(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049706
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】回転電機のステータ冷却構造
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156099
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姉歯 美沙
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP05
5H609QQ05
5H609QQ08
(57)【要約】
【課題】回転電機の姿勢に関わらずにステータ冷却性能を改善する。
【解決手段】ステータ冷却構造は、ステータ5とロータ4との間に配置される第1部分21及び軸線方向においてコイル19に対向する第2部分22を含み、前記ケースと協働して、ステータ5を覆うことにより、ステータ5を冷却するための冷却通路25を画定するステータカバー20と、ステータ5カバーの第2部分22にコイル19に対向するように環状に形成され、冷媒が供給される環状通路28と、ステータ5カバーの第2部分22にコイル19のそれぞれに対応するように形成され、環状通路28を冷却通路25に連通させる複数の連通孔29と、径方向に延在し且つ周方向に互いに隣接する1対のコイル19の間に進入するように、ステータカバー20の第2部分22に突出形成された突条35と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機のステータ冷却構造であって、
ケースと、
前記ケースに固定され、前記回転電機の軸線を中心に環状に並べられてそれぞれコイルを巻回された複数のティースを備えたステータコアを有するステータと、
前記軸線を中心に回転可能に前記ケースに支持されたロータと、
前記ステータと前記ロータとの間に配置される第1部分及び、前記回転電機の軸線方向において前記コイルに対向する第2部分を含み、前記ケースと協働して、前記ステータを覆うことにより、前記ステータを冷却するための冷却通路を画定するステータカバーと、
前記ステータカバーの前記第2部分に前記コイルに対向するように環状に形成され、冷媒が供給される環状通路と、
前記ステータカバーの前記第2部分に前記コイルのそれぞれに対応するように形成され、前記環状通路を前記冷却通路に連通させる複数の連通孔と、
前記回転電機の径方向に延在し、且つ前記回転電機の周方向に互いに隣接する1対の前記コイルの間に進入するように、前記ステータカバーの前記第2部分に突出形成された突条と、を有する回転電機のステータ冷却構造。
【請求項2】
前記ステータカバーは、前記環状通路の前記コイルから離反した側を画定するカバー本体と、前記カバー本体に取り付けられ、前記環状通路の前記コイルに近接する側を画定する通路形成部材とを含み、
複数の前記連通孔及び複数の前記突条が前記通路形成部材に形成されている、請求項1に記載の回転電機のステータ冷却構造。
【請求項3】
前記突条は、前記通路形成部材に突出形成され、前記周方向について第1の幅を有する基部と、前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有し、前記基部の前記周方向の中央から前記軸線方向に更に突出する延長部とを含む、請求項2に記載の回転電機のステータ冷却構造。
【請求項4】
前記延長部が、前記周方向に互いに隣接する1対の前記コイルの輪郭曲線に沿う先細り形状をなす、請求項3に記載の回転電機のステータ冷却構造。
【請求項5】
前記延長部は、前記周方向に互いに隣接する1対の前記コイルの輪郭に沿うように、前記径方向の両端部において前記径方向の中間部よりも更に前記軸線方向に突出する1対の突起を有する、請求項3又は4に記載の回転電機のステータ冷却構造。
【請求項6】
前記通路形成部材は、複数の前記延長部が複数の前記基部と一体をなす樹脂の一体成形品である、請求項3又は4に記載の回転電機のステータ冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のステータ冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルをオイルによって冷却する油冷構造のモータが知られている。全てのコイルにオイルを掛けることで冷却能力を向上させたモータの冷却構造として、特許文献1が公知である。この冷却構造では、ロータ及びステータコアを内蔵するハウジングの内側に、モータの周方向に沿って延在する周方向油路が形成され、コイルを冷却する複数の噴射孔がコイル間の隙間に対向して周方向に沿って配列されている。周方向通路を通って複数の噴射孔に所定の圧力で供給されたオイルは、コイル間の隙間に向かって噴出され、全てのコイルにオイルが掛けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来技術では、噴出孔から噴出されたオイルはコイルに付着すると勢いを失う。モータが回転軸を鉛直にした姿勢で使用され、コイルの上方に噴出孔が設けられた場合には、オイルがコイルに付着したままコイルの下端まで流れるため、コイルの全体が冷却される。しかし、それ以外の姿勢では、コイルに付着して勢いがなくなったオイルは重力によって周方向に流れてしまうため、高い位置にあるコイルが十分に冷却されない虞がある。そのため、冷却性能の改善が望まれる。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、回転電機の姿勢に関わらずにステータ冷却性能を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、回転電機(1)のステータ冷却構造であって、ケース(3)と、前記ケースに固定され、前記回転電機の軸線(2)を中心に環状に並べられてそれぞれコイル(19)を巻回された複数のティース(16)を備えたステータコア(18)を有するステータ(5)と、前記軸線を中心に回転可能に前記ケースに支持されたロータ(4)と、前記ステータと前記ロータとの間に配置される第1部分(21)及び、前記回転電機の軸線方向において前記コイルに対向する第2部分(22)を含み、前記ケースと協働して、前記ステータを覆うことにより、前記ステータを冷却するための冷却通路(25)を画定するステータカバー(20)と、前記ステータカバーの前記第2部分に前記コイルに対向するように環状に形成され、冷媒が供給される環状通路(28)と、前記ステータカバーの前記第2部分に前記コイルのそれぞれに対応するように形成され、前記環状通路を前記冷却通路に連通させる複数の連通孔(29)と、前記回転電機の径方向に延在し、且つ前記回転電機の周方向に互いに隣接する1対の前記コイルの間に進入するように、前記ステータカバーの前記第2部分に突出形成された突条(35)と、を有する。
【0007】
この態様によれば、環状通路に供給された冷媒は複数の連通孔を通って、複数のコイルに略均等に分配され、冷却通路に供給される。各コイルに対して均等に供給された冷媒は、突条があることによって隣のコイルの方へ流れることを抑制され、対応するコイルに沿って冷却通路を流通してコイルを冷却する。このように、突条が仕切り壁として機能し、コイルに均等に供給された冷媒が周方向に流れずにコイルに沿って流れることにより、回転電機の姿勢に関わらずに全てのコイルが略均等に冷却される。これにより、ステータ冷却性能が改善される。
【0008】
上記の態様において、前記ステータカバーは、前記環状通路の前記コイルから離反した側を画定するカバー本体(26)と、前記カバー本体に取り付けられ、前記環状通路の前記コイルに近接する側を画定する通路形成部材(27)とを含み、複数の前記連通孔及び複数の前記突条が前記通路形成部材に形成されているとよい。
【0009】
この態様によれば、環状通路の形成並びに連通孔及び突条の形成が容易であり、突条を所望の形状にすることができる。
【0010】
上記の態様において、前記突条は、前記通路形成部材に突出形成され、前記周方向について第1の幅を有する基部(36)と、前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有し、前記基部の前記周方向の中央から前記軸線方向に更に突出する延長部(37)とを含むとよい。
【0011】
この態様によれば、突条が基部と延長部とを含むことで、配置スペースに合わせて突条の突出寸法を大きくすることができ、これにより突条による冷却通路仕切り効果を向上させることができる。
【0012】
上記の態様において、前記延長部が、前記周方向に互いに隣接する1対の前記コイルの輪郭曲線に沿う先細り形状をなすとよい。
【0013】
この態様によれば、仕切りとして機能する突条の先端部の形状を隣り合うコイルの輪郭曲線に沿わせることができる。これにより、突条とコイルとの隙間が小さくなり、冷媒の混流(他コイル側への漏洩)が抑制されるため、冷媒の流れの指向性が向上する。したがって、複数のコイルがより均等に冷却される。
【0014】
上記の態様において、前記延長部は、前記周方向に互いに隣接する1対の前記コイルの輪郭に沿うように、前記径方向の両端部において前記径方向の中間部よりも更に前記軸線方向に突出する1対の突起(38)を有するとよい。
【0015】
この態様によれば、延長部がコの字形状をなし、1対の突起がコイル間の隙間を埋めるように突出することにより、連通孔からコイルに供給された冷媒が隣接するコイルへ流れることが効果的に抑制される。これにより、複数のコイルがより均等に冷却される。
【0016】
上記の態様において、前記通路形成部材は、複数の前記延長部が複数の前記基部と一体をなす樹脂の一体成形品であるとよい。
【0017】
この態様によれば、仕切りとして機能する複数の突条の基部及び延長部が通路形成部材に一体成形されることで、部品点数が削減されると共に、組付け性の改善によって生産性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
以上の態様によれば、回転電機の姿勢に関わらずにステータ冷却性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図6】連通孔を通る断面で示すステータ要部の展開断面図
【
図7】連通孔の寸法と冷却性能との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る冷却構造が適用されたモータ1の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は実施形態に係るモータ1の断面図である。
図1に示すように、モータ1は、軸線2を中心とする円筒形をなすケース3と、ケース3によって軸線2の回りに回転可能に支持されたロータ4と、ロータ4の外周側に配置され、ケース3に固定されたステータ5とを有している。すなわち、モータ1は、インナロータ型且つラジアルギャップ型モータとして構成されている。モータ1は、軸線2が水平に延在する
図1に示す姿勢で使用されているが、軸線2が鉛直に延在する姿勢で使用されてもよい。
【0022】
ケース3は、軸線方向に分割可能なケース本体6とケース蓋体7とを有し、ロータ4及びステータ5を収容する収容空間を内部に画定している。ケース本体6は円筒形の側壁8と、側壁8の下端を塞ぐ底壁9とを有している。ケース本体6の底壁9及びケース蓋体7には、軸線2を中心とする貫通孔10が形成されている。
【0023】
ロータ4は、軸線2に沿って延在し、モータ1の出力軸をなす回転軸11と、回転軸11の周りに配置されたロータハブ12と、ロータハブ12の外端に設けられた円筒状のヨーク13(ロータコア)と、複数の永久磁石(単に磁石14という)とを備えている。ロータハブ12は、回転軸11に一体に設けられていてもよく、遊星歯車機構等を介して回転軸11に相対回転可能に設けられていてもよい。いずれの構成においても、ロータハブ12の回転に伴って回転軸11が回転する。
【0024】
回転軸11は、ケース本体6及びケース蓋体7にベアリング15を介して回転可能に支持されている。回転軸11はケース本体6及びケース蓋体7の貫通孔10を貫通してケース3の両面から軸線方向に突出している。他の実施形態では、回転軸11は、ケース3の片方の面のみから突出していてもよい。ヨーク13は、軸線2を中心とした略円筒形状の回転子鉄心であり、ロータハブ12の外縁に一体に形成され、ロータハブ12と一体に回転する。モータ1は、永久磁石同期モータであり、ヨーク13の外周には、複数の磁石14が周方向に所定の配列をもって配置される。ロータ4はモータ1の界磁子をなす。
【0025】
ステータ5は、ロータ4の外面との間に径方向に所定のギャップを介してケース本体6の側壁8に沿って配置される。ステータ5は、複数のティース16と、ティース16の外側に配置されてティース16を保持するティース保持リング17(ステータヨーク)とを有するステータコア18と、ティース16に巻回された複数のコイル19とを備えている。ステータ5はモータ1の電機子をなす。ティース保持リング17は円筒状をしており、軸線2を中心として配置される。ティース16はティース保持リング17に沿って周方向に並べられ、ティース保持リング17の内面から径方向内側に突出する。
【0026】
図2は、
図1に示すモータ1の、アウタ部分の分解斜視図である。
図2に併せて示すように、ケース本体6には、ケース本体6と協働してステータ5を覆うステータカバー20が取り付けられる。
図1の拡大図に示すように、ステータカバー20は、円筒状の第1部分21と、第1部分21の軸線方向の一端から径方向外側に延出する円環板状の第2部分22と、第1部分21の軸線方向の他端から径方向内側に延出する円環板状の第3部分23とを含む。ステータカバー20は、透磁率が小さい非磁性体であり、例えば合成樹脂の射出成形品であってよい。第1部分21は、ステータ5とロータ4との間(すなわち、上記ギャップ)に配置される。第2部分22は、モータ1の軸線方向においてコイル19に対向し、外縁においてシール部材24を介してケース本体6の側壁8に密着する。第3部分23は、内縁においてシール部材24を介してケース本体6の底壁9に密着する。
【0027】
このように、ステータカバー20は、ケース本体6と協働して、ステータ5を覆うことにより、ステータ5を冷却するための冷却通路25を画定する。冷却通路25は円筒形状をしており、冷媒として供給されるオイルが冷却通路25を軸線方向に流通する。
【0028】
図3はモータ1のアウタ部分を破断して示す斜視図である。
図1及び
図3に示すように、ステータカバー20は、第1部分21、第2部分22の一部及び第3部分23をなすカバー本体26と、第2部分22においてカバー本体26に取り付けられた円環状の通路形成部材27とを有している。通路形成部材27は、コイル19に対向する位置に冷却通路25に冷媒を分配するための環状通路28を形成するための部材であり、環状通路28のコイル19に近接する側を画定している。カバー本体26は環状通路28のコイル19から離反した側を画定している。
【0029】
本実施形態では、通路形成部材27はカバー本体26に一体成形されることによってカバー本体26に一体に取り付けられている。他の実施形態では、通路形成部材27は成形後に接着剤や溶着などによって一体になるようにカバー本体26に取り付けられてもよい。このように環状通路28がカバー本体26と通路形成部材27とにより形成されるため、環状通路28の形成が容易である。
【0030】
通路形成部材27には、環状通路28を冷却通路25に連通させる複数の連通孔29が形成されている。ケース本体6の上端部には、環状通路28の上部に連通する冷媒供給路30が形成されている。冷媒供給路30から環状通路28に供給された冷媒は、連通孔29を通って円筒状の冷却通路25に概ね均等に分配される。
【0031】
ケース本体6の底壁9とコイル19との間には、冷却通路25を通ってステータ5のコイル19を冷却した冷媒を集合させるために環状の集合通路31が設けられている。集合通路31は、底壁9の冷却通路25側の内面に形成された環状凹部32によって形成される。ケース本体6の下端部には、集合通路31の下部に連通する冷媒排出路33が形成されている。コイル19を冷却して集合通路31によって集められた冷媒は、冷媒排出路33を通って外部へ排出される。
【0032】
図4は
図3中のIV部の拡大断面図であり、
図5は内側から視たカバー部材の要部斜視図であり、
図6は連通孔29を通る断面で示すステータ要部の展開断面図である。
図4~
図6に示すように、連通孔29は複数のコイル19のそれぞれに対応するようにコイル19毎に通路形成部材27に設けられている。よって、環状通路28を流通する冷媒は連通孔29を通って、複数のコイル19に略均等に分配され、冷却通路25に供給される。
【0033】
また、通路形成部材27における互いに隣接する2つの連通孔29の間に対応する部分のそれぞれには、突条35が形成されている。突条35は、モータ1の径方向に延在し、周方向に互いに隣接する2つのコイル19の間に形成される隙間に進入するように配置されている。
図6に矢印で示されるように、各コイル19に対して供給された冷媒は、突条35があることによって隣のコイル19の方へ流れることを抑制され、対応するコイル19に沿って冷却通路25を流通してコイル19を冷却する。このように、突条35が仕切り壁として機能し、コイル19に均等に供給された冷媒が周方向に流れずにコイル19に沿って流れる。これにより、モータ1の姿勢に関わらずに全てのコイル19が略均等に冷却される。したがって、ステータ冷却性能が改善される。
【0034】
上記のように複数の連通孔29及び複数の突条35は通路形成部材27に形成されている。そのため、連通孔29及び突条35の形成が容易であり、突条35を所望の形状にすることができる。
【0035】
図6に示すように、突条35は、通路形成部材27に突出形成され、周方向について第1の幅W1を有する基部36と、第1の幅W1よりも小さい第2の幅W2を有し、基部36の周方向の中央から軸線方向に更に突出する延長部37とを含んでいる。突条35の基部36は、先端が2つのコイル19の間に進入するように配置されている。突条35の延長部37は、先端が2つのコイル19の間に進入するように配置されている。このように突条35が基部36と延長部37とを含むことで、配置スペースに合わせて突条35の突出寸法を大きくすることが可能になる。これにより突条35による冷却通路25の仕切り効果が向上する。
【0036】
図4及び
図5に示すように、延長部37は、周方向に互いに隣接する1対のコイル19の輪郭に沿うように、径方向の両端部において径方向の中間部よりも更に軸線方向に突出する1対の突起38を有している。つまり、延長部37はコの字形状(ステープル形状)をなしている。このように1対の突起38がコイル19間の隙間を埋めるように突出することにより、連通孔29からコイル19に供給された冷媒が隣接するコイル19へ流れることが効果的に抑制される。これにより、複数のコイル19がより均等に冷却される。
【0037】
突条35の延長部37は、基部36と同じ材料から形成されてもよく、基部36とは異なる材料から形成されてもよい。本実施形態では、延長部37は基部36と異なる材料から形成されている。この場合、延長部37は基部36の材料に比べて弾性率が小さく変形しやすい材料から形成されるとよい。いずれの場合においても、延長部37は基部36と一体に成形されるよい。
【0038】
図5に示すように、突条35の延長部37は、径方向外側においてリング部39によって互いに接続されて環状をなすように基部36に一体に成形されている。すなわち、通路形成部材27は、複数の延長部37が複数の基部36と一体をなし且つ互いに接続されて環状をなすように成形された樹脂の一体成形品である。このように、仕切りとして機能する複数の突条35の基部36及び延長部37が通路形成部材27に一体成形されることで、部品点数が削減されると共に、組付け性の改善によって生産性が向上する。
【0039】
ここで、連通孔29の寸法とステータ冷却性能との関係について説明する。連通孔29が大きいと、圧力損失が小さい一方、円筒状の冷却通路25に冷媒を均等に分配することができず、各コイル19への冷媒供給量のばらつきが大きい。逆に、連通孔29が小さいと、各コイル19への冷媒供給量のばらつきが小さい一方、圧力損失が大きい。そこで発明者は、連通孔29を正方形とし、連通孔29の一辺の長さを0.75mm、0.8mm、0.9mmにした各場合について、圧力損失と冷媒供給量のばらつきとの関係を確認した。冷媒温度は80℃、冷媒流用は15L/minとした。冷媒供給量のばらつきは、最大流量と最小流量との差であり、流量で表される。結果は、
図7に示す通りであった。
【0040】
図7は連通孔29の寸法と冷却性能との関係を示すグラフである。
図7に示すように、本実施形態では、連通孔29の一辺の長さが0.8mmの場合、圧力損失は38kPaであり、ばらつきは0.0063L/minであり、これが最適と判断した。なお、連通孔29の寸法は、連通孔29の数、冷媒の温度、粘性、冷媒供給量、冷媒圧力等に応じて適宜設定されてよい。
【0041】
≪変形例≫
次に、
図8を参照して実施形態に係る冷却構造の変形例について説明する。なお、上記実施形態と同一又は同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図8(A)~(C)は3つの変形例を示している。これらの変形例では、突条35の延長部37の形状が上記実施形態と相違する。いずれの変形例においても延長部37は先願側の幅が基端側に比べて狭い先細り形状をなしている。なお、
図8においては、後述する変形作用の理解を容易にするために、1対の延長部37が先端を対向させるように示されている。
図8(A)の変形例では、延長部37の先端の幅は基端の幅に比べてわずかに小さい。
図8(C)の変形例では、延長部37の先端の幅は略0である。
図8(B)の変形例では、延長部37の先端の幅は(A)の幅と(C)の幅との中間であり、(A)の幅の半分程度である。
【0042】
いずれの例においても、延長部37は、先端の先細り形状部が周方向に互いに隣接する1対のコイル19の輪郭曲線に沿うように配置される。このように、延長部37が周方向に互いに隣接する1対のコイル19の輪郭曲線に沿う先細り形状をなすことにより、仕切りとして機能する突条35の先端部の形状を隣り合うコイル19の輪郭曲線に沿わせることができる。これにより、突条35とコイル19との隙間が小さくなり、冷媒の混流(他のコイル19側への漏洩)が抑制されるため、冷媒の流れの指向性が向上する。したがって、複数のコイル19がより均等に冷却される。
【0043】
延長部37は、先端の幅が小さいほど撓みやすい(先端において変形しやすい)。したがって、延長部37の幅方向の両側に圧力差があると、延長部37が撓むことによって冷媒が圧力の高い方から低い方へ流れ、延長部37の両側の圧力差が小さくなる。そこで、圧力が低い位置に配置される突条35については延長部37を撓みやすくし、圧力が高い位置に配置される突条35については延長部37を撓みにくくすることにより、周方向へ流れる冷媒の流量を調整するとよい。
【0044】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、本発明がモータ1に適用されているが、本発明は回転電機に適用することができ、ジェネレータ或いはモータ・ジェネレータに適用されてもよい。また、モータ1は、軸線2が水平面に対して傾斜した姿勢や軸線2が鉛直に延在する姿勢で使用されてもよい。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、素材など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更することができる。また、上記実施形態は、構成の一部又は全部を互いに組み合わせてもよい。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 :モータ(回転電機一例)
2 :軸線
3 :ケース
4 :ロータ
5 :ステータ
16 :ティース
18 :ステータコア
19 :コイル
20 :ステータカバー
21 :第1部分
22 :第2部分
25 :冷却通路
26 :カバー本体
27 :通路形成部材
28 :環状通路
29 :連通孔
35 :突条
36 :基部
37 :延長部
38 :突起