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特開2024-49714交通情報管理システム、および、交通情報管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049714
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】交通情報管理システム、および、交通情報管理方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240403BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20240403BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240403BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240403BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240403BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/01 C
G16Y40/20
G16Y20/20
G16Y10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156115
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下川 裕亮
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF12
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF33
5H181JJ03
5H181LL01
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL14
5H181MC12
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】事故注意喚起情報を適切な位置の情報端末に送信する。
【解決手段】実施形態における交通情報管理システムは、道路の複数の区間ごとに、道路に設置されている車両感知センサからのセンサ情報、および、道路を走行する車両からのプローブ情報の少なくともいずれかを含む現在交通情報を取得する取得部と、複数の区間それぞれについて、過去交通情報および過去事故データと、現在交通情報と、に基づいて、将来の所定タイミングに関して、事故の発生しやすさを表す事故発生度を算出する事故発生度算出部と、事故発生度が閾値以上である区間があった場合に、それぞれの区間での車両走行速度に基づいて、所定タイミングに当該区間に到達する車両の現在の地点を算出する地点算出部と、地点よりも道路の上流側に位置する情報端末に、当該区間の事故注意喚起情報を送信する送信制御部と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の複数の区間ごとに、前記道路に設置されている車両感知センサからのセンサ情報、および、前記道路を走行する車両からのプローブ情報の少なくともいずれかを含む現在交通情報を取得する取得部と、
前記複数の区間それぞれについて、過去交通情報および過去事故データと、前記現在交通情報と、に基づいて、将来の所定タイミングに関して、事故の発生しやすさを表す事故発生度を算出する事故発生度算出部と、
前記事故発生度が閾値以上である前記区間があった場合に、それぞれの前記区間での車両走行速度に基づいて、前記所定タイミングに当該区間に到達する車両の現在の地点を算出する地点算出部と、
前記地点よりも前記道路の上流側に位置する情報端末に、当該区間の事故注意喚起情報を送信する送信制御部と、
を備える交通情報管理システム。
【請求項2】
前記地点算出部は、それぞれの前記区間での将来の時間ごとに予測された車両走行速度に基づいて、前記所定タイミングに当該区間に到達する車両の現在の地点を算出する、
請求項1に記載の交通情報管理システム。
【請求項3】
前記情報端末は、前記道路に設置された情報板、前記道路に設置されたITS(Intelligent Transport Systems)スポット、車両の利用者が所持する移動情報端末、車両に搭載されたカーナビゲーションシステムのうち少なくともいずれかである、
請求項1に記載の交通情報管理システム。
【請求項4】
前記情報端末が前記情報板である場合に、
前記送信制御部は、当該区間の前記事故注意喚起情報のほかに前記情報板に送信する他の情報があるときに、情報の種類ごとに予め定められた配信優先度に基づいて、前記情報板に送信する情報を決定して送信する、
請求項3に記載の交通情報管理システム。
【請求項5】
取得部が、道路の複数の区間ごとに、前記道路に設置されている車両感知センサからのセンサ情報、および、前記道路を走行する車両からのプローブ情報の少なくともいずれかを含む現在交通情報を取得する取得ステップと、
事故発生度算出部が、前記複数の区間それぞれについて、過去交通情報および過去事故データと、前記現在交通情報と、に基づいて、将来の所定タイミングに関して、事故の発生しやすさを表す事故発生度を算出する事故発生度算出ステップと、
地点算出部が、前記事故発生度が閾値以上である前記区間があった場合に、それぞれの前記区間での車両走行速度に基づいて、前記所定タイミングに当該区間に到達する車両の現在の地点を算出する地点算出ステップと、
送信制御部が、前記地点よりも前記道路の上流側に位置する情報端末に、当該区間の事故注意喚起情報を送信する送信制御ステップと、
を含む交通情報管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、交通情報管理システム、および、交通情報管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路(高速道路など)において事故が発生すると、交通状況に影響し、道路利用者の利用効率が低下する。そのため、AI(Artificial Intelligence)や機械学習などによって事故を予測する技術が研究されている。
【0003】
例えば、道路の複数の区間のうち、所定区間の直後のタイミングにおいて事故の発生確率(事故発生度)が高いという予測結果が出たものとする。その場合、その所定区間の直近上流に位置する情報端末(情報板など)に事故注意喚起情報を送信して表示させることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2018-505422号公報
【特許文献2】特開2014-164524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、事故を予測する周期やどの位置の情報端末に事故注意喚起情報を送信するのかを決定する場合に、実際の交通状況(車両走行速度など)が考慮されていないため、改善の余地がある。
【0006】
そこで、本実施形態の課題は、事故注意喚起情報を適切な位置の情報端末に送信することができる交通情報管理システム、および、交通情報管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態における交通情報管理システムは、道路の複数の区間ごとに、前記道路に設置されている車両感知センサからのセンサ情報、および、前記道路を走行する車両からのプローブ情報の少なくともいずれかを含む現在交通情報を取得する取得部と、前記複数の区間それぞれについて、過去交通情報および過去事故データと、前記現在交通情報と、に基づいて、将来の所定タイミングに関して、事故の発生しやすさを表す事故発生度を算出する事故発生度算出部と、前記事故発生度が閾値以上である前記区間があった場合に、それぞれの前記区間での車両走行速度に基づいて、前記所定タイミングに当該区間に到達する車両の現在の地点を算出する地点算出部と、前記地点よりも前記道路の上流側に位置する情報端末に、当該区間の事故注意喚起情報を送信する送信制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態における高速道路を示す模式図である。
図2図2は、実施形態における交通情報管理システム等を示す機能構成図である。
図3図3は、実施形態のヒートマップ画面例を模式的に示す図である。
図4図4は、実施形態において事象ごとに予め設定された配信優先度を示す図である。
図5図5は、VICS(登録商標)による事故多発地点での情報提供の例である。
図6図6は、VICSによる安全運転支援情報の提供例である。
図7図7は、実施形態において、VICSを経由した、カーナビに対する事故予測情報の通知方法を説明するための図である。
図8図8は、実施形態におけるQ-V分布情報を模式的に示す図である。
図9図9は、実施形態における交通情報管理システムによる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の交通情報管理システム、および、交通情報管理方法の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、実施形態において対象とする高速道路(以下、単に「道路」ともいう。)について説明する。
【0010】
図1は、実施形態における高速道路を示す模式図である。この高速道路には、上り車線(以下、単に「上り」ともいう。)と下り車線(以下、単に「下り」ともいう。)があり、交通情報を作成する単位として複数の区間(例えば0.5km~2km/区間、場所によってはもっと長い区間の場合もある。)が設定されている。本実施形態では、区間として、区間A1~A6について説明する。
【0011】
区間A1~A6それぞれの路側に、車両感知器TC1~TC6(図2の車両感知器2(トラフィックカウンタ))が設置されている。以下、車両感知器TC1~TC6を特に区別しないときは、「車両感知器2」と記載する。
【0012】
車両感知器2は、上り車線、下り車線のそれぞれについて、交通量[台/h]、平均速度[km/h]、車両密度[台/km]、占有率(オキュパンシー)[%]などの情報を収集し、それらの情報を交通情報管理システム1(図2)に送信する。なお、車両感知器2は、上り車線用と下り車線用で別々に設けられるが、上り車線用と下り車線用が兼用でもよい。
【0013】
また、この高速道路の路側には、路側通信設備B1、B2、B3(図2の路側通信設備5。例えばITS(Intelligent Transport Systems)スポット)が、それぞれ、区間A1、A4、A6に設置され、ETC(Electronic Toll Collection System)2.0車載機と通信可能である。以下、路側通信設備B1~B3を特に区別しないときは、「路側通信設備5」と記載する。路側通信設備5は、上り車線、下り車線のそれぞれについて、近傍を通過した車両4(以下、符号「4」を省略して単に「車両」ともいう。)からプローブ情報(例えば、車両の位置、速度、日時等の走行履歴情報)を受信し、その受信したプローブ情報を交通情報管理システム1(図2)に送信する。
【0014】
また、この高速道路の路側には、情報板IB1、IB2(図2の情報板6)が、それぞれ、区間A2と区間A3の間、区間A4と区間A5の間に設置されている。以下、情報板IB1、IB2を特に区別しないときは、「情報板6」と記載する。情報板6は、上り車線、下り車線のそれぞれを走行する車両に対して、交通情報管理システム1から受信した情報を表示する(詳細は後述)。
【0015】
次に、図2を参照して、実施形態における交通情報管理システム1等の構成について説明する。
図2は、実施形態における交通情報管理システム1等を示す機能構成図である。交通情報管理システム1は、交通管制システムの一部として構成される。ここで、交通管制システムとは、高速道路における区間ごとの混雑度(例えば、渋滞、混雑、順調の三択)や、交通イベント発生(例えば、交通事故、故障車、落下物等)を認識し、必要に応じて、その交通状況の情報(交通情報)を高速道路の利用者等に提供するシステムである。
【0016】
交通管制システムは、例えば、交通管制室1000における複数のコンピュータ装置によって構成される。例えば、交通管制室1000には、プローブ情報収集装置や中央処理装置等の複数の大型コンピュータ装置(不図示)、オペレータによって使用される複数の端末装置1002、大型の表示部1001などが設けられている。なお、後述する表示部14は、表示部1001や、端末装置1002の表示部に対応している。
【0017】
交通情報管理システム1は、例えば、交通管制システムと同じ複数のコンピュータ装置から構成され、処理部11、記憶部12、入力部13、および、表示部14を備える。なお、本実施形態では、説明を簡潔にするために、交通情報管理システム1が1台のコンピュータ装置から構成されているようにして説明する。また、交通情報管理システム1は、外部の装置や機器との通信のための通信部も有しているが、説明を簡潔にするために通信部の図示および説明を省略する。
【0018】
処理部11は、交通情報管理システム1の全体の動作を制御し、交通情報管理システム1が有する各種の機能を実現する。処理部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を備える。CPUは、交通情報管理システム1の動作を統括的に制御する。ROMは、各種プログラムやデータを記憶する記憶媒体である。RAMは、各種プログラムを一時的に記憶したり、各種データを書き換えたりするための記憶媒体である。CPUは、RAMをワークエリア(作業領域)としてROM、記憶部12等に格納されたプログラムを実行する。処理部11は、機能構成として、取得部111と、算出部112と、送信制御部113と、受信制御部114と、演算部115と、を備える。
【0019】
取得部111は、道路の複数の区間ごとに、道路に設置されている車両感知器2(車両感知センサの例)からのセンサ情報を含む現在交通情報、及びITVカメラからの撮像画像等を取得する。また、取得部111は、路側通信設備5(ITSスポット)を介して、道路を走行する車両4(車載器41)から、から各種情報(プローブ情報)を取得する。取得部111は、取得した各種情報を記憶部12に記憶する。
【0020】
車両4の車載器41は、例えば、GPS(Global Positioning System)などの検知システムを用いて、時系列の車両情報として、車両の位置(緯度、経度、高度)、速度、加速度、走行方向、日時等の走行履歴情報であるプローブ情報を収集し、そのプローブ情報を交通情報管理システム1に送信する。
【0021】
算出部112は、各種データの算出を行う。例えば、算出部112(事故発生度算出部)は、複数の区間それぞれについて、記憶部12に格納された過去交通情報および過去事故データと、現在交通情報と、に基づいて、将来の所定タイミング(例えば直後、5分後、10分後や30分後など)に関して、事故の発生しやすさを表す事故発生度を算出する。この事故発生度の算出には、過去の事故の統計情報を用いて算出しても、過去の事故事例に基づく学習によって生成された事故予測モデルを用いて算出しても良い。ここで、事故予測モデルの一例としては、例えば、自己組織化マップ(SOM(Self-Organizing Map))(例えば特開2017-151545号公報参照)を使用することができる。
【0022】
また、算出部112(地点算出部)は、事故発生度が閾値以上である区間があった場合に、それぞれの区間での車両走行速度に基づいて、所定タイミングに当該区間に到達する車両の現在の地点を算出する。例えば、算出部112(地点算出部)は、それぞれの区間での現在の車両走行速度に基づいて、所定タイミングに当該区間に到達する車両の現在の地点を算出する。
【0023】
具体的には、例えば、ある区間で10分後に、事故発生度が閾値以上となることが予想されたとする。この場合に、当該区間に10分後に進入する車両に対しての通知が必要になる。ここで、当該区間の上流での平均の走行速度が60Km/hであるとすると、事故発生度が閾値以上となるまでの10分間で10Km走行することになる。このため、事故発生度が閾値以上の区間の10Km手前の地点で車両に対する通知が必要となる。
【0024】
また、算出部112(地点算出部)は、それぞれの区間での将来の時間ごとに予測された車両走行速度(後述するヒートマップ画面の情報)に基づいて、所定タイミングに当該区間に到達する車両の現在の地点を算出する。
【0025】
ここで、図3は、実施形態のヒートマップ画面例を模式的に示す図である。ヒートマップは、将来の時間と区間を二軸とする平面上において区間ごとの時間ごとの予測走行速度に応じて表示の色および/または模様を異ならせて表示させたマップである。つまり、算出部112は、各区間の現在の車両走行速度ではなく、将来の区間ごとの時間ごとの予測走行速度を用いて、所定タイミングに当該区間に到達する車両の現在の地点(以下、「所定上流地点」とも称する。)を算出することができる。ここで、ヒートマップは、渋滞予測結果等の情報を活用して作成される。なお、このような将来の区間ごとの時間ごとの予測走行速度は、例えば、機械学習技術などによって作成することができる。
【0026】
図2に戻って、送信制御部113は、所定上流地点よりも道路の上流側に位置する情報端末等に、当該区間の事故注意喚起情報を送信する制御部である。事故注意喚起情報の送信方法の詳細については、後述する。
【0027】
受信制御部114は、車両感知器2、スマートフォン3(以下、「スマホ」ともいう。)、車両4、路側通信設備5などから受信した情報を記憶部12に格納するなどの各種受信制御の動作を実行する。
【0028】
演算部115は、各部111~114が行う処理以外の処理を行う。
【0029】
記憶部12は、処理部11の動作プログラムや道路情報(道路における各区間の位置等の情報)や各種設定情報や各種演算結果情報などの各種情報を記憶する。また、記憶部12には、ITSスポット毎に、路線・方向・KP(キロポスト)-緯度経度高度の対比表が記憶されている。なお、記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの記憶装置で構成される。
【0030】
入力部13は、交通情報管理システム1に対するオペレータの操作を受け付ける。入力部13は、例えば、キーボード、マウス等の入力装置である。
【0031】
表示部14は、情報表示手段であり、液晶表示装置(LCD(Liquid Crystal Display))、有機EL(Electro-Luminescence)表示装置等により実現される。
【0032】
次に、情報端末による事故予測情報の提供方法について、説明する。
情報端末は、例えば、道路に設置された情報板6、道路に設置された路側通信設備5、車両の利用者が所持するスマートフォン3(移動情報端末)、車両に搭載されたカーナビゲーションシステム(以下、「カーナビ」ともいう。)(車載器41)のうち少なくともいずれかである。また、カーナビやスマートフォン3などにおいては、特定の緯度経度(例えば10分後に事故発生度が閾値以上となることが予想される区間に10分後に到達する車両の現在の地点)の場合と、当該区間に到達する直前の車両にも再度、注意喚起をすることで、注意喚起の効果をより高めることができる。
【0033】
まず、情報端末が情報板6である場合について、説明する。
情報板6は、表示面積と文字数の大きさ(視認性の確保のため、所定の大きさよりも、文字を小さくできない)の関係などから、同時に配信可能な情報数について、例えば2個という上限がある。このため、情報板6の表示では、緊急度や影響度を考慮して、情報の種類ごとに予め定められた配信優先度が決められている。
【0034】
また、情報板6に事故注意喚起情報(以下、「注意喚起情報」ともいう。)を表示する場合には、表示の仕方に考慮が必要となる。送信制御部113は、当該区間の事故注意喚起情報のほかに情報板6に送信する他の情報があるときに、情報の種類ごとに予め定められた配信優先度に基づいて、情報板6に送信する情報を決定して送信する。これについて、図4を参照して説明する。
【0035】
図4は、実施形態において事象ごとに予め設定された配信優先度を示す図である。この配信優先度は、記憶部12に予め格納されている。具体的には、図4の例の場合、事象としては「地震・津波」(L1)が最も配信優先度が高く、以下、「トンネル火災」(L2)→「通行止め」(L3)→「逆走車」(L4)→「チェーン規制」(L5)→「車線規制」(L6)→「渋滞情報」(L7)→「事故注意喚起情報」(L8)→「イベント発生予測情報」(L9)→「工事予定」(L10)→「気象情報」(L11)→「所要時間」(L12)と続く。
【0036】
したがって、送信制御部113は、情報板6について、同時に配信可能な情報数の上限が2個で、配信候補情報が3個以上の場合、この配信優先度に基づいて、より配信優先度の高い情報を配信することができる。
【0037】
例えば、送信制御部113は、「事故注意喚起情報」(L8)を情報板6に送信予定の場面でも、それよりも配信優先度の高い情報が2つあれば、まずはそれらを優先して情報板6に送信する。一方、送信制御部113は、「事故注意喚起情報」(L8)を情報板6に送信予定の場面で、それよりも配信優先度の高い情報が1つあるか、あるいは、1つもなければ、「事故注意喚起情報」(L8)を優先して情報板6に送信する。
【0038】
次に、情報端末がカーナビで、路側通信設備5を用いたVICS(Vehicle Information and Communication System)から受信した情報によって運転者への通知(表示、音声出力)を行う場合について、説明する。
従来のITSスポットを用いたVICSによる情報提供では、静的な情報提供を行っていた。
【0039】
図5は、VICSによる事故多発地点での情報提供の例である。図5に示すように、カーナビによる通知(簡易図形表示や音声出力など)によって、事故多発地点における運転者への注意喚起を行う。図5では、道路Rにおいて、事故多発地点である領域R11とR12が表示されている。そして、領域R11に関する注意喚起情報は、ITSスポットI1からカーナビに送信される。また、領域R12に関する注意喚起情報は、ITSスポットI2からカーナビに送信される。運転者は、この図5に示すようなカーナビ画面を見ることで、事故多発地点に関して注意することができる。
【0040】
また、図6は、VICSによるからの安全運転支援情報の提供例である。図6に示すように、カーナビによる通知(簡易図形表示や音声出力など)によって、事故多発地点における運転者への注意喚起を行う。
図6(a)では、前方渋滞時の追突に関する注意喚起情報が表示されている。また、図6(b)では、急カーブでの事故に関する注意喚起情報が表示されている。運転者は、この図6に示すようなカーナビ画面を見ることで、前方渋滞時の追突や急カーブでの事故に関して注意することができる。
【0041】
本実施形態では、上述のようなITSスポットを用いた従来の静的な情報提供に加えて、ダイナミックな(動的な)情報提供も行うようにする。ダイナミックな(動的な)情報提供として、事故予測結果を通知することで、注意喚起にも利用することができる。
【0042】
図7は、実施形態において、VICSを経由した、カーナビに対する事故予測情報の通知方法を説明するための図である。
ここで、記憶部12には、各ITSスポット毎に、路線・方向・KP(キロポスト)-緯度経度高度の対比表が記憶されている。ITSスポットは、必ずしも一定距離ごとに設置されているわけではないため、設置間隔の距離が長い区間もあり得る。このため、路側通信設備5を用いたVICS(ITSスポットと、ETC2.0車載器との通信)では、通知を受けるべき地点(例えば図7(a)におけるITSスポットI12の付近の地点)に到達する前に事前に別の地点(例えば図7(a)におけるITSスポットI11の付近の地点)で情報交換しておき、特定の緯度経度になったときに注意喚起情報を提供する機能がある。
【0043】
注意喚起情報としては、例えば、図7(b)に示すように、この先が事故多発区間であることや、「前方注意」、「車間保て」、「速度落せ」などの具体的な指示事項が挙げられる。運転者は、この図7(b)に示すようなカーナビ画面を、事故多発区間に進入する前の適切なタイミングで見て注意することができる。
【0044】
また、スマホ等の携帯端末に対する事故予測情報の提供方法としては、道路情報提供用の所定アプリ(例えば、E-ハイラジ)や、地図アプリ(例えばグーグルマップ等)を介しての提供も可能である。この場合、ITSスポットとカーナビを介した情報提供と同様に、携帯端末にもGPS等の位置情報機能を利用して、事故予測の通知地点(60Km/hで走行の場合、10分前に10Km手前の地点)に到達する前に、事前に情報交換しておき、特定の緯度経度になったときに注意喚起を提供することが可能である。
【0045】
また、事故注意喚起情報の提供の必要性や利便性などに鑑みて、渋滞が発生していない状態のうち、非拘束状態と臨界状態のうちの臨界状態のときに提供するようにしてもよい。これについて、図8を用いて説明する。
【0046】
図8は、実施形態におけるQ-V分布情報を模式的に示す図である。Q-V分布情報において、縦軸は車両の速度(V)を示し、横軸は交通量(Q:単位時間当たりの車両通過台数)を示す。そして、領域R1は非拘束状態で、領域R2は臨界状態で、領域R3、R4は渋滞状態である。したがって、領域R2に示す臨界状態のときに限定して、本実施形態の技術を適用してもよい。
【0047】
図9は、実施形態における交通情報管理システム1による処理を示すフローチャートである。ここでは、事故予測の周期は5分で、予測タイミング(事故予測の対象となる将来のタイミング)は10分後であるものとする。
【0048】
まず、ステップS1において、取得部111は、記憶部12から予測タイミング(10分後)を取得する。
【0049】
次に、ステップS2において、取得部111は、道路の複数の区間ごとに、車両感知器2からのセンサ情報、および、道路を走行する車両4(車載器41)からのプローブ情報の少なくともいずれかを含む現在交通情報を取得する。
【0050】
次に、ステップS3において、算出部112は、複数の区間それぞれについて、記憶部12に格納された過去交通情報および過去事故データと、現在交通情報と、に基づいて、例えば事故予測モデル等を用いて、10分後に関する事故発生度を算出する。
【0051】
次に、ステップS4において、演算部115は、閾値以上の事故発生度があるか否かを判定する。ここで、閾値以上の事故発生度がある場合(Yesの場合)はステップS5に進み、閾値以上の事故発生度がない場合(Noの場合)は処理を終了する。
【0052】
ステップS5において、演算部115は、各区間の車両走行速度の算出可能か否かを判定し、Yesの場合はステップS6に進み、Noの場合は処理を終了する。例えば、ある区間について、車両感知器2からの情報が取得できず、かつ、プローブ情報も取得できないときは、ステップS5でNoとなる。
【0053】
ステップS6において、算出部112は、それぞれの区間での車両走行速度に基づいて、10分後に当該区間に到達する車両の現在の地点(所定上流地点)を算出する。
その場合、各区間での車両走行速度としては、上述したように、現在の車両走行速度を用いてもよい。具体的には、上述したように、ある区間で10分後に、事故発生度が閾値以上となることが予想されたとする。この場合に、当該区間に10分後に進入する車両に対しての通知が必要になる。ここで、当該区間までの平均の走行速度が60Km/hであるとすると、事故発生度が閾値以上となるまでの10分間で10Km走行することになる。このため、事故発生度が閾値以上の区間の10Km手前の地点で車両に対する通知が必要となる。
あるいは、各区間での車両走行速度としては、上述したように、図3に示すようなヒートマップ等を用いて、各区間での将来の時間ごとに予測された車両走行速度を用いてもよい。
【0054】
次に、ステップS7において、送信制御部113は、所定上流地点よりも道路の上流側に位置する情報端末(情報板6、路側通信設備5、スマートフォン3、カーナビゲーションシステム(車載器41)のうち少なくともいずれか)に、当該区間の事故注意喚起情報を送信する。これにより、情報板6、スマートフォン3、カーナビゲーションシステムは、当該区間の事故注意喚起情報を表示する。また、情報端末が路側通信設備5の場合、車両4はその路側通信設備5から事故注意喚起情報を受信して表示する。これにより、当該区間に10分後以降に到着する車両の運転手は、当該区間の事故注意喚起情報を見ることでそれを認識できる。
【0055】
このように、本実施形態の交通情報管理システム1によれば、事故の発生確率(事故発生度)が高い区間があって、どの位置の情報端末にその区間の事故注意喚起情報を送信するのかを決定する場合に、各区間の車両走行速度に基づいて決定するため、その区間の事故注意喚起情報を適切な位置の情報端末に送信することができる。
【0056】
また、各区間の車両走行情報として、現在の車両走行情報ではなく、将来の時間ごとに予測された車両走行速度を用いるようにすれば、所定タイミングに当該区間に到達する車両の現在の地点をより正確に算出することができる。
【0057】
また、情報端末が情報板6であって、事故注意喚起情報のほかに情報板6に送信する他の情報がある場合には、上述の配信優先度(図4)に基づいて、情報板6に送信する情報を決定して送信することで、情報ごとの重要度に合わせた適切な情報配信をすることができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0059】
例えば、車両感知センサの例として車両感知器2を用いて説明したが、これに限定されない。車両感知センサとして、カメラや超音波センサなどを用いてもよい。
【0060】
また、対象となる道路は、高速道路に限定されず、道路の複数の区間ごとに事故発生度などを算出する対象であれば、他の道路であってもよい。
【0061】
また、スマートフォン3やカーナビゲーションシステム(車載器41)などのような移動式端末装置での情報提供の場合は、その個車の走行速度を用いて所定上流地点を算出するようにしてもよい。
【0062】
また、例えば、事故の予測周期が1分などの短時間の場合、移動平均を計算することで5分周期として扱って、その5分周期で事故注意喚起情報の送信を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…交通情報管理システム、2…車両感知器、3…スマートフォン、4…車両、5…路側通信設備、6…情報板、11…処理部、12…記憶部、13…入力部、14…表示部、111…取得部、112…算出部、113…送信制御部、114…受信制御部、115…演算部、1001…表示部、1002…端末装置
図1
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図9