(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049694
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】隔膜真空計の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01L 19/12 20060101AFI20240403BHJP
G01L 21/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G01L19/12 H
G01L21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156084
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】津村 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】平井 美保子
(72)【発明者】
【氏名】関根 正志
(72)【発明者】
【氏名】吉川 康秀
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA11
2F055BB08
2F055CC02
2F055DD20
2F055EE25
2F055FF45
2F055GG49
(57)【要約】
【課題】隔膜真空計1の真空室異常検査を製造工程の初期に行うことができ、生産管理が簡単で、しかも、真空室異常検査で滞留が生じることがなく、製造リードタイムが短縮される隔膜真空計1の製造方法を提供する。
【解決手段】センサのハウジング内を被測定圧室と真空室とに隔成し、外部接続用のピンをセンサチップに電気的に接続するとともに真空室を真空状態で封止してセンサを形成するセンサ形成ステップS21を有する。センサを予め定めた検査温度に昇温させた状態で静電容量の値を測定する真空室異常検査をセンサ単体で行う検査ステップS22を有する。真空室異常検査の後に断熱材および基板を含む付属部品をセンサに組み付ける部品組付ステップS23とを有する。
【選択図】
図26
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量型圧力センサのセンサチップを収容するハウジングの内部を被測定流体が導入される被測定圧室と真空室とに隔成し、前記ハウジングから突出する外部接続用のピンを前記センサチップに電気的に接続するとともに前記真空室を真空状態で封止して静電容量型圧力センサを形成するセンサ形成ステップと、
前記静電容量型圧力センサを予め定めた検査温度に昇温させた状態で静電容量の値を測定する真空室異常検査を前記静電容量型圧力センサ単体で行う検査ステップと、
前記真空室異常検査の後に断熱材および基板を含む付属部品を前記静電容量型圧力センサに組み付ける部品組付ステップとによって実施することを特徴とする隔膜真空計の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の隔膜真空計の製造方法において、
前記付属部品には更に、前記被測定圧室を加熱するヒータが含まれることを特徴とする
隔膜真空計の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2の何れかに記載の隔膜真空計の製造方法において、
前記検査ステップは、
前記被測定圧室を真空状態とする機能と、前記静電容量型圧力センサを前記検査温度に加熱する機能と、前記静電容量の値を測定する機能とを有する検査治具に前記静電容量型圧力センサを装填して実施することを特徴とする隔膜真空計の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2の何れかに記載の隔膜真空計の製造方法において、
前記センサ形成ステップは、
前記ハウジングの一部を構成する円板状の第1の部品に前記外部接続用のピンを組付けるとともに、前記真空室で生じたガスを吸収するゲッタを組付けるステップと、
前記センサチップを支持ダイアフラムに接合してセンサチップ組立体を形成するステップと、
前記ハウジングの一部を構成する円筒状の第2の部品と第3の部品とをこれらの部品の間に前記センサチップ組立体を挟んで溶接し、筒状体を形成するステップと、
前記筒状体の一端に前記第1の部品を溶接して前記被測定圧室と前記真空室とを有する前記ハウジングを形成するステップと、
前記真空室を所定の真空度の真空状態として封止するステップと、
複数の前記ハウジングを加熱炉内で昇温させて前記ゲッタを活性化させるステップとによって実施することを特徴とする隔膜真空計の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2の何れかに記載の隔膜真空計の製造方法において、
前記部品組付ステップは、
被測定流体導入用の配管を接続するための継手部材に、被測定流体に含まれる不要物質を捕捉するバッフルを溶接するステップと、
前記検査ステップで良品と判定された前記静電容量型圧力センサの前記ハウジングを前記継手部材に溶接するステップと、
前記ハウジングの周囲を覆う筐体を前記継手部材に溶接するステップと、
前記ハウジングを囲むヒータを前記筐体の内部に挿入し、前記継手部材に溶接するステップと、
前記ハウジングの前記外部接続用のピンに、基板接続用のリード線に設けられた端子を溶接するステップと、
前記ヒータを覆う断熱材を前記筐体の内部に挿入し、前記筐体に保持させるステップと、
前記基板が収容されるケースを前記筐体に取り付け、前記基板に前記リード線を接続するステップとによって実施することを特徴とする隔膜真空計の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2の何れかに記載の隔膜真空計の製造方法において、
前記センサ形成ステップと前記部品組付ステップとを実施するにあたり行われる溶接は、全てのステップにおいて共通の溶接設備によって実施されることを特徴とする隔膜真空計の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空室異常検査を行うステップを含む隔膜真空計の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の隔膜真空計としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に開示された隔膜真空計は、品質を決める真空室異常検査を組立状態で行う構成が採られている。組立状態とは、センサチップを有する静電容量型圧力センサにヒータおよび断熱材と、圧力検出用回路、被測定流体導入用の配管などを組み付けた状態である。特許文献1に示す隔膜真空計を含めて従来の隔膜真空計の製造は、
図27に示すように行われることが多い。ここで、従来の隔膜真空計の製造方法を
図27を参照して説明する。
【0003】
従来、隔膜真空計の製造は、
図27に示すステップS1~ステップS12をこの順序で実施して行われている。
ステップS1は、バッフル組付ステップである。バッフルは、被測定流体に含まれる不要物質を捕捉するためのもので、隔膜真空計を構成する静電容量型センサのハウジングに溶接されている。
ステップS2は、ゲッタ組付ステップである。ゲッタは、静電容量型センサの真空室内のガスを吸収するもので、隔膜真空計を構成する静電容量型センサのハウジングに溶接されている。
【0004】
ステップS3は、ガス導入管組付ステップである。ガス導入管は、被測定流体を導入するための管で、静電容量型センサのハウジングに溶接されている。
ステップS4は、真空室組立ステップである。真空室は、静電容量型センサのハウジングにセンサチップを有する支持ダイアフラムを溶接し、ハウジングを組立てることによって形成される。このステップでハウジング内に被測定流体室と真空室とが隔成される。
ステップS5は、真空封止ステップである。このステップにおいては、真空室内を所定の真空度の真空状態とし、真空室を封止する。
【0005】
ステップS6は、電極組付ステップである。このステップにおいては、静電容量型センサのハウジングに設けられているピンにケーブルが組付けられる。
ステップS7は、ヒータ、断熱材組付ステップである。ヒータは静電容量型センサのハウジングを所定の温度に加熱するためのもので、断熱材によって覆われた状態で静電容量型センサのハウジングに組付けられる。
ステップS6は、筐体組立ステップである。このステップにおいては、断熱材を囲む筐体が静電容量型センサのハウジングに組付けられる。
【0006】
ステップS9は、回路組付ステップである。このステップにおいては、圧力を検出する回路を有する回路基板に上述したケーブルが接続され、回路基板を囲むケースが筐体に取り付けられる。回路組付ステップが終了することにより、未検査の状態の隔膜真空計が完成する。
ステップS10は、真空室異常検査ステップである。このステップにおいては、ヒータを動作させてハウジングを加熱するとともに、ガス導入管に真空ポンプを接続して被測定流体室を真空状態とし、静電容量型圧力センサを例えばArガス雰囲気の中に設置してケース内の回路基板を用いて真空室内の圧力が検出される。この真空室異常検査を実施することにより、真空室のリーク箇所の有無を判別することができるとともに、センサチップの良否を判定することができる。
【0007】
真空室異常検査ステップで異常がないと判定された隔膜真空計は、中間在庫として保管され、ステップS11およびステップS12を経て出荷される。
ステップS11は、継手組付ステップである。継手は、納品先の設備に適合するものが選択され、圧力導入管の先端部に溶接される。
ステップS12は、調整検査ステップである。この調整検査ステップにおいては、隔膜真空計の最終的な検査が実施される。
【0008】
このように、従来の隔膜真空計の製造方法は、隔膜真空計をセンサから一貫して生産する方法である。この製造方法では、真空室異常検査が製造工程の終盤で行われることが原因で製造リードタイムが長く複雑となる。
従来の隔膜真空計は、販売型番が多くかつ販売される数量の変動が大きい、製品単価が高く在庫も多く持てない等の実情があり、また半導体市場向けのものが多いために、生産量の予測が難しく大量生産することができなかった。このため、生産量を臨機応変に変えることが可能な製造方法が要請されている。
【0009】
隔膜真空計の製品品質のキーポイントとして、真空室の検査工程である真空室異常検査(Arエージング検査)において温度安定・圧力安定状態で、静電容量値を低ノイズで測定する必要がある。そのため、上述したようにヒータ・継手・回路基板を実装した組立後でしか検査を実施することができなかった。また、真空室異常検査を行うにあたっては、検査日数が1~4日必要で、しかも検査のリトライが必要になることもある。この真空室異常検査の日程に応じて出荷時期が変動してしまうため、検査の遅れを補填するために生産量・在庫量を増やす等の処置が必要であった。
【0010】
また、従来の隔膜真空計の一つであるサファイア真空計は、生産能力が販売側要求数に達することが難しくなることがあり、安定した生産を行うとともに生産量を増やすことが要請されている。
さらに、従来の隔膜真空計においては、真空室異常検査を実施する以前の静電容量型センサ(センサ単体)の機種数が多いため、中間の在庫がなくなるとセンサチップを製造するためのウェハから製作を開始しなければならず、顧客要求(例えば受注から10日で出荷)に対して大幅に遅延することがあった。
従来の隔膜真空計の製造方法を実施するうえでボトルネックとなる設備(例えば加熱を行うバッチ装置)は多くあり、1つ潰しても根本解決にはならず抜本的な解決策が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の隔膜真空計の製造方法では、下記の第1~第4の問題点があった。
第1の問題点は、真空室異常検査が製造工程の終盤で行われることである。
真空室異常検査を実施するためには、基本となるセンサーパッケージ構造である真空室の他に、付加機能として3要素(センサ信号出力端および回路、ヒータ、継手)が必要である。また、真空室異常検査を行うためには、下記の3つの条件が満たされる必要がある。第1の条件は、温度が安定することである。これを実現するためには、ヒータで測定時の温度を安定させる必要がある。
【0013】
第2の条件は、計測が安定することである。これを実現するためには、静電容量値の測定にあたり、ノイズ除去のシールド構造と補正回路が必要になる。
第3の条件は、真空が安定することである。これを実現するためには、センサ単体で、高真空を安定して維持できるシール構造が必要である。
上述した付加機能が実現され、かつ、第1~第3の条件が満たされるように、従来では組立完了状態の隔膜真空計に対して真空室異常検査が実施されている。このため、真空室異常検査の結果が不良であると、検査までに実施した全ての工程が無駄になり、取り外すことができない部品は再使用することができず廃棄しなければならない。
【0014】
第2の問題点は、製造工程を管理する生産管理システムを設計するうえで難易度が高くなることである。従来の隔膜真空計の製造方法では、真空室異常検査が製造工程の終盤にあり、真空室異常検査ステップを実施する以前に組付けられる部品の数(工程数)が多くなる。このような多くの工程を管理するにあたっては、製品単価が高く製品を備蓄しておくことができないために、生産が滞りなく行われて安定することが要請されている。このため、生産管理が容易となるように効率のよい製造プロセスの技術開発を行う必要がある。
【0015】
第3の問題点は、真空室異常検査の検査時間が一定ではないため、次に検査を行う製品を検査装置に投入できなくなることがあり、滞留が発生し易いことである。真空室異常検査は、希ガス雰囲気において、真空基準室の圧力上昇をセンサ出力で検出して行われる。このため、センサの圧力レンジが異なると、異常を検出可能日数に差異が生じる。圧力レンジが低圧寄りのセンサである場合、検査期間が予定より長くなることがある。一般的な生産能力の考え方(販売数に対して、少し多め)で生産プロセス設計を行うと、検査装置が何らかの原因で途中停止した場合や、異常の有無の判定が難しくリトライを行う場合など、予測が外れた場合に検査装置にて渋滞が発生し、検査出来ず滞留が発生する。
【0016】
第4の問題点は、多くの種類の隔膜真空計を製造するにあたって製造リードタイムが長くなることである。この理由を継手の組付を例に挙げて説明する。従来の隔膜真空計において、継手は、納品先の仕様に基づいて多種多様なものが用いられている。この種の継手は、TIG溶接で溶接するものと、電子ビーム溶接で溶接するものとがある。TIG溶接と電子ビーム溶接とは、使用する溶接設備が異なり、これらの溶接設備は設置場所が異なることが多い。このため、継手をハウジングに溶接する工程で隔膜真空計を溶接設備の場所に移動させたり、段取り替えを行う必要があり、製造リードタイムが長くなる。
【0017】
このような移動、段取り替えに起因して製造リードタイムが長くなることは、継手を組付ける工程のみならず、他の付加機能部品を組付ける工程においても当てはまる。また、継手は、最終工程の一つ前となるステップS11でハウジングに組付けているため、継手の溶接が失敗すると、隔膜真空計を製造するために行った全ての作業が無駄になる。このようなことが起こると、製造リードタイムを短縮することはより一層難しくなる。なお、継手のように同じ機能部品であっても品種が異なると組付方法が変わることは、上述した生産管理システム設計の難易度が高くなることの原因の一つになっている。
【0018】
本発明の目的は、隔膜真空計の真空室異常検査を製造工程の初期に行うことができ、生産管理が簡単で、しかも、真空室異常検査で滞留が生じることがなく、製造リードタイムが短縮される隔膜真空計の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的を達成するために、本発明に係る隔膜真空計の製造方法は、静電容量型圧力センサのセンサチップを収容するハウジングの内部を被測定流体が導入される被測定圧室と真空室とに隔成し、前記ハウジングから突出する外部接続用のピンを前記センサチップに電気的に接続するとともに前記真空室を真空状態で封止して静電容量型圧力センサを形成するセンサ形成ステップと、前記静電容量型圧力センサを予め定めた検査温度に昇温させた状態で静電容量の値を測定する真空室異常検査を前記静電容量型圧力センサ単体で行う検査ステップと、前記真空室異常検査の後に断熱材および基板を含む付属部品を前記静電容量型圧力センサに組み付ける部品組付ステップとによって実施する方法である。
【0020】
本発明は、前記隔膜真空計の製造方法において、前記付属部品には更に、前記被測定圧室を加熱するヒータが含まれるようにしてもよい。
【0021】
本発明は、前記隔膜真空計の製造方法において、前記検査ステップは、前記被測定圧室を真空状態とする機能と、前記静電容量型圧力センサを前記検査温度に加熱する機能と、前記静電容量の値を測定する機能とを有する検査治具に前記静電容量型圧力センサを装填して実施してもよい。
【0022】
本発明は、前記隔膜真空計の製造方法において、前記センサ形成ステップは、前記ハウジングの一部を構成する円板状の第1の部品に前記外部接続用のピンを組付けるとともに、前記真空室で生じたガスを吸収するゲッタを組付けるステップと、前記センサチップを支持ダイアフラムに接合してセンサチップ組立体を形成するステップと、前記ハウジングの一部を構成する円筒状の第2の部品と第3の部品とをこれらの部品の間に前記センサチップ組立体を挟んで溶接し、筒状体を形成するステップと、前記筒状体の一端に前記第1の部品を溶接して前記被測定圧室と前記真空室とを有する前記ハウジングを形成するステップと、前記真空室を所定の真空度の真空状態として封止するステップと、複数の前記ハウジングを加熱炉内で昇温させて前記ゲッタを活性化させるステップとによって実施してもよい。
【0023】
本発明は前記隔膜真空計の製造方法において、前記部品組付ステップは、被測定流体導入用の配管を接続するための継手部材に、被測定流体に含まれる不要物質を捕捉するバッフルを溶接するステップと、前記検査ステップで良品と判定された前記静電容量型圧力センサの前記ハウジングを前記継手部材に溶接するステップと、前記ハウジングの周囲を覆う筐体を前記継手部材に溶接するステップと、前記ハウジングを囲むヒータを前記筐体の内部に挿入し、前記継手部材に溶接するステップと、前記ハウジングの前記外部接続用のピンに、基板接続用のリード線に設けられた端子を溶接するステップと、前記ヒータを覆う断熱材を前記筐体の内部に挿入し、前記筐体に保持させるステップと、前記基板が収容されるケースを前記筐体に取り付け、前記基板に前記リード線を接続するステップとによって実施してもよい。
【0024】
本発明は、前記隔膜真空計の製造方法において、前記センサ形成ステップと前記部品組付ステップとを実施するにあたり行われる溶接は、全てのステップにおいて共通の溶接設備によって実施されてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、隔膜真空計の真空室異常検査をセンサ単体で製造工程の初期に行うことができる。真空室異常検査に合格した静電容量型センサに付属部品が組付けられ、生産が滞りなく行われて安定するから、生産管理が簡単になる。また、真空室異常検査の直前の工程として、静電容量型圧力センサを製造する工程のなかで製造リードタイムが相対的に長くなる工程を実施することができる。このため、真空室異常検査の終了時期が延びたとしても、検査直前の工程がいわゆるバッファとなって滞留の発生が抑制される。さらに、真空室異常検査が終了した後は、静電容量型圧力センサに付属部品を組付けるだけであり、たとえば溶接装置を共通化したり共通の設備で作業を実施することができるから、製造のリードタイムを短縮することができる。
【0026】
したがって、本発明によれば、隔膜真空計の真空室異常検査を製造工程の初期に行うことができ、生産管理が簡単で、しかも、真空室異常検査で滞留が生じることがなく、製造リードタイムが短縮される隔膜真空計の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明に係る製造方法によって製造された隔膜真空計の斜視図である。
【
図4】
図4は、静電容量型圧力センサの分解斜視図である。
【
図5】
図5は、センサチップ組立体の断面図である。
【
図6】
図6は、ハーメチックキャップの断面図である。
【
図7】
図7は、ゲッタ組付ステップにおけるレーザー溶接時の状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、真空室組立ステップにおけるレーザー溶接時の状態を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、真空室組立ステップにおけるレーザー溶接時の状態を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、真空封止ステップを説明するための断面図である。
【
図12】
図12は、真空室異常検査ステップを説明するための断面図である。
【
図13】
図13は、バッフル組付ステップを説明するための斜視図である。
【
図14】
図14は、バッフル組付ステップにおけるレーザー溶接時の状態を示す断面図である。
【
図15】
図15は、継手組付ステップを説明するための斜視図である。
【
図16】
図16は、継手組付ステップにおけるレーザー溶接時の状態を示す斜視図である。
【
図17】
図17は、筐体組付ステップを説明するための斜視図である。
【
図18】
図18は、筐体組付ステップにおけるレーザー溶接時の状態を示す断面図である。
【
図19】
図19は、ヒータ組付ステップを説明するための斜視図である。
【
図20】
図20は、ヒータ組付ステップにおけるレーザー溶接時の状態を示す断面図である。
【
図22】
図22は、ケーブル組付ステップにおけるレーザー溶接時の状態を示す斜視図である。
【
図24】
図24は、断熱材組付ステップを説明するための斜視断面図である。
【
図25】
図25は、回路組付ステップを説明するための斜視図である。
【
図26】
図26は、本発明に係る隔膜真空計の製造方法を示すフローチャートである。
【
図27】
図27は、従来の隔膜真空計の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る隔膜真空計の製造方法の一実施の形態を
図1~
図26を参照して詳細に説明する。
(隔膜真空計の説明)
図1に示す隔膜真空計1は、本発明に係る製造方法によって製造されたもので、
図1において下側に描かれているセンサユニット2と、このセンサユニット2に取り付けられたアンプユニット3とによって構成されている。
センサユニット2は、
図2の中央部分に破断せずに外観を示す静電容量型圧力センサ4(以下、単にセンサ4という)に複数の機能部品を組み付けて構成されている。複数の機能部品とは、センサ4から
図2において下方に延びる継手部材5と、センサ4を囲むヒータ6、断熱材7および筐体8と、センサ4に電気的に接続されるリード線9を保持する絶縁部材10などである。
【0029】
アンプユニット3は、
図3に示すように、箱状のケース11と、ケース11の底部分にケース11の底11aと平行に配置されたベース基板12と、ベース基板12に対して垂直になる姿勢でケース11に支持された複数の回路基板13などである。これらの回路基板13には、図示してはいないが、センサ4のヒータ6に給電する回路や、センサ4の出力信号に基づいて圧力を求める回路などが設けられている。ケース11の底11aとは反対側の端部(
図3においては上端部)には、隔膜真空計1を外部の装置に接続するためのコネクタ14が設けられている。
【0030】
(静電容量型圧力センサの説明)
センサ4は、
図4に示すように、複数の部材によって構成されており、互いに隣り合う部材どうしを溶接して形成されている。センサ4を構成する部材とは、
図4において上から順にハーメチックキャップ21、第1のパイプ22、センサチップ組立体23、第2のパイプ24などである。ハーメチックキャップ21は、
図5に示すように、円板25と、この円板25を貫通する複数の外部接続用のピン26と、円板25のセンサ内側の面25aに取り付けられたゲッタ27などによって構成されている。円板25は、本発明でいう「円板状の第1の部品」に相当するものである。複数のピン26が円板25を貫通する部分は、ガラスからなるハーメチックシール28によってシールされている。ピン26のセンサ内側の端部には、図示していないが、コイル状の導体が設けられている。
【0031】
ゲッタ27は、センサ4内で生じたガスを吸収するもので、ホルダー27aを介して円板25に取り付けられている。ホルダー27aは、レーザー溶接によって円板25に溶接されている。
第1のパイプ22と第2のパイプ24は、本発明でいう「第2の部品と第3の部品」に相当するもので、それぞれ円筒状に形成されている。第1のパイプ22には、センサ4の内部から空気を排出するための貫通孔29が形成されている。貫通孔29は、後述する栓部材30(
図10参照)によって閉塞される。
【0032】
センサチップ組立体23は、
図6に示すように、円環状の薄板からなる支持ダイアフラム31と、支持ダイアフラム31の中央部を挟むバランス部材32およびリング部材33と、リング部材33の開口部を閉塞するセンサチップ34などによって構成されている。バランス部材32には複数の貫通孔32aが形成されている。このセンサチップ組立体23は、第1のパイプ22と第2のパイプ24とに挟まれた状態でこれらの第1、第2のパイプ22,24に溶接されている。第1、第2のパイプ22,24とセンサチップ組立体23とかなる筒状体35(
図10参照)の一端(センサチップ34側となる第1のパイプ22)に上述したハーメチックキャップ21が溶接されている。ハーメチックキャップ21を筒状体35に溶接するに当たっては、ピン26に設けられたコイル状の導体をセンサチップ34の図示していない電極に電気的に接続する。
【0033】
ハーメチックキャップ21が筒状体35に溶接されることにより、センサ4のハウジング36(
図10参照)が形成される。このハウジング36の内部は、センサチップ組立体23によって2室に隔成される。すなわち、第2のパイプ24の内部となる被測定圧室37と、第1のパイプ22の内部となる真空室38である。被測定圧室37には被測定流体が導入される。真空室38は、後述する真空封止ステップで減圧され、予め定めた真空度で真空状態に保持される。外部接続用のピン26は、ハウジング36から突出している。
【0034】
継手部材5は、被測定流体が流れる設備(図示せず)にセンサ4を接続するためのものである。この継手部材5は、
図2に示すように、センサ4の第2のパイプ24に溶接される円板状の第1のフランジ41と、第1のフランジ41に対してセンサ4とは反対側に離れて位置する円板状の第2のフランジ42と、第2のフランジ42が一端部に設けられているとともに他端部に継手43が設けられたパイプ44などによって構成されている。第2のフランジ42の外径は第1のフランジ41の外径より大きい。
継手43は、パイプ44の先端に設けられた環状体43aと、環状体43aに回転自在に支持されたナット43bと、環状体43aとナット43bとの間に設けられたシール部材43cなどを備えている。
図2に示す継手43には、パイプ44に異物が入ることを防ぐために保護キャップ43dが取り付けられている。保護キャップ43dは、継手43を被測定流体が流れる設備に接続する際に継手43から取り外される。
【0035】
センサ4を囲むように設けられたヒータ6は、通電されることによって発熱するもので、円筒状に形成されて上述した第1のフランジ41に溶接されている。ヒータ6の内周部には内フランジ45が設けられている。この内フランジ45が継手部材5の第1のフランジ41に溶接されている。
【0036】
ヒータ6の周囲を覆う断熱材7は、ヒータ6を囲む円筒状に形成された円筒部46と、円筒部46の一端部を塞ぐ円板部47とによって構成されている。円筒部46は、軸線方向の一端側を覆う断熱材ケース48(
図23参照)と、軸線方向の他端側を覆う断熱材キャップ49とによって保持された状態で、ヒータ6の外側であって後述する筐体8の内側に設置されている。円板部47は、その外周部が断熱材キャップ49によって保持されている。
【0037】
筐体8は、
図17に示すように、多角形の有底筒状に形成されており、
図2に示すように、底壁8aに形成された貫通孔51にセンサ4を挿入した状態で継手部材5の第2のフランジ42に溶接されている。筐体8の側壁には、ヒータ6の熱を排出するために多数の通気孔52が形成されている。
筐体8の開口側の端部には、アンプユニット3のケース11を取り付けるための取付片53が設けられている。ケース11は、取付片に重ねられて取付用ボルトによって取り付けられる。
【0038】
図2に示すように、センサ4と断熱材7の円板部47との間には絶縁部材10が設置されている。絶縁部材10は、絶縁材料によって円板状(
図21参照)に形成されている。この絶縁部材10には、リード線9が挿入される複数の溝54が形成されている。リード線9は、溝54に挿入された状態でリード線ホルダ55が絶縁部材10に重ねられることにより、絶縁部材10とリード線ホルダ55とによって保持される。リード線ホルダ55は、
図22に示すようにハウジング36に係止されて絶縁部材10をハウジング36に押し付けるように構成されている。
リード線9の先端部には、センサ4の外部接続用のピン26に電気的に接続される端子56が設けられている。この端子56は、ピン26に溶接される。
【0039】
(隔膜真空計の製造方法の説明)
次に、上述した隔膜真空計1を製造する方法を
図26に示すフローチャートを参照して説明する。隔膜真空計1は、
図26に示すようにセンサ形成ステップS21と、真空室異常検査ステップS22と、部品組付ステップS23と、調整検査ステップS24とをこの順序で実施することによって製造される。
(センサ形成ステップの説明)
センサ形成ステップS21は、ゲッタ組付ステップS21Aと、真空室組立ステップS21Bと、真空封止ステップS21Cとによって実施される。
【0040】
(ゲッタ組付ステップの説明)
ゲッタ組付ステップS21Aにおいては、円板状のハーメチックキャップ21に複数のピン26を設けるとともに、ゲッタ27を組み付ける。ゲッタ27を組み付けるに当たっては、先ず、
図7に示すように、ハーメチックキャップ21の円板25をゲッタ組付用の治具61に保持させる。次に、円板25のセンサ内側の面25aが上方を指向する姿勢となるように治具61をレーザー溶接装置62に装填する。そして、ハーメチックキャップ21にゲッタ27をホルダー27aとともに載置し、上方からレーザー光Lを照射してホルダー27aを円板25に溶接する。
【0041】
(真空室組立ステップの説明)
真空室組立ステップS21Bは、センサチップ組立体23を形成するステップS21Baと、筒状体35を形成するステップS21Bbと、ハウジング36を形成するステップS21Bcとによって実施する。
センサチップ組立体23を形成するステップS21Baは、
図6に示すように、支持ダイアフラム31にバランス部材32とリング部材33とを重ね、更に、リング部材33にセンサチップ34を重ねた状態で拡散接合によって各部材を接合する。なお、センサチップ組立体23を形成するステップS21Baは、センサ形成ステップS21を実施する以前に予め行っておくことができる。
【0042】
筒状体35を形成するステップS21Bbは、
図4に示すように、第1のパイプ22第2のパイプ24とをこれらの間にセンサチップ組立体23の支持ダイアフラム31を挟んで溶接することによって行う。この溶接は、先ず、
図8に示すように、第1のパイプ22と支持ダイアフラム31と第2のパイプ24とをこの順序で重ねて筒状体形成用の治具63に保持させる。この治具63は、図示していない回転駆動装置に接続され、第1、第2のパイプ22,24およびセンサチップ組立体23を保持する軸部63a,63bが基部63c,63dに対して回転するように構成されている。
【0043】
次に、第1、第2のパイプ22,24の軸線が水平となるように治具63をレーザー溶接装置62に装填する。そして、第1、第2のパイプ22,24と支持ダイアフラム31との接続部分からなる被溶接部に上方からレーザー光Lを照射してレーザー溶接を行いながら第1、第2のパイプ22,24およびセンサチップ組立体23を水平な軸線回りに回転させる。レーザー溶接を行いながら被溶接部が1回転することにより第1、第2のパイプ22,24およびセンサチップ組立体23が互いに溶接されて筒状体35が形成される。
【0044】
ハウジング36を形成するステップS21Bcは、
図9に示すように、上述した筒状体35とハーメチックキャップ21の円板25とを重ねてハウジング形成用の治具64に保持させる。この治具64も図示していない回転駆動装置に接続され、筒状体35と円板25とを保持する軸部64a,64bが基部64c,64dに対して回転するように構成されている。
次に、筒状体35の軸線が水平となるように治具64をレーザー溶接装置62に装填する。そして、上方から円板25と筒状体35の接続部分からなる被溶接部にレーザー光Lを照射してレーザー溶接を行いながら筒状体35およびハーメチックキャップ21を水平な軸線回りに回転させる。レーザー溶接を行いながら被溶接部が1回転することにより筒状体35とハーメチックキャップ21とが互いに溶接されてハウジング36が形成される。
【0045】
(真空封止ステップの説明)
真空封止ステップS21Cは、封止ステップS21Caと、ゲッタ活性化ステップS21Cbとによって実施する。
封止ステップS21Caは、先ず、
図10に示すように、センサ4のハウジング36を真空チャンバー65の中に固定する。真空チャンバー65の中には抵抗溶接機66も配置されている。そして、真空チャンバー65内を所定の真空度の真空状態とし、第1のパイプ22の貫通孔29に栓部材30を抵抗溶接機66によって押し付け、第1のパイプ22に栓部材30を抵抗溶接によって溶接して貫通孔29を閉塞する。
【0046】
ゲッタ活性化ステップS21Cbは、真空封止が完了したハウジング36を
図11に示すように加熱炉67の中に載置し、ゲッタ27が活性化する温度まで加熱する。加熱炉67の中には多数のハウジング36を収容し、これらのハウジング36に設けられているゲッタ27を一度に活性化させる。このゲッタ活性化ステップS21Cbで行われる処理は、いわゆるバッチ処理である。
【0047】
(真空室異常検査ステップの説明)
真空室異常検査ステップS22は、ゲッタ27の活性化が終了したセンサ4について真空室異常検査(リーク検査)を行うステップである。この真空室異常検査ステップS22は、
図12に示す検査治具71にセンサ4を単体で装着し、センサ4毎に行う。
検査治具71は、センサ4のハウジング36を
図12において上下方向から挟むベース72およびカバー73と、カバー73に装着されてセンサ4のピン26に接続されるソケット74と、ベース72とカバー73を加熱するためのヒータ75などを備えている。
【0048】
ベース72は、ハウジング36が載置される円板部72aと、ハウジング36を囲む円筒部72bとによって形成されている。円板部72aにはパイプ76が設けられている。このパイプ76は、真空ポンプ77に接続されている。真空ポンプ77が動作してパイプ76内の空気が排出されることにより、ハウジング36内の被測定圧室37が所定の真空度で真空状態になる。また、円板部72aには、ハウジング36の第2のパイプ24が載置されるOリング78が設けられている。
【0049】
カバー73は、ハウジング36のハーメチックキャップ21と接触する円環状の第1のカバー部材73aと、この第1のカバー部材73aに取り付けられた第2のカバー部材73bなどを備えている。このカバー73は、止め金具79によってベース72に向けて付勢されることにより、ハウジング36の第2のパイプ24をOリング78に押し付けるように構成されている。
【0050】
ベース72およびカバー73の外周部には、複数の棒状のヒータ75が組み付けられている。ヒータ75は、通電されることにより発熱するもので、図示していないリード線を介して測定装置80に接続されている。ヒータ75が通電されることにより、ヒータ75の熱がベース72およびカバー73からハウジング36に伝達され、ハウジング36が予め定めた検査温度に加熱される。
ソケット74は、ピン26に接続される中継コンタクト81を有し、第2のカバー部材73bに着脱自在に保持されている。中継コンタクト81は、図示していないリード線によって測定装置80に接続されている。
【0051】
このように、検査治具71は、被測定圧室37を真空状態とする機能と、センサ4を検査温度に加熱する機能と、静電容量の値を測定する機能とを有している。
真空室異常検査ステップS22で実施する検査は、センサ4が組み込まれた検査治具71を図示していないチャンバーの中に配置して行われる。詳述すると、チャンバー内をゲッタ27と反応することがないArの雰囲気とし、ヒータ75と真空ポンプ77とを動作させた状態で検査治具71を所定時間放置する。そして、所定時間経過する以前と以後とでそれぞれ静電容量値を測定し、値の変化を検出する。
ハウジング36にリーク箇所が存在する場合はArがリーク箇所を通ってハウジング36内に侵入し、真空室38の真空度が低下する。この真空度が限界値を越えて低下した場合は、センサ4は不良品と判定される。
【0052】
真空室異常検査は、経済的合理性に反する生産能力過多となるように実施される。これにより後工程における製品の流れを整流させている(バッチの生産数を上げている)。なお、ニュートン非流体では、ある密度以上になると渋滞する単位として臨界密度という言葉があり、これが0.5以上になると渋滞すると言われている。本実施の形態においては、臨界密度を0.25以下に設定した。
この真空室異常検査ステップS22で実施される真空室異常検査に合格したセンサ4が次の部品組付ステップS23に進む。
【0053】
(部品組付ステップの説明)
部品組付ステップS23は、センサ4に付属部品を組み付けるステップである。部品組付ステップS23においては、
図26に示すように、バッフル組付ステップS23A、継手組付ステップS23B、筐体組付ステップS23C、ヒータ組付ステップS23D、ケーブル組付ステップS23E、断熱材組付ステップS23F、回路組付ステップS23Gなどがこの順序で実施される。
【0054】
(バッフル組付ステップの説明)
部品組付ステップS23においては、最初にバッフル組付ステップS23Aが実施される。バッフル組付ステップS23Aにおいては、
図13に示すように、継手部材5の第1のフランジ41にバッフル82を組み付けるステップである。バッフル82は、被測定流体に含まれる不要物質を捕捉するためのもので、詳細には図示してはいないが、多数の円環状の板を厚み方向に積層して形成された本体部82a(
図14参照)と、本体部82aの一端に接合されて本体部82aの中空部82bを塞ぐ閉塞部82cとを有している。本体部82aの円環状の板には、中空部82bから外周部まで径方向に延びる多数の溝が形成されている。
【0055】
この実施の形態に示すバッフル82は、本体部82aの他端の外周部に溶接用の板部82dが設けられ、この板部82dを継手部材5の第1のフランジ41に重ねた状態で第1のフランジ41に溶接されている。この溶接は、センサ4の各部品を溶接する際に用いたレーザー溶接装置62を使用して行う。すなわち、レーザー溶接装置62に継手部材5を保持させ、
図14に示すように継手部材5の第1のフランジ41の上にバッフル82を載置する。そして、溶接用の板部82dに上方からレーザー光Lを照射してレーザー溶接を行う。
【0056】
(継手組付ステップの説明)
バッフル82を溶接した後、継手組付ステップS23Bが実施される。継手組付ステップS23Bは、上述した真空室異常検査ステップS22で良品と判定されたセンサ4のハウジング36に継手部材5を溶接するステップである。この継手組付ステップS23Bにおいては、
図15に示すように継手部材5の第1のフランジ41にハウジング36の第2のパイプ24を重ねて溶接する。この溶接は、
図16に示すように、継手部材5とハウジング36とを継手組付用の治具83に保持させる。この治具83は、図示していない回転駆動装置に接続され、継手部材5およびハウジング36を回転可能に保持する構成が採られている。
【0057】
次に、継手部材5とハウジング36の軸線が水平となるように治具83をレーザー溶接装置62に装填する。そして、第2のパイプ24と第1のフランジ41との接続部分からなる被溶接部に上方からレーザー光Lを照射してレーザー溶接を行いながら継手部材5とハウジング36とを水平な軸線回りに回転させる。レーザー溶接を行いながら被溶接部が1回転することによりハウジング36に継手部材5が溶接される。
【0058】
(筐体組付ステップの説明)
継手部材5をハウジング36に組み付けた後、筐体組付ステップS23Cが実施される。筐体組付ステップS23Cは、ハウジング36の周囲を覆う筐体8を継手部材5に溶接するステップである。筐体組付ステップS23Cにおいては、先ず、上述した継手組付ステップS23Bでハウジング36に継手部材5を溶接して形成された組立体をレーザー溶接装置62にハウジング36が上に位置する姿勢で装填する。
【0059】
そして、
図17に示すように、ハウジング36を筐体8の底壁8aに形成されている貫通孔51に挿入し、
図18に示すように筐体8の底壁8aを継手部材5の第2のフランジ42に載せる。次に、筐体8の底部に向けて上方からレーザー光Lを照射して筐体8の底壁8aを第2のフランジ42にレーザー溶接によって溶接する。
【0060】
(ヒータ組付ステップの説明)
筐体8を継手部材5に溶接した後、ヒータ組付ステップS23Dが実施される。ヒータ組付ステップS23Dは、ハウジング36を囲むヒータ6を組み付けるステップである。このヒータ組付ステップS23Dは、上述した筐体組付ステップS23Cで溶接された継手部材5と筐体8とをレーザー溶接装置62に保持させた状態で実施される。このヒータ組付ステップS23Dにおいては、先ず、
図19に示すように、筐体8の内部に上方からヒータ6を挿入し、ヒータ6の中空部内にハウジング36を挿入する。そして、
図20に示すように、ヒータ6の内フランジ45を継手部材5の第1のフランジ41に載せる。次いで、内フランジ45に向けて上方からレーザー光Lを照射して内フランジ45を第1のフランジ41にレーザー溶接によって溶接する。
なお、隔膜真空計1にはヒータ6を搭載しないタイプ(非加熱タイプ)もあり、非加熱タイプの隔膜真空計ではヒータ組付ステップは省略される。
【0061】
(ケーブル組付ステップの説明)
ヒータ6を継手部材5に溶接した後、ケーブル組付ステップS23Eが実施される。ケーブル組付ステップS23Eは、センサ4の外部接続用のピン26に、回路基板接続用のリード線9に設けられた端子56を溶接するステップで、ヒータ組付ステップS23Dでヒータ6が溶接された継手部材5をレーザー溶接装置62に保持させた状態で実施する。ケーブル組付ステップS23Eにおいては、先ず、
図21に示すように、絶縁部材10を筐体8の内部に上方から挿入し、ハウジング36のハーメチックキャップ21に載せる。
【0062】
そして、絶縁部材10の溝54にリード線9を挿入し、リード線ホルダ55を絶縁部材10に重ねてハウジング36に係止させる。このとき、リード線9に予め設けられている端子56の穴56aにセンサ4のピン26を通す。その後、
図22に示すように、端子56とピン26の接続部分に上方からレーザー光Lを照射し、これらをレーザー溶接によって互いに溶接する。
【0063】
(断熱材組付ステップの説明)
端子56の溶接が終了した後、断熱材組付ステップS23Fが実施される。断熱材組付ステップS23Fは、断熱材7をヒータ6の周囲に配置するステップである。断熱材組付ステップS23Fにおいては、先ず、
図24に示すように、円筒部46に断熱材ケース48と断熱材キャップ49とを組付けて形成された円筒体84をヒータ6の径方向外側であって筐体8の内側に挿入する。そして、断熱材キャップ49の開口部分に円板部47を押し込む。円板部47を押し込むときには、ヒータ6に接続された図示していないリード線、センサ4のピン26に接続されたリード線9などを円板部47に通して上方に引き出しておく。
【0064】
(回路組付ステップの説明)
断熱材7がヒータ6に組み付けられた後、回路組付ステップS23Gが実施される。回路組付ステップS23Gにおいては、先ず、
図25に示すように、アンプユニット3のケース11を筐体8に上方から重ね、筐体8の取付片53をケース11の底に取付用ボルト85によって取り付ける。ケース11には、予めベース基板12、複数の回路基板13、その他の部品を組み付けておく。ケース11を筐体8に取り付ける際には、断熱材7の円板部47から引き出されているリード線9等をケース11の底からケース11内に通しておく。
筐体8にケース11を固定した後、ケース11内に導入されたリード線9等をケース11内のベース基板12、回路基板13等を含む電子部品に接続する。
【0065】
(調整検査ステップの説明)
アンプユニット3の結線作業が終了した後、調整検査ステップS24が実施される。調整検査ステップS24においては、アンプユニット3に実際に通電し、例えばヒータ6の温度を調整する作業やその他の調整作業、各種の最終的な検査を実施する。
調整検査ステップS24が終了することにより隔膜真空計1が完成する。
【0066】
(実施の形態による効果の説明)
上述したように構成された隔膜真空計1の製造方法においては、隔膜真空計1の真空室異常検査をセンサ4の単体で製造工程の初期に行うことができる。この製造方法によれば、真空室異常検査に合格したセンサ4に付属部品が組付けられ、生産が滞りなく行われて安定するから、生産管理が簡単になる。また、真空室異常検査の直前のステップとして、製造リードタイムが相対的に長くなるステップであるゲッタ活性化ステップS21Cbを実施することができる。このため、真空室異常検査の終了時期が延びたとしても、検査直前のゲッタ活性化ステップS21Cbがいわゆるバッファとなって滞留の発生が抑制される。さらに、真空室異常検査が終了した後は、センサ4に付属部品を組付けるだけであり、レーザー溶接装置62を共通化したり共通の設備で作業を実施することができる。このため、製造途中の部品の移動、作業の段取替えなどを可及的少なくすることができ、製造のリードタイムを短縮することができる。
【0067】
したがって、この実施の形態によれば、隔膜真空計1の真空室異常検査を製造工程の初期に行うことができ、生産管理が簡単で、しかも、真空室異常検査で滞留が生じることがなく、製造リードタイムが短縮される隔膜真空計の製造方法を提供することができる。
【0068】
この実施の形態による真空室異常検査ステップS22は、被測定圧室37を真空状態とする機能と、センサ4を検査温度に加熱する機能と、静電容量の値を測定する機能とを有する検査治具71にセンサ4を装填して実施している。このため、真空室異常検査をセンサ4毎に行うことができ、検査内容を個別に制御することができる。しかも、真空室異常検査を行う検査装置の小型化を図ることができる。
【0069】
この実施の形態によるセンサ形成ステップS21は、ハウジング36の一部を構成する円板状の第1の部品(円板25)に外部接続用のピン26を組付けるとともに、真空室38で生じたガスを吸収するゲッタ27を組付けるゲッタ組付ステップS21Aと、センサチップ34を支持ダイアフラム31に接合してセンサチップ組立体23を形成するセンサチップ組立体形成ステップS21Baと、ハウジング36の一部を構成する円筒状の第2の部品(第1のパイプ22)と第3の部品(第2のパイプ24)とをこれらの部品の間にセンサチップ組立体23を挟んで溶接し、筒状体35を形成する筒状体形成ステップS21Bbと、筒状体35の一端に第1の部品を溶接して被測定圧室37と真空室38とを有するハウジング36を形成するハウジング形成ステップS21Bcと、真空室38を所定の真空度の真空状態として封止する封止ステップS21Caと、複数のハウジング36を加熱炉67内で昇温させてゲッタ27を活性化させるゲッタ活性化ステップS21Cbとによって実施している。このため、真空室異常検査を行うに当たって必要最小限の部品でセンサ4を構成することができるから、真空室異常検査を行うまでに使用する部品数が最小になり、真空室異常検査で不良となった場合の損失を少なくすることができる。
【0070】
この実施の形態による部品組付ステップS23は、被測定流体導入用の配管を接続するための継手部材5に、被測定流体に含まれる不要物質を捕捉するバッフル82を溶接するバッフル組付ステップS23Aと、真空室異常検査ステップS22で良品と判定されたセンサ4のハウジング36を継手部材5に溶接する継手組付ステップS23Bと、ハウジング36の周囲を覆う筐体8を継手部材5に溶接する筐体組付ステップS23Cと、ハウジング36を囲むヒータ6を筐体8の内部に挿入し、継手部材5に溶接するヒータ組付ステップS23Dと、ハウジング36の外部接続用のピン26に、回路基板接続用のリード線9に設けられた端子56を溶接するケーブル組付ステップS23Eと、ヒータ6を覆う断熱材7を筐体8の内部に挿入し、筐体8に保持させる断熱材組付ステップS23Fと、ベース基板12と回路基板13とが収容されるケース11を筐体8に取り付け、ベース基板12や回路基板13にリード線9等を接続する回路組付ステップS23Gとによって実施している。
【0071】
このため、この製造方法によれば、前工程で製造された製品に後工程で部品を追加し、1個ずつ流して製造するために、リードタイムを短縮できる。この結果、製造リードタイムが短縮され、客先要求機能に合わせた付加機能を付与して多品種な発注に即対応できる付加機能をセンサ組立(センサ4)にアドオンして実現できるから、隔膜真空計の組立性が向上する。
【0072】
この実施の形態による隔膜真空計1の製造方法においては、センサ形成ステップS21と部品組付ステップS23とを実施するにあたり行われる溶接は、全てのステップにおいて共通の溶接設備(レーザー溶接装置62)によって実施される。すなわち、付加機能を追加するためのバッフル82、継手部材5、筐体8、ヒータ6、端子56などの溶接を共通のレーザー溶接装置62で行うことができ、段取り替え・移動を少なくすることができる。このため、製造リードタイムを短縮しつつ多品種に対応する製造工程・製造設備を実現することができる。センサ構造を小型化することで生産整備サイズも小型化することができた。結果として、環境性能を向上することができた。
【符号の説明】
【0073】
1…隔膜真空計、4…静電容量型圧力センサ、5…継手部材、6…ヒータ、7…断熱材、8…筐体、22…第1のパイプ(第2の部品)、24…第2のパイプ(第3の部品)、26…ピン、34…センサチップ、36…ハウジング、37…被測定圧室、38…真空室、12…ベース基板、13…回路基板、23…センサチップ組立体、25…円板(第1の部品)、27…ゲッタ、31…支持ダイアフラム、35…筒状体、56…端子、67…加熱炉、71…検査治具、82…バッフル、S21…センサ形成ステップ、S21A…ゲッタ組付ステップ、S21Ba…センサチップ組立体形成ステップ、S21Bb…筒状体形成ステップ、S21Bc…ハウジング形成ステップ、S21C…真空封止ステップ、S21Ca…封止ステップ、S21Cb…ゲッタ活性化ステップ、S22……真空室異常検査ステップ、S23…部品組付ステップ、S23A…バッフル組付ステップ、S23B…継手組付ステップ、S23C…筐体組付ステップ、S23D…ヒータ組付ステップ、S23E…ケーブル組付ステップ、S23F…断熱材組付ステップ、S23G…回路組付ステップ。