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特開2024-49682硬化性組成物、硬化物、積層体および硬化物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049682
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物、積層体および硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20240403BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20240403BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240403BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240403BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20240403BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240403BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20240403BHJP
   C08G 69/00 20060101ALI20240403BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20240403BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K5/053
C08K3/36
C08K3/22
C08K3/38
C08L63/00
C08L101/02
C08G69/00
B32B27/34
C08J3/24 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156065
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宇佐 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光人
【テーマコード(参考)】
4F070
4F100
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA54
4F070AC23
4F070AC36
4F070AC40
4F070AC46
4F070GA06
4F070GB02
4F070GC02
4F100AA19A
4F100AA20A
4F100AK46A
4F100AK53A
4F100AK80A
4F100AL05A
4F100AT00B
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02A
4F100CA23A
4F100DE01A
4F100JA05A
4F100JB12A
4F100JJ01A
4F100JL11A
4J001DA01
4J001DB04
4J001DC14
4J001DD03
4J001EB08
4J001EB09
4J001EC02
4J001EC67
4J001EC82
4J001FB06
4J001FC06
4J001FD03
4J001GA12
4J001GB02
4J001GB03
4J001GB05
4J001GC04
4J001JA07
4J001JA18
4J001JA20
4J001JB01
4J001JB07
4J001JB16
4J001JB29
4J001JB46
4J001JB50
4J002CD002
4J002CL031
4J002CL041
4J002DB018
4J002DE148
4J002DF018
4J002DJ017
4J002DK008
4J002EC046
4J002EF129
4J002EJ009
4J002EN009
4J002EN039
4J002EN049
4J002ER009
4J002EU019
4J002EZ009
4J002FD017
4J002FD142
4J002FD149
4J002FD206
4J002FD208
4J002GJ01
4J002GJ02
4J002GQ01
4J002GQ05
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、高いガスバリア機能と接着性に優れる硬化物が得られる硬化性組成物、硬化物、積層体および硬化物の製造方法を提供することである。
【解決手法】
上記課題は、ポリアミド樹脂(A)と、フルオレン骨格含有ポリオール(B)と、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(ただし、シリカフィラーを除く)(D)の少なくとも一方と、硬化剤(E)とを特定量含み、ポリアミド樹脂(A)を構成する単量体100質量%中、ダイマー酸および/またはダイマージアミンを50~99質量%含有する、硬化性組成物によって解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)と、フルオレン骨格含有ポリオール(B)と、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(ただし、シリカフィラーを除く)(D)の少なくとも一方と、硬化剤(E)とを含み、
前記ポリアミド樹脂(A)を構成する単量体100質量%中、ダイマー酸および/またはダイマージアミンを50~99質量%含有し、
前記ポリアミド樹脂(A)の配合量が、硬化性組成物の不揮発分100質量%に対して0.10~40質量%であり、
前記フルオレン骨格含有ポリオール(B)の配合量が、ポリアミド樹脂(A)100質量%に対して1~40質量%であり、
前記シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の合計配合量が、硬化性組成物の不揮発分100質量%に対して40~95質量%である、硬化性組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度が0~90℃である、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記硬化剤(E)がエポキシ系樹脂を含む、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記熱伝導性フィラー(D)がアルミナを含む請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1~4いずれか一項記載の硬化性組成物から形成された硬化物。
【請求項6】
請求項1~4いずれか一項記載の硬化性組成物より形成された接着層と、基材とを含んでなる積層体。
【請求項7】
ポリアミド樹脂(A)と、フルオレン骨格含有ポリオール(B)と、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(ただし、シリカフィラーを除く)(D)の少なくとも一方と、硬化剤(E)とを含み、
前記ポリアミド樹脂(A)を構成する単量体100質量%中、ダイマー酸および/またはダイマージアミンを50~99質量%含有し、
前記ポリアミド樹脂(A)の配合量が、硬化性組成物の不揮発分100質量%に対して0.10~40質量%であり、
前記フルオレン骨格含有ポリオール(B)の配合量が、ポリアミド樹脂(A)100質量%に対して1~40質量%であり、
前記シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の合計配合量が、硬化性組成物の不揮発分100質量%に対して40~95質量%である硬化性組成物を、
熱溶融により成形し、熱硬化する工程を備える硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化剤組成物およびそれを用いた硬化物、積層体および、硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路(IC) は、電子部品の要の部材、例えばマイクロプロセッサ、トランジスタ、メモリとして、コンピューター、スマートフォン、フラットパネルディスプレイ等の様々な電子デバイスに搭載されている。ICを搭載したパッケージ或いはICを実装した実装基板には、封止材、接着剤、アンダーフィル剤、ポッティング材等の絶縁性樹脂が使用されている。
【0003】
特許文献1には、WL-CS(ウエハーレベルチップサイズパッケージ)のモールドアンダーフィル材として、数平均分子量が特定範囲にあり、ポリブタジエン構造、ポリイソプレン構造、ポリカーボネート構造、(メタ)アクリレート構造およびポリシロキサン構造から選択される一つ以上の構造を有する高分子樹脂、無機充填剤、エポキシ樹脂、および硬化促進剤を含む樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、ブタジエン系ゴムおよびシリコーン系ゴムからなる群より選択される一種以上のエラストマー、エポキシ樹脂、硬化剤、並びに無機充填材を含有し、前記エラストマー成分の含有量が特定量含まれる封止用フィルムが提案されている。
更に、特許文献3には、ダイマー酸またはダイマージアミンからなるダイマー構造、およびフェノール性水酸基単位を有する、側鎖に水酸基を有するポリアミドと、ラジカル重合性エポキシとの反応物であるラジカル重合性ポリアミドが開示されている。また、このラジカル重合性ポリアミドに、光重合開始剤、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリカフィラー、溶媒等を含有する樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献4には、多塩基酸単量体とポリアミン単量体とを重合してなり、側鎖にフェノール性水酸基を有する、ダイマー構造を有するポリアミド(A)と、前記フェノール性水酸基と反応し得る3官能以上の化合物(B)とを含有する熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-057313号公報
【特許文献2】国際公開第2 016/136741号
【特許文献3】特開2019-119886号公報
【特許文献4】国際公開第2016/001949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体パッケージの製造工程では、再配線層を形成するために加熱工程が複数ある。例えばファンアウトウエハーレベルパッケージ(FO-WLP)は、ピン数を増やすことのできるチップサイズパッケージとして注目されているが、FO-WLPの代表的なFACE-DOWN型WLPの製造工程では、半導体チップをモールド用樹脂組成物で片面封止し、その後の再配線層の形成工程で繰り返し加熱する工程がある。このため、加熱時の発泡およびクラックを抑制できる耐湿熱性の高い樹脂組成物が求められている。
【0006】
電子部品や電子デバイスは、自動車、産業機械、船舶、航空機等に幅広く使用される。その際、チップとモールド樹脂の界面に水分が蓄積し、水蒸気膨張によるパッケージクラックやワイヤの断線、金属腐食やエレクトロケミカルマイグレーションが発生することが懸念されるため、電子部品は酸素や水のような酸化を引き起こす物質を嫌う性質を有する。このような状況から、高いガスバリア性を持つ封止材料が求められている。一方で電子部品の高性能化の流れを受けて、製品の安定性を増すため接着力の高い、樹脂組成物が要求されている。しかしながら、樹脂の剛直性が要求されるガスバリア機能と高分子鎖の柔軟性が要求される接着力の両立は容易ではない。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、高いガスバリア機能と接着性に優れる硬化物が得られる硬化性組成物、硬化物、積層体および硬化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得
ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下発明〔1〕~〔7〕に関する。
【0010】
〔1〕ポリアミド樹脂(A)と、フルオレン骨格含有ポリオール(B)と、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(ただし、シリカフィラーを除く)(D)の少なくとも一方と、硬化剤(E)とを含み、
前記ポリアミド樹脂(A)を構成する単量体100質量%中、ダイマー酸および/またはダイマージアミンを50~99質量%含有し、
前記ポリアミド樹脂(A)の配合量が、硬化性組成物の不揮発分100質量%に対して0.10~40質量%であり、
前記フルオレン骨格含有ポリオール(B)の配合量が、ポリアミド樹脂(A)100質量%に対して1~40質量%であり、
前記シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の合計配合量が、硬化性組成物の不揮発分100質量%に対して40~95質量%である、硬化性組成物。
【0011】
〔2〕前記ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度が0~90℃である、〔1〕記載の硬化性組成物。
【0012】
〔3〕前記硬化剤(E)がエポキシ系樹脂を含む、〔1〕または〔2〕記載の硬化性組成物。
【0013】
〔4〕前記熱伝導性フィラー(D)がアルミナを含む、〔1〕~〔3〕いずれか記載の硬化性組成物。
【0014】
〔5〕〔1〕~〔4〕いずれか記載の硬化性組成物から形成された硬化物
【0015】
〔6〕〔1〕~〔4〕いずれか記載の硬化性組成物より形成された接着層と、基材とを含んでなる積層体。
【0016】
〔7〕ポリアミド樹脂(A)と、フルオレン骨格含有ポリオール(B)と、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方と、硬化剤(E)とを含み、
前記ポリアミド樹脂(A)を構成する単量体100質量%中、ダイマー酸および/またはダイマージアミンを50~99質量%含有し、
前記ポリアミド樹脂(A)の配合量が、硬化性組成物の不揮発分100質量%に対して0.10~40質量%であり、
前記フルオレン骨格含有ポリオール(B)の配合量が、ポリアミド樹脂(A)100質量%に対して1~40質量%であり、
前記シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の合計配合量が、硬化性組成物の不揮発分100質量%に対して40~95質量%である、硬化性組成物を、
熱溶融により成形し、熱硬化する工程を備える硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、接着性、ガスバリア性の良好な硬化性組成物、硬化物、積層体および硬化物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。また、本明細書において「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。換言すると、本明細書の「シート」は、厚みの薄いフィルム状のものも含まれ、本明細書の「フィルム」は、厚みのあるシート状のものも含まれるものとする。また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0019】
本明細書において、「Mw」および「Mn」は、順にゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量および数平均分子量である。これらは、[実施例]の項に記載の方法にて測定することができる。
【0020】
本実施形態に係る硬化性組成物は、熱硬化性を示す溶融成形用の無溶剤型の組成物であり、特定のポリアミド樹脂(A)と、フルオレン骨格含有ポリオール(B)と、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方と、硬化剤(E)とを含む。ポリアミド樹脂(A)は、当該ポリアミド樹脂(A)の重合に用いる全単量体100質量%中、前記ダイマー酸およびダイマージアミンの合計仕込み率を50~100質量%とする。ポリアミド樹脂(A)の重合に用いる単量体の仕込み比が、実質的に、ポリアミド樹脂(A)の単量体に由来する構成成分の割合となる。
【0021】
本実施形態のダイマー酸およびダイマージアミンの少なくともいずれか由来のダイマー構造を特定量有するポリアミド樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方と、硬化剤(E)とを含有する硬化性組成物において以下の効果が得られる。即ち、その硬化物を例えばICパッケージ等の封止樹脂として用いたときに、基材に対する高い密着性と酸素や水素に対するガスバリア性を高めることで、基材-樹脂間等への水分の蓄積を防止することができ、結果的にパッケージクラックやワイヤの断線、金属腐食やエレクトロケミカルマイグレーションに対して擦れた耐性を持つ硬化物を提供できる。以下、更に詳細に説明する。
【0022】
≪硬化性組成物≫
[ポリアミド樹脂(A)]
ポリアミド樹脂はアミド基を含む繰り返し構造単位を含有する重合体であり、このうち、ダイマー酸およびダイマージアミンの少なくともいずれか由来のダイマー構造を有する樹脂をポリアミド樹脂(A)とする。ポリアミド樹脂(A)は、多塩基酸化合物とポリアミン化合物と必要に応じてその他モノマーとの重合体、或いはその重合体を変性した変性体である。ここで、変性体とは、前記重合体の分子構造内の一部を変換(例えば、官能基の変換、他の化合物と置換、または他の化合物の付加)した誘導体をいう。ポリアミド樹脂へのダイマー構造の導入は、ダイマー構造を有する単量体を用いればよく、当該単量体として多塩基酸化合物であるダイマー酸および/またはポリアミン化合物であるダイマージアミンが好適に用いられる。
【0023】
ポリアミド樹脂(A)は、ポリアミド樹脂(A)を構成する単量体100質量%中、ダイマー酸および/またはダイマージアミンを50~99質量%含有する。すなわち、本願におけるポリアミド樹脂(A)の重合に用いる全単量体100質量%中、ダイマー酸およびダイマージアミンの合計仕込み率は、50~99質量%である。ポリアミド樹脂(A)の重合に用いる単量体の仕込み比は、ポリアミド樹脂(A)の単量体に由来する構成成分の割合と実質的に一致するので、前記仕込み率を50~99質量%とすることにより、ダイマー構造の効果を充分に発揮させることができる。ダイマー酸およびダイマージアミンの合計含有率は、60~95質量%が好ましく、70~90質量%がより好ましい。
なお、前記ダイマー構造の含有率は、重合体の場合には、ポリアミド樹脂(A)を合成する際に使用する全単量体の合計100質量%中の、ダイマー構造を有する単量体の含有率(質量%)より求めることができる。また、変性体の場合には、変性した後の構造を有する仮想の単量体とし、変性しない単量体については原料モノマーを用いて全単量体100質量%中の、ダイマー構造を有する単量体の含有率(質量%)から求めることができる。変性した後の構造を有する仮想の単量体の含有量は、重合体に対する反応率を考慮して求めることができる。
例えば、重合体を得た後に単量体a由来の側基を変性する場合、「単量体aの仕込み量(モル)×側基の変性率/100×側基が変性された後の構造を有する仮想の単量体の分子量」により求まるモノマー量(質量)Xと、「単量体aの仕込み量(モル)×(1-側基の変性率/100)×単量体aの分子量」により求まるモノマー量(質量)Yを用い、その他単量体については前述の重合体の求め方と同様にしてダイマー構造の含有率を求めることができる。
【0024】
ダイマー構造は、炭化水素鎖や環構造を有する構造であり、配合されるエポキシ樹脂類に比較して低極性であるため、系外からの吸湿を抑制できる。また、ポリアミド樹脂(A)のアミド結合に由来する強固な水素結合が存在する。水素結合の高い凝集性により、ガスバリア性の良化が期待でき、加えて柔軟な骨格を有するため接着力が向上できる。
【0025】
ポリアミド樹脂(A)は、硬化剤(E)と熱により架橋し得る官能基を有することが好ましい。官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、水酸基が例示できる。これらは、ポリアミド樹脂(A)の単量体由来の官能基であってもよいし、重合体を得た後、変性体として官能基を導入してもよい。官能基は、重合体の末端にある態様の他、側基、および/又は側鎖に有する態様がある。好適な例として、重合体末端にカルボキシ基またはアミノ基等の官能基を有する態様が例示できる。また、側基または側鎖にカルボキシ基、アミノ基、水酸基等の官能基の少なくともいずれかを有する態様が例示できる。
なお、官能基として光重合性基を有すると、ポリアミド樹脂を含む硬化性組成物が過架橋になり、接着性が低下する場合や、硬化性組成物を熱溶融させて成型する場合に熱ラジカル反応がおこり成型性が低下する場合があるため、光重合性基は有さないことが好ましい。
【0026】
ポリアミド樹脂(A)が水酸基を有する場合、フェノール性水酸基が好適である。フェノール性水酸基を有することで、硬化剤(E)との架橋構造を構築し、耐久性に優れた硬化物を得ることができる。フェノール性水酸基は、フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物および/又はフェノール性水酸基を有するポリアミン化合物を用いることにより容易に導入できる。このフェノール性水酸基の芳香環は、ポリアミド樹脂(A)の主鎖骨格に含まれる態様が好ましい。また、耐久性の観点からは、フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物をポリアミド樹脂(A)の単量体として用いることが好ましい。
【0027】
ポリアミド樹脂(A)は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、イミド基を一部に有するポリアミドイミドであっても、エステル基を一部に有するポリアミドエステルであってもよい。
【0028】
<多塩基酸化合物>
ポリアミド樹脂(A)の原料となる多塩基酸化合物は、二塩基酸以上のカルボン酸である。多塩基酸化合物は、その一部が酸無水物であってもよい。多塩基酸化合物として、ダイマー酸およびダイマー酸以外のその他多塩基酸化合物が挙げられる。
【0029】
多塩基酸化合物にダイマー酸を用いる場合、多塩基酸化合物100質量%中のダイマー酸の含有比率は、60質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上がより好ましい。多塩基酸化合物100質量%中のダイマー酸の含有比率が60質量%以上であると耐湿熱性が高まり、ダイマー構造による応力緩和効果を充分に発現させ、より優れた接着力が発現できる。
【0030】
(ダイマー酸)
ダイマー酸はダイマー構造を有する多塩基酸化合物であり、脂肪酸の二量体(以下、脂肪酸二量体という)である。
【0031】
前記脂肪酸二量体は、炭素数20~60の化合物が好ましく、炭素数24~56の化合物がより好ましく、炭素数28~48の化合物が更に好ましく、炭素数36~44の化合物が特に好ましい。脂肪酸二量体は、脂肪酸をディールス-アルダー反応させた分岐構造を有するジカルボン酸化合物が好ましい。前記分岐構造は、脂肪鎖または脂肪鎖と環構造を含むものが好ましく、脂肪鎖と環構造を含むものがより好ましい。前記環構造は、1または2以上の芳香環や脂環構造が好ましく、脂環構造がより好ましい。脂環構造は、環内に二重結合を1つ有する場合、二重結合を有さない場合などがある。
【0032】
ダイマー構造を有する多塩基酸化合物は、例えば、下記化学式(1)~(4)で示す構造が挙げられる。なお、ダイマー構造を有する多塩基酸化合物は、下記構造に限定されないことはいうまでもない。
【0033】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】
【0034】
脂肪酸は、例えば、炭素数10~30の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数10~24の不飽和脂肪酸がより好ましい。前記不飽和脂肪酸は、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を1以上有する。前記脂肪酸は、例えば、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、菜種油脂肪酸等の天然の脂肪酸およびこれらを精製したオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸が挙げられる。
前記脂肪酸二量体を合成する際、脂肪酸二量体の他に、脂肪酸の三量体や場合によって四量体が生成する。そのため、ダイマー骨格を含む多塩基酸化合物は、主成分の脂肪酸二量体のみならず、脂肪酸の三量体等、場合によっては原料の脂肪酸を含む混合物である。脂肪酸二量体は、ダイマー酸100質量%中、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
【0035】
ダイマー酸は、原料に不飽和脂肪酸を使用しているため不飽和結合が残存する場合がある。かかる場合、水素添加(水添反応ともいう)を行い、不飽和結合数を抑制できる。これによりポリアミド樹脂(A)を合成する際の反応安定性が向上し、更にポリアミド樹脂(A)を含有する硬化性組成物の硬化物の高温時の耐性が向上する。ダイマー酸は、単独または二種類以上を併用して使用できる。
【0036】
ダイマー酸の市販品は、例えば、クローダジャパン社製の「プリポール1004」、「プリポール1006」、「プリポール1009」、「プリポール1013」、「プリポール1015」、「プリポール1017」、「プリポール1022」、「プリポール1025」、「プリポール1040」;BASFジャパン社製の「エンポール1008」、「エンポール1012」、「エンポール1016」、「エンポール1026」、「エンポール1028」、「エンポール1043」、「エンポール1061」、「エンポール1062」が挙げられる。これらの中でも炭素数36の「プリポール1009」を用いることにより、金属への密着性を保持したまま、冷熱サイクル性がより優れるポリアミド樹脂(A)が得やすい。また、炭素数44の「プリポール1004」を用いることにより、柔軟性が良好なポリアミド樹脂(A)が得やすい。
【0037】
(その他多塩基酸化合物)
その他多塩基酸化合物は、ダイマー酸以外の多塩基酸化合物であって、2官能以上の化合物である。多塩基酸化合物は、単独または二種類以上を併用して使用できる。
【0038】
二塩基酸化合物として、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ベンゾフェノン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸等の芳香族二塩基酸;シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、りんご酸、酒石酸、チオりんご酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ヘキサデカンジオン酸、ジグリコール酸等の脂肪族二塩基酸;1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族二塩基酸が挙げられる。これらの中でも二塩基酸化合物として、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
【0039】
3官能以上の多塩基酸化合物は、例えば、トリメリット酸、水添トリメリット酸、ピロメリット酸、水添ピロメリット酸、トリメシン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸が挙げられる。3官能以上の多塩基酸化合物を使用するとポリアミド樹脂(A)に分岐構造を導入できるため、硬化物の凝集力が向上し、冷熱サイクル性や寸法安定性を向上させることができる。
【0040】
その他多塩基酸化合物の好適例として、フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物が挙げられる。フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物は、フェノールと同様に芳香環に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基ともいう)を有し、酸性官能基を2以上有する化合物である。酸性官能基は、例えば、カルボキシ基が挙げられる。
フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物を用いることにより、硬化処理時に、ポリアミド樹脂(A)と硬化剤(E)の架橋構造の調整を容易に行うことができる。その結果、強固な架橋を形成できるので、硬化物の耐久性を効果的に向上させることができる。
【0041】
フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物は、例えば、2-ヒドロキシイソフタル酸、4-ヒドロキシイソフタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸等のモノヒドロキシイソフタル酸;2,5-ジヒドロキシイソフタル酸、2,4-ジヒドロキシイソフタル酸、4,6-ジヒドロキシイソフタル酸等のジヒドロキシイソフタル酸;2-ヒドロキシテレフタル酸等のモノヒドロキシテレフタル酸;2,3-ジヒドロキシテレフタル酸、2,6-ジヒドロキシテレフタル酸等のジヒドロキシテレフタル酸;3-ヒドロキシフタル酸、4-ヒドロキシフタル酸等のヒドロキシフタル酸;3,4-ジヒドロキシフタル酸、3,5-ジヒドロキシフタル酸、4,5-ジヒドロキシフタル酸、3,6-ジヒドロキシフタル酸等のジヒドロキシフタル酸が挙げられる。
これらの中でもフェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物として、共重合性、入手の容易さなどの点で5-ヒドロキシイソフタル酸が好ましい。なお、フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物は、上段で例示した化合物のカルボキシ基が酸無水物基を形成していてもよく、また、カルボキシ基がエステルを形成していてもよい。
【0042】
<ポリアミン化合物>
ポリアミド樹脂(A)の原料となるポリアミン化合物は、アミノ基を2個以上有する化合物である。ポリアミン化合物の好適例として、ダイマージアミンおよびその他ポリアミン化合物が挙げられる。
ポリアミン化合物にダイマージアミンを用いる場合、ポリアミン化合物100質量%中のダイマージアミンの含有比率は、50質量%以上100質量%以下が好ましく、90質量%以上がより好ましい。ダイマージアミン100質量%中のダイマージアミンの含有比率を50質量%以上とすることにより、ダイマー構造による応力緩和性を充分に発現させ、より優れた冷熱サイクル性が実現できる。
【0043】
(ダイマージアミン)
ダイマージアミンは、ダイマー構造を有するアミノ基を2つ有する化合物であり、前述のダイマー酸のカルボキシ基をアミノ基に転化した化合物を使用できる。転化方法は、例えば、カルボン酸をアミド化させ、ホフマン転位によりアミン化させ、更に蒸留・精製を行う方法が挙げられる。
ダイマージアミンは、炭素数20~60の化合物が好ましく、炭素数24~56の化合物がより好ましく、炭素数28~48の化合物が更に好ましく、入手しやすさの観点からは炭素数36~44の化合物が更に好ましい。
【0044】
ダイマージアミンの市販品は、例えば、クローダジャパン社製の「プリアミン1071」、「プリアミン1073」、「プリアミン1074」、「プリアミン1075」や、BASFジャパン社製の「バーサミン551」等が挙げられる。ダイマージアミンは、単独または二種類以上を併用して使用できる。
【0045】
(その他ポリアミン化合物)
その他ポリアミン化合物は、ダイマージアミン以外のポリアミン化合物であって、例えば、ジアミン化合物、3官能以上のポリアミン化合物が挙げられる。
【0046】
ジアミン化合物は、例えば、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,2-ジアミノベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノトルエン、3,4-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミ
ノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-1,2-ジフェニルエタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ジアミン;エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等の脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0047】
また、フェノール性水酸基を有するポリアミン化合物が挙げられる。フェノール性水酸基を有するポリアミン化合物を用いたポリアミド樹脂(A)は、耐久性の点で好ましい。フェノール性水酸基を有するポリアミン化合物を用いると、ポリアミド樹脂(A)にフェノール性水酸基を導入することができるために好ましい。フェノール性水酸基を導入することで、配合する硬化剤(E)と3次元架橋して、より強靭な硬化物を得ることが可能となる。
フェノール性水酸基を有するポリアミン化合物は、アミノ基を複数有し、且つフェノール性水酸基を有する。フェノール性水酸基を有するポリアミン化合物は、例えば、下記一般式(1)で示すポリアミンが挙げられる。
【0048】
【化5】
【0049】
式中Rは、直接結合、または炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、またはハロゲンを含む基を示す。前記基は、例えば、炭素数1~30の2価の炭化水素基またはハロゲン原子によって水素の一部若しくは全部が置換されている炭素数1~30の2価の炭化水素基、-(C=O)-、-SO-、-O-、-S-、-NH-(C=O)-、-(C=O)-O-、下記一般式(2)で表される基および下記一般式(3)で示す基が挙げられる。
【0050】
【化6】
【0051】
【化7】

式中、rおよびsはそれぞれ独立に1~20の整数を示し、Rは水素原子またはメチル基を示す。
【0052】
一般式(1)で示すポリアミンは、例えば2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビスフェニルが挙げられる。
【0053】
アミノ基を3以上有し、フェノール性水酸基を有さないアミンは、例えば、1,2,4-トリアミノベンゼン、3,4,4’-トリアミノジフェニルエーテルが挙げられる。
【0054】
これらの中でもその他ポリアミン化合物としては、耐湿熱性を高め、接着力および冷熱サイクル性がより向上する面でイソホロンジアミン、またはノルボルナンジアミンが好ましい。
【0055】
<ポリアミド樹脂(A)の製造方法>
ポリアミド樹脂(A)の製造は、例えば、溶融重合、界面重合、溶液重合、塊状重合、および固相重合、並びにこれらを組み合わせて合成できる。これらの中でも溶液重合が好ましい。
ポリアミド樹脂(A)の重合体は、上述した多塩基酸化合物と、ポリアミン化合物と、必要に応じてその他モノマーを使用し、触媒存在下あるいは非存在下において行うことができる。例えば、窒素充填したフラスコに、ダイマー酸、その他酸モノマー、ダイマージアミン、その他アミン系モノマーおよびイオン交換水を所定量仕込み、20~100℃で加熱・撹拌することで均一溶解ないし分散する。その後、前記イオン交換水および反応により生ずる水を除去しながら230℃まで徐々に昇温し、230℃に到達次第15mmHg程度まで減圧を行い、その状態を1時間程度保持することでポリアミド樹脂(A)を得ることができる。加熱温度は、例えば、150~300℃であり、加熱時間は1~24時間程度とすることができる。合成反応の促進のため、脱水あるいは脱アルコール反応を行うことが好ましく、高温による着色、分解反応を避けるために、減圧下、180~270℃で反応を行うことが好ましい。
【0056】
その他モノマーとして、ポリアミンに加えてモノアミンを併用してもよい。モノアミンは、反応停止剤として作用するため、ポリアミド樹脂(A)の分子量を調整し易い。また、ポリアミド樹脂(A)の主鎖末端の一部が、反応性官能基ではないため経時安定性が向上する。モノアミンとして、アニリン、ベンジルアミン、4-アミノフェノール、2-エチルヘキシルアミン等が例示できる。
【0057】
<ポリアミド樹脂(A)の物性>
ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は0~90℃であることが好ましく、0℃~70℃がより好ましい。Tgは、ポリアミド樹脂(A)を、動的粘弾性測定装置で測定した粘性項を弾性項で除した値(tanδ)が極大を示す温度である。
ポリアミド樹脂(A)のTgを0~90℃とすることにより、硬化性組成物の溶融物を形成する工程において、硬化剤(E)、シリカフィラー(C)および/または熱伝導性フィラー(D)との相溶性をより向上させ、系中に均一にフィラーが分散されることで、良好なバリア性を得やすくなる。
【0058】
ポリアミド樹脂(A)の重量平均分子量Mwは1.5万~10万であることが好ましく、1.7万~7.8万であることがより好ましい。Mwが1.5万以上であることで硬化物としたときに適度な架橋密度が得られ、半導体チップとの接着力がより向上する。Mwが10万以下であることで被着体への濡れ性が向上し接着性がより良化する。
【0059】
ポリアミド樹脂(A)の酸価は、2~30mgKOH/gが好ましく、3~25mgKOH/gがより好ましく、4~20mgKOH/gが更に好ましい。酸価を2~30mgKOH/gとすることにより、硬化物としたときに適度な架橋密度が得られ、半導体チップとの接着力およびガスバリア性がより向上する。
【0060】
ポリアミド樹脂(A)の配合量は、不揮発分100質量%に対して0.10~40質量%が好ましく、更に好ましくは0.60~10である。上記範囲内にあることで、良好な接着力とバリア性を発現できる。
【0061】
[フルオレン骨格含有ポリオール(B)]
フルオレン骨格含有ポリオール(B)は、フルオレン骨格と水酸基を2個以上有する化合物であり、嵩高いジオール骨格がポリアミドの水素結合の間隔を広げることで、水素結合の強度が最適化され、フィラーとの混練適性が良化してガスバリア性が向上する。
【0062】
フルオレン骨格含有ポリオール(B)の配合量は、ポリアミド樹脂(A)100質量%に対して1~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。上記比率とすることでガスバリア性を高め、接着力をバランス良く発揮することができる。
【0063】
フルオレン骨格含有ポリオール(B)の分子量は300~600であることが好ましい。分子量が300~600であることで、フィラーとの相溶性が良化し、ガスバリア性を向上することができる。
【0064】
フルオレン骨格含有ポリオール(B)としては、例えば、フェノール型、アルコール型等を挙げることができる。
具体例として、フェノール型としては、9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン等が挙げられる。
またアルコール型としては、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン等が挙げられる。
その中でも、ポリアミド樹脂(A)との相溶性が良好な9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンや9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンが好ましい。
【0065】
[シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)]
本実施形態の硬化性組成物は、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方を含む。ただし、熱伝導性フィラー(D)はシリカフィラーを除く。
シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方によって硬化物のバリア性が向上する。更に、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方を、前述したポリアミド樹脂(A)、フルオレン骨格含有ポリオール(B)および硬化剤(E)と組み合わせることにより、ガスバリア効果が高められる。
【0066】
シリカフィラー(C)は、例えば、板状シリカ、棒状シリカ、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等のシリカフィラーが挙げられる。ガスバリア性に優れる点で板状シリカが好ましい。
熱伝導性フィラー(D)は、20℃における熱伝導率が高い方が好ましく、15(W/m・K)以上のフィラーが好ましい。また、体積抵抗率は高い方が好ましく、10の6乗(Ω・cm)以上のフィラーが好ましい。熱伝導性フィラー(D)の好適例として、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、窒化珪素、または窒化ホウ素、炭化ケイ素が挙げられる。この中でも、入手のしやすさからアルミナ(酸化アルミニウム)または窒化ホウ素が好ましい。窒化ホウ素の種類は特に限定されない。例えば、六方晶窒化ホウ素(h-BN)、立方晶窒化ホウ素(c-BN)、ウルツ鉱型窒化ホウ素等が例示できる。これらの中でも、熱伝導性の観点から六方晶窒化ホウ素(h-BN)が好ましい。窒化ホウ素の形状は限定されないが鱗片状が好適であり、一次粒子であっても、一次粒子が凝集して形成された二次粒子であってもよい。熱伝導性フィラー(D)は、例えば板状、棒状、溶融破砕体、溶融球状体、結晶体、2次凝集体等が挙げられる。この中でもガスバリア性に優れる点で板状体のアルミナが好ましい。
【0067】
シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)は、平均粒子径が1~50μmの範囲が好ましく、1~30μmがより好ましく、2~10μmが更に好ましい。平均粒子径を1μm以上とすることにより硬化物の可撓性、柔軟性がより向上する。平均粒子径を30μm以下とすることによりバリア性が向上する。なお、平均粒子径は、平均粒子径D50であり、例えば、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定する。
【0068】
シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)は、それぞれ独立にシランカップリング剤により処理(前処理)してもよい。シランカップリング剤により処理することにより、他の材料との親和性が向上し、シリカフィラー(C)および/または熱伝導性フィラー(D)の分散性がより向上する。
シランカップリング剤は、加水分解性基と反応性官能基を有する化合物である。加水分解性基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1~6のアルコキシ基;アセトキシ基;2-メトキシエトキシ基等が挙げられる。これらの中でも加水分解によって生じるアルコールなどの揮発成分を除去し易い面でメトキシ基が好ましい。
前記反応性官能基は、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基等が挙げられるが、中でもエポキシ基が好ましい。
【0069】
シランカップリング剤は、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シランカップリング剤;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリル基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基含有シランカップリング剤;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基含有シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤が挙げられる。
優れた接着力およびガスバリア性を発現させる観点から、フェニルアミノシラン処理または/およびビニルシラン処理が好ましい。
【0070】
シランカップリング剤によりシリカフィラー(C)を処理する方法は、例えば、溶媒中でシリカフィラー(C)とシランカップリング剤を混合する湿式法、気相中でシリカフィラー(C)とシランカップリング剤を処理させる乾式法が挙げられる。シランカップリング剤の処理量は、未処理のシリカフィラー(C)100質量部に対して、シランカップリング剤を0.1~1質量部程度処理することが好ましい。
【0071】
シランカップリング剤により熱伝導性フィラー(D)を処理する方法およびその処理量は、上述したシリカフィラー(C)と同様である。
【0072】
シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)は、硬化性組成物の不揮発分100質量%に対し、40質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。40質量%以上含むと硬化物のバリア性がより向上する。なお、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の上記含有量の上限の好適値は95質量%である。本硬化性組成物は、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)のうちのいずれか一方のみを含む態様、両者を含む態様がある。
【0073】
シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)は、それぞれ独立に、単一種類でも二種以上を併用してもよいが、接着力を向上させる観点からは二種類以上含むことが好ましい。
シリカフィラー(C)を二種類以上含む態様として、板状シリカ、棒状シリカ、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカおよび2次凝集シリカの中から任意の二種類以上を併用する態様がある。また、平均粒子径が異なる二種類以上を併用する態様、表面処理が異なる二種類以上のシリカフィラーを併用する態様が例示できる。
熱伝導性フィラー(D)を二種類以上含む態様として、板状、棒状、溶融破砕体、溶融球状体、結晶体および二次凝集体から任意の二種類以上を併用する態様がある。また、平均粒子径が異なる二種類以上を併用する態様、表面処理が異なる二種類以上の熱伝導性フィラー(D)を併用する態様が例示できる。
シリカフィラー(C)と熱伝導性フィラー(D)を併用することにより、電荷の異なる異種のフィラーがポリアミド樹脂(A)と相溶しやすくなり、接着性に加え、ガスバリア性をより好適に発揮させることができる。
【0074】
[硬化剤(E)]
本発明の硬化性組成物は、硬化剤(E)を含む。硬化剤(E)は、エポキシ系樹脂、酸無水物基含有化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、アミン化合物、フェノール化合物および金属キレート化合物から選択されるいずれか一種以上であることが好ましい。化合物(E)は、高分子化合物でも低分子化合物でもよい。
【0075】
エポキシ系樹脂はエポキシ基を2個以上含有する化合物であり、酸無水物基含有化合物は酸無水物基を2個以上有する化合物であり、イソシアネート化合物はイソシアネート基を2個以上含有する化合物であり、アジリジン化合物はアジリジン基を2個以上有する化合物であり、アミン化合物はアミノ基を2個以上有する化合物であり、フェノール化合物はヒドロキシ基が芳香族基(芳香環)に直結する構造を2個以上有する化合物をいう。金属キレート化合物は、多座配位子(キレート配位子)が金属イオンに配位して生じた錯体をいう。上記化合物の中でもエポキシ系樹脂が最も好適に接着力とガスバリア性を向上できる。
【0076】
エポキシ系樹脂は、エポキシ基を有することにより熱硬化し得る熱硬化性樹脂である。
エポキシ系樹脂は、エポキシ樹脂自身に水酸基等の反応性官能基を有していれば、エポキシ系樹脂単独で架橋構造を形成できる。単独架橋に加えて又は単独架橋に代えて、ポリアミド樹脂(A)とエポキシ系樹脂を熱架橋する態様も好適である。ポリアミド樹脂(A)とエポキシ系樹脂の熱架橋による3次元架橋構造により、接着力に優れ、更により優れたバリア性が得られる。また、これらの硬化剤の種類は、一種でも二種以上を併用してもよい。
【0077】
ポリアミド樹脂(A)と硬化剤(E)の含有質量比率は、(A):(E)=5:95~50:50であることが好ましく、(A):(E)=10:90~30:70がより好ましい。上記比率とすることで接着力およびガスバリア性をバランス良く発揮することができる。
【0078】
エポキシ系樹脂は芳香環を含む繰り返し単位を有する態様が好ましい。また、その繰り返し単位に有する芳香環の少なくとも一部に置換基としてエポキシ基を含む有機基が含まれることが好ましい。エポキシ系樹脂のエポキシ当量は、100~300g/eq.が好ましく、剛性を高めつつ、溶融成形時の樹脂成分のミクロ相分離を効果的に促進させ、硬化物としたときの発泡を抑制し、クラック耐性および耐湿熱性をより向上させる観点からは200g/eq.以上が好適である。より好ましくは220~320g/eq.であり、更に好ましくは250~300g/eq.である。
【0079】
エポキシ系樹脂は、ポリアミド樹脂(A)との混練時の相溶性を高める観点からは、ナフタレン等の多環芳香族炭化水素よりも、ベンゼン環などの一つの環を有する単環芳香族炭化水素が好ましい。また、単環芳香族炭化水素を複数有する多芳香環エポキシ樹脂も好適である。更に、溶融成形時にポリアミド樹脂(A)とエポキシ系樹脂の相分離構造を効果的に形成させる観点から、繰り返し単位構造を含むエポキシ系樹脂が好適である。
エポキシ系樹脂は例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン含有ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノール変性キシレン樹脂型エポキシ樹脂、液状エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多官能フェノール系エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル変性型エポキシ樹脂、脂環式系およびアルコール系等のグリシジルエーテル、脂環式系およびアルコール系等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂、並びに脂環式系およびアルコール系等のグリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0080】
これらの中でも、耐湿熱性を高め、冷熱サイクル性をより良化する観点から、ビフェニル型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン含有ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール変性キシレン樹脂型エポキシ樹脂、が好適である。
【0081】
好適例として、以下の化学式(5)~(10)のエポキシ系樹脂を例示できる。式中のnは整数であり、例えば、1~10が好適である。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】
【0082】
エポキシ系樹脂は、二種類以上を併用してもよい。二種以上を併用することにより、接着力や冷熱サイクル性を調整しやすい。例えば、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂とフェノール変性キシレン樹脂型エポキシ樹脂、またはフェノールアラルキル型エポキシ樹脂とトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。中でも、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂とフェノール変性キシレン樹脂型エポキシ樹脂、またはフェノールアラルキル型エポキシ樹脂とトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂を、質量比で2:8~8:2で組み合わせて使用すると、ポリアミド樹脂(A)と適切な相溶性を有して接着力やガスバリア性が向上するため好ましい。
【0083】
酸無水物基含有化合物としては、例えば、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a、4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4-ビス(3、4-ジカルボキシフェノール)ベンゼン二酸無水物、P-フェニレンビス(トリメリテート無水物)4,4'-オキシジフタル酸無水物、1,1'-ビフェニル-2,3,3',4'-テトラカルボン酸2,3:3',4'-二無水物、ジシクロヘキシル-3,4,3',4'-テトラカルボン酸二無水物などの酸二無水物が例示できる。またスチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体などの共重合体、酸無水物変性ポリプロピレンなどの変性物を挙げることができる。
市販品としては、リカシッド(登録商標、新日本理化社製)、ザイボンド(登録商標、ポリスコープポリマーズ社製)、SMA(登録商標)レジン(クレイバリーUSA社製)、タフマー(登録商標、三井化学社製)が例示できる。
【0084】
イソシアネート化合物は特に制限されないが、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。なお、イソシアネート基含有化合物は、複数種を併用してもよい。
【0085】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0086】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
【0087】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12-MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0088】
また、ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。
【0089】
ブロック化イソシアネート化合物しては、前記イソシアネート基含有化合物中のイソシアネート基がε-カプロラクタムやMEKオキシム等で保護されたブロック化イソシアネート基含有化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、前記イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基を、ε-カプロラクタム、MEKオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックしたものなどが挙げられる。特に、イソシアヌレート環を有し、MEKオキシムやピラゾールでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネート三量体は、本実施形態に使用した場合、保存安定性は勿論のこと、ポリイミドや銅等の接合材に対する接着強度や半田耐熱性に優れるため、非常に好ましい。
【0090】
アジリジン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリ-1-アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、トリメチロールプロパントリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(1-アジリジニル)ブチレート]、トリメチロールプロパントリス[3-(1-(2-メチル)アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(1-アジリジニル)-2-メチルプロピオネート]、2,2’-ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラ[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、ジフェニルメタン-4,4-ビス-N,N’-エチレンウレア、1,6-ヘキサメチレンビス-N,N’-エチレンウレア、2,4,6-(トリエチレンイミノ)-Syn-トリアジン、ビス[1-(2-エチル)アジリジニル]ベンゼン-1,3-カルボン酸アミド等が挙げられる。
特に、2,2’-ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]は、接着力とバリア性を両立できるため好適である。
【0091】
アミン化合物としては、ポリアミド樹脂(A)の単量体で例示したダイマー構造を有するポリアミン、ダイマー構造を有しないその他ポリアミンを例示できる。
【0092】
フェノール化合物の種類は特に制限されないが、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂が好適である。このようなフェノール性樹脂として、例えば、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、キシリレン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂が挙げられる。
【0093】
金属キレートの具体例としては、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物が挙げられる。中心金属は、鉄、コバルト、インジウム、など種々の金属でもよい。
【0094】
[硬化触媒(F)]
硬化剤(E)として、エポキシ系樹脂を用いた場合、エポキシ系樹脂と組み合わせて硬化触媒を用いることができる。エポキシ系樹脂と組み合わせて用いられる硬化触媒としては、例えば、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、架橋性向上の観点から、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。その他の硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化触媒(F)を用いる場合、その含有率は硬化性組成物の固形分全体100質量%中、例えば0.05~0.5質量%、好ましくは0.1~0.3質量%である。
【0095】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素等が挙げられる。
【0096】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0097】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物およびイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。
【0098】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0099】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。
【0100】
[離型剤(G)]
本願発明の硬化性組成物は、更に、離型剤(G)を含むことができる。特に、金型を使って成形する場合に離型剤(G)の添加が好ましい。離型剤(G)を用いることにより、熱成形装置の金型からの剥離性が向上する。離型剤(G)としては、天然ワックス、モンタン酸エステル等の合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等が挙げられる。天然ワックスとしては、カルバナワックス、キャンデリラワックスが挙げられる。合成ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリン、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックスが挙げられる。離型剤(G)を用いる場合、一種のみ用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
離型剤(G)を用いる場合、その含有率は、硬化性組成物の固形分全体100質量%中、例えば0.1~0.5質量%、好ましくは0.2~0.3質量%である。
【0101】
[その他フィラー(H)]
本願発明の硬化性組成物は、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)以外のその他フィラー(H)を含有してもよい。その他フィラー(H)としては、難燃性フィラー、電磁遮蔽性フィラー等が例示できる。その他フィラー(H)として、例えば石英ガラス、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、フェライト等が挙げられる。その他フィラー(H)の好ましい平均粒子径D50および表面処理方法は、上述したシリカフィラー(C)と同様である。
電磁遮蔽性など他の性能を発現させる観点からは、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)とその他フィラー(H)の含有比率(質量比)が((C)+(D)):(H)=50:50~90:10が好ましい。但し、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)とその他フィラーとの合計が、硬化性組成物100質量%に対して95質量%を超えない範囲が好適である。
【0102】
また、その他成分として熱可塑性樹脂(エラストマー)を用いることができる。また、染料、顔料(例えば、カーボンブラック)、難燃剤、酸化防止剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、イオン捕集剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、電磁波シールド剤等が挙げられる。
【0103】
[硬化性組成物の製造方法]
硬化性組成物は、各配合成分を混練することにより得られる。例えば、各配合成分を混合した後に、実質的に溶剤を含まない状態で溶融混練することにより無溶剤型の硬化性組成物を得ることができる。このとき、シート状、顆粒状、ペレット状、粉末状、タブレット状などの所望の形状にしてもよい。また、配合した組成物を溶融混練した無定形状の固形物であってもよい。
【0104】
シート状の硬化性組成物は、例えば、実質的に無溶剤である硬化性組成物の成分を配合し、ロールやニーダーにより溶融混練して混練物をシート状にした後、冷却することにより得ることができる。溶融混練は、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などの公知の混練機を用いることができる。混練条件として、温度は、上述の各成分の軟化点以上であることが好ましく、例えば30~150℃、エポキシ系樹脂の熱硬化性を考慮すると、好ましくは40~140℃、更に好ましくは60~120℃である。時間は、例えば1~30分間、好ましくは5~15分間である。
混練は、減圧条件下でおこなうことが好ましい、これにより、脱気できるとともに、混練物への気体の侵入を防止できる。減圧条件下の圧力は、好ましくは0.1kg/cm以下、より好ましくは0.05kg/cm以下である。減圧下の圧力の下限は特に限定されないが、例えば1×10-4kg/cm以上である。
【0105】
混練物を塑性加工して硬化性組成物シートを形成する場合、溶融混練後の混練物は、冷却することなく高温状態のままで塑性加工することが好ましい。塑性加工方法としては特に制限されず、平板プレス法、Tダイ押出法、スクリューダイ押出法、ロール圧延法、ロール混練法、インフレーション押出法、共押出法、カレンダー成形法などが挙げられる。成形機としては、Tダイスクリュー成形機、コンプレッションモールド成形機、カレンダー成形機が挙げられる。塑性加工温度としては、上述の各成分の軟化点以上が好ましく、エポキシ樹脂の熱硬化および成形性を考慮すると、例えば40~150℃、好ましくは50~140℃、更に好ましくは70~130℃である。なお、シート状の硬化性組成物の表面に、保護フィルムを積層してもよい。また、シート状の硬化性組成物は、枚葉状、或いは巻き取り可能なロール状としてもよい。
【0106】
シート状の硬化性組成物におけるシートの厚みは用途に合わせて適宜調整可能であるが、50μm以上であることが好ましく、70μm以上がより好ましい。50μm以上とすることにより、例えば、ICチップやその周辺の配線層、絶縁層を併せて封止させる用途に用いた場合、被覆したい対象を完全に覆うことが容易となり、優れた硬化物とすることができる。
【0107】
また、得られたシート状の硬化性組成物を粉砕して粉末状、顆粒状にしてもよい。更に、粉末、顆粒を圧縮打錠によりタブレット状にしてもよい。
【0108】
粉末状、顆粒状、タブレット状の硬化性組成物は、シートを経由せずに、ロールやニーダーにより溶融混練して混練物から直接製造してもよい。この方法は、例えばニーダー、ロールミル、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、シュギミキサー、バーティカルグ
ラニュレーター、ハイスピードミキサー、ファーマトリックス、ボールミル、スチールミル、サンドミル、振動ミル、アトライター、バンバリーミキサー等、回分式混練機;二軸押出機、単軸押出機、ローター型二軸混練機等を用いて、製造することができる。
【0109】
具体的には、複数の小孔を有する円筒状外周部と円盤状の底面から構成される回転子の内側に、溶融混練された硬化性組成物を供給し、その硬化性組成物を、回転子を回転させて得られる遠心力によって小孔を通過させて得る方法;硬化性組成物の各原料成分をミキサーで予備混合後、ロール、ニーダー又は押出機等の混練機により加熱混練後、冷却、粉砕工程を経て粉砕物としたものを、篩を用いて粗粒と微紛の除去を行って得る方法;硬化性組成物の各原料成分をミキサーで予備混合後、スクリュー先端部に小径を複数配置したダイを設置した押出機を用いて、加熱混練を行うとともに、ダイに配置された小孔からストランド状に押し出されてくる溶融樹脂をダイ面に略平行に摺動回転するカッターで切断して得る方法等が挙げられる。
【0110】
顆粒状とする場合には、粒度は70~500μmであることが好ましい。粒度を70~500μmとすることにより、粉体による汚染を抑制しつつ、硬化後の組成物の厚みを調整することが容易になる。粒度は顕微鏡観察による画像2値化法で、粒子の抽出や定量化をおこない、測定する。
【0111】
また、各配合成分を溶剤と共に混合してワニスを作製し、または、各原料成分を混練して得られた硬化性組成物を有機溶剤等に溶解又は分散してワニスを作製し、その後、ワニスを塗工・乾燥することによりシート状の硬化性組成物を得てもよい。塗布の方法としては、コンマコーターやダイコーターのような塗工機を用いた塗工による方法、ステンシル印刷やグラビア印刷のような印刷による方法等が挙げられる。
【0112】
また、前述と同様に、ワニス経由で製造したシート状の硬化性組成物を更に顆粒状、粉末状に粉砕してもよい。更には、顆粒状、粉末状からタブレット状(ペレット状)などの所望の形状に成形してもよい。また、ワニスを噴霧乾燥して、顆粒状、粉末状等に形成することもできる。
硬化性組成物の形状は用途により適宜選択することができる。例えば、金型充填性の観点からは、顆粒状、粉状が好ましく、生産性の観点からはシート状であることが好ましい。
【0113】
≪硬化物およびその製造方法≫
本実施形態の熱硬化性を示す硬化性組成物を基材に塗工後、乾燥、熱重合させる。或いは熱溶融成形し、硬化処理することにより硬化物が得られる。熱溶融成形と硬化処理は同時であっても、熱溶融成形後に硬化処理を行ってもよい。なお、ここでいう硬化物とは、更に加熱しても実質的に硬化反応が進行しない程度に硬化された状態をいう。硬化性組成物を製造するときの溶融混練においては、その一部が硬化反応し得るが、更に加熱すれば硬化し得る状態は、ここでいう硬化物には含まない。硬化性組成物を用いて、例えばICチップなどを封止する際に、熱を加え成形体が軟化・流動化する過程で、ポリアミド樹脂(A)に含まれるダイマー構造による応力緩和がおこるが、封止体の面方向・縦方向に応力が分散され、その結果、接着力低下の抑制、発泡の抑制およびクラック抑制といった効果が発揮される。溶融成形時に圧力を加えてもよい。
【0114】
熱硬化温度は150~230℃が好ましく、加熱時間は30~180分が好ましい。硬化剤(E)が3次元架橋を形成し硬化物となる。熱溶融する際には熱に加えて、圧力を加えてもよい。熱と圧力を加えることで、軟化・流動化をより容易に行うことができる。また、ポリアミド樹脂(A)に含まれるダイマー構造による応力緩和を促進させることができる。
【0115】
硬化物のガラス転移温度(Tg)は、100~200℃であることが好ましく、120~180℃であることがより好ましい。上記範囲とすることでガスバリア性が向上する。
【0116】
本実施形態の硬化性組成物がシート状の場合、例えば、このシートを半導体チップ上に載置して熱圧着により溶融成形させ、硬化処理を行うことにより、半導体チップに封止樹脂として機能する硬化物を被覆させたICパッケージを得ることができる。また、本実施形態の硬化性組成物がタブレット状の場合、例えば、このタブレットを半導体チップがセットされた金型内に溶融流動させながら注入し、成形工程、硬化工程を経て硬化性組成物の硬化物を封止樹脂としたICパッケージを得ることができる。
【0117】
≪積層体≫
積層体は、本発明の硬化性組成物より形成された接着層と、基材とを含んでなる。ポリエステルやポリイミド等のプラスチックフィルム、金属箔等の間に本発明の硬化性組成物からなる接着剤、接着シートを挟み、加熱、加圧することによって、積層体を得ることができる。硬化性組成物の膜厚は、充分な接着性、ガスバリア性を発揮させる為、また取り扱い易さの点から、5~500μmであることが好ましく、更に好ましくは10~100μmである。
【0118】
基材にプラスチックフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0119】
基材に金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0120】
基材に硬化性組成物を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビア印刷、フレキソ印刷、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等が挙げられる。
【実施例0121】
本発明を更に具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例で「部」は「質量部」であり、「%」は「質量%」である。表中の配合量は、質量部である。
【0122】
<酸価の測定>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、シクロヘキサノン溶媒100mLを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。酸価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
但し、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0123】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
Mwの測定は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「GPC-101」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「KF-805L」(昭和電工社製:GPCカラム:8mmID×300mmサイズ)を直列に2本接続して用い、試料濃度1質量%、流量1.0mL/min、圧力3.8MPa、カラム温度40℃の条件で行い、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。データ解析はメーカー内蔵ソフトを使用して検量線および分子量、ピーク面積を算出し、保持時間17.9~30.0分の範囲を分析対象として重量平均分子量を求めた。
【0124】
<ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)の測定方法>
ポリアミド樹脂を不揮発分35%になるようシクロヘキサノンに溶解させ、ポリアミド樹脂ワニスを作製した。このワニスを耐熱性の離形フィルム上にドクターブレード10milで塗工し、130℃で10min乾燥させて、厚さ25μmのポリアミド樹脂のフィルムを得て、ガラス転移温度測定用のサンプルとした。動的粘弾性測定装置で-50~200℃の温度範囲でTanδの測定をおこない、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
動的粘弾性測定装置:DVA-200(アイティー計測制御社製)
昇温速度:10℃/min
測定周波数:10Hz
つかみ間長:15mm
幅:5mm
【0125】
<ポリアミド樹脂の合成>
[ポリアミド樹脂(A’-1)]
撹拌機、ディーンスターク装置を備えた還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、炭素数36のダイマージアミンとしてプリアミン1075を481.0g(0.901mol)、その他ジアミンとして3,4'-ジアミノジフェニルエーテルを187.5g(0.938mol)、多塩基酸としてアジピン酸を139.1g(0.952mol)、セバシン酸を192.4g(0.952mol)を仕込み撹拌した。発熱が収まったところで徐々に加熱をおこない反応を進行させた。反応の進行にともない発生する水を系外に取出しながら、内温を230℃まで上げ、そのままの温度を保持し、4時間反応を続けた。次いで約2kPaの減圧下でそのままの温度で2時間保持し反応を完結させた。重量平均分子量3万、酸価11.4mgKOH/g、Tg28℃のポリアミド樹脂(A’-1)を得た。なお、ポリアミド樹脂(A)を構成するダイマージアミンおよびダイマー酸の合計の含有率は48.1質量%である。
【0126】
[ポリアミド樹脂(A-1~A-12、A-14~A-16)]
ポリアミド樹脂(A’-1)と同様の方法で、表1の組成および仕込み質量部に従って合成を行い、ポリアミド樹脂を得た。その特性値を表1に示す。
【0127】
[ポリアミド樹脂(A-13)]
撹拌機、ディーンスターク装置を備えた還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、炭素数36のダイマージアミンとしてプリアミン1075を672.6g(1.26mol)、その他ジアミンとして3,4'-ジアミノジフェニルエーテルを59.1g(0.295mol)、多塩基酸としてアジピン酸を194.5g(1.33mol)、セバシン酸を59.1g(0.292mol)を仕込み撹拌した。発熱が収まったところで徐々に加熱をおこない反応を進行させた。反応の進行にともない発生する水を系外に取出しながら、内温を230℃まで上げ、そのままの温度を保持し、4時間反応を続けた。次いで約2kPaの減圧化でそのままの温度で2時間保持し反応を進行させた。その後、内温を180℃まで下げ、ベンジルアミン14.7g(0.137mol)を添加し、徐々に温度を240℃まで上げ、反応を完結させた。重量平均分子量3万、酸価0.5mgKOH/g、Tg26℃のポリアミド樹脂(A-13)を得た。
【0128】
【表1】
【0129】
表1の略称の内容を以下に示す。
Dacid:炭素数6の環構造を有する炭素数36のダイマー酸(ダイマー構造比率:95%以上、酸価:197mgKOH/g「プリポール1009」クローダジャパン社製)AdA:アジピン酸
SeA:セバシン酸
5-HIP:5-ヒドロキシイソフタル酸
IPA:イソフタル酸
DA:炭素数6の環構造を有する炭素数36のダイマージアミン(ダイマー構造比率:95%以上、「プリアミン1075」クローダジャパン社製)
DAPE:3,4’-ジアミノジフェニルエーテル
BzA:ベンジルアミン
【0130】
[実施例1]
ポリアミド樹脂(A-1)2.4部、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(B-1)0.6部、板状シリカ(C-1)79.9部および硬化剤してビフェニル型エポキシ樹脂(E-5)12部とトリフェニルメタン型フェノール樹脂(E-9)5部、さらに硬化触媒としてイミダゾール化合物(F-1)0.1部を配合し、混練機により100℃、10分間、減圧下(0.01kg/cm)で溶融混練し、混練物を調整した。次いで、得られた混練物を、平板プレス法により、厚さ300μmのシート状の硬化性組成物を形成した。
【0131】
[実施例2~36]、[比較例1~4]
実施例1と同様の方法で表2~4の通り配合し、実施例1と同様の方法によりシート状の硬化性組成物を得た。
【0132】
実施例および比較例で使用した材料の詳細を下記に示す。
【0133】
・フルオレン骨格含有ポリオール(B)
B-1:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン
B-2:9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン
B-3:9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン
【0134】
・シリカフィラー(C)
C-1:板状シリカ(AGC社製、サンラブリー、平均粒径5μm)
C-2:溶融球状シリカ(アドマテックス社製、SO-25R、平均粒径d50:0.5μm)
【0135】
・熱伝導性フィラー(D)
D-1:板状アルミナ(キンセイマテック社製、セラフ02025、平均粒径2μm)
D-2:板状アルミナ(キンセイマテック社製、セラフ05070、平均粒径5μm)
D-3:窒化ホウ素(巴化学社製、PT120、平均粒径12μm)
【0136】
・硬化剤(E)
E-1:トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、日本化薬社製、EPPN-501H、エポキシ当量(以下EPW)=167
E-2:フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬社製、NC-3000、EPW=275
E-3:フェノール変性キシレン樹脂型エポキシ樹脂、三菱化学社製、YX7700、EPW=270
E-4:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、日本化薬社製、XD-1000、EPW=253
E-5:ビフェニル型エポキシ樹脂、三菱化学社製、YX4000HK、EPW=185
E-6:テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂、三菱化学社製、jER1031S、EPW=200
E-7:ナフタレン型エポキシ樹脂、DIC社製、HP-6000、EPW=250
E-8:ナフタレン含有ノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬社製、NC-7000L、EPW=231
E-9:トリフェニルメタン型フェノール樹脂、明和化成社製、MEH-7500、O H当量=97g/eq.
E-10:キシリレン型フェノール樹脂、明和化成社製、MEHC-7800-SS 、OH当量=173g/eq.
E-11:ヘキサメチレンジイソシアヌレート、住化バイエル製 デスモジュールN3300
【0137】
硬化触媒(F)
F-1:イミダゾール化合物(2P4MZ、四国化成工業社製)
【0138】
各実施例および比較例の硬化性組成物の硬化物について、Tgの測定、および水蒸気透過率、酸素透過率、接着性の評価を行なった。測定方法、評価基準は以下の通りである。
【0139】
<硬化物のガラス転移温度(Tg)の測定方法>
作製した300μmのシート状の各硬化性組成物を耐熱性の離形フィルム上で180℃の温度で60分熱硬化させ、ガラス転移温度測定用のサンプルとした。動的粘弾性測定装置で-50~200℃の温度範囲でTanδの測定をおこない、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
動的粘弾性測定装置:DVA-200(アイティー計測制御社製)
昇温速度:10℃/min
測定周波数:10Hz
つかみ間長:15mm
幅:5mm
【0140】
<接着力試験用サンプルおよび試験片の作製>
作製したシート状の各硬化性組成物を50mm×50mmに切り出し、その上に5mm×5mm×300μmのAuメッキ付きシリコンチップを縦3列、横3列、計9個を等間隔になるように配置した。但し、シート状の硬化性組成物がシリコンチップのシリコン面に接するように配置させた。シリコンチップに接触しているシート状の硬化性組成物を密着させるために、シリコーン離形処理された38μmのポリエチレンテレフタレートを対峙させ、熱ラミネート試験装置で熱ラミネート(温度80℃、シリンダー圧力0.3MPa)させた。熱ラミネート後、シリコンチップの周囲をカッターナイフで切り込みを入れ、シリコンチップの片側にシート状の硬化性組成物が仮接着された接着力試験用サンプルを作製した。
被着体として金メッキ加工された銅フレーム基板を準備し、その上にシート状の硬化性組成物が仮接着されたシリコンチップを配置して、熱プレス(150℃×1MPa×1min)し、続いてポストベーク(170℃×2時間)させて試験片を準備した。
【0141】
<接着力の評価>
上記で作製した各試験片を、ボンドテスター(ノードソン・アドバンスド・テクノロジー社製、製品名:Dage4000-PXY)を用いて評価した。測定条件は、測定スピードを100μm/sとし、測定高さを100μmとした。3点で接着力を測定した値の算術平均値を算出した。数値が大きいほど、硬化物のシリコンチップおよび被着体に対する接着性が高いと評価することができる。評価基準は以下の通りである。
5:非常に優れている(接着力の算術平均値が10N/mm以上)。
4:より優れている(接着力の算術平均値が7N/mm以上、10N/mm未満)。
3:優れている(接着力の算術平均値が5N/mm以上、7N/mm未満)。
2:実用可能である(接着力の算術平均値が3N/mm以上、5N/mm未満)。
1:実用不可能である(接着力の算術平均値が3N/mm未満)。
【0142】
<水蒸気透過率の評価>
得られたシート状の各硬化性組成物を50mm×50mmに切り出し、ポストベーク(170℃×2時間)させて水蒸気透過率測定用サンプルを作成した。水蒸気透過率測定はカップ法水分測定装置を用いて行った。測定方法はJIS Z0208にしたがっておこない、測定条件は40℃ 、相対湿度90%である。
5:非常に優れている(水蒸気透過率が3.0g/m・day以下)。
4:より優れている(水蒸気透過率が3.0g/m・dayを超えて5.0g/m・day以下)。
3:優れている(水蒸気透過率が5.0g/m・dayを超えて10.0g/m・day以下)。
2:実用可能である(水蒸気透過率が10.0g/m・dayを超えて30.0g/m・day未満)。
1:実用不可能である(水蒸気透過率が30.0g/m・day以上)。
【0143】
<酸素透過率の評価>
得られたシート状の各硬化性組成物を50mm×50mmに切り出し、ポストベーク(170℃×2時間)させて測定用サンプルを作成した。温度23℃、相対湿度80%RH条件の酸素透過度を測定し、以下の基準で評価した。酸素透過度の測定は、MOCON社製酸素透過率測定装置 OX-TRAN2/21を用い、JIS K 7126に準拠して、等圧法にて行った。
5:非常に優れている(酸素透過率が3.0cc/m・day・atm以下)。
4:より優れている(酸素透過率が3.0cc/m・day・atmを超えて5.0cc/m・day・atm以下)。
3:優れている(酸素透過率が5.0cc/m・day・atmを超えて10.0cc/m・day・atm以下)。
2:実用可能である(酸素透過率が10.0cc/m・day・atmを超えて30.0cc/m・day・atm未満)。
1:実用不可能である(酸素透過率が30.0cc/m・day・atm以上)。
【0144】
【表2】
【0145】
【表3】
【0146】
【表4】
【0147】
実施例に示すように、本実施例に係る硬化性組成物から得られた硬化物は、比較例1~4と比べて優れた接着性とガスバリア性が得られることを確認した。
【0148】
[産業上の利用可能性]
本実施形態に係る硬化性組成物によれば、接着性およびガスバリア性に優れるので、半導体チップの封止材、接着材、アンダーフィル材、ポッティング材等をはじめとする絶縁性樹脂材料として好適に利用できる。また、有機薄膜太陽電池、表示素子などの有機デバイス等のバリア性に対する要求の高い分野へも応用でき、広い分野での活躍が期待できる。