IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友理工株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049766
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】液封筒型防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/14 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
F16F13/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156202
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】安藤 龍一
(72)【発明者】
【氏名】小山 裕教
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA05
3J047CA04
3J047CD02
3J047FA01
(57)【要約】
【課題】オリフィス通路で相互に連通された2つの液室を備えた液封式の筒型防振装置において、振動入力時における液室の容積変化量を確保しつつ、液室の軸方向両側のゴム壁部における耐久性向上を図ること。
【解決手段】液室34のゴム壁部40,40の断面形状を周方向の中央部分と両端部分とで互いに異ならせて、中央部分ではインナ軸部材12側から外周側に向かって立ち上がってから軸方向外方に向けて湾曲する内周側湾曲部分42とアウタ筒部材14側から内周側に向かって立ち上がってから軸方向内方に向けて湾曲する外周側湾曲部分44とをなめらかにつないだ複合湾曲形状とする一方、両端部分ではインナ軸部材12側から外周側に向かって立ち上がってから軸方向外方に向けて湾曲して更に軸方向外方に延びる単一湾曲形状とした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナ軸部材とアウタ筒部材とが本体ゴム弾性体で連結されていると共に、2つの液室が該インナ軸部材を軸直角方向に挟んだ両側に形成されてオリフィス通路で相互に連通されている液封型防振装置であって、
前記本体ゴム弾性体において前記液室の軸方向両側の壁部を構成する各ゴム壁部の軸方向断面形状が、該液室の周方向の中央部分と両端部分とで互いに異なっており、
該中央部分では該インナ軸部材側から外周側に向かって立ち上がってから軸方向外方に向けて湾曲する内周側湾曲部分と前記アウタ筒部材側から内周側に向かって立ち上がってから軸方向内方に向けて湾曲する外周側湾曲部分とをなめらかにつないだ複合湾曲形状とされている一方、
該両端部分では該インナ軸部材側から外周側に向かって立ち上がってから軸方向外方に向けて湾曲して更に軸方向外方に延びる単一湾曲形状とされている
ことを、特徴とする液封筒型防振装置。
【請求項2】
前記本体ゴム弾性体は、前記2つの液室の周方向両側の端部間において前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材との間を軸直角方向に延びる一対の連結腕部を有しており、該一対の連結ゴム腕部における周方向の両側間に前記2つの液室が形成されている一方、
該液室の前記各ゴム壁部には、前記インナ軸部材の外周面に沿った内周縁部から該一対の連結腕部の周方向端部を前記アウタ筒部材側に向かって延びるようにして、軸方向外方に向かって凹状とされた連続湾曲部が設けられている請求項1に記載の液封筒型防振装置。
【請求項3】
前記2つの液室が、前記各ゴム壁部を含めて、前記インナ軸部材を挟んだ径方向で対称形状とされている請求項1又は2に記載の液封筒型防振装置。
【請求項4】
前記一対の連結ゴム腕部が該インナ軸部材を挟んだ軸直角方向線上に設けられて、前記2つの液室の周方向のサイズが同じとされている一方、
該2つの液室間において前記ゴム壁部に設けられた前記連続湾曲部が、長さ方向の両側部分において前記インナ軸部材側から前記アウタ筒部材側に向かって延びる方向及び長さを互いに異ならされている請求項2に記載の液封筒型防振装置。
【請求項5】
前記本体ゴム弾性体の外周部分には中間スリーブが固着されていると共に、
該本体ゴム弾性体には2つのポケット部が設けられて、各該ポケット部が該中間スリーブに設けられた窓部を通じて外周面に開口しており、
前記ゴム壁部の外周端部が該中間スリーブにおける該窓部の軸方向端縁部に固着されて、該ゴム壁部が前記インナ軸部材と該中間スリーブとの間に跨がって設けられている一方、
該中間スリーブに前記アウタ筒部材が外挿固定されて、該中間スリーブの該窓部が該アウタ筒部材で覆蓋されることで前記2つの液室が形成されている請求項1又は2に記載の液封筒型防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリフィス通路で相互に連通された2つの液室を備えた液封式の筒型防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動伝達系に用いられる防振装置の一種として、オリフィス通路で相互に連通された2つの液室を備え、振動入力時におけるオリフィス通路を通じての液体流動を利用して防振効果を得るようにした液封筒型防振装置が知られている。
【0003】
より具体的には、例えば特開2006-250340号公報に示されているように、インナ軸部材とアウタ筒部材とを連結する本体ゴム弾性体の内部において、インナ軸部材を挟んだ両側に2つの液室が形成されており、インナ軸部材とアウタ筒部材との間への軸直角方向の振動入力時に、本体ゴム弾性体の弾性変形に伴って2つの液室間に発生する相対的な液圧差に基づいてオリフィス通路を通じた液体流動が生ぜしめられるようになっている。
【0004】
ところが、従来構造の液封筒型防振装置では、液室の軸方向両側の壁部を構成する各ゴム壁部の耐久性を充分に確保することが難しかった。特に防振装置の要求特性によっては、振動入力時における液室の容積変化を大きくするために、当該ゴム壁部の厚さ寸法を充分に設定し難い場合があり、ゴム壁部を薄くすると耐久性の確保がより難しくなって、亀裂などが発生しやすくなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-250340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、オリフィス通路で相互に連通された2つの液室を備えた液封筒型防振装置であって、振動入力時における液室の容積変化量を確保しつつ、液室の軸方向両側のゴム壁部における耐久性向上を図ることのできる、新規な構造の液封筒型防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、以下のとおりである。
インナ軸部材とアウタ筒部材とが本体ゴム弾性体で連結されていると共に、2つの液室が該インナ軸部材を軸直角方向に挟んだ両側に形成されてオリフィス通路で相互に連通されている液封型防振装置であって、
前記本体ゴム弾性体において前記液室の軸方向両側の壁部を構成する各ゴム壁部の軸方向断面形状が、該液室の周方向の中央部分と両端部分とで互いに異なっており、
該中央部分では該インナ軸部材側から外周側に向かって立ち上がってから軸方向外方に向けて湾曲する内周側湾曲部分と前記アウタ筒部材側から内周側に向かって立ち上がってから軸方向内方に向けて湾曲する外周側湾曲部分とをなめらかにつないだ複合湾曲形状とされている一方、
該両端部分では該インナ軸部材側から外周側に向かって立ち上がってから軸方向外方に向けて湾曲して更に軸方向外方に延びる単一湾曲形状とされている
ことを、特徴とする液封筒型防振装置。
【0008】
先ず、前述の如き課題を解決すべく、本発明者は液室のゴム壁部の最適形状について種々検討を重ねたが、先行文献1にも記載された従来の液封筒型防振装置のように液室の周方向全体に亘ってゴム壁部を一定形状とする限り、液室の周方向両側の端部付近に亀裂等が発生しやすく耐久性の確保が難しかった。そこで、本発明者は、液室の周方向の中央部分と両端部分とにおいてゴム壁部の断面形状を互いに異ならせることによって、振動入力時における液室変化量を確保しつつ優れた耐久性を実現し得るゴム壁部を新たに考案したのであって、それによって本発明を実現し得た。
【0009】
すなわち、本態様の液封筒型防振装置では、液室の周方向中央部分では、後述の実施形態にも示されているように(図2等参照)、略S字状等に複合湾曲した断面形状をもって周方向に広がるゴム壁部とされている一方、液室の周方向両端部分では、後述の実施形態にも示されているように(図4等参照)、略L字状等に単一湾曲した断面形状をもって周方向に広がるゴム壁部とされている。これにより、ゴム壁部において周方向の広い領域を占める中央部分では、複合湾曲形状とされることで、振動入力時における液室容積の変化量の確保と共に、大きな自由長による耐久性の向上が図られ得る。また、ゴム壁部における周方向両端部分では、中央部分よりもシンプルな単一湾曲形状とされることで、例えば周方向に一定形状をもって端部まで延びるゴム壁部を有する後述の比較例との対比からも理解されるように(図25等参照)、実質的な径方向長さが制限される状況下でも自由長が確保されることとなり、局所的な応力集中による亀裂の発生が抑えられて耐久性の向上が図られ得る。
【0010】
その結果、本態様の液封筒型防振装置では、液室のゴム壁部について、従来のように周方向で一定の断面形状に代えて、周方向で異ならされた新規な特定の断面形状を採用したことにより、振動入力時における液室容積変化量を確保しつつ、良好な耐久性を得ることを可能と為し得たのである。
【0011】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る液封筒型防振装置であって、
前記本体ゴム弾性体は、前記2つの液室の周方向両側の端部間において前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材との間を軸直角方向に延びる一対の連結腕部を有しており、該一対の連結ゴム腕部における周方向の両側間に前記2つの液室が形成されている一方、
該液室の前記各ゴム壁部には、前記インナ軸部材の外周面に沿った内周縁部から該一対の連結腕部の周方向端部を前記アウタ筒部材側に向かって延びるようにして、軸方向外方に向かって凹状とされた連続湾曲部が設けられているものである。
【0012】
本態様の液封筒型防振装置では、軸方向外方に向かって凹状とされた連続湾曲部が、ゴム壁部の周方向中央部分の内周縁部から周方向両端部分に略沿うようにして連続して延びて設けられている。かかる連続湾曲部を有していることにより、後述の実施形態からも判るように(図1,2,3-6等参照)、液室のゴム壁部の略全体に亘って、大きな自由長で弾性変形が容易に許容される凹状断面の湾曲部分が効果的に与えられて、耐久性の向上に資することとなる。
【0013】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る液封筒型防振装置であって、
前記2つの液室が、前記各ゴム壁部を含めて、前記インナ軸部材を挟んだ径方向で対称形状とされているものである。
【0014】
本態様の液封筒型防振装置では、例えば2つの液室が対向する径方向に主たる振動荷重が入力される場合であって、かかる径方向にプリロード(静的な荷重乃至はバイアス荷重)も殆ど及ぼされないような状況下などに好ましく適用され得、それによって、2つの液室の軸方向両側のゴム壁部における耐久性の確保がより効果的に安定して達成され得る。
【0015】
本発明の第四の態様は、前記第二の態様に係る液封筒型防振装置であって、
前記一対の連結ゴム腕部が該インナ軸部材を挟んだ軸直角方向線上に設けられて、前記2つの液室の周方向のサイズが同じとされている一方、
該2つの液室間において前記ゴム壁部に設けられた前記連続湾曲部が、長さ方向の両側部分において前記インナ軸部材側から前記アウタ筒部材側に向かって延びる方向及び長さを互いに異ならされているものである。
【0016】
本態様の液封筒型防振装置では、例えば2つの液室が対向する径方向の両側において互いに異なる入力荷重や入力振動が及ぼされる場合又は互いに異なる防振特性やばね特性、荷重特性などが要求されるような場合などに適用され得て、2つの液室における連続湾曲部の形状や長さ等を互いに異ならせることで、2つの液室のゴム壁部のばね特性や耐久性等のチューニングを行うことも可能になる。
【0017】
本発明の第五の態様は、前記第一~四の何れかの態様に係る液封筒型防振装置であって、
前記本体ゴム弾性体の外周部分には中間スリーブが固着されていると共に、
該本体ゴム弾性体には2つのポケット部が設けられて、各該ポケット部が該中間スリーブに設けられた窓部を通じて外周面に開口しており、
前記ゴム壁部の外周端部が該中間スリーブにおける該窓部の軸方向端縁部に固着されて、該ゴム壁部が前記インナ軸部材と該中間スリーブとの間に跨がって設けられている一方、
該中間スリーブに前記アウタ筒部材が外挿固定されて、該中間スリーブの該窓部が該アウタ筒部材で覆蓋されることで前記2つの液室が形成されているものである。
【0018】
本態様の液封筒型防振装置では、例えば本体ゴム弾性体がインナ軸部材と中間スリーブとを含む一体加硫成形品として構成され得、本体ゴム弾性体の外周端部の形状安定性を中間スリーブによって実現しつつ、中間スリーブに外挿固定されるアウタ筒部材によって液室の流体密性が安定して実現可能となる。しかも、液室のゴム壁部における外周部分が、中間スリーブの窓部の周縁部から内周側や軸方向に向かって延び出すような形状とされることで、ゴム壁部の中間スリーブによる過度の拘束も回避されると共に、ゴム壁部の形状の設計自由度も有利に確保され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一実施形態である液封筒型防振装置を示す正面図。
図2図1におけるII-II断面図。
図3図1におけるIII-III断面図。
図4図1におけるIV-IV断面図。
図5図1におけるV-V断面図。
図6図1におけるVI-VI断面図。
図7図1における軸方向中央での横断面図。
図8】本発明の第二実施形態である液封筒型防振装置を示す正面図。
図9図8におけるIX-IX断面図。
図10図8におけるX-X断面図。
図11図8におけるXI-XI断面図。
図12図8におけるXII-XII断面図。
図13図8におけるXIII-XIII断面図。
図14図8における軸方向中央での横断面図。
図15】本発明の第三実施形態である液封筒型防振装置を示す正面図。
図16図15におけるXVI-XVI断面図。
図17図15におけるXVII-XVII断面図。
図18図15におけるXVIII-XVIII断面図。
図19図15におけるXIX-XIX断面図。
図20図15における軸方向中央での横断面図。
図21】比較例である液封筒型防振装置を示す正面図。
図22図21におけるXXII-XXII断面図。
図23図21におけるXXIII-XXIII断面図。
図24図21におけるXXIV-XXIV断面図。
図25図21におけるXXV-XXV断面図。
図26図21におけるXXVI-XXVI断面図。
図27図21における軸方向中央での横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面では、発明の特徴を備えたゴム加硫成形品を示し、当該ゴム加硫成形品に組み付けられることによって液室を形成して液封筒型防振装置を構成するアウタ筒部材(外筒金具)については代表的な図中に仮想線で示しておく。
【0021】
図1~7には、本発明の一実施形態としての液封筒型防振装置10が示されている。かかる液封筒型防振装置10は、振動伝達系に装着されるものであって具体的に用途限定されるものでないが、例えば自動車等の車両用のメンバマウントやトルクロッドマウント、サスペンションブッシュ、エンジンマウント等として用いることができる。
【0022】
本実施形態の液封筒型防振装置10は、互いに径方向に所定距離を隔てて配されたインナ軸部材としての内筒金具12とアウタ筒部材としての外筒金具14とを有しており、それら内筒金具12と外筒金具14とが、本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。かかる液封筒型防振装置10は、例えば、図1及び図2中の上下方向が車両の略上下方向となり、且つ図1中の左右方向が車両の略左右方向となる状態で、内筒金具12が車両のパワーユニット側に取り付けられる一方、外筒金具14が車両のボデー側に取り付けられることによって、パワーユニットと車両ボデーとの間に装着されるようになっている。そして、かかる装着状態下、図1中の上下方向に対して、内筒金具12と外筒金具14との間に防振すべき主たる振動が入力されることとなる。なお、以下の説明中、上下方向及び左右方向とは、原則として、図1中の上下方向及び左右方向をいう。
【0023】
より詳細には、内筒金具12は、ストレートに延びるロッド形状とされている。なお、本実施形態では取付用の内孔を備えた円筒状の中空ロッド形状とされているが、内筒金具12は取り付けられる部材等に応じて形状を設定可能であって、例えば中実のロッド形状等であっても良い。また、内筒金具12は、要求される強度や剛性等を有すれば良く、鉄やステンレス等の金属の他、繊維補強樹脂なども採用可能であって材質を限定されるものでない。
【0024】
内筒金具12の外周側には、径方向に離隔して中間スリーブ18が配されている。かかる中間スリーブ18は、内筒金具12に比して大径で且つ薄肉の円筒形状とされている。中間スリーブ18は金属製のものが好適に用いられるが、材質を限定されるものでなく、内筒金具と同様に合成樹脂なども採用可能である。また、本実施形態では、内筒金具12と中間スリーブ18とが、略同一中心軸上に配置されているが、要求される特定方向の防振性能や荷重支持特性、プリロード荷重などを考慮して、内筒金具12と中間スリーブ18とを径方向で偏心して配置するようにしても良い。
【0025】
中間スリーブ18には、上下方向で対向する両側部分に位置して一対の窓部20,20が形成されている。各窓部20は、軸方向中間部分に位置して周方向に半周に満たない長さで広がっており、本実施形態では略矩形の外周形状とされている。なお、かかる窓部20は、後述する本体ゴム弾性体16のポケット部と対応して要求特性等に応じて設定されるものであって具体的な形状や大きさを限定されるものでない。
【0026】
また、中間スリーブ18は、窓部20,20が形成されていない周方向の領域において、それぞれ軸方向中間部分が小径化されることで外周面に開口して周方向に延びる一対の凹状の周溝22,22が形成されている。これにより、一対の窓部20,20の周方向端縁部間に跨がって、一対の窓部20,20を周方向両側において相互に接続する一対の周溝22,22が設けられている。
【0027】
そして、内筒金具12と中間スリーブ18との径方向対向面間には本体ゴム弾性体16が配されて、内筒金具12と中間スリーブ18とに固着されており、この本体ゴム弾性体16によって、内筒金具12と中間スリーブ18とが弾性的に連結されている。本体ゴム弾性体16は、全体として略厚肉の円筒形状とされており、本実施形態では、内周面に対して内筒金具12の外周面が加硫接着されると共に、外周面に対して中間スリーブ18の内周面が加硫接着された一体加硫成形品24として構成されている。なお、中間スリーブ18の外周面を覆うように薄肉のシールゴム層を、本体ゴム弾性体16と一体的に形成しても良い。
【0028】
かかる本体ゴム弾性体16には、内筒金具12を上下方向で挟んだ両側に位置して、それぞれ軸方向中間部分を半周に至らない周方向長さで広がる一対のポケット部26,26が、外周面に開口する凹陥形態をもって形成されている。これら一対のポケット部26,26は、中間スリーブ18における一対の窓部20,20を通じて、それぞれ、中間スリーブ18の外周面にまで開口している。
【0029】
なお、本実施形態では一対のポケット部26,26及び一対の窓部20,20が、上下対向方向で対称となる同一の形状及び大きさとされているが、後述する第三実施形態からも判るように、要求特性等に応じて、一対のポケット部26,26及び窓部20,20には、対向する上下方向両側において相互に異なる形状や大きさを設定することも可能である。
【0030】
そして、これら一対のポケット部26,26が形成されることによって、本体ゴム弾性体16には、一対のポケット部26,26の周方向両端部間に位置して、内筒金具12と外筒金具14とを軸直角方向に連結する一対の連結ゴム腕部28,28が形成されている。なお、本実施形態における一対の連結ゴム腕部28,28は、内筒金具12を挟んで左右方向に延びる径方向一方向の直線上に形成されているが、例えば一対のポケット部26,26の周方向長さが相互に異ならされることで、一対の連結ゴム腕部28,28を所定の交差角度(交角)をもってそれぞれの弾性中心軸が内筒金具12から径方向外方に延び出す形態として、一対のポケット部26,26の周方向サイズも相互に異ならせることも可能である。
【0031】
なお、本実施形態では、各ポケット部26を上方又は下方に向かって開口する凹所として捉えることも可能であり、このような捉え方をすると、ポケット部26の底壁部は、インナの外周面とそこから左右に延びる一対の連結ゴム腕部28,28の周方向端面とによって構成されていると解釈することもできる。かかるポケット部26の底面を構成する一対の連結ゴム腕部28,28の周方向両端面は、内筒金具12の中心軸から略径方向に延びる傾斜面とされている。これにより、ポケット部26は、内筒金具12の外周側において中心軸周りに所定角度で略扇形状に広がっている。なお、上下の各ポケット部26,26には、各底部中央に位置して内筒金具12の外周面上で上下方向に突出するストッパ用の緩衝ゴム突起29が、ポケット部26の深さ寸法よりも小さな突出高さで形成されている。
【0032】
また、中間スリーブ18には、周溝22,22の内部にオリフィス形成用ゴム30,30が形成されて、周溝22,22の内面に固着されている。各オリフィス形成用ゴム30には、周方向に延びるオリフィス用溝32が形成されており、かかるオリフィス用溝32の両端が各一方のポケット部26に接続されている。なお、オリフィス形成用ゴム30,30は、例えば本体ゴム弾性体16と一体形成され得る。
【0033】
そして、上述の如き本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品は、外筒金具14に対して圧入等されることで、外筒金具14が外挿固着された状態で組み付けられている。外筒金具14は、中間スリーブ18よりも一回り大きな円筒形状とされており、中間スリーブ18の外周面に嵌着固定されている(図1-3,8参照)。
【0034】
なお、外筒金具14の具体的形状や構造は限定されるものでない。例えば、外筒金具14において中間スリーブ18に外嵌固定される円筒状部における軸方向の各一方の端部に内向きフランジ状部と外向きフランジ状部が一体形成されて、それら各フランジ状部の外側面において、軸方向外方に向かって突出するストッパ用緩衝ゴムが突出形成された構造とすることも可能である。また、外筒金具14には、内周面を略前面に亘って覆う薄肉のシールゴム層を一体加硫成形することも可能であり、かかるシールゴム層を中間スリーブ18との嵌着面で圧縮することでシール性の向上を図ることも可能である。
【0035】
また、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品は、必要に応じて、外筒金具14の組み付け前に又は組み付けに際して、絞り加工で小径化されて、加硫成形時の残留応力軽減などが図られ得る。
【0036】
このように、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に外筒金具14が外嵌固定されることで、一対のポケット部26,26の外周側開口が覆蓋されていると共に、オリフィス用溝32,32の外周側開口も覆蓋されている。また、例えば中間スリーブ18への外筒金具14の外挿組み付けが液中で行われること等により、一対のポケット部26,26とオリフィス用溝32,32にはエチレングリコール等の所定の液体が封入されている。
【0037】
これにより、一対のポケット部26,26によって一対の液室34,34が形成されていると共に、一対のオリフィス用溝32,32によって、かかる一対の液室34,34間を相互に接続して液室34,34間での液体の流動を許容するオリフィス通路36,36が形成されている。即ち、本実施形態の液封筒型防振装置における自動車等への装着状態下、内筒金具12と外筒金具14との間に上下方向の振動が入力されると、本体ゴム弾性体16の弾性変形に伴って上下一対の液室34,34間に相対的な液圧変動が発生し、かかる液圧変動に基づいてオリフィス通路36,36を通じての流体流動が生ぜしめられる。そして、かかる流体の共振作用等を利用して、入力振動に対する防振性能の向上が図られ得ることとなる。
【0038】
なお、オリフィス通路36の溝長さや溝断面形状,溝の全長形態などは、要求される防振特性などに応じて設定可能であって、限定されるものでない。例えば、左右両側のオリフィス通路36,36を同一形状としても良いし、互いに異なる形状とすることも可能である。また、一方の周溝22の内部にだけオリフィス通路36を形成して、他方の周溝22はオリフィス形成用ゴム30で遮断状態としても良い。或いは、周溝22へ別体のオリフィス部材を組み付けて、当該オリフィス部材によってオリフィス通路を形成することも可能である。
【0039】
ここにおいて、各液室34の軸方向両側の壁部は、本体ゴム弾性体16がポケット部26によって薄肉化された一対のゴム壁部40,40によって構成されている。本体ゴム弾性体16の軸方向両側端面は、軸方向内方に向かって凹状となる湾曲面とされて内筒金具12から外筒金具14との間で延びる径方向の表面自由長ひいては自由表面が大きくされることで耐久性の向上が図られている。特に、本体ゴム弾性体16の軸方向端面は、一対の連結ゴム腕部28,28と、一対のゴム壁部40,40とにおいて形状(軸方向の断面形状)が異ならされている。即ち、連結ゴム腕部28の軸方向端面は、図3に示されているように、比較的単純な湾曲凹形状とされている一方、ゴム壁部40の軸方向端面は、図2等に示されているように、比較的複雑な湾曲凹形状とされている。
【0040】
ところで、一対の連結ゴム腕部28は、軸方向の両端面間に亘って略一定の断面形状で軸方向に延びる中実構造とされている。一方、一対の連結ゴム腕部28,28の周方向間は、それぞれ、軸方向中間部分においてポケット部26,26によって中空構造とされている。そして、各ポケット部26の軸方向両側の壁部を構成するゴム壁部40は、ポケット部26の軸方向内面形状がゴム壁部40の軸方向両端面形状に対応していることで、全体に亘って略一定の厚さ寸法で広がっている。
【0041】
ここにおいて、ゴム壁部40は、軸方向の断面形状が周方向位置によって異ならされている。
【0042】
具体的には、ゴム壁部40において、液室34の周方向中央を含んで周方向両側にそれぞれ所定角度で広がる周方向中間部分では、図2図5に示されているように、内筒金具12側から外周側に向かって立ち上がってから軸方向外方に向けて湾曲する内周側湾曲部分42と、前記アウタ筒部材側から内周側に向かって立ち上がってから軸方向内方に向けて湾曲する外周側湾曲部分44とをなめらかに変曲点をもってつないだ複合湾曲形状とされている。特に本実施形態における複合湾曲形状は、内周側湾曲部分42において内筒金具12側から略軸直角方向外方に立ち上がる内周側立上り部46と、外周側湾曲部分44において外筒金具14側(中間スリーブ18側)から略軸直角方向内方に立ち上がる外周側立上り部48との間に、略軸方向(軸方向外方に行くに従って外周側に向かって僅かに傾斜している)に延びて内外周湾曲部分42,44の接続部分を構成する中間段差状部50が設けられた形状とされている。
【0043】
一方、ゴム壁部40における周方向両端部分では、図4に示されているように、内筒金具12側から外周側に向かって立ち上がってから軸方向外方に向けて湾曲して更に軸方向外方に延びる単一湾曲形状とされている。特に本実施形態における単一湾曲形状は、内筒金具12側から略軸直角方向外方に立ち上がる内周側立上り部52と、外筒金具14側において中間スリーブ18の窓部20の内周縁部(軸方向の内方端縁部)から軸方向内方に向かって延びる外周側延出部54とが、略四半周の円弧状の湾曲連結部56によって連結された形状とされている。
【0044】
より詳細には、本実施形態におけるゴム壁部40の断面形状の変化は、例えば図1における中心軸周りで液室34の周方向中央(上下方向線)から周方向両側にそれぞれ角度を振っていった際のゴム壁部40の断面形状の変化として見ることもできる。
【0045】
すなわち、各ゴム壁部40の軸方向外側には、内筒金具12の外周面に加硫接着された軸方向外側ゴム58が、本体ゴム弾性体16によって形成されており、かかる軸方向外側ゴム58が、ゴム壁部40の内周側立上り部52の軸方向外面に一体的につながっている。そして、ゴム壁部40につながる当該軸方向外側ゴム58の径方向厚さ寸法が、内筒金具12の外周面に固着された被覆ゴム層の程度とされている角度範囲(上下方向線から周方向両側でそれぞれV-V断面線を少し越えるまでの角度範囲)において、ゴム壁部40の軸方向断面形状は、内周側立上り部46と中間段差状部50と外周側立上り部48とを有する複合湾曲形状とされた図2の断面形状から変化しない。その後も、ゴム壁部40の軸方向断面形状は、かかる複合湾曲形状から実質的に変化しないものの、周方向中央から周方向への振れ角度が大きくなるに従って、ゴム壁部40の内周側立上り部52の軸方向外面につながる軸方向外側ゴム58の径方向厚さ寸法が次第に外周側に大きくなってゆく。そして、周方向中央から周方向への振れ角度が一層大きくなって、ゴム壁部40の内周側立上り部52の軸方向外面につながる軸方向外側ゴム58の径方向厚さ寸法が更に大きくなると、かかる軸方向外側ゴム58によってゴム壁部40の内周側立上り部52に作用する変形拘束力が大きくなって、ゴム壁部40の有効自由長が実質的に短くなってしまうが、このような周方向の振れ角度の領域においてゴム壁部40の軸方向断面形状が変化することで、軸方向外側ゴム58による変形拘束を軽減乃至は回避してゴム壁部40の変形自由長が確保されるようになっている。
【0046】
具体的には、液室34の周方向中央から周方向への振れ角度が一層大きくなってくると、ゴム壁部40の軸方向断面形状は、軸直角方向内方に向かっていた外周側立上り部48が次第に軸方向内方に向かうように傾斜角度を変化し始めると共に、中間段差状部50の傾斜角度が次第に大きくなって、内周側立上り部46からそのまま径方向外方に向かって延びる方向に変化し始める。そして、最終的には、液室34の周方向中央から周方向への振れ角度が最大となるゴム壁部40の周方向両端部分では、図4に示されているように、ゴム壁部40の軸方向断面形状が、外周側延出部54と内周側立上り部52とが、湾曲連結部56によって接続された単一湾曲形状とされる。なお、このような中心軸周りの周方向におけるゴム壁部40の縦断面形状の変化は、明確な折れ線を有しないなめらかな変化とされることが望ましい。
【0047】
このように周方向に縦断面形状が変化するゴム壁部40では、周方向の中央部分において複合湾曲形状とされることで有効自由長が大きく確保されていることが明らかであり、それに加えて、中央部分で段差状に軸方向に延びる領域(中間段差状部50)をもっていることから、径方向振動入力時に内外筒金具12,14が軸直角方向で相対移動するのに伴って当該中間段差状部50がピストンのように作用することで、液室34に対して容積変化乃至は圧力変動が一層効率的に且つ積極的に生ぜしめられることとなる。
【0048】
また、ゴム壁部40における周方向両側の端部付近では、外周側延出部54と内周側立上り部52からなる単一湾曲形状の縦断面形状とされることで、軸方向外側ゴム58による拘束作用を軽減乃至は回避して、有効自由長を確保することで、径方向振動入力に伴う弾性変形に際しての応力集中を軽減して耐久性の向上を図ることが可能になる。
【0049】
因みに、かくの如き作用効果は、従来構造の液封筒型防振装置と比較することで理解することもできる。比較例として、図21-27において、ゴム壁部40の縦断面形状を周方向全体に亘って略一定の複合湾曲形状(第一実施形態と基本的構成が同じである、内周側立上り部46と中間段差状部50と外周側立上り部48とを有する複合湾曲形状)をもって形成した従来構造の液封筒型防振装置60(一体加硫成形品62)を示す。なお、この比較例は、設定された各種特性が第一実施形態の液封筒型防振装置10と異なるために各部位の形状も液封筒型防振装置10と少し異なるものの、基本的な構造は同じであり、第一実施形態の液封筒型防振装置10との対比を判りやすくするために、比較例の各図中には、第一実施形態の液封筒型防振装置10と対応する各部位に対して第一実施形態の液封筒型防振装置10と同一の符号を付しておく。
【0050】
かかる比較例では、ゴム壁部40の縦断面形状が周方向全体に亘って略一定の複合湾曲形状とされていることから、図24-25等からも判るように、ゴム壁部40の周方向両端部分では、軸方向外側ゴム58の立ち上がりによって、ゴム壁部40の内周側立上り部46と中間段差状部50までが拘束状態となっている。そして、軸方向外側ゴム58がゴム壁部40の内周部分につながる結果、ゴム壁部40において比較的容易に弾性変形が許容される部分は、ゴム壁部40において外周側に残されて軸直角方向に立ち上がる外周側立上り部48だけとなってしまっている。それ故、ゴム壁部40の周方向両端部分では、ゴム壁部40の有効自由長が大幅に小さくなってしまうことが避けられず、且つ、残された外周側立上り部48は軸直角方向の振動入力方向で略純圧縮/引張変形とされることから、振動入力時における応力の集中が発生しやすく、それが亀裂等の主たる発生原因となることを理解できる。
【0051】
さらに、上述のようにゴム壁部40に対して周方向で異なる形状を設定した本実施形態の液封筒型防振装置10では、ゴム壁部40における軸方向外側ゴム58との略接続部分に位置して、内筒金具12の外周面と一対の連結ゴム腕部28,28の周方向両端部分とに略沿って延びるようにして、軸方向外方に向かって凹状とされた連続湾曲部66が形成されている。換言すれば、かかる連続湾曲部66は、ゴム壁部40において、内筒金具12の外周面に沿った内周縁部から一対の連結ゴム腕部28,28の周方向端部を外筒金具14側に向かって延びている。この連続湾曲部66が形成されていることにより、ゴム壁部40の変形自由度が大きくされて変形しやすくされており、軸方向外側ゴム58や連結ゴム腕部28による変形拘束力が軽減されている。その結果、ゴム壁部40における軸方向外側ゴム58や連結ゴム腕部28との境界部近くでの応力集中が軽減されて、亀裂の発生等による耐久性の低下がより一層効果的に防止されている。
【0052】
因みに、上述の如き特定構造のゴム壁部40による耐久性の向上作用は、本発明者によって、シミュレーションによる応力分布の解析結果からも確認されている。加えて、例えば振動入力方向となる上下方向におけるゴム壁部40の形状を確認することによっても、上述の如き特定構造のゴム壁部40による耐久性の向上作用を確認及び理解することができる。
【0053】
すなわち、本実施形態の液封筒型防振装置10における主たる振動入力方向が上下方向であることから、振動入力に際しては内外筒金具12,14が上下方向に相対変位して本体ゴム弾性体16への振動荷重が上下方向に及ぼされることとなる。それ故、ゴム壁部40における有効自由長を図1中の上下方向で検討すると、左右方向の中央で最も有効自由長が長く且つ周方向両端付近が最も小さいことは、図1から明らかである。そこで、液室34の左右両端付近のゴム壁部40について、その縦断面形状を図1中のVI-VI断面として図6に示す。かかる図6から判るように、ゴム壁部40は、左右両端付近でも、主たる振動入力方向となる上下方向では、内周側立上り部46と中間段差状部50と外周側立上り部48とを有する複合湾曲形状をしっかりと保持している。これによって、ゴム壁部40は、主たる振動入力方向となる上下方向においては、ゴム壁部40の左右方向の全長にわたって、即ち液室34の全体にわたって、作用効果的に有利な複合湾曲形状を保持しており、優れた液室変化量と耐久性とが両立して有効に達成され得ることが判る。
【0054】
以上、本発明の第一実施形態について説明してきたが、本発明は係る第一実施形態における具体的な説明や構造によって限定的に解釈されるものでない。例えば、本体ゴム弾性体16の具体的形状ひいては2つの液室34,34や一対の連結ゴム腕部28,28や軸方向外側ゴム58,58等及びオリフィス通路36等の具体的形状は、液封筒型防振装置に要求される荷重特性や防振特性などに応じて適宜に設定されるものであって限定されない。
【0055】
本体ゴム弾性体16の具体的形状を別態様とした液封筒型防振装置について、第二実施形態としての液封筒型防振装置10′を図8-14に示すと共に、第三実施形態としての液封筒型防振装置10″を図15-20に示す。なお、これら図8-14及び図15-20では、第一実施形態の液封筒型防振装置10と同様な構造とされた部材及び部位について、それぞれ第一実施形態と同一の符号を付することにより、詳細な説明を省略する。
【0056】
すなわち、第二実施形態としての液封筒型防振装置10′及び第三実施形態としての液封筒型防振装置10″は、何れも、第一実施形態の液封筒型防振装置10に対して、各液室34のゴム壁部40における連続湾曲部66の形態を異ならせることで特性設定を異ならせたものの一例である。
【0057】
具体的には、第二実施形態の液封筒型防振装置10′では、第一実施形態の液封筒型防振装置10の図1と第二実施形態の液封筒型防振装置10′の図8とを見比べると判るように、第一実施形態の液封筒型防振装置10では、ゴム壁部40の周方向両端部分において連続湾曲部66が連結ゴム腕部28の周方向端部を内筒金具12から中間スリーブ18に向かって図中の左右方向に直線的に延びている。
【0058】
一方、第二実施形態の液封筒型防振装置10′では、ゴム壁部40の周方向両端部分において、連続湾曲部66が、連結ゴム腕部28の周方向端面(図14参照)に沿うようにして、内筒金具12から中間スリーブ18に向かって円弧状に斜め上方(又は斜め下方)に立ち上がった湾曲形状で左右方向に延びている。なお、第一実施形態及び第二実施形態の液封筒型防振装置10,10′では、何れも、軸方向両側のゴム壁部40,40を含む液室34,34が、上下の軸直角方向で互いに対称構造とされており、液封筒型防振装置10,10′の全体としても上下の軸直角方向で互いに対称形状となる構造とされている。
【0059】
また、第三実施形態の液封筒型防振装置10″では、第一実施形態の液封筒型防振装置10の図1と第三実施形態の液封筒型防振装置10″の図15とを見比べると判るように、第一実施形態の液封筒型防振装置10では、上下の液室34,34が各軸方向両側のゴム壁部40,40を含めて対称形状とされているのに対して、第三実施形態の液封筒型防振装置10″では、上側の液室34のゴム壁部40,40と下側の液室34のゴム壁部40,40とが、特に連続湾曲部66の形状に関して、互いに異ならされて非対称形状とされている。
【0060】
具体的には、下側のゴム壁部40の連続湾曲部66は、前記第二実施形態の液封筒型防振装置10′と略同じ連続湾曲部66の形状とされている一方、上側のゴム壁部40の連続湾曲部66は、ゴム壁部40の周方向両端部分において、連結ゴム腕部28の周方向端面(図14参照)から更に下方(連結ゴム腕部28の軸方向外面)に向かうようにして、内筒金具12から中間スリーブ18に向かって斜め下方に直線状に左右方向に延びている。なお、図15に示されているように、本実施形態の液封筒型防振装置10″における軸方向正面からの外観上では、上側のゴム壁部40の連続湾曲部66と下側のゴム壁部40の連続湾曲部66とが、ゴム壁部40の周方向両端部分において、上下方向で離隔して互いに略平行状態で内筒金具12から左右両側でそれぞれ斜め下方に向かって中間スリーブ18側へ延びる形態とされている。
【0061】
これら第二実施形態及び第三実施形態の液封筒型防振装置10′,10″においても、各ゴム壁部40の縦断面形状は、第一実施形態と同様に周方向に変化しており、周方向の中央部分において複合湾曲形状とされると共に、周方向両端部分で単一湾曲形状とされている。このように第一実施形態と同様なゴム壁部40を採用した各実施形態の液封筒型防振装置10′,10″にあっても、第一実施形態の液封筒型防振装置10と同様に、内外筒金具12,14間への軸直角方向の振動入力時において、液室34に対して圧力変動が効率的に生ぜしめられることでオリフィス通路36を通じての流体流動量が確保されて良好な防振性能が発揮されると共に、液室34の周方向両端部付近におけるゴム壁部40の有効自由長が確保されて良好な耐久性も実現可能になるといった、本発明の技術的効果が達成され得る。
【0062】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明は上述の具体的な記載によって限定的に解釈されるものでない。例えば内筒金具12や外筒金具14,本体ゴム弾性体16,オリフィス通路36,連結ゴム腕部28等の具体的形状や大きさは、液封筒型防振装置が装着される対象や要求される荷重特性や防振特性などに応じて適宜に変更され得る。
【0063】
また、前記実施形態では内筒金具12と外筒金具14が略同一中心軸上に配されていたが、相互に偏心して配することも可能であり、更に、一対の連結ゴム腕部28,28の弾性主軸を、内筒金具12の中心軸周りの周方向で傾斜させて180度を外れた所定の交差角度をもって径方向に延びるようにしても良い。このような態様は、例えば本発明の液封筒型防振装置をエンジンマウントへ適用するに際してパワーユニット重量等のプリロードが軸直角方向一方向に及ぼされる場合等に好適に採用され得、連結ゴム腕部28,28やゴム壁部40における引張応力の発生を軽減乃至は回避することで更なる耐久性の向上を図ることが可能になる。
【0064】
更にまた、一対の連結ゴム腕部28,28の具体的な寸法や形状は限定されるものでない。例えば前記実施形態では、一対の連結ゴム腕部28,28の周方向端面が何れも略径方向に延びることで、連結ゴム腕部28の周方向厚さ寸法が内周側から外周側に向かって次第に大きくされていた(図7等参照)が、比較例(図27参照)のように周方向両端面が略平行とされて略一定の厚さ寸法で内周側から外周側に向かって延びる連結ゴム腕部28を採用することも可能である。
【0065】
さらに、前記実施形態では、2つの液室34,34の各ゴム壁部40,40の全てにおいて、本発明に従って周方向で異ならされた特定の断面形状を採用していたが、例えば入力される荷重や振動の大きさや方向及び要求される耐久性や防振性能等を考慮して、一方の液室34のゴム壁部40,40についてだけ、本発明に従う周方向で異ならされた特定の断面形状を採用しても良い。
【0066】
また、ゴム壁部40における内周側立上り部46や外周側立上り部48は、内筒金具12に対して垂直に限定されず軸方向に僅かに傾斜していても良いし、中間段差状部50の傾斜角度も、内周側立上り部46及び外周側立上り部48よりは軸方向に大きく傾斜するものであるが、具体的に限定されるものでない。更に、これら内周側立上り部46や外周側立上り部48、中間段差状部50について、長さ等の具体的寸法は要求特性等に応じて適宜に設定可能であって限定されない。
【0067】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0068】
10 液封筒型防振装置(第一実施形態)
10′ 液封筒型防振装置(第二実施形態)
10″ 液封筒型防振装置(第三実施形態)
12 内筒金具
14 外筒金具
16 本体ゴム弾性体
18 中間スリーブ
20 窓部
22 周溝
24 一体加硫成形品(第一実施形態)
24′ 一体加硫成形品(第二実施形態)
24″ 一体加硫成形品(第三実施形態)
26 ポケット部
28 連結ゴム腕部
29 緩衝ゴム突起
30 オリフィス形成用ゴム
32 オリフィス用溝
34 液室
36 オリフィス通路
40 ゴム壁部
42 内周側湾曲部分
44 外周側湾曲部分
46 内周側立上り部
48 外周側立上り部
50 中間段差状部
52 内周側立上り部
54 外周側延出部
56 湾曲連結部
58 軸方向外側ゴム
60 液封筒型防振装置(比較例)
62 一体加硫成形品(比較例)
66 連続湾曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27