(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004975
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像形成装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240110BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104912
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小森 彩香
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200FA18
2H200GA34
2H200GA49
2H200GB22
2H200JA02
2H200JA29
2H200JB10
2H200JB20
2H200PA03
2H200PA04
2H200PA10
2H200PA29
2H200PA30
2H200PB12
2H200PB25
2H200PB27
2H200PB28
2H270KA04
2H270KA28
2H270LA09
2H270LA24
2H270LA28
2H270LA37
2H270LC04
2H270LC06
2H270MA25
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC05
2H270ZC08
(57)【要約】
【課題】シートに転写されるトナー像の乱れを低減する。
【解決手段】画像形成装置(1)が備えるCPUは、第2シートセンサ(9)がシート(P)の後端を検知してから所定時間が経過したことを契機に、転写ユニット(5)に印加する転写バイアスを、第1転写バイアスから第1転写バイアスよりも絶対値が小さい第2転写バイアスに変更するバイアス変更処理と、温湿度センサ(7)が検知した湿度に応じて、所定時間を変更する時間変更処理と、を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光ドラムと、
前記感光ドラムとの間に転写ニップを形成する転写部材であって、前記感光ドラムに形成されたトナー像を、前記転写ニップを通過するシートに転写する転写部材と、
湿度を検知する湿度センサと、
前記転写部材に対してシート搬送方向の上流側に配置され、シートの後端を検知するシートセンサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記シートセンサがシートの後端を検知してから所定時間が経過したことを契機に、前記転写部材に印加する転写バイアスを、第1転写バイアスから前記第1転写バイアスよりも絶対値が小さい第2転写バイアスに変更するバイアス変更処理と、
前記湿度センサが検知した湿度に応じて、前記所定時間を変更する時間変更処理と、を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記時間変更処理において、前記湿度センサが検知した湿度が高いほど前記所定時間を短い値に変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記時間変更処理において、シートの電気抵抗値が小さいほど前記所定時間を短い値に変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記転写部材によりシートにトナー像を転写している状態で前記転写部材に流れる転写電流の大きさに基づいて、シートの前記電気抵抗値を取得することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
シートの種類とシートの前記電気抵抗値との対応関係を表すテーブル情報を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、
印字ジョブに含まれるシートの種類に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記テーブル情報からシートの前記電気抵抗値を選択することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記時間変更処理において、印字ジョブに含まれるシートの種類に応じて前記所定時間を変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記時間変更処理において、印字ジョブに含まれるシートの幅が大きいほど前記所定時間を短い値に変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記転写部材によってシートに転写されたトナー像を、シートを加熱することによりシートに定着する定着器を備え、
前記制御部は、
印字ジョブに両面印字の設定が含まれる場合、前記転写部材によりシートの第1面にトナー像を転写する第1転写処理と、
前記転写部材によってシートの前記第1面に転写されたトナー像を、前記定着器によりシートの前記第1面に定着する定着処理と、
前記第1面にトナー像が定着されたシートにおける前記第1面とは反対側の第2面に、前記転写部材によりトナー像を転写する第2転写処理と、を実行し、
前記時間変更処理において、前記第2転写処理を実行する場合、前記印字ジョブに片面印字の設定が含まれる場合よりも、前記所定時間を長い値に変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記時間変更処理において、シートの搬送速度が速いほど前記所定時間を短い値に変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記転写部材は、イオン導電性の転写ローラであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記転写部材は、
無端ベルトと、
前記無端ベルトの内周側に設けられ、前記無端ベルトを前記感光ドラムに向けて押圧する転写ローラと、を有する転写ユニットであることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記感光ドラムは、シート搬送方向に沿って複数配置されており、
前記転写ローラは、前記複数の感光ドラムに対向して複数配置されており、
前記制御部は、
前記バイアス変更処理において、前記複数の転写ローラのそれぞれに印加する前記転写バイアスを、前記第1転写バイアスから前記第2転写バイアスに変更し、
前記時間変更処理において、前記複数の転写ローラごとに決定された前記所定時間に対して、前記複数の転写ローラのうちシート搬送方向の下流側に配置される前記転写ローラについて前記所定時間を長くすることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
ブラックのトナー像をシートに転写する前記転写ローラは、前記複数の転写ローラのうち最もシート搬送方向の下流側に配置され、
前記制御部は、
前記時間変更処理において、印字ジョブにモノクロ印字の設定が含まれる場合、前記印字ジョブにカラー印字の設定が含まれる場合よりも、前記所定時間を長い値に変更することを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
感光ドラムと、
前記感光ドラムとの間に転写ニップを形成する転写部材であって、前記感光ドラムに形成されたトナー像を、前記転写ニップを通過するシートに転写する転写部材と、
湿度を検知する湿度センサと、
前記転写部材に対してシート搬送方向の上流側に配置され、シートの後端を検知するシートセンサと、を備える画像形成装置の制御方法であって、
前記シートセンサがシートの後端を検知してから所定時間が経過したことを契機に、前記転写部材に印加する転写バイアスを、第1転写バイアスから前記第1転写バイアスよりも絶対値が小さい第2転写バイアスに変更するバイアス変更ステップと、
前記湿度センサが検知した湿度に応じて、前記所定時間を変更する時間変更ステップと、を実行することを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項15】
前記時間変更ステップにおいて、前記湿度センサが検知した湿度が高いほど前記所定時間を短い値に変更することを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項16】
前記時間変更ステップにおいて、シートの電気抵抗値が小さいほど前記所定時間を短い値に変更することを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項17】
前記転写部材によりシートにトナー像を転写している状態で前記転写部材に流れる転写電流の大きさに基づいて、シートの前記電気抵抗値を取得する取得ステップを実行することを特徴とする請求項16に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項18】
前記画像形成装置は、シートの種類とシートの前記電気抵抗値との対応関係を表すテーブル情報を記憶する記憶部を備え、
印字ジョブに含まれるシートの種類に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記テーブル情報からシートの前記電気抵抗値を選択する選択ステップを実行することを特徴とする請求項16に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項19】
前記時間変更ステップにおいて、印字ジョブに含まれるシートの種類に応じて前記所定時間を変更することを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項20】
前記時間変更ステップにおいて、印字ジョブに含まれるシートの幅が大きいほど前記所定時間を短い値に変更することを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項21】
前記画像形成装置は、前記転写部材によってシートに転写されたトナー像を、シートを加熱することによりシートに定着する定着器を備え、
印字ジョブに両面印字の設定が含まれる場合、前記転写部材によりシートの第1面にトナー像を転写する第1転写ステップと、
前記転写部材によってシートの前記第1面に転写されたトナー像を、前記定着器によりシートの前記第1面に定着する定着ステップと、
前記第1面にトナー像が定着されたシートにおける前記第1面とは反対側の第2面に、前記転写部材によりトナー像を転写する第2転写ステップと、を実行し、
前記時間変更ステップにおいて、前記第2転写ステップを実行する場合、前記印字ジョブに片面印字の設定が含まれる場合よりも、前記所定時間を長い値に変更することを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項22】
前記時間変更ステップにおいて、シートの搬送速度が速いほど前記所定時間を短い値に変更することを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置及び画像形成装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の画像形成装置では、出力印加部は、感光体と転写器との間の転写位置上を転写用紙の先端側部分が搬送されている間に、転写出力を所定の定常転写出力値まで漸次的に増加させる。また、出力印加部は、転写位置上を転写用紙の後端側部分が搬送されている間に、転写出力を非転写時の出力値まで漸次的に減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の画像形成装置では、出力印加部は、転写位置上を転写用紙の先端側部分または後端側部分が搬送されている間に、転写出力を変化させる。このため、転写用紙間の距離が長くなり、印刷のスループットの向上に限界がある。
【0005】
転写用紙間の距離を短くすると、後続の転写用紙の先端側部分に形成されたトナー像にバンディングが生じ易くなる。また、後続の転写用紙の先端側部分に形成されたトナー像にバンディングを生じ難くするために、先行の転写用紙の後端側部分で転写出力を小さくすると、先行の転写用紙に形成されたトナー像にカスレが生じ易くなる。本開示は、シートに転写されるトナー像の乱れを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の画像形成装置は、感光ドラムと、前記感光ドラムとの間に転写ニップを形成する転写部材であって、前記感光ドラムに形成されたトナー像を、前記転写ニップを通過するシートに転写する転写部材と、湿度を検知する湿度センサと、前記転写部材に対してシート搬送方向の上流側に配置され、シートの後端を検知するシートセンサと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記シートセンサがシートの後端を検知してから所定時間が経過したことを契機に、前記転写部材に印加する転写バイアスを、第1転写バイアスから前記第1転写バイアスよりも絶対値が小さい第2転写バイアスに変更するバイアス変更処理と、前記湿度センサが検知した湿度に応じて、前記所定時間を変更する時間変更処理と、を実行する。
【0007】
湿度によってシートの電気抵抗値が変化し、転写部材からシートの面内方向への転写電流の流れ易さが異なるため、シートに転写されるトナー像の乱れの生じ易さも湿度によって異なる。上記構成によれば、制御部は、湿度に応じて、転写部材に印加する転写バイアスを、第1転写バイアスから第2転写バイアスに変更するタイミングを変更する。これにより、湿度に応じて転写部材からシートに適切な大きさの転写電流を流すことができ、シートに転写されるトナー像の乱れを低減することができる。
【0008】
本開示の画像形成装置では、前記制御部は、前記時間変更処理において、前記湿度センサが検知した湿度が高いほど前記所定時間を短い値に変更してもよい。湿度が高いほどシートの電気抵抗値が小さくなり、転写部材からシートの面内方向へ転写電流が流れ易い。よって、湿度が高いほどシートに大きな転写電流が流れ易くなり、シートに転写されるトナー像にバンディングが生じ易い。逆に、湿度が低いほどシートの電気抵抗値が大きくなり、転写部材からシートの面内方向へ転写電流が流れ難い。よって、湿度が低いほどシートに十分大きな転写電流が流れ難く、シートに転写されるトナー像にカスレが生じ易い。
【0009】
上記構成によれば、湿度が高いほど、転写部材に印加される転写バイアスを小さくするタイミングが早くなるため、転写部材からシートに流れる転写電流を小さくすることができる。また、湿度が低いほど、転写部材に印加される転写バイアスを小さくするタイミングが遅くなるため、転写部材からシートに流れる転写電流を大きくすることができる。よって、シートに転写されるトナー像に生じるカスレ及びバンディングを低減することができる。
【0010】
本開示の画像形成装置では、前記制御部は、前記時間変更処理において、シートの電気抵抗値が小さいほど前記所定時間を短い値に変更してもよい。シートの電気抵抗値が小さいほどシートに大きな転写電流が流れ易くなり、シートに転写されるトナー像にバンディングが生じ易い。逆に、シートの電気抵抗値が大きいほどシートに十分大きな転写電流が流れ難くなり、シートに転写されるトナー像にカスレが生じ易い。
【0011】
上記構成によれば、シートの電気抵抗値が小さいほど、転写部材に印加される転写バイアスを小さくするタイミングが早くなる。また、シートの電気抵抗値が大きいほど、転写部材に印加される転写バイアスを小さくするタイミングが遅くなる。このため、シートに転写されるトナー像の乱れを低減することができる。
【0012】
本開示の画像形成装置では、前記制御部は、前記転写部材によりシートにトナー像を転写している状態で前記転写部材に流れる転写電流の大きさに基づいて、シートの前記電気抵抗値を取得してもよい。シートの電気抵抗値が異なる場合、転写部材に流れる転写電流の大きさも異なるため、制御部は、転写電流の大きさに基づいて、シートの電気抵抗値を取得することができる。
【0013】
本開示の画像形成装置は、シートの種類とシートの前記電気抵抗値との対応関係を表すテーブル情報を記憶する記憶部を備え、前記制御部は、印字ジョブに含まれるシートの種類に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記テーブル情報からシートの前記電気抵抗値を選択してもよい。記憶部がシートの種類とシートの電気抵抗値との対応関係を表すテーブル情報を記憶しているため、制御部は、印字ジョブに含まれるシートの種類に対応するシートの電気抵抗値をテーブル情報から選択することができる。
【0014】
本開示の画像形成装置では、前記制御部は、前記時間変更処理において、印字ジョブに含まれるシートの種類に応じて前記所定時間を変更してもよい。シートの種類によってシートの電気抵抗値が異なることがある。上記構成によれば、シートの種類に応じて、転写部材に印加される転写バイアスを小さくするタイミングが変更される。このため、シートの種類に応じてシートに適切な大きさの転写電流を流すことができ、シートに転写されるトナー像の乱れを低減することができる。
【0015】
本開示の画像形成装置では、前記制御部は、前記時間変更処理において、印字ジョブに含まれるシートの幅が大きいほど前記所定時間を短い値に変更してもよい。シートの幅が大きいほどシートの電気抵抗値が小さくなり、転写部材からシートの面内方向へ転写電流が流れ易く、シートに転写されるトナー像にバンディングが生じ易い。逆に、シートの幅が小さいほどシートの電気抵抗値が大きくなり、転写部材からシートの面内方向へ転写電流が流れ難く、シートに転写されるトナー像にカスレが生じ易い。
【0016】
上記構成によれば、シートの幅が大きいほど、転写部材に印加される転写バイアスを小さくするタイミングが早くなるため、転写部材からシートに流れる転写電流を小さくすることができる。また、シートの幅が小さいほど、転写部材に印加される転写バイアスを小さくするタイミングが遅くなるため、転写部材からシートに流れる転写電流を大きくすることができる。よって、シートに転写されるトナー像の乱れを低減することができる。
【0017】
本開示の画像形成装置は、前記転写部材によってシートに転写されたトナー像を、シートを加熱することによりシートに定着する定着器を備え、前記制御部は、印字ジョブに両面印字の設定が含まれる場合、前記転写部材によりシートの第1面にトナー像を転写する第1転写処理と、前記転写部材によってシートの前記第1面に転写されたトナー像を、前記定着器によりシートの前記第1面に定着する定着処理と、前記第1面にトナー像が定着されたシートにおける前記第1面とは反対側の第2面に、前記転写部材によりトナー像を転写する第2転写処理と、を実行し、前記時間変更処理において、前記第2転写処理を実行する場合、前記印字ジョブに片面印字の設定が含まれる場合よりも、前記所定時間を長い値に変更してもよい。
【0018】
片面印字が完了したシートは定着器によって加熱されることにより、シートに含まれる水分量が減少し、シートの電気抵抗値が大きくなる。シートに両面印字が行われる場合、定着器によって加熱されたシートが裏返された後、電気抵抗値が大きくなったシートにトナー像が転写されるため、転写部材からシートの面内方向へ転写電流が流れ難い。
【0019】
上記構成によれば、印字ジョブに両面印字の設定が含まれ、第2転写処理が実行される場合、転写部材に印加される転写バイアスを小さくするタイミングが遅くなるため、転写部材からシートに流れる転写電流を大きくすることができる。よって、シートに転写されるトナー像の乱れを低減することができる。
【0020】
本開示の画像形成装置では、前記制御部は、前記時間変更処理において、シートの搬送速度が速いほど前記所定時間を短い値に変更してもよい。シートの搬送速度に応じて、転写部材に印加される転写バイアスを小さくするタイミングを適切なタイミングとすることができる。このため、シートに転写されるトナー像の乱れを低減することができる。
【0021】
本開示の画像形成装置では、前記転写部材は、イオン導電性の転写ローラであってもよい。画像形成装置が、イオン導電性の転写ローラである転写部材を備えるモノクロプリンタである場合において、シートに転写されるトナー像の乱れを低減することができる。
【0022】
本開示の画像形成装置では、前記転写部材は、無端ベルトと、前記無端ベルトの内周側に設けられ、前記無端ベルトを前記感光ドラムに向けて押圧する転写ローラと、を有する転写ユニットであってもよい。画像形成装置が、無端ベルト及び転写ローラを有する転写ユニットである転写部材を備えるカラープリンタである場合において、シートに転写されるトナー像の乱れを低減することができる。
【0023】
本開示の画像形成装置では、前記感光ドラムは、シート搬送方向に沿って複数配置されており、前記転写ローラは、前記複数の感光ドラムに対向して複数配置されており、前記制御部は、前記バイアス変更処理において、前記複数の転写ローラのそれぞれに印加する前記転写バイアスを、前記第1転写バイアスから前記第2転写バイアスに変更し、前記時間変更処理において、前記複数の転写ローラごとに決定された前記所定時間に対して、前記複数の転写ローラのうちシート搬送方向の下流側に配置される前記転写ローラについて前記所定時間を長くしてもよい。
【0024】
シートが搬送される場合、転写ローラからシートに流れる転写電流は、シート搬送方向とは逆方向に流れる。このため、シート搬送方向の下流側に配置される転写ローラから、シートを介してシート搬送方向の上流側に配置される感光ドラムの表面に転写電流が流れる。よって、シートについてシート搬送方向の下流側の部分よりも上流側の部分に大きな転写電流が流れる。一方、シートにおけるシート搬送方向の下流側の部分に形成されるトナー像にはバンディングが生じ難い。
【0025】
上記構成によれば、制御部は、複数の転写ローラごとに決定された所定時間に対して、複数の転写ローラのうちシート搬送方向の下流側に配置される転写ローラについて所定時間を長くする。これにより、シート搬送方向の下流側に配置される転写ローラに印加される転写バイアスを大きくすることができ、シート搬送方向の下流側で生じるトナー像の乱れを効率的に低減することができる。
【0026】
本開示の画像形成装置では、ブラックのトナー像をシートに転写する前記転写ローラは、前記複数の転写ローラのうち最もシート搬送方向の下流側に配置され、前記制御部は、前記時間変更処理において、印字ジョブにモノクロ印字の設定が含まれる場合、前記印字ジョブにカラー印字の設定が含まれる場合よりも、前記所定時間を長い値に変更してもよい。
【0027】
ブラックのトナー像をシートに転写する転写ローラは、最もシート搬送方向の下流側に配置されるため、当該転写ローラがトナー像を転写するシートの部分に他の転写ローラからの転写電流が流れることはない。よって、ブラックのトナー像にバンディングは生じ難い。
【0028】
また、印字ジョブにモノクロ印字の設定が含まれる場合、ブラックのトナー像のみがシートに転写されるため、他の色のトナー像にバンディングが生じることを考慮する必要がない。したがって、印加される転写バイアスを小さくするタイミングを遅くすることにより、転写ローラからシートに流れる転写電流を大きくすることができ、ブラックのトナー像の乱れを効率的に低減することができる。
【0029】
上記の課題を解決するために、本開示の画像形成装置の制御方法は、感光ドラムと、前記感光ドラムとの間に転写ニップを形成する転写部材であって、前記感光ドラムに形成されたトナー像を、前記転写ニップを通過するシートに転写する転写部材と、湿度を検知する湿度センサと、前記転写部材に対してシート搬送方向の上流側に配置され、シートの後端を検知するシートセンサと、を備える画像形成装置の制御方法であって、前記シートセンサがシートの後端を検知してから所定時間が経過したことを契機に、前記転写部材に印加する転写バイアスを、第1転写バイアスから前記第1転写バイアスよりも絶対値が小さい第2転写バイアスに変更するバイアス変更ステップと、前記湿度センサが検知した湿度に応じて、前記所定時間を変更する時間変更ステップと、を実行する。
【0030】
本開示の画像形成装置の制御方法では、前記時間変更ステップにおいて、前記湿度センサが検知した湿度が高いほど前記所定時間を短い値に変更してもよい。
【0031】
本開示の画像形成装置の制御方法では、前記時間変更ステップにおいて、シートの電気抵抗値が小さいほど前記所定時間を短い値に変更してもよい。
【0032】
本開示の画像形成装置の制御方法では、前記転写部材によりシートにトナー像を転写している状態で前記転写部材に流れる転写電流の大きさに基づいて、シートの前記電気抵抗値を取得する取得ステップを実行してもよい。
【0033】
本開示の画像形成装置の制御方法では、前記画像形成装置は、シートの種類とシートの前記電気抵抗値との対応関係を表すテーブル情報を記憶する記憶部を備え、印字ジョブに含まれるシートの種類に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記テーブル情報からシートの前記電気抵抗値を選択する選択ステップを実行してもよい。
【0034】
本開示の画像形成装置の制御方法では、前記時間変更ステップにおいて、印字ジョブに含まれるシートの種類に応じて前記所定時間を変更してもよい。
【0035】
本開示の画像形成装置の制御方法では、前記時間変更ステップにおいて、印字ジョブに含まれるシートの幅が大きいほど前記所定時間を短い値に変更してもよい。
【0036】
本開示の画像形成装置の制御方法では、前記画像形成装置は、前記転写部材によってシートに転写されたトナー像を、シートを加熱することによりシートに定着する定着器を備え、印字ジョブに両面印字の設定が含まれる場合、前記転写部材によりシートの第1面にトナー像を転写する第1転写ステップと、前記転写部材によってシートの前記第1面に転写されたトナー像を、前記定着器によりシートの前記第1面に定着する定着ステップと、前記第1面にトナー像が定着されたシートにおける前記第1面とは反対側の第2面に、前記転写部材によりトナー像を転写する第2転写ステップと、を実行し、前記時間変更ステップにおいて、前記第2転写ステップを実行する場合、前記印字ジョブに片面印字の設定が含まれる場合よりも、前記所定時間を長い値に変更してもよい。
【0037】
本開示の画像形成装置の制御方法では、前記時間変更ステップにおいて、シートの搬送速度が速いほど前記所定時間を短い値に変更してもよい。
【発明の効果】
【0038】
本開示の一態様によれば、シートに転写されるトナー像の乱れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本開示の実施形態に係る画像形成装置の内部構成を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】(A)は、無端ベルト上に搬送されるシートに転写電流が流れる様子を示す模式図であり、(B)は、無端ベルト上に搬送されるシートに流れる転写電流が感光ドラムにも流れる様子を示す模式図である。
【
図4】
図1に示す画像形成装置が備える転写ユニットへの転写電流の印加タイミングを示すタイミングチャートである。
【
図5】転写ニップ内でシートが存在する部分から感光ドラムの表面に実際に流れる転写電流を示すグラフである。
【
図6】(A)は、第1シート及び第2シートの後端のバンディングの発生率を示すグラフであり、(B)は、第1シート及び第2シートの後端のカスレの発生率を示すグラフである。
【
図7】
図1に示す画像形成装置の処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図7に示す処理のうち、転写電流の変更タイミングを算出する処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図8に示す処理の続きを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
<画像形成装置1の構成>
図1は、本開示の実施形態に係る画像形成装置1の内部構成を示す断面図である。画像形成装置1は、例えば、レーザプリンタであり、シートPの一例である普通紙、薄紙、厚紙、コート紙、樹脂シート、布、はがきまたは封筒等に画像を形成することができる。また、
図1において、画像形成装置1はカラープリンタである。
【0041】
図1に示すように、画像形成装置1は、筐体2と、給送トレイ21と、排出トレイ22と、給送ローラ31と、レジストローラ32と、搬送ローラ33と、排出ローラ34と、を備える。また、画像形成装置1は、印字部4と、転写ユニット5と、定着器6と、温湿度センサ7と、第1シートセンサ8と、第2シートセンサ9と、を備える。
【0042】
給送トレイ21は、筐体2の内部の下方に移動可能に配置されており、複数枚のシートPを収容可能に構成されている。排出トレイ22は、筐体2の上部に設けられており、画像が形成されたシートPを支持する。なお、
図1において給送トレイ21の数は1つであるが、2つ以上であってもよい。
【0043】
給送ローラ31は、給送トレイ21に収容されたシートPを1枚ずつ給送してレジストローラ32に給送する。レジストローラ32は、シートPの先端の方向を揃えた後、シートPを感光ドラム41Yに搬送する。搬送ローラ33は、定着器6に対してシート搬送方向の下流側に配置され、シートPを排出ローラ34に搬送する。シート搬送方向は、後述する搬送部3によってシートPが搬送される方向である。排出ローラ34は、シートPを排出トレイ22に排出する。
【0044】
<印字部4の構成>
印字部4は、4つの感光ドラム41Y,41M,41C,41Kと、4つの現像器42Y,42M,42C,42Kと、露光器44と、を有する。感光ドラム41Y,41M,41C,41Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色に対応し、シート搬送方向の上流側から順に、互いに間隔を隔てて配置されている。つまり、感光ドラムは、シート搬送方向に沿って複数配置されている。感光ドラム41Y,41M,41C,14Kは、図示しない駆動モータからの駆動力により回転駆動され、図示しない帯電器によって一様に帯電される。
【0045】
現像器42Y,42M,42C,42Kはそれぞれ、感光ドラム41Y,41M,41C,41Kの上方に配置されている。現像器42Y,42M,42C,42Kには、各色に対応したトナーが収容されている。現像器42Y,42M,42C,42Kの下端部には、現像ローラ43Y,43M,43C,43Kがそれぞれ配置されている。
【0046】
露光器44は、現像器42Y,42M,42C,42Kの上方に配置されている。露光器44は、感光ドラム41Y,41M,41C,41Kに、画像データに基づくレーザ光Lを照射することにより露光を行う。これにより、シートPに形成される画像データに基づく静電潜像が、感光ドラム41Y,41M,41C,41Kの表面に形成される。
【0047】
現像ローラ43Y,43M,43C,43Kは、感光ドラム41Y,41M,41C,41Kにトナーを供給する。これにより、感光ドラム41Y,41M,41C,41Kの表面に形成された静電潜像がトナー像となる。
【0048】
<転写ユニット5の構成>
転写ユニット5は、感光ドラム41Y,41M,41C,41Kの下方に沿って配置されている。転写ユニット5は、感光ドラム41Y,41M,41C,41Kとの間に転写ニップを形成する。転写ユニット5は、感光ドラム41Y,41M,41C,41Kに形成されたトナー像を、転写ニップを通過するシートPに転写する。転写ユニット5は、駆動ローラ51と、従動ローラ52と、無端ベルト53と、4つの転写ローラ5Y,5M,5C,5Kと、を有する。転写ユニット5は、転写部材の一例である。
【0049】
無端ベルト53は感光ドラム41Y,41M,41C,41Kの表面にあるトナーを、シートPへ転写する部品である。無端ベルト53は、感光ドラム41Y,41M,41C,41Kと接触可能な環状のベルトである。感光ドラム41Y,41M,41C,41Kの外周面は、無端ベルト53の外周面と接触可能である。画像形成時には、シートPが無端ベルト53と感光ドラム41Y,41M,41C,41Kとの間へ搬送される。
【0050】
無端ベルト53は、駆動ローラ51と従動ローラ52との間に掛け渡されている。駆動ローラ51は、無端ベルト53を駆動する。従動ローラ52は、駆動ローラ51の駆動に伴う無端ベルト53の移動にしたがって回転する。
【0051】
転写ローラ5Y,5M,5C,5Kは、互いに間隔を隔てて配置され、無端ベルト53の内周側に設けられている。ブラックのトナー像をシートに転写する転写ローラ5Kは、複数の転写ローラ5Y,5M,5C,5Kのうち最もシート搬送方向の下流側に配置される。
【0052】
転写ローラ5Y,5M,5C,5Kは、対応する感光ドラム41Y,41M,41C,41Kの下方に位置し、感光ドラム41Y,41M,41C,14Kとの間に無端ベルト53を挟んでいる。つまり、転写ローラは、複数の感光ドラムに対向して複数配置されている。転写ローラ5Y,5M,5C,5Kは、無端ベルト53を感光ドラム41Y,41M,41C,14Kに向けて押圧する。転写ローラ5Y,5M,5C,5Kは、イオン導電性の転写ローラである。
【0053】
<定着器6の構成>
定着器6は、転写ユニット5に対してシート搬送方向の下流側に配置され、ヒータ63を含む加熱ローラ61と、加圧ローラ62と、を有する。ヒータ63は、例えばハロゲンヒータである。ヒータ63は、加熱ローラ61を介してシートPを加熱する。定着器6は、転写ユニット5によってシートPに転写されたトナー像を、ヒータ63によりシートPを加熱することによりシートPに定着する。
【0054】
<温湿度センサ7の構成>
温湿度センサ7は、筐体2内の空気の温度及び湿度を検知するセンサである。温湿度センサ7は、筐体2内に設けられる。画像形成装置1は、温湿度センサ7に代えて、筐体2内の空気の湿度を検知する湿度センサを備えてもよく、温度センサ及び湿度センサを備えてもよい。当該温度センサは、筐体2内の空気の温度を検知するセンサである。温湿度センサ7は、湿度センサの一例である。
【0055】
<第1シートセンサ8及び第2シートセンサ9の構成>
第1シートセンサ8及び第2シートセンサ9は、転写ユニット5に対してシート搬送方向の上流側に配置され、シートPの存在を検知するとともに、シートPの後端を検知する。第1シートセンサ8及び第2シートセンサ9は、シートセンサの一例である。第1シートセンサ8は、レジストローラ32に対してシート搬送方向の上流側に配置される。第2シートセンサ9は、レジストローラ32に対してシート搬送方向の下流側に配置される。
【0056】
<画像形成装置1の電気的構成>
図2は、
図1に示す画像形成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
図2に示すように、画像形成装置1は、搬送部3と、通信インターフェース10と、を備える。また、画像形成装置1は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)100と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)104と、を備える。
【0057】
ASIC100は、CPU(Central Processing Unit)101を有する。CPU101は、制御部の一例であり、画像形成装置1の各部に対する全般的な制御を実行する。ASIC100は、搬送部3と、印字部4と、転写ユニット5と、定着器6と、温湿度センサ7と、第1シートセンサ8と、第2シートセンサ9と、通信インターフェース10と、電気的に接続されている。また、ASIC100は、ROM102と、RAM103と、NVRAM104と、電気的に接続されている。
【0058】
ROM102は、記憶部の一例であり、画像形成装置1を制御するための各種制御プログラム及び各種設定等を記憶している。RAM103は、各種制御プログラムが読み出される作業領域として利用されるとともに、画像データ及びラスタデータ等を一時的に記憶する記憶領域として利用される。NVRAM104は、画像形成に関する各種データが予め記憶されている。CPU101は、ROM102から読み出した制御プログラムに基づいて、搬送部3と、印字部4と、転写ユニット5と、定着器6と、を制御する。
【0059】
搬送部3は、給送ローラ31と、レジストローラ32と、搬送ローラ33と、排出ローラ34と、を有する。搬送部3は、図示しない駆動モータにより、給送ローラ31と、レジストローラ32と、搬送ローラ33と、排出ローラ34と、を駆動する。CPU101は、先行のシートPの後端と、後続のシートPの先端と、の間の距離であるシート間隔が、感光ドラム41Y,41M,41C,41Kのそれぞれの1周の長さよりも短くなるように、搬送部3によりシートPを搬送する。
【0060】
通信インターフェース10は、外部端末と通信接続されることにより、外部端末と通信を実行するものである。通信インターフェース10は、外部端末から印字ジョブを受信可能である。印字ジョブは、印字するための画データ、印字に用いるシートPのサイズ及び種類、または、印字する部数等、シートPに画像を印字するために必要な情報を含む。
【0061】
<トナー像にバンディングが生じるメカニズム>
図3(A)は、無端ベルト53上に搬送されるシートPに転写電流Iが流れる様子を示す模式図であり、
図3(B)は、転写ローラ5Yから無端ベルト53及びシートPを介して感光ドラム41Yの表面に、転写電流Iが流れる様子を示す模式図である。
図3(C)は、シート搬送方向D1の下流側にある転写ローラ5Mから上流側にある感光ドラム41Yの表面に転写電流Iが流れる様子を示す模式図である。転写電流Iは、転写ローラ5Y,5M,5C,5KからシートPに流れる電流である。
【0062】
図3(A)に示すように、転写電流Iは、シート搬送方向D1とは反対方向に向かってシートPを流れる。シートPを流れる転写電流Iの電流分布は、シートPの先端PF側で転写電流Iが小さくなるように、かつ、シートPの後端PB側で転写電流Iが大きくなるような分布となる。
【0063】
図3(B)に示すように、方向R1に回転している感光ドラム41Yと、方向R2に回転している転写ローラ5Yと、の間をシートPの後端PBが通過する場合を考える。この場合、転写ニップNPの領域において、シートPがシート搬送方向D1へ搬送されると、転写ニップNPにシートPが存在する部分と、シートPが存在しない部分と、が生じる。転写ニップNPは、感光ドラム41Yと、シートP及び無端ベルト53と、が接触している領域である。
【0064】
シートPが存在しない部分では、感光ドラム41Yと無端ベルト53との間に図示しない空気層が生じる。感光ドラム41Yと無端ベルト53との間に空気層が生じると、空気層が抵抗となり、シートPが存在しない部分の電気抵抗値が高くなる。つまり、シートPが存在しない部分には電荷が流れにくい。
【0065】
一方、シートPが存在する部分では、感光ドラム41Yと無端ベルト53との間にシートPが挟持されているため、空気層は生じにくい。つまり、転写ニップNP内でシートPが存在する部分の電気抵抗値は、シートPが存在しない部分の電気抵抗値よりも低くなる。すなわち、シートPが存在する部分には電荷が流れ易い。
【0066】
よって、転写ニップNP内においてシートPが存在しない部分よりもシートPが存在する部分の方が、転写ローラ5Yから転写電流Iが流れ易くなり、電荷が集中する。また、シートPの電気抵抗値が低いほど転写ニップNP内でシートPが存在する部分の電気抵抗値と、シートPが存在しない部分の電気抵抗値と、の間の差が大きくなるため、転写ニップNP内においてシートPが存在する部分には電荷がより集中する。
【0067】
転写ローラ5YからシートPの後端PBに流れた転写電流Iは、シートPの後端PBから感光ドラム41Yの表面にも流れる。これにより、感光ドラム41Yの表面に流れる転写電流Iが大きくなる、つまり、感光ドラム41Yの表面に電荷が集中するため、感光ドラム41Yの表面電位の変化が大きくなる。
【0068】
感光ドラム41Yの表面電位の変化が大きくなることにより、シートPに転写されるトナー像にバンディングが生じ易くなる。バンディングとは、シートPに大きな転写電流Iが流れ、感光ドラム41Yの表面電位の変化が大きくなることによるトナー像の乱れであり、後続のシートPに形成されるトナー像の一部が他の部分に比べて濃くなることである。バンディングは、シートPに画像が形成される領域にのみ生じる。
図3(B)で説明した現象は、画像形成装置1がモノクロ印字を実行する場合及びカラー印字を実行する場合の両方の場合で発生し、画像形成装置1がモノクロプリンタである場合でも発生する。
【0069】
また、
図3(B)で説明した現象のほか、4つの感光ドラム41Y,41M,41C,41Kと4つの転写ローラ5Y,5M,5C,5Kとを備える場合のバンディングについて
図3(C)を用いて説明する。なお、
図3(C)では説明の便宜上、4つの感光ドラム41Y,41M,41C,41K及び4つの転写ローラ5Y,5M,5C,5Kのうち、感光ドラム41Y,41M及び転写ローラ5Y,5Mのみを図示して説明している。
【0070】
図3(C)に示すように、シート搬送方向D1の下流側にある転写ローラ5MからシートPを介して上流側にある感光ドラム41Yの表面に転写電流Iが流れる。同様に、転写ローラ5CからシートPを介して感光ドラム41Y,41Mの表面に転写電流Iが流れ、転写ローラ5KからシートPを介して感光ドラム41Y,41M,41Cの表面に転写電流Iが流れる。
【0071】
このため、シート搬送方向D1の下流側に位置する感光ドラムの表面よりも上流側に位置する感光ドラムの表面の方が大きな転写電流Iが流れる。よって、シート搬送方向D1の下流側に位置する転写ニップでシートPに転写されるトナー像よりも上流側に位置する転写ニップでシートPに転写されるトナー像の方が、バンディングが生じ易い。また、シートPの電気抵抗値が低いほどシートPに転写電流Iが流れ易く、トナー像にバンディングが生じ易い。
図3(C)で説明した現象は、画像形成装置1がカラー印字を実行する場合のみで発生する。
【0072】
本開示の画像形成装置1は、シートPに転写されるトナー像の乱れを低減することができるものである。画像形成装置1では、トナー像の乱れの一例として、バンディング及びカスレを低減することができる。カスレとは、シートPに十分な転写電流が流れないことによってシートPに十分なトナー像が形成されないことであり、シートPに形成されるトナー像の一部が他の部分に比べて薄くなることである。
【0073】
転写電流Iの供給元が理想的な定電流源であれば、転写電流Iは常に一定に保たれる。しかし、実際は転写電流Iの供給元が理想的な定電流源ではないため、転写ニップにシートPの先端PFが突入したとき、また転写ニップからシートPの後端PBが抜けたときなどに、転写ニップの電気抵抗値が急変して、転写電流Iは一時的に変動する。
【0074】
転写電流Iの変動幅は転写電流Iが小さいほど抑えられるため、シートPの先端PFまたは後端PBが転写ニップを通過するときの転写電流Iを、トナー像をシートPに転写中の転写電流Iよりも小さくすることが好ましい。詳細は後述する。
【0075】
<転写電流の印加タイミング>
図4は、
図1に示す画像形成装置1が備える転写ユニット5への転写電流の印加タイミングを示すタイミングチャートである。CPU101が転写ユニット5に印加する転写電流は、転写バイアスの一例である。また、
図4は、複数の転写ローラ5Y,5M,5C,5Kのうち1つの転写ローラ5Yへの転写電流の印加タイミングを示すタイミングチャートである。
【0076】
図4において、SONは、第2シートセンサ9がシートPの存在を検知している場合に第2シートセンサ9がオンになっていることを示す。また、SOFFは、第2シートセンサ9がシートPの存在を検知していない場合に第2シートセンサ9がオフになっていることを示す。
【0077】
なお、SONは、第1シートセンサ8がシートPの存在を検知している場合に第1シートセンサ8がオンになっていることを示すものであってもよい。また、SOFFは、第1シートセンサ8がシートPの存在を検知していない場合に第1シートセンサ8がオフになっていることを示すものであってもよい。タイミングT1~T14について、タイミングT1~T14の順に時系列的に後のタイミングとなっている。
【0078】
CPU101は、複数の転写ローラ5Y,5M,5C,5Kごとに、
図4に示す印加タイミングで転写電流を印加する。
図4では、CPU101が転写ローラ5Yに転写電流を印加する場合について説明する。IV1~IV3は、転写ローラ5Yに印加する転写電流の電流値である。電流値IV1は電流値IV3よりも絶対値が大きい値であり、電流値IV2は電流値IV1よりも絶対値が大きい値である。
【0079】
図4に示すように、タイミングT1で第2シートセンサ9がオンになる。タイミングT1は、第2シートセンサ9がシートPの先端PFを検知したタイミングである。タイミングT1でCPU101は、第2シートセンサ9がオンであることを示すオン信号を第2シートセンサ9から受信する。タイミングT2で、CPU101は、電流値IV1で転写ローラ5Yへの転写電流の印加を開始する。タイミングT3で、CPU101は、転写ローラ5Yに印加している転写電流を、電流値がIV1である転写電流から電流値がIV2である転写電流に変更する。
【0080】
タイミングT4で、シートPの先端PFが感光ドラム41Yと転写ローラ5Yとの間に形成された転写ニップに到達する。タイミングT5で第2シートセンサ9がオンからオフになる。タイミングT5は、第2シートセンサ9がシートPの後端PBを検知したタイミングである。タイミングT5で第2シートセンサ9からCPU101へのオン信号が停止する。
【0081】
タイミングT6でCPU101は、転写ローラ5Yに印加する転写電流を、電流値がIV2である転写電流から電流値がIV3である転写電流に変更する。電流値がIV2である転写電流は第1転写バイアスの一例であり、電流値がIV3である転写電流は第2転写バイアスの一例である。
【0082】
タイミングT6でCPU101が実行する処理は、バイアス変更処理の一例である。また、タイミングT6でCPU101は、複数の転写ローラ5Y,5M,5C,5Kのそれぞれに印加する転写電流を、電流値がIV2である転写電流から電流値がIV3である転写電流に変更する。タイミングT6の近傍のタイミングで、第2シートセンサ9がオンになり、第2シートセンサ9が後続のシートPの先端PFを検知する。タイミングT6の近傍のタイミングでCPU101は、オン信号を第2シートセンサ9から受信する。
【0083】
タイミングT7で、シートPの後端PBが感光ドラム41Yと転写ローラ5Yとの間に形成された転写ニップから抜ける。タイミングT8でCPU101は、転写ローラ5Yに印加する転写電流を、電流値がIV3である転写電流から電流値がIV1である転写電流に変更する。タイミングT9でCPU101は、転写ローラ5Yに印加する転写電流を、電流値がIV1である転写電流から電流値がIV2である転写電流に変更する。
【0084】
タイミングT10で、後続のシートPの先端PFが感光ドラム41Yと転写ローラ5Yとの間に形成された転写ニップに到達する。タイミングT11で、第2シートセンサ9がオンからオフになる。タイミングT11は、第2シートセンサ9が後続のシートPの後端PBを検知したタイミングである。タイミングT11で第2シートセンサ9からCPU101へのオン信号が停止する。
【0085】
タイミングT12でCPU101は、転写ローラ5Yに印加する転写電流を、電流値がIV2である転写電流から電流値がIV3である転写電流に変更する。タイミングT13で、後続のシートPの後端PBが感光ドラム41Yと転写ローラ5Yとの間に形成された転写ニップから抜ける。タイミングT14でCPU101は、転写ローラ5Yに対する転写電流の印加を停止する。
【0086】
<タイミング間の期間について>
期間P1は、タイミングT1からタイミングT4までの間の時間であり、ROM102に予め記憶されている。期間P1は、感光ドラム41Yが1周するのにかかる時間と所定の微小時間とを合わせた時間になるように予め設定されている。CPU101は、ROM102から期間P1を参照することにより、タイミングT1に基づきタイミングT4を決定する。
【0087】
期間P2は、タイミングT2からタイミングT4までの間の時間であり、ROM102に予め記憶されている。CPU101は、ROM102から期間P2を参照することにより、決定したタイミングT4に基づきタイミングT2を決定する。また、CPU101は、決定したタイミングT4を含む所定期間内のタイミングにタイミングT3を決定する。期間P3は、タイミングT4からタイミングT7までの間の時間であり、シートPが感光ドラム41Yと転写ローラ5Yとの間を通過している時間である。
【0088】
期間P4は、タイミングT5からタイミングT7までの間の時間であり、ROM102に予め記憶されている。期間P4は、第2シートセンサ9がオフになってからシートPの後端PBが感光ドラム41Yと転写ローラ5Yとの間に形成された転写ニップから抜けるまでの間の時間になるように、予め設定されている。CPU101は、ROM102から期間P4を参照することにより、タイミングT5に基づきタイミングT7を決定する。
【0089】
期間P5は、タイミングT5からタイミングT6までの間の時間であり、所定時間の一例である。CPU101は、
図7に示すS2により、タイミングT7に基づきタイミングT6を決定する。
図4に示す通り、タイミングT6は、タイミングT5から期間P5が経過したタイミングである。ここで期間P5を式1で定義し、期間ΔTを式2で定義する。
【0090】
P5=P4+ΔT・・・(式1)
ΔT=VA+VB+VC+VD・・・(式2)
【0091】
期間P4は、タイミングT5からタイミングT7までの時間の長さ、つまり「第2シートセンサ9がオフになってからシートPの後端PBが感光ドラム41Yと転写ローラ5Yとの間に形成された転写ニップから抜けるまでの時間の長さ」である。
【0092】
期間P5は、タイミングT5からタイミングT6までの時間の長さ、つまり「第2シートセンサ9がオフになってから転写ユニット5に印加する転写バイアスを、第1転写バイアスから第1転写バイアスよりも絶対値が小さい第2転写バイアスに変更するまでの時間の長さ」である。
【0093】
タイミングT6はタイミングT7に対して期間ΔTだけずらしたタイミングである。期間ΔTはバンディング及びカスレが発生しにくい値に調整される。期間ΔT、値VA、値VB、値VC及び値VDについては後述する。
【0094】
期間P6は、タイミングT6からタイミングT8までの間の時間であり、ROM102に予め記憶されている。CPU101は、ROM102から期間P6を参照することにより、タイミングT6に基づきタイミングT8を決定する。期間P7は、タイミングT10からタイミングT13までの間の時間である。期間P7は、後続のシートPが感光ドラム41Yと転写ローラ5Yとの間を通過している時間になるように予め設定されている。
【0095】
なお、CPU101は、タイミングT8で転写ローラ5Yに印加する転写電流を、電流値がIV3である転写電流から電流値がIV1である転写電流に変更するか否かの判定を、タイミングT7までに実行する。このとき、CPU101は、タイミングT8,T9,T12,T14を決定する。
【0096】
以上により、CPU101は、タイミングT5で第2シートセンサ9がシートPの後端PBを検知してから期間P5が経過したことを契機に、タイミングT6で転写ユニット5に印加する転写バイアスを、第1転写バイアスから第1転写バイアスよりも絶対値が小さい第2転写バイアスに変更する。なお、CPU101は、第1シートセンサ8がシートPの後端PBを検知してから期間P5が経過したことを契機に、転写ユニット5に印加する転写バイアスを、第1転写バイアスから第2転写バイアスに変更してもよい。
【0097】
ただし、CPU101は、第1シートセンサ8によるシートPの後端PBの検知よりも、第2シートセンサ9によるシートPの後端PBの検知に基づいて転写バイアスを変更する方が好ましい。これは、第2シートセンサ9が、レジストローラ32によって先端PFの方向が揃えられたシートPに対して検知を行うため、第1シートセンサ8の検知よりも第2シートセンサ9の検知の方が、精度が高いためである。
【0098】
<感光ドラムの表面に流れる転写電流>
図5は、転写ニップ内でシートPが存在する部分から感光ドラムの表面に実際に流れる転写電流を示すグラフである。
図5において、タイミングTY4~TY7の期間は
図4に示す期間P3に対応する。タイミングTY6はタイミングT6に対応する。つまり、タイミングTY6でCPU101は、転写ローラ5Yに印加する転写電流を、電流値がIV2である転写電流から電流値がIV3である転写電流に下げている。
【0099】
同様に、タイミングTM4~TM7,TC4~TC7,TK4~TK7は期間P3に対応し、タイミングTM6,TC6,TK6はタイミングT6に対応する。例えば、タイミングTM6でCPU101は、転写ローラ5Mに印加する転写電流を、電流値がIV2である転写電流から電流値がIV3である転写電流に下げている。なお、
図5においては、後続のシートPが搬送されていないものとする。
【0100】
図5に示すように、タイミングTY4でシートPの先端PFが感光ドラム41Yと転写ローラ5Yとの間に形成された転写ニップNPに到達すると、転写ニップNP内でシートPから感光ドラム41Yの表面に転写電流I1が流れ始める。タイミングTY7でシートPの後端PBが転写ニップNPから抜けるとき、転写ニップNP内でシートPから感光ドラム41Yの表面に流れる転写電流I1が大きくなる。転写電流I1は、転写ニップNP内でシートPから感光ドラム41Yの表面に流れる電流とする。
【0101】
なお、タイミングTY6でCPU101は、転写ローラ5Yに印加する転写電流を、電流値がIV2である転写電流から電流値がIV3である転写電流に下げている。これにも関わらず、転写電流I1の大きさがタイミングTY6で下がらずにタイミングTY7で大きくなっている理由を以下に説明する。
【0102】
図3(B)に示すように、転写ニップNP内でシートPが存在する部分が小さくなっているが、転写ローラ5YからシートPに流れる転写電流の大きさが変わらない。このため、転写ニップNP内でシートPが存在する部分、より詳細には、シートPの後端PBが転写ニップNPを抜ける瞬間に感光ドラム41Yに電荷が集中する。これにより、シートPが存在する部分から感光ドラム41Yに流れる転写電流I1の大きさが大きくなる。
【0103】
また、タイミングTM4でシートPの先端PFが感光ドラム41Mと転写ローラ5Mとの間に形成された転写ニップに到達すると、転写ニップ内でシートPから感光ドラム41Mの表面に転写電流I2が流れ始める。タイミングTM7でシートPの後端PBが転写ニップから抜けるとき、転写ニップ内でシートPから感光ドラム41Mの表面に流れる転写電流I2が大きくなる。転写電流I2は、転写ニップ内でシートPから感光ドラム41Mの表面に流れる電流とする。
【0104】
同様に、タイミングTC4で感光ドラム41Cの表面に転写電流I3が流れ始め、タイミングTC7で感光ドラム41Cの表面に流れる転写電流I3が大きくなる。タイミングTK4で感光ドラム41Kの表面に転写電流I4が流れ始め、タイミングTK7で感光ドラム41Kの表面に流れる転写電流I4が大きくなる。転写電流I3,I4はそれぞれ、転写ニップ内でシートPから感光ドラム41C,41Kの表面に流れる電流とする。
【0105】
図3(C)で説明した現象により、
図5に示すように、タイミングTY7での転写電流I1の大きさは、タイミングTM7での転写電流I2の大きさよりも大きくなる。また、タイミングTM7での転写電流I2の大きさは、タイミングTC7での転写電流I3の大きさよりも大きくなる。さらに、タイミングTC7での転写電流I3の大きさは、タイミングTK7での転写電流I4の大きさよりも大きくなる。
【0106】
<バンディング及びカスレの発生率>
図6(A)は、第1シート及び第2シートの後端のバンディングの発生率を示すグラフであり、
図6(B)は、第1シート及び第2シートの後端のカスレの発生率を示すグラフである。第1シート及び第2シートは、互いに種類が異なるシートPである。第1シートの体積抵抗率は、第2シートの体積抵抗率よりも高く、第1シートの表面抵抗率は、第2シートの表面抵抗率よりも低い。
【0107】
図6(A)及び(B)の横軸は、タイミングT6とタイミングT7との間の期間ΔT[ms]を示す。
図6(A)の縦軸は、第1シート及び第2シートの後端のバンディングの発生率[%]を示し、
図6(B)の縦軸は、第1シート及び第2シートの後端のカスレの発生率[%]を示す。
【0108】
図6(A)に示すように、期間ΔTによって、第1シートの後端のバンディングの発生率と、第2シートの後端のバンディングの発生率と、が異なる。また、
図6(B)に示すように、期間ΔTによって、第1シートの後端のカスレの発生率と、第2シートの後端のカスレの発生率と、が異なる。よって、シートPの種類によってタイミングT6を変更することが好ましい。詳細は後述する。
【0109】
<バンディング及びカスレの生じ易さ>
以下の表1は、環境、シートの種類及び期間ΔTの値と、バンディングやカスレの生じ易さと、の関係を示す表である。表1に示す第1シート~第3シートは互いに種類が異なるシートPである。また、表1に示すバンディングは、生じ易さを示したものであり、×、△、△+及び○の順に、バンディングが生じ易いことを示す。表1に示す後端のカスレは、シートPに転写されるトナー像に生じたカスレの幅[mm]を示すものである。
【0110】
【0111】
表1に示すように、高温高湿の環境では常温常湿の環境に比べて、バンディングが生じ易く、カスレが生じ難い。また、常温常湿の環境では高温高湿の環境に比べて、バンディングが生じ難く、カスレが生じ易い。
【0112】
<画像形成装置1の処理>
図7は、
図1に示す画像形成装置1の処理を示すフローチャートである。
図8は、
図7に示す処理のうち、転写電流の変更タイミングを算出する処理を示すフローチャートである。
図9は、
図8に示す処理の続きを示すフローチャートである。CPU101は、複数の転写ローラ5Y,5M,5C,5Kごとに、
図7~
図9に示す処理を実行する。
【0113】
図7に示すように、CPU101は、印字ジョブが連続印字の指示を含むものであるか否かを判定する(S1)。連続印字は、複数枚のシートPへの印字である。CPU101は、印字ジョブが連続印字の指示を含まないものであると判定した場合(S1でNO)、転写ユニット5に印加する転写電流の変更タイミングであるタイミングT6を、
図4に示すタイミングT7に設定する(S3)。そして、CPU101は、S4の処理に進む。
【0114】
CPU101は、印字ジョブが連続印字の指示を含むものであると判定した場合(S1でYES)、タイミングT6を算出する(S2)。CPU101は、タイミングT7に対して、値VA、値VB、値VC及び値VDを加えた値となるタイミングを、タイミングT6として算出する。これにより、CPU101は、値VA、値VB、値VC及び値VDに応じて、タイミングT6を変更することにより、期間P5を変更する。S2の処理について
図8を用いて具体的に説明する。
【0115】
図8に示すように、CPU101は、ROM102からシートPの搬送速度を参照し、VAの値を変更する(S21)。シートPの搬送速度は、搬送部3によりシートPが搬送される速度であり、ROM102に記憶されている。また、以下の表2に示すように、ROM102には、シートPの搬送速度とVAの値とが対応付けられて記憶されている。
【0116】
【0117】
CPU101は、ROM102から参照したシートPの搬送速度が第1速度である場合、VAの値を-35に設定する。CPU101は、ROM102から参照したシートPの搬送速度が第2速度である場合、VAの値を-25に設定する。第1速度は第2速度よりも速い速度である。CPU101は現在のVAの値を、設定したVAの値に変更する。
【0118】
CPU101は、VAの値を変更した後、印字ジョブに含まれるシートPの種類の設定に基づき、ROM102からVBの値を参照する(S22)。以下の表3及び表4に示すように、ROM102には、シートPの種類とVBの値とが対応付けられて記憶されている。
【0119】
【0120】
CPU101は、印字ジョブに含まれるシートPの種類が、薄いシートである場合、VBの値として-5を参照する。CPU101は、印字ジョブに含まれるシートPの種類が、通常の厚みのシートまたは厚いシートである場合、VBの値として0を参照する。CPU101は、印字ジョブに含まれるシートPの種類が、より厚いシートである場合、VBの値として5を参照する。
【0121】
なお、以下の表4に示すように、CPU101は、印字ジョブに含まれるシートPの種類が光沢紙または封筒である場合、表3において参照したVBの値を無視して、VBの値として5を参照する。
【0122】
【0123】
次に、CPU101は、印字ジョブにカラー印字の設定が含まれるか否かを判定する(S23)。CPU101は、印字ジョブにカラー印字の設定が含まれると判定した場合(S23でYES)、S26の処理に進む。CPU101は、印字ジョブにカラー印字の設定が含まれない、つまり、印字ジョブにモノクロ印字の設定が含まれると判定した場合(S23でNO)、VBの値が正の値であるか否かを判定する(S24)。
【0124】
CPU101は、VBの値が正の値であると判定した場合(S24でYES)、S26の処理に進む。CPU101は、VBの値が0以下の値であると判定した場合(S24でNO)、VBの値を0に設定する(S25)。そして、CPU101は現在のVBの値を、参照または設定したVBの値に変更する(S26)。
【0125】
CPU101は、VBの値を変更した後、
図9に示すように、温湿度センサ7が検知した温度及び湿度に基づき、VCの値を参照する(S27)。以下の表5に示すように、ROM102には、温度TE及び湿度HUと、VCの値と、が対応付けられて記憶されている。
【0126】
【0127】
CPU101は、温湿度センサ7が検知した湿度HUが0%以上30%未満である場合、VCの値として5を参照する。CPU101は、温湿度センサ7が検知した湿度HUが30%以上60%未満である場合、VCの値として0を参照する。CPU101は、温湿度センサ7が検知した湿度HUが60%以上である場合、VCの値として-5を参照する。
【0128】
なお、表5において各温度範囲でVCの値が同じになっているが、各温度範囲でVCの値が異なっていてもよい。この場合、CPU101は、温湿度センサ7が検知した温度に基づき、VCの値を変更することになる。
【0129】
次に、CPU101は、印字ジョブにカラー印字の設定が含まれるか否かを判定する(S28)。CPU101は、印字ジョブにカラー印字の設定が含まれると判定した場合(S28でYES)、S31の処理に進む。CPU101は、印字ジョブにカラー印字の設定が含まれない、つまり、印字ジョブにモノクロ印字の設定が含まれると判定した場合(S28でNO)、VCの値が正の値であるか否かを判定する(S29)。
【0130】
CPU101は、VCの値が正の値であると判定した場合(S29でYES)、S31の処理に進む。CPU101は、VCの値が0以下の値であると判定した場合(S29でNO)、VCの値を0に設定する(S30)。そして、CPU101は現在のVCの値を、参照または設定したVCの値に変更する(S31)。
【0131】
CPU101は、VCの値を変更した後、印字位置ごとに現在のVDの値を、設定するVDの値に変更する(S32)。印字位置は、転写ローラ5Y,5M,5C,5Kのそれぞれに対応して、シートPに印字される位置を示す。以下の表6に示すように、ROM102には、転写ローラ5Y,5M,5C,5Kのそれぞれに対応する印字位置と、VDの値と、が対応付けられて記憶されている。
【0132】
【0133】
CPU101は、S2の処理を実行している対象の転写ローラが転写ローラ5Yまたは転写ローラ5Mである場合、VDの値を0に設定する。CPU101は、S2の処理を実行している対象の転写ローラが転写ローラ5Cまたは転写ローラ5Kである場合、VDの値を5に設定する。
【0134】
CPU101は、転写電流の変更タイミングであるタイミングT6を算出した後、現在のタイミングT6を、
図7に示すS2により算出したタイミングT6に変更する(S4)。CPU101は、タイミングT6を変更した後、シートPに対して印字を実行する(S5)。以上により、CPU101は、温湿度センサ7が検知した湿度に応じて、期間P5を変更する時間変更処理を実行する。
【0135】
湿度によってシートPの電気抵抗値が変化し、転写ユニット5からシートPの面内方向への転写電流の流れ易さが異なるため、シートPに転写されるトナー像へのカスレ及びバンディングの生じ易さも湿度によって異なる。上記構成によれば、CPU101は、湿度に応じて、転写ユニット5に印加する転写バイアスを、第1転写バイアスから第2転写バイアスに変更するタイミングを変更する。
【0136】
これにより、湿度に応じて転写ユニット5からシートPに適切な大きさの転写電流を流すことができ、シートPに転写されるトナー像に生じるカスレを低減することができる。また、シートPに適切な大きさの転写電流が流れることにより、感光ドラム41Y,41M,41C,41Kの表面電位の変化を抑えることができ、シートPに転写されるトナー像に生じるバンディングを低減することができる。
【0137】
また、画像形成装置1が、無端ベルト53及び転写ローラ5Y,5M,5C,5Kを有する転写ユニット5である転写部材を備えるカラープリンタである場合において、シートPに転写されるトナー像に生じるカスレ及びバンディングを低減することができる。
【0138】
S27において、表5に示すように、温湿度センサ7が検知した湿度が高いほど、VCの値が小さい値になるため、タイミングT6も小さい値になり、期間P5が短い値になる。よって、S4において、CPU101は、温湿度センサ7が検知した湿度が高いほど期間P5を短い値に変更する。
【0139】
湿度が高いほどシートPの電気抵抗値が小さくなり、転写ユニット5からシートPの面内方向へ転写電流が流れ易い。よって、湿度が高いほどシートPに大きな転写電流が流れ易くなり、シートPに転写されるトナー像にバンディングが生じ易い。逆に、湿度が低いほどシートPの電気抵抗値が大きくなり、転写ユニット5からシートPの面内方向へ転写電流が流れ難い。よって、湿度が低いほどシートPに十分大きな転写電流が流れ難く、シートPに転写されるトナー像にカスレが生じ易い。
【0140】
上記構成によれば、湿度が高いほど、転写ユニット5に印加される転写電流を小さくするタイミングが早くなるため、転写ユニット5からシートPに流れる転写電流を小さくすることができる。また、湿度が低いほど、転写ユニット5に印加される転写電流を小さくするタイミングが遅くなるため、転写ユニット5からシートPに流れる転写電流を大きくすることができる。よって、シートPに転写されるトナー像に生じるカスレ及びバンディングを低減することができる。
【0141】
S22において、表3及び表4に示すように、印字ジョブに含まれるシートPの種類に応じて、VBの値が異なるため、タイミングT6も異なる値になる。よって、印字ジョブに含まれるシートPの種類に応じて、期間P5が変更される。したがって、S4において、CPU101は、印字ジョブに含まれるシートPの種類に応じて期間P5を変更する。
【0142】
シートPの種類によってシートPの電気抵抗値が異なることがある。上記構成によれば、シートPの種類に応じて、転写ユニット5に印加される転写電流を小さくするタイミングが変更される。このため、シートPの種類に応じてシートPに適切な大きさの転写電流を流すことができ、シートPに転写されるトナー像に生じるカスレ及びバンディングを低減することができる。
【0143】
また、S22において、表3に示すように、シートPの厚みが薄いほど、VBの値が小さい値になるため、タイミングT6も小さい値になり、期間P5が短い値になる。よって、S4において、CPU101は、シートPの厚みが薄いほど期間P5を短い値に変更する。
【0144】
シートPの厚みが薄いほど、シートPの後端PBに転写電流が集中し易いため、シートPに転写されるトナー像にバンディングが生じ易い。逆に、シートPの厚みが厚いほど、シートPから感光ドラムの表面に転写電流が流れ易く、シートPに流れる転写電流が小さくなり易いため、シートPに転写されるトナー像にカスレが生じ易い。上記構成によれば、湿度が高いほど期間P5を短い値に変更する場合と同様に、シートPに転写されるトナー像に生じるカスレ及びバンディングを低減することができる。
【0145】
S21において、表2に示すように、シートPの搬送速度が第1速度である場合のVAの値は、シートPの搬送速度が第2速度である場合のVAの値よりも小さい値であるため、タイミングT6も小さい値になり、期間P5が短い値になる。よって、第1速度が第2速度よりも速い速度であることから、S4において、CPU101は、シートPの搬送速度が速いほど期間P5を短い値に変更する。
【0146】
シートPの搬送速度に応じて、転写ユニット5に印加される転写電流を小さくするタイミングを適切なタイミングとすることができる。このため、シートPに転写されるトナー像に生じるカスレ及びバンディングを低減することができる。
【0147】
S32において、表6に示すように、複数の転写ローラ5Y,5M,5C,5Kのうち、シート搬送方向の下流側に配置される転写ローラ5C,5KについてVDの値が大きい値になる。このため、タイミングT6も大きい値になり、期間P5が長い値になる。
【0148】
よって、CPU101は、S4において、複数の転写ローラ5Y,5M,5C,5Kごとに決定された期間P5に対して、複数の転写ローラ5Y,5M,5C,5Kのうちシート搬送方向の下流側に配置される転写ローラ5C,5Kについて期間P5を長くする。ここで、CPU101が値を長くする対象とする期間P5は、S31の処理が完了した時点で定まる期間P5である。
【0149】
シートPが搬送される場合、転写ローラ5Y,5M,5C,5KからシートPに流れる転写電流は、シート搬送方向とは逆方向に流れる。このため、シート搬送方向の下流側に配置される転写ローラ5C,5Kから、シートPを介してシート搬送方向の上流側に配置される感光ドラム41Y,41Mの表面に転写電流が流れる。よって、シートPについてシート搬送方向の下流側の部分よりも上流側の部分に大きな転写電流が流れる。一方、シートPにおけるシート搬送方向の下流側の部分に形成されるトナー像にはバンディングが生じ難い。
【0150】
上記構成によれば、CPU101は、複数の転写ローラ5Y,5M,5C,5Kごとに決定された期間P5に対して、複数の転写ローラ5Y,5M,5C,5Kのうちシート搬送方向の下流側に配置される転写ローラ5C,5Kについて期間P5を長くする。これにより、シート搬送方向の下流側に配置される転写ローラ5C,5Kに印加される転写電流を大きくすることができ、シート搬送方向の下流側で生じるカスレを効率的に低減することができる。
【0151】
また、他の転写ローラ5Y,5M,5Kに比べて、転写ローラ5Cがトナー像を転写するシートPの部分においてカスレが最も生じ易い。また、転写ローラ5Cがトナー像を転写するシートPの部分においてバンディングは生じ難い。これは、感光ドラム41Y,41M,41C,41Kのうち、感光ドラム41Cよりもシート搬送方向下流には、感光ドラム41Kしか配置されておらず、転写ローラ5Cがトナー像を転写するシートPの部分に流れる転写電流が小さいためである。よって、転写ローラ5Cに印加される転写電流を小さくするタイミングは遅い方が好ましい。
【0152】
また、転写ローラ5Mがトナー像を転写するシートPの部分においてバンディングが生じ易く、カスレが生じ難い。これは、転写ローラ5Mがトナー像を転写するシートPの部分には、転写ローラ5C,5Kからの転写電流が流れるためである。よって、転写ローラ5Mに印加される転写電流を小さくするタイミングは早い方が好ましい。
【0153】
さらに、転写ローラ5Yがトナー像を転写するシートPの部分においてもバンディングが生じ易い。これは、転写ローラ5Yがトナー像を転写するシートPの部分には、転写ローラ5M,5C,5Kからの転写電流が流れるためである。ただし、トナー像がイエローである場合、バンディングが認識し難い。
【0154】
S23でNOの場合、つまり、印字ジョブにモノクロ印字の設定が含まれる場合、S24及びS25によりVBの値が負であるとき、VBの値が0に設定される。よって、VBの値が負であるとき、印字ジョブにモノクロ印字の設定が含まれる場合、印字ジョブにカラー印字の設定が含まれる場合よりも期間P5が長い値になる。
【0155】
したがって、S4において、CPU101は、印字ジョブにモノクロ印字の設定が含まれる場合、印字ジョブにカラー印字の設定が含まれる場合よりも、期間P5を長い値に変更する。
【0156】
ブラックのトナー像をシートに転写する転写ローラ5Kは、最もシート搬送方向の下流側に配置されるため、転写ローラ5Kがトナー像を転写するシートPの部分に他の転写ローラからの転写電流が流れることはない。よって、ブラックのトナー像にバンディングは生じ難い。
【0157】
また、印字ジョブにモノクロ印字の設定が含まれる場合、ブラックのトナー像のみがシートPに転写されるため、他の色のトナー像にバンディングが生じることを考慮する必要がない。したがって、印加される転写電流を小さくするタイミングを遅くすることにより、転写ローラ5KからシートPに流れる転写電流を大きくすることができ、ブラックのトナー像に生じるカスレを効率的に低減することができる。
【0158】
<変形例1>
CPU101は、S4において、シートPの電気抵抗値が小さいほど期間P5を短い値に変更してもよい。シートPの電気抵抗値が小さいほどシートPに大きな転写電流が流れ易くなり、シートPに転写されるトナー像にバンディングが生じ易い。逆に、シートPの電気抵抗値が大きいほどシートPに十分大きな転写電流が流れ難くなり、シートPに転写されるトナー像にカスレが生じ易い。
【0159】
上記構成によれば、シートPの電気抵抗値が小さいほど、転写ユニット5に印加される転写電流を小さくするタイミングが早くなる。また、シートPの電気抵抗値が大きいほど、転写ユニット5に印加される転写電流を小さくするタイミングが遅くなる。このため、シートPに転写されるトナー像に生じるカスレ及びバンディングを低減することができる。
【0160】
また、CPU101は、転写ユニット5によりシートPにトナー像を転写している状態で転写ユニット5に流れる転写電流の大きさに基づいて、シートPの電気抵抗値を取得してもよい。具体的に以下に説明する。画像形成装置1は、転写ローラ5Y,5M,5C,5Kのそれぞれに流れる転写電流を検出する図示しない転写電流検出回路を備える。当該転写電流検出回路は、検出した転写電流をCPU101に出力する。
【0161】
CPU101は、上記転写電流検出回路が検出した転写電流の大きさからシートPの電気抵抗値を算出することにより、シートPの電気抵抗値を取得する。シートPの電気抵抗値が異なる場合、転写ユニット5に流れる転写電流の大きさも異なるため、CPU101は、転写電流の大きさに基づいて、シートPの電気抵抗値を取得することができる。
【0162】
さらに、ROM102は、シートPの種類とシートPの電気抵抗値との対応関係を表すテーブル情報を記憶してもよい。この場合、CPU101は、印字ジョブに含まれるシートPの種類に基づいて、ROM102に記憶されている上記テーブル情報からシートPの電気抵抗値を選択する。ROM102がシートPの種類とシートPの電気抵抗値との対応関係を表す上記テーブル情報を記憶しているため、CPU101は、印字ジョブに含まれるシートPの種類に対応するシートPの電気抵抗値を上記テーブル情報から選択することができる。
【0163】
<変形例2>
CPU101は、S4において、印字ジョブに含まれるシートPの幅が大きいほど期間P5を短い値に変更してもよい。シートPの幅が大きいほどシートPの電気抵抗値が小さくなり、転写ユニット5からシートPの面内方向へ転写電流が流れ易く、シートPに転写されるトナー像にバンディングが生じ易い。逆に、シートPの幅が小さいほどシートPの電気抵抗値が大きくなり、転写ユニット5からシートPの面内方向へ転写電流が流れ難く、シートPに転写されるトナー像にカスレが生じ易い。
【0164】
上記構成によれば、シートPの幅が大きいほど、転写ユニット5に印加される転写電流を小さくするタイミングが早くなるため、転写ユニット5からシートPに流れる転写電流を小さくすることができる。また、シートPの幅が小さいほど、転写ユニット5に印加される転写電流を小さくするタイミングが遅くなるため、転写ユニット5からシートPに流れる転写電流を大きくすることができる。よって、シートPに転写されるトナー像に生じるカスレ及びバンディングを低減することができる。
【0165】
<変形例3>
CPU101は、印字ジョブに両面印字の設定が含まれる場合、転写ユニット5によりシートPの第1面にトナー像を転写する第1転写処理を実行する。また、CPU101は、転写ユニット5によってシートPの第1面に転写されたトナー像を、定着器6によりシートPの第1面に定着する定着処理を実行する。
【0166】
CPU101は、定着処理を実行した後、搬送部3によりシートPを図示しない両面搬送経路に沿って搬送することによりシートPを裏返し、搬送部3により感光ドラム41YにシートPを搬送する。両面搬送経路は、定着器6と搬送ローラ33との間から分岐し、給送ローラ31と第1シートセンサ8との間に合流する経路である。
【0167】
CPU101は、シートPの第1面にトナー像が定着されたシートPにおける第1面とは反対側の第2面に、転写ユニット5によりトナー像を転写する第2転写処理を実行する。CPU101は、上記第2転写処理を実行する場合、S4において、印字ジョブに片面印字の設定が含まれる場合よりも、期間P5を長い値に変更する。
【0168】
片面印字が完了したシートPは定着器6によって加熱されることにより、シートPに含まれる水分量が減少し、シートPの電気抵抗値が大きくなる。シートPに両面印字が行われる場合、定着器6によって加熱されたシートPが裏返された後、電気抵抗値が大きくなったシートPにトナー像が転写されるため、転写ユニット5からシートPの面内方向へ転写電流が流れ難い。
【0169】
上記構成によれば、印字ジョブに両面印字の設定が含まれ、第2転写処理が実行される場合、転写ユニット5に印加される転写電流を小さくするタイミングが遅くなるため、転写ユニット5からシートPに流れる転写電流を大きくすることができる。よって、シートPに転写されるトナー像に生じるカスレを低減することができる。
【0170】
<変形例4>
画像形成装置1は、モノクロプリンタであってもよい。この場合、画像形成装置1の印字部4は、1つの感光ドラム41Kと、1つの現像器42Kと、露光器44と、を有する。また、画像形成装置1は、転写ユニット5に代えて、1つの転写ローラ5Kを備える。1つの転写ローラ5Kは、転写部材の一例である。
【0171】
画像形成装置1が、イオン導電性の転写ローラ5Kである転写部材を備えるモノクロプリンタである場合において、シートPに転写されるトナー像に生じるカスレ及びバンディングを低減することができる。
【0172】
<変形例5>
S1でYESの場合、CPU101は、印字を実行する対象が最終ページのシートPであるか否かを判定してもよい。CPU101は、印字を実行する対象が最終ページのシートPであると判定した場合、S3の処理に進む。CPU101は、印字を実行する対象が最終ページのシートPではないと判定した場合、S2の処理に進む。最終ページのシートPに対して印字が実行される場合、最終ページのシートPに転写されるトナー像にはバンディングが生じない。このため、転写ユニット5に印加される転写電流を小さくするタイミングを変更する必要がない。
【0173】
〔ソフトウェアによる実現例〕
画像形成装置1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置のCPU101としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0174】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記実施形態で説明した各機能が実現される。
【0175】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0176】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本開示の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0177】
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる構成についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0178】
1 画像形成装置
5 転写ユニット
5Y、5M、5C、5K 転写ローラ
6 定着器
7 温湿度センサ
8 第1シートセンサ
9 第2シートセンサ
41Y、41M、41C、41K 感光ドラム
53 無端ベルト
101 CPU
P シート
P5 期間