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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049778
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】円筒内周面検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/954 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
G01N21/954 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156220
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】593030897
【氏名又は名称】株式会社戸▲高▼製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 武義
(72)【発明者】
【氏名】牧 克己
(72)【発明者】
【氏名】田仲 圭
(72)【発明者】
【氏名】佐内 忍
(72)【発明者】
【氏名】堤 章洋
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA82
2G051AB01
2G051AC17
2G051BB03
2G051BB11
2G051CA04
2G051CB01
2G051CC01
2G051DA08
2G051FA03
(57)【要約】
【課題】円筒形状のワークの内周面の画像を撮影し、溝底の仕上がり、およびゴミ残留の有無を検査することのできる円筒内周面検査装置を提供する。
【解決手段】円筒内周面検査装置200は、円筒形状のワーク100の穴に挿入され、穴の内周面の像を穴の軸方向に沿う方向に反射させる側面視ミラー20と、穴の軸方向の延長線上に配置されるエリアセンサ10と、側面視ミラー20とエリアセンサ10とを結ぶ直線の途中に挿入され、照射光源40の光を側面視ミラー20に導くハーフミラー45と、ワーク100を穴の軸方向を中心に回転させる回転アクチュエータ50と、画像合成部90と、表示部95と、を備え、回転アクチュエータ50でワーク100を所定の角度づつ回転させながらエリアセンサ10で複数の画像を撮影し、画像を結合して穴の内周面のパノラマ画像を合成し、表示する。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状のワークの穴に挿入され、前記穴の内周面の像を前記穴の軸方向に沿う方向に反射させる側面視ミラーと、
前記穴の軸方向の延長線上に配置されるエリアセンサと、
前記側面視ミラーと前記エリアセンサとを結ぶ直線の途中に挿入され、照射光源の光を前記側面視ミラーに導くハーフミラーと、
前記ワークを前記穴の軸方向を中心に回転させる回転アクチュエータと、
画像合成部と、
表示部と、を備え、
前記回転アクチュエータで前記ワークを所定の角度づつ回転させながら、前記エリアセンサで複数の画像を撮影し、前記画像を結合して前記穴の内周面のパノラマ画像を合成し、表示する円筒内周面検査装置。
【請求項2】
さらに垂直移動アクチュエータを備え、前記垂直移動アクチュエータは、前記エリアセンサと、前記照射光源および前記ハーフミラーと、前記側面視ミラーを固定しフォーカス調整機能を備えた側面視ミラーホルダとを一体に垂直方向へ移動させる、請求項1に記載の円筒内周面検査装置。
【請求項3】
さらに水平移動アクチュエータを備え、前記水平移動アクチュエータは前記回転アクチュエータをワークセット位置と撮像位置との間で水平に移動させる、請求項2に記載の円筒内周面検査装置。
【請求項4】
撮影された前記画像のうちの、前記内周面に垂直でない方向から光が照射された部分が選択され結合されて、前記内周面の360度の前記パノラマ画像が合成される、請求項1に記載の円筒内周面検査装置。
【請求項5】
前記所定の角度は前記穴の内径に依存する、請求項1に記載の円筒内周面検査装置。
【請求項6】
前記表示部は、合成した前記パノラマ画像と検査合否判断の基準となる基準画像とを並べて表示し、作業者の目視判定を容易にする、請求項1に記載の円筒内周面検査装置。
【請求項7】
さらに、自動画像判定部を備え、
前記自動画像判定部は、溝底の面粗度を数値化する面粗度測定ユニット、および/または、複数の良品画像と不良品画像とを教師データとして学習したディープラーニングユニットを含み、
合成した前記パノラマ画像を入力して良品か不良品かを自動的に判定する、請求項1に記載の円筒内周面検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッキン溝の底部など、円筒形状のワークの内周面を撮影するとともに、撮影した画像を用いてワークの仕上がり、およびゴミの残留の有無等を検査する、円筒内周面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒内周面検査装置に関しては、以下の特許が出願されている。
特許文献1(特開2021-025842号公報)には、円筒内面の撮像すべき範囲から適切な明るさの反射光を得る円筒内面撮像装置が開示されている。
特許文献1に記載の円筒内面撮像装置は、導光筒部の外面にワークの円筒部の径に対応してリング状照明装置の取付位置を決定する際の目安とするための複数個の目盛が刻まれた取付位置表示が備えられている。導光筒部に備えられた透明筒部の内側には撮像装置本体に向かって光を反射する様に凸面鏡(円錐ミラー)を備えている。リング状照明装置は、斜め下方に広がる様に照射した環状光が透明筒部の高さとほぼ同じ高さの位置でワークの円筒部の内面に到達する様に、取付位置表示の目盛に従ってピン又はビスにより取り付ける。これにより、透明筒部へと水平方向から入射する光は十分な明るさを有し、適切な明るさの展開画像情報を生成することができる。
【0003】
特許文献2(特開2021-060205号公報)には、円筒内面の撮像すべき範囲から適切な明るさの反射光を得ることのできる円筒内面撮像装置が開示されている。
特許文献2に記載の円筒内面撮像装置は、撮像装置本体から伸ばされた導光筒部の先端に透明筒部を介して備えた底板の中心に頂点を上に向ける様にして頂角90°の円錐コーンミラーを備えている。透明筒部は、高さ方向に直径を変化させた先細で全周にわたり透明テーパ筒で構成され、円錐コーンミラーの高さの範囲については内外いずれの方向も遮蔽されることなく設置されている。導光筒部の上部には、中心軸に直交する方向から入射する光を中心軸と平行で円錐コーンミラーの設置された方向へ反射すると共に、中心軸に平行な方向から入射する光を撮像装置本体の設置された方向へと透過させるビームスプリッターと、ビームスプリッターに向かって導光筒部の中心軸と直交する方向から光を照射する光源とを備えている。
【0004】
特許文献3(特開2021-110539号公報)には、非破壊での小径金属管内面の表面粗さを測定する装置が開示されている。
特許文献3に記載の表面粗さ測定装置は、ステージの移動と小径金属管内面の画像撮影が連動した電動ステージに設置した小径金属管に、ファイバースコープを挿入し、電動ステージの移動とCCDカメラでの撮影をプログラムにより連続して実施し、画像の撮影毎にリアルタイムに、撮影した金属管内面の画像から、階調総和を計算し、事前に検証している階調総和と表面粗さの相関関係から、金属管内面の表面粗さを計算することで、小径金属管の長手方向全域にわたって内面の表面粗さを測定する。
【0005】
特許文献4(特開昭63-184044号公報)には、容器内周面を連続的にくまなく、かつ短時間に走査し検出、検査することができる筒状容器内周面の検査装置が開示されている。
特許文献4に記載の筒状容器内周面の検査装置は、筒状容器の内周面をこの容器のほぼ中心線上に設置された、前段に集光レンズを具備するスポット型光電センサによって光学的に検査する装置において、容器と光電センサとの中間位置に中心部をもち容器のほぼ中心線と直交する円環面をもつ円環状の連続光源と、この光源の中心部で、その円環面と45度の角度をなすハーフミラーと、容器のほぼ中心線に対し中心部で斜めに交差する反射鏡と、この反射鏡とハーフミラーとの中間位置に設けられ、このハーフミラーから反射鏡へ進む光束を絞るための光束絞り手段とを備え、ハーフミラーと、反射鏡と、光束絞り手段とを中空筒状の枠体の内部に設け、この枠体は容器のほぼ中心線のまわりに回動可能に支持され、かつこの中心線にそってハーフミラーに入射する光束の反射光束が枠体の周壁と当たる箇所に第1の中空穴が、また反射鏡に入射する光束の反射光束が枠体の周壁と当たる箇所に第2の中空穴がそれぞれ開けられ、光電センサと、光源と、枠体とは、一体的に容器のほぼ中心線にそって移動可能に支持されたことを特徴とする。
【0006】
特許文献5(特開平06-180291号公報)には、円筒内面の反射率の違いに拘らず、内面の傷、凹凸の程度、内径等を正確に検出することができる円筒内面検査方法とその装置が記載されている。
特許文献5に記載の円筒内面検査装置は、集光レンズを通してレーザ光を被検査物の円筒内面に照射し、その内面から反射された反射光を受光器に導き、受光レンズで集光した反射光を受光素子で受光して円筒内面の検査を行う。集光レンズの焦点位置を円筒内面上に位置させるように被検査物の円筒を配置し、受光レンズの焦点位置の片側に遮光板を配置することによって、焦点位置の反射光の一部を遮光するようにし、2分割された受光部を有する受光素子で遮光部分を含む反射光を受光し、受光素子から出力される2つの出力信号に基づき、円筒内面の傷や凹凸等を検査する。
【0007】
特許文献6(特開2012-049624号公報)には、カメラに接続された通信線や電力線のメンテナンスが一切不要な撮像装置が開示されている。
特許文献6に記載の撮像装置は、第1回転ユニットを第1回転軸周りに回転させ、撮像対象孔の周方向に沿って撮像対象孔の内部表面に照射光を順次当てている。また、撮像対象孔の内部表面で反射した照射光の反射光を、第2回転ユニットが備える3つのミラーで反射させる。そして、制御部により、第3のミラーから反射された照射光が、光軸周りに回転しないように回転速度を調整しながら、第1及び第2回転ユニットを回転させている。そのため、この撮像装置では、カメラユニットを回転しなくてもよいので、カメラユニットを回転させたときに必要であって、カメラの通信線や電力線のメンテナンスを一切不要とすることができる。
【0008】
特許文献7(特開2012-004805号公報)には、ピントが合わせやすく、撮像漏れがなく、しかも、短時間で円筒の外部表面、又は、円筒形状の穴の内部表面を2次元的に撮像することが可能な撮像装置が開示されている。
特許文献7に記載の撮像装置は、エリアカメラと、円筒形状の穴の内部表面に線状光を当てる照光手段と、穴の内部表面で反射した線状光の反射光をエリアカメラに導く導光手段と、円筒形状のワークを軸回転させる第2回転手段と、導光手段でエリアカメラに向かう反射光の光軸を横切るように、エリアカメラの撮像面を移動させる移動手段と、第2回転手段の回転に同期させて移動手段によりエリアカメラを移動することにより、穴の内部表面を二次元的に撮像する撮像制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
特許文献8(特開2019-207188号公報)には、孔の内周面を短時間で良好に撮像する撮像装置が開示されている。
特許文献8に記載の撮像装置は、撮像対象物の表面から孔形成方向に形成された孔の内周面を照明するための照明光を発光する光源と、複数の折返ミラーを有し、複数の折返ミラーがそれぞれ内周面のうち孔形成方向において互いに異なる領域に照明光を導光するとともに領域で反射される反射光を孔から取り出すように孔に挿入された状態で孔形成方向と平行な回転軸まわりに回転するヘッド部と、単位時間当たりの回転角がヘッド部の半分の回転角となるように回転軸まわりに回転しながらヘッド部から取り出された複数の反射光を撮像部に向けて導光して撮像部で撮像される像の向きを一定に維持する像回転補正部と、像回転補正部から出射される反射光毎に、像回転補正部から撮像部までの反射光の光路長をヘッド部における複数の反射光の光路長差に応じて調整しながら撮像部に導光する光路長差補正部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2021-025842号公報
【特許文献2】特開2021-060205号公報
【特許文献3】特開2021-110539号公報
【特許文献4】特開昭63-184044号公報
【特許文献5】特開平06-180291号公報
【特許文献6】特開2012-049624号公報
【特許文献7】特開2012-004805号公報
【特許文献8】特開2019-207188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
油圧シリンダには内周面にロッドパッキンを固定する溝が設けられている。この溝の底部の仕上がりが悪い場合、あるいは、底部のゴミが除去されていない場合、ロッドパッキンを介して外部への油漏れが発生する。また、溝底の仕上がりが悪いと圧力をかけたときにシールが溝底に密着し、破損が速くなる。したがって、パッキン溝底の検査は非常に重要である。
しかし、油圧シリンダのロッドパッキンはダストシールの内側に施工されており、内径が小さくなるほど目視確認が困難になる。
【0012】
特許文献1および2に記載の円筒内面撮像装置は、円錐コーンミラーを用いて円筒内面を一度に撮影するもので、短時間で撮影できるメリットはあるが、パッキンの溝底の仕上がりやゴミ残留の有無を調べるには解像度が不足している。
【0013】
特許文献3に記載の表面粗さ非破壊測定装置は階調総和と表面粗さの相関関係から、金属管内面の表面粗さを計算するものであって、画像が出力されないため、部分的なキズやゴミの残留などの有無の確認は困難である。
【0014】
特許文献4および5に記載の円筒内面検査装置はスポット型光電センサまたは受光素子を用いて円筒内面の傷や凹凸等を検査するものであるが、一度に検査できる領域が狭く、円周方向および垂直方向に走査する必要があるため、効率的な検査ができない。
【0015】
特許文献6および7に記載の撮像装置はエリアカメラを移動することにより穴の内部表面を二次元的に撮像することを特徴とするものであるが、ミラーまたはワークの軸回転とエリアカメラの移動との同期のずれなどにより、エリアカメラの移動方向での解像度が十分に確保できない可能性がある。
【0016】
特許文献8に記載の撮像装置は、撮像部で撮像される像の向きを一定に維持する像回転補正部と複数の反射光の光路長差に応じて調整しながら撮像部に導光する光路長差補正部とを備えていることを特徴とするものであるが、内周面が鏡面に近い状態になっていることを前提としており、本発明の主な対象とするロッドパッキンを固定する溝の底部の撮影には必ずしも適切でない。
【0017】
本発明の主な目的は、パッキン溝の底部など、円筒形状のワークの内周面の画像を高解像度で撮影し、溝底の仕上がり、およびゴミ残留の有無を目視検査することのできる円筒内周面検査装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、パッキン溝の底部など、円筒形状のワークの内周面の画像を高解像度で撮影し、溝底の仕上がり、およびゴミ残留の有無を自動で判断することのできる円筒内周面検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(1)
一局面に従う円筒内周面検査装置は、円筒形状のワークの穴に挿入され、穴の内周面の像を穴の軸方向に沿う方向に反射させる側面視ミラーと、穴の軸方向の延長線上に配置されるエリアセンサと、側面視ミラーとエリアセンサとを結ぶ直線の途中に挿入され、照射光源の光を側面視ミラーに導くハーフミラーと、ワークを穴の軸方向を中心に回転させる回転アクチュエータと、画像合成部と、表示部と、を備え、回転アクチュエータでワークを所定の角度づつ回転させながらエリアセンサで複数の画像を撮影し、画像を結合して穴の内周面のパノラマ画像を合成し、表示する。
【0019】
円筒内周面検査装置では、ミラーまたはワークを軸回転して内周面のパノラマ画像を撮影する。この場合、従来は、受光素子でピンポイントの画像を撮影し、円周方向および穴の軸方向にスキャンしてパノラマ画像とする方法、ラインセンサで1次元画像を撮影し、円周方向にスキャンしてパノラマ画像とする方法、円周方向のスキャンに合わせてエリアセンサを横方向に移動してパノラマ画像とする方法、円錐コーンミラーとエリアセンサを用いてスキャンなしでパノラマ画像を作成する方法のいずれかが用いられていた。
このうち、受光素子でピンポイントの画像を撮影する方法は、円周方向と穴の軸方向のスキャンを交互に繰り返す必要があるため、パノラマ画像を作成するのに多くの時間を要するという問題があった。
また、ラインセンサで1次元画像を撮影する方法は、ラインセンサの撮像幅は極めて狭いため(幅は4μm以上7μm以下)、反射光がラインセンサに入射するように、光源またはラインセンサを配置することが困難であり、しかも、ピント合わせの際にセンサで撮像しても線しか移らないので、ピント合わせが困難であるという問題があった。
また、円周方向のスキャンに合わせてエリアセンサを横方向に移動する方法は、円周方向のスキャン速度とエリアセンサのスキャン速度とがずれるとスキャン方向の画像が歪むという問題があった。
また、円錐コーンミラーとエリアセンサを用いる方法は、得られる画像の解像度が低くて、パッキン溝の底部を高解像度で撮影することできないという問題があった。
【0020】
一局面に従う円筒内周面検査装置では、側面視ミラーに対向する部分の画像をエリアセンサで撮影するため、通常の撮影と同じ解像度の画像を得ることができる。この場合、側面視ミラーに対向する部分から外れた部分では、照射光源からの光の反射光が側面視ミラーに戻らず暗くなるとの課題があるが、撮影毎の回転アクチュエータによる回転の角度を小さくして一度に撮影する角度範囲を狭くし、撮影された縦長の帯状の複数の画像を横方向に結合することで、高解像度のパノラマ画像を得ることができる。
【0021】
(2)
第2の発明に係る円筒内周面検査装置は、一局面に従う円筒内周面検査装置において、さらに垂直移動アクチュエータを備え、垂直移動アクチュエータは、エリアセンサと、照射光源およびハーフミラーと、側面視ミラーを固定しフォーカス調整機能を備えた側面視ミラーホルダとを一体に垂直方向へ移動させてもよい。
【0022】
この場合、円筒形状のワークの内周面を撮影するにあたって、スムーズに側面視ミラーを穴の中に挿入することができる。また、側面視ミラーホルダのフォーカス調整機能を用いて内周面のフォーカスを容易に調整することができる。
【0023】
(3)
第3の発明に係る円筒内周面検査装置は、第2の発明に係る円筒内周面検査装置において、さらに水平移動アクチュエータを備え、水平移動アクチュエータは回転アクチュエータをワークセット位置と撮像位置の間で水平に移動させてもよい。
【0024】
この場合、撮影するワークの交換を効率よく行うことができ、また、ワークと側面視ミラーとの距離を高精度に調整することができる。
【0025】
(4)
第4の発明に係る円筒内周面検査装置は、一局面に従う円筒内周面検査装置において、撮影された画像のうちの、内周面に垂直でない方向から光が照射された部分が選択され結合されて、内周面の360度のパノラマ画像が合成されてもよい。
【0026】
円筒の内周面に垂直な方向から光を照射して撮影された画像では凹凸が見えにくいため、少し斜め方向から光が照射される、撮像された画像の中心より端部寄りの部分の画像を切り取って結合することにより、凹凸が鮮明に浮かび上がる360度のパノラマ画像を合成することができる。
【0027】
(5)
第5の発明に係る円筒内周面検査装置は、一局面に従う円筒内周面検査装置において、所定の角度は穴の内径に依存してもよい。
【0028】
検査に必要な円筒内周面の画像の解像度を確保するためには、穴の内径が大きい場合、画像を撮影する際の回転アクチュエータの回転角度を小さくする必要がある。すなわち、穴の内径が大きいほど、パノラマ画像を撮影するために必要な画像の枚数を多くする必要がある。
【0029】
(6)
第6の発明に係る円筒内周面検査装置は、一局面に従う円筒内周面検査装置において、表示部は、合成したパノラマ画像と検査合否判断の基準となる基準画像とを並べて表示し、作業者の目視判定を容易にしてもよい。
【0030】
合成したパノラマ画像と基準画像とを並べて表示することにより、作業者は容易かつ正確に合否の判定を行うことができる。
【0031】
(7)
第7の発明に係る円筒内周面検査装置は、一局面に従う円筒内周面検査装置において、さらに、自動画像判定部を備え、自動画像判定部は、溝底の面粗度を数値化する面粗度測定ユニット、および/または、複数の良品画像と不良品画像とを教師データとして学習したディープラーニングユニットを含み、合成したパノラマ画像を入力して良品か不良品かを自動的に判定してもよい。
【0032】
本発明の主な用途である油圧部品のパッキン溝底の検査においては、溝底の仕上がりの評価が重要であり、具体的には溝底の面粗度によってパッキン溝底の良否を判定することができる。したがってパノラマ画像の長さ方向の輝度の変化を数値化し、そのrms値などを計算し、基準画像のrms値などと比較することによって良否の判定をすることができる。
例えば、パッキン溝の加工を行う工具の不良、切削加工装置の不良、もしくは、工具または切削加工装置が不良とまではいかないが、今後メンテナンスが必要になってきている状態の場合には面粗度が大きくなっているので、TBM(時間基準保全)だけでなく、CBM(状態基準保全)等の判定に第7の発明に係る円筒内周面検査装置を用いることができる。
一方、ごみの付着など、局所的な不良に関しては溝底の面粗度測定では不良品の検知が困難である。しかし、多くの不良品の画像を集め、良品画像と不良品画像とを用いて学習させたディープラーニングユニットを用いることによって、このような局所的な不良の検知を行うことができる。ディープラーニングユニットとして用いることのできるシステムは限定されないが、例えば、YOLO(Redmon, Joseph, et al.“YOLOv3: An Incremental Improvement“ arXiv preprint arXiv:1804.02767)を用いることができる。YOLOは、クラス(不良品の種類など)とバウンディングボックス(そのクラスの含まれる位置範囲)とを指定した教師データを多数準備し学習させることで、どの位置にどんな不良が含まれているかを判断することができるようになる。
したがって、円筒内周面検査装置の自動画像判定部としては、面粗度測定ユニット、および/または、ディープラーニングユニットを備えることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1の実施形態の円筒内周面検査装置の構成の一例を示す模式図である。
図2】円筒内周面検査装置の機構部分の模式図である。
図3】照射光源とハーフミラーとの構成を示す模式図である。
図4】側面視ミラーとワークの内周面との関係を示す模式図である。
図5】撮影した画像のうちのパノラマ画像の合成に用いる部分の説明のための模式図である。
図6】ワークの円周面が入射光に垂直な場合と少し傾斜している場合の光の反射を示す模式図である。
図7】合成された円筒内周面のパノラマ画像の例を示す図である。
図8】第2の実施形態の円筒内周面検査装置の構成の一例を示す模式図である。
図9】ディープラーニングユニットの構成の一例を示す模式図である。
図10】ディープラーニングで用いる、ゴミが付着した不良品画像の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明においては、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。以下に、本発明を詳細に説明する。
【0035】
[第1の実施形態の円筒内周面検査装置200]
図1は第1の実施形態の円筒内周面検査装置200の構成の一例を示す模式図であり、図2は円筒内周面検査装置200の機構部分の模式図であり、図3は照射光源40とハーフミラー45との構成を示す模式図であり、図4は側面視ミラー20とワーク100の内周面との関係を示す模式図である。
円筒内周面検査装置200は、円筒形状に形成されたワーク100を回転させてワーク100の内周面を撮像する。
円筒内周面検査装置200は、図1図2に示すように、エリアセンサ10、照射光源40とハーフミラー45、側面視ミラー20と側面視ミラーホルダ30、およびワーク100を固定するセット治具55、回転アクチュエータ50、垂直移動アクチュエータ60、水平移動アクチュエータ70、画像合成部90、表示部95、制御部75、および筐体80を備えている。セット治具55はワークセット位置57でワーク100を固定し、水平移動アクチュエータ70に駆動されて撮像位置まで移動する。
なお、側面視ミラーホルダ30はフォーカス調整機能を備えており、溝底撮影時正確にフォーカスを調整することができる。
また、撮影時のセット治具55の位置を変更することにより、円筒内周面検査装置200を用いてワーク100の外周面を撮影することも可能である。
【0036】
セット治具55は回転アクチュエータ50により必要な角度の回転をすることができる。
ワーク100は回転アクチュエータ50の回転軸と、ワーク100の中心軸とが一致するようにセット治具55に固定される。本実施形態では、セット治具55上に凸部が形成されており、この凸部にワーク100を嵌挿させることにより固定している。
【0037】
図3に示すように、照射光源40の光線はハーフミラー45で90度角度を変えて、図4に示す側面視ミラー20で再度90度角度を変えてワーク100の内周面に照射して反射し、再度側面視ミラーで角度を変え、ハーフミラー45を透過してエリアセンサ10に入射する。エリアセンサ10は円筒形状のワーク100の穴の中心軸の延長線上に配置されている。
なお、図2では側面視ミラー20はワーク100の上側に配置しているが、垂直移動アクチュエータ60に駆動されて垂直方向に移動し、図4に示すようにワーク100の穴に挿入される。
【0038】
図5(a)は、ワーク100に側面視ミラー20が挿入し、画像を撮影している状態を上方から見た模式図である。照明が入射し、内周面の画像が撮影される範囲は図中の撮影範囲である(図の角度は説明の都合上実際より大きく描かれている)。
図5(b)の2つの画像は、ともにエリアセンサ10で撮影した画像の例であるが、右側の画像は、左側の画像のワーク100を時計方向に少し回転してから撮影した画像に相当する。
画像は撮影範囲の中心、図5(a)のAに相当する部分が最も明るい。したがって、本来であれば、図5(b)のAの部分を切り取り、結合してパノラマ画像を合成するのが望ましい。しかし、本発明の目的である、溝底の仕上がり、およびゴミ残留の有無を検査する場合、Aの部分は円周面に垂直な方向から照射光源40の光が入射するため、溝底の凹凸が見えづらくなる。
これに対して、図5(a)のBに相当する部分では光が円周面に垂直な方向ではなく、やや斜め方向から入射するため、表面に凹凸があると凹凸が鮮明に浮かび上がってくる。このことは、図5(b)の楕円の線で囲んだ部分において、Aでは凹凸(縦の黒い線)がほとんど見えないが、ワーク100を少し時計方向に回転して撮影したBでは凹凸(縦の黒い線)が浮かび上がって見えることからも明らかである。
【0039】
図6(a)にはワーク100の円周面が入射光に垂直な場合の、凹凸のある円周面からの光の反射を示した。また、図6(b)にはワーク100の円周面が入射光に対して少し傾いている場合の光の反射を示した。図6(a)のように、円周面に垂直な方向から光が入射した場合は、凸部の両側の傾斜部分では反射光の方向は少しずれるが、それほど大きな明暗はつかない。しかし、図6(b)のように、円周面が少し傾斜していて、少し斜め方向から光が入射した場合には、凸部の左側の傾斜部分からの反射光は入射方向から大幅にずれるため、この部分が暗くなり、凹凸が浮かび上がって見える。
本実施形態では、撮影された画像のうち、内周面に垂直でない、すなわち少し斜め方向から光が照射される、撮像された画像の中心より端部寄りの部分の画像(図5(b)のBに相当)を切り取って結合することにより、凹凸が鮮明に浮かび上がって見えるパノラマ画像を合成している。
【0040】
隣接する画像を結合してパノラマ画像を合成する場合、円筒のワーク100の穴の中心軸と回転アクチュエータ50の回転軸とが平行であることが重要である。これは、中心軸と回転軸とが平行でない場合、結合した画像の境界部において位置ずれが生じ、画像がスムーズにつながらなくなるためである。
また、境界部において位置ずれが生じた場合、画像の傾きを補正することによって位置ずれを解消することができる。さらに、結合する2つの画像の位置ずれを自動的に検出して、検出された位置ずれの大きさに基づいて画像の傾き補正量を決定することで、位置ずれの無いパノラマ画像の自動合成が可能になる。
【0041】
パノラマ撮影に用いる各画像は、回転アクチュエータ50でワーク100を所定の角度回転し、撮影される。ワーク100の穴の内径が大きい場合、検査に必要な円筒内周面の画像の解像度を確保するためには、画像を撮影する際の回転アクチュエータ50の回転角度を小さくする必要がある。すなわち、穴の内径が大きいほど、パノラマ画像を撮影するために用いられる画像の枚数を多くする必要がある。画像の枚数はワーク100の穴の内径に依存するが、例えば1000枚程度である。
【0042】
図7は、図5のBの部分を横方向に結合して合成した円筒内周面のパノラマ画像の例を示す図である。図中、四角で囲んだ部分が溝底に相当する。図7(a)と図7(b)とは溝底加工時の仕上げ工具が異なり、図7(a)の方が、面粗度が小さく滑らかに仕上がっている。なお、図7(a)の面粗度はRz=1.30μm、図7(b)の面粗度はRz=8.33μmである。
合成されたパノラマ画像は表示部95に表示される。表示部95には、合成されたパノラマ画像と検査合否判断の基準となる基準画像とを並べて表示すると、作業者が容易かつ正確に合否の目視判定を行うことができて好適である。
【0043】
[第2の実施形態の円筒内周面検査装置200a]
図8は第2の実施形態の円筒内周面検査装置200aの構成の一例を示す模式図である。第2の実施形態の円筒内周面検査装置200aは第1の実施形態の円筒内周面検査装置200に自動画像判定部92を追加したものである。したがって、図2乃至図4の構成は第2の実施形態の円筒内周面検査装置200aにも適用される。また、図5乃至図7の説明も同様に適用される。
【0044】
自動画像判定部92としては、溝底の面粗度を測定する面粗度測定ユニットと局所的な不良を検知するディープラーニングユニットとを備えることが望ましい。これは、溝底の評価においては、溝底全体の仕上がりの評価とキズまたはゴミの付着などの局所的な不良の評価とを行うことが必要だからである、
面粗度測定ユニットでは、例えば、パノラマ画像の溝底中央付近の輝度を円周方向にスキャンし、輝度のrms値を輝度の平均値で割った値を面粗度の指標として用いることができる。
【0045】
一方、ディープラーニングユニット93では、多くのキズまたはゴミの付着部分などの不良品の画像を集め、良品画像と不良品画像とを用いて学習させることによって、局所的な不良の有無の検知を行うことができる。ディープラーニングユニット93として用いることのできるシステムは限定されないが、例えば、YOLO(Redmon, Joseph, et al.“YOLOv3: An Incremental Improvement“ arXiv preprint arXiv:1804.02767)を用いることができる。
【0046】
図9にはYOLOを用いる場合のディープラーニングユニット93の構成の一例を示した。ディープラーニングユニット93は、入力層、中間層、および出力層で構成され、入力層から溝底パノラマ画像を入力し、出力層からそれぞれのクラス(不良品の種類など)の含まれている確率とそのクラスのバウンディングボックス(そのクラスの含まれる位置範囲)が出力される。そして、不良品のクラスの確率が低ければ良品と判定することができる。
ディープラーニングユニット93を用いる場合、まず、多数の不良品画像とそのクラス、およびバウンディングボックスを指定した教師データを用いて学習させ、その後、合成した溝底パノラマ画像を入力し、それぞれの不良品のクラスの確率がある基準値以下であるかどうかによって合否判定をする。図10(a)、図10(b)に、ゴミが付着した不良品画像の例を示す。図10において、「NG1」などの文字が不良品のクラスを示し、黒枠がバウンディングボックスを示す。
なお、不良品と判定された場合、バウンディングボックスによりその位置を確認することができるので、不良個所の画像を見て、あとから良否判定を変更することもできる。また、良否判定を変更した場合は、不良個所の画像を良品として再学習させることで、ディープラーニングユニット93の判定精度を向上させることができる。
なお、YOLOとは別のディープラーニングユニット93を用いることにより、面粗度測定ユニットの機能を行わせることもできる。この場合は、教師データとして面粗度の異なるパノラマ画像を準備し、ディープラーニングユニット93に学習させることによって、良否の判定を行わせることができる。
【0047】
本実施形態においては、ワーク100が「ワーク」に相当し、側面視ミラー20が「側面視ミラー」に相当し、エリアセンサ10が「エリアセンサ」に相当し、照射光源40が「照射光源」に相当し、ハーフミラー45が「ハーフミラー」に相当し、回転アクチュエータ50が「回転アクチュエータ」に相当し、画像合成部90が「画像合成部」に相当し、表示部95が「表示部」に相当し、円筒内周面検査装置200が「円筒内周面検査装置」に相当し、垂直移動アクチュエータ60が「垂直移動アクチュエータ」に相当し、側面視ミラーホルダ30が「側面視ミラーホルダ」に相当し、水平移動アクチュエータ70が「水平移動アクチュエータ」に相当し、自動画像判定部92が「自動画像判定部」に相当し、ディープラーニングユニット93が「ディープラーニングユニット」に相当する。
【0048】
本発明の好ましい一実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0049】
10 エリアセンサ
20 側面視ミラー
30 側面視ミラーホルダ
40 照射光源
45 ハーフミラー
50 回転アクチュエータ
60 垂直移動アクチュエータ
70 水平移動アクチュエータ
90 画像合成部
92 自動画像判定部
93 ディープラーニングユニット
95 表示部
100 ワーク
200 円筒内周面検査装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10