(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049744
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】情報処理装置、価格決定システム、需要予測方法および価格決定方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0202 20230101AFI20240403BHJP
【FI】
G06Q30/02 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156164
(22)【出願日】2022-09-29
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】502133251
【氏名又は名称】フォルシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】梅野 健
(72)【発明者】
【氏名】新谷 健
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB02
5L049BB02
(57)【要約】
【課題】サービスの予約数の推移を推定する精度を向上する技術を提供する。
【解決手段】需要予測装置14は、第1の顧客群に関する時点t1までの予約数の推移に基づいて、第1の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第1の指数関数を導出する。需要予測装置14は、第1の顧客群とは属性が異なる第2の顧客群に関する時点t2までの予約数の推移に基づいて、第2の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第2の指数関数を導出する。需要予測装置14は、第1の指数関数が示す第1の顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移と、第2の指数関数が示す第2の顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移とに基づいて、サービス提供主体を支援する情報を生成する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のサービスを提供する主体における第1の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t1までの時系列での予約数の推移を取得し、第1の顧客群とは属性が異なる第2の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t2までの時系列での予約数の推移を取得する取得部と、
前記第1の顧客群に関する時点t1までの予約数の推移に基づいて、前記第1の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第1の指数関数を導出し、前記第2の顧客群に関する時点t2までの予約数の推移に基づいて、前記第2の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第2の指数関数を導出する導出部と、
前記第1の指数関数が示す前記第1の顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移と、前記第2の指数関数が示す前記第2の顧客群に関する前記分析対象時点までの時系列での予約数の推移とに基づいて、前記主体を支援するための情報を生成する生成部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記第1の顧客群は、前記主体または前記サービスに対するロイヤルティが相対的に高い顧客群であり、前記第2の顧客群は、前記主体または前記サービスに対するロイヤルティが相対的に低い顧客群である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1の顧客群は、前記主体にとっての利益が相対的に高いサービスを好む顧客群であり、前記第2の顧客群は、前記主体にとっての利益が相対的に低いサービスを好む顧客群である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記主体を支援するための情報として、前記分析対象時点での前記第1の顧客群の予約数と、前記分析対象時点での前記第2の顧客群の予約数の少なくとも一方を含む情報を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記生成部は、前記主体を支援するための情報として、前記第1の顧客群に対するサービスの価格と、前記第2の顧客群に対するサービスの価格の少なくとも一方の変更を促す内容を含む情報を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第1の顧客群は、前記主体または前記サービスに対するロイヤルティが相対的に高い顧客群であり、前記第2の顧客群は、前記主体または前記サービスに対するロイヤルティが相対的に低い顧客群であって、かつ、前記分析対象時点での前記第1の顧客群の予約数が目標を達成すると推定される場合、前記生成部は、前記主体を支援するための情報として、前記第1の顧客群に対するサービスの価格を維持する一方、前記第2の顧客群に対するサービスの価格を上げることを促す内容を含む情報を生成する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1の顧客群は、前記主体または前記サービスに対するロイヤルティが相対的に高い顧客群であり、前記第2の顧客群は、前記主体または前記サービスに対するロイヤルティが相対的に低い顧客群であって、かつ、前記分析対象時点での前記第1の顧客群の予約数と前記分析対象時点での前記第2の顧客群の予約数の合計が目標を達成すると推定される場合、前記生成部は、前記主体を支援するための情報として、前記第1の顧客群に対するサービスの価格を第1の割合増加させ、前記第2の顧客群に対するサービスの価格を前記第1の割合より大きい第2の割合増加させることを促す内容を含む情報を生成する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第1の顧客群は、前記主体または前記サービスに対するロイヤルティが相対的に高い顧客群であり、前記第2の顧客群は、前記主体または前記サービスに対するロイヤルティが相対的に低い顧客群であって、かつ、前記分析対象時点での前記第1の顧客群の予約数が目標に未達と推定され、前記分析対象時点での前記第2の顧客群の予約数が目標を達成すると推定される場合、前記生成部は、前記主体を支援するための情報として、前記第1の顧客群に対するサービスの価格を下げて、前記第2の顧客群に対するサービスの価格を上げることを促す内容を含む情報を生成する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項9】
所定のサービスを提供する主体における第1の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t1までの時系列での予約数の推移を取得し、第1の顧客群とは属性が異なる第2の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t2までの時系列での予約数の推移を取得する取得部と、
前記第1の顧客群に関する時点t1までの予約数の推移に基づいて、前記第1の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第1の指数関数を導出し、前記第2の顧客群に関する時点t2までの予約数の推移に基づいて、前記第2の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第2の指数関数を導出する導出部と、
前記第1の指数関数が示す前記第1の顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移と、前記第2の指数関数が示す前記第2の顧客群に関する前記分析対象時点までの時系列での予約数の推移とに基づいて、前記サービスの価格を決定する価格決定部と、
を備える価格決定システム。
【請求項10】
コンピュータが、
所定のサービスを提供する主体における第1の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t1までの時系列での予約数の推移を取得し、第1の顧客群とは属性が異なる第2の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t2までの時系列での予約数の推移を取得し、
前記第1の顧客群に関する時点t1までの予約数の推移に基づいて、前記第1の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第1の指数関数を導出し、前記第2の顧客群に関する時点t2までの予約数の推移に基づいて、前記第2の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第2の指数関数を導出し、
前記第1の指数関数が示す前記第1の顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移と、前記第2の指数関数が示す前記第2の顧客群に関する前記分析対象時点までの時系列での予約数の推移とに基づいて、前記主体を支援するための情報を生成する、
需要予測方法。
【請求項11】
コンピュータが、
所定のサービスを提供する主体における第1の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t1までの時系列での予約数の推移を取得し、第1の顧客群とは属性が異なる第2の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t2までの時系列での予約数の推移を取得し、
前記第1の顧客群に関する時点t1までの予約数の推移に基づいて、前記第1の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第1の指数関数を導出し、前記第2の顧客群に関する時点t2までの予約数の推移に基づいて、前記第2の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第2の指数関数を導出し、
前記第1の指数関数が示す前記第1の顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移と、前記第2の指数関数が示す前記第2の顧客群に関する前記分析対象時点までの時系列での予約数の推移とに基づいて、前記サービスの価格を決定する、
価格決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データ処理技術に関し、特に情報処理装置、価格決定システム、需要予測方法および価格決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、所定の主体(例えば宿泊施設等)が提供するサービスについて、顧客の予約傾向に指数関数性があることを応用して、サービスの予約数の時系列での推移を推定する技術を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、顧客の予約傾向を示す指数関数の傾きが、サービスの提供主体の単位で1つではなく、顧客の属性に応じて異なることに想到し、サービスの予約数の推移を推定する精度を向上する技術に想到した。
【0005】
本開示は本発明者の上記着想に基づきなされたものであり、1つの目的は、サービスの予約数の推移を推定する精度を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の情報処理装置は、所定のサービスを提供する主体における第1の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t1までの時系列での予約数の推移を取得し、第1の顧客群とは属性が異なる第2の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t2までの時系列での予約数の推移を取得する取得部と、第1の顧客群に関する時点t1までの予約数の推移に基づいて、第1の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第1の指数関数を導出し、第2の顧客群に関する時点t2までの予約数の推移に基づいて、第2の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第2の指数関数を導出する導出部と、第1の指数関数が示す第1の顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移と、第2の指数関数が示す第2の顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移とに基づいて、主体を支援するための情報を生成する生成部とを備える。
【0007】
本開示の別の態様は、価格決定システムである。この価格決定システムは、所定のサービスを提供する主体における第1の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t1までの時系列での予約数の推移を取得し、第1の顧客群とは属性が異なる第2の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t2までの時系列での予約数の推移を取得する取得部と、第1の顧客群に関する時点t1までの予約数の推移に基づいて、第1の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第1の指数関数を導出し、第2の顧客群に関する時点t2までの予約数の推移に基づいて、第2の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第2の指数関数を導出する導出部と、第1の指数関数が示す第1の顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移と、第2の指数関数が示す第2の顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移とに基づいて、サービスの価格を決定する価格決定部とを備える。
【0008】
本開示のさらに別の態様は、需要予測方法である。この方法は、コンピュータが、所定のサービスを提供する主体における第1の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t1までの時系列での予約数の推移を取得し、第1の顧客群とは属性が異なる第2の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t2までの時系列での予約数の推移を取得し、第1の顧客群に関する時点t1までの予約数の推移に基づいて、第1の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第1の指数関数を導出し、第2の顧客群に関する時点t2までの予約数の推移に基づいて、第2の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第2の指数関数を導出し、第1の指数関数が示す第1の顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移と、第2の指数関数が示す第2の顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移とに基づいて、主体を支援するための情報を生成する。
【0009】
本開示のさらに別の態様は、価格決定方法である。この方法は、コンピュータが、所定のサービスを提供する主体における第1の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t1までの時系列での予約数の推移を取得し、第1の顧客群とは属性が異なる第2の顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t2までの時系列での予約数の推移を取得し、第1の顧客群に関する時点t1までの予約数の推移に基づいて、第1の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第1の指数関数を導出し、第2の顧客群に関する時点t2までの予約数の推移に基づいて、第2の顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第2の指数関数を導出し、第1の指数関数が示す第1の顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移と、第2の指数関数が示す第2の顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移とに基づいて、サービスの価格を決定する。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現をコンピュータプログラム、コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した記録媒体などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本開示の技術によれば、サービスの予約数の推移を推定する精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実データの曲線フィッティングの結果を示す図である。
【
図5】第1実施形態の通信システムの構成を示す図である。
【
図6】第1実施形態の需要予測装置の機能ブロックを示すブロック図である。
【
図7】第1顧客群についての予約曲線の例を示す図である。
【
図8】第2顧客群についての予約曲線の例を示す図である。
【
図10】第2実施形態の価格決定システムの構成を示す図である。
【
図11】第2実施形態の需要予測装置の機能ブロックを示すブロック図である。
【
図12】第2実施形態の価格決定装置の機能ブロックを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の技術を好適な実施形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限り、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0014】
<前提技術>
前提技術としての需要予測アルゴリズムについて説明する。
まず、予約数とキャンセル数に対する定義を与える。実施形態では、宿泊施設における或る日の宿泊予約数X(t)とキャンセル数Y(t)が、以下の関数にしたがって振る舞うものとする。
【数1】
【0015】
ただし、A>B>0とする。また、tは、宿泊日(言い換えればサービス提供日)より何日前かを示す値(単位:日)である。また、φ
X(t)とφ
Y(t)は、以下を満たすものとする。
【数2】
つまり、X(0)=A,X(∞)=0,Y(0)=B,Y(∞)=0となる。
このとき、以下を仮説として置く。
【0016】
任意の0≦t1<t2に対し、次の式が成立するとする。
φ(t2)=φ(t1)φ(t2-t1) ・・・(式1)
式1に対する直感的な理解を与える。
ある区間εと日付αが与えられたとき、式1は以下の性質を持つ。
φ(α)=φ(0)φ(α-0)=φ(α)
φ(α+ε)=φ(α)φ(ε)
すなわち、ε日後(あるいはε日前)の値は、α日時点での値によらず、そこから一定の割合だけ減る(或いは増える)という性質を持つ。
【0017】
この性質は、自然界において原子の半減期の性質にも見られるような自己比例を意味し、すなわち観測数の変化が、その時点での観測数に比例することを意味している。すなわち、人の予約行動を自然現象と見なし、予約数は、期日(予約の対象となる日であって、言い換えればサービス提供日)から遠ざかるにつれて(例えばその距離に比例して)日々減少していくことを仮定したことになる。
【0018】
予約数とキャンセル数に対して上記の定義と仮説を置いた場合、φ
X(t)とφ
Y(t)は、陽に表すことができる。
【数3】
ただし、τ
Xとτ
Yは、正の時定数であり、言い換えれば、予約数とキャンセル数の変化を司る定数パラメータである。サービス提供者が宿泊施設の場合、τ
Xとτ
Yは、リードタイムとも言え、予約数とキャンセル数の増加度合いが大きくなるタイミングに応じた定数である。
【0019】
図1は、実データの曲線フィッティングの結果を示す。
図1の横軸は、上記のtを示し、すなわち宿泊施設に対する予約が行われた日(宿泊日の何日前か)を示している。
図1の縦軸は、予約数またはキャンセル数を対数スケールで示している。ポイント100は、ある時点tにおける予約数を示す実データであり、ポイント102は、ある時点tにおけるキャンセル数を示す実データである。予約曲線104は、ポイント100の推移を近似した曲線であり、キャンセル曲線106は、ポイント102の推移を近似した曲線である。
【0020】
既述したように、
図1の縦軸は対数スケールであるため、予約曲線104とキャンセル曲線106はともに指数関数となる。本発明者は、実データを用いた検証により、宿泊施設における予約数X(t)とキャンセル数Y(t)は、以下の関数系に相応しくフィッティングされることを発見した。
【数4】
なお、Aは、サービス提供当日(宿泊日当日)の予約数であり、Bは、サービス提供当日(宿泊日当日)のキャンセル数である。
【0021】
以上の結果を予測アルゴリズムに転換する。上記の仮説「予約数は、宿泊日から前に遡るにつれ、その数(宿泊日からの距離)に比例して日々減少していく」ことが一定程度正しいことに基づくと、以下は情報として等価なものとなる。
「予約数は、宿泊日から前に遡るにつれ、その数に比例して日々減少していく」
「予約数は、宿泊日から前に遡るにつれ、指数関数的に減少していく」
「予約数は、(未来の)宿泊日に向かって近づくにつれ、指数関数的に増加していく」
したがって、上記の式2を予約数の予測に用いることができ、また、上記の式3をキャンセル数の予測に用いることができることがわかる。
【0022】
図2は、予約曲線を模式的に示す。
図2の横軸は、サービス提供日までの残り日数tである。
図2の縦軸は、サービスの予約数X(t)である。
図2でのサービスの予約数X(t)は、サービス提供日までの日ごとに生じる予約数を示している。
図2では縦軸を通常スケールで示している。
図2では、予約情報が示す時点t
1(例えば30日前)までの予約数の推移を上記の式2にフィッティングして式2のパラメータAおよびτ
Xを推定することにより導出した予約曲線110を示している。サービス提供日(すなわちt=0)までの予約数の合計は、0≦t<∞でX(t)を積分することにより求められ、Aτ
Xとなる。予約曲線110のAτ
Xを求めることによりサービス提供日までの予約数の合計を推定できる。
【0023】
<実施形態の概要>
顧客の予約傾向を示す指数関数の傾き(時定数とも言える)は、サービスの提供主体(施設とも言える)の単位で1つではなく、顧客の属性に応じて異なることに本発明者は想到した。
図3、
図4はその具体例を示す。
【0024】
図3は、美容院の予約状況を示す箱ひげ図である。
図3の横軸は、顧客の来店回数を示す。横軸の値が1の顧客は初回利用者であり、横軸の値が2以上の顧客はリピーターである。
図3の縦軸は、来店の何日前に予約されたか(すなわち予約リードタイム)を示す。上の箱は25%の予約が入る範囲を示し、下の箱も25%の予約が入る範囲を示す。この箱ひげ図によると、初回利用の顧客の予約が、リピーターの顧客と比べて、サービス利用直前の予約に偏っていることがわかる。
【0025】
図4は、美容院の予約数の推移を示す。
図4の横軸は、サービス提供日の何日前に予約が行われたかを示す(すなわち予約リードタイム)を示す。
図4の縦軸は、予約数を示している。初回利用者予約曲線120(実線)は、初回利用者による予約数の推移を示している。リピーター予約曲線122(実線)は、リピーターによる予約数の推移を示している。合計予約曲線124(実線)は、初回利用者予約曲線120が示す予約数とリピーター予約曲線122が示す予約数の合計を示している。
【0026】
初回利用者予約指数曲線126(破線)は、初回利用者予約曲線120に近似する指数関数の曲線を示している。リピーター予約指数曲線128(破線)は、リピーター予約曲線122に近似する指数関数の曲線を示している。初回利用者予約指数曲線126の時定数τは約2.2日である一方、リピーター予約指数曲線128の時定数τは約5.2日であり、リピーター予約指数曲線128の方が時定数が約2.5倍大きい。これは、初回利用者予約指数曲線126の傾きがリピーター予約指数曲線128の傾きより急峻であり、すなわち、初回利用者の予約は、サービス提供日直前の予約が占める割合が大きいことを示している。
【0027】
このような分析結果をもとに、本発明者は、顧客属性ごとに異なる時定数τを持つ指数関数としての予約傾向が現れることに想到した。顧客属性は、例えば、サービス提供者、施設またはサービスそのものへの帰属意識であるロイヤルティの高低である。実施形態のシステムでは、異なる属性を有する顧客群ごとに、予約傾向を近似した指数関数であり、かつ、固有の時定数τを有する指数関数を導出し、顧客群ごとの予約数の推移を推定する。これにより、異なる属性を有する顧客群ごとに適切なタイミングおよび適切な内容のプライシング施策を実現できるようサービス提供者を支援する。
【0028】
サービス提供者、施設またはサービスそのものへのロイヤルティに基づいて顧客を分類する例を説明する。ここでは、ロイヤルティが相対的に高い顧客群を第1顧客群とし、ロイヤルティが相対的に低い顧客群を第2顧客群とする。第1の例として、サービスを過去1回以上利用した実績があるリピーターを第1顧客群に分類し、サービスの初回利用者を第2顧客群に分類してもよい。第2の例として、サービスの利用実績がN回以上の顧客を第1顧客群に分類し、サービスの利用実績がN回未満の顧客を第2顧客群に分類してもよい。Nは、2以上の自然数であり、例えばN=11であってもよい。
【0029】
第3の例として、価格感度が低い顧客を第1顧客群に分類し、価格感度が高い顧客を第2顧客群に分類してもよい。価格感度は、サービス価格の変動に対する購買活動の反応度合いであってもよい。第4の例として、所定のロイヤルティプログラムまたはメンバーシッププログラムに入会済の顧客を第1顧客群に分類し、未入会の顧客を第2顧客群に分類してもよい。なお、サービスの利用実績や価格感度等に基づいて、複数の顧客のそれぞれを3つ以上の顧客群に分類し、各顧客群の予約傾向を示す指数関数を導出してもよい。
【0030】
実施形態での予約数の推移は、サービスの提供者が顧客から受け付けた予約総数の時系列での推移である。キャンセルされた予約は、予約総数には計上しない。したがって、実施形態での予約数の推移は単調増加となる。変形例として、上記特許文献1と同様に、予約数の推移は、日ごとに生じた予約数の時系列での推移であってもよい。日ごとに生じた予約数の時系列での推移を積分すれば予約総数になるため、この変形例においても、顧客属性ごとに異なる時定数τを持つ指数関数としての予約傾向が現れる。
【0031】
実施形態の技術は、様々な需要予測に適用可能であり、具体的には、様々な主体(施設や組織等)が提供するサービスの予約数の分析に適用可能である。分析対象となるサービスは、例えば、宿泊施設が提供する宿泊サービスや、美容院が提供する美容サービス、小売店が提供する商品販売サービスを含む。また、旅行ポータルサイト等のプラットフォームサービスでの予約数の分析にも適用できる。
【0032】
以上説明した需要予測アルゴリズムを利用する実施形態を詳細に説明する。
<第1実施形態>
図5は、第1実施形態の通信システム10の構成を示す。通信システム10は、ユーザ装置12で総称されるユーザ装置12a、ユーザ装置12b、ユーザ装置12cと、需要予測装置14とを備える。通信システム10の各装置は通信網16を介して接続される。通信網16は、LAN、WAN、インターネット等、公知の通信手段を含む。
【0033】
ユーザ装置12は、需要予測装置14のユーザが使用する情報処理装置である。需要予測装置14のユーザは、所定のサービス(例えば宿泊サービス)の提供者とする。例えば、ユーザ装置12aは、ホテルAの担当者が使用し、ユーザ装置12bは、ホテルBの担当者が使用し、ユーザ装置12cは、旅館Cの担当者が使用してもよい。また、各ユーザ装置12は、PC、スマートフォンまたはタブレット端末であってもよい。
【0034】
需要予測装置14は、上記の需要予測アルゴリズムを使用して需要予測サービスを提供する情報処理装置である。需要予測装置14は、ウェブサーバの機能を備えてもよく、需要予測サービスをウェブアプリケーション(言い換えればウェブサービス)として提供してもよい。
【0035】
図6は、第1実施形態の需要予測装置14の機能ブロックを示すブロック図である。本明細書のブロック図で示す複数の機能ブロックは、ハードウェア的には、回路ブロック、メモリ、その他のLSIで構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムをCPUが実行すること等により実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0036】
需要予測装置14は、データ処理部20、記憶部22および通信部24を備える。データ処理部20は、需要予測に関する各種データ処理を実行する。記憶部22は、データ処理部20により参照または更新されるデータを記憶する。通信部24は、所定の通信プロトコルにしたがって外部装置と通信する。データ処理部20は、通信部24を介してユーザ装置12とデータを送受信する。
【0037】
記憶部22は、予約パターン記憶部26を含む。予約パターン記憶部26は、予約数の時系列での推移を示す予約曲線に関するデータを記憶する。予約パターン記憶部26は、互いに属性が異なる複数の顧客群それぞれの予約曲線に関するデータを記憶する。
【0038】
データ処理部20は、予約情報取得部30、導出部32、支援情報生成部34、支援情報提供部38を含む。これら複数の機能ブロックの機能はコンピュータプログラム(以下「需要予測プログラム」と呼ぶ。)に実装されてもよい。需要予測プログラムは、記録媒体またはネットワークを介して需要予測装置14のストレージにインストールされてもよい。需要予測装置14のプロセッサ(例えばCPU)は、需要予測プログラムをメインメモリに読み出して実行することにより上記複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0039】
予約情報取得部30は、所定のサービスを提供する主体における第1顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t1までの時系列での予約数の推移を示す第1予約情報を取得する。また、予約情報取得部30は、第1顧客群とは属性が異なる第2顧客群に関する、サービス提供時点前の時点t2までの時系列での予約数の推移を示す第2予約情報を取得する。時点t1と時点t2は同じであってもよく、異なってもよい。
【0040】
導出部32は、第1予約情報が示す第1顧客群に関する時点t1までの予約数の推移に基づいて、第1顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第1の指数関数を導出する。また、導出部32は、第2予約情報が示す第2顧客群に関する時点t2までの予約数の推移に基づいて、第2顧客群に関するサービス提供時点までの時系列での予約数の推移を示す第2の指数関数を導出する。
【0041】
第1の指数関数は、第1顧客群の予約傾向を示す予約曲線と言え、第2の指数関数は、第2の顧客群の予約傾向を示す予約曲線と言える。導出部32は、第1の指数関数に関するデータを第1顧客群に分類されたデータに対応付けて予約パターン記憶部26に格納し、第2の指数関数に関するデータを第2顧客群に分類されたデータに対応付けて予約パターン記憶部26に格納する。
【0042】
支援情報生成部34は、第1の指数関数が示す第1顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移と、第2の指数関数が示す第2顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移とに基づいて、サービスを提供する主体を支援するための情報(以下「支援情報」とも呼ぶ。)を生成する。分析対象時点は、サービス提供時点(サービス提供日)であってもよい。また、分析対象時点は、時点t1および時点t2より後で、サービス提供時点(サービス提供日)より前の範囲で、ユーザにより指定された任意の時点であってもよい。
【0043】
支援情報生成部34は、推定部36を含む。推定部36は、第1の指数関数が示す第1顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移と、第2の指数関数が示す第2顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移とに基づいて、予約数に関する推定処理を実行する。支援情報生成部34は、推定部36による推定結果に基づく支援情報を生成する。
【0044】
支援情報提供部38は、支援情報生成部34により生成された支援情報をユーザ装置12へ提供する。例えば、支援情報生成部34は、ユーザAのユーザ装置12aから受け付けた予約情報に基づいて導出された指数関数(予約曲線)に基づいて、ユーザAに対する支援情報を生成する。この場合、支援情報提供部38は、ユーザAに対する支援情報をユーザ装置12aへ送信する。また、支援情報生成部34は、ユーザBのユーザ装置12bから受け付けた予約情報に基づいて導出された指数関数(予約曲線)に基づいて、ユーザBに対する支援情報を生成する。この場合、支援情報提供部38は、ユーザBに対する支援情報をユーザ装置12bへ送信する。
【0045】
第1実施形態の通信システム10の動作を説明する。
ここでの需要予測装置14のユーザは、宿泊施設のレベニューマネージャとする。また、第1顧客群は、サービス提供主体またはサービスそのものに対するロイヤルティが相対的に高い顧客群であり、具体的には、当該宿泊施設に過去宿泊したことがあるリピーター(リピート顧客)とする。第2顧客群は、サービス提供主体またはサービスそのものに対するロイヤルティが相対的に低い顧客群であり、具体的には、当該宿泊施設に過去宿泊したことがない初回利用者とする。
【0046】
ユーザ(レベニューマネージャ)は、分析対象時点(以下「対象日」とも呼ぶ。)における予約状況を把握したいこととする。ここでの対象日は、宿泊サービスを提供する特定の未来日である。ユーザ装置12は、ユーザの操作に応じて、需要予測装置14が提供するウェブサイトにアクセスする。ユーザ装置12は、ユーザの操作に応じて、現在(例えば上記のt1)までに第1顧客群(リピーター)から受付済の、対象日の宿泊に関する予約数の推移を示す第1予約情報を需要予測装置14へ送信する。第1予約情報では、対象日と時点t1とが明示的に指定されてもよい。
【0047】
また、ユーザ装置12は、ユーザの操作に応じて、現在(例えば上記のt2)までに第2顧客群(初回利用者)から受付済の、対象日の宿泊に関する予約数の推移を示す第2予約情報を需要予測装置14へ送信する。第2予約情報では、対象日と時点t2とが明示的に指定されてもよい。既述だが、第1予約情報と第2予約情報のそれぞれが示す対象日の宿泊に関する予約数の推移は、現在までの時系列で日々カウントされた予約総数の推移であり、言い換えれば、日ごとに生じた予約数の合算値の推移である。
【0048】
需要予測装置14の予約情報取得部30は、ユーザ装置12aから送信された第1予約情報および第2予約情報を受け付ける。需要予測装置14の導出部32は、第1予約情報が示す現在までの予約数の推移を上記の式2にフィッティングして式2のパラメータAおよびτ
xを推定することにより、第1の指数関数として、第1顧客群についての予約曲線110を導出する。第1顧客群についての予約曲線110は、
図4のリピーター予約指数曲線128に対応する。
【0049】
図7は、第1顧客群についての予約曲線110の例を示す。
図7の横軸は対象日の何日前かを示し、
図7の縦軸は予約総数X(t)を示す。予約総数X(t)は、累積予約数とも言え、上記の式2により定義される。実施形態の予約曲線110は、予約数の時系列での推移として、予約総数X(t)の時系列での推移を示す。変形例として、予約曲線110は、日ごとに生じた予約数の時系列での推移を示すグラフであってもよい。
【0050】
予約曲線110の実線部分は、対象日の宿泊に関する実績値としての、t1までに第1顧客群から受け付けた予約総数の推移を示している。予約曲線110の破線部分は、対象日の宿泊に関する予測値としての、対象日までの予約総数の推移を示している。また、
図7では、第1顧客群の予約数について予め定められた目標値を示す第1顧客群目標値130を破線で示している。ユーザ装置12aは、ユーザ(例えば宿泊施設のレベニューマネージャ)の操作に応じて、自施設にとっての第1顧客群目標値130を需要予測装置14に事前に登録してもよい。
【0051】
また、導出部32は、第2予約情報が示す現在までの対象日の予約数の推移を上記の式2にフィッティングして式2のパラメータAおよびτ
xを推定することにより、第2の指数関数として、第2顧客群についての予約曲線110を導出する。第2顧客群についての予約曲線110は、
図4の初回利用者予約指数曲線126に対応する。
【0052】
図8は、第2顧客群についての予約曲線110の例を示す。
図8の横軸は対象日の何日前かを示し、
図8の縦軸は予約総数X(t)を示す。予約曲線110の実線部分は、対象日の宿泊に関する実績値としての、t2までに第2顧客群から受け付けた予約総数の推移を示している。予約曲線110の破線部分は、対象日の宿泊に関する予測値としての、対象日までの予約総数の推移を示している。また、
図8では、第2顧客群の予約数について予め定められた目標値を示す第2顧客群目標値132を破線で示している。ユーザ装置12aは、ユーザ(例えば宿泊施設のレベニューマネージャ)の操作に応じて、自施設にとっての第2顧客群目標値132を需要予測装置14に事前に登録してもよい。
【0053】
需要予測装置14の支援情報生成部34は、第1顧客群についての予約曲線110が示す対象日までの時系列での第1顧客群の予約数の推移と、第2顧客群についての予約曲線110が示す対象日までの時系列での第2顧客群の予約数の推移とに基づいて、ユーザに対する支援情報を生成する。第1実施形態での支援情報は、分析対象時点での第1顧客群の予約数(予約総数の推定値)と、分析対象時点での第2顧客群の予約数(予約総数の推定値)の両方を含む。変形例として、ユーザによる指定がある場合等、支援情報は、分析対象時点での第1顧客群の予約数(予約総数の推定値)と、分析対象時点での第2顧客群の予約数(予約総数の推定値)の一方のみを含んでもよい。
【0054】
需要予測装置14の支援情報提供部38は、ユーザに対する支援情報をユーザ装置12(ここではユーザ装置12a)に送信する。ユーザ(ここでは宿泊施設のレベニューマネージャ)は、支援情報を参照して、例えば、顧客群ごとの宿泊サービスの価格を調整し、または、顧客群ごとの宿泊プランの内容を調整する。
【0055】
第1実施形態の需要予測装置14は、サービス提供者における複数の顧客を分類した顧客群であって、属性が異なる顧客群ごとに、分析対象時点までの時系列での予約数の推移を示す指数関数(予約曲線110)を導出する。そして、顧客群ごとの指数関数(予約曲線110)に基づいて、サービス提供主体に対する支援情報を生成する。これにより、サービスの予約数の推移を推定する精度を向上でき、また、高精度の推定結果に基づく有用な支援情報を提供できる。
【0056】
また、
図3および
図4に関連して説明したように、サービス提供主体またはサービスに対するロイヤルティの高低で区分した顧客群ごとに予約曲線110の特性(例えば時定数τ)が異なる。第1実施形態の需要予測装置14は、サービス提供主体またはサービスに対するロイヤルティの高低で区分した顧客群ごとの予約曲線110を導出する。これにより、サービスの予約数の推移を推定する精度を向上できる。また、ロイヤルティの度合いが異なる顧客群ごとに、適切な価格設定やプラン設定ができるよう支援できる。
【0057】
また、第1実施形態の需要予測装置14は、分析対象時点での第1顧客群の予約総数の推定値と、分析対象時点での第2顧客群の予約総数の推定値の少なくとも一方を含む支援情報をユーザに提供する。これにより、各顧客群向けのプランや価格をユーザが適切に調整できるよう支援できる。
【0058】
以上、本開示の第1実施形態を説明した。第1実施形態は例示であり、各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0059】
第1実施形態に関する第1変形例を説明する。第1実施形態では、サービス提供主体またはサービスそのものに対するロイヤルティが相対的に高い顧客を第1顧客群に分類し、サービス提供主体またはサービスそのものに対するロイヤルティが相対的に低い顧客を第2顧客群に分類した。変形例として、サービス提供主体にとっての利益が相対的に高いサービスを好む顧客を第1顧客群に分類し、サービス提供主体にとっての利益が相対的に低いサービスを好む顧客を第2顧客群に分類してもよい。この変形例によると、サービス提供主体の利益への影響度合いが異なる顧客群ごとに、適切な価格設定やプラン設定ができるよう支援できる。
【0060】
例えば、宿泊サービスのプランとして素泊まりと食事付とがあり、食事付の方が宿泊施設の利益が高いこととする。この場合、食事付プランを選択する傾向が強い顧客を第1顧客群に分類し、素泊まりプランを選択する傾向が強い顧客を第2顧客群に分類してもよい。また、通常の宿泊予約ウェブサイトを使用した宿泊予約と福利厚生用ウェブサイトを使用した宿泊予約とがあり、通常の宿泊予約ウェブサイトを使用した宿泊予約の方が宿泊施設の利益が高いこととする。この場合、通常の宿泊予約ウェブサイトから宿泊予約を行った顧客を第1顧客群に分類し、福利厚生用ウェブサイトから宿泊予約を行った顧客を第2顧客群に分類してもよい。
【0061】
第1実施形態に関する第2変形例を説明する。需要予測装置14の導出部32は、複数の顧客群についての複数の予約曲線を合成した予約曲線(以下「合計予約曲線」とも呼ぶ。)を導出してもよい。合計予約曲線は、分析対象の施設またはサービスの単位で、サービス提供時点までの時系列での予約総数の推移を示す関数とも言える。
【0062】
分析対象の施設またはサービスの顧客が、第1顧客群と第2顧客群に分類される場合、第1顧客群についての予約曲線と第2顧客群についての予約曲線を合成した合計予約曲線は、以下の式4で表される。
【数5】
X(t)は、分析対象の施設またはサービスの単位の予約総数であり、第1顧客群の予約総数と第2顧客群の予約総数の合計である。A
1は分析対象時点(例えばサービス提供日)の第1顧客群の予約総数であり、A
2は分析対象時点(例えばサービス提供日)の第2顧客群の予約総数である。τ
x1は第1顧客群の予約曲線の時定数であり、τ
x2は第2顧客群の予約曲線の時定数である。
【0063】
図9は、合計予約曲線124の例を示す。
図9の合計予約曲線124は、
図7に示した第1顧客群についての予約曲線110と、
図8に示した第2顧客群についての予約曲線110を合計(言い換えれば合成)したものである。
図9の横軸は分析対象時点(例えばサービス提供日)の何日前かを示し、
図9の縦軸は予約総数X(t)を示す。合計予約曲線124の実線部分は、分析対象時点の宿泊に関する実績値としての、t日前までに第1顧客群および第2顧客群から受け付けた予約総数の推移を示している。合計予約曲線124の破線部分は、対象日の宿泊に関する予測値としての、分析対象時点までに第1顧客群および第2顧客群から受け付ける予約総数の推移を示している。
【0064】
また、
図9では、第1顧客群の予約数と第2顧客群の予約数との合計について予め定められた目標値を示す合計予約目標値134を破線で示している。ユーザ装置12は、ユーザ(例えば宿泊施設のレベニューマネージャ)の操作に応じて、自施設にとっての合計予約目標値134を需要予測装置14に事前に登録してもよい。
【0065】
需要予測装置14の支援情報生成部34は、合計予約曲線124が示す分析対象時点までの時系列での第1顧客群および第2顧客群の予約総数の推移にさらに基づいて、ユーザに対する支援情報を生成してもよい。例えば、支援情報生成部34は、合計予約曲線124が示す分析対象時点での第1顧客群および第2顧客群の予約総数が合計予約目標値134に達しているかを判定してもよい。分析対象時点での第1顧客群および第2顧客群の予約総数が合計予約目標値134に未達の場合、支援情報生成部34は、第1顧客群についての予約曲線110が示す分析対象時点での第1顧客群の予約総数と、第2顧客群についての予約曲線110が示す分析対象時点での第2顧客群の予約総数の一方または両方(例えば目標に未達の顧客群の情報)を含む支援情報を生成してもよい。
【0066】
第1実施形態に関する第3変形例を説明する。需要予測装置14の支援情報生成部34は、第1顧客群に対するサービスの価格と、第2顧客群に対するサービスの価格の少なくとも一方の変更を促す(言い換えれば変更を推奨する)内容を含む支援情報を生成してもよい。この変形例によると、ユーザが各顧客群向けに適切な価格を設定できるよう支援でき、言い換えれば、各顧客群向けのダイナミックプライシングを支援できる。また、この変形例によると、全体最適な価格施策を実行できるよう支援できる。以下、第3変形例の具体例を説明する。
【0067】
(例1)推定部36は、第1顧客群についての予約曲線110に基づいて、分析対象時点での第1顧客群の予約数が第1顧客群目標値130を達成するか否かを判定する。分析対象時点での第1顧客群の予約数が第1顧客群目標値130を達成すると推定される場合、支援情報生成部34は、支援情報として、第1顧客群に対するサービスの提供価格を維持する一方、第2顧客群に対するサービスの提供価格をそれまでより引き上げることを促す内容を含む情報を生成する。
【0068】
例1の態様によると、高ロイヤルティ顧客がサービスを購買する機会をユーザが拡充することを促し、ユーザが、高ロイヤルティ顧客(リピーター等)を重視した施策をとれるよう支援できる。
【0069】
(例2)推定部36は、合計予約曲線124に基づいて、分析対象時点での第1顧客群の予約数と分析対象時点での第2顧客群の予約数の合計が合計予約目標値134を達成するか否かを判定する。分析対象時点での第1顧客群の予約数と分析対象時点での第2顧客群の予約数の合計が合計予約目標値134を達成すると推定される場合、支援情報生成部34は、支援情報として、第1顧客群に対するサービスの提供価格を第1割合増加させ、第2顧客群に対するサービスの提供価格を第1割合より大きい第2割合増加させることを促す内容を含む情報を生成する。
【0070】
上記の支援情報は、例えば、第1顧客群へのサービス提供価格を現在の2万5千円から3万円に20%引き上げ、第2顧客群へのサービス提供価格を現在の3万円から4万円に33%引き上げることを促す内容を含んでもよい。例2の態様によると、ユーザが、高ロイヤルティ顧客を優遇しつつ予約数を適切にコントロールできるよう支援できる。
【0071】
(例3)推定部36は、第1顧客群についての予約曲線110に基づいて、分析対象時点での第1顧客群の予約数が第1顧客群目標値130を達成するか否かを判定する。また、推定部36は、第2顧客群についての予約曲線110に基づいて、分析対象時点での第2顧客群の予約数が第2顧客群目標値132を達成するか否かを判定する。分析対象時点での第1顧客群の予約数が第1顧客群目標値130に未達と推定され、かつ、分析対象時点での第2顧客群の予約数が第2顧客群目標値132を達成すると推定される場合、支援情報生成部34は、支援情報として、第1顧客群に対するサービスの提供価格をそれまでより下げて、第2顧客群に対するサービスの提供価格をそれまでより上げることを促す内容を含む情報を生成する。
【0072】
例3の態様によると、高ロイヤルティ顧客がサービスを購買する機会をユーザが拡充することを促し、ユーザが、高ロイヤルティ顧客(リピーター等)を重視した施策をとれるよう支援できる。
【0073】
(例4)推定部36は、合計予約曲線124に基づいて、分析対象時点での第1顧客群の予約数と分析対象時点での第2顧客群の予約数の合計が合計予約目標値134を達成するか否かを判定する。分析対象時点での第1顧客群の予約数と分析対象時点での第2顧客群の予約数の合計が合計予約目標値134に未達と推定される場合、支援情報生成部34は、支援情報として、第1顧客群に対するサービスの提供価格を維持する一方、第2顧客群に対するサービスの提供価格をそれまでより引き下げる(例えば50%割り引く)ことを促す内容を含む情報を生成する。
【0074】
例4の態様によると、全体的に需要が低い場合に、低ロイヤルティ顧客(例えば初回利用者)を呼び込む機会をユーザが拡充することを促し、顧客全体でのロイヤルティ向上を支援できる。
【0075】
<第2実施形態>
第2実施形態について、第1実施形態と相違する点を中心に以下説明し、共通する点の説明を省略する。第2実施形態の特徴は、第1実施形態および変形例の特徴と任意の組合せが可能であることはもちろんである。第2実施形態では、サービスに対する需要に応じて、サービスの価格をより直接的に調整する技術を提案する。
【0076】
図10は、第2実施形態の価格決定システム40の構成を示す。価格決定システム40は、第1実施形態の通信システム10を構成した装置に加えて価格決定装置18を備える。価格決定装置18は、複数のユーザのそれぞれにおけるサービスの提供価格を決定または調整する情報処理装置である。価格決定装置18は、通信網16を介して、ユーザ装置12および需要予測装置14と接続される。不図示だが、価格決定装置18は、通信網16を介して、サービスの価格を顧客に提示するウェブサイト(例えば旅行予約サイト等)の装置と接続されてもよい。
【0077】
図11は、第2実施形態の需要予測装置14の機能ブロックを示すブロック図である。第2実施形態の需要予測装置14は、第1実施形態の需要予測装置14の予約情報取得部30および導出部32に加えて予測情報提供部42を備える。
【0078】
予測情報提供部42は、導出部32により導出された第1顧客群についての予約曲線110と、導出部32により導出された第2顧客群についての予約曲線110とに基づく予測情報を価格決定装置18へ送信する。予測情報は、第1顧客群についての予約曲線110が示す第1顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移を示す情報と、第2顧客群についての予約曲線110が示す第2顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移を示す情報とを含む。予測情報は、第1顧客群についての予約曲線110と、第2顧客群についての予約曲線110とを合成した合計予約曲線124が示す分析対象時点までの時系列での第1顧客群および第2顧客群の予約総数の推移を示す情報をさらに含む。
【0079】
図12は、第2実施形態の価格決定装置18の機能ブロックを示すブロック図である。価格決定装置18は、データ処理部50と通信部52を備える。データ処理部50は、サービスの提供価格の決定または調整のためのデータ処理を実行する。通信部52は、所定の通信プロトコルにしたがって外部装置と通信する。データ処理部50は、通信部52を介して、ユーザ装置12および需要予測装置14とデータを送受信する。
【0080】
データ処理部50は、現在価格取得部54、目標取得部56、予測情報取得部58、価格決定部60、価格変更情報出力部64を含む。これら複数の機能ブロックの機能はコンピュータプログラム(以下「価格決定プログラム」と呼ぶ。)に実装されてもよい。価格決定プログラムは、記録媒体またはネットワークを介して価格決定装置18のストレージにインストールされてもよい。価格決定装置18のプロセッサ(例えばCPU)は、価格決定プログラムをメインメモリに読み出して実行することにより上記複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0081】
現在価格取得部54は、サービス提供者により現在設定された、対象日(分析対象時点であり、ここではサービス提供日)におけるサービス提供価格を示す価格情報を取得する。ここでのサービス提供価格は、対象日のサービス提供を予約した顧客が支払う金額(宿泊サービスであれば宿泊価格)である。現在価格取得部54は、サービス提供者の価格情報をユーザ装置12、需要予測装置14、または所定のサービス予約サイト(旅行予約ポータルサイト等)のシステムから取得してもよい。現在価格取得部54は、取得した価格情報を価格決定部60に渡す。
【0082】
目標取得部56は、対象日における第1顧客群の予約総数に関して予め定められた目標値(第1顧客群目標値130)を取得する。また、目標取得部56は、対象日における第2顧客群の予約総数に関して予め定められた目標値(第2顧客群目標値132)を取得する。目標取得部56は、第1顧客群目標値130と第2顧客群目標値132を価格決定部60に渡す。第1顧客群目標値130と第2顧客群目標値132は、サービス提供者により定められてもよい。
【0083】
サービス提供者が宿泊施設の場合、目標取得部56は、対象日の部屋数と目標稼働率とをユーザ装置12(または需要予測装置14)から取得し、それらの積を目標値として取得してもよい。なお、価格決定装置18は、サービス提供者ごとの第1顧客群目標値130および第2顧客群目標値132を記憶する目標値記憶部をさらに備えてもよい。目標値取得部74は、価格決定対象のサービスの提供者に対応する第1顧客群目標値130および第2顧客群目標値132を目標値記憶部から取得してもよい。
【0084】
予測情報取得部58は、需要予測装置14から出力された予測情報を取得する。予測情報取得部58は、予測情報を価格決定部60に渡す。
【0085】
価格決定部60は、予測情報が示す第1顧客群に関する対象日までの時系列での予約数の推移と、予測情報が示す第2顧客群に関する対象日までの時系列での予約数の推移とに基づいて、価格決定対象のサービスの提供価格を決定する。価格決定部60は、第1の顧客群に対するサービスの価格と、第2の顧客群に対するサービスの価格の少なくとも一方を決定または変更する。価格決定部60は、決定したサービスの提供価格を示す価格変更情報を価格変更情報出力部64に渡す。価格変更情報出力部64は、価格決定部60により生成された価格変更情報を外部装置へ送信する。
【0086】
価格決定部60は、推定部62を含む。推定部62は、第1実施形態の需要予測装置14の推定部36に対応する。推定部62は、予測情報が示す第1顧客群に関する対象日までの時系列での予約数の推移と、予測情報が示す第2顧客群に関する対象日までの時系列での予約数の推移とに基づいて、予約数に関する推定処理を実行する。価格決定部60は、推定部62による推定結果に基づいて、価格決定対象のサービスの提供価格を決定する。
【0087】
第2実施形態の価格決定システム40の動作を説明する。
ここでは、第1実施形態と同様に、需要予測装置14のユーザは、宿泊施設のレベニューマネージャとし、ユーザ(レベニューマネージャ)は、宿泊サービスの価格を自動で調整させたいこととする。需要予測装置14の導出部32が、第1顧客群についての予約曲線110と、第2顧客群についての予約曲線110とを導出するまでは、同じ動作であるため説明を省略する。
【0088】
需要予測装置14の予測情報提供部42は、第1顧客群についての予約曲線110と、第2顧客群についての予約曲線110とに基づく予測情報を価格決定装置18へ送信する。価格決定装置18の予測情報取得部58は、価格決定装置18から送信された予測情報を取得する。
【0089】
ユーザ装置12または需要予測装置14は、ユーザにより予め定められた第1顧客群目標値130および第2顧客群目標値132を価格決定装置18へ送信する。価格決定装置18の目標取得部56は、第1顧客群目標値130および第2顧客群目標値132を取得する。また、価格決定装置18の現在価格取得部54は、旅行予約サイトのシステムから分析対象宿泊施設における対象日のサービス提供価格(第1顧客群向けの現在価格と第2顧客群向けの現在価格のそれぞれ)を取得する。
【0090】
価格決定装置18の価格決定部60は、予測情報、第1顧客群目標値130、第2顧客群目標値132、第1顧客群向けの現在価格および第2顧客群向けの現在価格に基づいて、第1顧客群向けの新たな価格と第2顧客向けの新たな価格の一方または両方を決定する。価格決定装置18の価格変更情報出力部64は、第1顧客群向けの新たな価格と第2顧客向けの新たな価格の一方または両方を示す価格変更情報を旅行予約サイトのシステムへ送信する。これにより、旅行予約サイトにて顧客に提示される分析対象宿泊施設における第1顧客群向け価格と第2顧客群向け価格の一方または両方を更新する。
【0091】
以下、価格決定装置18による価格決定の例を説明する。
(例1)推定部62は、予測情報が示す第1顧客群に関する分析対象時点までの時系列での予約数の推移に基づいて、分析対象時点での第1顧客群の予約数が第1顧客群目標値130を達成するか否かを判定する。分析対象時点での第1顧客群の予約数が第1顧客群目標値130を達成すると推定される場合、価格決定部60は、第1顧客群に対するサービスの提供価格を維持する一方、第2顧客群に対するサービスの提供価格をそれまでより引き上げることを決定する。
【0092】
例1の態様によると、高ロイヤルティ顧客がサービスを購買する機会をユーザが拡充することを促し、ユーザが、高ロイヤルティ顧客(リピーター等)を重視した施策をとれるよう支援できる。
【0093】
(例2)推定部62は、予測情報に基づいて、分析対象時点での第1顧客群の予約数と分析対象時点での第2顧客群の予約数の合計が合計予約目標値134を達成するか否かを判定する。分析対象時点での第1顧客群の予約数と分析対象時点での第2顧客群の予約数の合計が合計予約目標値134を達成すると推定される場合、価格決定部60は、第1顧客群に対するサービスの提供価格を第1割合増加させ、第2顧客群に対するサービスの提供価格を第1割合より大きい第2割合増加させることを決定する。
【0094】
例えば、価格決定部60は、第1顧客群へのサービス提供価格を現在の2万5千円から3万円に20%引き上げ、第2顧客群へのサービス提供価格を現在の3万円から4万円に33%引き上げることを決定してもよい。例2の態様によると、ユーザが、高ロイヤルティ顧客を優遇しつつ予約数を適切にコントロールできるよう支援できる。
【0095】
(例3)推定部62は、予測情報に基づいて、分析対象時点での第1顧客群の予約数が第1顧客群目標値130を達成するか否かを判定する。また、推定部62は、予測情報に基づいて、分析対象時点での第2顧客群の予約数が第2顧客群目標値132を達成するか否かを判定する。分析対象時点での第1顧客群の予約数が第1顧客群目標値130に未達と推定され、かつ、分析対象時点での第2顧客群の予約数が第2顧客群目標値132を達成すると推定される場合、価格決定部60は、第1顧客群に対するサービスの提供価格をそれまでより下げて、第2顧客群に対するサービスの提供価格をそれまでより上げることを決定する。
【0096】
例3の態様によると、高ロイヤルティ顧客がサービスを購買する機会をユーザが拡充することを促し、ユーザが、高ロイヤルティ顧客(リピーター等)を重視した施策をとれるよう支援できる。
【0097】
(例4)推定部62は、予測情報に基づいて、分析対象時点での第1顧客群の予約数と分析対象時点での第2顧客群の予約数の合計が合計予約目標値134を達成するか否かを判定する。分析対象時点での第1顧客群の予約数と分析対象時点での第2顧客群の予約数の合計が合計予約目標値134に未達と推定される場合、価格決定部60は、第1顧客群に対するサービスの提供価格を維持する一方、第2顧客群に対するサービスの提供価格をそれまでより引き下げる(例えば50%割り引く)ことを決定する。
【0098】
例4の態様によると、全体的に需要が低い場合に、低ロイヤルティ顧客(例えば初回利用者)を呼び込む機会をユーザが拡充することを促し、顧客全体でのロイヤルティ向上を支援できる。
【0099】
なお、サービス提供価格を下げる場合の減額値、および、サービス提供価格を上げる場合の増額値は、各サービス提供者により予め定められ、価格決定装置18に登録されてもよい。また、減額値および増額値は、顧客群ごとに定められてもよい。この場合、価格決定装置18は、各サービス提供者の減額値および増額値を記憶する調整データ記憶部をさらに備えてもよい。価格決定部60は、現在価格取得部54により取得された第1顧客群向けの現在価格および第2顧客群向けの現在価格と、調整データ記憶部に記憶された減額値および増額値とに基づいて、第1顧客群に対するサービスの提供価格と、第2顧客群に対するサービスの提供価格の一方または両方を調整してもよい。
【0100】
第2実施形態の価格決定システム40によると、価格決定装置18は、需要予測装置14による分析対象となったサービスの提供価格を、需要予測装置14による予測情報をもとに自動で調整する。これにより、サービス提供者(例えば宿泊施設のレベニューマネージャ)の負担を低減することができる。また、各顧客群向けの適切な価格設定を支援でき、言い換えれば、各顧客群向けのダイナミックプライシングを支援できる。
【0101】
以上、本開示の第2実施形態を説明した。第2実施形態は例示であり、各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0102】
第1実施形態および第2実施形態の各装置の物理的な個数に制限はない。例えば、第1実施形態および第2実施形態の需要予測装置14の機能は、複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。これら複数の情報処理装置が互いに通信し、システムとして連携することにより各実施形態の需要予測装置14の機能が発揮されてもよい。同様に、第2実施形態の価格決定装置18の機能は、複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。これら複数の情報処理装置が互いに通信し、システムとして連携することにより価格決定装置18の機能が発揮されてもよい。また、需要予測装置14の機能と価格決定装置18機能の少なくとも一方が実装されたコンピュータプログラムがユーザ装置12にインストールされてもよい。この場合、ユーザ装置12は、需要予測装置14の機能と価格決定装置18機能のうち少なくとも一方を発揮してもよい。
【0103】
上述した実施形態および変形例の任意の組み合わせもまた本開示の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0104】
10 通信システム、 12,14 需要予測装置、 18 価格決定装置、 30 予約情報取得部、 32 導出部、 34 支援情報生成部、 38 支援情報提供部、 40 価格決定システム、 60 価格決定部、 64 価格変更情報出力部。