(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049730
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】回転電機の回転子
(51)【国際特許分類】
H02K 1/2783 20220101AFI20240403BHJP
H02K 9/22 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H02K1/2783
H02K9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156139
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八釼 学
【テーマコード(参考)】
5H609
5H622
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609PP02
5H609PP07
5H609QQ23
5H609RR35
5H609RR59
5H609RR61
5H622AA06
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CB01
(57)【要約】
【課題】トルクむらを低減すると共に重量増加を抑制できる回転電機の回転子を提供する。
【解決手段】回転電機(1)の回転子(4)は、周方向に所定の配列をもって配置された複数の磁石14と、磁石の径方向に配置されて磁石14を保持するヨーク13とを備える。ヨーク13は、周方向に互いに隣接する1対の磁石14の境界面の周方向位置に対応する位置に形成された厚肉部(34)を有する。厚肉部が設けられることにより、この部分の磁束密度が疎になる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機の回転子であって、
周方向に所定の配列をもって配置された複数の磁石と、前記磁石の径方向に配置されて前記磁石を保持するヨークとを備え、
前記ヨークが、前記周方向に互いに隣接する1対の前記磁石の境界面の周方向位置に対応する位置に形成された厚肉部を有する、回転電機の回転子。
【請求項2】
前記厚肉部は、前記ヨークの前記磁石と相反する側の周面に径方向に突出するように形成されている請求項1に記載の回転電機の回転子。
【請求項3】
前記厚肉部は回転子の軸線に沿って延在する突条によって形成される、請求項2に記載の回転電機の回転子。
【請求項4】
前記突条は前記軸線に直交する断面において円弧状の輪郭を有する、請求項3に記載の回転電機の回転子。
【請求項5】
前記磁石の前記周方向の中央部に対向する前記ヨークの部分に前記磁石に接するように配置された少なくとも1つの熱伝導部材を更に備える、請求項1に記載の回転電機の回転子。
【請求項6】
前記熱伝導部材は前記ヨークと前記磁石とにより挟持される、請求項5に記載の回転電機の回転子。
【請求項7】
前記熱伝導部材はベーパチャンバを備えたヒートシンクである、請求項6に記載の回転電機の回転子。
【請求項8】
前記所定の配列は、径方向内側に向く磁極方向を有する第1磁石と径方向外側に向く磁極方向を有する第2磁石との間に前記周方向に向く磁極方向を有する第3磁石が配置されたハルバッハ配列であり、
前記厚肉部が、前記第1磁石と前記第3磁石との前記境界面及び、前記第2磁石と前記第3磁石との前記境界面の各周方向位置に対応する位置に形成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の回転電機の回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハルバッハ配列の永久磁石を備えた回転電機が公知である(例えば、特許文献1)。鉄心が設けられた従来の回転電機では、鉄心に磁束が集中し、回転子と固定子との間のギャップの磁束密度が周方向において滑らかに変化しない。そのため、トルクむら(トルクリップル)が発生し、振動・騒音発生の要因となることが知られている(特許文献1の段落[0003]参照)。
【0003】
特許文献1に記載の回転電機では、鉄心レスの構成にすることによってリップルの低減が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鉄心レスの構成では、磁石の保持力が低下するため、高出力のモータに適用するのは困難である。磁石を保持するために鉄心(コア或いはヨーク)を用いる場合、磁石の境界面の周方向位置に対応する鉄心の部分では磁束密度が高くなり、境界面間(磁石の中央)の周方向位置に対応する部分では磁束密度が低くなる。磁束密度が鉄心の周方向位置に応じて変化すると、トルクむらの発生によって回転電機の性能低下を招く虞がある。その対策として鉄心の肉厚を一定に厚くした場合には回転電機の重量が増加する。永久磁石が回転子(ロータ)に用いられる場合、回転子の重量化は回転電機の出力低下の原因になる。そのため、それらの改善が求められていた。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑み、トルクむらを低減すると共に重量増加を抑制できる回転電機の回転子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、回転電機(1)の回転子(4)であって、周方向に所定の配列をもって配置された複数の磁石(14)と、前記磁石の径方向に配置されて前記磁石を保持するヨーク(13)とを備え、前記ヨークが、前記周方向に互いに隣接する1対の前記磁石の境界面の周方向位置に対応する位置に形成された厚肉部(34)を有する。
【0008】
この態様によれば、磁束密度が高い磁石の境界面の周方向位置に対応するヨークの位置に厚肉部が形成されることにより、当該位置で集中する磁束の密度が低くなり、磁束密度が周方向において滑らかに変化する。また、ヨークを全体的に厚くする必要がない。そのため、トルクむらが低減されると共に重量増加が抑制される。
【0009】
上記の態様において、前記厚肉部は、前記ヨークの前記磁石と相反する側の周面(13b)に径方向に突出するように形成されているとよい。
【0010】
この態様によれば、ヨークの磁石側の面を滑らかにすることができる。よって、磁石のヨーク側の周面を複雑な形状にする必要がない。また、厚肉部が回転時にフィンとして機能して旋回風を発生させるため、ヨークの放熱性を高めることができる。
【0011】
上記の態様において、前記厚肉部は当該回転子の軸線(2)に沿って延在する突条(34)によって形成されるとよい。
【0012】
この態様によれば、ヨークの軸線方向における厚肉部の長さが長くなり、ヨークの放熱性をより高めることができる。
【0013】
上記の態様において、前記突条は前記軸線に直交する断面において円弧状の輪郭を有するとよい。
【0014】
この態様によれば、円弧状に形成することで、磁束の向きに沿って最小限の厚肉部を設けながら、ヨークの表面積を拡大してヨーク13の放熱性を高めることができる。
【0015】
上記の態様において、当該回転子は、前記磁石の前記周方向の中央部に対向する前記ヨークの部分に前記磁石に接するように配置された少なくとも1つの熱伝導部材(35)を更に備えるとよい。
【0016】
この態様によれば、境界面に比べて磁束密度が低い第1磁石及び第2磁石の周方向の中央部に配置された熱伝導部材に磁石の熱が吸収されるため、トルクむらを悪化させることなく、熱ごもりが解消され、モータの耐熱性が改善される。
【0017】
上記の態様において、前記熱伝導部材は前記ヨークと前記磁石とにより挟持されるとよい。
【0018】
この態様によれば、回転部品である回転子において、熱伝導部材の確実な固定を簡単な構造で実現できる上、ヨークの重量増加を抑制することができる。
【0019】
上記の態様において、前記熱伝導部材はベーパチャンバ(35a)を備えたヒートシンク(35)であるとよい。
【0020】
この態様によれば、熱伝導部材の熱伝導率を高めてヨークの冷却性能を向上させることができる。
【0021】
上記の態様において、前記所定の配列は、径方向内側に向く磁極方向を有する第1磁石(31)と径方向外側に向く磁極方向を有する第2磁石(32)との間に前記周方向に向く磁極方向を有する第3磁石(33)が配置されたハルバッハ配列であり、前記厚肉部が、前記第1磁石と前記第3磁石との前記境界面及び、前記第2磁石と前記第3磁石との前記境界面の各周方向位置に対応する位置に形成されているとよい。
【0022】
この態様によれば、磁束を集中させる境界面を多く有するハルバッハ配列の回転電機に厚肉部が適用されることで、多数の厚肉部によって大きな冷却効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上の態様によれば、トルクむらを低減すると共に重量増加を抑制できる回転電機の回転子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図6】(A)従来例、(B)実施形態に係る各ロータの模式図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明に係る回転子(ロータ4)が適用された実施形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は実施形態に係るモータ1の断面図である。
図1に示すように、モータ1は、軸線2を中心とする円筒形をなすケース3と、ケース3によって軸線2の回りに回転可能に支持されたロータ4と、ロータ4の外周側に配置され、ケース3に固定されたステータ5とを有している。すなわち、モータ1は、インナロータ型且つラジアルギャップ型モータとして構成されている。モータ1は、軸線2が水平に延在する
図1に示す姿勢で使用されているが、軸線2が鉛直に延在する姿勢で使用されてもよい。
【0027】
ケース3は、軸線方向に分割可能なケース本体6とケース蓋体7とを有し、ロータ4及びステータ5を収容する収容空間を内部に画定している。ケース本体6は円筒形の側壁8と、側壁8の下端を塞ぐ底壁9とを有している。ケース本体6の底壁9及びケース蓋体7には、軸線2を中心とする貫通孔10が形成されている。
【0028】
ロータ4は、軸線2に沿って延在し、モータ1の出力軸をなす回転軸11と、回転軸11の周りに配置されたロータハブ12と、ロータハブ12の外端に設けられた円筒状のヨーク13(ロータコア)と、複数の永久磁石(単に磁石14という)とを備えている。ロータハブ12は、回転軸11に一体に設けられていてもよく、遊星歯車機構等を介して回転軸11に相対回転可能に設けられていてもよい。いずれの構成においても、ロータハブ12の回転に伴って回転軸11が回転する。
【0029】
回転軸11は、ケース本体6及びケース蓋体7にベアリング15を介して回転可能に支持されている。回転軸11はケース本体6及びケース蓋体7の貫通孔10を貫通してケース3の両面から軸線方向に突出している。他の実施形態では、回転軸11は、ケース3の片方の面のみから突出していてもよい。ヨーク13は、軸線2を中心とした略円筒形状の回転子鉄心であり、ロータハブ12の外縁に一体に形成され、ロータハブ12と一体に回転する。モータ1は、永久磁石同期モータであり、ヨーク13の外周には、複数の磁石14が周方向に所定の配列をもって配置される。ロータ4はモータ1の界磁子をなす。
【0030】
ステータ5は、ロータ4の外面との間に径方向に所定のギャップを介してケース本体6の側壁8に沿って配置される。ステータ5は、複数のティース16と、ティース16の外側に配置されてティース16を保持するティース保持リング17(ステータヨーク)とを有するステータコア18と、ティース16に巻回された複数のコイル19とを備えている。ステータ5はモータ1の電機子をなす。ティース保持リング17は円筒状をしており、軸線2を中心として配置される。ティース16はティース保持リング17に沿って周方向に並べられ、ティース保持リング17の内面から径方向内側に突出する。
【0031】
ケース本体6には、ケース本体6と協働してステータ5を覆うステータカバー20が取り付けられる。
図1の拡大図に示すように、ステータカバー20は、円筒状の第1部分21と、第1部分21の軸線方向の一端から径方向外側に延出する円環板状の第2部分22と、第1部分21の軸線方向の他端から径方向内側に延出する円環板状の第3部分23とを含む。ステータカバー20は、透磁率が小さい非磁性体であり、例えば合成樹脂の射出成形品であってよい。第1部分21は、ステータ5とロータ4との間(すなわち、上記ギャップ)に配置される。第2部分22は、モータ1の軸線方向においてコイル19に対向し、外縁においてシール部材24を介してケース本体6の側壁8に密着する。第3部分23は、内縁においてシール部材24を介してケース本体6の底壁9に密着する。
【0032】
このように、ステータカバー20は、ケース本体6と協働して、ステータ5を覆うことにより、ステータ5を冷却するための冷却通路25を画定する。冷却通路25は円筒形状をしており、冷媒として供給されるオイルが冷却通路25を軸線方向に流通する。
【0033】
図2は、底壁9側から視たステータ5及びロータ4の背面図であり、
図3は
図2中のIII部拡大図である。
図2及び
図3に示すように、磁石14は、径方向内側に向く磁極方向(磁化方向)を有する第1磁石31と、径方向外側に向く磁極方向を有する第2磁石32と、第1磁石31と第2磁石32との間に配置された第3磁石33とを含んでいる。第3磁石33は、周方向成分を含む磁極方向を有している。すなわち、磁石14はハルバッハ配列をもって環状に配置されている。なお、磁極方向は図中に矢印で示されている。第1磁石31及び第2磁石32は、主磁石であり、互いに同じ形状及び寸法を有している。第3磁石33は副磁石であり、主磁石よりも小さな周方向の寸法を有している。磁石14の周方向の寸法は軸線2を中心とする角度で表されるが、本明細書では、これを周方向幅Cと呼ぶ。第3磁石33の周方向幅Cは、第1磁石31及び第2磁石32の周方向幅Cの1/2とされている。
【0034】
ステータ5は、ティース16及びコイル19によって構成される72個の電磁石を有している。電磁石は周方向に等間隔(5°間隔)に配置されている。ロータ4は、24個の第1磁石31と、24個の第2磁石32と、48個の第3磁石33とを有している。24個の第3磁石33は周方向の一方に向く磁極方向を有し、残りの24個の第3磁石33は周方向の他方に向く磁極方向を有している。第1磁石31及び第2磁石32は、周方向に等間隔(7.5°間隔)に配置されている。ヨーク13の外周面13aは滑らかな円筒形状をなしている。一方、ヨーク13の内周面13bは凸凹な円筒形状をなしている。
【0035】
図4は、背面側から視たモータ1の要部の斜視図である。
図3及び
図4に示すように、ヨーク13の内周面13bには、軸線2(
図1、
図2参照)に沿って延在する複数の突条34が形成されている。本実施形態では、96本の突条34が設けられている。全ての突条34は同一な形状及び寸法を有する。突条34は、ヨーク13の内周面13bから径方向に突出する円弧形状の輪郭を有し、ヨーク13の軸線方向の全長に亘って延在している。
【0036】
突条34は、周方向に第1間隔P1及び第2間隔P2を交互に繰り返して配置されている。第1間隔P1は2.5°であり、第2間隔P2は5°である。突条34は、3種類の磁石14の境界面の周方向位置に対応するヨーク13の位置にヨーク13に一体に形成され、ヨーク13に厚肉部を形成している。突条34の輪郭をなす円弧の中心は、ヨーク13の外周面13a上における磁石14の境界面に対応する位置にある。
【0037】
突条34の周方向の幅は、第3磁石33の周方向幅Cである2.5°よりも小さく、本実施形態では1.5°程度とされている。したがって、第1間隔P1をもって配置された2つの突条34の間には、1°程度の略平坦な面が形成され、第2間隔P2をもって配置された2つの突条34の間には、4°程度の略平坦な面が形成される。各突条34はヨーク13に厚肉部を形成している。
【0038】
第1磁石31及び第2磁石32の周方向の中央部に対向するヨーク13の部分には、複数のヒートシンク35が設けられている。各ヒートシンク35は、ヨーク13の径方向の外側に第1磁石31又は第2磁石32に接するように配置され、ヨーク13と第1磁石31又は第2磁石32とにより挟持されている。本実施形態では、全ての第1磁石31及び第2磁石32に対してヒートシンク35が設けられている。他の実施形態では、第1磁石31及び第2磁石32の一部に対してヒートシンク35が設けられてもよい。各ヒートシンク35は、軸線方向に長い短冊形状をしており、ヨーク13の軸線方向の全長に亘って延在している。ヒートシンク35は、一方の面で吸収した熱を他方の面で放出する熱伝導部材として機能する。
【0039】
図5はヒートシンク35の断面図である。ヒートシンク35は、高熱伝導部材によって中空構造に形成され、内部にベーパチャンバ35aを画定している。ベーパチャンバ35aにはウィック35bが設けられると共に作動液が封入されている。作動液は、熱源からの熱により帰化した蒸気がベーパチャンバ35aを移動し、熱源と相反する側で放熱することによって凝縮し、ウィック35bを通って熱源へ還流される。磁石14はコイル19の熱を受けて高温になり得る。磁石14は、コイル19の熱によって高温になると、ヒートシンク35によって冷却される。
【0040】
モータ1は以上のように構成されている。以下、このように構成されたモータ1の作用効果について説明する。
【0041】
図3及び
図4に示すように、磁束密度が高い磁石14の境界面の周方向位置に対応するヨーク13の位置には、厚肉部を形成する突条34が設けられている。これにより、当該位置で集中する磁束が疎になり、磁束密度が周方向において滑らかに変化する。また、ヨーク13を全体的に厚くする必要がない。そのため、トルクむらが低減されると共に重量増加が抑制される。
図6及び
図7を参照して実施形態の効果について説明する。
【0042】
図6は(A)従来例に係るロータ104、(B)実施形態に係るロータ4を示す模式図である。
図7は従来例に係るロータ104の磁束密度分布図である。
図6に示すように、従来例に係るロータ104は、突条34を備えていない点で実施形態に係るロータ4と相違し、その他においては実施形態に係るロータ4と同一の構成を有する。
図6(A)に示すように、ヨーク113が一定の厚さtを有している。
【0043】
そのため、従来例のロータ104では、
図7に示すように、主磁石(第1磁石31及び第2磁石32)の周方向中央に対応するヨーク113の位置において、磁束密度は最も低い。一方、互いに隣接する各対の磁石14の境界面の周方向位置に対応するヨーク113の位置において、磁束密度は最も高い。
【0044】
なお、本実施形態及び従来例では、磁石14がハルバッハ配列を有するため、第3磁石33と第1磁石31又は第2磁石32との境界面の周方向位置に対応するヨーク113の位置において、磁束密度が最も高い。磁石14が第1磁石31及び第2磁石32のみを有する場合には、第1磁石31と第2磁石32との境界面の周方向位置に対応するヨーク113の位置において、磁束密度が最も高くなる。
【0045】
このように磁束密度が高い部分がヨーク113に部分的に存在し、磁束密度がヨーク113の周方向位置に応じて変化すると、トルクむらの発生によって回転電機の性能が低下する。これに対し本実施形態では、
図6(B)に示すように、突条34が設けられたことにより、円弧状の外輪郭を有する厚肉部が、ヨーク13の磁束密度が最も高い周方向位置に形成される。厚肉部の輪郭部は、ヨーク13の外周面13a上に中心を有し且つ厚さtよりも大きな半径Rを有する。これにより、この厚肉部の磁束密度は従来例に比べて低下し、磁束密度が周方向において滑らかに変化することから、トルクむらが低減される。
【0046】
図3及び
図4に示すように、この厚肉部は、ヨーク13の磁石14と相反する側の内周面13bに径方向に突出するように形成されている。これにより、ヨーク13の磁石14側の面を滑らかにすることができる。よって、磁石14の径方向内側の周面を複雑な形状にする必要がない。また、厚肉部が回転時にフィンとして機能して旋回風を発生させるため、ヨーク13の放熱性が向上する。
【0047】
上記のように厚肉部はロータ4の軸線2(
図1、
図2)に沿って延在する突条34によって形成される。これにより、軸線方向における厚肉部の長さが長くなり、ヨーク13の放熱性がより向上する。
【0048】
図3及び
図6(B)に併せて示すように、突条34は軸線2に直交する断面において円弧状の輪郭を有している。これにより、磁束の向きに沿って最小限の厚肉部を設けながら、ヨーク13の表面積拡大によってヨーク13の放熱性を高めることができる。
【0049】
また、磁石14の周方向の中央部に対向するヨーク13の部分には、熱伝導部材としてのヒートシンク35が磁石14に接するように配置されている。これにより、境界面に比べて磁束密度が低い第1磁石31及び第2磁石32の周方向の中央部に配置されたヒートシンク35によってそれらの熱が吸収されるため、トルクむらを悪化させることなく、熱ごもりが解消され、モータ1の耐熱性が改善される。なお、ヒートシンク35は少なくとも1つの磁石14に対して設けられればよく、全ての磁石14に対して設けられる必要はない。
【0050】
上記のようにヒートシンク35はヨーク13と磁石14とにより挟持されている。これにより、回転部品であるロータ4において、ヒートシンク35の確実な固定が簡単な構造で実現される上、ヨーク13の重量増加が抑制される。
【0051】
本実施形態では、熱伝導部材として、ベーパチャンバ35a(
図5)を備えたヒートシンク35が設けられている。これにより、熱伝導部材の熱伝導率を高めることができ、ヨーク13の冷却性能が向上する。なお、熱伝導部材として、ベーパチャンバ35aを備えたヒートシンク35の代わりに、ヨーク13の材料よりも高い熱伝導率を有する高熱伝導材からなるシートが設けられてもよい。
【0052】
磁石14はハルバッハ配列をもって配置され、突条34は、第1磁石31と第3磁石33との境界面及び、第2磁石32と第3磁石33との境界面の各周方向位置に対応する位置に形成されている。このように、磁束を集中させる境界面を多く有するハルバッハ配列のモータ1に突条34が適用されることで、多数の突条34によって大きな冷却効果を得ることができる。
【0053】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、本発明に係る回転子が、インナロータ型のモータ1のロータ4に適用されているが、アウタロータ型モータのアウタロータに適用されてよい。この場合、ヨーク13は磁石14の径方向外側に配置されるとよい。また、回転子は、モータ1ではなくジェネレータに適用されてもよい。本実施形態では、ロータ4がハルバッハ配列の磁石14を備えているが、磁石配列はこれに限定されない。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、素材など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更することができる。また、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 :モータ(回転電機の一例)
2 :軸線
4 :ロータ(回転子)
13 :ヨーク(ロータコア)
13a :外周面
13b :内周面
14 :磁石
31 :第1磁石
32 :第2磁石
33 :第3磁石
34 :突条
35 :ヒートシンク(熱伝導部材の一例)
35a :ベーパチャンバ