(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049738
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】電源制御装置およびそれを備えたスイッチング電源
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156153
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤穂 直史
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 康人
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS05
5H730BB13
5H730DD04
5H730EE13
5H730EE59
5H730FD01
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】軽負荷モードにおいて、音鳴りを抑制しつつ効率の低下を抑制可能な電源制御装置を提供する。
【解決手段】電源制御装置(140)は、ドライバ(147)と、制御部(145)と、を備える。ドライバ(147)は、出力トランジスタ(111)及び同期整流トランジスタ(112)を駆動する。制御部(145)は、軽負荷モードにおいて、出力トランジスタ(111)及び同期整流トランジスタ(112)がいずれもオフ状態とされてから出力帰還制御に基づく出力トランジスタ(111)のオンタイミングが到来するまでのオフ期間において、スイッチング周波数が所定の下限値を下回らない範囲で同期整流トランジスタ(112)を周期的にオンする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧から出力電圧を生成して負荷に供給するための出力トランジスタ及び同期整流トランジスタをそれぞれ駆動するように構成されたドライバと、
前記負荷が軽いほど前記出力トランジスタのスイッチング周波数が下がるように出力帰還制御を行う軽負荷モードにおいて、前記出力トランジスタ及び前記同期整流トランジスタがいずれもオフ状態とされてから前記出力帰還制御に基づく前記出力トランジスタのオンタイミングが到来するまでのオフ期間において、前記スイッチング周波数が所定の下限値を下回らない範囲で前記同期整流トランジスタを周期的にオンするように構成された制御部と、
を備える、電源制御装置。
【請求項2】
前記出力帰還制御に基づく前記出力トランジスタのオンタイミングは、前記出力電圧が基準電圧まで下がった時点であり、
前記制御部は、前記オフ期間中の前記同期整流トランジスタのオンによって前記出力電圧が前記基準電圧を下回らないように、前記オフ期間中の前記同期整流トランジスタのオン時間を可変するように構成されている請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記オフ期間中に前記同期整流トランジスタをオンした後、前記同期整流トランジスタをオフし、かつ前記同期整流トランジスタのオフに同期して前記出力トランジスタをオンするように構成されている請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記下限値は、25kHzである請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項5】
半導体装置に集積化されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電源制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電源制御装置を有するスイッチング電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、電源制御装置およびそれを備えたスイッチング電源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスイッチング電源には、軽負荷時にスイッチングパルスを間引いてスイッチング損失を低減する動作モード(いわゆる軽負荷モード)を備えた機種が存在する(特許文献1)。特許文献1に記載されたような軽負荷モードでは、負荷電流に応じてスイッチング周波数が変動するので、負荷電流の量によっては、スイッチング周波数がヒトの可聴帯域(一般に20kHz以下)まで低下してしまい、入力コンデンサや出力コンデンサなどから耳障りな音(いわゆるスイッチング電源の音鳴り)を生じるおそれがあった。
【0003】
スイッチング電源の音鳴りを防止する手法としては、例えば、音鳴り防止機能をオンした場合に、電源制御ICの内部に設けた負荷抵抗をスイッチ出力段に繋ぐことにより、負荷電流を増やしてスイッチング周波数を意図的に引き上げることが考えられる。
【0004】
このようなスイッチング電源として、特許文献2には、負荷抵抗回路を備えるものが開示されている。このスイッチング電源の負荷抵抗回路は、電源制御ICの内部に設けられ、スイッチ出力段に繋がれている。負荷抵抗回路は、帰還電圧(スイッチ出力段が生成する出力電圧の分圧電圧)を検出し、帰還電圧の値に応じて負荷電流を可変するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-177722号公報
【特許文献2】特開2020-96408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2のようなスイッチング電源では、音鳴りを抑制するために意図的に負荷電流を増大させており、負荷電流の増大している期間中の効率が低下してしまう。
【0007】
また、音鳴りを防止するための別の手法として、スイッチング周波数が低下してヒトの可聴帯域に入りそうになったときに、スイッチ出力段の下側トランジスタをオンし、出力コンデンサに蓄えられた電荷を強制的に放電する構成が考えられる。しかし、このような方法では、音鳴りを抑制するために出力コンデンサに蓄えられた電荷を放電してしまうため、効率が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書中に開示されている電源制御装置は、入力電圧から出力電圧を生成して負荷に供給するための出力トランジスタ及び同期整流トランジスタをそれぞれ駆動するように構成されたドライバと、前記負荷が軽いほど前記出力トランジスタのスイッチング周波数が下がるように出力帰還制御を行う軽負荷モードにおいて、前記出力トランジスタ及び前記同期整流トランジスタがいずれもオフ状態とされてから前記出力帰還制御に基づく前記出力トランジスタのオンタイミングが到来するまでのオフ期間において、前記スイッチング周波数が所定の下限値を下回らない範囲で前記同期整流トランジスタを周期的にオンするように構成された制御部と、を備える。
【0009】
本明細書中に開示されているスイッチング電源は、上記構成の電源制御装置を有する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書中に開示されている電源制御装置によれば、軽負荷モードにおいて、音鳴りを抑制しつつ効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、スイッチング電源の実施形態を示す図である。
【
図2】
図2は、制御回路の一構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、軽負荷モードのスイッチング動作を示すタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、静音軽負荷モードにおけるスイッチ出力段のスイッチング動作を示すタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、静音軽負荷モードにおけるスイッチ出力段のスイッチング動作の変形例を示すタイミングチャートの一部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について説明する。
【0013】
<スイッチング電源>
図1は、スイッチング電源の実施形態を示す図である。本実施形態のスイッチング電源100は、入力電圧Vinから所望の出力電圧Voutを生成して負荷Zに供給するDC/DCコンバータである。スイッチング電源100は、制御回路140(電源制御装置)と、スイッチ出力段110と、帰還電圧生成回路120と、を備える。
【0014】
上記の構成要素は、スイッチ出力段110に含まれる一部の構成要素(本図ではインダクタ113とコンデンサ114及び115)を除き、スイッチング電源100の制御主体となる半導体装置200(いわゆる電源制御IC)に集積化するとよい。なお、半導体装置200には、上記以外にも任意の構成要素(各種保護回路など)を適宜組み込むことが可能である。また、半導体装置200は、装置外部との電気的な接続を確立するための手段として、複数の外部端子T1~T3を備えている。
【0015】
スイッチ出力段110は、ハーフブリッジを形成するように接続された上側スイッチと下側スイッチをオン/オフすることによりインダクタ電流ILを駆動して入力電圧Vinから所望の出力電圧Voutを生成する降圧型のスイッチ出力段である。スイッチ出力段110は、出力トランジスタ111と、同期整流トランジスタ112と、インダクタ113と、コンデンサ114及び115を含む。
【0016】
出力トランジスタ111は、NMOSFET[N-channel type metal oxide semiconductor field effect transistor]である。出力トランジスタ111は、スイッチ出力段110の上側スイッチとして機能する。
【0017】
半導体装置200の内部において、出力トランジスタ111のドレインは、外部端子T1(入力電圧Vinの印加端)に接続されている。出力トランジスタ111のソースは、外部端子T2(スイッチ電圧SWの印加端)に接続されている。出力トランジスタ111のゲートは、上側ゲート信号G1の印加端に接続されている。
【0018】
出力トランジスタ111は、上側ゲート信号G1がハイレベルであるときにオンし、上側ゲート信号G1がローレベルであるときにオフする。出力トランジスタ111としてNMOSFETを用いる場合、上側ゲート信号G1のハイレベルを入力電圧Vinよりも高い電圧値まで引き上げるためのブートストラップ回路やチャージポンプ回路(本図では不図示)が必要となる。
【0019】
同期整流トランジスタ112は、NMOSFETである。同期整流トランジスタ112は、スイッチ出力段110の下側スイッチとして機能する。
【0020】
半導体装置200の内部において、同期整流トランジスタ112のドレインは、外部端子T2(=スイッチ電圧SWの印加端)に接続されている。同期整流トランジスタ112のソースは、接地端(=接地電圧GNDの印加端)に接続されている。同期整流トランジスタ112のゲートは、下側ゲート信号G2の印加端に接続されている。
【0021】
同期整流トランジスタ112は、下側ゲート信号G2がハイレベルであるときにオンし、下側ゲート信号G2がローレベルであるときにオフする。
【0022】
インダクタ113とコンデンサ114及び115は、半導体装置200に外付けされるディスクリート部品である。コンデンサ114の第1端は、半導体装置200の外部端子T1に接続されている。コンデンサ114の第2端は、接地端に接続されている。
【0023】
インダクタ113の第1端は、半導体装置200の外部端子T2に接続されている。インダクタ113の第2端とコンデンサ115の第1端は、出力電圧Voutの印加端と半導体装置200の外部端子T3に接続されている。
【0024】
コンデンサ115の第2端は、接地端に接続されている。なお、コンデンサ114は、入力電圧Vinを平滑するための入力コンデンサとして機能する。また、インダクタ113とコンデンサ115は、スイッチ電圧SWを整流及び平滑して出力電圧Voutを生成するLCフィルタとして機能する。
【0025】
出力トランジスタ111と同期整流トランジスタ112は、基本的に、上側ゲート信号G1と下側ゲート信号G2に応じて相補的にオン/オフされる。このようなオン/オフ動作により、インダクタ113の第1端には、入力電圧Vinと接地電圧GNDとの間でパルス駆動される矩形波状のスイッチ電圧SWが生成される。上記した「相補的」という文言は、出力トランジスタ111と同期整流トランジスタ112のオン/オフ状態が完全に逆転している場合だけでなく、両トランジスタの同時オフ期間(デッドタイム)が設けられている場合も含むものとして理解すべきである。また、後述する軽負荷モード時には、出力トランジスタ111と同期整流トランジスタ112がいずれもオフされてスイッチ出力段110の駆動が一時的に停止され得る(詳細は後述)。
【0026】
また、出力トランジスタ111をPMOSFETに置換することもできる。その場合には、先述のブートストラップ回路やチャージポンプ回路が不要となる。
【0027】
また、出力トランジスタ111及び同期整流トランジスタ112を半導体装置200に外付けすることも可能である。その場合には、外部端子T2に代えて、上側ゲート信号G1と下側ゲート信号G2をそれぞれ装置外部に出力するための外部端子が必要となる。
【0028】
また、スイッチ出力段110に高電圧が印加される場合には、出力トランジスタ111や同期整流トランジスタ112として、パワーMOSFET、IGBT[insulated gate bipolar transistor]、及び、SiCトランジスタなどの高耐圧素子を用いるとよい。
【0029】
帰還電圧生成回路120は、外部端子T3(=出力電圧Voutの印加端)と接地端との間に直列接続された抵抗121及び122を含み、両抵抗間の接続ノードから出力電圧Voutに応じた帰還電圧FB(=出力電圧Voutの分圧電圧)を出力する。
【0030】
なお、出力電圧Voutが制御回路140の入力ダイナミックレンジに収まっている場合には、帰還電圧生成回路120を省略し、出力電圧Voutそのものを帰還電圧FBとして制御回路140に直接入力してもよい。
【0031】
<制御回路>
制御回路140は、基本的な出力帰還制御として、帰還電圧FBが所定の目標値と一致するように、上側ゲート信号G1及び下側ゲート信号G2のパルス幅変調制御(PWM[pulse width modulation]制御)を行う。
【0032】
また、制御回路140は、出力電圧Voutが目標値を下回らない範囲で、スイッチ出力段110の駆動停止と駆動復帰を繰り返すことにより、スイッチング損失を低減する軽負荷モード(PFM[pulse frequency modulation]制御)も備えている。
【0033】
さらに、制御回路140は、軽負荷モード中に静音軽負荷モードを実行可能である。静音軽負荷モードとは、軽負荷モードにおいて、スイッチング周波数が下限値を下回らないように、同期整流トランジスタ112を周期的にオンする機能である(詳細は後述する)。下限値は、スイッチング電源100の音鳴りを生じない周波数であり、例えば、ヒトの可聴帯域よりも高い21~25kHz程度である。
【0034】
図2は、制御回路140の一構成例を示す図である。
図2に示すように、制御回路140は、信号制御部145(制御部)と、ロジック回路146と、駆動回路147(ドライバ)と、を有する。
【0035】
信号制御部145は、帰還電圧FBの大きさに応じて、ロジック回路146にオン信号ON(=クロック信号)と、オフ信号OFFを送信する。ロジック回路146は、基本的に、オン信号ONとオフ信号OFFに応じて上側制御信号S1と下側制御信号S2を生成する。
【0036】
駆動回路147は、上側ドライバ147aと、下側ドライバ147bを含む。上側ドライバ147aは、上側制御信号S1の入力を受け付けて上側ゲート信号G1を生成する。下側ドライバ147bは、下側制御信号S2の入力を受け付けて下側ゲート信号G2を生成する。なお、上側ドライバ147a及び下側ドライバ147bとしては、それぞれ、バッファやインバータを用いることができる。
【0037】
信号制御部145がオン信号ONを生成すると、ロジック回路146は上側制御信号S1をハイレベルに立ち上げて下側制御信号S2をローレベルに立ち下げる。その結果、出力トランジスタ111がオンして同期整流トランジスタ112がオフする。すると、スイッチ電圧SWがハイレベル(≒Vin)に立ち上がる。この状態を第1フェイズとする。
【0038】
一方、信号制御部145がオフ信号OFFを生成すると、ロジック回路146は上側制御信号S1をローレベルに立ち下げて、下側制御信号S2をハイレベルに立ち上げる。その結果、出力トランジスタ111がオフして同期整流トランジスタ112がオンする。すると、スイッチ電圧SWがローレベル(≒GND)に立ち下がる。この状態を第2フェイズとする。
【0039】
制御回路140は、パルス幅変調制御において、上述した第1フェイズと第2フェイズとが交互に連続するようにスイッチ出力段110を制御する。従って、出力トランジスタ111のオン時間(スイッチ電圧SWのハイレベル期間)は、オフ信号OFFのパルス生成タイミングが遅いほど長くなり、オフ信号OFFのパルス生成タイミングが早いほど短くなるように制御される。
【0040】
一方、制御回路140は、軽負荷モードにおいて、上述した第1フェイズおよび第2フェイズに加えて、第3フェイズを含むようにスイッチ出力段110を制御する。第3フェイズでは、出力トランジスタ111および同期整流トランジスタ112がオフするので、スイッチ出力段110が駆動停止状態(スイッチ電圧SW≒出力電圧Vout)の状態となる。
【0041】
<軽負荷モードの動作例>
図3は、軽負荷モードのスイッチング動作を示すタイミングチャートである。
図3では、上から順に、スイッチ電圧SW、インダクタ電流IL、出力電圧Vout、上側制御信号S1、下側制御信号S2が描写されている。制御回路140は、負荷Zに流れる負荷電流Ioutが所定値を下回ると、軽負荷モードを実行する。以下では、軽負荷モードについて、
図3に即して具体的に説明する。
【0042】
ロジック回路146は、出力電圧Voutが基準電圧svまで下がると(
図3の時刻t1)、上側制御信号S1をハイレベルに立ち上げ、下側制御信号S2をローレベルに立下げる。その結果、上述した第1フェイズの状態になり、出力電圧Voutは上昇する。
【0043】
出力トランジスタ111のオン時間が所定時間経過した時点(
図3の時刻t2)で、ロジック回路146は、上側制御信号S1をローレベルに立下げ、下側制御信号S2をハイレベルに立ち上げる。その結果、上述した第2フェイズの状態になる。
【0044】
インダクタ電流ILが0又は負となった時点(
図3の時刻t3)で、ロジック回路146は、上側制御信号S1および下側制御信号S2をローレベルに立下げる。その結果、上述した第3フェイズの状態になる。以後、出力電圧Voutは、負荷Zに流れる負荷電流Ioutに応じた傾きで緩やかに低下していく。
【0045】
出力電圧Voutが再び基準電圧svまで下がると(
図3の時刻t1’)、ロジック回路146は、上側制御信号S1をハイレベルに立ち上げ、下側制御信号S2をローレベルのままにする。その結果、再び上述した第1フェイズの状態になる。これ以降も同様に、制御回路140は、軽負荷モードにおいて、第1フェイズ~第3フェイズの状態を上述の順で繰り返すように、スイッチ出力段110を制御する。
【0046】
ここで、軽負荷モードにおいて、出力トランジスタ111および同期整流トランジスタ112のいずれもオフとなった時点(
図3、
図4の時刻t3)から、次の出力トランジスタ111のオンタイミング(
図3、
図4の時刻t1’)が到来するまでの間を、「オフ期間」と称する。後述する静音軽負荷モードでは、オフ期間中に、出力トランジスタ111がオフし、同期整流トランジスタ112がオンすることもある。
【0047】
制御回路140は、軽負荷モードにおいて、第1フェイズと次の第1フェイズとの時間間隔(
図3の時刻t1と時刻t1’との間隔)が所定時間を超えると、すなわち、スイッチング周波数が下限値を下回ると、静音軽負荷モードを有効にする。
【0048】
<静音軽負荷モードの動作例>
図4は、静音軽負荷モードにおけるスイッチ出力段110のスイッチング動作を示すタイミングチャートである。以下では、静音軽負荷モードについて、本図に即して具体的に説明する。
【0049】
上述した通り、制御回路140は、軽負荷モードにおいて、第1フェイズ、第2フェイズ、第3フェイズの順に移行するようにスイッチ出力段110を制御する。静音軽負荷モードが有効とされている場合には、制御回路140は、オフ期間中(
図4の時刻t3から時刻t1’までの期間)に、周期的に同期整流トランジスタ112をオンする。
【0050】
より具体的には、第3フェイズの状態になると(
図4の時刻t3)、ロジック回路146は、所定のタイミング(
図4の時刻t4)で、上側制御信号S1をローレベルのまま、下側制御信号S2をハイレベルに立ち上げる。その結果、出力トランジスタ111はオフしたまま、同期整流トランジスタ112がオンする。このときの同期整流トランジスタ112のオン時間(
図4の時刻t4から時刻t5までの時間)は、第2フェイズでの同期整流トランジスタ112のオン時間(
図4の時刻t2から時刻t3までの時間)よりも短い。
【0051】
同期整流トランジスタ112のオン時間が経過すると(
図4の時刻t5)、ロジック回路146は、上側制御信号S1をローレベルのまま、下側制御信号S2をローレベルに立ち下げる。その結果、出力トランジスタ111および同期整流トランジスタ112のいずれもが、再びオフとなる。
【0052】
このとき(
図4の時刻t5)、出力トランジスタ111がオフの状態のまま同期整流トランジスタ112がオンからオフに切り替わることで、逆起電力が発生する。より詳細には、時刻t4から時刻t5の間、インダクタ113から同期整流トランジスタ112を介して接地端に向けたインダクタ電流ILが流れる。すなわち、インダクタ電流ILがゼロ値を下回る。ここで同期整流トランジスタ112がオフすると、インダクタ113は、自身に発生する逆起電力により、それまでと同じ向き(すなわち負方向)にインダクタ電流ILを流し続けようとする。その結果、スイッチ電圧SWの極性が負から正に切り替わる。
【0053】
このような状態では、コンデンサ115に蓄えられた電荷がインダクタ113を介して入力側に戻されていることになる。このとき、出力トランジスタ111はオフとなっているため、電荷は、出力トランジスタ111に内在するボディーダイオード経由で入力側に戻される。
【0054】
逆起電力の大きさは、このときの同期整流トランジスタ112のオン時間(時刻t4から時刻t5までの時間)に応じて変化する。より詳細には、同期整流トランジスタ112のオン時間が長くなると逆起電力の大きさは大きくなり、オン時間が短くなると逆起電力は小さくなる。
【0055】
ロジック回路146は、スイッチ電圧SWがハイレベルの近傍まで上昇し、かつ出力電圧Voutが基準電圧svを下回らない範囲で、オフ期間中の同期整流トランジスタ112のオン時間(
図4の時刻t4から時刻t5の時間)を可変する。ハイレベルの近傍とは、少なくとも、スイッチ電圧SWの上昇によってスイッチング周波数に影響を及ぼす範囲の値である。
【0056】
時刻t5以降も、ロジック回路146は、出力帰還制御に基づく出力トランジスタ111のオンタイミング(
図3の時刻t1’)が到来するまで、周期的に同期整流トランジスタ112をオン、オフする。例えば、スイッチング周波数を25kHzにする場合、一周期Tを40μsとして、同期整流トランジスタ112をオン、オフする。
【0057】
その間、出力トランジスタ111はオフのままとする。このように、オフ期間中に同期整流トランジスタ112が周期的にオンすることで、スイッチ出力段110の駆動周期が短くなり、スイッチング周波数が上昇する。
【0058】
このように、軽負荷モードにおいて、ロジック回路146がオフ期間中に同期整流トランジスタ112を周期的にオンすることで、スイッチング周波数が所定の下限値を下回るのを抑制可能になる。このため、この下限値をヒトの可聴帯域よりも大きく設定することで、スイッチング電源100の音鳴りを抑制することが可能となる。
【0059】
また、静音軽負荷モードにおいて、同期整流トランジスタ112のオン時間(
図4の時刻t4から時刻t5までの時間)は比較的短く、かつ出力電圧Voutが基準電圧svを下回らないようになっている。このため、静音軽負荷モードを実行して同期整流トランジスタ112がオンしたことで効率が低下するのを抑制することができる。
【0060】
<変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本開示の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0061】
例えば、バイポーラトランジスタとMOS電界効果トランジスタとの相互置換や、各種信号の論理レベル反転は任意である。
【0062】
また、例えば、上記実施形態では、静音軽負荷モードにおいて、オフ期間中に同期整流トランジスタ112をオフするタイミングで、出力トランジスタ111をオフしたままであり、逆起電力によってスイッチ電圧SWをハイレベル近傍まで立ち上げているが、次のように構成することもできる。
【0063】
図5は、静音軽負荷モードにおけるスイッチ出力段110のスイッチング動作の変形例のタイミングチャートの一部を拡大した図である。
図5に示すように、静音軽負荷モードにおいて、ロジック回路146は、オフ期間中に上側制御信号S1をローレベルにしたまま下側制御信号S2をハイレベルに立ち上げ(
図5の時刻t4)、その後、下側制御信号S2をローレベルに立下げると共に上側制御信号S1をハイレベルに立ち上げる(
図5の時刻t5)。その結果、出力トランジスタ111がオフしたまま同期整流トランジスタ112がオンし、その後出力トランジスタ111がオンして同期整流トランジスタ112がオフする。出力トランジスタ111がオンして、同期整流トランジスタ112がオフしているとき(
図5の時刻t5から時刻t6の間)、スイッチ電圧SWは、入力電圧Vinと等しくなり、上述した逆起電力による上昇値(
図5のグラフの破線で示す部分)よりも低くなる。
【0064】
その理由は、入力側(入力電圧Vin側)に逆流する電流が、出力トランジスタ111のボディーダイオードを介在することなく、出力トランジスタ111のソースからドレインを直接通って入力側に流れるからである。すると、ボディーダイオードによる電圧降下の影響を受けることなく、入力側に比較的多くの電流を流すことができる。このため、入力側にバッテリー等の蓄電可能な装置を設けることで、コンデンサ115に蓄えられた電荷の多くを回収することが可能になり、より効率性を高めることができる。
【0065】
また、この変形例では、
図5に示すように、同期整流トランジスタ112をオフすると同時に出力トランジスタ111をオンしているが、同期整流トランジスタ112のオフを検知したことを契機として制御回路140が出力トランジスタ111をオンするように構成してもよい。
【0066】
明細書中に開示されている電源制御装置(140)は、入力電圧(Vin)から出力電圧(Vout)を生成して負荷(Z)に供給するための出力トランジスタ(111)及び同期整流トランジスタ(112)をそれぞれ駆動するように構成されたドライバ(147)と、負荷(Z)が軽いほど出力トランジスタ(111)のスイッチング周波数が下がるように出力帰還制御を行う軽負荷モードにおいて、出力トランジスタ(111)及び同期整流トランジスタ(112)がいずれもオフ状態とされてから出力帰還制御に基づく出力トランジスタ(111)のオンタイミングが到来するまでのオフ期間において、スイッチング周波数が所定の下限値を下回らない範囲で同期整流トランジスタ(112)を周期的にオンするように構成された制御部(145)と、を備える構成(第1の構成)とされている。
【0067】
なお、第1の構成からなる電源制御装置(140)において、出力帰還制御に基づく出力トランジスタ(111)のオンタイミングは、出力電圧(Vout)が基準電圧(sv)まで下がった時点であり、制御部(145)は、オフ期間中の同期整流トランジスタ(112)のオンによって出力電圧(Vout)が基準電圧(sv)を下回らないように、オフ期間中の同期整流トランジスタ(112)のオン時間を可変するように構成(第2の構成)するとよい。
【0068】
また、第1の構成からなる電源制御装置(140)において、制御部(145)は、オフ期間中に同期整流トランジスタ(112)をオンした後、同期整流トランジスタ(112)をオフし、かつ同期整流トランジスタ(112)のオフに同期して出力トランジスタ(111)をオンするように構成(第3の構成)するとよい。
【0069】
また、第1の構成からなる電源制御装置(140)において、下限値は、25kHzである構成(第4の構成)にするとよい。
【0070】
また、第1~第4のいずれかの構成からなる電源制御装置(140)において、半導体装置(200)に集積化されている構成(第5の構成)にするとよい。
【0071】
また、明細書中に開示されているスイッチング電源(100)は、第1~4のいずれかの構成の電源制御装置(140)を備える構成(第6の構成)とされている。
【0072】
第1の構成に係る電源制御装置(140)によれば、軽負荷モードにおいて、スイッチング周波数が所定の下限値を下回るのを抑制可能になる。このため、下限値をヒトの可聴帯域よりも大きい値に設定することで、ヒトが認識可能な音鳴りの発生を抑制できる。また、負荷(Z)の値を変更したり、出力コンデンサに蓄えられた電荷を強制的に放電したりする構成ではないため、効率低下を抑制することができる。
【0073】
また、第2の構成に係る電源制御装置(140)によれば、オフ期間中の同期整流トランジスタ(112)のオンによって出力電圧(Vout)が基準電圧(sv)を下回るのを抑制可能になる。このため、軽負荷(Z)時にも関わらず、出力帰還制御に基づく出力トランジスタ(111)のオンタイミングが短くなってしまうのを抑制可能になり、効率低下を抑制できる。
【0074】
また、第3の構成に係る電源制御装置(140)によれば、出力トランジスタ(111)のボディーダイオードを介在することなく、直接出力トランジスタ(111)を経由して入力電圧(Vin)側に電流が流れる。このため、流れる電流はボディーダイオードによる電圧降下の影響を受けることないため、より多くの電流を流すことが可能になり、入力電圧(Vin)側にバッテリー等を設ける構成を採用した場合の効率低下を抑制することができる。
【0075】
また、第4の構成に係る電源制御装置(140)によれば、スイッチング周波数が一般的なヒトの可聴帯域よりも大きい25kHzよりも低くなるのを防ぐことができ、スイッチング電源(100)の音鳴りを抑制することができる。
【0076】
また、第6の構成に係るスイッチング電源(100)によれば、効率低下を抑制しつつ音鳴りの発生を抑制可能なスイッチング電源(100)を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本明細書中に開示されている電源制御装置は、種々のアプリケーションに搭載されるスイッチング電源の制御主体として利用することで、スイッチング電源の音鳴りを抑制しつつ、スイッチング電源の効率低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0078】
100 スイッチング電源
110 スイッチ出力段
111 出力トランジスタ
112 同期整流トランジスタ
113 インダクタ
114 コンデンサ
115 コンデンサ
120 帰還電圧生成回路
121 抵抗
140 制御回路(電源制御装置)
145 信号制御部(制御部)
146 ロジック回路
147 駆動回路(ドライバ)
147a 上側ドライバ
147b 下側ドライバ
200 半導体装置
FB 帰還電圧
G1 上側ゲート信号
G2 下側ゲート信号
GND 接地電圧
IC 電源制御
IL インダクタ電流
IN 入力電圧
Iout 負荷電流
S1 上側制御信号
S2 下側制御信号
SW スイッチ電圧
T1~T3 外部端子
Vin 入力電圧
Vout 出力電圧
Z 負荷
sv 基準電圧