(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049700
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】圧力センサおよび圧力センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01L 19/00 20060101AFI20240403BHJP
G01L 13/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G01L19/00 A
G01L13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156091
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】津嶋 鮎美
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB05
2F055CC60
2F055DD05
2F055EE40
2F055FF45
2F055GG12
(57)【要約】
【課題】セラミックス製の筐体が圧力伝達媒体の圧力で破壊されることを防ぎながら、セラミックス製の筐体によってセンサチップを絶縁することが可能な圧力センサを提供する。
【解決手段】センサチップ21と、センサケース本体26と、第1および第2の導圧パイプ17,18と、センサケース本体26の第1、第2の貫通孔31,32と第1、第2の導圧パイプ17,18との間に充填された充填材34とを備える。センサチップ21がセンサケース本体26を介して第1および第2の導圧パイプ17,18に接続され、絶縁されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力伝達媒体が導入される圧力導入口を有し、前記圧力伝達媒体の圧力を検出するセンサチップと、
セラミックス材料によって前記センサチップを覆う形状に形成され、前記センサチップの前記圧力導入口を有する取付面が接着される接着面および前記圧力導入口に連通する貫通孔を有するセンサケース本体と、
前記貫通孔に挿入されて前記センサケース本体に半田付けされた導圧パイプと、
前記貫通孔における前記センサケース本体の内側に開口する部分と前記導圧パイプとの間に充填された充填材とを備え、
前記センサチップが前記センサケース本体を介して前記導圧パイプに接続され、絶縁されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記導圧パイプは、前記接着面より前記センサケース本体の内部に所定の長さだけ突出する突出部を有し、
前記センサチップは、前記突出部との間に予め定めた絶縁距離をおいて離間する凹陥部を有していることを特徴とする圧力センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記センサチップと前記センサケース本体との接着は、絶縁性を有する接着剤が使用されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項4】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記センサチップにおける前記センサケース本体に接着される端部は、前記センサケース本体に向けて凸になる凸部によって形成され、
前記凸部の先端面が接着剤によって前記センサケース本体に接着されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項5】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記充填材は半田であり、
前記センサケース本体の内面における前記貫通孔の周囲には半田付け用のランドが形成されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項6】
圧力伝達媒体が導入される圧力導入口を有し、前記圧力伝達媒体の圧力を検出するセンサチップを形成するステップと、
底部に貫通孔を有する有底筒状であって前記センサチップを収容可能な形状にセラミックス材料によってセンサケース本体を形成するステップと、
前記貫通孔に挿入可能な導圧パイプを形成するステップと、
前記導圧パイプを前記貫通孔に挿入して前記センサチップとは離間するように前記センサケース本体に半田付けするステップと、
前記半田付けが終了した後に、前記貫通孔における前記センサケース本体の内側に開口する部分と前記導圧パイプとの間に接着剤を充填するステップと、
前記接着剤が硬化した後に、前記センサチップの前記圧力導入口が開口する取付面を前記センサケース本体の底部に弾性接着剤によって接着するステップとによって実施することを特徴とする圧力センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス製のセンサケースにセンサチップが収容された圧力センサおよび圧力センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用に用いられる差圧計測器は、シリコンなどから構成されるセンサチップを、ステンレス鋼などの金属によって形成された筐体に内蔵し、腐食性の測定対象や測定環境から保護している。このように構成された差圧計では、内部に収容しているセンサチップに圧力を伝達するために、オイルなどが圧力伝達媒体として封入されている。
ステンレス鋼製の筐体とシリコン製のセンサチップとの接続には、電気的なノイズが筐体側からセンサチップに伝播されることを防ぐために、絶縁材からなるセンサチップ搭載用の台座が用いられている。従来のこの種の台座としては、例えば特許文献1に記載されているように、シリコンと線膨張係数が近いガラス台座がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガラスは、歪を与えると応力が発生し(弾性)、かつ、その応力が時間経過とともに徐々に緩和する(粘性)という応力緩和現象を起こすものであるから、ガラス台座にセンサチップを接合して構成された圧力センサは圧力の検出精度が低くなるおそれがあった。この理由は、ガラス台座にセンサチップを接合したときにガラス台座に応力が発生し、この応力が時間経過に伴って緩和されるからである。すなわち、ガラス台座の応力が緩和されるにしたがってセンサチップにガラス台座側から外力が加えられるようになってセンサの出力値が徐々に変わる、いわゆるドリフトを起こすから、検出精度が低くなる。
【0005】
ガラスに代わる絶縁材料としてはセラミックス材料がある。しかし、セラミックス製の筐体は積層構造となっており、各層の境目は劈開性を有しているから、センサチップに伝達される圧力伝達媒体の圧力が各層の境目に加えられると破壊されてしまうという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、セラミックス製の筐体が圧力伝達媒体の圧力で破壊されることを防ぎながら、セラミックス製の筐体によってセンサチップを絶縁することが可能な圧力センサおよび圧力センサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明に係る圧力センサは、圧力伝達媒体が導入される圧力導入口を有し、前記圧力伝達媒体の圧力を検出するセンサチップと、セラミックス材料によって前記センサチップを覆う形状に形成され、前記センサチップの前記圧力導入口を有する取付面が接着される接着面および前記圧力導入口に連通する貫通孔を有するセンサケース本体と、前記貫通孔に挿入されて前記センサケース本体に半田付けされた導圧パイプと、前記貫通孔における前記センサケース本体の内側に開口する部分と前記導圧パイプとの間に充填された充填材とを備え、前記センサチップが前記センサケース本体を介して前記導圧パイプに接続され、絶縁されているものである。
【0008】
本発明は、前記圧力センサにおいて、前記導圧パイプは、前記接着面より前記センサケース本体の内部に所定の長さだけ突出する突出部を有し、前記センサチップは、前記突出部との間に予め定めた絶縁距離をおいて離間する凹陥部を有していてもよい。
【0009】
本発明は、前記圧力センサにおいて、前記センサチップと前記センサケース本体との接着は、絶縁性を有する接着剤が使用されていてもよい。
【0010】
本発明は、前記圧力センサにおいて、前記センサチップにおける前記センサケース本体に接着される端部は、前記センサケース本体に向けて凸になる凸部によって形成され、前記凸部の先端面が接着剤によって前記センサケース本体に接着されていてもよい。
【0011】
本発明は、前記圧力センサにおいて、前記充填材は半田であり、前記センサケース本体の内面における前記貫通孔の周囲には半田付け用のランドが形成されていてもよい。
【0012】
本発明に係る圧力センサの製造方法は、圧力伝達媒体が導入される圧力導入口を有し、前記圧力伝達媒体の圧力を検出するセンサチップを形成するステップと、底部に貫通孔を有する有底筒状であって前記センサチップを収容可能な形状にセラミックス材料によってセンサケース本体を形成するステップと、前記貫通孔に挿入可能な導圧パイプを形成するステップと、前記導圧パイプを前記貫通孔に挿入して前記センサチップとは離間するように前記センサケース本体に半田付けするステップと、前記半田付けが終了した後に、前記貫通孔における前記センサケース本体の内側に開口する部分と前記導圧パイプとの間に接着剤を充填するステップと、前記接着剤が硬化した後に、前記センサチップの前記圧力導入口が開口する取付面を前記センサケース本体の底部に弾性接着剤によって接着するステップとによって実施する方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、導圧パイプをセンサチップとは離間させて配置できるから、センサチップを絶縁することができる。また、導圧パイプが挿入されたセンサケース本体の貫通孔がセンサケース本体の内側から充填材によって塞がれるから、セラミックス製センサケース本体の層状の断面が露出する貫通孔に圧力伝達媒体が入ることがない。
したがって、セラミックス製のセンサケース本体(筐体)が圧力伝達媒体の圧力で破壊されることを防ぎながら、センサケース本体によってセンサチップを絶縁することが可能な圧力センサおよび圧力センサの製造方法を提供することができる。
【0014】
本発明に係る圧力センサの製造方法によれば、センサケース本体の貫通孔をセンサケース本体の内側から塞ぐ接着剤と、センサチップをセンサケース本体に接着する接着剤とを個別に硬化させることができる。このため、貫通孔側の接着剤で発生した応力がセンサチップ側の接着剤に伝達されることを防ぐことができるから、センサチップの検出精度をより一層高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係る圧力センサの使用例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態による圧力センサの斜視断面図である。
【
図3】
図3は、センサケース部分の斜視断面図である。
【
図5】
図5は、圧力センサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、センサケース本体の製造過程を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、導圧パイプの製造過程を示す図である。
【
図9】
図9は、センサケース本体の一部と導圧パイプの一部を示す断面図である。
【
図10】
図10は、センサケース本体の一部と導圧パイプの一部を示す断面図である。
【
図12】
図12は、センサチップの圧力導入口と導圧パイプの構成を変えた第2の実施の形態を示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る圧力センサおよび圧力センサの製造方法の一実施の形態を
図1~
図11を参照して詳細に説明する。
図1に示す圧力センサ1は、圧力測定装置2に搭載されて第1、第2の被測定流体3,4の差圧を検出するものである。第1の被測定流体3は第1のパイプ5の内部を満たし、第2の被測定流体4は第2のパイプ6の内部を満たしている。
【0017】
圧力測定装置2は、第1のパイプ5と第2のパイプ6とに挟まれたボディ7と、第1の被測定流体3に接する第1の受圧ダイアフラム8と、第2の被測定流体4に接する第2の受圧ダイアフラム9とを備えている。ボディ7には、第1の受圧ダイアフラム8が壁の一部となる第1の受圧室11と、第2の受圧ダイアフラム9が壁の一部となる第2の受圧室12とが形成されている。第1の受圧室11および第2の受圧室12は、ボディ7内に形成された第1の導圧路13および第2の導圧路14と、後述する圧力センサ1の第1および第2のワッシャ15,16と、第1および第2の導圧パイプ17,18とを介してセンサチップ21(
図2参照)の第1、第2の圧力室22,23に連通されている。
【0018】
第1、第2の受圧室11,12から第1、第2の圧力室22,23に至る圧力伝達系は、圧力伝達媒体24(
図1参照)で満たされている。センサチップ21は、第1および第2の受圧ダイアフラム8,9との間に充填された圧力伝達媒体24の圧力を検出する。
圧力センサ1は、ボディ7に溶接される第1、第2のワッシャ15,16と、これらの第1、第2のワッシャ15,16に一端部が溶接された第1、第2の導圧パイプ17,18と、第1、第2の導圧パイプ17,18の他端部に半田付けされたセンサケース25と、センサケース25内に収容されたセンサチップ21などを備えている。
【0019】
第1、第2のワッシャ15,16は、ステンレス鋼によって円板状に形成されている。これらの第1、第2のワッシャ15,16には、第1、第2の導圧パイプ17,18を挿通させるための貫通孔15a,16aが形成されている。
第1、第2の導圧パイプ17,18は、ステンレス鋼によって形成され、その一端部が第1、第2のワッシャ15,16の貫通孔15a,16aに挿入された状態で第1、第2のワッシャ15,16に溶接されている。また、第1、第2の導圧パイプ17,18は、第1、第2のワッシャ15,16が溶接された状態で金めっきが施されている。
第1、第2の導圧パイプ17,18の他端部は、センサケース25に半田付けされている。
【0020】
センサケース25は、
図2および
図3に示すように、セラミックスによって形成された筐体としてのセンサケース本体26と、金属材料によって形成された蓋体27とによって構成されている。センサケース本体26は、センサチップ21を収容可能な大きさの有底角筒状に形成されている。
蓋体27は、板状に形成され、センサケース本体26の開口部を覆う状態でセンサケース本体26にろう付けあるいはシーム溶接などによって固着されている。
図2および
図3に示す蓋体27は、センサケース本体26の開口部に設けられたシームリング27aに溶接されている。
【0021】
センサケース本体26の底部26aには、後述するセンサチップ21の凸形状の接着部28を収容する凹部29が形成されている。凹部29の底には、第1、第2の導圧パイプ17,18を通すための第1の貫通孔31と第2の貫通孔32とが形成されている。
図4に示すように、第1および第2の導圧パイプ17,18は、第1および第2の貫通孔31,32に通され、先端が所定の長さだけ凹部29内に挿入された状態でセンサケース本体26に半田付けされている。半田付け部分の半田を符号33で示す。このため、第1および第2の導圧パイプ17,18は、凹部29の底面29a(センサチップ21が接着されるセンサケース本体26の接着面)よりセンサケース本体26の内部に所定の長さだけ突出する突出部17a,18aを有している。
【0022】
第1および第2の貫通孔31,32におけるセンサケース本体26の内側に開口する部分と第1および第2の導圧パイプ17,18との間には、充填材34が充填されている。充填材34は、接着剤や、半田(図示せず)などによって構成されている。充填材34とする接着剤は、例えばエポキシ系の接着剤を用いることができる。充填材34を半田とする場合は、凹部29の底面29aであって第1および第2の貫通孔31,32の周囲にメタライズ処理を施し、半田付け用のランド35{
図7(C)参照}を形成しておく。
【0023】
センサース本体26は、
図4に示すように多数のセラミックシート36を積層して形成されており、第1および第2の貫通孔31,32には、複数のセラミックシート36どうしの境界が層状に露出する。第1および第2の貫通孔31,32に充填材34がケース内側から充填されることにより、複数のセラミックシート36どうしの境界の一部(センサケース本体26の内側の一部)あるいは全部が充填材34で覆われる。複数のセラミックシート36どうしの境界のうち、充填材34によって覆われる範囲は、充填材34の注入量に応じて変わる。
図4は、複数のセラミックシート36どうしの境界のうち、センサケース本体26の内側の一部のみが充填材34によって覆われる状態を示している。
【0024】
センサケース本体26の外面であって第1および第2の貫通孔31,32の周囲には、第1および第2の導圧パイプ17,18を半田付けするために、メタライズ処理が施され、半田付け用のランド37{
図7(B)参照}が形成されている。
図3に示すように、センサケース本体26の両側壁26bには、導体41が埋設されている。導体41は、後述するセンサチップ21と、センサケース本体26が実装される基板42(
図1参照)の回路(図示せず)とを電気的に接続するためのものである。導体41の一端部は、センサケース本体26の両側壁26bに形成された段部26cに露出してボンディングパッド43を構成している。このボンディングパッド43は、センサチップ21の電極44にボンディングワイヤ45によって接続されている。
【0025】
センサチップ21は、
図2および
図3に示すように、複数のシリコン製の板状部材を厚み方向に重ねて立方体状に形成されている。この実施の形態によるセンサチップ21は、センサケース本体26の底部に向けて凸になる接着部28を有している。この実施の形態においては、接着部28が本発明でいう「凸部」に相当する。この接着部28の先端に形成されている平坦な取付面28a(
図6参照)が弾性接着剤46によってセンサケース本体26の凹部29の底面29a(接着面)に接着されている。
弾性接着剤46は、硬化することによりゴム状弾性体となるもので、絶縁性を有している。この弾性接着剤46としては、例えばフッ素系のものやシリコーン系のものを使用することができる。
【0026】
図2に示すように、センサチップ21の第1の圧力室22と第2の圧力室23は、センサチップ21を構成する板状部材の積層方向(
図2においては上下方向)に延びる穴状に形成されており、上述した接着部28に開口する大径穴47と、大径穴47からセンサチップ21の内方に延びる小径穴48とによって構成されている。センサチップ21は、第1の圧力室22に伝達された圧力伝達媒体24の圧力と、第2の圧力室23に伝達された圧力伝達媒体24の圧力との差圧を検出するように構成されている。
【0027】
大径穴47の穴径は、小径穴48の穴径より大きく、かつセンサケース本体26の第1および第2の貫通孔31,32の孔径より大きい。また、大径穴47の深さは、この実施の形態においては接着部28の突出高さと同等に設定されている。このように大径穴47が接着部28に形成されていることにより、センサチップ21がセンサケース本体26に接着された状態においては、
図4に示すように、第1および第2の導圧パイプ17,18の突出部17a,18aが大径穴47の中に挿入される。この実施の形態による大径穴47は、センサチップ21の接着部28が第1および第2の導圧パイプ17,18の突出部17a,18aから予め定めた絶縁距離Lをおいて離間するように形成されている。この実施の形態においては、大径穴47が本発明でいう「凹陥部」に相当する。このため、センサチップ21は、センサケース本体26を介して第1、第2の導圧パイプ17,18に接続され、絶縁されている。
【0028】
第1および第2の導圧パイプ17,18内と、大径穴47を含む第1、第2の圧力室22,23内は、圧力伝達媒体24で満たされている。このため、第1および第2の導圧パイプ17,18がセンサチップ21に接続されていないにもかかわらず、第1および第2の導圧パイプ17,18内からセンサチップ21に圧力伝達媒体24を介して圧力が伝播するようになる。この場合、弾性接着剤46は、センサチップ21をセンサケース本体26に接着する機能の他に、圧力伝達媒体24がセンサチップ21の外に漏洩することを阻止するシール材としても機能する。この実施の形態においては、大径穴47が本発明でいう「圧力導入口」に相当する。
【0029】
次に、上述したように構成された圧力センサ1の製造方法を
図5のフローチャートを参照して詳細に説明する。圧力センサ1を製造するためには、先ず、ステップS1~S4において、圧力センサ1の構成部品を個々に形成する。構成部品の形成順序は、
図5に示す順序に限定されることはない。
ステップS1においては、
図6に示すようにセンサチップ21を形成する。
【0030】
ステップS2においては、先ずステップS2Aでセラミックス製のセンサケース本体26を焼成する{
図7(A)参照}。その後、ステップS2Bにおいて、底部26aの第1、第2の貫通孔31,32の周囲にメタライズ処理を施し、
図7(B)に示すように半田付け用のランド37を形成する。なお、このステップS2Bにおいては、例えば半田付け用のランド37を形成した後にセンサケース本体26の開口部に蓋体27を接合するためのシームリング27aを設けることができる。また、充填材34として半田を使用する場合は、このステップS2Bにおいて、センサケース本体26の凹部29の底面29aにメタライズ処理を施して半田付用のランド35{
図7(C)参照}を形成する。
【0031】
ステップS3においては、先ずステップS3Aにおいて第1、第2の導圧パイプ17,18となる管体51{
図8(A)参照}を形成する。次に、ステップS3Bにおいて、管体51に第1、第2のワッシャ15,16を溶接する{
図8(B)参照}。その後、ステップS3Cにおいて、管体51と第1、第2のワッシャ15,16とからなる組立体を
図8(C)に示すようにめっき液槽52に浸漬し、金めっきを施す。
【0032】
ステップS4においては、蓋体27を形成する。
その後、ステップS5において、センサケース本体26に第1および第2の導圧パイプ17,18を半田付けする。このときは先ず、
図9に示すように、第1および第2の導圧パイプ17,18をセンサケース本体26の第1および第2の貫通孔31,32に挿入し、先端が凹部29内に所定の長さだけ突出する状態で図示していない治具によって保持する。そして、センサケース本体26の半田付け用のランド37から第1および第2の導圧パイプ17,18まで半田33が濡れ拡がるように半田付けを行う。
【0033】
この半田33の一部は、第1、第2の貫通孔31,32と第1、第2の導圧パイプ17,18との間に入り込む。
半田付けが完了した後、ステップS6において、第1および第2の貫通孔31,32と第1および第2の導圧パイプ17,18との間にセンサケース本体26の内方から充填材34を注入する。充填材34として接着剤を使用する場合は、第1および第2の導圧パイプ17,18の穴を塞いだ状態で、接着剤が第1および第2の導圧パイプ17,18の突出部17a,18aを伝って流れるように行う。また、充填材34として半田を使用する場合は、凹部29の底面29aであって第1および第2の貫通孔31,32の周囲に形成されている半田付用のランド35から第1および第2の導圧パイプ17,18に半田33が濡れ拡がるように行う。
【0034】
充填材34として接着剤を使用した場合、接着剤が硬化した後にステップS7を実施する。
ステップS7においては、センサケース本体26にセンサチップ21を接着する。このときは、先ず、
図10に示すように、センサケース本体26の凹部29の底面29aに弾性接着剤46を塗布する。この弾性接着剤46は、
図4に示すように、充填材34と重なることを防ぐために、穴46aが形成されるように塗布することが望ましい。
そして、
図11に示すように、センサチップ21をセンサケース本体26の中に挿入し、接着部28の先端を弾性接着剤46に重ねるようにしてセンサチップ21をセンサケース本体26に接着する。
【0035】
センサチップ21をセンサケース本体26に接着した後、ステップS8において、センサケース本体26の導体41とセンサチップ21の電極44とをボンディングワイヤ45によって電気的に接続する。
その後、ステップS9において、センサケース本体26を図示していないチャンバーの中に装填し、チャンバー内を所定の雰囲気(真空あるいはN2雰囲気)とした状態でセンサケース本体26の開口部に蓋体27をろう付けあるいはシーム溶接によって溶接する。蓋体27がセンサケース本体26に接合されることによって圧力センサ1が完成する。
【0036】
このように構成された圧力センサ1においては、第1および第2の導圧パイプ17,18をセンサチップ21とは離間させて配置できるから、センサチップ21を絶縁することができる。また、第1および第2の導圧パイプ17,18が挿入されたセンサケース本体26の第1、第2の貫通孔31,32がセンサケース本体26の内側から充填材34によって塞がれるから、セラミックス製センサケース本体26の層状の断面が露出する第1、第2の貫通孔31,32に圧力伝達媒体24が入ることがない。
したがって、セラミックス製のセンサケース本体26(筐体)の劈開面に圧力伝達媒体の圧力が加えられることを防いで破壊防止を図りながら、センサケース本体26によってセンサチップ21を絶縁することが可能な圧力センサおよび圧力センサの製造方法を提供することができる。
【0037】
また、この実施の形態による圧力センサの製造方法によれば、センサケース本体26の第1および第2の貫通孔31,32をセンサケース本体26の内側から塞ぐ接着剤(充填材34)と、センサチップ21をセンサケース本体26に接着する弾性接着剤46とを個別に硬化させることができる。このため、第1および第2の貫通孔31,32側の接着剤で発生した応力がセンサチップ21側の弾性接着剤46に伝達されることを防ぐことができるから、センサチップ21に外力が伝達されることがなく、センサチップ21による圧力検出の精度をより一層高くすることができる。
【0038】
この実施の形態による第1および第2の導圧パイプ17,18は、センサケース本体26の凹部29の底面29a(接着面)よりセンサケース本体26の内部に所定の長さだけ突出する突出部17a,18aを有している。センサチップ21は、突出部17a,18aとの間に予め定めた絶縁距離Lをおいて離間する大径穴47(凹陥部)を有している。
このため、ノイズが第1および第2の導圧パイプ17,18からセンサチップ21に伝わることがないから、動作の信頼性が高い圧力センサを実現することができる。
【0039】
この実施の形態において、センサチップ21とセンサケース本体26との接着は、絶縁性を有する弾性接着剤46が使用されている。このため、ノイズがセンサケース本体26からセンサチップ21に伝達されることをより一層確実に防ぐことができる。
【0040】
この実施の形態による圧力センサ1において、センサチップ21におけるセンサケース本体26に接着される端部は、センサケース本体26に向けて凸になる接着部28(凸部)によって形成されている。接着部28の先端面(取付面28a)が弾性接着剤46によってセンサケース本体26に接着されている。このため、センサチップ21がセンサケース本体26に接着される部分の面積を最小にすることができ、しかも、センサケース本体26とセンサチップ21との線膨張係数の違いを弾性接着剤46で吸収することができる。したがって、センサケース本体26とセンサチップ21との接着部分に熱応力が発生することがないから、検出圧力の精度が高い圧力センサを実現することができる。
【0041】
この実施の形態において、充填材34が半田である場合は、センサケース本体26の内面における第1および第2の貫通孔31,32の周囲に半田付け用のランド35が形成される。このため、第1および第2の貫通孔31,32を半田によって確実に塞ぐことができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
本発明に係る圧力センサは
図12に示すように構成することができる。
図12において、
図1~
図11によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図12に示すセンサチップ21の第1および第2の圧力室22,23は、いずれも小径穴48のみによって形成されている。このセンサチップ21には、第1の実施の形態を採る場合の大径穴47は形成されていない。
【0043】
また、
図12に示す第1および第2の導圧パイプ17,18は、センサケース本体26の凹部29の底面29a(接着面)より凹部29内の突出することがないようにセンサケース本体26に半田付けされている。さらに、第1および第2の貫通孔31,32と第1および第2の導圧パイプ17,18との間に注入された充填材34は、第1、第2の貫通孔31,32の全域に充填されている。
このように大径穴を使用しない場合であっても第1および第2の導圧パイプ17,18とセンサチップ21との間の絶縁距離を確保でき、しかも、第1および第2の貫通孔31,32の孔壁面に圧力伝達媒体24の圧力が印加されることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0044】
1…圧力センサ、17…第1の導圧パイプ、18…第2の導圧パイプ、17a,18a…突出部、21…センサチップ、22…第1の圧力室(圧力導入口)、23…第2の圧力室(圧力導入口)、24…圧力伝達媒体、26…センサケース本体、26a…底部、28…接着部(凸部)、28a…取付面(先端面)、29a…底面(接着面)、31…第1の貫通孔、32…第2の貫通孔、33…半田、34…充填材、35,37…半田付け用のランド、46…弾性接着剤(絶縁性を有する接着剤)、47…大径穴(凹陥部)、L…絶縁距離、S1…センサチップを形成するステップ、S2…センサケース本体を形成するステップ、S3…導圧パイプを形成するステップ、S5…センサケース本体に導圧パイプを半田付けするステップ、S6…接着剤を充填するステップ、S7…センサケース本体にセンサチップを接着するステップ。