(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004966
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】パレットシステムおよび荷物の搬送方法
(51)【国際特許分類】
B65D 19/26 20060101AFI20240110BHJP
B65G 67/02 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
B65D19/26
B65G67/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104892
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 純平
(72)【発明者】
【氏名】堀 一夫
(72)【発明者】
【氏名】神田 陽悦
【テーマコード(参考)】
3E063
3F076
【Fターム(参考)】
3E063AA02
3E063BA01
3E063BA05
3E063BA08
3E063CA04
3E063CA06
3E063CA11
3E063CA25
3E063CA30
3E063DA05
3E063EE01
3E063FF20
3E063GG10
3F076AA01
3F076CA03
3F076DA15
3F076GA05
(57)【要約】
【課題】パレット上に積載した荷物の搬送・荷降ろしを効率的かつ安全に実施できて、荷降ろし後にパレットを容易に回収できるパレットシステムおよび搬送方法を提供する。
【解決手段】パレットシステム1は、パレット本体2と、その対向二側面に着脱可能に結合される一対の厘木3と、を組み合わせて構成される。厘木3はパレット本体2の厚さを上回る高さを有し、厘木3とパレット本体2とが互いの天面を面一に揃え、互いの側面同士を当接させて結合される。パレット本体2と厘木3とは、接地状態でも互いの当接面に対向する厘木の側面側から操作し得る結合手段(ボルト33)を介して結合される。荷物Lの定置後、パレット本体2と厘木3との結合を解除することで、パレット本体2を回収する。パレット本体2の、厘木3が結合されない対向二側面の近傍には、厘木3とパレット本体2との着脱時にパレット本体2の重量を支持する着脱補助手段4も設けられる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレット本体と、前記パレット本体の対向二側面に着脱可能に結合される一対の厘木と、を組み合わせて構成され、
前記厘木は前記パレット本体の厚さを上回る高さを有し、
前記厘木と前記パレット本体とが互いの天面を面一に揃え、互いの側面同士を当接させて結合され、
前記パレット本体と前記厘木との結合手段が、前記パレット本体と前記厘木との当接面に対向する前記厘木の側面側からの操作により、前記厘木が接地した状態で前記厘木と前記パレット本体とを分離し得るものである
ことを特徴とするパレットシステム。
【請求項2】
請求項1に記載されたパレットシステムにおいて、
前記厘木が接地した状態で前記厘木と前記パレット本体とを着脱する際に前記パレット本体の重量を支持する着脱補助手段が、前記パレット本体における前記厘木との当接面に交差する二側面の近傍に設けられた
ことを特徴とするパレットシステム。
【請求項3】
請求項2に記載されたパレットシステムにおいて、
前記着脱補助手段が、前記パレット本体に収納可能に取り付けられて前記パレット本体の下方に出没する支持脚を含んで構成され、
前記支持脚の突出高さが、前記パレット本体の厚さと前記厘木の高さの差に合致するように設定されている
ことを特徴とするパレットシステム。
【請求項4】
請求項3に記載されたパレットシステムにおいて、
前記着脱補助手段が、前記パレット本体に収納可能に取り付けられて前記パレット本体の下方に出没し、突出状態で前記パレット本体を前記厘木の材軸と平行に移動させ得るキャスタを含んで構成され、
前記キャスタの突出高さが前記支持脚の突出高さよりも小さくなるように設定されている
ことを特徴とするパレットシステム。
【請求項5】
請求項4に記載されたパレットシステムにおいて、
前記支持脚と前記キャスタとが、いずれか一方の突出に連動して他方が収納されるように前記パレット本体に組み付けられている
ことを特徴とするパレットシステム。
【請求項6】
請求項5に記載されたパレットシステムにおいて、
前記支持脚および前記キャスタが、前記パレット本体の底面と平行に設置された支軸に取り付けられて、前記支軸周りに回転することで収納または突出するように保持されるとともに、
前記支持脚と前記キャスタとが、前記支軸を中心として互いに90度、異なる向きに結合されて一体に回転する
ことを特徴とするパレットシステム。
【請求項7】
請求項6に記載されたパレットシステムにおいて、
互いに反対向きに突出する二つの支持脚と、一つのキャスタとが、前記支軸を中心として側面視T字形に結合されている
ことを特徴とするパレットシステム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載されたパレットシステムを使用する荷物の搬送方法であって、
前記パレット本体の対向二側面に厘木を結合し、少なくとも前記厘木の間に跨るように荷物を載置した状態で、前記パレット本体と前記厘木とを一体に搬送し、
荷物の保管場所に前記パレット本体および厘木を定置した後、前記パレット本体と前記厘木との結合を解除して、前記パレット本体の天面を前記厘木の天面よりも下降させ、
前記パレット本体を前記厘木の間から抜き出して回収する
ことを特徴とする荷物の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が開示する発明は、建築資材、各種物品その他の荷物を搬送する際に使用されるパレットシステムと、該パレットシステムを使用した荷物の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築工事に使用される資材等を施工現場まで搬送する場合、板状や棒状の資材を平面視矩形のパレット上に積み重ねて崩れないように束縛し、その資材をパレットごとトラックの荷台に積んで搬送し、目的地の施工現場にパレットごと荷降ろして、その資材を上から順に工事に使用する、ということが一般的に行われている。しかし、このような使用態様では、パレット上に積み重ねた資材を全て使用するなどしてパレット上から無くすまで、パレットを回収することができないので、パレットの運用効率が低下してしまう。そこで、例えば特許文献1~3には、資材等を搬送先に荷降ろしした後、早期にパレットを回収することを可能にするパレットの運用方法が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されたパレットの運用方法は、吊り上げ可能に形成されたパレット本体の底面フレームの中間部分に複数本の支持部材を抜き挿し可能に設け、その支持部材の上に資材を積み重ねて搬送し、目的地には底面フレームの枠内に納まる複数本の台材をあらかじめ並置しておいて、その台材の上に資材を降ろしたら支持部材を抜き取って、資材を台材に載せ替えた後、パレットを回収する、というものである。
【0004】
特許文献2に開示されたパレットの運用方法は、大パレット上に小パレットが載置される2段パレットを用いるものである。資材の両端部が小パレットの両側縁部からはみ出すようにして資材を小パレット上に積み重ね、その小パレットを大パレット上に固定して搬送し、目的地で2段パレットを降ろしてから、さらに小パレットを資材とともに降ろし、小パレットの幅よりもやや広い間隔で並置した一対の敷材上に資材の両端部を載せ替えた後、小パレットを抜き取って、小パレットおよび大パレットを回収する、というものである。
【0005】
特許文献3に開示されたパレットの運用方法のうち、同文献に「第2の台板回収方法」)として記載された方法は、資材(同文献中では「被搬送体」)の両端部がパレット(同文献中では「台板」)の両側縁部からはみ出すようにして資材をパレット上に積み重ね、そのパレットを車両の荷台に並置した一対の台座部材上に載置固定して搬送し、目的地にはパレットの幅よりもやや広い間隔で一対の架台を並置しておいて、その間にパレットを降ろし、資材の両端部を棒状架台に載せ替えた後、パレットを抜き取って回収する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-185737号公報
【特許文献2】特開2004-075266号公報
【特許文献3】特開2011-126642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記各特許文献に開示された従来のパレット運用方法はいずれも、パレットを荷降ろしする場所に、あらかじめ2本以上の支持部材(特許文献1では「台材」、特許文献2では「敷材」、特許文献3では「架台」)を、パレットよりもやや広い間隔で、資材の両端部を支持し得るように並置しておく必要がある。したがって、それらの支持部材を保管場所から荷降ろし場所まで運んできたり、荷降ろし場所に適切な間隔で配置したりするのに手間がかかる。また、荷降ろしを補助する作業者等が上方(吊り上げ中の資材)に気を取られて、地面に置いた支持部材に躓く、といった危険もある。
【0008】
本願が開示する発明は前述のような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、パレット上に積載した建築資材その他の荷物を搬送するに際し、その搬送および目的地への荷降ろしを効率的かつ安全に実施することができて、荷降ろし後にはパレットだけを容易に回収できるパレットシステムと、そのパレットシステムを用いた荷物の搬送方法と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するため、本願が開示する発明のパレットシステムは、パレット本体と、前記パレット本体の対向二側面に着脱可能に結合される一対の厘木と、を組み合わせて構成され、前記厘木は前記パレット本体の厚さを上回る高さを有し、前記厘木と前記パレット本体とが互いの天面を面一に揃え、互いの側面同士を当接させて結合され、前記パレット本体と前記厘木との結合手段が、前記パレット本体と前記厘木との当接面に対向する前記厘木の側面側からの操作により、前記厘木が接地した状態で前記厘木と前記パレット本体とを分離し得るものである、との基本的構成を採用する。なお、この発明における厘木の「側面」とは、厘木の材軸に平行な細長い面のうち天面および接地面と交差する二面を指すものとし、厘木の材軸方向両端部に形成されて前記側面と交差する「端面」(木口、小口)とは区別する。
【0010】
さらに、本願が開示する発明のパレットシステムは、前記厘木が接地した状態で前記厘木と前記パレット本体とを着脱する際に前記パレット本体の重量を支持する着脱補助手段が、前記パレット本体における前記厘木との当接面に交差する二側面の近傍に設けられた、との付随的構成を採用する。
【0011】
前記着脱補助手段は、前記パレット本体に収納可能に取り付けられて前記パレット本体の下方に出没する支持脚を含んで構成され、前記支持脚の突出高さが、前記パレット本体の厚さと前記厘木の高さの差に合致するように設定されているものとすることができる。
【0012】
さらに、前記着脱補助手段は、前記パレット本体に収納可能に取り付けられて前記パレット本体の下方に出没し、突出状態で前記パレット本体を前記厘木の材軸と平行に移動させ得るキャスタを含んで構成され、前記キャスタの突出高さが前記支持脚の突出高さよりも小さくなるように設定されている、ものとすることができる。
【0013】
前記支持脚と前記キャスタとは、いずれか一方の突出に連動して他方が収納されるように前記パレット本体に組み付けられていると、より好ましい。
【0014】
その具体的態様としては、前記支持脚および前記キャスタが、前記パレット本体の底面と平行に設置された支軸に取り付けられて、前記支軸周りに回転することで収納または突出するように保持されるとともに、前記支持脚と前記キャスタとが、前記支軸を中心として互いに90度、異なる向きに結合されて一体に回転する、ように構成することができる。さらに、互いに反対向きに突出する二つの支持脚と、一つのキャスタとが、前記支軸を中心として側面視T字形に結合されているように構成することもできる。
【0015】
また、本願が開示する発明に係る荷物の搬送方法は、前述のように構成されるパレットシステムを使用するものであって、前記パレット本体の対向二側面に厘木を結合し、少なくとも前記厘木の間に跨るように荷物を載置した状態で、前記パレット本体と前記厘木とを一体に搬送し、荷物の保管場所に前記パレット本体および厘木を定置した後、前記パレット本体と前記厘木との結合を解除して、前記パレット本体の天面を前記厘木の天面よりも下降させ、前記パレット本体を前記厘木の間から抜き出して回収する、ものとして特徴付けられる。
【発明の効果】
【0016】
前述のように構成されるパレットシステムと、それを使用した荷物の搬送方法によれば、パレット本体と厘木とを一体的に結合した状態で、その上に荷物を積載して搬送し、そのまま目的地に荷降ろしすることができる。つまり、先行技術において必要とされた台材、敷材、架台等の支持部材を、あらかじめ荷降ろしする場所に準備しておく必要がなくなる。したがって、それらの支持部材を保管場所から荷降ろし場所まで運んできたり、荷降ろし場所に適切な間隔で配置したりする手間は不要になり、また、荷降ろしを補助する作業者等が吊り荷に気を取られて支持部材に躓く、といった危険もなくなる。
【0017】
そして、荷降ろし後には、厘木の側方からの操作によって厘木とパレット本体とを分離することにより、厘木の間からパレット本体を抜き出して回収することができる。かくして、荷物の搬送に係る作業効率とパレット本体の運用効率を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本願が開示する発明の一実施形態に係るパレットシステムの全体的構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1のパレットシステムに設けられた着脱補助手段の構成を拡大して示す斜視図である。
【
図3】
図2の着脱補助手段の構成と動作を説明する平面図(上段)および正面図(下段)である。
【
図4】
図2の着脱補助手段の構成と動作を説明する側面図である。
【
図5】前記パレットシステムを用いた荷物の搬送方法において、荷物を積載する態様を示す説明図である。
【
図6】前記パレットシステムを用いた荷物の搬送方法において、荷物をトラックに積み込む態様を示す説明図である。
【
図7】前記パレットシステムを用いた荷物の搬送方法において、着脱補助手段を使用してパレット本体と厘木とを分離する態様を示す説明図である。
【
図8】前記パレットシステムを用いた荷物の搬送方法において、厘木から分離したパレット本体を下降させて回収する態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、パレットシステムの全体的構成を示す。このパレットシステム1は、パレット本体2と、パレット本体2の対向二側面に着脱可能に結合される一対の厘木3と、を組み合わせて構成される。
【0020】
パレット本体2は、荷物等の搬送や保管に使用される一般的なパレットと大略同様の形状を有して、少なくとも一方向の対向二側面に、フォークリフトの爪を挿し込めるフォーク挿入口21が設けられている。図面には合成樹脂製のパレット本体2を例示しているが、パレット本体2の材質はこれに限らず、木製でも金属製でも構わない。また、図示は省くが、例えば側縁部の適所に、揚重用のワイヤーロープやベルトスリングを掛止し得る掛金具等が取り付けられていてもよい。
【0021】
厘木とは、荷物や資材を横積みにして保管する際、地面に敷いて荷物等を地面から浮かせておくための枕木である。前述の特許文献1~3に記載された台材、敷材、架台等も、実質的にはこれと同様の部材である。一般的には十数cm程度の幅の角材を複数本、並置して、荷物等の下にフォークリフトの爪が入る隙間を作るようにすることが多い。この発明では図面に木製の角材を例示しているが、この発明に適用可能な厘木3の材質は木製に限らず、合成樹脂製でも金属製でも構わない。また、厘木3の断面形状については、例えば溝形やH形など、地面に安定して据え置ける適宜の形状を採用することもできる。
【0022】
このパレットシステム1は、厘木3をパレット本体2に結合して使用することを前提としており、厘木3の高さがパレット本体2の厚さを数十mm程度、上回るように設定されている。以下、その差分寸法をHとする。例示形態では、パレット本体2の厚さが120mm、厘木3の高さが150mmに設定されており、したがって差分寸法Hは30mmである。
【0023】
この厘木3が、パレット本体2のフォーク挿入口21を有する側面と交差する対向二側面(交差する二方向にフォーク挿入口21が設けられている場合は、いずれか一方向の対向二側面)に、パレット本体2と互いの天面を面一に揃え、互いの側面同士を当接させて結合される。
【0024】
パレット本体2と厘木3との結合手段には、例えばボルト・ナット締結が利用される。例示形態では、厘木3の横幅方向にパイプナット31が埋め込まれるとともに、パレット本体2の対向二側面にインサートナット32が埋め込まれ、厘木3の側方から長寸のボルト33をねじ込んでパレット本体2側に締結できるように構成されている。このような結合形態によれば、厘木3が接地した状態(地面、舗装面、床面その他、荷物の保管場所の略水平面に据え置かれた状態)でも、その側方からのボルト操作によって厘木3とパレット本体2とを結合・分離することができる。
【0025】
なお、このパレットシステム1では、厘木3の高さがパレット本体2の厚さよりも大きいので、厘木3とパレット本体2との結合・分離に際しては、その高さの差分寸法Hだけパレット本体2を一時的に持ち上げておけると都合がよい。そうすれば、結合時にはパイプナット31とインサートナット32の高さが合致し、分離時にはパレット本体2の重量がボルト33にかからなくなって、ボルト33の挿脱が容易になる。そのためには、地面とパレット本体2との間に、例えば楔状やブロック状の支物(飼い物:かいもの)等を挿し込む、といった方法を採ることができる。ただし、支物を挿し込む方法では、パレット本体2の四隅近傍を一様の高さで持ち上げるのに少々手間がかかり、その抜き取りも面倒である。そこで例示形態では、パレット本体2と、その上に載置された荷物の重量を一時的に支持し得る着脱補助手段4を、パレット本体2における厘木3との当接面に交差する二側面(厘木が結合されない他の対向二側面)の近傍に、二か所ずつ常備している。
【0026】
図2~
図4は、着脱補助手段4の構成例を示す。例示した着脱補助手段4は、パレット本体2のフォーク挿入口21を囲む底板22の縁部に平面視矩形の切欠部23を形成して組み付けられている。底板22の縁部に開口する切欠部23の間口寸法をW、縁部からの奥行き寸法をDとすると、例示形態における切欠部23の間口寸法Wは60mm、奥行き寸法Dは80mmである。また、パレット本体2の底板22の厚さをTとすると、例示形態における底板22の厚さTは20mmである。
【0027】
この切欠部23の内側に、切欠部23よりもやや幅の小さい矩形の板体41が、回転可能に取り付けられている。切欠部23の間口方向に沿う板体41の短辺寸法をP、フォーク挿入口21の奥行方向に沿う板体41の長辺寸法をQ、板体41の厚さをRとすると、例示形態における板体41の短辺寸法Pは50mm、長辺寸法Qは80mm、厚さRは10mmである。
【0028】
板体41の回転を可能にする支軸42は、板体41の長辺寸法Qおよび厚さRを二等分する位置に、板体41の短辺と平行に突設されている。その支軸42は、底板22の切欠部23を囲む両内側面に埋め込まれた軸受部材43に取り付けられている。軸受部材43は、切欠部23の開口縁からパレット本体2の内側へ寸法Sだけ後退し、パレット本体2の底板22の厚さTを二等分する位置に配置されている。例示形態における後退寸法Sは、板体41の長辺寸法Qの1/2よりもやや短い35mmに設定されている。
【0029】
こうして、板体41が、パレット本体2の底面と平行に配置された支軸42を介して、切欠部23内で回転可能に保持される。板体41は、
図4(a)および(c)に示すように、切欠部23内で水平になると、切欠部23の開口縁から端部が突出するように保持される。これにより、パレット本体2の外側からの回転操作を容易に行うことができる。
【0030】
この板体41が水平になると切欠部23内に収納され、直立すると板体41の片側がパレット本体2の底面よりも下方に突出する。その突出高さH’は[Q/2-T/2]であり、例示形態では30mmとなる。つまり、この板体41が縦向きになって下方に突出したときの突出高さH’が、パレット本体2と厘木3の高さとの差分寸法Hに合致する。
【0031】
こうして、下方に突出した板体41の略半部が、接地状態にあるパレット本体2と厘木3との高さの差分寸法Hを埋めることにより、パレット本体2の重量を支持する支持脚44として機能する。地面に置かれたパレット本体2と厘木3とを分離する際に、この支持脚44を立ててパレット本体2を一時的に支持すれば、パレット本体2の上に荷物が載置されていても、厘木3の側方からボルト33を容易に緩めることができる。なお、この支持脚44は、パレット本体2と厘木3とを地面に置いて結合する際にも使用することができる。
【0032】
この板体41の片面にはキャスタ5が取り付けられている。例示形態におけるキャスタ5は、板体41に取り付けられる基板51と、基板51から直立する一対の軸受脚52と、両軸受脚52の間に保持されて回転するホイール53とを備えて、板体41が水平になったときにホイール53の中心が板体41を保持する支軸42の直上または直下に位置するように取り付けられている。そして、ホイール53が支軸42の直下に位置するときのキャスタ5の突出高さ(ホイール53の下端からパレット本体2の底板22までの高さ)Uが、支持脚44の突出高さH‘よりも数mm程度(例示形態では5mm)、小さくなるように設定されている。
【0033】
こうして、互いに反対向きに突出する二つの支持脚44と、それらに直交して突出する一つのキャスタ5とが、支軸42を中心として側面視T字形に結合され、支軸42周りを一体的に回転する。これにより、パレット本体2の底面に、(a)何も突出しない状態、(b)支持脚44が突出する状態、(c)キャスタ5が突出する状態、を、自在に切り替えて作り出すことができる。
図2~
図4、および
図7~
図8には、(a)、(b)、(c)の符号を揃えてこれらの各状態を示している。
【0034】
さらに、例示形態では、板体41を90度ずつ回転させて(a)、(b)、(c)の各状態に位置決めする固定手段として、板体41の長辺側の両側面にボールプランジャ6を取り付けている。ボールプランジャ6の先端は、切欠部23の両内側面に2か所ずつ形成した半球状の凹部24のいずれかに係合して、板体41を水平に保持する。板体41が直立したときは、パレット本体2の底板22の上縁または下縁に係合する。
【0035】
なお、例示形態は、板体41の片側の略半部と他側の略半部とが、互いに反対向きに同じ長さで突出する二つの支持脚44として機能するように構成されているが、板体41の片側だけが支持脚44として機能するように長く突出し、板体41の他側が短いような形態も採用可能である。また、例示形態は、支持脚44とキャスタ5とが一体化され、いずれか一方の突出に連動して他方が収納されるように構成されているが、支持脚44とキャスタ5とが一体化されず、個別に取り出し・収納されるように構成されてもよい。
【0036】
図5~
図8は、このパレットシステム1を用いた荷物の搬送方法の説明図である。
図5に示すように、荷物Lを搬送する際には、あらかじめパレット本体2の対向二側面に厘木3を結合するとともに、キャスタ5を上向きにしてフォーク挿入口21内に位置させ、着脱補助手段4を収納しておく。その状態で、搬送する荷物Lを、その両端部が少なくとも厘木3の間に跨るように、好ましくは厘木3の外側に若干はみ出すようにして載置する。必要に応じて、積み重ねられた荷物Lが崩れないように、ベルトスリング71等でパレット本体2と荷物Lとを一体的に束縛する。そして、
図6に示すように、パレット本体2および厘木3と荷物Lとを一緒にクレーン72で吊り上げるか、あるいはフォークリフトで持ち上げるなどしてトラック73に載せ、目的地まで搬送する。
【0037】
目的地では、
図7(a)に示すように、パレット本体2および厘木3と荷物Lとを一緒に降ろして保管場所に定置し、ベルトスリング71等による束縛を解く。このパレットシステム1は、パレット本体2と厘木3とを結合した状態で荷物Lを搬送するので、荷降ろし場所にあらかじめ台材や敷材等の支持部材を運んできたり配置したりする必要がない。また、荷降ろしを補助する作業者等が吊り荷に気を取られて支持部材に躓く、といった危険もなくなる。
【0038】
続いて、
図7(b)に示すように、フォーク挿入口21の切欠部23に取り付けられている板体41を手で90度回転させて、支持脚44を地面に立てる。支持脚44がパレット本体2を支持している状態で、厘木3の側方からボルト33を緩めて、厘木3とパレット本体2との結合を解除する。
【0039】
厘木3とパレット本体2との結合が解けたら、
図8(c)に示すように、板体41をさらに手で90度回転させて水平にし、キャスタ5を下向きにする。
図7(b)の状態では板体41にパレット本体2の荷重がかかっているが、板体41の上側を手前に引き倒すことで、板体41を容易に回転させることができる。支持脚44に代わってキャスタ5が接地すると、支持脚44の突出高さH’よりもキャスタ5の突出高さUのほうが小さいので、その差だけパレット本体2が下降して、パレット本体2の天面が荷物Lの底面から離れる。その状態で、キャスタ5の転動を利用してパレット本体2を厘木3の間から抜き出せば、パレット本体2だけを速やかに回収することができる。パレット本体2を抜き出し易くするため、パレット本体2の正面に引手25が取り付けられていると、より好ましい。
【0040】
回収されたパレット本体2を複数枚、まとめて搬送する場合は、板体41をさらに手で180度回転させて、キャスタ5をパレット本体2の内側に収納すれば、パレット本体2を嵩張らずに積み重ねることができる。
【0041】
以上に説明したように、このパレットシステム1を用いることで、建築資材その他の荷物を効率的かつ安全に搬送し、保管場所に荷降ろしした後は、厘木3を残してパレット本体2だけを容易に回収することができる。
【0042】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。特許請求の範囲および明細書において使用している構成要素の名称は、発明を具体的に理解し易くするための便宜的なものであって、その名称が当該構成要素の概念や性状を必要以上に限定するものではない。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素の詳細な形状、寸法、構造、材質、数量、他要素との結合形態、相対的な位置関係等を、例示形態と実質的に均等な動作原理を利用する範囲内で、あるいは例示形態と実質的に同等程度以上の作用効果が得られる範囲内で、適宜、改変することができる。
【0043】
また、本願が開示する実施形態その他の事項は、以下の付記に示す技術的思想として把握することもできる。
(付記1)
パレット本体と、前記パレット本体の対向二側面に着脱可能に結合される一対の厘木と、を組み合わせて構成され、
前記厘木は前記パレット本体の厚さを上回る高さを有し、
前記厘木と前記パレット本体とが互いの天面を面一に揃え、互いの側面同士を当接させて結合され、
前記パレット本体と前記厘木との結合手段が、前記パレット本体と前記厘木との当接面に対向する前記厘木の側面側からの操作により、前記厘木が接地した状態で前記厘木と前記パレット本体とを分離し得るものである
ことを特徴とするパレットシステム。
(付記2)
付記1に記載されたパレットシステムにおいて、
前記厘木が接地した状態で前記厘木と前記パレット本体とを着脱する際に前記パレット本体の重量を支持する着脱補助手段が、前記パレット本体における前記厘木との当接面に交差する二側面の近傍に設けられた
ことを特徴とするパレットシステム。
(付記3)
付記2に記載されたパレットシステムにおいて、
前記着脱補助手段が、前記パレット本体に収納可能に取り付けられて前記パレット本体の下方に出没する支持脚を含んで構成され、
前記支持脚の突出高さが、前記パレット本体の厚さと前記厘木の高さの差に合致するように設定されている
ことを特徴とするパレットシステム。
(付記4)
付記2または付記3に記載されたパレットシステムにおいて、
前記着脱補助手段が、前記パレット本体に収納可能に取り付けられて前記パレット本体の下方に出没し、突出状態で前記パレット本体を前記厘木の材軸と平行に移動させ得るキャスタを含んで構成され、
前記キャスタの突出高さが前記支持脚の突出高さよりも小さくなるように設定されている
ことを特徴とするパレットシステム。
(付記5)
付記4に記載されたパレットシステムにおいて、
前記支持脚と前記キャスタとが、いずれか一方の突出に連動して他方が収納されるように前記パレット本体に組み付けられている
ことを特徴とするパレットシステム。
(付記6)
付記5に記載されたパレットシステムにおいて、
前記支持脚および前記キャスタが、前記パレット本体の底面と平行に設置された支軸に取り付けられて、前記支軸周りに回転することで収納または突出するように保持されるとともに、
前記支持脚と前記キャスタとが、前記支軸を中心として互いに90度、異なる向きに結合されて一体に回転する
ことを特徴とするパレットシステム。
(付記7)
付記6に記載されたパレットシステムにおいて、
互いに反対向きに突出する二つの支持脚と、一つのキャスタとが、前記支軸を中心として側面視T字形に結合されている
ことを特徴とするパレットシステム。
(付記8)
付記1~7のいずれか一つに記載されたパレットシステムを使用する荷物の搬送方法であって、
前記パレット本体の対向二側面に厘木を結合し、少なくとも前記厘木の間に跨るように荷物を載置した状態で、前記パレット本体と前記厘木とを一体に搬送し、
荷物の保管場所に前記パレット本体および厘木を定置した後、前記パレット本体と前記厘木との結合を解除して、前記パレット本体の天面を前記厘木の天面よりも下降させ、
前記パレット本体を前記厘木の間から抜き出して回収する
ことを特徴とする荷物の搬送方法。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本願が開示する発明は、パレットまたはそれに類する略平板状のデッキ状部材を使用する様々な荷物の搬送手段として幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 パレットシステム
2 パレット本体
21 フォーク挿入口
22 底板
23 切欠部
24 凹部
25 引手
3 厘木
31 パイプナット
32 インサートナット
33 ボルト
4 着脱補助手段
41 板体
42 支軸
43 軸受部材
44 支持脚
5 キャスタ
51 基板
52 軸受脚
53 ホイール
6 ボールプランジャ