」の表示56Aは、装填されているフィルムパック30が未使用であることを意味するものであり、カメラ装置1を使用するユーザは、ドア部材20の窓21から見える「S」の表示56Aにより、装填されているフィルムパック30が未使用であることを知ることができる。
【0024】
図10は、スライダ50、駆動部80、及び可動部材14の関係を模式的に示す左側面図である。
図10に示すように、可動部材14は、駆動部80の駆動レバー83の下方に位置するプッシャ16を有しており、このプッシャ16は、上述のように可動部材14が駆動機構により+Y方向に移動された際に、駆動レバー83の腕部82に当たってシャフト13を中心として駆動レバー83を
図10において時計回りに回転させるようになっている。
【0025】
上述したように、
図9に示される状態では、新しいフィルムパック30を装填したばかりであるが、この状態から撮影を行うためには、ユーザは、まず、レリーズボタン9を押して撮影動作を開始する。フィルムパック30内の最初の写真フィルムは、撮影用の写真フィルムではなく、露光防止用のフィルムであるため、この撮影動作によって撮影は行われないが、撮影動作後は、通常の撮影と同様に可動部材14が駆動機構により+Y方向に移動される。このとき、可動部材14のフック15が露光防止用のフィルムの下縁部に係合するため、露光防止用のフィルムが+Y方向に送り出され、最終的にはトップカバー4の排出スリット4Aから排出され、フィルムパック30内の次の写真フィルム、すなわち1枚目の写真フィルムが露光可能な位置にセットされる。
【0026】
上述した露光防止用のフィルムの送出の途中で、フレーム部材12のプッシャ16が駆動レバー83の腕部82に当たって駆動レバー83が回転する。
図11の(フィルム送出中)に示すように、この駆動レバー83の回転によって、駆動レバー83の腕部82がスライダ50のフック部54に係合し、スライダ50をコイルバネ41の付勢力に抗して+Y方向に移動させることができる。
【0027】
スライダ50が+Y方向に移動する際には、スライダ50の凹部53Aに係合していたストッパ部材70の係合部73(
図12の(静止時)参照)が、凹部53Aに隣接する隆起部57によって+Z方向に押される。上述したように、ストッパ部材70の係合部73は、フィルムパック30の後側フレーム32によって-Z方向に押されているが、この後側フレーム32による押圧力は、ストッパ部材70が+Y方向に移動する際にスライダ50の隆起部57から受ける力よりも小さいため、ストッパ部材70の係合部73を隆起部57に沿って+Z方向に移動させつつ、スライダ50を+Y方向に移動させることができる。
【0028】
駆動レバー83の回転によるスライダ50の+Y方向への移動が完了したときには、
図12の(フィルム送出中)に示すように、ストッパ部材70の係合部73は、凹部53Aに隣接する凹部53Bの傾斜面に位置しているため、駆動レバー83の腕部82とスライダ50のフック部54との係合が解除された後は、ストッパ部材70の係合部73は、フィルムパック30の後側フレーム32からの押圧力によってこの傾斜面に沿って-Z方向に移動し、これに伴いスライダ50は+Y方向に移動する。
【0029】
このようにして、撮影動作後の可動部材14の+Y方向への移動により、ストッパ部材70の係合部73が凹部53Aから隣接する凹部53Bに距離P1(=P2)だけ移動し、スライダ50はストッパ部材70の係合部73と凹部53Bとの係合によりこの位置に保持される(
図12の(フィルム送出完了)参照)。このとき、
図11の(フィルム送出完了)に示すように、ドア部材20の窓21の+Z方向側にはスライダ50の「10」の表示56Bが位置する。この「10」の表示56Bは、フィルムパック30内の写真フィルムFの残枚数を示すものである。したがって、カメラ装置1を使用するユーザは、ドア部材20の窓21から見える「10」の表示56Bによりあと10枚写真が撮れることを知ることができる。
【0030】
この状態でユーザがレリーズボタン9を押すと、撮影動作が開始され、1枚目の写真フィルムFに露光が行われて撮影が行われる。撮影動作後は上述と同様にして、可動部材14が+Y方向に移動され、これに伴い、スライダ50が+Y方向に距離P1(=P2)だけ移動し、ドア部材20の窓21には、フィルムパック30内の写真フィルムFの残枚数である「9」が表示される。
【0031】
以降は同様にして、撮影動作が終わる度に、スライダ50が+Y方向に距離P1(=P2)だけ移動し、ドア部材20の窓21にはフィルムパック30内の写真フィルムFの残枚数が表示されることとなる。
【0032】
このように、本実施形態によれば、駆動レバー83の腕部82がスライダ50のフック部54と係合することでスライダ50を+Y方向に移動させることができ、スライダ50の移動後はストッパ部材70の係合部73がスライダ50の凹部53に係合することでスライダ50をその位置に保持することができる。したがって、所望のタイミングで駆動レバー83を動作させることで、ドア部材20の窓21から見える表示を変化させることができる。このように、LCDパネルや回路基板などの高価な部品を必要とすることなく、安価かつコンパクトな構成で所望のカウント表示を実現することができる。
【0033】
例えば、フィルムパック30内の写真フィルムFをすべて使い切ったときには、フィルムパック30を新しいものに交換することになるが、その場合には、
図4に示すように、ドア部材20を開けてフィルムパック30が新しいものに交換される。
図4に示すように、ドア部材20が開けられると、それまで表示器40のストッパ部材70を-Z方向側に押していたフィルムパック30の後側フレーム32が、ストッパ部材70から離れてしまうため、表示器40のストッパ部材70はスライダ50の凹部53との係合状態を保持することができなくなり、スライダ50はコイルバネ41の付勢力によって
図7及び
図9に示す初期状態(窓21から「S」が見える状態)に移動する。したがって、新しいフィルムパック30が装填されたばかりの状態では、窓21から必ず「S」が見える状態となる。
【0034】
なお、ドア部材20を開いた際に、ストッパ部材70とスライダ50の凹部53との係合状態が解除されやすくなるように、ストッパ部材70をスライダ50から離れるように付勢する付勢部材(ねじりコイルバネや板バネなど)を配置してもよい。
【0035】
上述の実施形態では、表示器40をドア部材20に設けているが、カメラ装置1のハウジングを構成する他の部材、例えばリアカバー3に表示器40を設けてもよい。また、上述の実施形態では、表示器40は、フィルムパック30内の写真フィルムFの残枚数を表示するものとしているが、写真フィルムFの残枚数以外のカウント表示のために表示器40を用いてもよい。したがって、そのような場合には、カメラ装置1は、ドア部材20やフィルムパック30を含んでいる必要はない。
【0036】
以上述べたように、本発明の一態様によれば、安価かつコンパクトな構成で所望のカウント表示を実現することが可能なカメラ装置が提供される。具体的には、本発明に係るカメラ装置は、以下のような構成を採用することができる。
【0037】
(構成1)
カメラ装置は、ハウジングと、上記ハウジングの内部で移動方向に沿って移動可能なスライダとを備える。上記スライダは、上記移動方向に沿って表示が変化する表示面と、上記移動方向に沿って並んで形成される複数の凹部と、上記移動方向に沿って並んで形成される複数のフック部とを有する。上記カメラ装置は、上記スライダを上記移動方向に付勢する付勢部材と、上記スライダの上記複数のフック部のうちの1つのフック部に係合して上記付勢部材が付勢する方向とは反対の方向に上記スライダを移動するように構成される駆動部と、上記駆動部による上記スライダの移動を許容するような力で上記スライダに向けて押されて上記複数の凹部のうちの1つの凹部と係合可能な係合部を有するストッパ部材とを備える。上記ハウジングは、上記スライダの上記表示面の一部を外側から視認させるための窓を有する。
【0038】
このような構成によれば、駆動部がスライダのフック部と係合することでスライダを移動方向に移動させることができ、スライダの移動後はストッパ部材がスライダの凹部に係合することでスライダをその位置に保持することができる。したがって、所望のタイミングで駆動部を動作させることで、ハウジングの窓から見える表示を変化させることができる。このように、本発明に係るカメラ装置によれば、LCDパネルや回路基板などの高価な部品を必要とすることなく、安価かつコンパクトな構成で所望のカウント表示を実現することができる。
【0039】
(構成2)
上記構成1において、上記ハウジングは、開口を開閉可能なドア部材を含んでいてもよい。この場合において、上記スライダは、上記ドア部材の内側に配置されることが好ましい。
【0040】
(構成3)
上記構成2において、上記ハウジングは、上記ハウジングの上記開口を通じて写真フィルムパックを出し入れできるように構成されることが好ましい。
【0041】
(構成4)
上記構成3において、上記ストッパ部材は、上記ハウジングの内部に収容された上記写真フィルムパックにより上記スライダに向けて押されるように構成されることが好ましい。このような構成とすれば、写真フィルムを収容する写真フィルムパックをストッパ部材を押すためにも用いることができるため、ストッパ部材を押すための専用部材が必要なくなり、部品点数の減少と構成のコンパクト化を実現することができる。
【0042】
(構成5)
上記構成3又は4において、上記スライダの上記表示面には、上記ハウジングの内部に収容された上記写真フィルムパック内の写真フィルムの残枚数を表す表示が上記移動方向に沿って順番に形成されていてもよい。このような構成によれば、安価かつコンパクトな構成で写真フィルムパック内の写真フィルムの残枚数を表示することが可能となる。
【0043】
(構成6)
上記構成5において、上記駆動部は、撮影動作に連動して上記スライダを移動させるように構成されることが好ましい。
【0044】
(構成7)
上記構成1から6のいずれかにおいて、上記スライダの上記複数の凹部の上記移動方向に沿ったピッチと上記複数のフック部の上記移動方向に沿ったピッチとは同一であることが好ましい。
【0045】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0046】
1 カメラ装置
2 フロントカバー
3 リアカバー
4 トップカバー
4A 排出スリット
5 レンズ鏡筒
12 フレーム部材
13 シャフト
14 可動部材
15 フック
16 プッシャ
18 内側壁
20 ドア部材
21 窓
22 ヒンジ部
25 ガイド溝
30 フィルムパック
32 後側フレーム
40 表示器
41 コイルバネ(付勢部材)
42 カバー
44 支持プレート
50 スライダ
52 スライダ本体
53 凹部
54 フック部
56 表示
57 隆起部
70 ストッパ部材
71 軸部
72 腕部
73 係合部
80 駆動部
81 軸部
82 腕部
83 駆動レバー
85 ねじりコイルバネ
F 写真フィルム
S 開口