(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049775
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ナイトウェア
(51)【国際特許分類】
A41D 10/00 20060101AFI20240403BHJP
A41D 1/06 20060101ALI20240403BHJP
A41D 13/06 20060101ALI20240403BHJP
A41D 13/08 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A41D10/00 J
A41D1/06 M
A41D1/06 501A
A41D13/06
A41D13/08 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156216
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】原 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】堤 陽一
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AA05
3B011AA08
3B011AA15
3B011AC13
3B011AC17
3B211AA01
3B211AA05
3B211AA08
3B211AA15
3B211AC13
3B211AC17
(57)【要約】
【課題】保温性を確保できると共に、袖又は裾をまくった場合でも自然な姿を維持することができるナイトウェアを提供する。
【解決手段】一実施形態に係るナイトウェアは、身頃4及び一対の袖5を備えるナイトウェア1である。一対の袖5の少なくとも一方は、身頃4から連続して延びると共に、ナイトウェア1の着用者の手が通される開口11bを有する外側筒状生地11と、外側筒状生地11の開口11bから出没する内側筒状生地12とを有する。外側筒状生地11の内側において、内側筒状生地12の軸線が延びる方向である軸線方向Dにおける内側筒状生地12の一端が縫製部13を介して外側筒状生地11に接続されている。内側筒状生地12の他端は、縫製部13から開口11bまでの間における外側筒状生地11の内側に収容可能とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身頃及び一対の袖を備えるナイトウェアであって、
一対の前記袖の少なくとも一方は、
前記身頃から連続して延びると共に、前記ナイトウェアの着用者の手が通される開口を有する外側筒状生地と、
前記外側筒状生地の前記開口から出没する内側筒状生地と、
を有し、
前記外側筒状生地の内側において、前記内側筒状生地の軸線が延びる方向である軸線方向における前記内側筒状生地の一端が縫製部を介して前記外側筒状生地に接続されており、
前記内側筒状生地の他端は、前記縫製部から前記開口までの間における前記外側筒状生地の内側に収容可能とされている、
ナイトウェア。
【請求項2】
前記内側筒状生地は、
前記他端に位置しており前記着用者の複数の指が通される第1開口と、
前記他端とは異なる位置に形成されており前記着用者の前記複数の指とは異なる指が通される第2開口と、
を有する、
請求項1に記載のナイトウェア。
【請求項3】
ハイネックである衿を更に備える、
請求項1又は2に記載のナイトウェア。
【請求項4】
股上及び一対の股下を備え、一対の前記股下のそれぞれが裾を有するナイトウェアであって、
一対の前記裾の少なくとも一方は、
前記股下から連続して延びると共に、前記ナイトウェアの着用者の足が通される開口を有する外側筒状生地と、
前記外側筒状生地の前記開口から出没する内側筒状生地と、
を有し、
前記外側筒状生地の内側において、前記内側筒状生地の軸線が延びる方向である軸線方向における前記内側筒状生地の一端が縫製部を介して前記外側筒状生地に接続されており、
前記内側筒状生地の他端は、前記縫製部から前記開口までの間における前記外側筒状生地の内側に収容可能とされている、
ナイトウェア。
【請求項5】
前記内側筒状生地は、
前記他端に位置しており前記着用者の複数の指が通される第3開口と、
前記他端とは異なる位置に形成されており前記着用者の踵が露出する第4開口と、
を有する、
請求項4に記載のナイトウェア。
【請求項6】
前記内側筒状生地は、前記外側筒状生地より伸縮性が高い生地によって構成されている、
請求項1又は2に記載のナイトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナイトウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
ナイトウェアとしては従来から種々のものが知られている。実用新案登録第3103756号公報には、上衣と下衣とを備えるパジャマが記載されている。上衣は袖を有し、袖は袖口の内側に位置する内覆を有する。内覆は、パジャマの着用者の手が通される内覆口を有する。
【0003】
内覆は、内覆口が袖口よりもやや内側の位置となるように袖の内部に縫着されている。下衣は裾を有し、裾は裾口の内側に位置する内覆を有する。裾の内覆は、パジャマの着用者の足が通される内覆口を有する。裾の内覆は、内覆口が裾口よりもやや内側の位置となるように裾の内部に縫着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ナイトウェアでは、特に冬場において着用者の身体を温めるため保温性を確保することが求められる場合がある。前述したパジャマでは、袖及び裾のそれぞれの生地が二重構造とされているため、寒さや冷えは感じにくくなる。しかしながら、ナイトウェアでは、手作業等をするために袖又は裾をまくりたい場合もある。前述したパジャマでは、袖又は裾をまくるときに袖又は裾の内側に位置する内覆が露出し不自然な姿となりうる。よって、袖又は裾をまくったときにおける見栄えが良くないということが起こりうる。従って、袖又は裾をまくった場合でも自然な姿を維持できることが求められる。
【0006】
本開示は、保温性を確保できると共に、袖又は裾をまくった場合でも自然な姿を維持することができるナイトウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係るナイトウェアは、(1)身頃及び一対の袖を備えるナイトウェアである。一対の袖の少なくとも一方は、身頃から連続して延びると共に、ナイトウェアの着用者の手が通される開口を有する外側筒状生地と、外側筒状生地の開口から出没する内側筒状生地とを有する。外側筒状生地の内側において、内側筒状生地の軸線が延びる方向である軸線方向における内側筒状生地の一端が縫製部を介して外側筒状生地に接続されている。内側筒状生地の他端は、縫製部から開口までの間における外側筒状生地の内側に収容可能とされている。
【0008】
このナイトウェアでは、袖が外側筒状生地と内側筒状生地とを有し、内側筒状生地は外側筒状生地の開口から出没する。袖において外側筒状生地の内側に内側筒状生地が配置されていることにより、袖の部分における保温性を確保することができる。内側筒状生地の一端は縫製部を介して外側筒状生地に接続されており、内側筒状生地の他端は、当該縫製部から当該開口までの間における外側筒状生地の内側に収容可能とされている。従って、袖をまくったときに、内側筒状生地の他端を外側筒状生地の内側に収容することができるので、袖をまくったときにおける見栄えを自然な姿とすることができる。よって、袖をまくった場合でも自然な姿を維持することができる。
【0009】
(2)上記(1)において、内側筒状生地は、他端に位置しており着用者の複数の指が通される第1開口と、他端とは異なる位置に形成されており着用者の複数の指とは異なる指が通される第2開口と、を有してもよい。この場合、第1開口に着用者の複数の指が通されると共に、第2開口に当該複数の指とは異なる指が通される。従って、内側筒状生地の第1開口及び第2開口のそれぞれに着用者の指が通されることにより、内側筒状生地が意図せずまくられることを抑制できる。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)において、ナイトウェアは、ハイネックである衿を更に備えてもよい。この場合、衿がハイネックとされていることにより、保温性をより高めることができる。
【0011】
本開示の別の側面に係るナイトウェアは、(4)股上及び一対の股下を備え、一対の股下のそれぞれが裾を有するナイトウェアである。一対の裾の少なくとも一方は、股下から連続して延びると共に、ナイトウェアの着用者の足が通される開口を有する外側筒状生地と、外側筒状生地の開口から出没する内側筒状生地と、を有する。外側筒状生地の内側において、内側筒状生地の軸線が延びる方向である軸線方向における内側筒状生地の一端が縫製部を介して外側筒状生地に接続されている。内側筒状生地の他端は、縫製部から開口までの間における外側筒状生地の内側に収容可能とされている。
【0012】
このナイトウェアでは、裾が外側筒状生地と内側筒状生地とを有し、内側筒状生地は外側筒状生地の開口から出没する。裾において外側筒状生地の内側に内側筒状生地が配置されていることにより、裾の部分における保温性を確保することができる。内側筒状生地の一端は縫製部を介して外側筒状生地に接続されており、内側筒状生地の他端は、当該縫製部から当該開口までの間における外側筒状生地の内側に収容可能とされている。従って、裾をまくったときに、内側筒状生地の他端を外側筒状生地の内側に収容することができるので、裾をまくったときにおける見栄えを自然な姿とすることができる。よって、裾をまくった場合でも自然な姿を維持することができる。
【0013】
(5)上記(4)において、内側筒状生地は、他端に位置しており着用者の複数の指が通される第3開口と、他端とは異なる位置に形成されており着用者の踵が露出する第4開口と、を有してもよい。この場合、第3開口に着用者の複数の指が通されると共に、第4開口に着用者の踵が通される。踵が露出する第4開口を内側筒状生地が有することにより、内側筒状生地の形状を簡易にすることができる。すなわち、踵が露出する第4開口が形成されている場合には、足が通される内側筒状生地の形状を、靴下のように折り曲げた形状としなくてもよく、直線状に延びる形状とすることができる。従って、内側筒状生地を捲りやすくすることができる。内側筒状生地が踵を露出する第4開口を有する場合、着用者の足のサイズに融通を利かせることができる。更に、踵が露出する第4開口が形成されている場合、歩行等をしているときに足を滑りにくくすることができる。
【0014】
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、内側筒状生地は、外側筒状生地より伸縮性が高い生地によって構成されていてもよい。この場合、内側筒状生地の伸縮性が外側筒状生地の伸縮性より高いことにより、外側筒状生地に対する内側筒状生地の出没を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、保温性を確保できると共に、袖又は裾をまくった場合でも自然な姿を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係るナイトウェアの上衣を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るナイトウェアの下衣を示す図である。
【
図3】
図1の上衣の袖における外側筒状生地及び内側筒状生地を示す図である。
【
図4】内側筒状生地の第1開口及び第2開口に着用者の指が通された状態を示す斜視図である。
【
図5】外側筒状生地の開口から内側筒状生地が突出した状態を示す断面図である。
【
図6】内側筒状生地が外側筒状生地の内側にまくられた状態を示す斜視図である。
【
図7】内側筒状生地が外側筒状生地の内側にまくられた状態を示す断面図である。
【
図8】内側筒状生地が外側筒状生地の外側にまくられた状態を示す斜視図である。
【
図9】第2実施形態に係るナイトウェアの下衣の後面を示す斜視図である。
【
図10】
図9のナイトウェアの内側筒状生地を示す斜視図である。
【
図12】(a)及び(b)は、実施例に係るナイトウェアに対する実験結果を示すグラフである。
【
図13】(a)及び(b)は、比較例に係るナイトウェアを着た着用者の手の温度測定実験の結果を示す図である。
【
図14】(a)及び(b)は、実施例に係るナイトウェアを着た着用者の手の温度測定実験の結果を示す図である。
【
図15】(a)及び(b)は、比較例に係るナイトウェアを着た着用者の足の温度測定実験の結果を示す図である。
【
図16】(a)及び(b)は、実施例に係るナイトウェアを着た着用者の足の温度測定実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら本開示に係るナイトウェアの実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0018】
ナイトウェアとは、夜間に着ることが可能な衣類である。例えば、ナイトウェアは、寝る前に着られる部屋着、又は寝るときに着られる衣服(寝巻、パジャマ)である。一実施形態に係るナイトウェアは、身頃及び一対の袖を備える。「身頃」は、ナイトウェアの着用者の身体の前面及び背面を覆う衣服の部分を示している。「袖」は、衣服のうち着用者の腕が通される筒状の部分を示している。
【0019】
別の実施形態に係るナイトウェアは、股上及び一対の股下を備える。「股上」は、着用者の股の上側を覆う衣服の部分を示している。「股下」は、着用者の股の下側を覆う衣服の部分を示している。一対の股下のそれぞれは裾を有する。「裾」は、衣服のうち着用者の足が通される筒状の部分を示している。
【0020】
実施形態に係るナイトウェアにおいて、袖及び裾の少なくともいずれかは、外側筒状生地と、外側筒状生地の内側に位置する内側筒状生地とを有し、内側筒状生地は外側筒状生地の開口から出没する。「外側筒状生地」は、袖又は裾の外面を構成する部分である。例えば、外側筒状生地の材料は、身頃、股上、又は股下の材料と同一である。
【0021】
「内側筒状生地」は、外側筒状生地の内側において外側筒状生地に接続されており、外側筒状生地の開口に対して出没自在とされた生地を示している。内側筒状生地の軸線方向の一端は、外側筒状生地の内側において縫製部を介して外側筒状生地に接続されている。「縫製部」は、外側筒状部材の内側部分に内側筒状部材の一端が縫製される部分を示している。
【0022】
内側筒状生地の他端は、縫製部から開口までの間における外側筒状生地の内側に収容可能とされている。これにより、内側筒状生地の少なくとも一部が外側筒状生地の内側に出没自在とされている。本実施形態に係るナイトウェアは、外側筒状生地及び内側筒状生地を備えることにより、高い保温性を発揮できると共に、外側筒状生地の内側に内側筒状生地をまくっても自然な見栄えとすることができるのでデザイン性に優れている。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る一例としてのナイトウェア1の上衣2を示す図である。
図2は、ナイトウェア1の下衣3を示す図である。ナイトウェア1は、例えば、冬期に着用される保温パジャマである。ナイトウェア1は上衣2と下衣3とを備える。例えば、上衣2の材料と下衣3の材料は、互いに同一である。
【0024】
一例として、上衣2及び下衣3のそれぞれは布帛(織布)によって構成されている。例えば、上衣2は保温構造2Aを備え、下衣3は保温構造3Aを備える。上衣2及び下衣3のそれぞれが保温構造2A,3Aを備えることにより、ナイトウェア1では高い保温性が発揮される。
【0025】
上衣2は、身頃4と、身頃4から延びる一対の袖5と、身頃4から上方に突出する衿6とを備える。身頃4は、左身頃4b及び右身頃4cを有する。左身頃4bはナイトウェア1の着用者M(
図4参照)の左上半身を覆い、右身頃4cは着用者Mの右上半身を覆う。上衣2は、左身頃4bに右身頃4cをとめる複数のボタン2bと、ポケット2cとを備える。例えば、右身頃4cに複数のボタン2bが取り付けられており、左身頃4bに各ボタン2bがとめられるボタン穴が形成されている。例えば、ポケット2cは、左身頃4b及び右身頃4cのそれぞれに縫製されている。
【0026】
袖5は、左身頃4bの上部から左方に延び出す左袖5bと、右身頃4cの上部から右方に延び出す右袖5cとを有する。左袖5bには着用者Mの左腕が通され、右袖5cには着用者Mの右腕が通される。前述した上衣2の保温構造2Aは、例えば、左袖5b及び右袖5cのそれぞれの袖口に設けられる。保温構造2Aの詳細は後述する。
【0027】
衿6は、例えば、身頃4の上端から上方に突出するハイネックである。衿6は、着用者Mの首を覆う筒状を呈する。衿6は、ナイトウェア1を着用した着用者Mから見て右側に位置する右部6bと、ナイトウェア1を着用した着用者Mから見て左側に位置する左部6cとを有する。例えば、上衣2は右部6bに取り付けられたボタン2dを有し、左部6cにボタン2dがとめられるボタン穴が形成されている。
【0028】
下衣3は、股上7と、股上7から下方に延びる一対の股下8とを有する。更に、下衣3は、股上7の上端に位置する腰回り9を有する。例えば、腰回り9の内部には環状となるゴム紐が通されており、このゴム紐によって腰回り9で着用者Mの腰を締め付けることが可能である。一対の股下8のそれぞれは裾8bを有する。
【0029】
下衣3の保温構造3Aは、例えば、一対の裾8bのそれぞれに設けられる。例えば、保温構造3Aは、下衣3の外生地に連続する筒状の外側生地3bと、外側生地3bの内側に縫製によって取り付けられた筒状の内側生地3cとを有する。内側生地3cの上端は外側生地3bの内面に縫製されている。
【0030】
外側生地3bは着用者Mの足が通される外側開口3dを有し、内側生地3cは着用者Mの足が通される内側開口3fを有する。内側開口3fは外側生地3bの内側に位置しており、例えば、内側生地3cは外側生地3bから突出する部位を有しない。例えば、外側生地3bに対する内側生地3cの縫製部分3gから内側開口3fまでの距離K1は、縫製部分3gから外側開口3dまでの距離K2よりも短い。
【0031】
例えば、距離K1は5cm以上且つ25cm以下であり、距離K2は10cm以上且つ30cm以下である。一例として、距離K1は15cmであり、距離K2は20cmである。この場合、内側開口3fは、外側開口3dよりも5cmだけ外側生地3bの内側(上側)に位置している。
【0032】
例えば、内側生地3cの材料は、外側生地3bの材料と同一である。一例として、外側生地3b及び内側生地3cのそれぞれは布帛(織布)によって構成されている。内側開口3fには環状となるゴム紐が通されており、このゴム紐によって内側開口3fの周の長さは外側開口3dの周の長さより短くなっている。また、内側開口3fの幅は外側開口3dの幅より短くなっている。内側開口3fに通された環状のゴム紐によって着用者Mの足を締め付けることが可能である。
【0033】
次に、袖5の保温構造2Aについて説明する。保温構造2Aは、ナイトウェア1の着用者Mの手が通される開口11bを有する外側筒状生地11と、開口11bから出没する内側筒状生地12とを有する。外側筒状生地11は身頃4から連続して延びている。内側筒状生地12は、外側筒状生地11の内側において外側筒状生地11に縫製されている。
【0034】
図3は、上衣2の保温構造2Aを示す斜視図である。
図1及び
図3に示されるように、ナイトウェア1は外側筒状生地11の内側に縫製された筒状の縫製部13を有し、縫製部13に内側筒状生地12が縫製されている。一例として、縫製部13は、外側筒状生地11と内側筒状生地12との間に介在する中継筒状生地である。縫製部13の材料は、例えば、外側筒状生地11の材料と同一である。例えば、縫製部13は外側筒状生地11の共生地である。一例として、縫製部13は布帛によって構成されている。縫製部13は、例えば、伸びない生地によって構成されている。縫製部13は、内側筒状生地12の伸縮性よりも低い伸縮性を有する。例えば、縫製部13は内側筒状生地12に縫製によって接続されている。内側筒状生地12は縫製部13との繋ぎ目(境界部分)において折り返される。例えば、暑いときに着用者は自然なスタイルで内側筒状生地12を奥(着用者の腕の根元側)に折り込むことができる。縫製部13が伸びない生地によって構成される場合、内側筒状生地12との繋ぎ目がしっかりと固定されるので、内側筒状生地12の折り込みを一層容易に行うことが可能となる。
【0035】
外側筒状生地11及び内側筒状生地12のそれぞれは、まくることが可能とされている。
図3は、外側筒状生地11がまくられた状態を示している。例えば、内側筒状生地12の材料は、外側筒状生地11(縫製部13)の材料とは異なっている。一例として、内側筒状生地12の伸縮性は、外側筒状生地11の伸縮性よりも高い。すなわち、外側筒状生地11に加えられた引張力の大きさと、内側筒状生地12に加えられた引張力の大きさとが互いに同一である場合、外側筒状生地11よりも内側筒状生地12の方が長く伸長する。
【0036】
例えば、内側筒状生地12の厚さは、外側筒状生地11の厚さよりも厚い。この場合、着用者Mの手に接触する内面を有する内側筒状生地12が外側筒状生地11よりも厚いので、着用者Mの手における保温性を高めることができる。一例として、内側筒状生地12はニット素材(編布)によって構成されている。
【0037】
また、内側筒状生地12は、ウール、シルク、コットン又はカシミヤによって構成されていてもよい。例えば、内側筒状生地12は、靴下に使われる素材と同一の素材によって構成されていてもよい。この場合、足元を温める靴下の素材を内側筒状生地12として有効活用できる。一例として、内側筒状生地12は外側筒状生地11よりも毛羽立っている。
【0038】
外側筒状生地11の内側において、内側筒状生地12の軸線Lが延びる方向である軸線方向Dにおける内側筒状生地12の一端12bが縫製部13を介して外側筒状生地11に接続されている。
図4は、外側筒状生地11の開口11bから突出する内側筒状生地12に着用者Mの手Hが通された状態を示す斜視図である。
図5は、軸線方向Dに延びる平面で切断したときにおける外側筒状生地11及び内側筒状生地12の断面を模式的に示す図である。
【0039】
図3~
図5に示されるように、内側筒状生地12の他端12cは、内側筒状生地12が軸線方向Dに延ばされた状態において開口11bから突出する。内側筒状生地12は、他端12cに位置しており着用者Mの複数の指F1が通される第1開口12dと、内側筒状生地12の側部12fに形成されており着用者Mの複数の指F1とは異なる指F2が通される第2開口12gとを有する。内側筒状生地12を外側筒状生地11から突出させた状態で第1開口12dに複数の指F1が通され且つ第2開口12gに指F2が通されることにより、手Hをより十分に保温することができる。
【0040】
図1に示されるように、縫製部13の内側筒状生地12とは反対側の端部13bから外側筒状生地11の開口11bまでの距離K3は、例えば、10cm以上且つ30cm以下である。外側筒状生地11から突出させた状態における内側筒状生地12の第1開口12dから外側筒状生地11の開口11bまでの距離K4は、例えば、5cm以上且つ15cm以下である。この場合、高い保温性を確保すると共に外側筒状生地11に対する内側筒状生地12の出し入れを一層容易に行うことができる。一例として、距離K3は20cmであり、距離K4は10cmである。
【0041】
図3に示されるように、例えば、手Hが通されていない状態における内側筒状生地12の軸線方向Dへの長さは、手Hが通されていない状態における内側筒状生地12の幅方向Wへの長さよりも長い。この場合、内側筒状生地12の軸線方向Dへの長さを十分に確保できるので、手Hの保温性を更に高めることができる。
【0042】
図4に示されるように、第1開口12dは、例えば、着用者Mの親指以外の複数の指F1(人差し指、中指、薬指、及び小指)が通される。一例として、第2開口12gは、複数の指F1とは異なる指F2として親指が通される。このように、第1開口12dに着用者Mの親指以外の指F1が通されて第2開口12gに親指が通される場合、手Hを十分に温めることができると共に、手Hへの内側筒状生地12のフィット感を良好にすることができる。指F2が通されていない状態において、第2開口12gは軸線方向Dに延びるスリット状とされている。
【0043】
図6は、外側筒状生地11の内側に内側筒状生地12が収容された状態を示す斜視図である。
図7は、
図6の状態において軸線方向Dに延びる平面に沿って外側筒状生地11及び内側筒状生地12を切断したときにおける断面を示している。
図6及び
図7に示されるように、内側筒状生地12の他端12cは、縫製部13から外側筒状生地11の開口11bまでの間における外側筒状生地11の内側に収容可能とされている。
【0044】
例えば、袖5は、外側筒状生地11と内側筒状生地12の間に、内側筒状生地12のまくられた部分12hを収容するための収容空間5dを有する。内側筒状生地12では、他端12cを内側筒状生地12の外側に折って内側筒状生地12をまくりつつ、まくられた部分12hを収容空間5dに収容することが可能である。
【0045】
また、外側筒状生地11及び内側筒状生地12をまくり上げ、まくられた部分12hに外側筒状生地11が被せられてもよい。この場合も内側筒状生地12のまくられた部分12hが外側筒状生地11の内側に収容される。以上より、内側筒状生地12を外側筒状生地11から突出しないように外側筒状生地11の内側に収容することができるので、自然な見栄えとすることができる。
【0046】
例えば、本実施形態に係るナイトウェア1では、
図8に示されるように、内側筒状生地12を外側筒状生地11の外側に折り返して内側筒状生地12をまくり上げることも可能である。この場合、暑いときでも内側筒状生地12を外側筒状生地11の外側にまくり上げることにより、快適な寝心地を得ることができる。
【0047】
次に、本実施形態に係るナイトウェア1から得られる作用効果についてより詳細に説明する。
図3、
図4及び
図6に示されるように、ナイトウェア1では、袖5が外側筒状生地11と内側筒状生地12とを有し、内側筒状生地12は外側筒状生地11の開口11bから出没する。袖5において外側筒状生地11の内側に内側筒状生地12が配置されていることにより、袖5の部分における保温性を確保することができる。
【0048】
内側筒状生地12の一端12bは縫製部13を介して外側筒状生地11に接続されており、内側筒状生地12の他端12cは、縫製部13から開口11bまでの間における外側筒状生地11の内側に収容可能とされている。従って、袖5をまくったときに、内側筒状生地12の他端12cを外側筒状生地11の内側に収容することができるので、袖5をまくったときにおける見栄えを自然な姿とすることができる。よって、袖5をまくった場合でも自然な姿を維持することができる。
【0049】
本実施形態において、内側筒状生地12は、外側筒状生地11より伸縮性が高い生地によって構成されていてもよい。この場合、内側筒状生地12の伸縮性が外側筒状生地11の伸縮性より高いことにより、外側筒状生地11に対する内側筒状生地12の出没を容易に行うことができる。
【0050】
本実施形態において、内側筒状生地12は、他端12cに位置しており着用者Mの複数の指F1が通される第1開口12dと、他端12cとは異なる位置に形成されており着用者Mの複数の指F1とは異なる指F2が通される第2開口12gと、を有する。よって、第1開口12dに着用者Mの複数の指F1が通されると共に、第2開口12gに複数の指F1とは異なる指F2が通される。従って、内側筒状生地12の第1開口12d及び第2開口12gのそれぞれに着用者の指F1,F2が通されることにより、手Hの保温性を高くしつつ内側筒状生地12が意図せずまくられることを抑制できる。
【0051】
本実施形態において、
図1に示されるように、ナイトウェア1は、ハイネックである衿6を更に備える。従って、衿6がハイネックとされていることにより、ナイトウェア1における保温性をより高めることができる。
【0052】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る一例としてのナイトウェアの下衣23を示す斜視図である。第2実施形態に係るナイトウェアの一部の構成は、前述したナイトウェア1の一部の構成と同一である。よって、以下の説明では、ナイトウェア1の説明と重複する説明を適宜省略する。
【0053】
下衣23は、前述した保温構造3Aとは異なる保温構造23Aを有する。これにより、第2実施形態に係るナイトウェアの下衣23では、ナイトウェア1の下衣3より一層高い保温性が発揮される。下衣23は、股上27と、股上27から下方に延びる一対の股下28とを有し、一対の股下28のそれぞれは裾29を有する。
【0054】
下衣23の保温構造23Aは一対の裾29のそれぞれに設けられる。保温構造23Aは、例えば、着用者Mの足S(
図10参照)が通される開口31bを有する外側筒状生地31と、開口31bから出没する内側筒状生地32とを有する。例えば、外側筒状生地31は股上27から連続して延びている。内側筒状生地32は、外側筒状生地31の内側において外側筒状生地31に縫製されている。内側筒状生地32は、前述した縫製部13等の中継筒状生地を介して外側筒状生地31に縫製されていてもよいし、直接外側筒状生地31に縫製されていてもよい。
【0055】
外側筒状生地31及び内側筒状生地32のそれぞれは、まくることが可能とされている。
図10は、着用者Mの足Sが通されて外側筒状生地31がまくられた状態における内側筒状生地32を示す斜視図である。
図11は、
図10の足Sの踵S1の部分を拡大した斜視図である。
図9~
図11に示されるように、例えば、内側筒状生地32の材料は外側筒状生地31の材料とは異なっており、内側筒状生地32の伸縮性は外側筒状生地31の伸縮性よりも高い。例えば、内側筒状生地32の厚さは外側筒状生地31の厚さよりも厚い。この場合、着用者Mの足Sに接触する内面を有する内側筒状生地32が外側筒状生地31よりも厚いので、着用者Mの足Sにおける保温性を高めることができる。
【0056】
一例として、内側筒状生地32はモヘア調の生地によって構成されている。また、内側筒状生地32は前述した内側筒状生地12と同様の材料によって構成されていてもよい。この場合、着用者Mの足Sにおける保温性を高めることができる。例えば、内側筒状生地32は外側筒状生地31よりも毛羽立っている。
【0057】
内側筒状生地32の軸線Xが延びる方向である軸線方向Yにおける内側筒状生地32の一端32bが縫製部33を介して外側筒状生地31に接続されている。内側筒状生地32の他端32cは、内側筒状生地32が軸線方向Yに延ばされた状態において開口31bから突出する。
【0058】
内側筒状生地32は、他端32cに位置しており着用者Mの複数の指S2(足指)が通される第3開口32dと、内側筒状生地32の側部32fに形成されており着用者Mの踵S1が露出する第4開口32gとを有する。内側筒状生地32を外側筒状生地31から突出させた状態で第3開口32dに複数の指S2が通され且つ第4開口32gから踵S1が露出する状態において、足Sを十分に保温することができる。
【0059】
例えば、足Sが通されていない状態における内側筒状生地32の軸線方向Yへの長さは、足Sが通されていない状態における内側筒状生地32の幅方向Zへの長さよりも長い。この場合、内側筒状生地32の軸線方向Yへの長さを十分に確保できるので、足Sの保温性を更に高めることができる。
【0060】
第3開口32dには、例えば、着用者Mの足Sの全ての指S2が通され、第4開口32gには踵S1が通される。足Sの指S2が第3開口32dに通され、且つ足Sの踵S1が第4開口32gから露出することにより、足Sを十分に温めることができると共に、足Sへの内側筒状生地32のフィット感を良好にすることができる。
【0061】
内側筒状生地32の他端32cは、
図7に示される内側筒状生地12と同様、外側筒状生地31の開口31bまでの間における外側筒状生地31の内側に収容可能とされている。内側筒状生地32の他端32cは、外側筒状生地31に対する内側筒状生地32の縫製部から外側筒状生地31の開口31bまでの間における外側筒状生地31の内側に収容可能とされている。
【0062】
例えば、裾29は、外側筒状生地31と内側筒状生地32の間に、内側筒状生地32のまくられた部分32hを収容するための収容空間29dを有する。内側筒状生地32では、他端32cを内側筒状生地32の外側に折って内側筒状生地32をまくりつつ、まくれられた部分32hを収容空間29dに収容することが可能である。
【0063】
また、外側筒状生地31及び内側筒状生地32をまくり上げ、まくられた部分32hに外側筒状生地31が被せられてもよい。この場合も内側筒状生地32のまくられた部分32hが外側筒状生地31の内側に収容される。以上より、内側筒状生地32を外側筒状生地31から突出しないように外側筒状生地31の内側に内側筒状生地32を収容できるので、自然な見栄えとすることができる。
【0064】
第2実施形態に係るナイトウェアから得られる作用効果についてより詳細に説明する。第2実施形態に係るナイトウェアでは、裾29が外側筒状生地31と内側筒状生地32とを有し、内側筒状生地32は外側筒状生地31の開口31bから出没する。裾29において外側筒状生地31の内側に内側筒状生地32が配置されていることにより、裾29の部分における保温性を確保することができる。内側筒状生地32の一端32bは縫製部を介して外側筒状生地31に接続されており、内側筒状生地32の他端32cは、当該縫製部から開口31bまでの間における外側筒状生地31の内側に収容可能とされている。従って、裾29をまくったときに、内側筒状生地32の他端32cを外側筒状生地31の内側に収容することができるので、裾29をまくったときにおける見栄えを自然な姿とすることができる。よって、裾29をまくった場合でも自然な姿を維持することができる。
【0065】
図9~
図11に示されるように、第2実施形態において、内側筒状生地32は、他端32cに位置しており着用者Mの複数の指S2が通される第3開口32dと、他端32cとは異なる位置に形成されており着用者Mの踵S1が露出する第4開口32gと、を有する。よって、第3開口32dに着用者Mの複数の指S2が通されると共に、第4開口32gに着用者Mの踵S1が通される。踵S1が露出する第4開口32gを内側筒状生地32が有することにより、内側筒状生地32の形状を簡易にすることができる。すなわち、踵S1が露出する第4開口32gが形成されている場合には、足Sが通される内側筒状生地32の形状を、靴下のように折り曲げた形状としなくてもよく、直線状に延びる形状とすることができる。従って、内側筒状生地32を捲りやすくすることができる。内側筒状生地32が踵S1を露出する第4開口32gを有する場合、着用者Mの足Sのサイズに融通を利かせることができる。更に、踵S1が露出する第4開口32gが形成されている場合、歩行等をしているときに足Sを滑りにくくすることができる。
【0066】
更に、前述した第1実施形態及び第2実施形態において、内側筒状生地は、外側筒状生地より伸縮性が高い生地によって構成されていてもよい。この場合、内側筒状生地の伸縮性が外側筒状生地の伸縮性より高いことにより、外側筒状生地に対する内側筒状生地の出没を容易に行うことができる。
【0067】
以上、本開示に係るナイトウェアの各実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。すなわち、本開示に係るナイトウェアの各部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0068】
例えば、前述の実施形態では、第1開口12dに着用者Mの親指以外の複数の指F1が通され、第2開口12gに親指が通される内側筒状生地12について説明した。しかしながら、内側筒状生地の第1開口及び第2開口のそれぞれに通される指の種類は特に限定されない。また、内側筒状生地は、1つの開口、又は3つ以上の開口を有していてもよく、内側筒状生地に形成される開口の数は特に限定されない。更に、内側筒状生地の開口の形状、大きさ及び配置態様についても適宜変更可能である。
【0069】
例えば、前述の実施形態では、外側筒状生地11の内側に縫製された筒状の縫製部13に内側筒状生地12が縫製されているナイトウェア1について説明した。しかしながら。縫製部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は適宜変更可能である。更に、縫製部は、外側筒状生地11の内側に直接内側筒状生地12が縫い付けられた部位であってもよい。
【0070】
例えば、前述の実施形態では、一対の袖5のそれぞれに外側筒状生地11及び内側筒状生地12が設けられるナイトウェア1について説明した。しかしながら、一対の袖のいずれかのみに外側筒状生地11及び内側筒状生地12が設けられるナイトウェアであってもよい。前述の実施形態では、冬期に着用される保温パジャマであるナイトウェア1について説明した。しかしながら、本開示に係るナイトウェアは、冬期以外の季節に着用されるパジャマであってもよい。このように、本開示は、種々のナイトウェアに適用可能である。
【0071】
(実施例)
次に、本開示に係るナイトウェアの実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されない。実施例に係るナイトウェアでは、複数の実験を行い、その効果を検証した。実験では、実施例に係るナイトウェア、及び比較例に係るナイトウェアのそれぞれを被検者が着用し、被検者の手足の温度を熱電対又はサーモグラフィによって測定した。以下では、まず熱電対を用いた実験について説明する。
【0072】
(熱電対を用いた実験)
熱電対を用いた実験は、実施例1に係るナイトウェア、及び比較例に係るナイトウェアのそれぞれに対して行った。実施例1に係るナイトウェアは、
図1及び
図2に示されるナイトウェア1である。比較例に係るナイトウェアは、ナイトウェア1から保温構造2A,3Aを外したナイトウェアである。実験におけるナイトウェアの着用時間は20分~30分とし、着用者の両手に熱電対をテープによって貼り付けた。より具体的には、手首及び手のひらのそれぞれに熱電対を貼り付けた。そして、ナイトウェアを着用してから20~30分後までの皮膚表面温度を熱電対によって測定した。着用者を室内に滞在させ、当該室内の温度を10℃、湿度を50%RHとした。ナイトウェアは、実験開始1時間前から当該室内で放置して環境に馴らし、着用者は実験開始5分前から椅子に座って安静させた。
【0073】
図12(a)は、熱電対を用いた実験において手首の温度を測定した結果を示すグラフである。
図12(b)は、熱電対を用いた実験において手のひらの温度を測定した結果を示すグラフである。
図12(a)及び
図12(b)に示されるように、手首及び手のひらの双方において保温構造2A(外側筒状生地11及び内側筒状生地12)を有する実施例1のナイトウェアでは、比較例のナイトウェアよりも高い温度を維持でき高い保温性を得られることが分かった。手首の温度について、比較例のナイトウェアでは着用から30分後に2.3℃低下したのに対し、実施例1のナイトウェアでは着用から30分経っても0.3℃しか低下しなかった。手のひらの温度について、比較例のナイトウェアでは着用から30分経過後に4.0℃低下したのに対し、実施例1のナイトウェアでは着用から30分経過しても2.1℃しか低下しなかった。
【0074】
(サーモグラフィを用いた実験)
次に、サーモグラフィを用いた実験について説明する。実験におけるナイトウェアの着用時間は20分~30分とし、着用者の両手の温度をサーモグラフィによって測定した。サーモグラフィとしては、赤外線サーモグラフカメラ(日本アビオニクス社製)を用いた。ナイトウェアを着用した直後、及び20分後の温度をサーモグラフィによって測定した。着用者を室内に滞在させ、当該室内の温度を10℃、湿度を50%RHとした。ナイトウェアは、実験開始1時間前から当該室内で放置して環境に馴らし、着用者は実験開始5分前から椅子に座って安静させた。
【0075】
図13(a)は比較例に係るナイトウェアの着用直後の結果を示しており、
図13(b)は比較例に係るナイトウェアの着用20分後の結果を示している。
図14(a)は実施例1に係るナイトウェアの着用直後の結果を示しており、
図14(b)は実施例1に係るナイトウェアの着用20分後の結果を示している。
図13(a)、
図13(b)、
図14(a)、
図14(b)、後述する
図15(a)、
図15(b)、
図16(a)及び
図16(b)
のサーモグラフィの結果について、色が黒色に近いほど温度が低いことを示しており、色が白色に近いほど温度が高いことを示している。
【0076】
図13(a)及び
図13(b)に示されるように、比較例に係るナイトウェアでは、着用から20分経過後に手の温度が相当低下することが分かった。これに対し、
図14(a)及び
図14(b)に示されるように、実施例1に係るナイトウェアでは、着用から20分経過して、手首の温度は多少下がったものの、手首よりも手の根元側では温度がほとんど変わらないことが分かった。このように、実施例1に係るナイトウェアでは、比較例に係るナイトウェアよりも高い保温性を発揮できることが分かった。
【0077】
上記のサーモグラフィを用いた実験では、比較例に係るナイトウェア、及び実施例2に係るナイトウェアを着用した被検者に対し、足の温度も測定した。実施例2に係るナイトウェアは、
図9に示される外側筒状生地31及び内側筒状生地32を備えた第2実施形態のナイトウェアである。
【0078】
図15(a)は比較例に係るナイトウェアの着用直後の足の温度を示しており、
図15(b)は比較例に係るナイトウェアの着用20分後の足の温度を示している。
図16(a)は実施例2に係るナイトウェアの着用直後の足の温度を示しており、
図16(b)は実施例2に係るナイトウェアの着用20分後の足の温度を示している。
図15(a)及び
図15(b)に示されるように、比較例に係るナイトウェアでは、着用から20分経過後に足(特に足の甲)の温度が相当低下することが分かった。具体的には、20分経過して、足の甲の温度が1.6℃低下し、足首の温度が0.5℃低下した。これに対し、
図16(a)及び
図16(b)に示されるように、実施例2に係るナイトウェアでは、着用から20分経過して足の温度が高くなることが分かった。具体的には、20分経過して、足の甲の温度が1.0℃高くなり、足首の温度が1.6度高くなった。このように、実施例2に係るナイトウェアでは、比較例に係るナイトウェアよりも高い保温性を発揮でき、足を効果的に温められることが分かった。
【符号の説明】
【0079】
1…ナイトウェア、2…上衣、2A…保温構造、2b…ボタン、2c…ポケット、2d…ボタン、3…下衣、3A…保温構造、3b…外側生地、3c…内側生地、3d…外側開口、3f…内側開口、3g…縫製部分、4…身頃、4b…左身頃、4c…右身頃、5…袖、5b…左袖、5c…右袖、5d…収容空間、6…衿、6b…右部、6c…左部、7…股上、8…股下、8b…裾、9…腰回り、11…外側筒状生地、11b…開口、12…内側筒状生地、12b…一端、12c…他端、12d…第1開口、12f…側部、12g…第2開口、12h…部分、13…縫製部、13b…端部、23…下衣、23A…保温構造、27…股上、28…股下、29…裾、29d…収容空間、31…外側筒状生地、31b…開口、32…内側筒状生地、32b…一端、32c…他端、32d…第3開口、32f…側部、32g…第4開口、32h…部分、33…縫製部、D…軸線方向、F1,F2…指、H…手、K1,K2,K3,K4…距離、L…軸線、M…着用者、S…足、S1…踵、S2…指、W…幅方向、X…軸線、Y…軸線方向、Z…幅方向。