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特開2024-4973判定装置、ピックアップシステムおよび判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004973
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】判定装置、ピックアップシステムおよび判定方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/60 20170101AFI20240110BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240110BHJP
   G06V 10/70 20220101ALI20240110BHJP
   H05K 13/08 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
G06T7/60 300Z
G06T7/00 350B
G06V10/70
H05K13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104910
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】青山 裕矢
(72)【発明者】
【氏名】池尻 匡隆
【テーマコード(参考)】
5E353
5L096
【Fターム(参考)】
5E353CC03
5E353CC08
5E353HH11
5E353JJ48
5E353JJ50
5E353KK01
5E353KK11
5E353QQ12
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096FA67
5L096FA69
5L096JA11
5L096KA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】少数の教師データであっても精度の高い良否判定を実現する判定装置、ピックアップシステム及び判定方法を提供する。
【解決手段】搬送装置と、ピックアップ装置と、カメラと、画像処理用PCと、学習用PCと、PLC(programmable logic controller)と、ルータと、を備えるピックアップシステムにおいて、画像処理用PC104は、対象物の撮影画像から対象物の領域を、学習済の検出モデルで検出する領域検出部520と、上記領域における特徴量で学習済みの判定モデルで、対象物の良否を判定する判定部540と、判定部で「良」判定となった対象物をピックアップするピックアップ装置と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の撮影画像から当該対象物の領域を、学習された検出モデルで検出する領域検出部と、
前記領域における特徴量で学習された判定モデルで前記対象物の良否を判定する判定部と、
を備える判定装置。
【請求項2】
前記領域検出部は、前記撮影画像の各画素を、前記対象物を含んだ複数オブジェクトのいずれかに分類する分類処理によって前記対象物の領域を検出する請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記領域検出部は、前記分類処理としてセマンティックセグメンテーションを用いる請求項2に記載の判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記特徴量として、前記領域における予め設定された幾何学的な特徴量を用いる請求項1に記載の判定装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の判定装置と、
前記判定装置で「良」判定となった前記対象物をピックアップするピックアップ装置と、
を備えるピックアップシステム。
【請求項6】
前記ピックアップ装置におけるピックアップの結果の成否が、前記領域検出部で検出された領域の特徴量と対応付けられた教師データで前記判定モデルの再学習を行う第1の学習装置を更に備える請求項5に記載のピックアップシステム。
【請求項7】
前記ピックアップ装置は、ピックアップの結果の成否を検知する検知機能を有し、
前記第1の学習装置は、前記検知機能で検知された成否を前記領域検出部で検出された領域と対応付けて前記教師データを得る請求項6に記載のピックアップシステム。
【請求項8】
前記第1の学習装置は、前記ピックアップ装置におけるピックアップの失敗率が閾値を越えた失敗率であると判定モデルの再学習を行う請求項6に記載のピックアップシステム。
【請求項9】
前記第1の学習装置は、前記判定装置における「否」判定の判定率が閾値を越えた判定率であると判定モデルの再学習を行う請求項6に記載のピックアップシステム。
【請求項10】
前記領域を示した教師データの入力を受けて前記検出モデルの再学習を行う第2の学習装置を更に備える請求項6に記載のピックアップシステム。
【請求項11】
対象物の撮影画像から当該対象物の領域を、学習された検出モデルで検出する領域検出ステップと、
前記領域における特徴量で学習された判定モデルで前記対象物の良否を判定する判定ステップと、
を有する判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定装置、ピックアップシステムおよび判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物をカメラで確認し、アームなどでピックアップするピックアップシステムが知られる。また、ピックアップシステムや他の装置においては、ピックアップの可否や対象物の正常異常などといった良否判定を対象物の撮影画像に基づいて行う判定装置が求められる。
【0003】
例えば特許文献1は、対象物の撮影画像で当該対象物品について正常状態か否かを学習して判定する物品判別システムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-128456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
良否判定の判定基準が、対象物の撮影画像に基づいてディープラーニングなどに代表されるAI学習などで機械的に学習される場合、判定基準の詳細を人間が理解することが難しい。このため、AI学習などで学習された判定基準は、ピックアップシステムにおけるピックアップ率向上などへの利用が困難である。また、ディープラーニングなどの学習技術では、正確な良否判定を実現するためには多数の教師データが必要となる。
【0006】
一方、良否判定における判定基準として、人間が理解しやすい閾値が用いられる場合は閾値の適切な設定が難しい。
そこで、本発明は、少数の教師データであっても精度の高い良否判定を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る判定装置の一態様は、対象物の撮影画像から当該対象物の領域を、学習された検出モデルで検出する領域検出部と、上記領域における特徴量で学習された判定モデルで上記対象物の良否を判定する判定部と、を備える。
また、本発明に係るピックアップシステムの一態様は、上記判定装置と、上記判定装置で「良」判定となった上記対象物をピックアップするピックアップ装置と、を備える。
【0008】
また、本発明に係る判定方法の一態様は、対象物の撮影画像から当該対象物の領域を、学習された検出モデルで検出する領域検出ステップと、上記領域における特徴量で学習された判定モデルで上記対象物の良否を判定する判定ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少数の教師データであっても精度の高い良否判定を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明のピックアップシステムの一実施形態における概略構成を示す図である。
図2図2は、搬送装置を図1とは別方向で示す斜視図である。
図3図3は、搬送装置の部分拡大図である。
図4図4は、テープの構造を示す図である。
図5図5は、テープに収容される部品の一例を示す図である。
図6図6は、部品を収容してレール部上を進むテープを示す図である。
図7図7は、ピックアップ可否の判定処理の概念を模式的に示す概念図である。
図8図8は、部品の撮影画像の例を示す図である。
図9図9は、部品の姿勢の例を示す図である。
図10図10は、学習モデルの生成手順を示すフローチャートである。
図11図11は、ピックアップの処理手順を示すフローチャートである。
図12図12は、図11のS211の再学習による判定モデルの更新概念を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の判定装置、ピックアップシステムおよび判定方法の実施形態を詳細に説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、先に説明した図に記載の要素については、後の図の説明において適宜に参照する場合がある。
【0012】
図1は、本発明のピックアップシステムの一実施形態における概略構成を示す図である。
ピックアップシステム100は、一例として、電子部品や機械部品などを製品に自動実装するマウンタに組み込まれる。
【0013】
ピックアップシステム100は、搬送装置101と、ピックアップ装置102と、カメラ103と、画像処理用PC(パーソナルコンピュータ)104と、学習用PC105と、PLC(programmable logic controller)106と、ルータ107を備える。
【0014】
搬送装置101は、ピックアップの対象物を搬送し、ピックアップ装置102は当該対象物をピックアップハンド121でピックアップする。ピックアップハンド121におけるピックアップの方式は吸着方式であってもよいし把持方式であってもよい。
カメラ103は、搬送装置101で搬送される対象物を撮影して画像処理用PC104に撮影画像を送る。
【0015】
画像処理用PC104は、学習済みのモデル(学習モデル)によって撮影画像を解析することで、ピックアップハンド121による対象物のピックアップ可否を判定する。
PLC106は、ピックアップ装置102におけるピックアップハンド121などの動作を制御する。PLC106は、ルータ107などで構成されたネットワークで画像処理用PC104に接続され、ピックアップ可能と判定された対象物についてピックアップ装置102にピックアップを実行させる。つまり、ピックアップ装置102は、判定装置としての画像処理用PC104で「良」判定となった対象物をピックアップする。
【0016】
ピックアップ装置102には、ピックアップハンド121によるピックアップの結果の成否を検知するするセンサなどが備えられ、検知された成否の情報はPLC106を介して画像処理用PC104へと送られる。画像処理用PC104では、対象物の撮影画像とピックアップの成否とが対応付けられる。
【0017】
学習用PC105は、画像処理用PC104から撮影画像を取得して学習モデルを生成する。生成された学習モデルは、画像処理用PC104に送られて判定に用いられる。
図2は、搬送装置101を図1とは別方向で示す斜視図であり、図3は搬送装置101の部分拡大図である。
【0018】
搬送装置101は、リール部111とレール部112とを有する。ピックアップ対象物が収容されたテープ200は、リール状に巻かれてリール部111にセットされる。図2に矢印で示されるリール部111の回転に伴ってテープ200はレール部112へと繰り出される。
【0019】
レール部112へと繰り出されたテープ200はレール部112上を進み、ピックアップ箇所R1でピックアップハンド121による対象物のピックアップが実行される。
図4は、テープ200の構造を示す図である。
テープ200には、等間隔に凹部201が設けられ、各凹部201内に、ピックアップ対象物である部品300が収容される。テープ200がレール部112上に繰り出されることにより、各凹部201内に収容された部品300が、図3に示すピックアップ箇所R1へと搬送される。
【0020】
図5は、テープ200に収容される部品300の一例を示す図である。図6は、部品300を収容してレール部112上を進むテープ200を示す図である。
本実施形態では一例として、底部301と背部302とを有する部品300がピックアップの対象物となる。部品300の底部301には孔303が在る。部品300は、底部301が凹部201の底側に向いた姿勢で凹部201内に収容される。凹部201内に収容された部品300の姿勢が悪いと、ピックアップハンド121によるピックアップが失敗する。ピックアップが失敗すると、ピックアップシステム100における処理の遅延や中断を生じるおそれがある。
【0021】
このため、本実施形態のピックアップシステム100では、ピックアップ前にピックアップの可否が判定されて、ピックアップの失敗抑制による稼働率向上が図られる。即ち、レール部112上を進む部品300の各凹部201について、ピックアップ箇所R1内、あるいはピックアップ箇所R1の手前に存在する、図6に示す撮影領域R2で部品300の姿勢がカメラ103によって撮影される。そして、画像処理用PC104による撮影画像の解析により、ピックアップの可否(即ちピックアップ可能な姿勢であるか否か)が判定される。ピックアップ不可と判定された部品300はピックアップされずに廃棄され、次の部品300がピックアップ対象となる。
【0022】
ここで、ピックアップ可否の判定処理の概念について説明する。
図7は、ピックアップ可否の判定処理の概念を模式的に示す概念図である。図8は、部品300の撮影画像の例を示す図である。図9は、部品300の姿勢の例を示す図である。
【0023】
画像処理用PC104は、ピックアップ可否の判定処理の機能として、画像入力部510と、領域検出部520と、特徴量算出部530と、判定部540とを備える。画像処理用PC104は、本発明の判定装置の一実施形態として機能し、本発明の判定方法の一実施形態を実行する。
画像処理用PC104では、機械学習によって得られた学習モデル(領域検出モデル440および判定モデル460)が用いられて撮影画像430からピックアップの可否が判定される。領域検出部520は画像入力部510から入力される対象物(例えば部品300)の撮影画像430から当該対象物の領域を、学習された領域検出モデル440で検出し、当該領域を表した領域データ450を出力する。
【0024】
特徴量算出部530は、領域データ450が表す部品300の領域から、特定の算出ルールに従って、当該領域の特徴量455を算出する。判定部540は、算出された特徴量455に基づいて判定モデル460でピックアップの可否判定を行う。判定部540は、部品300の領域における特徴量で学習された判定モデル460で部品300の良否(例えばピックアップ可能な姿勢であるか否か)を判定する。
【0025】
このように、画像処理用PC104では、撮影画像430に基づいた可否判定のために、2つの学習モデル440、460による2段階の処理が実行される。
領域検出モデル440は、学習用PC105で領域検出の教師データ410によって学習された学習モデルである。領域検出の教師データ410としては、部品300の撮影画像411と部品300の領域データ412とを組み合わせた教師データが用いられる。本実施形態では、領域検出のアルゴリズムとしてセマンティックセグメンテーションが用いられ、領域検出モデル440の学習がディープラーニングで実行される。
【0026】
セマンティックセグメンテーションは、撮影画像430の画素を、部品300を含んだ複数オブジェクトのいずれかに分類する分類処理の一種である。教師データ410に含まれる部品300の領域データ412は、人間が部品300の領域として撮影画像411中で指定した領域を示す。上記分類処理は、オブジェクトの領域検出などに優れた処理であるため、領域検出モデル440によって部品300の領域が高い精度で検出される。セマンティックセグメンテーションは上記分類処理の中でも精度が高くて好ましい。
【0027】
図8に示すように、各撮影画像431~434には各姿勢で部品300が写り、例えば図8の左側に位置した2つの撮影画像431、432では、部品300の姿勢はピックアップが容易な正しい姿勢である。また、図8の右側に位置した2つの撮影画像433、434では、部品300の姿勢は正しい姿勢からずれた(例えば傾いた)姿勢である。領域検出モデル440は部品300の領域として、各撮影画像431~434中のハッチングされた範囲を検出する。このため、領域の形状などに部品300の姿勢が反映される。
【0028】
例えば図9には、テープ200の凹部201内における部品300の姿勢と、検出された領域451、452、453との対応が示される。図9の中央には、正しい姿勢で部品300が凹部201に収まった場合が示され(図8の撮影画像431、432に対応)、図9の右側には、正しい姿勢に対して部品300が左回りに傾いた姿勢で凹部201に収まった場合が示される(図8の撮影画像434に対応)。また、図9の左側には、正しい姿勢に対して部品300が右回りに傾いた姿勢で凹部201に収まった場合が示される(図8の撮影画像433に対応)。
【0029】
正しい姿勢の部品300に対応した領域452の面積は、左回りに傾いた姿勢の部品300に対応した領域453の面積よりも小さい。また、正しい姿勢の部品300に対応した領域452の面積は、右回りに傾いた姿勢の部品300に対応した領域451の面積よりも大きい。このように、部品300の領域451、452、453は、部品300の姿勢を反映した幾何学的な特徴を有する。図7に示す特徴量455としては、例えば領域データ450が表す領域における特定箇所のエッジ角度や当該領域の面積など、領域における予め設定された幾何学的な特徴量が用いられる。このような特徴量は、部品300の姿勢が反映されるとともに、人が理解し易くて好ましい。但し、ピックアップ可能な姿勢か否かを区別するための閾値となる適切な特徴量を人が求めることは難しいので、機械学習によって判定モデル460が生成される。
【0030】
図7に示す判定モデル460は、学習用PC105で判定の教師データ420によって学習された学習モデルである。判定の教師データ420としては、部品300の領域データ421と、領域データ421から特徴量を算出する算出アルゴリズム422と、部品300のピックアップ成否のデータ423とを組み合わせた教師データが用いられる。なお、判定の教師データ420としては、特徴量の算出アルゴリズム422で領域データ421から算出された特徴量と、ピックアップ成否のデータ423とを組み合わせた教師データが用いられてもよい。ピックアップ成否のデータ423としては、ピックアップ装置102で実際にピックアップハンド121がピックアップを行った結果の成否を表したデータが用いられる。
【0031】
判定モデル460の学習としては、結果として得られる判定モデル460における特徴量と判定結果との対応関係が理解しやすい例えば決定木分析などが望ましい。判定モデル460としては、例えば、複数種類の特徴量それぞれを座標軸とした多次元空間上の範囲が得られる。即ち、特徴量の組み合わせが当該範囲内に収まっていればピックアップ可能と判定される。判定モデル460の学習で、人が理解しやすい特徴量やモデルが採用されることにより、学習結果を部品300の収容工程などに反映してピックアップ率の向上を図ることが可能となる。
【0032】
上述したように、領域検出の教師データ410に含まれる部品300の領域データ412は人間が指定した領域のデータである。また、判定の教師データ420に含まれるピックアップ成否のデータ423は実際にピックアップを行った結果の成否を表したデータである。従って、近年のAI学習に用いられるような膨大なデータを教師データ410、420として用意することは難しい。しかし、領域検出モデル440と判定モデル460とに分かれた学習および処理が採用されることにより、教師データ410、420が少ない場合でも最終的に高い判定精度が得られる。
【0033】
図10は、学習モデルの生成手順を示すフローチャートである。
学習モデルの生成では、先ず、学習用のデータ収集のために、図1に示す搬送装置101、ピックアップ装置102およびカメラ103が稼働される。そして、ピックアップハンド121によるピックアップの成否データと、ピックアップ対象となった部品300の撮影画像が収集される(S101)。成否データと撮影画像は、カメラ103およびピックアップ装置102から画像処理用PC104を介して学習用PC105に収集される。
【0034】
次に、収集された撮影画像に対して部品300の領域が、学習用PC105に対する操作によって指定される。そして当該領域のデータが成否データおよび撮影画像のそれぞれと組み合わされて教師データ410、420が作成される(S102)。その後、撮影画像と部品300の領域とが組み合わされた教師データ410によって領域検出の学習が行われ(S103)、領域検出モデル440が生成される(S104)。
【0035】
一方、部品300の領域とピックアップの成否データとが組み合わされた教師データ420については、学習および判定に用いられる特徴量の種類が選定される(S105)。そして、当該特徴量の算出アルゴリズムが教師データ420に更に組み合わされ、判定の学習が行われて(S106)、判定モデル460が生成される(S107)。
【0036】
図11は、ピックアップシステム100におけるピックアップの処理手順を示すフローチャートである。
ピックアップ処理では、先ず、カメラ103によって部品300の画像が撮影され(S201)、撮影画像が画像処理用PC104へと送られる。画像処理用PC104では、領域検出モデル440によって撮影画像から部品300の領域が検出される(S202)。つまり、部品300の撮影画像から当該部品300の領域が、学習された領域検出モデル440で検出される。また、画像処理用PC104では、図10のS105で選定された種類の特徴量が、S202で検出された領域について算出される(S203)。
【0037】
画像処理用PC104では、判定モデル460によって特徴量から、部品300の姿勢がピックアップ可能な姿勢か否かの判定が行われる(S204)。つまり、部品300の領域における特徴量で学習された判定モデル460で部品300の良否(例えば姿勢の良否)が判定される。判定の結果、ピックアップ可能な姿勢と判定された場合(S204;YES)には、ピックアップ装置102によって部品300のピックアップが実行される(S205)。ピックアップ装置102に組み込まれたセンサなどにより、ピックアップの成功が確認された場合は(S206;YES)、S201に戻り、上記処理が繰り返される。
【0038】
一方、センサなどにより、ピックアップの失敗が検知された場合は、ピックアップにおける累計の失敗率が所定の閾値(例えば10%)以上に達したか否かが判定される(S207)。S207の閾値は学習不足であるか否かを判断するための値に設定されている。失敗率が10%未満(S207;NO)であれば学習不足ではないと考えられるので、S201に戻り、上記処理が繰り返される。
【0039】
失敗率が10%以上に達した場合(S207;YES)には、判定モデル460における学習不足の可能性があるので自動的な再学習が実施される(S208)。従って、ピックアップ装置102におけるピックアップの失敗率が閾値を越えた失敗率であると判定モデル460の再学習が行われる。S208では、ピックアップ装置102におけるピックアップの結果の成否が、領域検出部520で検出された領域の特徴量と対応付けられた教師データで判定モデル460の再学習が行われる。
本実施形態では、ピックアップの結果の成否がピックアップ装置102の有するセンサなどの検知機能で自動的に取得されて領域の特徴量と対応付けられるので、学習が自動的に実行される。S208の再学習により、判定モデル460が更新されるので、ピックアップ不可の姿勢を有した部品300の見逃しが減少し、ピックアップ率が向上する。
【0040】
上記S204の判定で、部品300の姿勢がピックアップ不能な姿勢と判定された場合(S204;NO)には、当該部品300はピックアップが試みられずに廃棄される(S209)。これにより、ピックアップシステム100における処理の遅延や中断などが回避され、高い生産性が実現される。
【0041】
部品300が廃棄されると廃棄率が算出され、廃棄率が所定の閾値(例えば10%)以上に達したか否かが判定される(S210)。S210の閾値は過剰廃棄であるか否かを判断するための値に設定されている。廃棄率が10%未満(S210;NO)であれば過剰廃棄ではないと考えられるので、S201に戻り、上記処理が繰り返される。
廃棄率が10%以上に達した場合(S210;YES)には、判定モデル460による判定が厳しすぎて過剰廃棄となった可能性がある。即ち、S208の自動的な再学習ではピックアップ失敗のケースが追加されて再学習されるため、再学習が繰り返されると廃棄率が上昇する。この結果、判定モデル460の判定が厳しくなりすぎて過剰廃棄となる場合がある。
【0042】
そこで、廃棄率が10%以上に達した場合(S210;YES)には、少なくとも判定モデル460について再学習が行われて更新される(S211)。つまり、S204の判定における「否」判定の判定率が閾値を越えた判定率であると判定モデル460の再学習が行われる。S211の再学習では、少なくともピックアップ成功の教師データが新たに与えられて学習が行われる。S211の再学習では、領域検出モデル440も含めた再学習が、例えば図10に示す手順で行われてもよい。即ち、領域を示した教師データの入力を受けて領域検出モデル440の再学習が行われる。領域検出モデル440の再学習により、領域の検出精度が向上するので、結果として、S204における判定精度も向上する。
【0043】
図12は、図11のS211の再学習による判定モデルの更新概念を示す図である。
図12には、判定モデルの一例として、2種類の特徴量それぞれを縦軸および横軸とした2次元空間上の範囲461、462が示される。当該2次元空間上に配置された各撮影画像435、436、437は、各位置に相当する特徴量を有したケースを表す。
【0044】
再学習前の判定モデルの範囲461では、2次元空間の原点付近に位置する撮影画像435が表すケースが範囲461内に位置し、他の撮影画像436、437が表すケースは範囲461から外れている。しかし、原点の右上に位置する撮影画像437のケースについては、本来はピックアップ可能なケースであり、過剰廃棄の原因となる。
【0045】
これに対し、再学習後は判定モデルの範囲461が広がり、原点の右上に位置する撮影画像437のケースも範囲461内に含まれる。この結果、過剰廃棄が解消される。
なお、ここでは、本発明の判定装置および判定方法における適用の一例としてピックアップシステムが挙げられるが、本発明の判定装置および判定方法の適用分野は上記に限定されず、対象の姿勢や形状や色などの良否を判定する様々な分野に適用可能である。
上述した実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1)
対象物の撮影画像から当該対象物の領域を、学習された検出モデルで検出する領域検出部と、
前記領域における特徴量で学習された判定モデルで前記対象物の良否を判定する判定部と、
を備える判定装置。
(2)
前記領域検出部は、前記撮影画像の各画素を、前記対象物を含んだ複数オブジェクトのいずれかに分類する分類処理によって前記対象物の領域を検出する(1)に記載の判定装置。
(3)
前記領域検出部は、前記分類処理としてセマンティックセグメンテーションを用いる(2)に記載の判定装置。
(4)
前記判定部は、前記特徴量として、前記領域における予め設定された幾何学的な特徴量を用いる(1)または(2)に記載の判定装置。
(5)
(1)から(3)のいずれに記載の判定装置と、
前記判定装置で「良」判定となった前記対象物をピックアップするピックアップ装置と、
を備えるピックアップシステム。
(6)
前記ピックアップ装置におけるピックアップの結果の成否が、前記領域検出部で検出された領域の特徴量と対応付けられた教師データで前記判定モデルの再学習を行う第1の学習装置を更に備える(5)に記載のピックアップシステム。
(7)
前記ピックアップ装置は、ピックアップの結果の成否を検知する検知機能を有し、
前記第1の学習装置は、前記検知機能で検知された成否を前記領域検出部で検出された領域と対応付けて前記教師データを得る(6)に記載のピックアップシステム。
(8)
前記第1の学習装置は、前記ピックアップ装置におけるピックアップの失敗率が閾値を越えた失敗率であると判定モデルの再学習を行う(6)または(7)に記載のピックアップシステム。
(9)
前記第1の学習装置は、前記判定装置における「否」判定の判定率が閾値を越えた判定率であると判定モデルの再学習を行う(6)から(8)のいずれかに記載のピックアップシステム。
(10)
前記領域を示した教師データの入力を受けて前記検出モデルの再学習を行う第2の学習装置を更に備える(6)から(9)のいずれかに記載のピックアップシステム。
(11)
対象物の撮影画像から当該対象物の領域を、学習された検出モデルで検出する領域検出ステップと、
前記領域における特徴量で学習された判定モデルで前記対象物の良否を判定する判定ステップと、
を有する判定方法。
【符号の説明】
【0046】
100 :ピックアップシステム
101 :搬送装置
102 :ピックアップ装置
103 :カメラ
104 :画像処理用PC
105 :学習用PC
106 :PLC
107 :ルータ
111 :リール部
112 :レール部
121 :ピックアップハンド
201 :凹部
300 :部品
300 :部品
411、430、431~434 :撮影画像
420 :判定の教師データ
440 :領域検出モデル(学習モデル)
450 :領域データ
410 :領域検出の教師データ
451、452、453 :部品の領域
455 :特徴量
460 :判定モデル(学習モデル)
510 :画像入力部
520 :領域検出部
530 :特徴量算出部
540 :判定部
図1
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図3
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