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特開2024-49693プレキャスト基礎構造およびプレキャスト基礎構造の施工方法
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  • 特開-プレキャスト基礎構造およびプレキャスト基礎構造の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049693
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】プレキャスト基礎構造およびプレキャスト基礎構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
E02D27/01 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156083
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】岡田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 啓一
(72)【発明者】
【氏名】藤咲 雅巳
(72)【発明者】
【氏名】森川 勝浩
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA24
(57)【要約】
【課題】最後の敷設箇所で既に敷設された両隣のプレキャスト基礎との接合において主筋が干渉するのを回避できるプレキャスト基礎構造を提供する。
【解決手段】特定のコーナー箇所に敷設されるコーナー用プレキャスト基礎1と、このコーナー用プレキャスト基礎1に隣接して敷設されるコーナー隣接プレキャスト基礎2,3と、を少なくとも備えており、上記基礎1は、一端側に接合面11を、他端側に接合面12をそれぞれ有するとともに、接合面12側から当該接合面12に背向する外側面に通じる埋設管部13を有しており、上記基礎1の接合面11側と上記基礎2の接合面側との間が主筋で継がれており、上記基礎1の接合面12側に接合される上記基礎3の接合面側に埋設されているジョイント部38に、上記基礎1の上記外側面から埋設管部13に挿入された挿入筋14が接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定のコーナー箇所に敷設されるコーナー用プレキャスト基礎と、このコーナー用プレキャスト基礎に隣接して敷設されるコーナー隣接プレキャスト基礎と、を少なくとも備えており、
上記コーナー用プレキャスト基礎は、一端側に第1の接合面を、他端側に第2の接合面をそれぞれ有するとともに、上記第2の接合面側から当該第2の接合面に背向する外側面に通じる埋設管部を有しており、
上記コーナー用プレキャスト基礎と、上記第1の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎と、が主筋で継がれる一方、
上記コーナー用プレキャスト基礎の上記第2の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎の接合面側には、ジョイント部が埋設されており、このジョイント部に、上記コーナー用プレキャスト基礎の上記外側面から上記埋設管部に挿入された挿入筋が接続されるとともに、上記埋設管部内にグラウトが充填されることを特徴とするプレキャスト基礎構造。
【請求項2】
請求項1に記載のプレキャスト基礎構造において、上記挿入筋は雄螺子部を有しており、上記ジョイント部は上記接合面側に露出する雌螺子部を有しており、上記挿入筋の上記雄螺子部が上記雌螺子部に螺合されることを特徴とするプレキャスト基礎構造。
【請求項3】
請求項1に記載のプレキャスト基礎構造において、少なくとも、上記コーナー用プレキャスト基礎の上記第2の接合面には、当該接合面と直交する方向に、グラウト材が充填される凹部が形成されていることを特徴とするプレキャスト基礎構造。
【請求項4】
請求項1に記載のプレキャスト基礎構造において、上記コーナー用プレキャスト基礎は、基礎梁部と、この基礎梁部の下部から側方に張り出したフーチング部とを有しており、平面視で、上記フーチング部は互いに直交する第1の辺と第2の辺を有しており、上記基礎梁部はL字形状をなしており、上記第1の接合面は上記第1の辺と略面一に位置し、上記第2の接合面は上記第2の辺と略面一に位置することを特徴とするプレキャスト基礎構造。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のプレキャスト基礎構造を施工する方法であって、上記コーナー用プレキャスト基礎の上記第1の接合面側または上記第2の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎から敷設を開始し、上記コーナー用プレキャスト基礎の上記第2の接合面側または上記第1の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎を敷設した後、上記コーナー用プレキャスト基礎を最後に敷設することを特徴とするプレキャスト基礎構造の施工方法。
【請求項6】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のプレキャスト基礎構造を施工する方法であって、上記コーナー用プレキャスト基礎の数は一つの囲い基礎部分で複数個であり、当該複数個のうちの1個のコーナー用プレキャスト基礎の上記第1の接合面側または上記第2の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎から敷設を開始し、当該コーナー隣接プレキャスト基礎に繋がる他のプレキャスト基礎の敷設ができない場合に、別の上記コーナー用プレキャスト基礎の上記第1の接合面側または上記第2の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎の敷設およびこのコーナー隣接プレキャスト基礎に繋がる他のプレキャスト基礎の敷設を行うことを特徴とするプレキャスト基礎構造の施工方法。
【請求項7】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のプレキャスト基礎構造を施工する方法であって、上記コーナー用プレキャスト基礎の数は一つの囲い基礎部分で複数個であり、これら複数のコーナー用プレキャスト基礎の全部または一部の延設部分について、当該コーナー用プレキャスト基礎の上記第1の接合面側または上記第2の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎から敷設を開始し、当該コーナー用プレキャスト基礎の上記第2の接合面側または上記第1の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎を敷設した後、各延設部分で上記コーナー用プレキャスト基礎を最後に敷設することを特徴とするプレキャスト基礎構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄筋コンクリート基礎がプレキャスト化されたプレキャスト基礎構造およびプレキャスト基礎構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート基礎をプレキャスト化したプレキャスト基礎を施工現場で組み付ける工法が知られている。この工法では、上記プレキャスト部材の製作誤差や施工現場での施工誤差の吸収のために、当該プレキャスト部材の接合面間に隙間を空けて縦目地を形成している。また、鉄筋コンクリート構造の場合、応力伝達のために、上記プレキャスト基礎の鉄筋(主筋)は縦目地で継手接続される。この継手接続として、一方のプレキャスト部材の接合面側に埋設された機械式継手を用いる場合、この機械式継手の継手部材内部へグラウトを充填するとともに上記接合面間にも同時にグラウトを充填させる。
【0003】
一例として、図5に示すように、布基礎を構成するプレキャスト基礎8は、一方の接合面側から主筋81を突出させ、他方の接合面側には、主筋81が差し込まれる機械式継手82を備える構造となっている。
【0004】
なお、特許文献1には、仕口部を構成するPC仕口部材に部材端面に開口する鉄筋収容孔と、鉄筋収容孔の端部に埋設された定着金物を設け、部材端面に梁主筋に接続された機械式継手の鉄筋挿入孔が開口するPC梁部材を建て込み、外周面に螺条を有する鉄筋を定着金物の貫通孔と螺合させ、先端がPC梁部材の機械式継手内に到達するように配筋し、鉄筋の端部側からナットを締め付け、このナットと上記鉄筋との間から溢れ出すまでグラウトを充填し、上記PC梁部材の機械式継手内及び鉄筋収容孔内にグラウトを充填する工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-293192号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図5に示した基礎構造では、最後にプレキャスト基礎8Aが敷設される箇所(図5では2箇所)では、既設の隣のプレキャスト基礎8との間で主筋の干渉が生じるため、最後に敷設するプレキャスト基礎8Aは、他のプレキャスト基礎8と仕様を変更する必要がある。そして、この変更される仕様においては、主筋接続のための定着条件を満たす必要がある。
【0007】
この発明は、最後の敷設箇所で既に敷設された両隣のプレキャスト基礎との接合において主筋が干渉するのを回避することができ、主筋同士を接続する上での定着条件の充足も不要にできるプレキャスト基礎構造およびプレキャスト基礎構造の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のプレキャスト基礎構造は、特定のコーナー箇所に敷設されるコーナー用プレキャスト基礎と、このコーナー用プレキャスト基礎に隣接して敷設されるコーナー隣接プレキャスト基礎と、を少なくとも備えており、
上記コーナー用プレキャスト基礎は、一端側に第1の接合面を、他端側に第2の接合面をそれぞれ有するとともに、上記第2の接合面側から当該第2の接合面に背向する外側面に通じる埋設管部を有しており、
上記コーナー用プレキャスト基礎と、上記第1の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎と、が主筋で継がれる一方、
上記コーナー用プレキャスト基礎の上記第2の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎の接合面側には、ジョイント部が埋設されており、このジョイント部に、上記コーナー用プレキャスト基礎の上記外側面から上記埋設管部に挿入された挿入筋が接続されるとともに、上記埋設管部内にグラウトが充填されることを特徴とする。
【0009】
上記の構成であれば、上記コーナー用プレキャスト基礎は、埋設管部に挿入筋を挿入することで接続される構造となるので、最後の敷設箇所に当該コーナー用プレキャスト基礎を用いることで、既に敷設された両隣のプレキャスト基礎との接合において主筋が干渉するといった事態は回避されることになる。さらに、上記コーナー用プレキャスト基礎の埋設管部に挿入された挿入筋は、せん断耐力を負担する主筋としてではなく、当該コーナー用プレキャスト基礎の位置ずれを抑制するズレ止め部材として機能するので、主筋同士を接続する上での定着条件の充足も不要になる。
【0010】
上記挿入筋は雄螺子部を有しており、上記ジョイント部は上記接合面側に露出する雌螺子部を有しており、上記挿入筋の上記雄螺子部が上記雌螺子部に螺合されてもよい。これによれば、上記挿入筋を上記ジョイント部に対して螺子締結で接続させることができる。なお、上記埋設管部内にグラウトが充填される。
【0011】
少なくとも、上記コーナー用プレキャスト基礎の上記第2の接合面には、当該接合面と直交する方向に、グラウト材が充填される凹部が形成されていてもよい。これによれば、上記接合面と直交する方向の荷重を、上記凹部内で硬化したグラウト材が受けることができるので、上記コーナー隣接プレキャスト基礎に対する上記コーナー用プレキャスト基礎のずれに対する抑止力を高めることができる。
【0012】
上記コーナー用プレキャスト基礎は、基礎梁部と、この基礎梁部の下部から側方に張り出したフーチング部とを有しており、平面視で、上記フーチング部は互いに直交する第1の辺と第2の辺を有しており、上記基礎梁部はL字形状をなしており、上記第1の接合面は上記第1の辺と略面一に位置し、上記第2の接合面は上記第2の辺と略面一に位置してもよい。
【0013】
この発明のプレキャスト基礎構造の施工方法は、上記いずれかに記載のプレキャスト基礎構造を施工する方法であって、上記コーナー用プレキャスト基礎の上記第1の接合面側または上記第2の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎から敷設を開始し、上記コーナー用プレキャスト基礎の上記第2の接合面側または上記第1の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎を敷設した後、上記コーナー用プレキャスト基礎を最後に敷設することを特徴とする。
【0014】
かかる方法であれば、上記コーナー用プレキャスト基礎は、埋設管部に挿入筋を挿入することで接続される構造となるので、最後の敷設箇所に当該コーナー用プレキャスト基礎を用いることで、既に敷設された両隣のプレキャスト基礎との接合において主筋が干渉するといった事態は回避されることになる。さらに、上記コーナー用プレキャスト基礎の埋設管部に挿入された挿入筋は梁主筋としてではなく、当該コーナー用プレキャスト基礎の位置ずれを抑制するズレ止め部材として機能するので、主筋同士を接続する上での定着条件の充足も不要になる。
【0015】
また、この発明のプレキャスト基礎構造の施工方法は、上記いずれかに記載のプレキャスト基礎構造を施工する方法であって、上記コーナー用プレキャスト基礎の数は一つの囲い基礎部分で複数個であり、当該複数個のうちの1個のコーナー用プレキャスト基礎の上記第1の接合面側または上記第2の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎から敷設を開始し、当該コーナー隣接プレキャスト基礎に繋がる他のプレキャスト基礎の敷設ができない場合に、別の上記コーナー用プレキャスト基礎の上記第1の接合面側または上記第2の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎の敷設およびこのコーナー隣接プレキャスト基礎に繋がる他のプレキャスト基礎の敷設を行うことを特徴とする。
【0016】
かかる方法であれば、上記コーナー隣接プレキャスト基礎に繋がる他のプレキャスト基礎の敷設ができない場合に、別の上記コーナー用プレキャスト基礎の上記接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎の敷設およびこのコーナー隣接プレキャスト基礎に繋がる他のプレキャスト基礎の敷設を行うので、基礎工事がストップするという事態が回避される。
【0017】
また、この発明のプレキャスト基礎構造の施工方法は、上記いずれかに記載のプレキャスト基礎構造を施工する方法であって、上記コーナー用プレキャスト基礎の数は一つの囲い基礎部分で複数個であり、これら複数のコーナー用プレキャスト基礎の全部または一部の延設部分について、当該コーナー用プレキャスト基礎の上記第1の接合面側または上記第2の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎から敷設を開始し、当該コーナー用プレキャスト基礎の上記第2の接合面側または上記第1の接合面側に接合される上記コーナー隣接プレキャスト基礎を敷設した後、各延設部分で上記コーナー用プレキャスト基礎を最後に敷設することを特徴とする。
【0018】
かかる方法であれば、複数のコーナー用プレキャスト基礎の全部または一部の延設部分について、同時進行で施工することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明であれば、最後の敷設箇所において既に敷設された両隣のプレキャスト基礎との接合において主筋が干渉するといった事態を回避することができ、主筋同士を接続する上での定着条件の充足も不要にできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態のプレキャスト基礎の接合例を示した斜視説明図である。
図2】実施形態のプレキャスト基礎の接合例を示した平面視説明図である。
図3】実施形態のプレキャスト基礎の敷設例および施工方法を示した説明図である。
図4】実施形態のプレキャスト基礎の敷設例および施工方法を示した説明図である。
図5】従来例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の一態様に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、この実施形態のプレキャスト基礎構造は、特定のコーナー箇所に敷設されるコーナー用プレキャスト基礎1と、このコーナー用プレキャスト基礎1に隣接して敷設されるコーナー隣接プレキャスト基礎2,3と、を少なくとも備えている。
【0022】
コーナー隣接プレキャスト基礎2は、基礎梁部25と、この基礎梁部25の下部から側方に張り出したフーチング部26と、上記基礎梁部25の上面から立ち上がる腰壁部27と、を有しており、他の箇所で用いられる一般基礎のプレキャスト基礎2A(図3参照)と同様の構成の基礎である。コーナー隣接プレキャスト基礎2の基礎梁部25には、所定の配置で例えば4本の主筋25aが埋設されており、一方の接合面21からは、上記4本の主筋25aが当該プレキャスト基礎2の延設方向に所定の長さで突き出ている。また、コーナー隣接プレキャスト基礎2についての基礎梁部25の他方の接合面側には、機械式継手が埋設されている。
【0023】
コーナー隣接プレキャスト基礎3は、基礎梁部35と、この基礎梁部35の下部から側方に張り出したフーチング部36と、上記基礎梁部35の上面から立ち上がる腰壁部37と、を有している。コーナー隣接プレキャスト基礎3の基礎梁部35には、所定の配置で例えば4本の主筋35aが埋設されており、一方の接合面からは、上記4本の主筋35aが当該プレキャスト基礎3の延設方向に所定の長さで突き出ている。また、コーナー隣接プレキャスト基礎3についての基礎梁部35の他方の接合面31側には、当該基礎梁部35の中心側でその基礎幅方向に互いに離間してジョイント部38が2本埋設されている。各ジョイント部38には当該プレキャスト基礎3の延設方向に雌螺子部38aが形成されており、この雌螺子部38aの入り口部は他方の接合面31側に露出されている。また、ジョイント部38は、上記入り口部と反対側から雌螺子部38aにねじ込まれたネジ節鉄筋38bを備える。ネジ節鉄筋38bの雌螺子部38aからの突出長さは、一例として、300mm程度となっている。
【0024】
コーナー用プレキャスト基礎1は、基礎梁部15と、この基礎梁部15の下部から側方に張り出したフーチング部16と、上記基礎梁部15の上面から立ち上がる腰壁部17と、を有している。また、コーナー用プレキャスト基礎1の基礎梁部15は、一端側に第1の接合面11を、他端側に第2の接合面12を、有しており、また、所定の配置で例えば4本の梁主筋15aを有する。このコーナー用プレキャスト基礎1には、第1の接合面11側に機械式継手18が埋設されているタイプ(1A)と、第1の接合面11から4本の梁主筋15aが突出するタイプ(1B:図3参照)とがある。また、基礎梁部15には、上記第2の接合面12側から当該第2の接合面12に背向する外側面に通じる2本の埋設管部13が、基礎梁部15の中心側でその基礎幅方向に互いに離間して埋設されている。
【0025】
また、実施形態では、平面視で、フーチング部16は互いに直交する第1の辺16aと第2の辺16bを有しており、基礎梁部15はL字形状をなしており、第1の接合面11は上記第1の辺16aと略面一に位置し、第2の接合面12は上記第2の辺16bと略面一に位置する。上記L字形状をなす基礎梁部15内において、機械式継手18は、2本の埋設管部13に対してこれらに重ならない位置に埋設されている。
【0026】
コーナー用プレキャスト基礎1の第1の接合面11は、コーナー隣接プレキャスト基礎2に接合される。この接合では、コーナー隣接プレキャスト基礎2の主筋25aがコーナー用プレキャスト基礎1の機械式継手18によって継がれる。一方、コーナー用プレキャスト基礎1の第2の接合面12には、コーナー隣接プレキャスト基礎3が接合される。
【0027】
埋設管部13は、例えば、シース管からなる。埋設管部13には、例えば、D13の異形鉄筋(例えば、高張力ネジ節棒鋼等)からなる挿入筋14が挿入される。また、挿入筋14の先端側には、雄螺子部が形成されている。埋設管部13の管径は、挿入筋14の公称直径の2倍程度としている。
【0028】
そして、コーナー隣接プレキャスト基礎3の接合面31側に埋設されているジョイント部38の雌螺子部38aに、コーナー用プレキャスト基礎1の上記外側面から埋設管部13に挿入された挿入筋14がねじ込まれる。さらに、埋設管部13内には、当該埋設管部13内と挿入筋14との間の隙間を埋めるべくグラウトが充填される。なお、挿入筋14の先端の雄螺子部をジョイント部38の雌螺子部38aにねじ込む構造に限らず、挿入筋14の先端異形部をジョイント部38に形成した非螺子孔部に差し込んで、上記先端異形部と上記非螺子孔部との間の隙間に埋設管部13を通じてグラウトが充填される構造としてもよいものである。
【0029】
また、少なくとも、コーナー用プレキャスト基礎1の第2の接合面12には、当該接合面12と直交する方向に、グラウト材が充填されるコッター(凹部)12aが形成されている。
【0030】
上記の基礎構造であれば、コーナー用プレキャスト基礎1は、埋設管部13に挿入筋14を挿入することで接続される構造となるので、図3に示すように、一の囲い基礎部分について、最後の敷設箇所に当該コーナー用プレキャスト基礎1を用いることで、既に敷設された両隣のプレキャスト基礎2,3との接合において主筋が干渉するといった事態は回避されることになる。さらに、コーナー用プレキャスト基礎1の埋設管部13に挿入された挿入筋14は梁主筋15aとしてではなく、当該コーナー用プレキャスト基礎1の位置ずれを抑制するズレ止め部材として機能するので、主筋同士を接続する上での定着条件の充足も不要になる。
【0031】
挿入筋14が雄螺子部を有し、ジョイント部38が雌螺子部38aを有する構成であれば、上記雄螺子部が雌螺子部38aに螺合されることで、挿入筋14をジョイント部38に対して螺子締結で接続させることができる。なお、埋設管部13内にグラウトが充填される。
【0032】
コーナー用プレキャスト基礎1の第2の接合面12に凹部からなるコッター12aが形成されていると、当該接合面12と直交する方向の荷重を、上記コッター12a内で硬化したグラウトが受けることができるので、コーナー隣接プレキャスト基礎3に対するコーナー用プレキャスト基礎1のずれの抑止力を高めることができる。
【0033】
コーナー用プレキャスト基礎1の基礎梁部15がL字形状をなしていると、機械式継手18と埋設管部13との配置が重ならない構成とすることができる。
【0034】
なお、コーナー用プレキャスト基礎1が存在する布基礎は、このコーナー用プレキャスト基礎1の箇所で主筋が絶たれた縁切り構造となる一方で、布基礎の連続性は確保された構造であるといえる。このような縁切り構造に鑑み、コーナー用プレキャスト基礎1の設置箇所では基礎接地圧が地耐力以下になるように留意する。例えば、コーナー用プレキャスト基礎1のフーチング部16の面積を大きくする等の対策を採ることができる。また、上記布基礎上に建てられた柱間に鉛直ブレースを配置する構造とする場合、コーナー用プレキャスト基礎1とコーナー隣接プレキャスト基礎3との間の縁切り箇所を跨ぐ箇所には鉛直ブレースは配置しないようにする。また、このような縁切り構造の布基礎については、埋設管部13に挿入された挿入筋14は応力を負担しないものとして構造設計を行う。
【0035】
次に、実施形態のプレキャスト基礎構造の施工方法について説明する。この施工方法における基本方法は、図3に示したように、コーナー用プレキャスト基礎1の第1の接合面11側に接合されるコーナー隣接プレキャスト基礎2から敷設を開始し、コーナー用プレキャスト基礎1の第2の接合面12側に接合されるコーナー隣接プレキャスト基礎3を敷設した後、コーナー用プレキャスト基礎1を最後に敷設する。なお、図3に示す例では、反時計回りに施工したが、時計回りに施工していくことも可能である。
【0036】
次に、実施形態のプレキャスト基礎構造の他の施工方法について説明する。この施工方法では、図4に示すように、コーナー用プレキャスト基礎1の数は、一つの囲い基礎部分で複数個(この例では3個)であり、当該複数個のうちの1個のコーナー用プレキャスト基礎1の第1の接合面11側に接合されるコーナー隣接プレキャスト基礎2から敷設を開始する。ここで、製作間違いのために敷設できないプレキャスト基礎2A等がある場合、これを飛ばしてその次のプレキャスト基礎2A等を施工することはできない。そこで、このように、当該コーナー隣接プレキャスト基礎2に繋がる他のプレキャスト基礎2A等の敷設ができない場合に、別の上記コーナー用プレキャスト基礎1の上記第1の接合面11側に接合されるコーナー隣接プレキャスト基礎3Aの敷設およびこのコーナー隣接プレキャスト基礎3Aに繋がる他のプレキャスト基礎2A等の敷設を行う。これにより、基礎工事がストップするという事態が回避される。なお、図4に示す例では、反時計回りに施工したが、時計回りに施工していくことも可能である。
【0037】
さらに、実施形態のプレキャスト基礎構造の他の施工方法について説明する。この施工方法では、コーナー用プレキャスト基礎1の数は一つの囲い基礎部分で複数個であり、これら複数のコーナー用プレキャスト基礎1の全部または一部の延設部分について、当該コーナー用プレキャスト基礎1の第1の接合面11側または第2の接合面12側に接合されるコーナー隣接プレキャスト基礎2,3から敷設を開始し、当該コーナー用プレキャスト基礎1の第2の接合面12側または第1の接合面11側に接合されるコーナー隣接プレキャスト基礎3,2を敷設した後、各延設部分でコーナー用プレキャスト基礎1を最後に敷設する。
【0038】
かかる方法であれば、複数のコーナー用プレキャスト基礎1の全部または一部の延設部分について、同時進行で施工することが可能となる。
【0039】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 :コーナー用プレキャスト基礎
2 :コーナー隣接プレキャスト基礎
2A :プレキャスト基礎(一般基礎)
3 :コーナー隣接プレキャスト基礎
3A :コーナー隣接プレキャスト基礎
11 :第1の接合面
12 :第2の接合面
12a :コッター
13 :埋設管部
14 :挿入筋
15 :基礎梁部
15a :梁主筋
16 :フーチング部
16a :第1の辺
16b :第2の辺
17 :腰壁部
18 :機械式継手
21 :接合面
25 :基礎梁部
25a :主筋
26 :フーチング部
27 :腰壁部
31 :接合面
35 :基礎梁部
35a :主筋
36 :フーチング部
37 :腰壁部
38 :ジョイント部
38a :雌螺子部
38b :ネジ節鉄筋
図1
図2
図3
図4
図5