(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049658
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20240403BHJP
【FI】
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156009
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 美和
(72)【発明者】
【氏名】出 健志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 法光
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸次
(72)【発明者】
【氏名】牧瀬 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】森谷 可南子
(72)【発明者】
【氏名】城田 昭彦
【テーマコード(参考)】
4D037
【Fターム(参考)】
4D037AA01
4D037AA05
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB01
4D037BB02
4D037CA01
4D037CA08
4D037CA16
(57)【要約】
【課題】被処理水の水質変動に応じた紫外線照射量を照射可能とし、動力コストを抑え、かつ、安全な被処理水を提供する。
【解決手段】円筒状の通水管と、該通水管と交差する向きで該通水管に接続された円柱状のランプハウジング管と、該ランプハウジング管内に該ランプハウジング管の延在方向に沿って配設され、該通水管を流れる被処理水の流れる方向と交差する向きに延在する複数本の紫外線ランプと、該紫外線ランプの中心軸の鉛直上又は鉛直下となる位置で、該ランプハウジング管の壁部に固定された紫外線モニタ用センサと、を備え、前記紫外線ランプと該紫外線モニタ用センサとの距離が、該紫外線モニタ用センサにより測定された紫外線強度、及び前記通水管を流れる被処理水の流量値をパラメータとする一つの関数で紫外線照射量を近似できる距離となる位置に、該紫外線ランプが配設された紫外線照射装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の通水管と、
該通水管と交差する向きで該通水管に接続された円柱状のランプハウジング管と、
該ランプハウジング管内に該ランプハウジング管の延在方向に沿って配設され、該通水管を流れる被処理水の流れる方向と交差する向きに延在する複数本の紫外線ランプと、
該紫外線ランプの中心軸の鉛直上又は鉛直下となる位置で、該ランプハウジング管の壁部に固定された紫外線モニタ用センサと、を備え、
前記紫外線ランプと該紫外線モニタ用センサとの距離が、該紫外線モニタ用センサにより測定された紫外線強度、及び前記通水管を流れる被処理水の流量値をパラメータとする一つの関数で紫外線照射量を近似できる距離となる位置に、該紫外線ランプが配設された紫外線照射装置。
【請求項2】
前記紫外線ランプと前記紫外線モニタ用センサとの距離が、該紫外線モニタ用センサにより測定された紫外線強度、及び前記通水管を流れる被処理水の流量値をパラメータとする前記一つの関数で紫外線照射量を近似できる距離となるように、前記ランプハウジング管の径が設定された請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記紫外線モニタ用センサにより測定された紫外線強度、及び前記通水管を流れる被処理水の流量値が入力されることで、前記被処理水に対する紫外線照射量を目標とする紫外線照射量になるように計算された紫外線強度を出力して、該紫外線ランプの紫外線照射量を制御する紫外線照射量制御部を備えた請求項1又は2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記紫外線照射量制御部に入力される前記流量値を、流量計が測定した測定値ではなく任意の流量値とする請求項3に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記被処理水の流量値毎に、前記一つの関数を該一つの関数に類似する別の関数に切り替える請求項1又は2に記載の紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の消毒設備においては、例えば上下水道(水道水または地下水等)の殺菌若しくは消毒、工業用水の脱臭、脱色、殺菌若しくは消毒、パルプの漂白、又は医療機器の殺菌若しくは消毒等を行うために、オゾンや塩素等の薬品が用いられている。しかし、このような消毒設備では、オゾンや塩素等の薬品を被処理水に均一に溶け込ませる必要があるため、上記薬品を攪拌させる被処理水を溜める貯留槽(滞留槽)やスプレーポンプ等の攪拌装置が必要となり、被処理水の水質や水量の変化に対し即時に対応することが困難である。
【0003】
このような問題に対応すべく、紫外線照射によって、上下水道の殺菌若しくは消毒、又は工業用水の殺菌若しくは消毒を行う紫外線照射装置がある。この紫外線照射装置は、被処理水を、通水管を通過させつつ紫外線ランプから紫外線照射を行い、紫外線ランプの調光制御を行うことで被処理水の水質や水量の変化に対し即時に対応することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4168348号公報
【特許文献2】特許第6422900号公報
【特許文献3】特開2011-136062号公報
【非特許文献1】公益財団法人水道技術研究センター,紫外線照射装置 JWRC技術審査基準 2019年度版(2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線照射装置においては、紫外線が照射される数秒間で殺菌・不活化されるため、正確な紫外線照射量を把握する必要がある。しかし、被処理水の流量や水質の変動が大きい施設に適用する場合、常に定格で運転していると、被処理水の流量が低下した場合や、被処理水の水質が上がり紫外線透過率が計画条件よりも改善した場合には、必要以上の紫外線が照射されることになり、紫外線ランプを発光させるための電力の無駄が発生する。逆に、被処理水の水質が悪化した場合等は、紫外線透過率の下降に応じて紫外線照射量も増加させる必要がある。
【0006】
紫外線ランプを備える紫外線照射装置は、例えば、円筒形の通水管と有底円筒状に構成されたランプハウジングとが水平面内において十字状に交差するように接合されて形成されている。そして、ランプハウジング内部に、ランプハウジングの中心軸と平行に、石英ガラス等から成り内部に紫外線ランプを収納した保護管が複数本配設された構造となっている。
【0007】
紫外線照射装置は、紫外線ランプの発光強度(紫外線強度)を監視するための紫外線モニタ用センサを備えている。この紫外線モニタ用センサは、紫外線ランプのすぐ近くに配設されている。そして、紫外線照射装置における紫外線照射量(mJ/cm2)は、紫外線強度(mW/cm2)と紫外線照射時間(s)との積で定義される。また、被処理水中の微生物への紫外線照射量を把握するためには、水質指標となる紫外線透過率を測定する紫外線透過率計が必要となる。しかし、紫外線透過率計は、高額であり、維持管理の負担が大きい。
【0008】
紫外線ランプの一例である中圧水銀ランプは、低圧水銀ランプに比べ紫外線強度が強く、大規模の被処理水に対する紫外線処理に向いており、ランプ出力を調整することで、幅広い領域で調光できるという特徴を有している。中圧水銀ランプを備える紫外線照射装置は、この特徴を活かした調光制御によりランニングコストの削減ができ、安全な処理水を提供でき、また、紫外線透過率計を不要とする調光制御を実施できる。しかし、条件によっては、設計が難しい位置に紫外線モニタ用センサを位置させる必要があったり、紫外線モニタ用センサを移動させる機構を備えたりする必要がある。
【0009】
よって、被処理水の水質の変動(紫外線透過率の変動)に応じた紫外線照射量を照射可能とし、動力コストを抑え、かつ、安全な被処理水を提供すべく、紫外線モニタ用センサが取り付け容易で、調光制御が可能となる位置に紫外線ランプを設置した紫外線照射装置を提供するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本実施形態の紫外線照射装置は、円筒状の通水管と、該通水管と交差する向きで該通水管に接続された円柱状のランプハウジング管と、該ランプハウジング管内に該ランプハウジング管の延在方向に沿って配設され、該通水管を流れる被処理水の流れる方向と交差する向きに延在する複数本の紫外線ランプと、該紫外線ランプの中心軸の鉛直上又は鉛直下となる位置で、該ランプハウジング管の壁部に固定された紫外線モニタ用センサと、を備え、前記紫外線ランプと該紫外線モニタ用センサとの距離が、該紫外線モニタ用センサにより測定された紫外線強度、及び前記通水管を流れる被処理水の流量値をパラメータとする一つの関数で紫外線照射量を近似できる距離となる位置に、該紫外線ランプが配設されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態の紫外線照射装置が組み込まれた上水処理システムの一例を示すフロー図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の紫外線照射装置を側面から見た構成図である。
【
図3】
図3は、紫外線照射装置のランプハウジング管をZ軸方向に沿って切断して、紫外線モニタ用センサが収納された測定孔に配設された測定窓と紫外線ランプが収納された1本の保護管との間の距離を示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、紫外線照射装置をX軸Y軸平面に沿って切断して示す横断面図である。
【
図5】
図5は、通水試験装置の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、紫外線強度測定試験の試験状態の一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、(式1)による紫外線強度についての計算値と、通水試験装置で測定した紫外線強度の実測値との比較を示す解析結果の一例を示すプロット図である。
【
図8】
図8は、流量値あたりの相対紫外線強度とRED
CFDとの関係を示すプロット図である。
【
図9】
図9は、紫外線照射装置における、紫外線照射量制御部による紫外線ランプの出力制御手順の第一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、紫外線照射装置における、紫外線照射量制御部による紫外線ランプの出力制御手順の第二例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、紫外線照射装置における、紫外線照射量制御部による紫外線ランプの出力制御手順の第三例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本実施形態の紫外線照射装置2が組み込まれた上水処理システム1における被処理水の流れの概要を、
図1を参照して説明する。上水処理システム1は、例えば浄水処理場の紫外線消毒システムとして構成されている。まず、例えば川、湖または地下水から原水を被処理水Wとして取水し、取水した被処理水Wを図示しない凝集沈殿槽に導入し、これに凝集剤を添加して懸濁物の土粒子等を凝集・沈殿させる。次に、凝集沈殿槽の上澄み水を活性炭濾過槽に送って異物を濾過する。濾過された被処理水Wは、給水配管11に流入し、給水配管11に設置された流量計12を通過する。流量計12は、例えば、電磁式、差圧式、超音波式、渦式、又は容量式の流量計12が用いられるが、本例に限定されるものではない。なお、給水配管11には、紫外線照射装置2における被処理水Wの流量を調整する図示しない流量調整弁が配設されていてもよい。
【0013】
濾過され流量計12を通過した被処理水Wが紫外線照射装置2に流入する。そして、紫外線照射装置2内において被処理水Wを通過させるとともに、被処理水Wに対して紫外線(UV)を照射し、被処理水Wを紫外線照射によりウィルスや細菌等の微生物を殺菌、消毒、又は不活性化する。なお、紫外線照射装置2は、例えば複数並べて上水処理システム1に組み込まれており、交換やメンテナンス、又は故障等が発生した場合に、互いがバックアップ可能となるように、複数系統の被処理水Wの流路が確保されていてもよい。
【0014】
紫外線が照射された被処理水Wは、次いで、排水配管13を通り被処理水Wを消毒するための浄水池14に送られて、浄水池14において消毒剤注入装置15によって消毒剤が注入(例えば、塩素注入等)された後、一般家庭や事業所などに配水される。
【0015】
図2~
図4に示す紫外線照射装置2は、円筒状の通水管20と、通水管20と直交する向きで通水管20に接続された円柱状(有底円筒状)のランプハウジング管21と、ランプハウジング管21内にランプハウジング管21の延在方向に沿って配設され、通水管20を流れる被処理水Wの流れる方向(Y軸方向)と直交する方向(X軸方向)に延在する複数本の紫外線ランプ22と、を備えている。なお、以下の説明では、X軸Y軸Z軸直交座標系を用いる。X軸方向は、+X方向と-X方向とを含む。Y軸方向は、+Y方向と-Y方向とを含む。Z軸方向は、+Z方向(鉛直上方向)と-Z方向(鉛直下方向)とを含む。例えば、X軸Y軸平面は水平面であり、Z軸方向は鉛直方向である。
【0016】
図2、
図4に示すように、Y軸方向に延在する円筒状の通水管20は、筒部200、筒部200の一端側(-Y方向側)に形成され処理対象となる被処理水Wを給水する給水口201、及び筒部200の他端側(+Y方向側)に形成され被処理水Wを排水する排水口202を有している。また、筒部200の中央部分には、水平面内(X軸Y軸平面内)において通水管20と例えば直交するX軸方向に延在する円柱状(有底円筒状)のランプハウジング管21が一体的に配設されている。即ち、通水管20とランプハウジング管21とは、2つの円筒がそれぞれの中心軸の中央部分で交差するように結合している。そして、給水ポートである給水口201から排水ポートである排水口202に向かう方向に被処理水Wを通過させつつ被処理水Wに対して、ランプハウジング管21内で紫外線ランプ22から紫外線を照射できる。なお、ランプハウジング管21と通水管20とは、直交するように結合された形態に限定されず、直交ではない角度で交差して結合されていてもよい。また、この場合には、通水管20を流れる被処理水Wの流れる方向と紫外線ランプ22とが直交ではない角度で交差していてもよい。
【0017】
図2、
図4に示す給水口201は、給水口201の径方向に延出されたフランジ部201aを備えており、フランジ部201aには図示しないボルト孔が形成されている。また排水口202は、排水口202の径方向に延出されたフランジ部202aを備えており、フランジ部202aには図示しないボルト孔が形成されている。そして、フランジ部201aに、
図1に示す給水配管11がボルト接続される。また、フランジ部202aに、
図1に示す排水配管13がボルト接続される。例えば、
図4に示すように、給水口201の直径、及び排水口202の直径は、筒部200の内径と略同径となっている。
【0018】
ランプハウジング管21には、例えば、2本の保護管23が配設されている。保護管23は、紫外線が透過可能な誘電体で形成されており、例えば石英ガラスで円筒状に形成されている。そして、各保護管23の内部に、紫外線ランプ22がそれぞれ1本ずつ挿通されている。
【0019】
例えば、
図2~
図4に示すように、各保護管23は、ランプハウジング管21の内部に、給水口201から排水口202に向かう方向であるY軸方向と交差するX軸方向に沿って延在するように配設されている。具体的には、本実施形態の保護管23は、ランプハウジング管21の内部に、ランプハウジング管21のX軸方向における円形の側壁21cと、側壁21cとX軸方向において対向する側壁21dと、を貫通して設けられている。保護管23は、ランプハウジング管21の側壁21c、及び側壁21dに対して、例えば図示しないOリング等のシール部材を介して水密状態で固定されているとともに、各端部分が側壁21c、及び側壁21dから外側に所定長さ突出している。
【0020】
また、各保護管23に1本ずつ紫外線ランプ22が、挿通された状態で固定されている。なお、本実施形態では、保護管23及び紫外線ランプ22をそれぞれ2本ずつ備えた構成としているが、紫外線照射装置2において必要となる紫外線量に応じて、保護管23及び紫外線ランプ22をそれぞれ1本、3本~5本、又は5本以上備えた構成としてもよい。各保護管23、及び各紫外線ランプ22は、例えば、互いの中心軸がX軸方向に平行となっており、かつ重なった状態になっている。
【0021】
図2、
図3に示すように、紫外線ランプ22は、例えば、その両端部に紫外線ランプ22へ給電を行うための配線が接続され、該配線を介して、電力の供給を行う電力供給源228に接続されている。なお、
図4においては、電力供給源228を省略して示している。紫外線ランプ22は、例えば、低圧水銀ランプ又は中圧水銀ランプであり、波長200nm~300nmの範囲の紫外線を出射できる。例えば、本実施形態の紫外線ランプ22は、紫外線を発光する発光部の長さ(発光長)が、通水管20の内径に対して、例えば、-10%~+10%以内の長さのものを用いているが、これに限定されるものではない。また、各紫外線ランプ22のランプ出力は、一例として12kWである。
【0022】
図2、
図3に示すように、例えば、ランプハウジング管21の例えば上方側(天井側)の壁部213は、紫外線モニタ用センサ28を固定設置するための測定室215を備えている。なお、
図3は、
図2に示す2本の紫外線ランプ22のうちの一方の紫外線ランプ22、及び2つの紫外線モニタ用センサ28のうちの一方の紫外線モニタ用センサ28について、ランプハウジング管21とともにZ軸方向に沿って切断した縦断面図である。測定室215は、例えば、
図2に示すように、ランプハウジング管21の上方側の壁部213にY軸方向に間隔を空けて二つ配設されている。測定室215は、例えば、Z軸方向に延びる円筒状に形成されており、各測定室215内にそれぞれ取り付けられた紫外線モニタ用センサ28の受光面は、ランプハウジング管21内側(-Z方向側)に向いている。測定室215は、ランプハウジング管21の壁部213に対して、例えば図示しないOリング等のシール部材を介して水密状態で固定されている。また、測定室215の下端部分の開口には、ガラス材等からなり、紫外線ランプ22がランプハウジング管21内で出射した紫外線を透過させる板状の測定窓216が配設されている。
【0023】
本実施形態においては、2本の保護管23にそれぞれ収納された紫外線ランプ22の中心軸の鉛直方向(Z軸方向)における直上に、1つの測定室215、1つの測定室215に配設された測定窓216、及び1つの測定室215に固定された紫外線モニタ用センサ28がそれぞれ位置している。なお、2本の保護管23にそれぞれ収納された紫外線ランプ22の中心軸の鉛直方向(Z軸方向)における直下に、1つの測定室215、1つの測定室215に配設された測定窓216、及び1つの測定室215に固定された紫外線モニタ用センサ28が、ランプハウジング管21の底側壁部214に取り付けられて位置していてもよい。
【0024】
図2、
図3に示す紫外線モニタ用センサ28は、例えば、主に紫外線シリコンフォトダイオードを受光面に備える構造となっており、フォトダイオードが鉛直方向下側に位置する紫外線ランプ22が出射した紫外線を受光することで反応して電流が流れる。そして、受光した紫外線の強度に応じて流れる電流値が変化し、その電流値を測定することで紫外線強度を測定できる。
【0025】
例えば、
図3、
図4に示すようにランプハウジング管21は、保護カバー29によって覆われている。保護カバー29は、紫外線ランプ22から照射された紫外線光227がランプハウジング管21の外部に漏れてしまうことがないように遮蔽するものであり、ランプハウジング管21の側壁21cと側壁21dの外側に設けられている。なお、
図1、
図2においては、保護カバー29を省略して示している。
【0026】
紫外線照射装置2は、主に紫外線ランプ22の被処理水Wに対する紫外線照射量の制御等を行う紫外線照射量制御部27を備えている。紫外線照射量制御部27は、CPU(Central Processing Unit)などの制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、不揮発性の外部記憶装置(磁気ディスク装置等)と、状態表示を行うための表示装置(インジケータ、液晶パネル等)と、操作パネルなどの入力装置を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0027】
紫外線モニタ用センサ28は、紫外線照射量制御部27に専用線を介して電気的に接続され、紫外線モニタ用センサ28は測定した紫外線強度に応じた電流信号(または電圧信号)を紫外線照射量制御部27に送出する。
【0028】
図1、
図2に示す流量計12は、紫外線照射量制御部27に専用線を介して電気的に接続され、流量計12は測定した流量値、即ち、通水管20に流入する被処理水Wの流量値に応じた電流信号または電圧信号を紫外線照射量制御部27に送出する。
【0029】
紫外線照射量制御部27は、無線又は有線の通信経路を介して電力供給源228に制御信号を送出できる。ここで、紫外線照射量制御部27は、流量計12の出力信号、及び紫外線モニタ用センサ28の出力信号を基にして、紫外線ランプ22の出力制御を実施する。
【0030】
本実施形態において、紫外線ランプ22と紫外線モニタ用センサ28との距離を、
図2、
図3に示す紫外線モニタ用センサ28が収納された測定室215に配設された測定窓216と紫外線ランプ22の中心軸との間の距離としてとらえる。測定窓216と紫外線ランプ22の中心軸との間の距離は、以下に説明する所定の距離LAに設計段階の時点で決定されている。なお、以下の説明においては、測定室215に配設された測定窓216と紫外線ランプ22の中心軸との距離について規定しているが、紫外線モニタ用センサ28の受光面と紫外線ランプ22の中心軸との距離を規定してもよい。
【0031】
該所定の距離LAとは、許容される被処理水Wの流量値範囲内の任意の流量値(m3/H)において、被処理水Wの紫外線透過率(例えば波長254nmの紫外線の透過率(%))、または紫外線ランプ22の出力が変化した場合でも、紫外線モニタ用センサ28により測定される紫外線強度と被処理水Wに対する紫外線照射量との間に相関関係が成立し、紫外線モニタ用センサ28により測定された紫外線強度、及び通水管20とランプハウジング管21とを流れる被処理水Wの流量値をパラメータとする一つの関数で該紫外線照射量を近似できる距離である。
【0032】
即ち、測定窓216を備える測定室215と共に、紫外線モニタ用センサ28は、設置しやすいランプハウジング管21の壁部213に固定されており、かつ、紫外線ランプ22の中心軸との間の距離が所定の距離LAになるように紫外線ランプ22を収納する保護管23がランプハウジング管21に固定されていることで、被処理水Wの紫外線透過率や流量値が変化した場合であっても、紫外線ランプ22の適切な紫外線照射量を紫外線照射量制御部27により計算可能となり、よって、調光制御が可能となる。
【0033】
ここで、紫外線照射量制御部27による調光制御を可能とする上記一つの関数、及び上記所定の距離LAは、例えば、以下の試験、および紫外線照射量解析に基づいて決定されたものである。
【0034】
以下に示す試験は、紫外線ランプ22と紫外線モニタ用センサ28との位置関係を変化させた場合における、紫外線モニタ用センサ28で測定される紫外線強度の変化を調べたものである。即ち、本試験は、紫外線ランプ22の中心軸と紫外線モニタ用センサ28を収納する測定室215の測定窓216との間の距離が異なる複数の場合について、被処理水W中の間隔(例えば、1cm間隔)を波長254nmの紫外線が通過する割合である紫外線透過率と紫外線ランプ22の出力制御値とが変化したときの、紫外線モニタ用センサ28で測定される紫外線強度の変化を調べた試験である。そして、本試験を実施するにあたって、
図5に示す通水試験装置5を使用した。
【0035】
図5に示す通水試験装置5は、原水W1を蓄える原水槽50と、原水槽50に蓄えられた原水W1を送出するポンプ51と、原水W1を攪拌して水質を均一にするためのラインミキサ52と、紫外線モニタ用センサ28(
図5には不図示)が設置された試験用リアクタ53と、通水試験装置5における原水W1の流量値を測定するための流量計54と、を備えている。そして、通水試験装置5は、流量計54の流出側を、循環用配管55を介して原水槽50につなぐことにより原水W1を循環させる構成となっている。そして、
図6に示す試験用リアクタ53に配設した紫外線モニタ用センサ28を用いて、循環紫外線強度を測定した。
【0036】
試験用リアクタ53は、例えば、桶状に形成されており、試験用リアクタ53の例えば
図6に示す側壁530に水密性を保ちつつ配設された測定室531に、紫外線モニタ用センサ28が配設されている。紫外線モニタ用センサ28は、側壁530の測定室531に試験用リアクタ53の外部から内部に向かうように挿通されている。また、紫外線モニタ用センサ28の該内部側に向く受光面の前方には、ガラス等からなり紫外線を透過させる板状の測定窓532が配設されている。
【0037】
試験用リアクタ53内には、例えば、紫外線強度の測定試験毎に、保護管23を紫外線モニタ用センサ28から所定距離ずつ離れていくように1本配設した。保護管23内には、紫外線ランプ22が収納されている。そして、保護管23の中心軸と紫外線ランプ22の中心軸とは合致しており、紫外線モニタ用センサ28の受光面の中心線上に各紫外線ランプ22の中心軸が位置している。
【0038】
試験では、
図6に示すように紫外線ランプ22の中心軸と紫外線モニタ用センサ28を収納する測定室531の測定窓532との間の距離Lが異なる状態の4点で、紫外線ランプ22の出力制御値及び原水W1の紫外線透過率とを変化させて、紫外線強度を測定した。説明上、
図6に示す4本の保護管23について仮の番号を付す。即ち、
図6において、最も紫外線モニタ用センサ28に近い位置に配設した際の保護管23を一番目の保護管23とし、紫外線モニタ用センサ28から離れていく順に2番目の保護管23、3番目の保護管23、4番目の保護管23とする。測定毎における、測定窓532と一番目の紫外線ランプ22の中心軸との距離=距離L1、測定窓532と二番目の紫外線ランプ22の中心軸との距離=距離L2、測定窓532と三番目の紫外線ランプ22の中心軸との距離=距離L3、及び測定窓532と四番目の紫外線ランプ22の中心軸との距離=距離L4とした。
【0039】
また、紫外線強度Sについて理論的に算出するべく、被処理水である原水W1の紫外線透過率、紫外線ランプ22の紫外線出力制御値、および紫外線モニタ用センサ28と紫外線ランプ22との距離Lを変数とした下記の(式1)で、紫外線強度Sを定義した。ここで、下記(式1)における、係数a、係数b、係数c、係数d、及び係数eは、上記に示す通水試験装置5で測定した紫外線強度の実測値等に基づいて決定することができる。
【数1】
(式1)において、S=紫外線強度であり、UVT%=波長254(nm)の紫外線の透過率(%)であり、P%=紫外線ランプ22の出力制御値(%)であり、L=紫外線モニタ用センサ28と紫外線ランプ22との距離(cm)である。なお、上記試験においては、紫外線モニタ用センサ28と紫外線ランプ22との距離を、紫外線ランプ22の中心軸と紫外線モニタ用センサ28を収納する測定室531の測定窓532との間の距離としてとらえている。
【0040】
図7は、紫外線強度Sについての(式1)による計算値と、
図5、
図6に示す通水試験装置5で紫外線モニタ用センサ28が測定した紫外線強度の実測値との比較を示すものである。縦軸に紫外線強度の実測値をとり、横軸に(式1)から計算した紫外線強度をとっている。そして、紫外線ランプ22の中心軸と紫外線モニタ用センサ28を収納する測定室531の測定窓532との間の距離L(L=L1、L2、L3、あるいはL4)が異なる4条件ごとに、紫外線透過率(UVT%)、及び紫外線ランプ22の出力制御値(P%)を変化させて紫外線強度をプロットしたものである。
【0041】
図7から、紫外線ランプ22の中心軸と紫外線モニタ用センサ28を収納する測定室531の測定窓532との間の距離Lが短いほど、紫外線モニタ用センサ28の測定した紫外線強度が大きくなることが確認できた。また、(式1)による計算値と、
図5、
図6に示す通水試験装置5における紫外線モニタ用センサ28で測定した紫外線強度の実測値とは高い相関(相関を示す指標R
2=0.9963)を示しており、紫外線モニタ用センサ28と紫外線ランプ22との距離によらず、(式1)により紫外線強度を推定できることを確認した。
【0042】
以下に、
図2に示す紫外線照射装置2における紫外線ランプ22の紫外線照射量を解析する方法について説明する。紫外線照射装置2における紫外線ランプ22の紫外線照射量は、流体解析により仮想粒子の流跡線を求め、仮想粒子の各位置における紫外線強度と照射時間の積とをこの流跡線に沿って積分することで計算される。そして、算出した紫外線照射量と下記の(式2)とから、生物学的線量計で得られた紫外線照射量であり非特許文献1で不活化指標とされるクリプトスポリジウムRED
CFD(以下、RED
CFDとする)が求められる。RED
CFDは、紫外線照射装置2における、制御目標とする紫外線照射量として用いる。なお、紫外線消毒が有効であり塩素消毒では不活化できない耐塩素性病原菌が、クリプトスポリジウムである。
【数2】
i:粒子番号、n:総粒子数、j:分割波長番号、m:波長分割数
D
0j:指標生物の波長別不活化速度定数(mJ/cm
2)
D
ij:粒子iの波長別照射量(mJ/cm
2)
D
S,254:低圧UVランプ光(波長254nm付近)に対する指標生物の不活化曲線のX軸切片(mJ/cm
2)
D
0,254:低圧紫外線ランプ光(波長254nm付近)に対する指標生物の不活化速度定数(mJ/cm
2)
Kj:波長別指標生物紫外線感受性
補足:D
0j=D
0,254/Kj
なお、上記の解析方法の妥当性は、非特許文献1等に基づく。
【0043】
次に、上述した紫外線強度測定試験により得られたデータ及び(式1)と、紫外線照射装置2における紫外線ランプ22の紫外線照射量を解析する上述の方法から得られた(式2)とを用いて、
図2、
図3に示す紫外線ランプ22が収納された測定室215に配設された測定窓216と紫外線ランプ22が収納された保護管23との間の距離について、本実施形態のように該距離が距離LAである場合と、仮に該距離が距離LBである場合とのそれぞれの場合について、後述する相対紫外線強度(S
*/q)とRED
CFDとの関係を
図8のプロット図を用いて示す。即ち、紫外線透過率(UVT%)、紫外線ランプ22の出力制御値%、及び測定窓216と保護管23との間の距離LA、または距離LB別のRED
CFDと相対紫外線強度(S
*/q)との関係を示す。
【0044】
図8のプロット図において、縦軸は、解析で得られたRED
CFDを示している。また、(式1)において紫外線ランプ22の出力制御値P=100%、波長254nmの紫外線の紫外線透過率(UVT%)=100%とした場合における紫外線強度S
0を基準とした相対紫外線強度S
*=(S/S
0)とした。そして、
図8のプロット図において、横軸は、このように規格化した相対紫外線強度S
*を流量値q(単位、m
3/H)で除した流量値qあたりの相対紫外線強度(S
*/q)として示している。
【0045】
プロットF1は、
図2、
図3に示す紫外線ランプ22が収納された測定室215に配設された測定窓216と紫外線ランプ22が収納された保護管23との間の距離Lが、所定の距離LAである場合を示し、プロットF2は、紫外線ランプ22が収納された測定室215に配設された測定窓216と紫外線ランプ22が収納された保護管23との間の距離Lが、所定の距離LAよりも短い距離LBである場合を示している。即ち、
図2、
図3において、紫外線ランプ22が収納された保護管23が、
図2、
図3に示す状態よりも、さらに+Z方向側に仮に位置している場合を、プロットF2は示している。なお、解析条件における流量値qの一例としては、流量値q=50000(m
3/日)=2083(m
3/H)である。
【0046】
図8に示すように、紫外線ランプ22が収納された測定室215に配設された測定窓216と紫外線ランプ22が収納された保護管23との間の距離Lが、所定の距離LAである場合には、プロットF1より、RED
CFDと相対紫外線強度(S
*/q)との関係が、紫外線透過率(UVT%)の値(例えば、UVT%=95%、UVT%=90%)によらず全条件で1つの多項式にまとまる、即ち、一つの関数でRED
CFDを近似できる結果となる。なお、解析条件は、UVT%=95%で紫外線ランプ22の出力制御値P%=30%、50%、又は100%の条件と、UVT%=90%で紫外線ランプ22の出力制御値P%=30%、50%、又は100%の条件とである。
【0047】
これに対して、紫外線ランプ22が収納された測定室215に配設された測定窓216と紫外線ランプ22が収納された保護管23との間の距離Lが、所定の距離LAよりも短い距離LBである場合には、プロットF2より、REDCFDと相対紫外線強度(S*/q)との関係が、紫外線透過率(UVT%)の値(例えば、UVT%=95%、UVT%=90%)によって、異なる2つ多項式に別れる結果、換言すれば、一つの関数でREDCFDを近似できない結果となった。したがって、紫外線モニタ用センサ28と紫外線ランプ22との距離、即ち、本実施形態においては、紫外線ランプ22が収納された測定室215に配設された測定窓216と紫外線ランプ22が収納された保護管23との間の所定の距離LAよりも短くなる位置に、紫外線ランプ22が仮に位置している場合には、異なる2つの多項式のいずれを選択するかの判断のための紫外線透過率を計測する紫外線透過率計を装置内に配設する必要が生じる。
【0048】
対して、紫外線モニタ用センサ28と紫外線ランプ22との距離、即ち、本実施形態においては、紫外線ランプ22が収納された測定室215に配設された測定窓216と紫外線ランプ22が収納された保護管23との間の距離が所定の距離LAとなるように、設計段階において紫外線ランプ22の位置を決定して紫外線照射装置2は製造されているため、紫外線モニタ用センサ28により測定された紫外線強度、及び通水管20とランプハウジング管21とを流れる被処理水Wの流量値qをパラメータとする一つの関数で紫外線照射量を近似できる。よって、紫外線照射装置2は、紫外線透過率計を追加設置することなく、紫外線照射量制御部27は紫外線透過率の変化に応じた適切な調光制御を実施することが可能である。
【0049】
図9は、本実施形態の紫外線照射装置2における、紫外線照射量制御部27による紫外線ランプ22の出力制御手順の一例を示すフローチャートである。以下に、該出力制御手順を第一例として説明する。
【0050】
(紫外線照射装置における出力制御の第一例)
紫外線照射量制御部27が監視・制御を開始する(ステップ0:スタート)と、まず、紫外線照射量制御部27に、目標とする紫外線照射量であるREDCFD、及び紫外線モニタ用センサ28の基準強度が、作業者又は紫外線照射量制御部27自体によって設定される(ステップ1)。なお、基準条件は、(式1)において、波長254nmの紫外線透過率(UVT%)=100%とし、紫外線ランプ22の出力制御値P%=100%とする。基準条件を設定することによって、紫外線照射量制御部27は、(式1)から紫外線強度S0を算出する。なお、例えば、目標とする紫外線照射量であるREDCFD=12mJ/cm2である。
【0051】
続いて、紫外線照射量制御部27には、流量計12の測定値(流量値q)が入力される。また、紫外線照射量制御部27には、紫外線モニタ用センサ28によって測定された紫外線強度Sが入力される(ステップ2)。
【0052】
続いて、紫外線照射量制御部27は、実験的、経験的、又は理論的に選択され紫外線モニタ用センサ28が読み取り可能な下限値と、紫外線モニタ用センサ28で測定された紫外線強度Sとを比較して、紫外線強度Sが下限値を超えているか下限値以下かを判定する(ステップ3)。
【0053】
紫外線照射量制御部27は、紫外線強度Sが該下限値以下と判定した場合には、実際には紫外線強度Sが下限値よりもはるかに小さな値となっていることも考えられ、紫外線モニタ用センサ28による紫外線強度の測定が困難であると判断して、紫外線照射装置2の運転を停止する(ステップ4)。
【0054】
紫外線照射量制御部27は、紫外線強度Sが該下限値を超えていると判定した場合には、相対紫外線強度S*=S/S0を計算する。S0は、前記基準条件における紫外線強度であり、すでに(式1)から算出された値である。
【0055】
次に、紫外線照射量制御部27は、制御目標とする相対紫外線強度S
t
*を、下記の(式3)から導き出される下記(式4)により算出する(ステップ6)。
RED
CFD=g×(S
*/q)
h・・・(式3)
S
t
*=q×(RED
CFD/g)
1/h・・・(式4)
即ち、(式3)は、相対紫外線強度S
*と、流量値qと、によって定義した目標紫外線照射量RED
CFDの計算式であり、
図8に示す一つの関数(プロットF1)の一例である。(式3)における係数g、及びhは、予めの実験または解析により求められている係数である。そして、(式3)から逆算される(式4)で示す制御目標とする相対紫外線強度計算式と、(ステップ1)において予め設定した目標紫外線照射量RED
CFDと、流量計12の測定した流量値qとによって、制御目標とする相対紫外線強度S
t
*を計算する。
【0056】
次に、紫外線照射量制御部27は、紫外線モニタ用センサ28で測定された紫外線強度Sと式(1)とから求めた相対紫外線強度S*=(S/S0)が、(式4)から求められた制御目標とする相対紫外線強度St
*と等しいか否かを比較する(ステップ7)。
【0057】
紫外線照射量制御部27は、相対紫外線強度S*=(S/S0)と制御目標とする相対紫外線強度St
*とが等しい場合は、スタート(ステップ0)に戻り、上記各ステップを繰り返す。即ち、紫外線ランプ22の出力は上げられもしないし、下げられもしない。
【0058】
紫外線照射量制御部27は、相対紫外線強度S*=S/S0と制御目標とする相対紫外線強度St
*とが等しくなく、相対紫外線強度S*>制御目標とする相対紫外線強度St
*であるか否かを比較判定し(ステップ8)、相対紫外線強度S*>制御目標とする相対紫外線強度St
*であると判断した場合は、相対紫外線強度S*と制御目標とする相対紫外線強度St
*とを合致させるべく、電力供給源228を介して紫外線ランプ22の出力を下げて紫外線照射量を下げる制御を実施し(ステップ9)、さらにスタート(ステップ0)に戻り上記各ステップを繰り返す。
【0059】
紫外線照射量制御部27の判定が、相対紫外線強度S*<制御目標とする相対紫外線強度St
*である場合は、紫外線照射量制御部27は、相対紫外線強度S*と制御目標とする相対紫外線強度St
*とを合致させるべく、電力供給源228を介して紫外線ランプ22の出力を上げ紫外線照射量を上げる制御を実施し(ステップ10)、さらにスタート(ステップ0)に戻り、上記各ステップを繰り返す。以上説明したように、紫外線照射量制御部27は、紫外線ランプ22による紫外線照射量を制御する。
【0060】
このように、被処理水Wの紫外線透過率(UVT%)が変動した場合でも、紫外線照射装置2内の紫外線照射量の常時監視と制御が可能となる。このため、流量値が計画流量より小さい場合や、被処理水Wの紫外線透過率が設計条件より高い条件で起こり得る紫外線が過剰となる条件になった場合は、紫外線ランプ22の出力を下げて運転でき、紫外線ランプ22を駆動するための無駄な電量消費を防ぎ、省エネルギーを実現することが可能となる。
【0061】
また、被処理水Wの流量値が計画流量より大きい場合や、被処理水Wの紫外線透過率が計画条件より低い場合に起こりうる紫外線の照射不足を防止することができる。この結果、紫外線照射量不足により、被処理水W内に病原性を保持した微生物が残存することに起因する感染拡大を防止することができる。
【0062】
したがって、紫外線照射量制御部27による上記第一例の出力制御を実施する本実施形態の紫外線照射装置2によれば、装置信頼性を向上し、安全な被処理水Wを提供できる。また、紫外線照射装置2は、紫外線透過率計を必要としない分だけ、製造コストを抑えることができる。また、ランプハウジング管21の取り付け設計が難しい位置に紫外線モニタ用センサ28を位置させる必要が無く、かつ、紫外線モニタ用センサ28を移動させる機構を備える必要もない。
【0063】
本実施形態の紫外線照射装置2においては、例えば、紫外線ランプ22と紫外線モニタ用センサ28との距離が、紫外線モニタ用センサ28により測定された紫外線強度、及び通水管20を流れる被処理水Wの流量値をパラメータとする一つの関数で近似できる距離となるように、ランプハウジング管21の径が紫外線照射装置2の設計段階の時点で設定されてもよい。このようにランプハウジング管21の径が設計段階において設定されていることで、紫外線ランプ22のランプハウジング管21内での位置の設定も容易となる。
【0064】
(紫外線照射装置における出力制御の第二例)
紫外線照射装置2は、紫外線照射量制御部27による紫外線ランプ22の出力制御において、上記第一例の出力制御手順の一部を変更した以下に説明する第二例の出力制御手順を実施してもよい。そして、
図10は、紫外線照射装置2の紫外線照射量制御部27による、紫外線ランプ22の出力制御手順の第二例を示すフローチャートである。
【0065】
出力制御手順の第二例は、出力制御手順の第一例のステップの一部を変更したものであり、同様のステップについては説明を省略する。
図10に示すフローチャートのように、ステップ2において、紫外線照射量制御部27には、流量値qとして、流量計12が計測した実測流量値が入力されず、予め設定された任意の流量値が作業者又は紫外線照射量制御部27自体によって入力される。紫外線照射装置2に流入する被処理水Wの流量値が、予め明らかである場合には、予め設定された任意の流量値が紫外線照射量制御部27に入力されることで、紫外線照射量制御部27による出力制御をよりタイムラグを少なくして実行可能となる。
【0066】
(紫外線照射装置における出力制御の第三例)
紫外線照射装置2は、紫外線照射量制御部27による紫外線ランプ22の出力制御において、上記第一例の出力制御手順の一部を変更した以下に説明する第三例の出力制御手順を実施してもよい。
図11は、紫外線照射装置2の紫外線照射量制御部27による、紫外線ランプ22の出力制御手順の第三例を示すフローチャートである。
【0067】
出力制御手順の第三例は、出力制御手順の第一例のステップの一部を変更したものであり、同様のステップについては説明を省略する。紫外線照射量制御部27は、
図11に示すフローチャートのように、ステップ5を実施した後に、流量計12が測定した被処理水Wの流量値毎に、
図8に示す一つの関数を該一つの関数に類似する別の関数に切り替えるステップ6を実施する。
【0068】
このように、一つの関数を該一つの関数に類似する別の関数に切り替える理由は、流量値qが変化しても、
図2、
図3に示す紫外線ランプ22が収納された測定室215に配設された測定窓216と紫外線ランプ22が収納された保護管23との間の距離は、所定の距離LAで変わらないため、紫外線モニタ用センサ28により測定された紫外線強度、及び通水管20を流れる被処理水Wの流量値qをパラメータとする一つの関数で、紫外線照射量を近似できることは変わらない。即ち、RED
CFDと相対紫外線強度(S
*/q)との関係を紫外線透過率(UVT%)によらず全条件で1つの多項式でまとめられる関数で、紫外線照射量を近似できることは変わらない。しかし、
図8に示す1つの関数の傾き等が、流量値qの変化に伴って多少変化する場合もある。そのため、被処理水Wの流量値qの値ごとに、予め、RED
CFDと相対紫外線強度(S
*/q)との関係が紫外線透過率UVTの値によらず全条件で1つの多項式にまとまる類似する別の関数を複数決定しておき、紫外線照射量制御部27に設定しておく。
【0069】
(式3)で示される一つの関数を類似する別の関数に切り替える具体例としては、例えば、前記(式3)における係数g、及び係数hを係数g1、及び係数h1に変更する。例えば、被処理水Wの流量値qが流量値q1~流量値q2であり、流量値q1~流量値q2において、紫外線照射量制御部27は(式3)、及び式(4)を用いて制御目標とする相対紫外線強度St
*を計算している状態であったとする。ここで、紫外線照射装置2を流れる被処理水Wの流量値qが流量値q1~流量値q2から、増加した流量値q3~流量値q4に変化したとする。この場合に、被処理水Wの変化した流量値q3~流量値q4に対応するべく、(式3)における係数を予め決めておいた係数g1、及びh1に変更することで、一つの関数を類似する別の関数に切り替える。
【0070】
ステップ6を実施した後のステップ7~ステップ11は、
図9に示す出力制御手順の第一例のステップ6~ステップ10と同様である。出力制御手順の第三例においては、ステップ5において、被処理水Wの流量値毎に一つの関数を該一つの関数を類似する別の関数に切り替えることで、ステップ7において制御目標となる相対紫外線強度S
t
*をより高精度で算出できる。
【0071】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1:上水処理システム 11:給水配管 12:流量計 13:排水配管 14:浄水池
15:消毒剤注入装置
2:紫外線照射装置
20:通水管 201:給水口 202:排水口
21:ランプハウジング管 213:ランプハウジング管の壁部 215:測定室
216:測定窓
22:紫外線ランプ 228:電力供給源
23:保護管
27:紫外線照射量制御部
28:紫外線モニタ用センサ
5:通水試験装置 50:原水槽 51:ポンプ 52:ラインミキサ
53:試験リアクタ 531:測定室 532:測定窓
54:流量計 55:循環用配管