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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049688
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】測量装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
G01C15/00 103E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156076
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】大友 文夫
(72)【発明者】
【氏名】大佛 一毅
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 薫
(72)【発明者】
【氏名】東海林 直樹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】測距光の走査部が回転体を有する測量装置の、走査実行時に発生するコリオリ力の発生を抑止し、測量装置の姿勢を安定させ、測定の安定を図る。
【解決手段】測距光21を測距光軸15上に射出し、測定対象からの反射測距光22を受光して測距を行う測距部2と、測距光を基準光軸に対して偏向させる光軸偏向部9と、姿勢検出装置6と、測距光の基準光軸に対する射出方向を検出する測定方向検出部7と、光軸偏向部を介して測距光軸の偏向を制御し、測距部による測距を実行し、光軸偏向部は、光学プリズムで構成された一対のディスクプリズム17,18を具備し、一対のディスクプリズムの個々の回転、相対回転により測距光軸を偏向する様構成され、演算制御部は、光軸偏向モータドライバを介して光軸偏向部を駆動し、測距光を所定のスキャンパターンで走査させると共にディスクプリズムの一方を他方に対してコリオリ力の発生を抑止する様に逆回転させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距光を測距光軸上に射出し、測定対象からの反射測距光を受光して測距を行う測距部と、該測距部の基準光軸上に設けられ、前記測距光を前記基準光軸に対して偏向させる光軸偏向部と、該光軸偏向部を駆動する光軸偏向モータドライバと、姿勢検出装置と、前記測距光の前記基準光軸に対する射出方向を検出する測定方向検出部と、記憶部と、前記光軸偏向部を介して測距光軸の偏向を制御し、前記測距部による測距を実行し、前記測距部、前記姿勢検出装置、前記光軸偏向部の同期制御を行う様構成された演算制御部とを具備し、前記光軸偏向部は、光学プリズムで構成された一対のディスクプリズムを具備し、該一対のディスクプリズムの個々の回転、相対回転により前記測距光軸を偏向する様構成され、前記演算制御部は、前記光軸偏向モータドライバを介して前記光軸偏向部を駆動し、前記測距光を所定のスキャンパターンで走査させると共に前記ディスクプリズムの一方を他方に対してコリオリ力の発生を抑止する様に逆回転させる様構成した測量装置。
【請求項2】
前記演算制御部は、前記一対のディスクプリズムの一方のディスクプリズムの質量×角速度と他方のディスクプリズムの質量×角速度とが等しく、或は略等しくなる様、前記光軸偏向部の駆動を制御する様構成された請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記2つのディスクプリズムの質量×回転数の比を0.7~1.5とする様、前記光軸偏向部の駆動を制御する様構成された請求項1に記載の測量装置。
【請求項4】
測量装置の姿勢を検出する姿勢検出装置を更に具備し、前記演算制御部は、前記姿勢検出装置の検出結果、前記測距部の測距結果、前記測定方向検出部の検出結果に基づき水平基準のスキャンパターンで3次元点群データを取得する様構成された請求項1~請求項3のうちいずれか1項に記載の測量装置。
【請求項5】
測量装置の姿勢を検出する姿勢検出装置を更に具備し、前記演算制御部は、前記姿勢検出装置の検出結果、前記測距部の測距結果、前記測定方向検出部の検出結果に基づき測定対象の水平基準の3次元測定データを取得する様構成された請求項1~請求項3のうちいずれか1項に記載の測量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測距光を走査して、点群データを取得する測量装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に点群データを取得する測量装置(レーザスキャナ)は、測距光を走査する為の連続回転する部分を有し、大型で重量が大きく、その為3脚等剛性を有する支持装置に設置される。
【0003】
一方、レーザスキャナの普及に伴い、小型軽量化が図られ、作業者が携帯した状態(ハンドヘルド状態)で点群データを取得可能なレーザスキャナが実用化されている。
【0004】
又、点群データを取得するレーザスキャナの1つとして、1対のプリズムを相対回転させ、2つのプリズムの相互偏向作用によって、測距光を走査するものがある。斯かるレーザスキャナは、小型軽量化が可能で、ハンドヘルド状態での測定を可能とする。
【0005】
該レーザスキャナでは、測距光の走査をプリズムの連続回転により行っている。プリズムの回転に伴いコリオリ力が発生し、このコリオリ力は、ハンドヘルド等の、不安定な支持では、レーザスキャナの支持姿勢に影響を与える可能性があり、測定の安定に影響を与える可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6541365号公報
【特許文献2】特開2016-151423号公報
【特許文献3】特開2017-90244号公報
【特許文献4】特開2017-106813号公報
【特許文献5】特開2018-28464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、測距光の走査部が回転体を有する測量装置の、走査実行時に発生するコリオリ力の発生を抑止し、測量装置の姿勢を安定させ、測定の安定を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、測距光を測距光軸上に射出し、測定対象からの反射測距光を受光して測距を行う測距部と、該測距部の基準光軸上に設けられ、前記測距光を前記基準光軸に対して偏向させる光軸偏向部と、該光軸偏向部を駆動する光軸偏向モータドライバと、姿勢検出装置と、前記測距光の前記基準光軸に対する射出方向を検出する測定方向検出部と、記憶部と、前記光軸偏向部を介して測距光軸の偏向を制御し、前記測距部による測距を実行し、前記測距部、前記姿勢検出装置、前記光軸偏向部の同期制御を行う様構成された演算制御部とを具備し、前記光軸偏向部は、光学プリズムで構成された一対のディスクプリズムを具備し、該一対のディスクプリズムの個々の回転、相対回転により前記測距光軸を偏向する様構成され、前記演算制御部は、前記光軸偏向モータドライバを介して前記光軸偏向部を駆動し、前記測距光を所定のスキャンパターンで走査させると共に前記ディスクプリズムの一方を他方に対してコリオリ力の発生を抑止する様に逆回転させる様構成した測量装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記演算制御部が、前記一対のディスクプリズムの一方のディスクプリズムの質量×角速度と他方のディスクプリズムの質量×角速度とが等しく、或は略等しくなる様、前記光軸偏向部の駆動を制御する様構成された測量装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記演算制御部が前記2つのディスクプリズムの質量×回転数の比を0.7~1.5とする様、前記光軸偏向部の駆動を制御する様構成された測量装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、測量装置の姿勢を検出する姿勢検出装置を更に具備し、前記演算制御部は、前記姿勢検出装置の検出結果、前記測距部の測距結果、前記測定方向検出部の検出結果に基づき水平基準のスキャンパターンで3次元点群データを取得する様構成された測量装置に係るものである。
【0012】
更に又本発明は、測量装置の姿勢を検出する姿勢検出装置を更に具備し、前記演算制御部は、前記姿勢検出装置の検出結果、前記測距部の測距結果、前記測定方向検出部の検出結果に基づき測定対象の水平基準の3次元測定データを取得する様構成された測量装置に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測距光を測距光軸上に射出し、測定対象からの反射測距光を受光して測距を行う測距部と、該測距部の基準光軸上に設けられ、前記測距光を前記基準光軸に対して偏向させる光軸偏向部と、該光軸偏向部を駆動する光軸偏向モータドライバと、姿勢検出装置と、前記測距光の前記基準光軸に対する射出方向を検出する測定方向検出部と、記憶部と、前記光軸偏向部を介して測距光軸の偏向を制御し、前記測距部による測距を実行し、前記測距部、前記姿勢検出装置、前記光軸偏向部の同期制御を行う様構成された演算制御部とを具備し、前記光軸偏向部は、光学プリズムで構成された一対のディスクプリズムを具備し、該一対のディスクプリズムの個々の回転、相対回転により前記測距光軸を偏向する様構成され、前記演算制御部は、前記光軸偏向モータドライバを介して前記光軸偏向部を駆動し、前記測距光を所定のスキャンパターンで走査させると共に前記ディスクプリズムの一方を他方に対してコリオリ力の発生を抑止する様に逆回転させる様構成したので、コリオリ力の発生が抑止され、測量装置の姿勢を安定させ、測定の安定が図れるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例に係る測量装置の概略構成図である。
図2】(A)(B)は該測量装置に於ける光軸偏向部の作用と、スキャンパターンの関係を示す説明図である。
図3】該測量装置に於けるスキャンパターンの一例を示す説明図である。
図4】(A)は測定方向の画像に対するスキャンパターンと水平との関係を示す図、(B)はスキャンパターンを水平基準に修正した状態を示す図、(C)は測量装置が移動した場合の、測定方向の画像、スキャンパターンを時系列に示す図である。
図5】(A)は測定対象をスキャンした場合に測距値が同じになる部分を示す図、(B)は測距値が同じになる部分を抽出した図、及び測量装置が移動した場合の前回のスキャンと今回のスキャンの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0016】
図1は、本実施例が適用される測量装置1を示しており、該測量装置1は、レーザスキャナとしての機能を有している。
【0017】
該測量装置1は携帯可能となっており、手持ち(ハンドヘルド)で支持され、或は1脚で支持することができる。又、移動車、飛行体等へ搭載することも可能である。
【0018】
前記測量装置1は、主に、測距部2、測定方向撮像部3、演算制御部4、記憶部5、姿勢検出装置6、測定方向検出部7、光軸偏向モータドライバ8、光軸偏向部9、表示部10、を具備している。これらは筐体12に収納され、一体化されている。
【0019】
前記測距部2は、測距光軸15上に測距光21を射出し、測定対象からの反射光を受光し、測距光21の往復時間に基づき測距を行う。前記測定方向撮像部3は測距光21の射出方向(測定方向)の画像を取得する。
【0020】
前記演算制御部4としては本実施例に特化されたCPU、或は汎用性CPU、埋込みCPU等が用いられ、前記演算制御部4には時刻計測手段が内蔵されている。又、前記記憶部5としては半導体メモリ等が用いられる。
【0021】
前記演算制御部4は、前記光軸偏向モータドライバ8を介して前記光軸偏向部9を制御する。又、前記演算制御部4は、前記光軸偏向部9を介して測距光軸15の偏向を制御し、前記測距部2による測距を実行し、更に、前記測距部2、前記測定方向撮像部3、前記姿勢検出装置6、前記光軸偏向部9等の同期制御等を行う。
【0022】
前記記憶部5には、本実施例を実行する為のプログラム、例えば測距プログラム、画像処理プログラム、光軸偏向制御プログラム、コリオリ力を軽減する為の前記光軸偏向部9の駆動条件を演算する演算プログラム、前記光軸偏向モータドライバ8を制御する為のプログラム、データ処理のプログラム等の種々のプログラムが格納されている。前記演算制御部4は、格納された前記プログラムを展開し、実行する。又、前記記憶部5には、測定データ、画像データ等の種々のデータが格納される。
【0023】
前記姿勢検出装置6は、前記測量装置1の姿勢、即ち該測量装置1の水平又は鉛直に対する傾斜角、傾斜方向、水平回転角、或は基準光軸O(後述)の水平又は鉛直に対する傾斜角、傾斜方向、水平回転角をリアルタイムで検出し、検出結果は前記演算制御部4に出力する。
【0024】
ここで、前記姿勢検出装置6としては、特許文献1に開示された姿勢検出装置を用いることができる。或は、加速度センサ、ジャイロセンサによって構成される慣性センサを用いることもできる。
【0025】
前記測距光軸15上に前記光軸偏向部9が配設される。該光軸偏向部9の中心を透過する真直な光軸は基準光軸Oとなっている。該基準光軸Oは、前記光軸偏向部9によって偏向されなかった時の前記測距光軸15と合致し、前記筐体12に対して所定の関係となっている。
【0026】
尚、前記光軸偏向部9としては、特許文献2、特許文献3、特許文献4に開示されたものを使用することができる。
【0027】
該光軸偏向部9は、光学プリズムで構成された一対のディスクプリズム17,18を具備する。該ディスクプリズム17,18は、それぞれ用途に見合った質量と径の円板形(或は円に外接する多角形)であり、前記測距光軸15上に該測距光軸15と直交して同心に配置され、所定間隔で平行に配置されている。
【0028】
前記ディスクプリズム17,18はそれぞれ前記基準光軸Oを中心に回転可能(同軸で回転可能)に設けられており、各ディスクプリズム17,18はそれぞれモータによって個別に且つ独立して回転される様構成され、モータは前記光軸偏向モータドライバ8によって駆動される。
【0029】
前記光軸偏向部9を透過する測距光21、即ち前記ディスクプリズム17,18を透過する測距光21は、該ディスクプリズム17,18の光学作用によって偏向され、更に該ディスクプリズム17,18の回転及び相対回転によって任意の方向に偏向される。
【0030】
測距光の偏向、走査は、該光軸偏向モータドライバ8による前記光軸偏向部9の駆動によって行われる。
【0031】
又、前記測定方向検出部7は、エンコーダ等の角度検出器を有し、該角度検出器からの信号に基づき前記ディスクプリズム17,18の回転角、回転方向を検出し、測定方向、即ち測距光の射出方向を検出し、これらの検出結果は前記演算制御部4に入力される。該演算制御部4は、前記測定方向検出部7からの検出結果に基づき前記光軸偏向モータドライバ8を介して前記ディスクプリズム17,18の回転角、回転方向、回転速度、回転比等を制御する様構成されている。
【0032】
前記ディスクプリズム17,18の回転を制御することで、前記基準光軸Oを基準として0°から最大偏角(例えば±30°)迄の任意の角度に前記測距光軸(即ち測距光)15を偏向することができる。更に、前記演算制御部4は、前記ディスクプリズム17,18の個別制御によって、測距光を任意のパターンでスキャン(走査)させることができ、任意のスキャンパターンで測距を実行することができる。
【0033】
更に、前記測距光21を照射しつつ、前記ディスクプリズム17,18の相対回転、一体回転を実行することで任意の方向及び任意のスキャンパターンで前記測距光21をスキャンさせることができる。
【0034】
例えば、図2(A)に示される様に、前記ディスクプリズム17,18間の相対回転角をθとし、個々の前記ディスクプリズム17,18による偏向A、偏向Bとすると、実際の軌跡20は合成偏向Cとなり、更に偏向角の大きさは前記相対回転角θによって決定される。従って、前記ディスクプリズム17,18を等速で正逆同期回転させると、前記測距光軸15(前記測距光21)は前記合成偏向Cの方向で直線的に往復スキャンされ、スキャンパターンは直線となる。更に、前記光軸偏向モータドライバ8を介し前記ディスクプリズム17,18の回転タイミング(回転位相)を変えることで、直線のスキャンパターンを回転することができるので、基準光軸Oを中心とする偏向範囲の全範囲を直線のスキャンパターンにより走査し、点群データを取得することができる。
【0035】
又、前記ディスクプリズム17と前記ディスクプリズム18との位置関係を固定した状態で(前記ディスクプリズム17と前記ディスクプリズム18とで得られる偏角を固定した状態で)、前記光軸偏向モータドライバ8により、前記ディスクプリズム17と前記ディスクプリズム18とを一体に回転すると、前記測距光軸15(前記測距光21)は前記基準光軸O(図1参照)を中心とした円でスキャンされる。
【0036】
更に、図2(B)に示される様に、前記ディスクプリズム17の回転速度に対して遅い回転速度で前記ディスクプリズム18を回転させれば、角度差θは漸次増大しつつ前記測距光21が回転される。従って、該測距光21のスキャン軌跡はスパイラル状となる。
【0037】
又、前記ディスクプリズム17、前記ディスクプリズム18の回転方向、回転速度、回転速度比SRをそれぞれ制御することで、前記測距光21のスキャン軌跡を前記基準光軸Oを中心とした種々の2次元のスキャンパターンが得られる。
【0038】
更に、前記ディスクプリズム17と前記ディスクプリズム18の、一方の前記ディスクプリズム17を25回転、他方の前記ディスクプリズム18を逆方向に5回転することで(回転比5/25)、図3に示される様な、花びら状の2次元の閉ループスキャンパターン24(内トロコイド曲線)が得られる。
【0039】
更に、前記ディスクプリズム17と前記ディスクプリズム18とを逆方向に回転し、回転比を略等しくすることで、図4に示される様な2次元の閉ループのスキャンパターン24が得られる。
【0040】
前記測距部2は、光波距離計としての機能を有し、測距光21を前記測距光軸15に沿って、測定点、或は測定対象に射出し、測定点、或は測定対象からの反射測距光22を受光し、測距光の往復時間(飛行時間)に基づき光波距離測定を実行する。前記測距部2の測距結果は前記演算制御部4に入力される。
【0041】
前記演算制御部4は、前記測距光21を連続して照射しつつ、前記ディスクプリズム17,18を所定の回転比で連続回転する様制御することで、前記測距光21を2次元のパターンでスキャンさせることができる。又、測距光21をパルス発光させ、パルス光毎の測距を行うことでスキャン軌跡に沿った点群データを取得することができる。
【0042】
ここで、前記測量装置1による測定に於いて、該測量装置1自体の動きを伴う場合、該測量装置1の動きが連続回転する前記ディスクプリズム17,18にコリオリ力を生じさせる。
【0043】
この為、前記測量装置1が不安定な支持状態で使用されていた場合、例えば、該測量装置1が手持ちであったり、或は1脚に支持されていた場合、或は測量装置1が移動車、飛行体等へ搭載された場合等では、コリオリ力の発生により、測定に不安定性をもたらす。
【0044】
この為、本実施例では、コリオリ力の発生を抑止する様、前記演算制御部4により前記光軸偏向部9を制御する。
【0045】
一般に、回転体のコリオリ力は、回転体の質量×回転数(或は質量×角速度)で表される。従って、前記演算制御部4は前記ディスクプリズム17及び前記ディスクプリズム18の回転によって発生するコリオリ力が相殺される様に前記ディスクプリズム17,18の回転を制御する。
【0046】
前記ディスクプリズム17の質量×回転数(或は質量×角速度)と前記ディスクプリズム18の質量×回転数(或は質量×角速度)とが略等しく、即ち慣性力比が(0.7~1.5)となる様、各ディスクプリズム17,18の質量及び回転数を設定して逆回転させる。
【0047】
前記演算制御部4には、前記ディスクプリズム17,18の質量が予め設定入力されており、点群データを取得する条件(スキャン条件)、例えば点群密度等を設定することで、前記演算制御部4は、前記ディスクプリズム17,18の前記慣性力比が(0.7~1.5)となる様に、スキャンパターン、前記ディスクプリズム17,18の回転速度を演算し、演算された回転速度で前記ディスクプリズム17を回転し、演算された回転速度で前記ディスクプリズム18を逆回転させる。
【0048】
この制御で、前記ディスクプリズム17の回転によって発生するコリオリ力と前記ディスクプリズム18の回転によって発生するコリオリ力とを相殺することができ、前記光軸偏向部9の前記ディスクプリズム17,18の回転によって発生するコリオリ力を抑止した状態で、測定を実行できる。
【0049】
前記測定方向検出部7は、前記ディスクプリズム17,18のそれぞれの回転角を検出し、前記測距光軸15の測定方向(測距光の射出方向)、即ち前記基準光軸Oに対する前記測距光軸15の偏向角、偏向方向をリアルタイムで検出する。従って、スキャン時の各測定点の前記基準光軸Oに対する前記測距光軸15の角度、方向がリアルタイムで検出(測角)できる。
【0050】
前記測定方向検出部7の測定方向検出結果(前記基準光軸Oに対する測角結果)は、測距結果に関連付けられて前記演算制御部4に入力され、該演算制御部4は測距結果、測角結果、前記姿勢検出装置6の検出結果とを関連付けて前記記憶部5に格納する。
【0051】
前記測定方向撮像部3は前記基準光軸Oと既知の関係であり、即ち、前記測定方向撮像部3の撮像光軸23は前記基準光軸Oと平行で光軸間の距離が既知となっている。又、前記測定方向撮像部3は、前記光軸偏向部9の最大偏角(例えば±30°)よりも大きい画角を有するカメラであり、前記光軸偏向部9による最大偏向範囲を含む画像データを取得する。又、前記測定方向撮像部3は、動画像、又は連続画像が取得可能である。該測定方向撮像部3により取得された画像データは前記演算制御部4に入力される。
【0052】
前記測定方向撮像部3の画素は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、前記画素は前記撮像光軸23を原点とした直交座標系を有し、前記各画素は該直交座標系での画素座標で位置が特定される。又、画素座標は前記画角との関係で角度換算(画素位置×画角/画角対応の縦及び横画素数)され、前記測定方向検出部7の測定方向検出結果と対応付けられる。尚、前記直交座標系の1軸(例えば、画素y軸)は、前記測定方向撮像部3が水平姿勢の状態で鉛直と合致し、直交する他の軸(例えば、画素x軸)は水平と合致する様に設定されている。
【0053】
前記演算制御部4は前記姿勢検出装置6の検出結果に基づき、前記基準光軸O及び前記撮像光軸23の水平に対する倒れ角(鉛直角)と水平回転角を求める。これにより、前記スキャン軌跡に沿った前記点群データの各測定点の水平基準の三次元座標も求めることができ、該点群データの三次元座標と前記画素座標との関連付けもできる。
【0054】
従って、前記測量装置1が、不安定な支持状態(例えば、手持ち支持状態)で使用されていた場合でも、コリオリ力の発生が抑止され、前記測量装置1が水平に支持されていなくても(整準されて無くとも)、安定した測定状態で、水平基準の3次元測定データを取得することができる。
【0055】
前記表示部10は、前記測定方向撮像部3により取得した画像や前記スキャン軌跡、測定状態、測定結果等を表示する。尚、前記表示部10をタッチパネルとして操作部と兼用してもよい。
【0056】
図4(A)、図4(B)、図4(C)は前記表示部10に表示される画像25を示し、該画像25は前記測定方向撮像部3で取得された画像と、スキャン軌跡(スキャンパターン26)との合成画像となっている。前記画像25中には画素の画素x軸、画素y軸が必要に応じ表示され、更に前記姿勢検出装置6の検出結果から得られる鉛直線及び水平線が示されている。
【0057】
図4(A)に於いて、画素y軸は鉛直線に対して左に回転しており、前記測量装置1が鉛直(或は水平)対して、左に傾いた状態で、前記画像25が取得されたことを示している。
【0058】
前記測量装置1の鉛直(或は水平)対する傾斜角は、前記姿勢検出装置6によって検出される。
【0059】
図4(A)中で示される前記スキャンパターン26の姿勢(向き)は、画素の画素x軸、画素y軸と合致している。
【0060】
従って、前記スキャンパターン26は前記鉛直線(又は水平線)に対して、左に回転している。
【0061】
前記演算制御部4は、前記光軸偏向モータドライバ8を介し前記ディスクプリズム17,18の回転タイミング(回転位相)を変えることで、スキャンパターンを回転させ、スキャンパターン26の向きを変更できる。
【0062】
図4(B)は演算制御部4で前記画素y軸と鉛直線の傾き(回転)関係を求め、前記スキャンパターン26を右方向に回転させ、スキャンパターン26の向き(姿勢を)鉛直線と一致する様に、スキャンパターン26′の向きを制御した状態を示している。
【0063】
図4(C)は前記測量装置1の移動中、時系列で取得した画像25a,25b,25cを重合させたものであり、又画像取得と同期してスキャンを実行して得られたスキャンパターン26a,26b,26cを示している。
【0064】
前記画像25a,25b,25cの取得時の前記姿勢検出装置6の検出結果をリアルタイムで取得し、前記画像25a,25b,25cの取得時に実行されたスキャンパターン26の向きを前記検出結果に基づき修正することで、常に鉛直線を基準としたスキャンを実行し、鉛直線と合致する方向の前記スキャンパターン26を取得したことを示している。
【0065】
図5は前記測量装置1を移動車(図示せず)に搭載して移動位置を算出する例を示す。
【0066】
図5(A)に示す様に前進方向に前記測距光軸の基準光軸Oを向けてスキャンを所定の時間間隔(Ts)で繰返し、1回のスキャンに於いて略等距離となる測距部分27(図中の鉛直壁等のスキャン部で、測距距離が等しくなるスキャン軌跡部分(等測距線部28))を抽出する。
【0067】
次に、図5(B)に示す様に該測距部分27に関し、繰返し測距した前回の等測距線部28と今回の等測距線部28′との差(ΔL)を算出し、該差(ΔL)と前記時間間隔(Ts)とで前記測量装置の移動速度(ΔL/Ts)を求める。
【0068】
前回の前記等測距線部28中の任意の測定点と今回の前記等測距線部28′中の前記任意の測定点に対応する測定点(即ち、前記等測距線部28、前記等測距線部28′に於いて、それぞれ前記測定方向検出部7によって検出される偏向方向が同一な点)との間の位置に関する差は全て略同一のΔLであり、前記等測距線部28中の測定点に関し、移動速度(ΔL/Ts)が略同じとなる。従って、前記等測距線部28中の全ての測定点、或は所定数の測定点について(ΔL/Ts)を求め、移動速度を平均化することで精度と信頼性の向上が図れる。
【0069】
又、姿勢検出装置6の出力に基づき鉛直角と水平角を随時求めることで、移動位置を求めることができる。
【0070】
尚、移動に伴うスキャン軌跡の対応関係は、前回のスキャン位置と今回のスキャン位置とをそれぞれ前記姿勢検出装置6の検出結果に基づき求め、前回のスキャン位置と今回のスキャン位置とを対比させることで得られる。尚、移動に伴うスキャン軌跡の対応関係を求める場合、前記取得画像を併用してもよい。
【0071】
以上説明した測量装置1の実施例では水平に対する傾きと、水平回転角は姿勢検出装置6の検出結果から取得し、距離は測距部2の測距結果から取得しているが、前記測量装置1の位置情報については該測量装置1にGNSSを設け、該GNSSからの位置情報と姿勢検出装置6の検出結果とを組合わせてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 測量装置
2 測距部
3 測定方向撮像部
4 演算制御部
5 記憶部
6 姿勢検出装置
7 測定方向検出部
8 光軸偏向モータドライバ
9 光軸偏向部
10 表示部
15 測距光軸
17 ディスクプリズム
18 ディスクプリズム
図1
図2
図3
図4
図5