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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049673
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】データ収集装置およびデータ収集方法
(51)【国際特許分類】
   G07C 5/00 20060101AFI20240403BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20240403BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240403BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
F02D29/00 B
F02D45/00 376
E02F9/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156041
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 翔
(72)【発明者】
【氏名】長堂 嘉利
【テーマコード(参考)】
2D003
3E138
3G093
3G384
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AA02
2D003AB07
2D003FA02
3E138AA07
3E138BA20
3E138BB05
3E138CA03
3E138GA02
3E138MA04
3E138MB20
3E138MC12
3E138MF03
3E138MF08
3G093AA10
3G093BA04
3G384AA25
3G384DA27
3G384EE27
(57)【要約】
【課題】通信環境が悪い現場に存在する車両において、重要な稼働データが解析されないまま上書きされてしまうことを防ぐ。
【解決手段】優先度決定部は、イベントに応じて、イベントに係る稼働データである対象稼働データの優先度を決定する。書き込み部は、記憶部に対象稼働データを記憶させる。書き込み部は、対象稼働データを記録する容量が不足する場合に、記憶部に記憶された稼働データのうち優先度が相対的に低い稼働データを、対象稼働データで上書きする。送信部は、記憶部に記憶された稼働データのうち優先度が相対的に高い稼働データを、優先度が相対的に低い稼働データより優先して管理サーバに送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるデータ収集装置であって、
前記車両の稼働データを取得するデータ取得部と、
前記稼働データと所定の閾値とを比較し、異常に関するイベントを検出するイベント検出部と、
前記イベントに応じて、前記イベントに係る前記稼働データである対象稼働データの優先度を決定する優先度決定部と、
記憶部に前記対象稼働データを記憶させる書き込み部であって、前記対象稼働データを記録する容量が不足する場合に、前記記憶部に記憶された稼働データのうち前記優先度が相対的に低い稼働データを、前記対象稼働データで上書きする書き込み部と、
前記記憶部に記録された前記稼働データをサーバ装置に送信する送信部であって、前記記憶部に記憶された稼働データのうち前記優先度が相対的に高い稼働データを、前記優先度が相対的に低い稼働データより優先して前記サーバ装置に送信する送信部と
を備えるデータ収集装置。
【請求項2】
前記書き込み部は、送信済みの前記稼働データの消去または上書きを許容する
請求項1に記載のデータ収集装置。
【請求項3】
前記イベント検出部は、検出した前記イベントの種別を特定し、当該種別に係るイベントの重要度および発生回数の少なくとも一方を特定し、
前記優先度決定部は、前記重要度および前記発生回数の少なくとも一方に基づいて、前記優先度を決定する
請求項1または請求項2に記載のデータ収集装置。
【請求項4】
前記対象稼働データは、前記イベントの発生タイミングの前後に係る稼働データである
請求項1または請求項2に記載のデータ収集装置。
【請求項5】
前記記憶部は、第一記憶領域と第二記憶領域とを有し、
前記優先度決定部は、前記対象稼働データの前記優先度を、優先度高または優先度低の何れかに決定し、
前記書き込み部は、
前記優先度高に係る前記稼働データを前記第一記憶領域に書き込み、前記優先度低に係る前記稼働データを前記第二記憶領域に書き込み、
前記第二記憶領域において前記対象稼働データを記録する容量が不足する場合に、前記第二記憶領域に記憶された過去の稼働データを、前記対象稼働データで上書きする
請求項1または請求項2に記載のデータ収集装置。
【請求項6】
車両の稼働データを取得するステップと、
前記稼働データと所定の閾値とを比較し、異常に関するイベントを検出するステップと、
前記イベントに応じて、前記イベントに係る前記稼働データである対象稼働データの優先度を決定するステップと、
記憶部に前記対象稼働データを記憶させるステップと、
前記記憶部において前記対象稼働データを記録する容量が不足する場合に、前記記憶部に記憶された稼働データのうち前記優先度が相対的に低い稼働データを、前記対象稼働データで上書きするステップと、
前記記憶部に記録された前記稼働データをサーバ装置に送信するステップであって、前記記憶部に記憶された稼働データのうち前記優先度が相対的に高い稼働データを、前記優先度が相対的に低い稼働データより優先して前記サーバ装置に送信するステップと
を備えるデータ収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データ収集装置およびデータ収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の故障の予兆を検出するために、車両の稼働データを収集して記録する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-096337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
稼働データの解析は、インターネットなどの通信網を介して接続された遠隔のコンピュータにおいてなされることがある。この場合、記録された稼働データは通信網を介してサーバ装置に送信される。ところで、油圧ショベルなどの作業車両は、通信環境の悪い作業現場で稼働することがあり、稼働データを記録するための記憶装置の容量が不足する場合がある。このような場合に、新しい稼働データで古い稼働データを上書きすると、重要な故障に関する稼働データが上書きされ、解析できなくなってしまうおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、通信環境が悪い現場に存在する車両において、重要な稼働データが解析されないまま上書きされてしまうことを防ぐデータ収集装置およびデータ収集方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、データ収集装置は、車両に搭載されるデータ収集装置であって、前記車両の稼働データを取得する稼働データ取得部と、前記稼働データと所定の閾値とを比較し、異常に関するイベントを検出するイベント検出部と、前記イベントに応じて、前記イベントに係る前記稼働データである対象稼働データの優先度を決定する優先度決定部と、記憶部に前記対象稼働データを記憶させる書き込み部であって、前記対象稼働データを記録する容量が不足する場合に、前記記憶部に記憶された稼働データのうち前記優先度が相対的に低い稼働データを、前記対象稼働データで上書きする書き込み部と、前記記憶部に記録された前記稼働データをサーバ装置に送信する送信部であって、前記記憶部に記憶された稼働データのうち前記優先度が相対的に高い稼働データを、前記優先度が相対的に低い稼働データより優先して前記サーバ装置に送信する送信部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、データ収集装置は、通信環境が悪い現場に存在する車両において、重要な稼働データが解析されないまま上書きされてしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態に係る作業機械の構成を示す概略図である。
図2】第一実施形態に係るエンジンシステムの構成を示す概略図である。
図3】データ収集装置の構成を示すブロック図である。
図4】第一実施形態に係る条件テーブルの例を示す図である。
図5】第一実施形態に係る稼働データの収集方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈第一実施形態〉
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
【0010】
《作業機械100の構成》
図1は、第一実施形態に係る作業機械100の構成を示す概略図である。
作業機械100は、施工現場にて稼働する。作業機械100の例としては、油圧ショベル、ホイルローダ、ブルドーザなどが挙げられる。また作業機械100は電動駆動するものであってもよいし、油圧駆動するものであってもよい。作業機械100は、走行体110、車体120、作業機130、エンジンシステム140、データ収集装置150を備える。
【0011】
走行体110は、作業機械100を走行可能に支持する。図1に示す例では、走行体110は無限軌道であるが、走行体110は車輪であってもよい。車体120は、走行体110に支持される。車体120は、走行体110に対して旋回中心回りに旋回可能に設けられてもよい。作業機130は、車体120の前部に上下方向に駆動可能に支持される。
【0012】
《エンジンシステム140の構成》
図2は、第一実施形態に係るエンジンシステム140の構成を示す概略図である。
車体120には、走行体110および作業機130の動力となるエンジンシステム140が設けられる。エンジンシステム140は、エンジン141と、ターボチャージャ142と、排気浄化装置143と、エンジン制御装置144とを備える。
【0013】
エンジン141は、内燃機関の一構成例であり、本実施形態では多気筒のディーゼルエンジンである。ターボチャージャ142は、エンジン141の排気を利用してエンジン141の吸気を圧縮する過給機である。
ターボチャージャ142は、取り込んだ空気を圧縮してエンジン141に供給するコンプレッサ421とエンジン141の排気によって回転するタービン422とを備える。コンプレッサ421とタービン422とは同一の回転軸上に設けられたロータ423に接続され、連動して回転する。ターボチャージャ142は、コンプレッサ421の入口の圧力および温度を計測するコンプレッサ入口センサ421I、コンプレッサ421の出口の圧力を計測するコンプレッサ出口センサ421O、タービン422の入口の圧力および温度を計測するタービン入口センサ422I、タービン422の出口の圧力を計測するタービン出口センサ422Oを備える。なお、他の実施形態においては、コンプレッサ421の入口の圧力、コンプレッサ421の入口の温度、タービン422の入口の圧力、およびタービン422の入口の圧力温度の少なくとも何れか1つが、他のセンサの計測データや内部データなどに基づく計算によって求められてもよい。
【0014】
排気浄化装置143は、エンジン141の排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化する。排気は、排気浄化装置143によって浄化された後に大気へ排出される。
排気浄化装置143は、SCR(Selective Catalytic Reduction;選択還元型触媒)433を備える。
SCR433は、排気に尿素水を噴射し、窒素酸化物(NOx)を窒素分子(N2)と水(H2O)に転換する。SCR433は、尿素水を供給するインジェクタ4331、SCR433の上流における排気中のNOx濃度を計測する上流NOxセンサ4332、SCR433の下流における排気中のNOx濃度を計測する下流NOxセンサ4333を備える。
【0015】
なお、排気浄化装置143は、SCRに加え、DOC(Diesel Oxidation Catalyst;ディーゼル酸化触媒)、およびDPF(Diesel Particulate Filter;ディーゼルパティキュレートフィルタ)を備えるものであってもよい。DOCは、排気中の一酸化炭素を酸化させて二酸化炭素に変換し、一酸化窒素を酸化させて二酸化窒素に変換し、炭化水素を酸化させて水と二酸化炭素に変換する。DPFは、排気に含まれる粒子状物質(PM(Particulate Matter))を捕集し、DOCで変換された二酸化窒素によって下流で捕集されたPMを酸化して二酸化炭素に変換することで、PMを除去する。
【0016】
エンジン制御装置144は、コンプレッサ入口センサ421I、コンプレッサ出口センサ421O、タービン入口センサ422I、タービン出口センサ422O、上流NOxセンサ4332、下流NOxセンサ4333を含む複数のセンサから出力された計測データを所定の周期で繰り返し入力し、エンジン141の燃料噴射制御などを行う。
【0017】
エンジン制御装置144には、大気圧センサ441および大気温センサ442が設けられる。作業機械100は、高山地帯などの過酷な環境で使用されることがある。一方で、低気圧環境では、ターボチャージャ142の背圧の低下による過回転が生じる可能性がある。そのため、エンジンシステム140は、実用上問題なく使用可能な温度および高度の範囲が仕様として定められている。大気圧センサ441および大気温センサ442は、エンジンシステム140の使用環境を監視するために設けられる。エンジン制御装置144は、各種センサの計測データをデータ収集装置150に出力する。
【0018】
《データ収集装置150》
データ収集装置150は、エンジン制御装置144を含む、作業機械100の複数の制御装置からセンサの計測データを収集し、内部のストレージに記録する。以下、データ収集装置150が収集した計測データを稼働データともいう。稼働データは作業機械100の稼働状態を表している。データ収集装置150は、移動体通信や衛星通信などによるネットワークを介して遠隔の管理サーバ900に接続される。管理サーバ900は、各作業機械100から収集した稼働データを解析し、当該作業機械100の故障の有無や故障の予兆を診断する。
【0019】
作業機械100は、通信環境の悪い作業現場に置かれることがある。そのため、管理サーバ900への送信前にストレージの容量が不足する可能性がある。そこで、第一実施形態に係るデータ収集装置150は、制御装置から収集した稼働データを解析して稼働データの優先度の高低を決定し、優先度の高い稼働データが上書きされる可能性を低減する。またデータ収集装置150は、優先度が高い稼働データを、優先度の低い稼働データより優先してサーバ200に送信する。
【0020】
図3は、データ収集装置150の構成を示すブロック図である。
データ収集装置150は、プロセッサ151、メインメモリ153、ストレージ155、インタフェース157を備えるコンピュータである。
プロセッサ151は、プログラムをストレージ155などから読み出してメインメモリ153に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ151は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ153に確保する。プロセッサ151の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0021】
プログラムは、データ収集装置150に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、データ収集装置150は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ151によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0022】
ストレージ155の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ155は、データ収集装置150のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース157または通信回線を介してデータ収集装置150に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってデータ収集装置150に配信される場合、配信を受けたデータ収集装置150が当該プログラムをメインメモリ153に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ155は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0023】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ155に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0024】
プロセッサ151は、プログラムを実行することで、データ取得部511、イベント検出部512、優先度決定部513、書き込み部514、送信部515として機能する。ストレージ155には、稼働データを記憶するための専用記憶領域551および通常記憶領域552が確保される。専用記憶領域551は、作業機械100が置かれる劣悪な通信環境下で想定される通信頻度において蓄積される稼働データのデータ量より十分に大きな容量を有するように設計される。メインメモリ153には、稼働データとイベントとの関係を示す条件テーブルを保持するテーブル記憶領域531、一時的に稼働データを保持するバッファ領域532、イベントの種類ごとの発生回数を記憶するカウンタ記憶領域533が確保される。バッファ領域532には、直近の一定期間のすべての稼働データが保持される。
【0025】
テーブル記憶領域531は、イベント識別コードとイベント重要度と判断条件とを関連付けた条件テーブルを保持する。図4は、第一実施形態に係る条件テーブルの例を示す図である。イベント識別コードは、故障に関するイベントの種類を示す識別子である。イベントの例としては、SCR433の浄化効率の微小低下、SCR433の浄化効率の大幅低下、ターボチャージャ142の効率低下、仕様範囲外使用などが挙げられる。イベント重要度は、整数で表される。イベント重要度は、例えば1から4の段階で表される。イベント重要度が高いほど、作業機械100が故障に至る可能性が高いことを示す。判断条件は、関連付けられたイベントの発生を判断するための評価値と閾値との関係を表す。評価値は、稼働データそのものであってもよいし、1または複数の稼働データから算出されるものであってもよい。
【0026】
図4に示す判断条件に係る評価値について説明する。
評価値である浄化効率は、評価値である浄化効率は下流NOxセンサ4333の稼働データと上流NOxセンサ4332の稼働データとの比によって求めることができる。
評価値である大気温は大気温センサ442の稼働データである。評価値である標高は大気圧センサ441の稼働データから換算される。
評価値であるタービン総合効率は、以下の式(1)から求めることができる。
【0027】
【数1】
ηは評価値であるタービン総合効率を示す。cPaは定数である空気の定圧比熱比を示す。cPgは定数である燃焼ガスの定圧比熱比を示す。A/Fは空燃比を示す。空燃比は、吸気マニフォールドの圧力、温度、EGR率などから演算したシリンダー内空気量(酸素量)と噴射した燃料の比によって計算される。πは、コンプレッサ圧力比であって、コンプレッサ出口センサ421Oによる圧力の計測データとコンプレッサ入口センサ421Iによる圧力の計測データとの比によって求められる。πは、タービン膨張比であって、タービン入口センサ422Iによる圧力の計測データとタービン出口センサ422Oによる圧力の計測データとの比によって求められる。TT1は、タービン入口センサ422Iによる温度の計測データである。TC1は、コンプレッサ入口センサ421Iによる温度の計測データである。
【0028】
データ取得部511は、エンジン制御装置144を含む各種制御装置から稼働データを取得する。
イベント検出部512は、データ取得部511が取得したデータと、テーブル記憶領域531に格納される判断条件とに基づいてイベントの発生の有無を判定する。イベント検出部512は、イベントの発生を検出した場合に、当該イベントの重要度および発生回数を特定する。
【0029】
優先度決定部513は、イベント検出部512が検出したイベントの検出に係る稼働データである対象稼働データの優先度を、当該イベントの重要度および発生回数に基づいて決定する。優先度決定部513は、重要度が3以上のイベントに係る稼働データの優先度を「優先度高」に決定する。優先度決定部513は、発生回数が1であるイベントに係る稼働データの優先度を「優先度高」に決定する。優先度決定部513は、重要度が2以下かつ発生回数が2以上のイベントに係る稼働データの優先度を「優先度低」に決定する。なお、他の実施形態に係る優先度の決定方法は上記に限られない。
対象稼働データは、イベント検出部512がイベントの発生を検出したタイミングより一定期間前後の稼働データである。なお、イベントの発生を検出したタイミングより一定期間前の稼働データは、メインメモリ153のバッファ領域532に保持されている。
【0030】
書き込み部514は、ストレージ155に対象稼働データを記録する。書き込み部514は、優先度決定部513が決定した優先度が「優先度高」である場合、ストレージ155の専用記憶領域551に対象稼働データを記録する。書き込み部514は、優先度決定部513が決定した優先度が「優先度低」である場合、ストレージ155の通常記憶領域552に対象稼働データを記録する。なお、書き込み部514は、新たな対象稼働データを記憶するにあたって通常記憶領域552の容量が不足する場合、最も古い稼働データを新たな対象稼働データで上書きする。専用記憶領域551の容量は上述の通り十分に確保されているため、容量が不足する可能性は低いが、もし容量が不足する場合には、書き込み部514は、最も古い稼働データを新たな対象稼働データで上書きする。なお、他の実施形態においては、専用記憶領域551の容量が不足する場合に、新たな対象稼働データを記録せずにおいてもよいし、最も重要度が低いイベントに係る稼働データを新たな対象稼働データで上書きしてもよい。
【0031】
送信部515は、所定の送信周期で管理サーバ900への稼働データの送信を試みる。送信部515によって送信された稼働データは、書き込み部514によって消去されてもよいし、送信済みフラグを付して削除可能であることを示してもよい。送信部515は、「優先度高」の稼働データが専用記憶領域551に記録された場合、上記の送信周期を待たずに稼働データの送信を試みてもよい。専用記憶領域551に記録された稼働データの送信は、通常記憶領域552に記憶された稼働データの送信より優先される。つまり、送信部515は、専用記憶領域551に記録された稼働データをすべて送信し終えた後に、通常記憶領域552に記憶された稼働データの送信を開始する。
【0032】
《稼働データの収集方法》
図5は、第一実施形態に係る稼働データの収集方法を示すフローチャートである。
まず、データ取得部511は、制御装置から稼働データを取得する(ステップS1)。
イベント検出部512は、テーブル記憶領域531が記憶する条件テーブルの判断条件を参照し、稼働データからイベントの検出に用いる評価値を得る(ステップS2)。イベント検出部512は、ステップS2で得た評価値に基づいて条件テーブルが示す各イベントについてイベントの発生の有無を判定する(ステップS3)。イベント検出部512によってイベントが検出された場合(ステップS3:YES)、イベント検出部512は、検出されたイベントのイベント識別コードおよびイベント重要度を特定する(ステップS4)。またイベント検出部512は、カウンタ記憶領域533がステップS4で特定したイベント識別コードに関連付けて記憶する発生回数を更新する(ステップS5)。
【0033】
優先度決定部513は、特定したイベント重要度と発生回数とに基づいて当該イベントに係る対象稼働データの優先度を決定する(ステップS6)。書き込み部514は、イベントの検出に用いた種類の稼働データをバッファ領域から対象稼働データとして読み出す(ステップS7)。
【0034】
書き込み部514は、対象稼働データの優先度が高いか否かを判定する(ステップS8)。優先度が高い場合(ステップS8:YES)、書き込み部514は、専用記憶領域551に対象稼働データを書き込む(ステップS9)。送信部515は、管理サーバ900との通信を試み、通信の可否を判定する(ステップS10)。管理サーバ900との通信に成功した場合(ステップS10:YES)、送信部515は専用記憶領域551に記録された対象稼働データを管理サーバ900に送信する(ステップS11)。その後、送信部515は通常記憶領域552に記録された対象稼働データを管理サーバ900に送信する(ステップS12)。
【0035】
他方、優先度が低い場合(ステップS8:NO)、書き込み部514は、通常記憶領域552に対象稼働データを書き込む(ステップS13)。
【0036】
ステップS3においてイベント検出部512によってイベントが検出されなかった場合(ステップS3:NO)、稼働データをストレージ155に記録しない。
イベント検出部512によってイベントが検出されなかった場合、またはステップS13で通常記憶領域552に対象稼働データを書き込んだ場合、送信部515は、予め定められた送信タイミングであるか否かを判定する(ステップS14)。送信タイミングとしては、例えば作業機械100がキーオフとなったタイミングや、予め定められた時刻などが挙げられる。送信タイミングである場合(ステップS14:YES)、送信部515はステップS10の処理を実行し、未送信のデータの送信を試みる。他方、送信タイミングでない場合(ステップS14:NO)、送信部515はデータの送信を試みず、データを保持したままとする。
【0037】
《作用・効果》
このように、第一実施形態に係るデータ収集装置150は、データ取得部511、イベント検出部512、優先度決定部513、書き込み部514、送信部515を備える。そして、データ取得部511は作業機械100の稼働データを取得する。イベント検出部512は、稼働データと所定の閾値とを比較し、異常に関するイベントを検出する。優先度決定部513は、イベントに応じて、イベントに係る稼働データである対象稼働データの優先度を決定する。書き込み部514は、ストレージ155に対象稼働データを記憶させる。書き込み部514は、対象稼働データを記録する容量が不足する場合に、ストレージ155に記憶された稼働データのうち優先度が相対的に低い稼働データを、対象稼働データで上書きする。送信部515は、ストレージ155に記録された稼働データを管理サーバ900に送信する。送信部515は、ストレージ155に記憶された稼働データのうち優先度が相対的に高い稼働データを、優先度が相対的に低い稼働データより優先して管理サーバ900に送信する。これにより、第一実施形態に係るデータ収集装置150は、通信環境が悪い現場に存在する作業機械100において、重要な稼働データが管理サーバ900によって解析されないまま上書きされてしまうことを防ぐことができる。
【0038】
また、第一実施形態に係る書き込み部514は、送信済みの稼働データの消去または上書きを許容する。これにより、未送信の稼働データが上書きされるリスクを低減することができる。
【0039】
また、第一実施形態に係るイベント検出部512は、検出したイベントの種別を特定し、当該種別に係るイベントの重要度および発生回数を特定する。また優先度決定部513は、重要度および発生回数に基づいて優先度を決定する。具体的には、優先度決定部513は、重要度が3以上のイベントに係る稼働データ、および発生回数が1回目のイベントに係る稼働データの優先度を「優先度高」に決定する。これにより、重要なイベントに係る稼働データが上書きされることを防ぐことができ、また重要度が低いイベントであっても、初回発生時のデータが上書きされることを防ぐことができる。なお、他の実施形態においては、イベント検出部512は、イベントの重要度または発生回数を特定し、優先度決定部513が重要度または発生回数に基づいて優先度を決定してもよい。
【0040】
また、第一実施形態に係る対象稼働データは、イベントの発生タイミングの前後に係る稼働データである。これにより、管理サーバ900は、イベントの発生前後の作業機械100の状態や稼働環境を用いた分析を行うことができる。
【0041】
また、第一実施形態に係るストレージ155は、第一記憶領域である専用記憶領域551と第二記憶領域である通常記憶領域552とを有する。優先度決定部513は、対象稼働データの優先度を、「優先度高」または「優先度低」の何れかに決定する。書き込み部514は、「優先度高」に係る稼働データを専用記憶領域551に書き込み、「優先度低」に係る稼働データを通常記憶領域552に書き込む。また書き込み部514は、通常記憶領域552において対象稼働データを記録する容量が不足する場合に、通常記憶領域552に記憶された過去の稼働データを、対象稼働データで上書きする。これにより、データ収集装置150は、専用記憶領域551に記録された優先度の高い稼働データが上書きされることを防ぐことができる。
【0042】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0043】
上述した実施形態に係るデータ収集装置150は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、データ収集装置150の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することでデータ収集装置150として機能するものであってもよい。例えば、エンジン制御装置144などの制御装置が、データ収集装置150の一部の機能(例えば、イベント検出部512や優先度決定部513など)を備えていてもよい。
このとき、データ収集装置150を構成する一部のコンピュータが作業機械100の内部に搭載され、他のコンピュータが作業機械100の外部に設けられてもよい。
【0044】
上述した実施形態に係るデータ収集装置150は、優先度に応じてストレージ155の記憶領域を切り分けて稼働データを記憶させるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係るデータ収集装置150は、記憶領域を切り分けずに、メタデータとして優先度を稼働データに関連付けて記憶させ、容量が不足するようになった場合に「優先度低」に関連付けられた稼働データを消去するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
100…作業機械 110…走行体 120…車体 130…作業機 140…エンジンシステム 141…エンジン 142…ターボチャージャ 143…排気浄化装置 144…エンジン制御装置 150…データ収集装置 151…プロセッサ 153…メインメモリ 155…ストレージ 157…インタフェース 421…コンプレッサ 421I…コンプレッサ入口センサ 421O…コンプレッサ出口センサ 422…タービン 422I…タービン入口センサ 422O…タービン出口センサ 423…ロータ 431…DOC 432…DPF 433…SCR 4331…インジェクタ 4332…上流NOxセンサ 4333…下流NOxセンサ 441…大気圧センサ 442…大気温センサ 511…データ取得部 512…イベント検出部 513…優先度決定部 514…書き込み部 515…送信部 531…テーブル記憶領域 551…専用記憶領域 552…通常記憶領域 900…管理サーバ 532…バッファ領域 533…カウンタ記憶領域
図1
図2
図3
図4
図5