(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049773
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】表示装置の製造装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/10 20060101AFI20240403BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240403BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240403BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20240403BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20240403BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
H05B33/12 C
C23C14/24 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156210
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 貴史
(72)【発明者】
【氏名】水越 寛文
(72)【発明者】
【氏名】高山 健
(72)【発明者】
【氏名】濱田 夕慎
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107DD11
3K107DD21
3K107DD26
3K107DD52
3K107DD71
3K107DD74
3K107DD77
3K107DD89
3K107EE21
3K107EE48
3K107FF06
3K107GG04
3K107GG13
3K107GG21
3K107GG26
3K107GG42
3K107GG43
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA62
4K029BB02
4K029BC07
4K029BD01
4K029CA01
4K029DB06
4K029DB14
4K029FA01
4K029GA00
4K029JA01
4K029JA05
4K029KA01
4K029KA09
(57)【要約】
【課題】生産効率の低下を抑制する。
【解決手段】一実施形態によれば、表示装置の製造装置は、処理基板を第1方向に沿って搬送する搬送機構と、前記搬送機構の前記第1方向の上流に連結され、前記処理基板に対して前処理を行う前処理部と、前記搬送機構の前記第1方向の下流に連結され、前記処理基板に対して後処理を行う後処理部と、前記搬送機構の前記第1方向に沿って順に並んだ第1蒸着部、第2蒸着部、第3蒸着部、及び、第4蒸着部と、を備え、前記第1蒸着部は、有機層を形成するための複数の蒸着チャンバーを備え、前記第2蒸着部は、前記有機層の上に上電極を形成するための蒸着チャンバーを備え、前記第3蒸着部は、前記上電極の上に第1透明層を形成するための蒸着チャンバーを備え、前記第4蒸着部は、前記第1透明層の上に、前記第1透明層の屈折率よりも低い屈折率を有する第2透明層を形成するための蒸着チャンバーを備えている。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上方に位置する下電極と、前記下電極と重なる開口を有するリブと、前記リブの上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁と、を備えた処理基板を第1方向に沿って搬送する搬送機構と、
前記搬送機構の前記第1方向の上流に連結され、前記処理基板に対して前処理を行う前処理部と、
前記搬送機構の前記第1方向の下流に連結され、前記処理基板に対して後処理を行う後処理部と、
前記搬送機構の前記第1方向に沿って順に並んだ第1蒸着部、第2蒸着部、第3蒸着部、及び、第4蒸着部と、を備え、
前記第1蒸着部は、前記開口において前記下電極の上に有機層を形成するための複数の蒸着チャンバーを備え、
前記第2蒸着部は、前記有機層の上に上電極を形成するための蒸着チャンバーを備え、
前記第3蒸着部は、前記上電極の上に第1透明層を形成するための蒸着チャンバーを備え、
前記第4蒸着部は、前記第1透明層の上に、前記第1透明層の屈折率よりも低い屈折率を有する第2透明層を形成するための蒸着チャンバーを備えている、表示装置の製造装置。
【請求項2】
前記前処理部は、
前記処理基板が搬入される第1ロードロックチャンバーと、
搬入された前記処理基板の乾燥処理を行うベーク部と、
前記下電極の表面を改質するプラズマ処理部と、
前記処理基板をキャリアに固定する固定部と、を備え、
前記搬送機構は、前記処理基板が固定された前記キャリアを前記第1方向に搬送する、請求項1に記載の表示装置の製造装置。
【請求項3】
前記後処理部は、
前記処理基板を前記キャリアから取り外す取り外し部と、
前記第2透明層の上に第1無機絶縁層を形成する第1堆積部と、
前記第1無機絶縁層の異方性ドライエッチングを行い、前記第1無機絶縁層の厚さを低減するエッチング部と、
前記第1無機絶縁層の上に第2無機絶縁層を形成する第2堆積部と、
前記処理基板が搬出される第2ロードロックチャンバーと、を備え、
前記第1ロードロックチャンバーから前記第2ロードロックチャンバーに至る前記処理基板の搬送経路は、真空状態に維持されている、請求項2に記載の表示装置の製造装置。
【請求項4】
前記搬送機構は、前記取り外し部において前記処理基板から取り外された前記キャリアを、前記第1方向とは逆向きの第2方向に沿って搬送する、請求項3に記載の表示装置の製造装置。
【請求項5】
前記搬送機構は、前記第1方向に沿って前記処理基板が固定された前記キャリアを搬送するための第1レールと、前記第2方向に沿って前記処理基板は取り外された前記キャリアを搬送するための第2レールと、を備えている、請求項4に記載の表示装置の製造装置。
【請求項6】
前記第1蒸着部は、
正孔注入層を形成する蒸着チャンバーと、
正孔輸送層を形成する蒸着チャンバーと、
電子ブロック層を形成する蒸着チャンバーと、
発光層を形成する蒸着チャンバーと、
正孔ブロック層を形成する蒸着チャンバーと、
n型電荷発生層を形成する蒸着チャンバーと、
p型電荷発生層を形成する蒸着チャンバーと、
電子輸送層を形成する蒸着チャンバーと、
電子注入層を形成する蒸着チャンバーと、
を有している、請求項1に記載の表示装置の製造装置。
【請求項7】
前記第1蒸着部は、
正孔注入層を形成する蒸着チャンバーと、
正孔輸送層を形成する蒸着チャンバーと、
電子ブロック層を形成する蒸着チャンバーと、
第1発光層を形成する蒸着チャンバーと、
前記第1発光層とは異なる波長の光を放つ第2発光層を形成する蒸着チャンバーと、
前記第1発光層及び前記第2発光層とは異なる波長の光を放つ第3発光層を形成する蒸着チャンバーと、
正孔ブロック層を形成する蒸着チャンバーと、
n型電荷発生層を形成する蒸着チャンバーと、
p型電荷発生層を形成する蒸着チャンバーと、
電子輸送層を形成する蒸着チャンバーと、
電子注入層を形成する蒸着チャンバーと、
を有している、請求項1に記載の表示装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、薄膜トランジスタを含む画素回路と、画素回路に接続された下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極と、を備えている。有機層は、発光層の他に、正孔輸送層や電子輸送層などの機能層を含んでいる。
このような表示素子を形成するための製造装置において、生産効率の低下を抑制することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【特許文献8】特表2017―506703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、生産効率の低下を抑制することが可能な表示装置の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、表示装置の製造装置は、
基板の上方に位置する下電極と、前記下電極と重なる開口を有するリブと、前記リブの上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁と、を備えた処理基板を第1方向に沿って搬送する搬送機構と、前記搬送機構の前記第1方向の上流に連結され、前記処理基板に対して前処理を行う前処理部と、前記搬送機構の前記第1方向の下流に連結され、前記処理基板に対して後処理を行う後処理部と、前記搬送機構の前記第1方向に沿って順に並んだ第1蒸着部、第2蒸着部、第3蒸着部、及び、第4蒸着部と、を備え、前記第1蒸着部は、前記開口において前記下電極の上に有機層を形成するための複数の蒸着チャンバーを備え、前記第2蒸着部は、前記有機層の上に上電極を形成するための蒸着チャンバーを備え、前記第3蒸着部は、前記上電極の上に第1透明層を形成するための蒸着チャンバーを備え、前記第4蒸着部は、前記第1透明層の上に、前記第1透明層の屈折率よりも低い屈折率を有する第2透明層を形成するための蒸着チャンバーを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2中のA-B線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、表示素子201乃至203の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、表示素子201乃至203の構成の他の例を示す図である。
【
図6】
図6は、表示装置DSPの製造方法の一例を説明するためのフロー図である。
【
図7】
図7は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図11】
図11は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図12】
図12は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図13】
図13は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図14】
図14は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図15】
図15は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図16】
図16は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図17】
図17は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図18】
図18は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図19】
図19は、製造装置100の一構成例を説明するための図である。
【
図20】
図20は、代表的な蒸着チャンバー121の一構成例を示す断面図である。
【
図21】
図21は、
図19に示した製造装置100を備える製造システム300の一構成例を示す図である。
【
図22】
図22は、製造装置100の他の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向と称し、Y軸に沿った方向を第2方向と称し、Z軸に沿った方向を第3方向と称する。第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0009】
本実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末等に搭載され得る。
【0010】
図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。
表示装置DSPは、絶縁性の基板10の上に、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの周辺の周辺領域SAと、を有している。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0011】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形に限らず、正方形、円形あるいは楕円形などの他の形状であってもよい。
【0012】
表示領域DAは、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、第1色の副画素SP1、第2色の副画素SP2、及び、第3色の副画素SP3を含む。第1色、第2色、及び、第3色は、互いに異なる色である。なお、画素PXは、副画素SP1,SP2,SP3とともに、あるいは副画素SP1,SP2,SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0013】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子20と、を備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4と、を備えている。画素スイッチ2及び駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0014】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極及びドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極及びキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極及びドレイン電極の一方は電源線PL及びキャパシタ4に接続され、他方は表示素子20のアノードに接続されている。
【0015】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限らない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタ及びキャパシタを備えてもよい。
【0016】
表示素子20は、発光素子としての有機発光ダイオード(OLED)であり、有機EL素子と称する場合がある。
【0017】
周辺領域SAには、詳述しないが、ICチップやフレキシブルプリント回路基板を接続するための端子が設けられている。
【0018】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す図である。
図2の例においては、副画素SP2及び副画素SP3が第2方向Yに並んでいる。さらに、副画素SP2及び副画素SP3がそれぞれ副画素SP1と第1方向Xに並んでいる。
【0019】
副画素SP1,SP2,SP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP2及び副画素SP3が第2方向Yに交互に配置された列と、複数の副画素SP1が第2方向Yに配置された列とが形成される。これらの列は、第1方向Xに交互に並ぶ。
【0020】
なお、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトは
図2の例に限られない。他の一例として、各画素PXにおける副画素SP1,SP2,SP3が第1方向Xに順に並んでいてもよい。
【0021】
表示領域DAには、リブ5及び隔壁6が配置されている。リブ5は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ開口AP1,AP2,AP3を有している。
【0022】
隔壁6は、平面視においてリブ5と重なっている。隔壁6は、第1方向Xに延びる複数の第1隔壁6xと、第2方向Yに延びる複数の第2隔壁6yと、を有している。複数の第1隔壁6xは、第2方向Yに隣り合う開口AP2,AP3の間、及び、第2方向Yに隣り合う2つの開口AP1の間にそれぞれ配置されている。第2隔壁6yは、第1方向Xに隣り合う開口AP1,AP2の間、及び、第1方向Xに隣り合う開口AP1,AP3の間にそれぞれ配置されている。
【0023】
図2の例においては、第1隔壁6x及び第2隔壁6yは、互いに接続されている。これにより、隔壁6は、全体として開口AP1,AP2,AP3を囲う格子状に形成されている。隔壁6は、リブ5と同様に副画素SP1,SP2,SP3において開口を有するということもできる。
【0024】
副画素SP1,SP2,SP3は、表示素子20として、それぞれ表示素子201,202,203を備えている。
副画素SP1は、開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1、上電極UE1及び有機層OR1を備えている。副画素SP2は、開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2、上電極UE2及び有機層OR2を備えている。副画素SP3は、開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3、上電極UE3及び有機層OR3を備えている。
【0025】
図2の例においては、下電極LE1、LE2、LE3の外形は点線で示し、有機層OR1、OR2、OR3、及び、上電極UE1、UE2、UE3の外形は一点鎖線で示している。下電極LE1、LE2、LE3のそれぞれの周縁部は、リブ5に重なっている。なお、図示した下電極、有機層、上電極のそれぞれの外形は、正確な形状を反映したものとは限らない。
【0026】
下電極LE1、上電極UE1、及び、有機層OR1は、副画素SP1の表示素子201を構成する。下電極LE2、上電極UE2、及び、有機層OR2は、副画素SP2の表示素子202を構成する。下電極LE3、上電極UE3、及び、有機層OR3は、副画素SP3の表示素子203を構成する。
【0027】
下電極LE1、LE2、LE3は、例えば、表示素子のアノードに相当する。上電極UE1、UE2、UE3は、表示素子のカソード、あるいは、共通電極に相当する。
【0028】
下電極LE1は、コンタクトホールCH1を通じて副画素SP1の画素回路1(
図1参照)に接続されている。下電極LE2は、コンタクトホールCH2を通じて副画素SP2の画素回路1に接続されている。下電極LE3は、コンタクトホールCH3を通じて副画素SP3の画素回路1に接続されている。
【0029】
図2の例においては、開口AP1の面積が開口AP2の面積よりも大きく、開口AP2の面積が開口AP3の面積よりも大きい。換言すると、開口AP1から露出した下電極LE1の面積は開口AP2から露出した下電極LE2の面積よりも大きく、開口AP2から露出した下電極LE2の面積は開口AP3から露出した下電極LE3の面積よりも大きい。
【0030】
例えば、副画素SP1の表示素子201は、青波長域の光を放つように構成される。また、副画素SP2の表示素子202は、緑波長域の光を放つように構成され、また、副画素SP3の表示素子203は、赤波長域の光を放つように構成される。
【0031】
図3は、
図2中のA-B線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
上述の基板10の上に回路層11が配置されている。回路層11は、
図1に示した画素回路1などの各種回路や、走査線GL、信号線SL、電源線PLなどの各種配線を含む。回路層11は、絶縁層12により覆われている。絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。
【0032】
下電極LE1,LE2,LE3は、絶縁層12の上に配置されている。リブ5は、絶縁層12及び下電極LE1,LE2,LE3の上に配置されている。下電極LE1,LE2,LE3の端部は、リブ5により覆われている。つまり、下電極LE1,LE2,LE3の端部は、絶縁層12とリブ5との間に配置されている。下電極LE1,LE2,LE3のうち、互いに隣接する下電極の間では、絶縁層12がリブ5により覆われている。
【0033】
隔壁6は、リブ5の上に配置された下部(茎)61と、下部61の上に配置された上部(笠)62と、を含む。図の左側に示した隔壁6の下部61は、開口AP1と開口AP2との間に位置している。図の右側に示した隔壁6の下部61は、開口AP2と開口AP3との間に位置している。上部62は、下部61よりも大きい幅を有している。これにより、上部62の両端部が下部61の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状ということもできる。上部62のうち、下部61よりも開口AP1に向かって突出した部分は突出部621と称し、下部61よりも開口AP2に向かって突出した部分は突出部622と称し、下部61よりも開口AP3に向かって突出した部分は突出部623と称する。
【0034】
有機層OR1は、開口AP1を通じて下電極LE1に接触し、下電極LE1を覆うとともに、リブ5の一部に重なっている。上電極UE1は、下電極LE1と対向するとともに、有機層OR1の上に配置されている。さらに、上電極UE1は、下部61の側面に接触している。有機層OR1及び上電極UE1は、上部62よりも下方に位置している。
【0035】
有機層OR2は、開口AP2を通じて下電極LE2に接触し、下電極LE2を覆うとともに、リブ5の一部に重なっている。上電極UE2は、下電極LE2と対向するとともに、有機層OR2の上に配置されている。さらに、上電極UE2は、下部61の側面に接触している。有機層OR2及び上電極UE2は、上部62よりも下方に位置している。
【0036】
有機層OR3は、開口AP3を通じて下電極LE3に接触し、下電極LE3を覆うとともに、リブ5の一部に重なっている。上電極UE3は、下電極LE3と対向するとともに、有機層OR3の上に配置されている。さらに、上電極UE3は、下部61の側面に接触している。有機層OR3及び上電極UE3は、上部62よりも下方に位置している。
【0037】
副画素SP1,SP2,SP3は、さらに、有機層OR1,OR2,OR3の発光層が発する光の光学特性を調整するためのキャップ層(光学調整層)CP1、CP2、CP3を含む。
キャップ層CP1は、開口AP1に位置し、上部62よりも下方に位置し、上電極UE1の上に配置されている。キャップ層CP2は、開口AP2に位置し、上部62よりも下方に位置し、上電極UE2の上に配置されている。キャップ層CP3は、開口AP3に位置し、上部62よりも下方に位置し、上電極UE3の上に配置されている。
【0038】
副画素SP1,SP2,SP3には、封止層SE1,SE2,SE3がそれぞれ配置されている。
封止層SE1は、キャップ層CP1、及び、隔壁6の下部61及び上部62に接し、副画素SP1の各部材を連続的に覆っている。封止層SE2は、キャップ層CP2、及び、隔壁6の下部61及び上部62に接し、副画素SP2の各部材を連続的に覆っている。封止層SE3は、キャップ層CP3、及び、隔壁6の下部61及び上部62に接し、副画素SP3の各部材を連続的に覆っている。
封止層SE1,SE2,SE3は、保護層13により覆われている。保護層13は、封止層14により覆われている。
【0039】
図示した例では、有機層OR1の一部、上電極UE1の一部、及び、キャップ層CP1の一部は、隔壁6と封止層SE1との間に位置し、上部62の上に配置され、上部62よりも下方に位置する部分とは離間している。
また、有機層OR2の一部、上電極UE2の一部、及び、キャップ層CP2の一部は、隔壁6と封止層SE2との間に位置し、上部62の上に配置され、上部62よりも下方に位置する部分とは離間している。
また、有機層OR3の一部、上電極UE3の一部、及び、キャップ層CP3の一部は、隔壁6と封止層SE3との間に位置し、上部62の上に配置され、上部62よりも下方に位置する部分とは離間している。
【0040】
絶縁層12は、有機絶縁層である。リブ5、及び、封止層SE1,SE2,SE3は、無機絶縁層である。
【0041】
リブ5は、無機絶縁材料の一例であるシリコン窒化物(SiNx)で形成されている。なお、リブ5は、他の無機絶縁材料として、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)、または、酸化アルミニウム(Al2O3)のいずれかの単層体として形成されてもよい。また、リブ5は、シリコン窒化物層、シリコン酸化物層、シリコン酸窒化物層、及び、酸化アルミニウム層のうちの少なくとも2つの組合せによる積層体として形成されてもよい。
封止層SE1,SE2,SE3は、例えば、同一の無機絶縁材料で形成されている。
封止層SE1,SE2,SE3は、無機絶縁材料の一例であるシリコン窒化物(SiNx)で形成されている。なお、封止層SE1,SE2,SE3は、他の無機絶縁材料として、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)、または、酸化アルミニウム(Al2O3)のいずれかの単層体として形成されてもよい。また、封止層SE1,SE2,SE3は、シリコン窒化物層、シリコン酸化物層、シリコン酸窒化物層、及び、酸化アルミニウム層のうちの少なくとも2つの組合せによる積層体として形成されてもよい。このため、封止層SE1,SE2,SE3は、リブ5と同一材料で形成される場合があり得る。
【0042】
隔壁6の下部61は、導電材料によって形成され、上電極UE1,UE2,UE3と電気的に接続されている。隔壁6の下部61及び上部62がいずれも導電材料によって形成されてもよい。
【0043】
リブ5の厚さは、隔壁6や絶縁層12の厚さに比べて十分に小さい。一例では、リブ5の厚さは、200nm以上かつ400nm以下である。
隔壁6の下部61の厚さ(リブ5の上面から上部62の下面までの厚さ)は、リブ5の厚さより大きい。
封止層SE1の厚さ、封止層SE2の厚さ、及び、封止層SE3の厚さは、ほぼ同等であり、例えば、1μm程度である。
【0044】
下電極LE1,LE2,LE3は、ITOなどの透明導電材料で形成されてもよいし、銀(Ag)などの金属材料と透明導電材料との積層構造を有してもよい。上電極UE1,UE2,UE3は、例えばマグネシウム及び銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。上電極UE1,UE2,UE3は、ITOなどの透明導電材料で形成されてもよい。
【0045】
有機層OR1,OR2,OR3の各々は、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層などの複数の機能層を含む。また、有機層OR1は、発光層EM1を含む。有機層OR2は、発光層EM2を含む。発光層EM2は、発光層EM1とは異なる材料で形成されている。有機層OR3は、発光層EM3を含む。発光層EM3は、発光層EM1及びEM2とは異なる材料で形成されている。
【0046】
発光層EM1を形成する材料、発光層EM2を形成する材料、及び、発光層EM3を形成する材料は、互いに異なる波長域の光を放つ材料である。
一例では、発光層EM1は、青波長域の光を放つ材料によって形成され、発光層EM2は、緑波長域の光を放つ材料によって形成され、発光層EM3は、赤波長域の光を放つ材料によって形成されている。
【0047】
キャップ層CP1、CP2、CP3は、例えば、透明な薄膜の多層体によって形成されている。多層体は、薄膜として、有機材料によって形成された薄膜を含んでいる。また、これらの複数の薄膜は、互いに異なる屈折率を有している。多層体を構成する薄膜の材料は、上電極UE1、UE2、UE3の材料とは異なり、また、封止層SE1、SE2、SE3の材料とも異なる。
【0048】
保護層13は、透明な有機絶縁層である。封止層14は、透明な無機絶縁層である。封止層14は、無機絶縁材料の一例であるシリコン窒化物(SiNx)で形成されている。
【0049】
隔壁6には、共通電圧が供給されている。この共通電圧は、下部61の側面に接触した上電極UE1,UE2,UE3にそれぞれ供給される。下電極LE1,LE2,LE3には、副画素SP1,SP2,SP3がそれぞれ有する画素回路1を通じて画素電圧が供給される。
【0050】
下電極LE1と上電極UE1の間に電位差が形成されると、有機層OR1のうちの発光層EM1が青波長域の光を放つ。下電極LE2と上電極UE2の間に電位差が形成されると、有機層OR2のうちの発光層EM2が緑波長域の光を放つ。下電極LE3と上電極UE3の間に電位差が形成されると、有機層OR3のうちの発光層EM3が赤波長域の光を放つ。
【0051】
図4は、表示素子201乃至203の構成の一例を示す図である。
なお、ここでは、下電極がアノードに相当し、上電極がカソードに相当する場合を例について説明する。
【0052】
表示素子201は、下電極LE1と上電極UE1との間に有機層OR1を含む。
有機層OR1において、正孔注入層HIL1、正孔輸送層HTL1、電子ブロック層EBL1、発光層EM1、正孔ブロック層HBL1、電子輸送層ETL1、及び、電子注入層EIL1は、この順に積層されている。
キャップ層CP1は、第1透明層TL11及び第2透明層TL12を含む。第1透明層TL11は、上電極UE1の上に配置されている。第2透明層TL12は、第1透明層TL11の上に配置されている。封止層SE1は、第2透明層TL12の上に配置されている。
【0053】
表示素子202は、下電極LE2と上電極UE2との間に有機層OR2を含む。
有機層OR2において、正孔注入層HIL2、正孔輸送層HTL2、電子ブロック層EBL2、発光層EM2、正孔ブロック層HBL2、電子輸送層ETL2、及び、電子注入層EIL2は、この順に積層されている。一例では、正孔輸送層HTL2の厚さT2は、正孔輸送層HTL1の厚さT1より大きい。
キャップ層CP2は、第1透明層TL21及び第2透明層TL22を含む。第1透明層TL21は、上電極UE2の上に配置されている。第2透明層TL22は、第1透明層TL21の上に配置されている。封止層SE2は、第2透明層TL22の上に配置されている。
【0054】
表示素子203は、下電極LE3と上電極UE3との間に有機層OR3を含む。
有機層OR3において、正孔注入層HIL3、正孔輸送層HTL3、電子ブロック層EBL3、発光層EM3、正孔ブロック層HBL3、電子輸送層ETL3、及び、電子注入層EIL3は、この順に積層されている。一例では、正孔輸送層HTL3の厚さT3は、正孔輸送層HTL2の厚さT2より大きい。
キャップ層CP3は、第1透明層TL31及び第2透明層TL32を含む。第1透明層TL31は、上電極UE3の上に配置されている。第2透明層TL32は、第1透明層TL31の上に配置されている。封止層SE3は、第2透明層TL32の上に配置されている。
【0055】
第1透明層TL11、TL21、TL31は、第1有機材料によって形成された透明な有機層であり、また、上電極UE1、UE2、UE3よりも大きい屈折率を有する高屈折率層である。一例では、第1透明層TL11、TL21、TL31の屈折率は、1.7以上であり、2.0以下である。
【0056】
第2透明層TL12、TL22、TL32は、第2有機材料によって形成された透明な有機層であり、第1透明層TL11、TL21、TL31よりも小さい屈折率を有する低屈折率層である。一例では、第2透明層TL12、TL22、TL32の屈折率は、1.3以上であり、1.6以下である。
【0057】
なお、第2透明層TL12、TL22、TL32に接する封止層SE1、SE2、SE3の屈折率は、第2透明層TL12、TL22、TL32の屈折率よりも大きい。一例では、封止層SE1、SE2、SE3の屈折率は、1.7以上であり、2.0以下である。
【0058】
第2透明層TL12、TL22、TL32を形成するため第2有機材料としては、主鎖が炭素によって構成され、置換基にフッ素を含むフッ素系樹脂が好適である。第2透明層TL12、TL22、TL32は、蒸着法により形成することができる。このような第2透明層TL12、TL22、TL32の厚さは、例えば、20nm~500nmである。
【0059】
第1透明層TL11、TL21、TL31は、互いに離間しており、それぞれ個別に形成される。このため、第1透明層TL11、TL21、TL31のすべてが同一材料で形成される場合があり得るし、第1透明層TL11、TL21、TL31のうちの1つの透明層が他の2つの透明層とは異なる材料で形成される場合があり得るし、第1透明層TL11、TL21、TL31のすべてが互いに異なる材料で形成される場合があり得る。
【0060】
第2透明層TL12、TL22、TL32は、互いに離間しており、それぞれ個別に形成される。このため、第2透明層TL12、TL22、TL32のすべてが同一材料で形成される場合があり得るし、第2透明層TL12、TL22、TL32のうちの1つの透明層が他の2つの透明層とは異なる材料で形成される場合があり得るし、第2透明層TL12、TL22、TL32のすべてが互いに異なる材料で形成される場合があり得る。
【0061】
第1透明層TL11、TL21、TL31の各々の厚さは、すべてが同一である場合があり得るし、互いに異なる場合があり得る。
また、第2透明層TL12、TL22、TL32の各々の厚さは、すべてが同一である場合があり得るし、互いに異なる場合があり得る。
【0062】
一例では、第2透明層TL12、TL22、TL32の各々の厚さはすべて同一であり、青用の表示素子201における第1透明層TL11の厚さは、赤用の表示素子203における第1透明層TL31の厚さより小さい。
そして、表示素子201においては、第2透明層TL12の厚さは第1透明層TL11の厚さより大きい。また、表示素子203においては、第1透明層TL31の厚さは第2透明層TL32の厚さより小さい。
【0063】
なお、第2透明層TL12、TL22、TL32は、フッ化リチウムなどの無機材料によって形成されてもよい。
【0064】
キャップ層CP1乃至CP3のすべての層構成が同一である場合があり得るし、キャップ層CP1乃至CP3のうちの1つキャップ層の層構成が他の2つのキャップ層の層構成とは異なる場合があり得るし、キャップ層CP1乃至CP3のすべての層構成が互いに異なる場合もあり得る。
また、キャップ層CP1、CP2、CP3は、3層以上の積層体であってもよい。
【0065】
有機層OR1、OR2、OR3は、上記した機能層の他に、必要に応じてキャリア発生層などの他の機能層を含んでいてもよいし、上記した機能層の少なくとも1つが省略されてもよい。
【0066】
正孔輸送層HTL1、HTL2、HTL3の各々は、一例では、図中に点線で示すように、互いに異なる材料で形成した2つの薄膜の多層体であるが、単一材料で形成した単層体であってもよい。
【0067】
本明細書において、
図4に示す表示素子201乃至203の構成をシングル構成と称する。
【0068】
図5は、表示素子201乃至203の構成の他の例を示す図である。
なお、ここでは、下電極がアノードに相当し、上電極がカソードに相当する場合を例について説明する。
【0069】
表示素子201は、下電極LE1と上電極UE1との間に有機層OR1を含む。
有機層OR1において、正孔注入層HIL1、正孔輸送層HTL11、電子ブロック層EBL11、発光層EM11、正孔ブロック層HBL11、n型電荷発生層nCGL1、p型電荷発生層pCGL1、正孔輸送層HTL12、正孔輸送層HTL13、電子ブロック層EBL12、発光層EM12、正孔ブロック層HBL12、電子輸送層ETL1、及び、電子注入層EIL1は、この順に積層されている。
【0070】
正孔輸送層HTL11及びHTL12は、例えば、同一材料によって形成されている。正孔輸送層HTL12及びHTL13は、例えば、異なる材料によって形成されている。
【0071】
電子ブロック層EBL11及びEBL12は、例えば同一材料によって形成されるが、異なる材料によって形成されてもよい。
【0072】
発光層EM11及びEM12は、例えば同一材料によって形成されるが、異なる材料によって形成されてもよい。これらの発光層EM11及びEM12は、
図3に示した発光層EM1に相当する。
【0073】
正孔ブロック層HBL11及びHBL12は、例えば同一材料によって形成されるが、異なる材料によって形成されてもよい。
【0074】
n型電荷発生層nCGL1は、発光層EM11に電子を供給する機能層である。
p型電荷発生層pCGL1は、発光層EM12に正孔を供給する機能層である。
【0075】
第1透明層TL11及び第2透明層TL12を含むキャップ層CP1は、上電極UE1の上に配置されている。封止層SE1は、第2透明層TL12の上に配置されている。
【0076】
表示素子202は、下電極LE2と上電極UE2との間に有機層OR2を含む。
有機層OR2において、正孔注入層HIL2、正孔輸送層HTL21、電子ブロック層EBL21、発光層EM21、正孔ブロック層HBL21、n型電荷発生層nCGL2、p型電荷発生層pCGL2、正孔輸送層HTL22、正孔輸送層HTL23、電子ブロック層EBL22、発光層EM22、正孔ブロック層HBL22、電子輸送層ETL2、及び、電子注入層EIL2は、この順に積層されている。
【0077】
正孔輸送層HTL21及びHTL22は、例えば、同一材料によって形成されている。正孔輸送層HTL22及びHTL23は、例えば、異なる材料によって形成されている。一例では、正孔輸送層HTL21の厚さT21は、正孔輸送層HTL11の厚さT11より大きい。また、正孔輸送層HTL22及びHTL23の厚さT22は、正孔輸送層HTL12及びHTL13の厚さT12より大きい。
【0078】
電子ブロック層EBL21及びEBL22は、例えば同一材料によって形成されるが、異なる材料によって形成されてもよい。
【0079】
発光層EM21及びEM22は、例えば同一材料によって形成されるが、異なる材料によって形成されてもよい。これらの発光層EM21及びEM22は、
図3に示した発光層EM2に相当する。
【0080】
正孔ブロック層HBL21及びHBL22は、例えば同一材料によって形成されるが、異なる材料によって形成されてもよい。
【0081】
n型電荷発生層nCGL2は、発光層EM21に電子を供給する機能層である。
p型電荷発生層pCGL2は、発光層EM22に正孔を供給する機能層である。
【0082】
第1透明層TL21及び第2透明層TL22を含むキャップ層CP2は、上電極UE2の上に配置されている。封止層SE2は、第2透明層TL22の上に配置されている。
【0083】
表示素子203は、下電極LE3と上電極UE3との間に有機層OR3を含む。
有機層OR3において、正孔注入層HIL3、正孔輸送層HTL31、電子ブロック層EBL31、発光層EM31、正孔ブロック層HBL31、n型電荷発生層nCGL3、p型電荷発生層pCGL3、正孔輸送層HTL32、正孔輸送層HTL33、電子ブロック層EBL32、発光層EM32、正孔ブロック層HBL32、電子輸送層ETL3、及び、電子注入層EIL3は、この順に積層されている。
【0084】
正孔輸送層HTL31及びHTL32は、例えば、同一材料によって形成されている。正孔輸送層HTL32及びHTL33は、例えば、異なる材料によって形成されている。一例では、正孔輸送層HTL31の厚さT31は、正孔輸送層HTL21の厚さT21より大きい。また、正孔輸送層HTL32及びHTL33の厚さT32は、正孔輸送層HTL22及びHTL23の厚さT22より大きい。
【0085】
電子ブロック層EBL31及びEBL32は、例えば同一材料によって形成されるが、異なる材料によって形成されてもよい。
【0086】
発光層EM31及びEM32は、例えば同一材料によって形成されるが、異なる材料によって形成されてもよい。これらの発光層EM31及びEM32は、
図3に示した発光層EM3に相当する。
【0087】
正孔ブロック層HBL31及びHBL32は、例えば同一材料によって形成されるが、異なる材料によって形成されてもよい。
【0088】
n型電荷発生層nCGL3は、発光層EM31に電子を供給する機能層である。
p型電荷発生層pCGL3は、発光層EM32に正孔を供給する機能層である。
【0089】
第1透明層TL31及び第2透明層TL32を含むキャップ層CP3は、上電極UE3の上に配置されている。封止層SE3は、第2透明層TL32の上に配置されている。
【0090】
本明細書において、
図5に示す表示素子201乃至203の構成をタンデム構成と称する。
【0091】
次に、表示装置DSPの製造方法の一例について説明する。
【0092】
図6は、表示装置DSPの製造方法の一例を説明するためのフロー図である。
ここに示す製造方法は、大別して、副画素SP1、副画素SP2、及び、副画素SP3を有する処理基板SUBを用意する工程(ステップST1)と、副画素SP1の表示素子201を形成する工程(ステップST2)と、副画素SP2の表示素子202を形成する工程(ステップST3)と、副画素SP3の表示素子203を形成する工程(ステップST4)と、を含む。
【0093】
ステップST1においては、まず、基板10の上に、副画素SP1の下電極LE1、副画素SP2の下電極LE2、副画素SP3の下電極LE3、リブ5、及び、隔壁6を形成した処理基板SUBを用意する。
図3に示したように、基板10と下電極LE1、LE2、LE3との間には、回路層11及び絶縁層12も形成される。
【0094】
ステップST2においては、まず、副画素SP1、副画素SP2、及び、副画素SP3に亘って、発光層EM1を含む第1薄膜31を形成する(ステップST21)。第1薄膜31は、
図3に示した有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1、及び、封止層SE1の積層体である。その後、第1薄膜31の上に所定の形状にパターニングされた第1レジスト41を形成する(ステップST22)。その後、第1レジスト41をマスクとしたエッチングにより第1薄膜31の一部を除去する(ステップST23)。このとき、例えば、副画素SP2及び副画素SP3に配置された第1薄膜31が除去される。その後、第1レジスト41を除去する(ステップST24)。これにより、副画素SP1が形成される。副画素SP1は、所定の形状の第1薄膜31を有する表示素子201を備える。
【0095】
ステップST3においては、まず、副画素SP1、副画素SP2、及び、副画素SP3に亘って、発光層EM2を含む第2薄膜32を形成する(ステップST31)。第2薄膜32は、
図3に示した有機層OR2、上電極UE2、キャップ層CP2、及び、封止層SE2の積層体である。その後、第2薄膜32の上に所定の形状にパターニングされた第2レジスト42を形成する(ステップST32)。その後、第2レジスト42をマスクとしたエッチングにより第2薄膜32の一部を除去する(ステップST33)。このとき、例えば、副画素SP1及び副画素SP3に配置された第2薄膜32が除去される。その後、第2レジスト42を除去する(ステップST34)。これにより、副画素SP2が形成される。副画素SP2は、所定の形状の第2薄膜32を有する表示素子202を備える。
【0096】
ステップST4においては、まず、副画素SP1、副画素SP2、及び、副画素SP3に亘って、発光層EM3を含む第3薄膜33を形成する(ステップST41)。第3薄膜33は、
図3に示した有機層OR3、上電極UE3、キャップ層CP3、及び、封止層SE3の積層体である。その後、第3薄膜33の上に所定の形状にパターニングされた第3レジスト43を形成する(ステップST42)。その後、第3レジスト43をマスクとしたエッチングにより第3薄膜33の一部を除去する(ステップST43)。このとき、例えば、副画素SP1及び副画素SP2に配置された第3薄膜33が除去される。その後、第3レジスト43を除去する(ステップST44)。これにより、副画素SP3が形成される。副画素SP3は、所定の形状の第3薄膜33を有する表示素子203を備える。
【0097】
なお、第2薄膜32、第2レジスト42、第3薄膜33、及び、第3レジスト43の詳細な図示は省略する。
【0098】
以下、ステップST1及びステップST2について
図7乃至
図18を参照しながら説明する。なお、
図7乃至
図18に示す各断面は、例えば
図2中のA-B線に沿う断面に相当する。
【0099】
まず、ステップST1においては、
図7に示すように、処理基板SUBを用意する。処理基板SUBを用意する工程は、基板10の上に回路層11を形成する工程と、回路層11の上に絶縁層12を形成する工程と、絶縁層12の上に、副画素SP1の下電極LE1、副画素SP2の下電極LE2、副画素SP3の下電極LE3を形成する工程と、下電極LE1、LE2、LE3の各々と重なる開口AP1、AP2、AP3を有するリブ5を形成する工程と、リブ5の上に配置された下部61及び下部61の上に配置され下部61の側面から突出した上部62を含む隔壁6を形成する工程と、を含む。リブ5は、例えばシリコン窒化物で形成する。隔壁6のうち、少なくとも下部61は、導電材料で形成する。なお、
図8乃至
図18の各図においては、絶縁層12よりも下層の基板10及び回路層11の図示を省略する。
【0100】
続いて、ステップST21においては、
図8乃至
図13に示すように、副画素SP1、副画素SP2、及び、副画素SP3に亘って、第1薄膜31を形成する。
【0101】
第1薄膜31を形成する工程は、例えば、以下の通りである。
【0102】
まず、
図8に示すように、処理基板SUBの上に、発光層EM1を含む有機層OR1を形成する。
有機層OR1は、下電極LE1、下電極LE2、及び、下電極LE3の上にそれぞれ形成されるとともに、隔壁6の上にも形成されている。有機層OR1のうち、上部62の上に形成された部分は、下電極LE1、LE2、LE3の上に形成された部分から離間している。有機層OR1の発光層EM1及び各種機能層は、蒸着法により形成される。
【0103】
なお、有機層OR1は、
図4に示したシングル構成であってもよいし、
図5に示したタンデム構成であってもよい。
【0104】
続いて、
図9に示すように、有機層OR1の上に、上電極UE1を形成する。
上電極UE1は、下電極LE1、下電極LE2、及び、下電極LE3の直上において、有機層OR1の上にそれぞれ形成され、リブ5を覆い、隔壁6の下部61に接している。また、上電極UE1は、上部62の直上において、有機層OR1の上にも形成されている。上電極UE1のうち、上部62の直上に形成された部分は、下電極LE1、LE2、LE3の直上に形成された部分から離間している。上電極UE1は、蒸着法により、マグネシウム及び銀の合金で形成される。
【0105】
続いて、
図10に示すように、上電極UE1の上にキャップ層CP1の第1透明層TL11を形成する。
第1透明層TL11は、下電極LE1、下電極LE2、及び、下電極LE3の直上において、上電極UE1の上にそれぞれ形成されるとともに、上部62の直上において、上電極UE1の上にも形成されている。第1透明層TL11のうち、上部62の直上に形成された部分は、下電極LE1、LE2、LE3の直上に形成された部分から離間している。第1透明層TL11は、蒸着法により、第1有機材料で形成される。
【0106】
続いて、
図11に示すように、第1透明層TL11の上にキャップ層CP1の第2透明層TL12を形成する。
【0107】
第2透明層TL12は、下電極LE1、下電極LE2、及び、下電極LE3の直上において、第1透明層TL11の上にそれぞれ形成されるとともに、上部62の直上において、第1透明層TL11の上にも形成されている。第2透明層TL12のうち、上部62の直上に形成された部分は、下電極LE1、LE2、LE3の直上に形成された部分から離間している。第2透明層TL12は、蒸着法により、例えば第2有機材料で形成される。第2有機材料は、第1有機材料とは異なる材料である。また、第2有機材料の屈折率は、第1有機材料の屈折率より低い。
これらの第1透明層TL11及び第2透明層TL12の積層体は、キャップ層CP1を形成する。
【0108】
続いて、
図12に示すように、第2透明層TL12の上に封止層SE1を形成する。つまり、図示した例では、第1薄膜31は、有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1、及び、封止層SE1を含む。
【0109】
封止層SE1は、第2透明層TL12、及び、隔壁6を覆うように形成されている。つまり、封止層SE1は、下電極LE1、下電極LE2、及び、下電極LE3の直上において、第2透明層TL12の上にそれぞれ形成されるとともに、上部62の直上において、第2透明層TL12の上にも形成されている。しかも、封止層SE1は、隔壁6の下部61も接している。封止層SE1において、上部62の直上に形成された部分は、各下電極の直上に形成された部分と繋がっている。
【0110】
このような封止層SE1を形成する工程について
図13を参照しながらさらに説明する。なお、
図13では、副画素SP1及び副画素SP2に亘る処理基板の断面を示している。
【0111】
まず、
図13の上段に示すように、第1無機絶縁層IL1を形成する。第1無機絶縁層IL1は、CVD法(Chemical-Vapor Deposition)により、シリコン窒化物で形成される。
【0112】
副画素SP1に位置する第1無機絶縁層IL1に着目すると、第1無機絶縁層IL1は、キャップ層CP1に接し、隔壁6の下部61の側面に接し、また、隔壁6の上部62に接している。また、第1無機絶縁層IL1は、上部62の下方に、閉じた空隙Vを有している。下電極LE1の直上において、第1無機絶縁層IL1の厚さT101は、例えば3μmである。
【0113】
その後、
図13の中段に示すように、レジストを介することなく、第1無機絶縁層IL1の全体の異方性ドライエッチングを行う。異方性ドライエッチングでは、等方性ドライエッチングと比較して、サイドエッチングが進行しにくい。このため、下電極LE1、LE2の直上に位置する第1無機絶縁層IL1の厚さが低減し、また、隔壁6の上部62の直上に位置する第1無機絶縁層IL1の厚さが低減し、さらには、空隙Vの先端側の第1無機絶縁層IL1が除去され、空隙Vが開放される。異方性ドライエッチングを行った後、下電極LE1の直上において、第1無機絶縁層IL1の厚さT102は、例えば0.3μmである。
【0114】
なお、隔壁6の上部62の下方に位置する第1無機絶縁層IL1は、ほとんど除去されない。つまり、異方性ドライエッチングを行った後において、第1無機絶縁層IL1は、隔壁6の下部61の側面、及び、隔壁6の上部62の底面を覆っている。
【0115】
その後、
図13の下段に示すように、第1無機絶縁層IL1の上に第2無機絶縁層IL2を形成する。第2無機絶縁層IL2は、第1無機絶縁層IL1と同一材料で形成する。つまり、第2無機絶縁層IL2は、CVD法により、シリコン窒化物で形成される。第1無機絶縁層IL1及び第2無機絶縁層IL2が同一材料で形成された場合、両者の界面はほとんど認識されない。つまり、
図12に示した封止層SE1は、第1無機絶縁層IL1及び第2無機絶縁層IL2の積層体であるが、単一層とみなすことができる。このため、封止層SE1の内部での不所望な光の反射や散乱が抑制される。
【0116】
また、図示した例では、封止層SE1は、上部62の下方に、空隙を含まない。このように、封止層SE1が空隙を含まないことにより、空隙を起点としたクラックを防止することができる。なお、封止層SE1は、
図13の上段に示した空隙Vよりも小さい空隙を含む場合があり得る。
【0117】
続いて、ステップST22においては、
図14に示すように、封止層SE1の上のパターニングした第1レジスト41を形成する。第1レジスト41は、副画素SP1の第1薄膜31を覆い、副画素SP2及び副画素SP3の第1薄膜31を露出する。つまり、第1レジスト41は、下電極LE1の直上に位置する封止層SE1に重なっている。また、第1レジスト41は、副画素SP1から隔壁6の上方に延出している。副画素SP1と副画素SP2との間の隔壁6の直上において、第1レジスト41は、副画素SP1側(図の左側)に配置され、副画素SP2側(図の右側)では封止層SE1を露出している。また、第1レジスト41は、副画素SP2及び副画素SP3において、封止層SE1を露出している。
【0118】
その後、ステップST23においては、
図15乃至
図17に示すように、第1レジスト41をマスクとしてエッチングを行い、第1レジスト41から露出した副画素SP2及び副画素SP3の第1薄膜31を除去し、副画素SP1に第1薄膜31が残留する。
【0119】
第1薄膜31を除去する工程は、例えば、以下の通りである。
まず、
図15に示すように、第1レジスト41をマスクとして利用し、ドライエッチングを行い、第1レジスト41から露出した封止層SE1を除去する。これにより、キャップ層CP1のうち、一部の第2透明層TL12が封止層SE1から露出する。
【0120】
その後、
図16に示すように、第1レジスト41をマスクとして利用し、アッシング(酸素プラズマを照射するドライエッチング)を行い、封止層SE1から露出した第2透明層TL12を除去する。
これに続いて、第1レジスト41をマスクとして利用し、アッシングを行い、第2透明層TL12から露出した第1透明層TL11を除去する。これにより、一部の上電極UE1がキャップ層CP1から露出する。
【0121】
その後、
図17に示すように、第1レジスト41をマスクとして利用し、ウエットエッチングを行い、第1透明層TL11から露出した上電極UE1を除去する。
その後、第1レジスト41をマスクとして利用し、アッシングを行い、上電極UE1から露出した有機層OR1を除去する。
これにより、副画素SP2において下電極LE2が露出し、また、下電極LE2を囲むリブ5が露出する。また、副画素SP3において下電極LE3が露出し、また、下電極LE3を囲むリブ5が露出する。また、副画素SP1と副画素SP2との間の隔壁6において、副画素SP2側が露出する。また、副画素SP2と副画素SP3との間の隔壁6が露出する。
【0122】
その後、ステップST24においては、
図18に示すように、第1レジスト41を除去する。これにより、副画素SP1の封止層SE1が露出する。これらのステップST21乃至ST24を経て、副画素SP1において、表示素子201が形成される。表示素子201は、下電極LE1、発光層EM1を含む有機層OR1、上電極UE1、第1透明層TL11、及び、第2透明層TL12によって構成される。また、表示素子201は、封止層SE1によって覆われている。
【0123】
副画素SP1と副画素SP2との間の隔壁6の上には、発光層EM1を含む有機層OR1、上電極UE1、第1透明層TL11、第2透明層TL12、及び、封止層SE1の積層体が形成される。隔壁6の上の積層体は、表示素子201を構成する有機層OR1、上電極UE1、第1透明層TL11、第2透明層TL12、及び、封止層SE1からそれぞれ離間している。また、隔壁6のうち、副画素SP1の側の部分は、封止層SE1で覆われる。なお、
図18に示した隔壁6上の積層体は、完全に除去される場合があり得る。
【0124】
図6に示したステップST31乃至ST34は、上記のステップST21乃至ST24と同様である。これらのステップST31乃至ST34を経て、
図3に示した副画素SP2において、表示素子202が形成される。表示素子202は、下電極LE2、発光層EM2を含む有機層OR2、上電極UE2、第1透明層TL21、及び、第2透明層TL22によって構成される。また、表示素子202は、封止層SE2によって覆われている。
【0125】
図6に示したステップST41乃至ST44も、上記のステップST21乃至ST24と同様である。これらのステップST41乃至ST44を経て、
図3に示した副画素SP3において、表示素子203が形成される。表示素子203は、下電極LE3、発光層EM3を含む有機層OR3、上電極UE3、第1透明層TL31、及び、第2透明層TL32によって構成される。また、表示素子203は、封止層SE3によって覆われている。
【0126】
本実施形態によれば、表示素子201乃至203の各々は、光学調整層として機能するキャップ層CP1乃至CP3をそれぞれ備えている。このため、発光層EM1乃至EM3でそれぞれ放射された光は、キャップ層CP1乃至CP3を構成する第1透明層と第2透明層との界面で反射され、上電極で再び反射される。このような反射光の干渉を利用したマイクロキャビティ効果により、1つの表示素子当たりの光取出効率を向上することができる。
【0127】
次に、表示装置DSPの製造装置について説明する。ここでは、一例として、
図5に示したタンデム構成の表示素子201を形成するための製造装置100について説明する。なお、タンデム構成の表示素子202及び203を形成するための製造装置は、ここに説明する製造装置100と同様に構成することができる。
【0128】
図19は、製造装置100の一構成例を説明するための図である。
製造装置100は、
図6を参照して説明した第1薄膜31を形成する工程(ステップST21)で適用される。製造装置100に搬入される処理基板SUBには、マスクは設置されていない。また、製造装置100の内部において、処理基板SUBにマスクが設置されることもない。
【0129】
製造装置100は、前処理部100Aと、第1蒸着部100Bと、第2蒸着部100Cと、第3蒸着部100Dと、第4蒸着部100Eと、後処理部100Fと、搬送機構Tと、を備えている。前処理部100Aは、搬送機構Tの第1方向(図中の実線の矢印)TAに沿った上流に連結されている。後処理部100Fは、搬送機構Tの第1方向TAに沿った下流に連結されている。
【0130】
前処理部100Aは、処理基板SUBに対して所定の前処理を行うように構成されている。前処理部100Aは、第1ロードロックチャンバー101と、ベーク部102と、移送チャンバー103と、プラズマ処理部104と、固定部105と、を備えている。
【0131】
第1ロードロックチャンバー101は、ステップST1で説明した下電極、リブ、隔壁などを備えた処理基板SUBが水平に搬入された後に、チャンバーの内部を減圧する真空ポンプを備えている。
【0132】
ベーク部102は、第1ロードロックチャンバー101及び移送チャンバー103に連結されたハンドリングチャンバー106と、ハンドリングチャンバー106に連結された複数のベークチャンバー107と、を備えている。
【0133】
ハンドリングチャンバー106は、ゲートバルブV1を介して第1ロードロックチャンバー101に連結されている。第1ロードロックチャンバー101に搬入された処理基板SUBを取り出してベークチャンバー107に搬送し、また、ベークチャンバー107に搬送された処理基板SUBを取り出して移送チャンバー103に搬送する搬送ロボットを備えている。ベークチャンバー107は、洗浄された処理基板SUBを低温で加熱し、処理基板SUBから水分を除去する加熱機構を備えている。
【0134】
プラズマ処理部104は、移送チャンバー103及び固定部105に連結されたハンドリングチャンバー108と、ハンドリングチャンバー108に連結された複数のプラズマチャンバー109と、を備えている。
【0135】
ハンドリングチャンバー108は、移送チャンバー103に搬送された処理基板SUBを取り出してプラズマチャンバー109に搬送し、また、プラズマチャンバー109に搬送された処理基板SUBを取り出して固定部105に搬送する搬送ロボットを備えている。プラズマチャンバー109は、処理基板SUBにプラズマを照射して、下電極LE1、LE2、LE3の表面を改質するプラズマ源を備えている。
【0136】
固定部105は、ハンドリングチャンバー108により搬送された処理基板SUBを静電チャックにより専用のキャリアCRに固定する機構を備えている。また、図示した例では、固定部105は、水平に搬送された処理基板SUBを90度回転させ、垂直に立ち上げる縦起こし機構を備えている。固定部105は、処理基板SUBが固定されたキャリアCRを搬送機構Tに搬送する。
【0137】
搬送機構Tは、第1搬送部T10と、第2搬送部T20と、第3搬送部T30と、方向転換部111及び112と、を備えている。第1搬送部T10は、固定部105及び方向転換部111に連結されている。第2搬送部T20は、方向転換部111及び112に連結されている。第3搬送部T30は、方向転換部112及び後処理部100Fの取り外し部141に連結されている。
【0138】
第1搬送部T10は、第1レールR11と、第2レールR12と、を備えている。
第2搬送部T20は、第1レールR21と、第2レールR22と、を備えている。
第3搬送部T30は、第1レールR31と、第2レールR32と、を備えている。
【0139】
第1レールR11、R21、R31は、図中の実線で示す第1方向TAに沿って、処理基板SUBが固定されたキャリアCRを搬送するために設けられている。
第2レールR12、R22、R32は、図中の一点鎖線で示す第2方向TBに沿って、処理基板SUBから取り外されたキャリアCRを搬送するために設けられている。第2方向TBは、第1方向TAとは逆向きの方向である。
【0140】
図示した例では、方向転換部111及び112は、キャリアCRの搬送方向を90°転換するように構成されている。
【0141】
搬送機構Tは、前処理部100Aから搬送された処理基板SUB及びキャリアCRを受け取り、第1方向TAに沿って搬送し、後処理部100Fに搬送するように構成されている。また、搬送機構Tは、後処理部100Fから搬送されたキャリアCRを受け取り、第2方向TBに沿って搬送し、前処理部100Aに搬送するように構成されている。
【0142】
また、搬送機構Tは、方向転換部111に連結された格納部171と、方向転換部112に連結された格納部172と、を備えている。格納部171及び172は、例えば製造装置100のメンテナンスの際に、キャリアCRを一時的に格納するために設けられている。
【0143】
第1蒸着部100B、第2蒸着部100C、第3蒸着部100D、及び、第4蒸着部100Eは、搬送機構Tの第1方向TAに沿って順に並んでいる。つまり、第1蒸着部100Bは第1方向TAに沿った上流に位置し、第4蒸着部100Eは第1方向TAに沿った下流に位置している。
【0144】
第1蒸着部100Bは、
図8を参照して説明したように、処理基板SUBにおいて下電極LE1、LE2、LE3の上に有機層OR1を形成するための複数の蒸着チャンバー121乃至134を備えている。
蒸着チャンバー121乃至131は、第1搬送部T10の第1方向TAに沿って順に並んでいる。
蒸着チャンバー132乃至134は、第3搬送部T30の第1方向TAに沿って順に並んでいる。
【0145】
蒸着チャンバー121は、下電極LE1、LE2、LE3の上に、正孔注入層HIL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー122は、正孔注入層HIL1の上に、正孔輸送層HTL11を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー123は、正孔輸送層HTL11の上に、電子ブロック層EBL11を形成するように構成されている。
【0146】
蒸着チャンバー124は、電子ブロック層EBL11の上に、発光層EM11を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー125は、発光層EM11の上に、正孔ブロック層HBL11を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー126は、正孔ブロック層HBL11の上に、n型電荷発生層nCGL1を形成するように構成されている。
【0147】
蒸着チャンバー127は、n型電荷発生層nCGL1の上に、p型電荷発生層pCGL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー128は、p型電荷発生層pCGL1の上に、正孔輸送層HTL12を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー129は、正孔輸送層HTL12の上に、正孔輸送層HTL13を形成するように構成されている。
【0148】
蒸着チャンバー130は、正孔輸送層HTL13の上に、電子ブロック層EBL12を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー131は、電子ブロック層EBL12の上に、発光層EM12を形成するように構成されている。
【0149】
蒸着チャンバー132は、発光層EM12の上に、正孔ブロック層HBL12を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー133は、正孔ブロック層HBL12の上に、電子輸送層ETL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー134は、電子輸送層ETL1の上に、電子注入層EIL1を形成するように構成されている。
【0150】
第2蒸着部100Cは、
図9を参照して説明したように、有機層OR1(電子注入層EIL1)の上に、上電極UE1を形成するための蒸着チャンバー135を備えている。蒸着チャンバー135は、第1方向TAに沿った蒸着チャンバー134の下流に位置している。
【0151】
第3蒸着部100Dは、
図10を参照して説明したように、上電極UE1の上に、第1透明層TL11を形成するための蒸着チャンバー136を備えている。
第4蒸着部100Eは、
図11を参照して説明したように、第1透明層TL11の上に、第2透明層TL12を形成するための蒸着チャンバー137を備えている。
【0152】
蒸着チャンバー135乃至137は、第3搬送部T30の第1方向TAに沿って順に並んでいる。
【0153】
後処理部100Fは、処理基板SUBに対して所定の後処理を行うように構成されている。後処理部100Fは、取り外し部141と、ハンドリングチャンバー142と、移送チャンバー143と、第1堆積部144と、移送チャンバー145と、エッチング部146と、移送チャンバー147と、第2堆積部148と、第2ロードロックチャンバー149と、を備えている。
【0154】
取り外し部141は、搬送機構Tの第3搬送部T30に連結されている。取り外し部141は、第3搬送部T30の第1レールR31を経て搬送された処理基板SUB及びキャリアCRを受け入れ、静電チャックによる固定を解除し、キャリアCRから処理基板SUBを取り外す機構を備えている。また、図示した例では、取り外し部141は、垂直に搬送された処理基板SUBを90度回転させ、水平に倒す機構を備えている。
【0155】
ハンドリングチャンバー142は、取り外し部141及び移送チャンバー143に連結されている。ハンドリングチャンバー142は、取り外し部141に搬送された処理基板SUBを移送チャンバー143に搬送する搬送ロボットを備えている。
【0156】
第1堆積部144は、移送チャンバー143及び移送チャンバー153に連結されたハンドリングチャンバー151と、ハンドリングチャンバー151に連結された複数のCVDチャンバー152と、移送チャンバー153及び移送チャンバー145に連結されたハンドリングチャンバー154と、ハンドリングチャンバー154に連結された複数のCVDチャンバー155と、を備えている。
【0157】
ハンドリングチャンバー151は、移送チャンバー143から処理基板SUBを取り出していずれかのCVDチャンバー152に搬送し、また、CVDチャンバー152から処理基板SUBを取り出して移送チャンバー153に搬送する搬送ロボットを備えている。
【0158】
ハンドリングチャンバー154は、移送チャンバー153から処理基板SUBを取り出していずれかのCVDチャンバー155に搬送し、また、CVDチャンバー155から処理基板SUBを取り出して移送チャンバー145に搬送する搬送ロボットを備えている。
【0159】
CVDチャンバー152及び155は、
図13の上段に示したように、封止層SE1となり得る第1無機絶縁層IL1を形成するように構成されている。ハンドリングチャンバー154は、CVDチャンバー152において第1無機絶縁層IL1が形成された処理基板SUBについては、CVDチャンバー155に搬送することなく移送チャンバー145に搬送する。
【0160】
エッチング部146は、移送チャンバー145及び移送チャンバー157に連結されたハンドリングチャンバー156と、移送チャンバー157及び移送チャンバー147に連結されたハンドリングチャンバー158と、ハンドリングチャンバー156及び158に連結された複数のエッチングチャンバー159と、を備えている。
【0161】
ハンドリングチャンバー156は、移送チャンバー145から処理基板SUBを取り出していずれかのエッチングチャンバー159に搬送し、また、エッチングチャンバー159から処理基板SUBを取り出して移送チャンバー157に搬送する搬送ロボットを備えている。
【0162】
ハンドリングチャンバー158は、移送チャンバー157から処理基板SUBを取り出していずれかのエッチングチャンバー159に搬送し、また、エッチングチャンバー159から処理基板SUBを取り出して移送チャンバー147に搬送する搬送ロボットを備えている。
【0163】
エッチングチャンバー159は、
図13の中段に示したように、第1無機絶縁層IL1の異方性ドライエッチングを行うように構成されている。ハンドリングチャンバー158は、前段のエッチングチャンバー159においてドライエッチングが行われた処理基板SUBについては、後段のエッチングチャンバー159に搬送することなく移送チャンバー147に搬送する。
【0164】
第2堆積部148は、移送チャンバー147及び移送チャンバー162に連結されたハンドリングチャンバー160と、ハンドリングチャンバー160に連結された複数のCVDチャンバー161と、移送チャンバー162及び第2ロードロックチャンバー149に連結されたハンドリングチャンバー163と、ハンドリングチャンバー163に連結された複数のCVDチャンバー164と、を備えている。
【0165】
ハンドリングチャンバー160は、移送チャンバー147から処理基板SUBを取り出していずれかのCVDチャンバー161に搬送し、また、CVDチャンバー161から処理基板SUBを取り出して移送チャンバー162に搬送する搬送ロボットを備えている。
【0166】
ハンドリングチャンバー163は、移送チャンバー162から処理基板SUBを取り出していずれかのCVDチャンバー164に搬送し、また、CVDチャンバー164から処理基板SUBを取り出して第2ロードロックチャンバー149に搬送する搬送ロボットを備えている。
【0167】
CVDチャンバー161及び164は、
図13の下段に示したように、封止層SE1となり得る第2無機絶縁層IL2を形成するように構成されている。ハンドリングチャンバー163は、CVDチャンバー161において第2無機絶縁層IL2が形成された処理基板SUBについては、CVDチャンバー164に搬送することなく第2ロードロックチャンバー149に搬送する。
【0168】
第2ロードロックチャンバー149は、ゲートバルブV2を介してハンドリングチャンバー163に連結されている。第2ロードロックチャンバー149は、処理基板SUBが水平に搬出された後に、チャンバーの内部を減圧する真空ポンプを備えている。
【0169】
第1ロードロックチャンバー101から第2ロードロックチャンバー149に至る処理基板SUBの搬送経路、あるいは、ゲートバルブV1とゲートバルブV2との間の搬送経路は、真空状態に維持されている。ここでの真空状態とは、大気圧よりも低い減圧状態に相当する。
【0170】
このような製造装置100における処理基板SUBの流れについて説明する。
【0171】
ゲートバルブV1が閉じた状態で処理基板SUBは、第1ロードロックチャンバー101に搬入される。その後、第1ロードロックチャンバー101の内部がベーク部102と同等の圧力となるまで減圧された後に、ゲートバルブV1が開き、処理基板SUBが第1ロードロックチャンバー101からベーク部102に搬送される。処理基板SUBは、ベーク部102においてベークされた後に、プラズマ処理部104に搬送される。処理基板SUBは、プラズマ処理部104においてプラズマ処理された後に、固定部105に搬送される。
【0172】
固定部105においては、水平に搬送された処理基板SUBは、キャリアCRに固定され、また、垂直な搬送姿勢に変換される。キャリアCRに固定された処理基板SUBは、第1搬送部T10の第1レールR11において第1方向TAに搬送される。処理基板SUBが第1搬送部T10を搬送されている間、処理基板SUBには、第1蒸着部100Bの蒸着チャンバー121乃至131において、有機層OR1の各層を形成するための材料が順次蒸着される。
【0173】
その後、処理基板SUBは、方向転換部111において第2搬送部T20の第1レールR21に移送され、第1レールR21において第1方向TAに搬送される。さらに、処理基板SUBは、方向転換部112において第3搬送部T30の第1レールR31に移送され、第1レールR31において第1方向TAに搬送される。
【0174】
処理基板SUBが第3搬送部T30を搬送されている間、処理基板SUBには、第1蒸着部100Bの蒸着チャンバー132乃至134において、有機層OR1の各層を形成するための材料が順次蒸着される。その後、処理基板SUBには、第2蒸着部100Cの蒸着チャンバー135において、上電極UE1を形成するための材料が蒸着される。
【0175】
その後、処理基板SUBには、第3蒸着部100Dの蒸着チャンバー136において、第1透明層TL11を形成するための材料が蒸着される。その後、処理基板SUBには、第4蒸着部100Eの蒸着チャンバー137において、第2透明層TL12を形成するための材料が蒸着される。
【0176】
その後、処理基板SUBは、取り外し部141に搬送される。取り外し部141においては、処理基板SUBは、キャリアCRから取り外され、また、水平な搬送姿勢に変換される。その後、処理基板SUBは、第1堆積部144に搬送される。
【0177】
取り外し部141において処理基板SUBから取り外されたキャリアCRは、第3搬送部T30の第2レールR32において第2方向TBに搬送され、方向転換部112において第2搬送部T20の第2レールR22に移送され、第2レールR22において第2方向TBに搬送され、方向転換部111において第1搬送部T10の第2レールR12に移送され、第2レールR12において第2方向TBに搬送され、固定部105に搬送される。
【0178】
第1堆積部144に搬送された処理基板SUBは、CVDチャンバー152及び155のいずれかに搬送される。CVDチャンバー152及び155においては、処理基板SUBには、第1無機絶縁層IL1を形成するための材料が堆積される。その後、処理基板SUBは、エッチング部146に搬送される。
【0179】
エッチング部146に搬送された処理基板SUBは、エッチングチャンバー159のいずれかに搬送される。エッチングチャンバー159においては、第1無機絶縁層IL1の厚さが低減されるように、異方性ドライエッチングが行われる。その後、処理基板SUBは、第2堆積部148に搬送される。
【0180】
第2堆積部148に搬送された処理基板SUBは、CVDチャンバー161及び164のいずれかに搬送される。CVDチャンバー161及び164においては、処理基板SUBには、第2無機絶縁層IL2を形成するための材料が堆積される。その後、処理基板SUBは、第2ロードロックチャンバー149に搬送される。
【0181】
その後、ゲートバルブV2が閉じ、第2ロードロックチャンバー149の内部が大気圧まで回復した後に、処理基板SUBが第2ロードロックチャンバー149から製造装置100の外に搬出される。
【0182】
図19に示した製造装置100においては、タンデム構成の表示素子201を形成する場合について説明したが、図示した製造装置100においてシングル構成の表示素子201も形成することができる。すなわち、第1蒸着部100Bのうち、蒸着チャンバー126乃至132において、処理基板SUBに対する材料の蒸着を停止することで、
図4に示した表示素子201を形成することができる。
【0183】
このような構成の製造装置100によれば、処理基板SUBを搬入するための第1ロードロックチャンバー101と、処理基板SUBを搬出するための第2ロードロックチャンバー149とが独立して設けられている。また、第1ロードロックチャンバー101から第2ロードロックチャンバー149に至る処理基板SUBの搬送経路は、一方向に限定されている。このため、複雑な搬送制御が不要となる。また、処理基板SUBを待機させるためのスペースが不要であり、しかも、搬送経路上での処理基板SUBの滞留が抑制される。さらに、真空に維持すべき搬送経路が短縮される。したがって、生産効率の低下を抑制することが可能となる。
【0184】
また、このような製造装置100によれば、シングル構成の表示素子、及び、タンデム構成の表示素子のいずれも容易に形成することができる。
【0185】
図20は、代表的な蒸着チャンバー121の一構成例を示す断面図である。
【0186】
蒸着チャンバー121は、仕切り板P1を備えている。仕切り板P1は、蒸着チャンバー121の第1空間121Aと第2空間121Bとを仕切っている。蒸着源S1は、第1空間121Aに収容されている。第2空間121Bは、キャリアCRとともに処理基板SUBが搬送される空間であり、第1レールR11及び第2レールR12が設けられている。蒸着源S1は、正孔注入層HIL1を形成するための材料を放射するように構成されている。
【0187】
図19に示した他の蒸着チャンバー122乃至137についても、
図20に示す蒸着チャンバー121と同様に構成されている。
【0188】
各蒸着チャンバーに収容されている蒸着源は、製造装置100が稼働している間、材料を加熱し、気化させ、連続的に材料を放射するように構成されている。蒸着源は、放射した材料を処理基板SUBに蒸着しないモードでは、吐出口が第1空間を向くように設定される。また、蒸着源は、放射した材料を処理基板SUBに蒸着するモードでは、吐出口が第2空間を向くように設定される。
【0189】
例えば、蒸着チャンバー121において、蒸着源S1は、回転軸AX1を中心に回転可能に構成されている。この蒸着源S1は、回転軸AX1に沿って延出している。仕切り板P1は、点線で示す開口OP1を有している。開口OP1は、蒸着源S1と対向している。
図示した例では、蒸着源S1は、放射した材料を処理基板SUBに蒸着するモードに設定されており、吐出口SA1が第2空間121Bを向いている。これにより、蒸着源S1から放射された材料は、キャリアCRとともに搬送された処理基板SUBに蒸着される。
【0190】
一方で、放射した材料を処理基板SUBに蒸着しないモードでは、蒸着源S1は、吐出口SA1が第1空間121Aを向くように、回転軸AX1を中心として回転する。これにより、蒸着源S1から放射された材料は、キャリアCRとともに搬送された処理基板SUBには蒸着されない。
【0191】
図21は、
図19に示した製造装置100を備える製造システム300の一構成例を示す図である。
【0192】
製造システム300は、基板カセットストッカー310と、加工部320と、検査部330と、複数の製造装置100-1乃至100-3と、を備えている。
【0193】
基板カセットストッカー310は、複数の基板カセットを収容している。基板カセットは、複数の処理基板SUBを保持している。基板カセットストッカー310では、加工部320、検査部330、製造装置100-1乃至100-3などに処理基板SUBを搬出したり、各部で処理が終了した処理基板SUBを搬入したりする。
【0194】
加工部320は、フォトリソグラフィモジュール、蒸着装置、CVD装置、エッチング装置などを備えている。
【0195】
加工部320は、
図6に示したステップST1を行い、下電極、リブ、及び、隔壁を備えた処理基板SUBを形成する。
【0196】
また、加工部320は、ステップST22において第1レジストを形成し、ステップST32において第2レジストを形成し、ステップST42において第3レジストを形成する。
また、加工部320は、ステップST23において第1レジストをマスクとしたエッチングを行い、ステップST33において第2レジストをマスクとしたエッチングを行い、ステップST43において第3レジストをマスクとしたエッチングを行う。
また、加工部320は、ステップST24において第1レジストを除去し、ステップST34において第2レジストを除去し、ステップST44において第3レジストを除去する。
【0197】
検査部330は、各種検査装置を備えている。
検査部330は、隔壁の形状(特に突出部621乃至623の幅)が所定の範囲であるか否かを検査する。
また、検査部330は、処理基板SUBの表面に異物が存在しているか否かを検査する。
また、検査部330は、有機層、上電極、キャップ層、及び、封止層が所望の形状に形成されているか否かを検査する。
【0198】
製造装置100-1は、
図19に示した製造装置100と同一である。製造装置100-2及び100-3は、製造装置100と同様に構成されている。図中の各蒸着チャンバーには、搬送される処理基板SUBに形成される層の名称を付している。
【0199】
このような製造システム300においては、まず、加工部320において、隔壁等を備えた処理基板SUBが形成される。その後、処理基板SUBは、基板カセットストッカー310に搬送される。
【0200】
そして、基板カセットストッカー310から搬出された処理基板SUBは、洗浄部341において洗浄される。洗浄された処理基板SUBは、製造装置100-1に搬送される。製造装置100-1は、処理基板SUBに対してステップST21を行う。これにより、処理基板SUBには、第1薄膜が形成される。
製造装置100-1から搬出された処理基板は、加工部320に搬送される。加工部320は、処理基板SUBに対してステップST22乃至ST24を行う。
【0201】
その後、処理基板SUBは、製造装置100-2に搬送される。なお、処理基板SUBは、製造装置100-2に搬送される前に、洗浄部341で洗浄されることが望ましい。製造装置100-2は、処理基板SUBに対してステップST31を行う。これにより、処理基板SUBには、第2薄膜が形成される。
製造装置100-2から搬出された処理基板は、加工部320に搬送される。加工部320は、処理基板SUBに対してステップST32乃至ST34を行う。
【0202】
その後、処理基板SUBは、製造装置100-3に搬送される。なお、処理基板SUBは、製造装置100-3に搬送される前に、洗浄部341で洗浄されることが望ましい。製造装置100-3は、処理基板SUBに対してステップST41を行う。これにより、処理基板SUBには、第3薄膜が形成される。
製造装置100-3から搬出された処理基板は、加工部320に搬送される。加工部320は、処理基板SUBに対してステップST42乃至ST44を行う。その後、処理基板SUBは、基板カセットストッカー310に搬送される。
【0203】
その後、基板カセットストッカー310から搬出された処理基板SUBは、洗浄部342において洗浄される。洗浄された処理基板SUBは、インクジェット装置351に搬送される。インクジェット装置351は、処理基板SUBに対して有機絶縁材料を塗布する。これにより、
図3に示した保護層13が形成される。
【0204】
保護層13が形成された処理基板SUBは、移送チャンバー352に搬送され、ハンドリングチャンバー353を経由して移送チャンバー354に搬送される。ハンドリングチャンバー355は、移送チャンバー354に搬送された処理基板SUBをいずれかのCVDチャンバー356に搬送する。CVDチャンバー356は、
図3に示した封止層14を形成する。これにより、
図3に示した断面構造を有する表示装置DSPが製造される。
【0205】
図22は、製造装置100の他の構成例を説明するための図である。
図22に示す構成例は、
図19に示した構成例と比較して、第1蒸着部100Bが発光層EM2及びEM3を形成するための蒸着チャンバーを含む点で相違している。
【0206】
蒸着チャンバー124-1乃至124-3は、蒸着チャンバー123と蒸着チャンバー125との間に位置している。また、蒸着チャンバー124-1乃至124-3は、第1搬送部T10の第1方向TAに沿って順に並んでいる。
【0207】
蒸着チャンバー131-1乃至131-3は、蒸着チャンバー130と方向転換部111との間に位置している。また、蒸着チャンバー131-1乃至131-3は、第1搬送部T10の第1方向TAに沿って順に並んでいる。
【0208】
蒸着チャンバー121は、正孔注入層HILとして、表示素子201乃至203の正孔注入層HIL1乃至HIL3を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー122は、正孔輸送層HTL1として、表示素子201乃至203の正孔輸送層HTL11乃至HTL31を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー123は、電子ブロック層EBL1として、表示素子201乃至203の電子ブロック層EBL11乃至EBL31を形成するように構成されている。
【0209】
蒸着チャンバー124-1は、表示素子201の発光層EM11を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー124-2は、表示素子202の発光層EM21を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー124-3は、表示素子203の発光層EM31を形成するように構成されている。
【0210】
蒸着チャンバー125は、正孔ブロック層HBL1として、表示素子201乃至203の正孔ブロック層HBL11乃至HBL31を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー126は、n型電荷発生層nCGLとして、表示素子201乃至203のn型電荷発生層nCGL1乃至nCGL3を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー127は、p型電荷発生層pCGLとして、表示素子201乃至203のp型電荷発生層pCGL1乃至pCGL3を形成するように構成されている。
【0211】
蒸着チャンバー128は、正孔輸送層HTL2として、表示素子201乃至203の正孔輸送層HTL12乃至HTL32を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー129は、正孔輸送層HTL3として、表示素子201乃至203の正孔輸送層HTL13乃至HTL33を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー130は、電子ブロック層EBL2として、表示素子201乃至203の電子ブロック層EBL12乃至EBL32を形成するように構成されている。
【0212】
蒸着チャンバー131-1は、表示素子201の発光層EM12を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー131-2は、表示素子202の発光層EM22を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー131-3は、表示素子203の発光層EM32を形成するように構成されている。
【0213】
蒸着チャンバー132は、正孔ブロック層HBL2として、表示素子201乃至203の正孔ブロック層HBL12乃至HBL32を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー133は、電子輸送層ETLとして、表示素子201乃至203の電子輸送層ETL1乃至ETL3を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー134は、電子注入層EILとして、表示素子201乃至203の電子注入層EIL1乃至EIL3を形成するように構成されている。
【0214】
蒸着チャンバー135は、上電極UEとして、表示素子201乃至203の上電極UE1乃至UE3を形成するように構成されている。
【0215】
蒸着チャンバー136は、第1透明層TL1として、表示素子201乃至203の第1透明層TL11乃至TL31を形成するように構成されている。
【0216】
蒸着チャンバー137は、第2透明層TL2として、表示素子201乃至203の第2透明層TL12乃至TL32を形成するように構成されている。
後処理部100Fは、表示素子201乃至203の封止層SE1乃至SE3を形成するように構成されている。
【0217】
例えば、タンデム構成の表示素子201を形成する場合、蒸着チャンバー124-2、124-3、131-2、131-3において、処理基板SUBに対する材料の蒸着が停止される。
タンデム構成の表示素子202を形成する場合、蒸着チャンバー124-1、124-3、131-1、131-3において、処理基板SUBに対する材料の蒸着が停止される。
タンデム構成の表示素子203を形成する場合、蒸着チャンバー124-1、124-2、131-1、131-2において、処理基板SUBに対する材料の蒸着が停止される。
【0218】
また、シングル構成の表示素子201を形成する場合、蒸着チャンバー124-2から蒸着チャンバー131-3までの各チャンバーにおいて、処理基板SUBに対する材料の蒸着が停止される。
シングル構成の表示素子202を形成する場合、蒸着チャンバー124-1、蒸着チャンバー124-3から蒸着チャンバー131-3までの各チャンバーにおいて、処理基板SUBに対する材料の蒸着が停止される。
シングル構成の表示素子203を形成する場合、蒸着チャンバー124-1、蒸着チャンバー124-2、蒸着チャンバー125から蒸着チャンバー131-3までの各チャンバーにおいて、処理基板SUBに対する材料の蒸着が停止される。
【0219】
このような製造装置100によれば、
図19に示した製造装置と同様の効果が得られる。加えて、製造装置100によれば、表示素子201乃至203の各々を形成することができる。また、製造装置100によれば、シングル構成の表示素子、及び、タンデム構成の表示素子のいずれも容易に形成することができる。
【0220】
上記の実施形態において、発光層EM1、EM11、EM12は第1発光層に相当し、発光層EM2、EM21、EM22は第2発光層に相当し、発光層EM3、EM31、EM32は第3発光層に相当する。
【0221】
以上説明したように、本実施形態によれば、生産効率の低下を抑制することが可能な表示装置の製造装置を提供することができる。
【0222】
以上、本発明の実施形態として説明した製造装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての製造装置も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0223】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0224】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0225】
DSP…表示装置
10…基板 SUB…処理基板
5…リブ AP1,AP2,AP3…開口
6…隔壁 61…下部 62…上部
SP1,SP2,SP3…副画素
20,201,202,203…表示素子(有機EL素子)
LE1,LE2,LE3…下電極
UE1,UE2,UE3…上電極
OR1,OR2,OR3…有機層
CP1,CP2,CP3…キャップ層
TL11、TL21、TL31…第1透明層
TL12、TL22、TL32…第2透明層
SE1,SE2,SE3…封止層
100…製造装置 100A…前処理部 100B…第1蒸着部 100C…第2蒸着部 100D…第3蒸着部 100E…第4蒸着部 100F…後処理部 T…搬送機構
300…製造システム