(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004976
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
A01B 41/00 20060101AFI20240110BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A01B41/00
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104913
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠治
(72)【発明者】
【氏名】西野 栄治
【テーマコード(参考)】
2B034
2B043
【Fターム(参考)】
2B034AA07
2B034BA10
2B034BB02
2B034BC06
2B034BD02
2B034BD07
2B034BG01
2B034BG05
2B034HA06
2B034HB02
2B034HB12
2B034HB27
2B043AA04
2B043AB20
2B043BA02
2B043BB08
2B043BB20
2B043DA04
2B043DA17
2B043DB18
2B043DC03
2B043EA23
2B043EA32
2B043EB05
2B043EB08
2B043EB09
2B043EB15
2B043EB17
2B043EB18
2B043EC02
2B043EC14
2B043EC15
2B043ED12
(57)【要約】
【課題】本発明は、撮像手段とGPSの受信部装置と慣性計測装置IMUで、自動走行を可能とし、撮像手段で目標物を確認した位置で、自動で作業を行う作業機。目標物を生育不良の苗に登録すれば、まびき苗ロボットに、目標物を害虫に登録すれば、害虫駆除ロボットに対応する。
【解決手段】
電動作業機に撮像手段とGPSの受信部装置と慣性計測装置IMUで、自車の位置検出と目標物体の検出をさせ、作業部には吸引装置と送風装置のユニット、あるいは超音波発生装置と超音波を受ける照射板が上下移動するユニットを取り付けることで、生育不良の苗の除去や害虫駆除を自動で行うことを可能とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部に補機バッテリー(120)を配備し、補機バッテリー(120)の後方にメインバッテリー(130)と、外扇(141)を装備する電動モータ(140)を前後方向に並列状態で備え、
電動モータ(140)の車体後方側にHST(油圧無断変速装置)(150)を備え、電動モータ(140)より動力入力し、HST(150)の出力軸より、走行系の車軸(190)、油圧ポンプ(200)、エアーコンプレッサー(210)へ動力分配し、エアーコンプレッサー(210)が、HST(150)、走行系の車軸(190)、油圧ポンプ(200)よりも地上高で高い位置に配備され、エアーコンプレッサー(210)を利用した作業機装置(220)の本体部がHST(150)、走行系の車軸(190)、油圧ポンプ(200)よりも地上高で低い位置に配備されている作業機。
【請求項2】
センシング用の撮像手段とGPSの受信装置(310)と慣性計測装置IMU(320)を装備し自動走行を可能とし、エアーコンプレッサー(210)を利用した吸引ノズル(350)と送風用配管(380)を設け、あらかじめ設定された位置、またはセンシング用の撮像手段で目標物を検出した位置で、吸引ノズル(350)と送風用配管(380)を作動させる請求項1の作業機。
【請求項3】
センシング用の撮像手段で、目標物の上下丈、幅丈を算出し、目標物が設定された大きさに以外の場合は、吸引ノズル(350)と送風用配管(380)を作動させない制御とした請求項2の作業機。
【請求項4】
センシング用の撮像手段とGPSの受信装置(310)と慣性計測装置IMU(320)を装備し自動走行を可能とし、超音波発生装置(291)と超音波を受ける照射板(500)が上下移動できるユニットを構成し、あらかじめ設定された位置、またはセンシング用の撮像手段で目標物を検出した位置で、超音波発生装置(291)から超音波を照射板(500)に向けて照射し、その後、照射板(500)を回転させることで、目標物を遠心力で粉砕する請求項1の作業機。
【請求項5】
センシング用の撮像手段は予め検出対象の物体を撮影して登録する機能と、走行時に前記検出対象の物体と類似する形状を判定する機能を有し、
走行時に前記類似する形状の物体を検出するごとに自動走行を停止すると共に、前記物体を粉砕する請求項4記載の作業機。
【請求項6】
圃場のマッピング図(610)を備え、マッピング図(610)は所定の作業を実施する停止距離の間隔を予め設定及び変更できる機能を有しており、前記設定に基づいて停止距離の間隔の変更を自動で行いながら作業することができる請求項4の作業機。
【請求項7】
メインバッテリー(130)と、外扇(141)をフード内に装備する電動モータ(140)仕様と、エンジン(650)とラジエータファン(680)をフード内に装備するエンジン仕様のいずれかを配備可能に構成し、前記電動モータ仕様と前記エンジン仕様のいずれも、フード(110)の前方のグリルの網部(111)から外部に熱が排出される構成である請求項1の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業において、圃場から生育不良の苗や害虫を除去する自動走行を可能とする作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
畝に所定の間隔で植生する苗から一定間隔で苗を切断・除去し、あるいは生育不良の苗を検出し、切断・除去する間引き用走行車両が知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の従来技術の、まびき作業機は切断刃を使用して苗を切るものであるが、切断した苗が圃場に散乱する状態であった。この対応として、苗をエアー吸引する構成が考案されるが、吸引をかけた場合、周辺の土も同時に吸引され、エアーコンプレッサーの故障となり対応する構成が必要である。
【0005】
本発明では、エアーコンプレッサーを地上高で高い位置、作業部を地上高で低い位置とすることで、重力落下を利用することで、土の吸引によるエアーコンプレッサーの故障に対応できる。また撮像手段を利用することで、害虫を検出することも可能であり、害虫駆除としても使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、次の技術手段により解決される。
【0007】
機体の前部に補機バッテリー120を配備し、補機バッテリー120の後方にメインバッテリー130と、外扇141を装備する電動モータ140を前後方向に並列状態で備え、電動モータ140の車体後方側にHST(油圧無断変速装置)150を備え、電動モータ140より動力入力し、HST150の出力軸より、走行系の車軸190、油圧ポンプ200、エアーコンプレッサー210へ動力分配し、エアーコンプレッサー210が、HST150、走行系の車軸190、油圧ポンプ200よりも地上高で高い位置に配備され、エアーコンプレッサー210を利用した作業機装置220の本体部がHST150、走行系の車軸190、油圧ポンプ200よりも地上高で低い位置に配備されている。
【0008】
第二の発明は、次の技術手段により解決される。
【0009】
センシング用の撮像手段とGPSの受信装置310と慣性計測装置IMU320を装備し自動走行を可能とし、エアーコンプレッサー210を利用した吸引ノズル350と送風用配管380を設け、あらかじめ設定された位置、またはセンシング用の撮像手段で目標物を検出した位置で、吸引ノズル350と送風用配管380を作動させる。
【0010】
第三の発明は、次の技術手段により解決される。
【0011】
センシング用の撮像手段で、目標物の上下丈、幅丈を算出し、目標物が設定された大きさに以外の場合は、吸引ノズル350と送風用配管380を作動させない制御とした。
【0012】
第四の発明は、次の技術手段により解決される。
【0013】
センシング用の撮像手段とGPSの受信装置310と慣性計測装置IMU320を装備し自動走行を可能とし、超音波発生装置291と超音波を受ける照射板500が上下移動できるユニットを構成し、あらかじめ設定された位置、またはセンシング用の撮像手段で目標物を検出した位置で、超音波発生装置291から超音波を照射板500に向けて照射し、その後、照射板500を回転させることで、目標物を遠心力で粉砕する。
【0014】
第五の発明は、次の技術手段により解決される。
【0015】
センシング用の撮像手段は予め検出対象の物体を撮影して登録する機能と、走行時に前記検出対象の物体と類似する形状を判定する機能を有し、走行時に前記類似する形状の物体を検出するごとに自動走行を停止すると共に、前記物体を粉砕する。
【0016】
第六の発明は、次の技術手段により解決される。
【0017】
圃場のマッピング
図610を備え、マッピング
図610は所定の作業を実施する停止距離の間隔を予め設定及び変更できる機能を有しており、前記設定に基づいて停止距離の間隔の変更を自動で行いながら作業する。
【0018】
第七の発明は、メインバッテリー130と、外扇141をフード内に装備する電動モータ140仕様と、エンジン650とラジエータファン680をフード内に装備するエンジン仕様のいずれかを配備可能に構成し、前記電動モータ仕様と前記エンジン仕様のいずれも、フード110の前方のグリルの網部111から外部に熱が排出する構成である。
【発明の効果】
【0019】
第一の発明で、外扇141付きの電動モータ140を利用しているため、電動モータ140とメインバッテリー130の熱ごもりが無い。またHST150から走行系の車軸190、油圧ポンプ200、エアーコンプレッサー210と直線的に動力を伝えることで伝達ロスのない構成をとり、下方を外気に開放した構成が取れるため、HST150以後の機構も熱ごもりの発生は無い。さらには、エアーコンプレッサー210を作業機装置220よりも上方に配備したことで、吸引時に塵埃による破損が発生しない構成も可能とした。
【0020】
第二の発明で、本機は自動運転が可能であり、目標物を生育不良の苗とした場合では、生育の良い苗を傷めず、生育不良の苗のみ引き抜くことが可能である。
【0021】
第三の発明で、生育状態を正しく判断することで、まびきする苗の選択を確実に行うことができる。
【0022】
第四と第五と第六の発明により、害虫駆除用として作業車を使用することが可能となる。害虫は動きがあるため所定の位置ごとに駆除作業を行いながらも、該当物を画像認識で発見ごとに対応することで、駆除効果を上げることが可能となる。
【0023】
第七の発明で、本発明は、小型の電動モータを複数配備した構成ではなく、電動モータ140の1個のモータからHST150を得て動力を分散しているため、
図14のごとく電動モータ140をエンジン650に変更してもHST150以後の動力系統を変更することなく配備できる。また、フード110内の熱ごもりも電動モータ140とエンジン650仕様で同じ位置の前方のグリルの網部111から排熱でき、構成上も互換性が取り易い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態における、作業機の右側面図
【
図2】本発明の実施形態における、作業機の左側面の断面図
【
図3】本発明の実施形態における、作業機の左側面前方の断面図
【
図4】本発明の害虫対応時における、作業機の下方からの斜視図
【
図5】本発明の実施形態における、右側からの内部図
【
図6】本発明の実施形態における、前方作業部、吸引ノズル周辺図
【
図11】害虫を超音波照射、粉砕している状態の左側面の断面図
【
図12】害虫対応ユニットを装備した状態の遠隔操作装置の設定図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明を説明する。
【0026】
図1~
図14に示す作業機は、本実施形態の作業機の一例を示すものである。
【0027】
本発明の動力の伝達の流れについて説明する。
【0028】
図1及び
図2に示すように、本機の前方部分のフード110の中には、機体の前方に左右方向で補機バッテリー120と、その後方に前後方向でメインバッテリー130と、このメインバッテリー130の電力を利用して機体本体、作業機を作動させるための動力源となる電動モータ140をメインバッテリー130の横に前後方向で備えている。
【0029】
電動モータ140は、モータの後端に外扇141を備えており、モータ軸と連動しており、モータが作動中は外扇141により発生する風でモータ、補機バッテリー120、メインバッテリー130が空冷される。熱を持った風はフード110の前方のグリルの網部111や、フード前方下方から外部に排出される。またフード110は電動モータ140、補機バッテリー120、メインバッテリー130を完全に覆うことで雨や洗車における防滴対応を行う構成であり、適度な防塵対応も施されている。
【0030】
電動モータ140は、
図2のごとく出力軸を車体の前後方向の後方側とし、その後方に備えるHST150に電動している。伝達方法は、ベルトにより各軸に備えられたプーリーを繋ぐことであっても良いし、電動モータ140とHST軸を直結するも良い。電動モータ140の軸と、HST150の入力と出力軸は、ベルト駆動の場合では軸心は並行方向であり、動力機構としては直列的で曲がる事無く動力を伝えるためロスが少なく、コンパクトな配置を形成できる。
【0031】
電動モータ140の出力軸を車体の後方にしてHST150に繋ぐ構成をとることで、エンジン650構成とも互換性が容易にとれやすくなっている。重量のあるメインバッテリー130と電動モータ140をフード110に配備し、エンジン650に近しい重量とすることで、電動モータ140仕様とエンジン仕様のバランス差が出ないように構成される。BMSとインバーター160をフード110から外し、座席170後方に配備することで、メンテナンス性と熱ごもりに対応することが可能となる。
【0032】
電動モータ140は固定回転数で連続回転するも、必要な動力に合わせて回転が変動できるインバーター制御でも良い。本発明実施例では、本機の後方部分にBMSとインバーター160を備えており、本機の制御部180の指令に対して、BMSとインバーター160を介して、電動モータ140の回転数を制御するシステムである。システム制御では、本機が走行を停止し、作業機も停止の状態では、電動モータ140の回転数はHST150の基準油圧を発生できる範囲まで低下させることが可能である。
【0033】
図14のようにエンジン650を動力にする場合は、メインバッテリー130、電動モータ140、BMSとインバーター160を入れ替わる形態となり、補機バッテリー120はエンジン用のバッテリーの役目をなすため、両仕様の構成上の変化は小さい。メインバッテリー130の配置位置にマフラー660、エンジン650の後方にラジエータ670とラジエータファン680を配備し、電動モータ140の配備時と同じで、フード110の後方下方から吸引し、ラジエータ670、エンジン650、補機バッテリー120を冷却し、フード110の前方のグリルの網部111や、フード前方下方から外部に熱が排出される構成である。
【0034】
本発明のHST150以後の機構について説明する。
【0035】
電動モータ140の回転を直結で受ける方がHST150としては動力ロスは少ないが、電動モータ140を前部のフード110内に納め、電動モータ140に付く外扇141を利用して熱を排気するためには、高さ方向でフード110の中央部位に配備する必要がある。またHST150の燃ごもり対応として、外気に放熱させてやる必要がある。専用ファン等を設ければ効果的であるが、コンパクトな構成をとるため、HST150を本体フレームの下方で外気に対して開放した取り付けを行う構成で対応している。
【0036】
このため電動モータ140と、HST150は上下位置でずれがあるため、ベルト141にて動力を伝達している。しかし直列的に繋がっているため、動力ロスは少ない。同様に
図3に示すように、走行系の車軸190、油圧ポンプ200と、エアーコンプレッサー210と直列的に配備しているため、作業機も含めて動力ロスの少ない構成を取っている。
【0037】
このように動力系は電動モータ140からエアーコンプレッサー210に至るまで直列的に並び、熱籠り対応として、上下左右に電動ベルトにて配備する構成となっている。また、エアーコンプレッサー210は作業機220よりも上方に配備したことで、吸引時に塵埃による破損が発生しない構成も可能としている。
【0038】
本発明の走行について説明する。
【0039】
本機の走行と作業機の作動はHST150により行われることで、動力源については電動モータ140でもエンジン650でも可能である。電動モータ140、あるいはエンジン650からの出力軸の位置は同じHST入力部位であり、この入力軸からの動力によりHST150が作動する。HST150では油圧を利用し所望する回転数で出力でき、走行速度を変更することが可能である。
【0040】
本実施例では、走行の速度の変更の他、後方に作業機を備えた場合はPTO230の出力回転の変更も可能としている。同様に各部の作動用の回転数変更にも利用することは可能である。
【0041】
また本機は
図4に示すように4輪操舵ができる構造であり、HST150からの出力軸の回転を受け、各ギアーと連動軸群240、ブレーキシステム250により、前右、前左、後右、後左の4輪の回転数を個別で変更でき、前後、旋回走行、斜め移動も可能である。
【0042】
本発明の油圧ポンプ200について説明する。
【0043】
前記のHST150の出力軸から回転動力を得て油圧ポンプ200を作動させ、油圧アクチュエータ260を作動させる。油圧アクチュエータ260までは油圧用の配管270で繋がっている。本発明においては電動モータ280で作動する実施例であるが、小型の油圧モータを利用する構成も可能である。
【0044】
本発明のエアーコンプレッサー210について説明する。
【0045】
HST150の出力を介して、座席170下にエアーコンプレッサー210を配備している。本機の中では各作業機の上部にあたる位置に配備することで、吸引時に塵埃やごみ類を重量選別することが可能である。作業機との配備、機能については後述の項に記載する。
【0046】
作業機の装着について説明する。
【0047】
本発明においては、前方では苗を吸引する作業機220、また
図5に示すように機体の中央下部ではスクリミンゴガイ等の害虫を駆除する作業機290、機体の後方では散布機等を配備することが可能である。
【0048】
自動運転と手動運転について説明する。
【0049】
本機は、ロボット作業機100であり、あらかじめ設定登録された内容で自動運転が可能である。またリモコンによる遠隔操作も行うこともできる。
【0050】
本機は転倒対応としてロプス300が座席170後方に配備されており、またロプス300の上方先端にはGPSの受信装置310と、本機の位置を確認、補正するための慣性計測装置IMU320も備えてある。この受信部を利用することで、本機は自車位置を正確に把握でき、自動運転を可能としている。
【0051】
また乗車しての手動運転も可能である。本機の中央部には人が運転できるように、座席170とステアリング171が備えられており、自動運転の切り替えを行うことによって、人が座席しての運転も可能である。
【0052】
実施例で示す本機の大きさは、人が座席して手動運転する場合の形態も示したため、大型化した図で示しているが、完全なロボット型、遠隔操作型に限れば、機体の大きさは、畝1条分の幅程度の大きさまで小型化することができる。
【0053】
運転席ディスプレー330操作部について説明する。
【0054】
手動運転する場合の対応として、バッテリーの残容量、車速、主変速、副変速の設定、GNSSの感度と自車の走行ラインと目標ラインの状況、エンジン仕様の場合は燃料ゲージが表示され、ディスプレー330上で設定や各レバー、ダイヤルで条件設定できる。これらと同機能の表示と設定は、リモコンでも可能である。
【0055】
作業系操作装置340について説明する。
【0056】
運転席の右側の操作装置340を利用して、作業機を操作することが可能である。操作装置340には大型のディスプレーが配備され、撮像手段A410、B411、C412、D413による撮像の表示がなされ、作業機の操作や設定が可能である。装備される作業機に応じて、ディスプレーの設定画面や、操作レバーや操作スイッチの役割が変更される。詳細の設定画面については、後述に記載する。
【0057】
不良苗の吸引スシテムの構造、まびき苗作業について説明する。
【0058】
図6のように本機の前部に、吸引ノズル350が配備される。吸引ノズル350は圃場にある発育不良の苗を吸引風を利用して吸引ノズル内に吸い込むものである。圃場にある苗の位置に適切に移動して吸引をするために、吸引ノズル350は上下、左右方向に移動できる構造となっている。
【0059】
上下移動は油圧シリンダ260にて行う。また左右移動は電動モータ280によるもので、左右にわたるレール内を移動する。さらには、前後移動は電動モータ350により対応される。
【0060】
吸引ノズル350の先には下端の側面に取り付けられた仕切り板351があり、その仕切り板の下端はノズル部の最下端部より下方に位置しており、隣り合う株を吸引しないように守る役割を果たす部材である。吸引ノズル350の移動部位周辺は吸引用ホース360とし、動きに対して柔軟に対応できるものとする。
【0061】
吸引ノズル350の吸引力は、座席下に配備されているエアーコンプレッサー210によって発生する。エアーコンプレッサー210は、HST150からの出力軸よりベルトを介して動力を得ており、回転力を利用して空気を圧縮する装置であり内部タンクを配備しており常に一定値の減圧状態にある。
【0062】
本発明提案における作業機220の苗吸引システムでは、吸引ノズル350とエアーコンプレッサー210を繋ぐ吸引配管211と360の間に、苗取りした不良苗を収納する苗タンク370を備えたことが特徴である。各図において苗タンク370の上面を削除して見えやすくしているが、実際は密閉できるタンクでありタンク内は減圧状態にある。減圧状態の苗タンク370には、吸引ノズル側の吸引用ホース360とエアーコンプレッサー側の吸引配管211が距離を開けて配備されている。タンク内は密閉のため、エアーコンプレッサー側の配管で吸引をかけると、タンク内が減圧となり、吸引ノズル側の吸引用ホース360より吸引する。
【0063】
吸引配管211を苗タンク370に対して垂直方向、地上に対して上下方向の取り付け構造をとることにより、吸引ノズル350から吸引された不良の苗は、吸引ノズル側の配管を通じて引き込まれ、不良の苗や同時に吸引した土等を苗タンク370内に落下させることが可能となり、不良の苗や土が除去された減圧された吸引風は、エアーコンプレッサー側の吸引配管211に入りエアーコンプレッサー210の減圧タンク内に吸引されるが、塵埃をエアーコンプレッサー210内に吸い込むことがないようになっている。エアーコンプレッサー210を通過した空気は、加圧空気となってエアーコンプレッサー210から排出される。排出された空気は送風用配管380に流れる。送風用配管380には、エアーダンパとエアーフィルタ装置390が配備されている。送風用配管380は機体の前部まで伸びており、吸引ノズル近傍に配備される。送風用配管からは空気が吹き出される。この送風用配管も吸引ノズルシステムに連結されており、吸引ノズルと一定間隔を保持して、吸引ノズルの動きに連動し、上下左右の動きをする。
【0064】
この送風用配管からの送風を利用することで、不良の苗400の周辺苗401、402を押さえ込み、対象とする苗を吸引しやすくすることができる。近傍の苗で発育が良好な葉は、発育不良の苗に覆いかぶさることもあり、送風によるシステムが無い場合は、覆いかぶさった葉を誤って吸引してしまい、目標としていない良好な苗を誤吸引する場合がある。なお送風は、前述のエアーダンパとエアーフィルタ装置390のエアーダンパ391の開閉によって、吸引のON、0FFや吸引力調整も可能とする。エアーダンパ391とエアーフィルタ装置390には外気へのエアー開放口392もあり逃がし弁の役目も行い、送風を必要としていない場合で吸引ノズル350の吸引のみ作動が続いた場合は、外気へのエアー開放口392を開き、ここから送風することでエアーコンプレッサー210の性能を維持させる。
【0065】
苗吸引スシテムの安全制御として、吸引ノズルから苗タンクまでの間の配管内に圧力センサー352を設け、苗搬送中に高い圧力が長く継続した場合、制御部180は苗が詰まったと判断し、吸引ノズルから苗タンクまでの間に設けられたエアーダンパ353を断続開閉することで圧力に変化を与えることでつまり対応する。
【0066】
また苗タンク370にはセンサー371を設け、一定以上不良苗が溜まった場合は満量の合図を行いタンク内がつまることを防止する。
【0067】
吸引ノズル350、苗タンク370、エアーコンプレッサー210の配置関係においては、吸引ノズル350、苗タンク370、エアーコンプレッサー210の順番で高くなって行く構成をとることで、吸引された苗や土をタンク内に落とし、エアーコンプレッサーに持ち込まないようにできる。距離的には短い方が望ましいが、本機の構成上、エアーコンプレッサー210は座席下が有効な位置である。
【0068】
またエアーコンプレッサー210に変わり、大型のターボ式の送風機であれば、吸引力もあり、苗ごとファン内に吸い込み、ファンの吐出側に苗タンクを設置することも可能である。
【0069】
苗の撮像手段による確認について説明する。
【0070】
本機の前部には苗を撮像するための撮像手段A410が下方に向けて配置されている。吸引ノズル350と、苗との間の距離を測定する測定装置として利用する他に、苗の大きさを計測できるようになっている。
【0071】
所定位置に吸引ノズル350が引きあがっている状態では、撮像手段A410も上方にあがっており、この位置における苗の画像を登録してあり、色彩判別により画像面積を算出し大きさを推測するものである。吸引ノズル350の移動があると、この移動距離に合わせて再計算する。
【0072】
撮像手段B411、C412、D413は、本機の前部で、撮像手段Aの上部に配備される。この撮像手段B411、C412、D413の画像と撮像手段A410の画像より、あらかじめ登録された画像データと比較して苗の丈を算出する。撮像手段C412、D413は、苗の広がりを検出すると同時に、両隣の畝も検出しており、慣性計測装置IMU320の補助と障害物検出を同時に行っている。
【0073】
制御部180は、撮像手段A410、B411、C412、D413による撮像データに基づき除去すべき苗を判定し、さらに、その撮像データに基づき、その除去すべき苗の前後方向のずれ、左右方向のずれを判定する手段である。
【0074】
本機のまびき苗の設定について説明する。
【0075】
本機の右横には、まびきシステムの操作装置340が配備されている。本機は自動運転を行うロボットシステムのため、あらかじめ初期設定し、この設定のとおり作動するものである。
【0076】
まず本機のスタート位置を決定する。
図7に示すように、操作装置340のディスプレーにあるスタートスイッチを押すと、この位置を基準として登録する。GNSS310と慣性計測装置IMU320を利用して自車位置として緯度経度を確認し登録する。また本機の前後方向を一本の軸として、この軸が本機の方向として認識され、緯度経度に対して向いている方向も認識される。
【0077】
株間の設定について説明する。
図7の中段に記載しているように、株間設定344のスイッチを押し、株間の設定を行う。+の増スイッチ345と、-の減スイッチ346を押すことで、数値が変更になる。目標となる値になるとセットスイッチ343を押して登録する。
【0078】
一株目の設定について説明する。一株目設定のスイッチ347を押すと、撮像手段A410の画像が操作装置340のディスプレーの中の画像表示部348に表示される。画像は拡大された苗で、概ね真上からの画像が映し出される。画像表示部348には、基準枠349が設けられておりこの範囲内に該当する苗をセットすべく、前述にある前進341、後進342のスイッチを押すことで、吸引ノズル350が前後に移動して調整を行う。
【0079】
左右検出については、撮像手段A410、B411、C412、D413による撮像データに基づき、苗が中央にくるように電動モータ280にて、吸引ノズル350が自動設定される。
【0080】
その後、
図7の下段に記載したように、画像にはまびきする基準となる苗の大きさや、苗の圃場における配置角度等のサンプル画像が順次表示される。先ほど実際に映し出された画像を重ね合わせて表示することも可能である。映し出される画像でOKとNGの代表例が出るので、343、345、346のスイッチで選択しセットする。判断基準として間違いが無い場合は、OK349Aスイッチを押すことで最終的な基準を登録する。
【0081】
まびき苗の自動判断について説明する。
【0082】
苗の大きさは、運転者が席に座って視認確認しても判断は難しいところがある。この状態の場合の対応について
図8で示す。設定した株間のピッチで該当する苗430を判断し、その前後1株を含めた3株で判断する方法440をとる。3株の大きさを画像で大きさを判定し、最も生育の良い大きな苗を残し残りの2株を吸引し除去する制御である。この制御で設定苗から実際に間引いた苗が異なった場合は、測定基準をリセットさせる、そこから次回の株間を計測する制御もとれる。
【0083】
こうして次の株間まで走行をするが、次の株間までに苗があった場合は、その大きさにかかわらず、
図8の441の部分のようにすべて吸引除去するものである。この自動制御で、設定された株間に適合したまびきを行うことが可能となる。
【0084】
送風を利用した該当苗の吸引について説明する。
【0085】
吸引ノズル350の先には、仕切り板351があり、周辺の苗401、402をかき分けて該当する苗400を覆いながら吸引する構成になっているが、苗の生育が良いと、葉の伸びや硬さもあり、生育不良の小さい苗をかき分けて吸引することは容易ではない。そこでエアーコンプレッサー210を利用して、吸引該当の苗400の前後にあたる苗を風の力で押し寄せて、該当する苗400を吸引しやすい状態にすることで確実に対応することができる。送風用配管380は、吸引ノズル350の吸引を発生させたエアーコンプレッサー210からの排気風であり、圧力のある送風が可能である。近距離では圃場の土を吹き飛ばすことも可能であり、小さな苗を押し寄せることは十分可能であり、ファン等の送風機よりも確実に対応することができる。
【0086】
エアーコンプレッサー210からの送風は、前述のエアーダンパとエアーフィルタ装置390のエアーダンパ391の開閉によって送風圧や風量も調節可能である。例えば該当する吸引苗が周囲の苗が近傍にあり、取り出し難い場合は送風圧を低めに設定し、風量や圧力を押さえながら対応することで該当以外の苗のみを押し寄せることが可能となる。自動制御では、吸引する苗の近傍に苗があれば、自動で送風を弱める制御とすることで対応できる。吸引ノズル350の吸引圧力についてもエアーダンパ353を自動調整することで、圧力調整することが可能である。
【0087】
害虫駆除の対応について説明する。
【0088】
本発明の作業機は、吸引ノズル350とノズルに繋がる配管360、苗タンク370とエアーコンプレッサーまでの配管211のまびきユニットを取り外し、害虫駆除ユニット290を取り付けることで、害虫駆除の作業機に変更できる。
【0089】
害虫駆除ユニットについて説明する。本発明の実施例で対応する害虫は、稲を食するスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)である。
図10と11は本機の断面図である。スクミリンゴガイを誘引する材料510が中央に配備され、旋回可能な円形上の照射板500が土台である。この照射板500の中央には上下に伸縮するアクチエータ520があり、そのアクチュエータ520ごと回転させるモータ530を上部に備えている。照射板500は、放射状に仕切りプレート540があり、照射板500に旋回がおこると、プレート上で内部におかれたものは、放射状の仕切りプレート540に打ち付けられ、遠心力で外周方向へ勢いよく飛ばされる仕組みである。
【0090】
また別形態では、照射板500の中央にある誘引する材料の部位は、直流電流の不電極を備えることもある。スクミリンゴガイは負電極に寄ってくるという性質があり、これを利用するものである。
【0091】
使用手順に基づきシステムについて説明する。本機は撮像手段A410、B411、C412、D413により該当するスクミリンゴガイを検出する。スクミリンゴガイの形状を登録してあり、類似する物体の検出があった場合に本機の走行を停止させる。停止後に照射板500は
図9、10のように下方に降ろされ圃場内に接地する。その後、所定時間はその状態で本機の運転は停止する。照射板500には誘引する材料510が中央にあり、スクミリンゴガイは照射板500の内部に入ってくる。所定時間経過後には本機のアクチエータ520を起動させ、照射板500を上部に引き上げる。
【0092】
図5のように照射板500の上方は中央に穴のあるタンク290であり、タンクの上面には超音波発生機291が設置されている。
図11のように照射板500が上部に上がると超音波が発出される。スクミリンゴガイは超音波には弱く死滅させることも可能である。所定時間 超音波をあてることで、スクミリンゴガイの多くは活動ができない状態にあるが、完全に死滅させるために照射板500を高速回転で回し、遠心力により外周292に衝突させることで圧死させる。外周292はスクミリンゴガイの数個分の高さであるため、幾度かの衝突後、破損した状態でさらにタンクの外壁293に衝突させ、残骸となった状態でタンク290に堆積する。
【0093】
この状態を撮像手段A410、B411、C412、D413の検出ごとに繰り返すか、所定時間、所定距離ごとに繰り返すことでスクミリンゴガイ駆除を自動で行う。
【0094】
自動運転の経路について説明する。
【0095】
本発明の作業機は、ロボット作業機であり自動運転可能である。
図12のように、あらかじめ圃場の形状と緯度経度を重ねわせたマッピング
図610を登録しておく。圃場ごとにこれらが登録してあり、該当する圃場データを読み込むことで、圃場の形状と作業経路で自動運転の基礎データとすることが可能である。
【0096】
害虫は特定の位置に繁殖する場合があり、自動運転時も重点的に作業する位置を設定することで、確実な害虫対応をすることができる。
【0097】
図13に示すように、毎年のように特定の範囲にスクミリンゴガイは発生する。そこで遠隔用の操作装置より圃場の位置ごとに駆除の度合いを変更する指定を行う。本発明では、駆除の度合いは本機の停止距離の間隔である。「通常」613の設定では3m間隔で停止を行うが、駆除の度合いを高める「高駆除」611では、1.5m間隔で停止する。逆に駆除の度合いをゆるめ作業を迅速に行う場合は「低駆除」612では5m間隔とする。
【0098】
これ以外に撮像手段A410、B411、C412、D413で、スクミリンゴガイと思われる形状を認識した場合に停止するオート機能614がある。このオート機能614がONされた場合は、前述の611、612、613の駆除度合いに優先する。したがって低駆除設定で5m間隔で停止する場合でも、撮像手段でスクミリンゴガイと思われる形状を検出した場合は5m未満でも停止をして駆除対応を行う。
【0099】
なお停止距離の間隔の設定と同様に映像の整合度合いの設定が可能である。基本とする害虫の形状に対しての整合度合いで設定する。高駆除611では30%以下、通常駆除613では50%以下、低駆除612では51%以上の整合度で害虫であると認識するようにする。
【0100】
前述の検出度合いの設定を、
図12のように、遠隔用の操作装置のマッピング図の中で登録する。ユーザーが圃場を選択するとマピング
図610が現れる。このマピング
図610には詳細に区分されたブロックエリアがある。ブロックごとに検出度合いを選択でき、検出度合いを設定することで、入念に駆除するエリアは時間をかけて確実に、通常から低駆除では作業効率を優先させることで、自動運転による効果的な害虫駆除対応することが可能となる。
【0101】
さらには、
図13のように1)~3)のような経路で自動走行する場合は、
図12の圃場名で走行順にならべておけば、その経路で作業することも可能である。
【符号の説明】
【0102】
100 作業機
1 メインバッテリー
140 電動モータ
141 外扇
150 HST
190 走行系車軸
200 油圧ポンプ
210 エアーコンプレッサー
220 作業装置
290 タンク
291 超音波発生装置
310 GPS
320 IMU
350 吸引ノズル
370 苗タンク
380 送風用配管
410 撮像手段A
500 照射板
610 マッピング図