(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049779
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】表示装置及びソースドライバ
(51)【国際特許分類】
G09G 3/20 20060101AFI20240403BHJP
G09G 3/36 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G09G3/20 623B
G09G3/20 611C
G09G3/36
G09G3/20 622B
G09G3/20 612J
G09G3/20 612A
G09G3/20 612L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156222
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏明
【テーマコード(参考)】
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
5C006AA16
5C006AF82
5C006BB16
5C006BC03
5C006BC11
5C006BC16
5C006BC20
5C006BF04
5C006BF25
5C006BF27
5C006BF31
5C006BF42
5C006FA32
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD08
5C080DD12
5C080EE29
5C080FF11
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
(57)【要約】
【課題】増幅回路のスルーレートの低下を抑えつつ電流の瞬間的な変動量及びそれに起因するノイズを抑えることが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】ソースドライバは、ゲート制御信号を生成するゲート制御部と、ゲート制御信号を増幅して出力する出力バッファと、を含む。出力バッファは、第1電源電圧及び第2電源電圧の印加を受けて動作し、ゲート制御信号を増幅して出力する増幅部と、第1電源電圧を増幅部に供給する第1の供給ラインに設けられた第1の定電流源及び第2電源電圧を増幅部に供給する第2の供給ラインに設けられた第2の定電流源を含む第1の電流制御部と、第1の供給ラインに並列に接続されて増幅部に第1電源電圧を供給しかつ当該供給をオンオフ自在な第3の定電流源及び第2の供給ラインと並列に接続された増幅部に第2電源電圧を供給しかつ当該供給をオンオフ自在な第4の定電流源を含む第2の電流制御部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のデータ線及び複数本のゲート線と、前記複数本のデータ線と前記複数本のゲート線との交差部の各々にマトリクス状に設けられた複数個の画素部と、を有する表示パネルと、
前記表示パネルに表示する映像を示す映像データ信号を出力する表示コントローラと、
前記複数本のゲート線にゲート信号を供給するゲートドライバと、
前記表示コントローラから前記映像データ信号を受信し、前記映像データ信号に基づいて階調電圧信号を前記複数本のデータ線を介して前記複数個の画素部に供給するとともに、前記ゲートドライバの動作を制御するゲート制御信号を前記ゲートドライバに供給するソースドライバと、
を有し、
前記ソースドライバは、前記ゲート制御信号を生成するゲート制御部と、前記ゲート制御信号を増幅して出力する出力バッファと、を含み、
前記出力バッファは、
第1電源電圧及び第2電源電圧の印加を受けて動作し、前記ゲート制御信号を増幅して出力する増幅部と、
前記第1電源電圧を前記増幅部に供給する第1の供給ラインに設けられた第1の定電流源及び前記第2電源電圧を前記増幅部に供給する第2の供給ラインに設けられた第2の定電流源を含む第1の電流制御部と、
前記第1の供給ラインに並列に接続されて前記増幅部に前記第1電源電圧を供給しかつ当該供給をオンオフ自在な第3の定電流源及び前記第2の供給ラインと並列に接続された前記増幅部に前記第2電源電圧を供給しかつ当該供給をオンオフ自在な第4の定電流源を含む第2の電流制御部と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記ソースドライバは、前記表示コントローラからフレーム同期信号の供給を受け、
前記ゲート制御部は、前記フレーム同期信号に基づいて、前記第3の定電流源及び前記第4の定電流源のオンオフを切り替える切替信号を生成し、前記第2の電流制御部に供給することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1の定電流源、前記第2の定電流源、前記第3の定電流源及び前記第4の定電流源は、それぞれ同じ電流能力を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
複数本のデータ線及び複数本のゲート線と、前記複数本のデータ線と前記複数本のゲート線との交差部の各々にマトリクス状に設けられた複数個の画素部と、を有する表示パネルに接続され、表示コントローラから映像データ信号の供給を受け、前記映像データ信号に基づいて階調電圧信号を前記複数本のデータ線を介して前記複数個の画素部に供給するとともに、前記複数本のゲート線にゲート信号を供給するゲートドライバの動作を制御するゲート制御信号を前記ゲートドライバに供給するソースドライバであって、
前記ゲート制御信号を生成するゲート制御部と、
前記ゲート制御信号を増幅して出力する出力バッファと、を含み、
前記出力バッファは、
第1電源電圧及び第2電源電圧の印加を受けて動作し、前記ゲート制御信号を増幅して出力する増幅部と、
前記第1電源電圧を前記増幅部に供給する第1の供給ラインに設けられた第1の定電流源及び前記第2電源電圧を前記増幅部に供給する第2の供給ラインに設けられた第2の定電流源を含む第1の電流制御部と、
前記第1の供給ラインに並列に接続されて前記増幅部に前記第1電源電圧を供給しかつ当該供給をオンオフ自在な第3の定電流源及び前記第2の供給ラインと並列に接続された前記増幅部に前記第2電源電圧を供給しかつ当該供給をオンオフ自在な第4の定電流源を含む第2の電流制御部と、
を有することを特徴とするソースドライバ。
【請求項5】
前記ソースドライバは、前記表示コントローラからフレーム同期信号の供給を受け、
前記ゲート制御部は、前記フレーム同期信号に基づいて、前記第3の定電流源及び前記第4の定電流源のオンオフを切り替える切替信号を生成し、前記第2の電流制御部に供給することを特徴とする請求項1に記載のソースドライバ。
【請求項6】
前記第1の定電流源、前記第2の定電流源、前記第3の定電流源及び前記第4の定電流源は、それぞれ同じ電流能力を有することを特徴とする請求項1に記載のソースドライバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及びソースドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
車載向け等の小型の液晶表示装置において、ゲートドライバと同等の機能をガラス上に実装するGIP(Gate In Panel)の採用が進んでおり、GIPの制御信号をソースドライバで生成する事例が増えている。GIPの制御信号は、従来のソースドライバの出力信号に比べて振幅が大きく、ピーク電流も大きいため、EMI(Electro Magnetic Interference)等のノイズが発生する原因となる。
【0003】
このようなノイズの低減を図るため、電流量を制限するためのバッファを出力回路に設ける構成が採用されている。例えば、スイッチング動作する2以上のトランジスタからなるCMOS出力回路において、電源ノイズによる誤動作を防止するため、CMOSインバータの入力部分に電流駆動能力の弱いインバータを接続することにより、出力端子への電流量を制限する構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電流量を制限するためのバッファを採用した構成では、ノイズ発生の原因となるピーク電流、すなわち電流の瞬間的な変動量を抑えることが出来る。しかし、ピーク電流の抑制と反比例して、出力部を構成する増幅回路のスルーレートが下がり、出力遅延が発生してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、増幅回路のスルーレートの低下を抑えつつ電流の瞬間的な変動量及びそれに起因して発生するノイズの大きさを抑えることが可能な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る表示装置は、複数本のデータ線及び複数本のゲート線と、前記複数本のデータ線と前記複数本のゲート線との交差部の各々にマトリクス状に設けられた複数個の画素部と、を有する表示パネルと、前記表示パネルに表示する映像を示す映像データ信号を出力する表示コントローラと、前記複数本のゲート線にゲート信号を供給するゲートドライバと、前記表示コントローラから前記映像データ信号を受信し、前記映像データ信号に基づいて階調電圧信号を前記複数本のデータ線を介して前記複数個の画素部に供給するとともに、前記ゲートドライバの動作を制御するゲート制御信号を前記ゲートドライバに供給するソースドライバと、を有し、前記ソースドライバは、前記ゲート制御信号を生成するゲート制御部と、前記ゲート制御信号を増幅して出力する出力バッファと、を含み、前記出力バッファは、第1電源電圧及び第2電源電圧の印加を受けて動作し、前記ゲート制御信号を増幅して出力する増幅部と、前記第1電源電圧を前記増幅部に供給する第1の供給ラインに設けられた第1の定電流源及び前記第2電源電圧を前記増幅部に供給する第2の供給ラインに設けられた第2の定電流源を含む第1の電流制御部と、前記第1の供給ラインに並列に接続されて前記増幅部に前記第1電源電圧を供給しかつ当該供給をオンオフ自在な第3の定電流源及び前記第2の供給ラインと並列に接続された前記増幅部に前記第2電源電圧を供給しかつ当該供給をオンオフ自在な第4の定電流源を含む第2の電流制御部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るソースドライバは、複数本のデータ線及び複数本のゲート線と、前記複数本のデータ線と前記複数本のゲート線との交差部の各々にマトリクス状に設けられた複数個の画素部と、を有する表示パネルに接続され、表示コントローラから映像データ信号の供給を受け、前記映像データ信号に基づいて階調電圧信号を前記複数本のデータ線を介して前記複数個の画素部に供給するとともに、前記複数本のゲート線にゲート信号を供給するゲートドライバの動作を制御するゲート制御信号を前記ゲートドライバに供給するソースドライバであって、前記ゲート制御信号を生成するゲート制御部と、前記ゲート制御信号を増幅して出力する出力バッファと、を含み、前記出力バッファは、第1電源電圧及び第2電源電圧の印加を受けて動作し、前記ゲート制御信号を増幅して出力する増幅部と、前記第1電源電圧を前記増幅部に供給する第1の供給ラインに設けられた第1の定電流源及び前記第2電源電圧を前記増幅部に供給する第2の供給ラインに設けられた第2の定電流源を含む第1の電流制御部と、前記第1の供給ラインに並列に接続されて前記増幅部に前記第1電源電圧を供給しかつ当該供給をオンオフ自在な第3の定電流源及び前記第2の供給ラインと並列に接続された前記増幅部に前記第2電源電圧を供給しかつ当該供給をオンオフ自在な第4の定電流源を含む第2の電流制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る表示装置によれば、増幅回路のスルーレートの低下を抑えつつ、電流の瞬間的な変動量及びそれに起因して発生するノイズの大きさを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施例の表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施例のソースドライバの構成を示すブロック図である。
【
図3A】ソースドライバ出力の信号波形を示す図である。
【
図3B】ゲート制御出力の信号波形を示す図である。
【
図4】本実施例の出力バッファの構成を簡略化して示す回路図である。
【
図5】本実施例の出力バッファの具体的な構成を示す回路図である。
【
図6】本実施例のゲート制御出力及びピーク電流を示す図である。
【
図7A】第1の比較例の出力バッファの構成を示す図である。
【
図7B】第1の比較例のゲート制御出力及びピーク電流を示す図である。
【
図8A】第2の比較例の出力バッファの構成を示す図である。
【
図8B】第2の比較例のゲート制御出力及びピーク電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
【0012】
図1は、本発明に係る表示装置100の構成を示すブロック図である。表示装置100は、アクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置である。表示装置100は、表示パネル11、タイミングコントローラ12、ゲートドライバ13及びソースドライバ14を含む。
【0013】
表示パネル11は、複数の画素部P11~Pnm及び画素スイッチM11~Mnm(n,m:2以上の自然数)がマトリクス状に配置された半導体基板から構成されている。表示パネル11は、各々が水平方向に延伸する走査線であるn本のゲート線GL1~GLnと、これに交差するように配されたデータ線であるm本のソース線SL1~SLmと、を有する。画素部P11~Pnm及び画素スイッチM11~Mnmは、ゲート線GL1~GLn及びソース線SL1~SLmの交差部に設けられている。
【0014】
画素スイッチM11~Mnmは、ゲートドライバ13から供給されるゲート信号Vg1~Vgnに応じてオン又はオフに制御される。
【0015】
画素部P11~Pnmは、ソースドライバ14から映像データに対応した階調電圧(駆動電圧)の供給を受ける。具体的には、ソースドライバ14から階調電圧信号Vd1~Vdmがソース線SL1~SLmに出力され、画素スイッチM11~Mnmがそれぞれオンのときに、階調電圧信号Vd1~Vdmが画素部P11~Pnmに印加される。これにより、画素部P11~Pnmの各々の画素電極が充電され、輝度が制御される。
【0016】
画素部P11~Pnmの各々は、画素スイッチM11~Mnmを介してソース線SL1~SLmに接続される透明電極と、半導体基板に対向して設けられ且つ面全体に1つの透明な電極が形成された対向基板との間に封入された液晶と、を含む。表示装置内部のバックライトに対して、画素部P11~Pnmに印加された階調電圧(駆動電圧)と対向基板電圧との電位差に応じて液晶の透過率が変化することにより、表示が行われる。
【0017】
タイミングコントローラ12は、映像データVSに基づき各画素の輝度レベルを例えば8ビットの256段階の輝度階調で表す画素データ片PDの系列(シリアル信号)を生成する。また、タイミングコントローラ12は、同期信号SSに基づいて、一定のクロック周期を有する埋め込みクロック方式のクロック信号CLK を生成する。タイミングコントローラ12は、画素データ片PDの系列とクロック信号CLKとを一体化したシリアル信号である映像データ信号VDSを生成し、ソースドライバ14に供給して映像データの表示制御を行う。映像データ信号VDSは、所定数のソース線毎に伝送路の数に応じてシリアル化された映像データ信号として構成されている。
【0018】
本実施例では、各々がm個の画素データ片PDからなるn個の画素データ片群がシリアルに連続することにより、1フレーム分の映像データ信号VDSが構成されている。n個の画素データ片群の各々は、それぞれ1水平走査ライン(すなわち、ゲート線GL1~GLnの各々)上の画素を供給対象とする階調電圧に対応する画素データ片からなる画素データ片群である。ソースドライバ14の動作により、m×n個の画素データ片PDに基づいて、n×m個の画素部(すなわち、画素部P11~Pnm)を供給対象とする階調電圧信号Vd1~Vdmがソース線を介して印加される。
【0019】
また、タイミングコントローラ12は、同期信号SSに基づいて、映像データ信号VDSの1フレーム毎のタイミングを示すフレーム同期信号FSを生成し、ソースドライバ14に供給する。
【0020】
ゲートドライバ13は、GIP(Gate In Panel)技術を用いて、表示パネル11を構成するガラス基板に実装されている。ゲートドライバ13は、ソースドライバ14からゲート制御出力GSの供給を受け、ゲート制御出力GSに含まれるクロックタイミングに基づいて、ゲート信号Vg1~Vgnを順次ゲート線GL1~GLnに供給する。ゲート信号Vg1~Vgnの供給により、画素行毎に画素部P11~Pnmが選択される。そして、選択された画素部に対して、ソースドライバ14から階調電圧信号Vd1~Vdmが印加されることにより、画素電極への階調電圧の書き込みが行われる。
【0021】
換言すると、ゲートドライバ13の動作により、ゲート線の伸長方向に沿って(すなわち、横一列に)配置されたm個の画素部が、階調電圧信号Vd1~Vdmの供給対象として選択される。ソースドライバ14は、選択された横一列の画素部に対して階調電圧信号Vd1~Vdmを印加し、電圧に応じた色を表示させる。階調電圧信号Vd1~Vdmの供給対象として選択される横一列分の画素部を選択的に切り替えながら、ソース線の伸長方向(すなわち、縦方向)に繰り返すことにより、1フレーム分の画面表示が行われる。
【0022】
ソースドライバ14は、タイミングコントローラ12から映像データ信号VDSの供給を受け、映像データ信号VDSに示される階調数に応じた多値レベルの階調電圧に対応する階調電圧信号Vd1~Vdmを生成し、ソース線SL1~SLmを介して画素部P11~Pnmに印加する。
【0023】
また、ソースドライバ14は、フレーム同期信号FSに基づいて、ゲートドライバ13の動作タイミングを制御するゲート制御出力GSを生成し、ゲートドライバ13に供給する。
【0024】
図2は、本実施例のソースドライバ14の構成を示すブロック図である。ソースドライバ14は、受信部(PLL)21、データ処理部22、設定レジスタ23、ソース制御部24、データラッチ群25、DAコンバータ26(DAC26)、ゲート制御部27及び出力バッファ28を含む。
【0025】
受信部21は、タイミングコントローラ12から供給された映像データ信号VDS及びフレーム同期信号FSを受信する。受信部21は、PLL(Phase Locked Loop)回路を含み、映像データ信号VDS及びフレーム同期信号FSに基づいて、クロック信号CLKを生成する。また、受信部21は、クロック信号CLKに同期したシリアルのデータ信号DSを生成し、データ処理部22に供給する。
【0026】
データ処理部22は、データ信号DSに対してシリアルパラレル変換を行い、パラレルの画素データ片PDを生成してソース制御部24に供給する。また、データ処理部22は、データ信号DSに基づいて水平同期信号LSを生成し、ソース制御部24に供給する。
【0027】
また、データ処理部22は、クロック信号CLKに基づいて、ゲートドライバ13の制御に用いるタイミング制御信号TSを生成し、ゲート制御部27に供給する。
【0028】
設定レジスタ23は、ソースドライバ14の動作に関する設定データを記憶するレジスタ回路である。設定レジスタ23には、タイミングコントローラ12からの書き込み動作に応じて、設定データの書き込みが行われる。また、タイミングコントローラ12による読み出し動作に応じて、設定レジスタ23に記憶されている各種データのタイミングコントローラ12への読み出しが行われる。
【0029】
ソース制御部24は、設定レジスタ23に格納されている設定データを読み出し、読み出した設定データに基づいて、データラッチ群25の動作を制御する。例えば、ソース制御部24は、データ処理部22から供給されたパラレルの画素データ片PDをデータラッチ群25に供給し、水平同期信号LSを取り込みクロックとして、データラッチ群25を構成するデータラッチの各々に画素データ片PDを順次格納させる。
【0030】
データラッチ群25及びDAコンバータ26は、ソース制御部の制御に応じて階調電圧信号の出力を行う階調電圧出力部である。データラッチ群25は、画素データ片PDの取り込みを行う複数のラッチ回路から構成されている。当該複数のラッチ回路は、例えば、画素データ片PDを1行分毎に取り込む第1のラッチ回路と、第1のラッチ回路に格納された画素データ片PDを水平同期信号LSの立ち上がりのタイミングに応じて取り込む第2のラッチ回路と、を含む。
【0031】
DAコンバータ26は、データラッチ群25から出力された画素データ片PDに対応する階調電圧を選択してデジタルアナログ変換し、アナログの階調電圧信号Vdを生成する。生成されたアナログの階調電圧信号Vdは、出力アンプ(
図2では図示を省略)で増幅され、表示パネル11のソース線SL1~SLmに出力される。
【0032】
ゲート制御部27は、データ処理部22から供給されたタイミング制御信号TSに基づいてゲート制御信号GCSを生成し、出力バッファ28に供給する。また、ゲート制御部27は、タイミング制御信号TSに基づいて、出力バッファ28を構成する増幅回路のスルーレートを切り替えるためのスルーレート切り替え信号SWSを生成し、出力バッファ28に供給する。
【0033】
出力バッファ28は、ゲート制御部27から供給されたゲート制御信号GCSを増幅し、ゲート制御出力GSとして出力する。ゲート制御出力GSは、ゲートドライバ13に供給される。
【0034】
図3A及び
図3Bは、DAコンバータ26から出力される階調電圧信号Vdの信号波形と出力バッファ28から出力されるゲート制御出力GSの信号波形とを比較して示す図である。
図3Aに示すように、ソースドライバ14の出力である階調電圧信号Vdは、±7Vの電圧を有する信号である。
【0035】
これに対し、
図3Bに示すように、ゲート制御出力GSは、-8V~+12Vの電圧値をとる信号であり、階調電圧信号Vdと比べて振幅が大きい。このため、ゲート制御出力GSの立ち上がりに応じて発生するピーク電流も大きくなり、EMI(Electro Magnetic Interference)等のノイズが発生する原因となる。本実施例の出力バッファ28は、このようなピーク電流の発生を抑えるための構成を有する。
【0036】
図4は、本実施例の出力バッファ28の構成を簡略化して示す図である。出力バッファ28は、増幅回路31、ベース定電流源32及び33、及びブースト用定電流源34及び35を含む。
【0037】
増幅回路31は、入力端にゲート制御信号GCSの入力を受け、これを増幅した信号をゲート制御出力GSとして出力する。
【0038】
ベース定電流源32は、増幅回路31に+12Vの電源電圧(正側の電源電圧)を供給する電圧供給ラインL1に設けられている。ベース定電流源33は、増幅回路31に-8Vの電源電圧(負側の電源電圧)を供給する電圧供給ラインL2に設けられている。ベース定電流源32及び33は、ゲート制御出力GSの立ち上がり時に増幅回路31を流れる電流(以下、ピーク電流と称する)を所定の電流値に制限する機能を有する。すなわち、ベース定電流源32及び33は、増幅回路31を流れる電流を所定レベルに制御する第1の電流制御部である。
【0039】
ブースト用定電流源34は、+12Vの電源電圧を供給する電圧供給ラインL3に設けられている。ブースト用定電流源34は、スルーレート切り替え信号SWSに応じてオン及びオフに制御される。ブースト用定電流源34がオンになると、電圧供給ラインL3が電圧供給ラインL1に並列に接続され、+12Vの電源電圧が電圧供給ラインL3及びブースト用定電流源34を介して増幅回路31に供給される。ブースト用定電流源34がオフになると、電圧供給ラインL3は増幅回路31に対して非接続となり、電圧供給ラインL3及びブースト用定電流源34を介した+12Vの電圧供給は行われない状態となる。
【0040】
ブースト用定電流源35は、-8Vの電源電圧を供給する電圧供給ラインL4に設けられている。ブースト用定電流源35は、スルーレート切り替え信号SWSに応じてオン及びオフに制御される。ブースト用定電流源35がオンになると、電圧供給ラインL4が電圧供給ラインL2に並列に接続され、-8Vの電源電圧が電圧供給ラインL4及びブースト用定電流源35を介して増幅回路31に供給される。ブースト用定電流源35がオフになると、電圧供給ラインL4は増幅回路31に対して非接続となり、電圧供給ラインL4及びブースト用定電流源35を介した-8Vの電圧供給は行われない状態となる。
【0041】
ブースト用定電流源34及び35は、スルーレート切り替え信号SWSに応じてオンとなり、増幅回路31に接続されることにより、増幅回路31のピーク電流を所定の電流値に制限する機能を有する。すなわち、ブースト用定電流源34及び35は、増幅回路31を流れる電流を所定レベルに制御する第2の電流制御部である。
【0042】
なお、本実施例では、ベース定電流源32、ベース定電流源33、ブースト用定電流源34及びブースト用定電流源35は、それぞれ同じ電流能力を有する。すなわち、スルーレート切り替え信号SWSに基づいてブースト用定電流源34がオンになり、ブースト用定電流源34がベース定電流源32に並列に接続されると、ブースト用定電流源34がオフの状態と比べて増幅回路31を流れる電流の電流量は2倍となる。同様に、スルーレート切り替え信号SWSに基づいてブースト用定電流源35がオンになり、ブースト用定電流源35がベース定電流源33に並列に接続されると、ブースト用定電流源35がオフの状態と比べて増幅回路31を流れる電流の電流量は2倍となる。
【0043】
図5は、出力バッファ28の具体的な構成を示す回路図である。
【0044】
増幅回路31は、トランジスタPM1及びNM1から構成されている。トランジスタPM1は、第1導電型であるPチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、PMOSトランジスタ)である。トランジスタNM1は、第2導電型であるNチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、NMOSトランジスタ)である。トランジスタPM1及びNM1の各々のドレインは、ゲート制御出力GSの出力端であるノードn1を介して互いに接続されている。
【0045】
トランジスタPM1及びNM1の各々のゲートには、ゲート制御信号GCSが共通の入力信号として印加される。トランジスタPM1及びNM1は、ゲート制御信号GCSの信号レベルに応じて相補的にオン及びオフとなる。
【0046】
ベース定電流源32は、トランジスタPM2から構成されている。トランジスタPM2は、第1導電型であるPチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、PMOSトランジスタ)である。トランジスタPM2のソースは、+12Vの電圧供給ラインに接続されている。トランジスタPM2のドレインは、トランジスタPM1のソースに接続されている。トランジスタPM2のゲートには、バイアス電圧VBが印加される。
【0047】
ベース定電流源33は、トランジスタNM2から構成されている。トランジスタNM2は、第2導電型であるNチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、NMOSトランジスタ)である。トランジスタNM2のソースは、-8Vの電圧供給ラインに接続されている。トランジスタNM2のドレインは、トランジスタNM1のソースに接続されている。トランジスタNM2のゲートには、バイアス電圧VAが印加される。
【0048】
ブースト用定電流源34は、トランジスタPM3から構成されている。トランジスタPM3は、第1導電型であるPチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、PMOSトランジスタ)である。ブースト用定電流源34のソースは、+12Vの電圧供給ラインに接続されている。トランジスタPM3のゲートには、バイアス電圧VBが印加される。トランジスタPM3は、トランジスタPM2と同じサイズ(ゲート幅、ゲート長)を有する。
【0049】
ブースト用定電流源35は、トランジスタNM3から構成されている。トランジスタNM3は、第2導電型であるNチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、NMOSトランジスタ)である。ブースト用定電流源35のソースは、-8Vの電圧供給ラインに接続されている。トランジスタNM3のゲートには、バイアス電圧VAが印加される。トランジスタNM3は、トランジスタNM2と同じサイズ(ゲート幅、ゲート長)を有する。
【0050】
トランジスタPM1のソースとトランジスタPM3のドレインとの間には、スルーレート切り替えのための切り替えスイッチとしてのトランジスタPM4が設けられている。トランジスタPM4は、第1導電型であるPチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、PMOSトランジスタ)から構成されている。トランジスタPM4のソースは、トランジスタPM1のソースに接続されている。トランジスタPM4のドレインは、トランジスタPM3のドレインに接続されている。
【0051】
トランジスタPM4のゲートには、インバータINVを介してスルーレート切り替え信号SWSが供給される。すなわち、トランジスタPM4は、スルーレート切り替え信号SWSの信号レベルに応じてオン及びオフとなる。これにより、ブースト用定電流源34を構成するトランジスタPM3の増幅回路31への接続及び非接続が切り替わる。
【0052】
また、トランジスタNM1のソースとトランジスタNM3のドレインとの間には、スルーレート切り替えのための切り替えスイッチとしてのトランジスタNM4が設けられている。トランジスタNM4は、第2導電型であるNチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、NMOSトランジスタ)から構成されている。トランジスタNM4のドレインは、トランジスタNM1のソースに接続されている。トランジスタNM4のソースは、トランジスタNM3のドレインに接続されている。
【0053】
トランジスタNM4のゲートには、スルーレート切り替え信号SWSが供給される。すなわち、トランジスタNM4は、スルーレート切り替え信号SWSの信号レベルに応じてオン及びオフとなる。これにより、ブースト用定電流源35を構成するトランジスタNM3の増幅回路31への接続及び非接続が切り替わる。
【0054】
図6は、スルーレート切替動作時のゲート制御出力及び電流の変化を示す図である。ゲート制御信号GCSは、時刻t1で立ち上がり、期間TP1に亘って論理レベル1(Hレベル)となる信号である。
【0055】
スルーレート切り替え信号SWSは、ゲート制御信号GCSよりも遅れて時刻t2で立ち上がり、期間TP1よりも短い期間TP2に亘って論理レベル1(Hレベル)となる信号である。
【0056】
時刻t1でゲート制御信号GCSが立ち上がると、増幅回路31にはピーク電流が流れる。スルーレート切り替え信号SWSはLレベルであり、ブースト用定電流源34及び35と増幅回路31とは非接続の状態となる。このため、ピーク電流PCの値は、ベース定電流源32及び33により電流値「I1」に制御される。
【0057】
続いて時刻t2でスルーレート切り替え信号SWSが立ち上がると、トランジスタPM4及びNM4がそれぞれオンとなり、ブースト用定電流源34及び35が増幅回路31に接続される。これにより、ピーク電流の値は、電流値「I2」となる。なお、本実施例ではベース定電流源32、33及びブースト用定電流源34、35が同じ電流能力を有するため、電流値I2は、電流値I1の約2倍の大きさとなる。
【0058】
電流の変動量に着目した場合、電流値0から電流値I1に変化した際の変動量と、電流値I1から電流値I2に変化した際の変動量は同じである。したがって、電流が電流値I1から電流値I2に変化した際に発生するノイズの大きさは、電流値0から電流値I1に変化した際に発生するノイズの大きさと等しい。換言すると、1段階目の電流変化時(0→I1)及び2段階目の電流変化時(I1→I2)には、それぞれ同じ大きさのノイズ発生することになる。
【0059】
このように、本実施例の出力バッファ28の構成によれば、電流値を0→I1→I2と2段階に変化させることで、電流の変動量自体は2倍(I2=2×I1)にしつつ、その変動に起因して発生するノイズの大きさを、電流値を0→I1に変化させた場合に発生するノイズと同等の大きさに抑えることができる。
【0060】
ゲート制御出力GSは、ゲート制御信号GCSの立ち上がり及びスルーレート切り替え信号SWSの信号変化に応じて2段階で変化する信号波形となる。
【0061】
本実施例の出力バッファ28では、このようにスルーレート切り替え信号SWSを用いてピーク電流及びゲート制御出力GSを2段階に変化させることにより、増幅回路のスルーレートの低下を抑えつつ、ピーク電流(すなわち電流の瞬間的な変動量)を抑えることができる。これについて、比較例を参照しつつ、以下説明する。
【0062】
図7Aは、本実施例のようなベース定電流源及びブースト用定電流源のいずれも有しない出力バッファの構成を、第1の比較例として示す図である。第1の比較例の出力バッファでは、定電流源による電流値の制限がかからない。このため、
図7Bに示すように、増幅回路31を流れるピーク電流PCは、ゲート制御信号GCSの立ち上がりに応じて、瞬時に大きな電流値をとる電流波形となる。このようにピーク電流PCの電流値が瞬間的に大きくなるため、第1の比較例の出力バッファでは、ピーク電流PCに起因するノイズが発生する。
【0063】
図8Aは、ピーク電流PCを抑えるためにベース定電流源32及び33を設けた出力バッファの構成を、第2の比較例として示す図である。第2の比較例の出力バッファでは、増幅回路31にベース定電流源32及び33が接続されており、ピーク電流PCの電流値が制限される。このため、
図8Bに示すように、ピーク電流PCの電流値は小さくなり、電流値の変化が抑えられる。したがって、第1の比較例とは異なり、ピーク電流PCに起因するノイズの発生を抑えることができる。
【0064】
しかしながら、第2の比較例では、ゲート制御出力GSは、ピーク電流の抑制に伴って立ち上がりが鈍り、緩やかに変化する信号波形となる。すなわち、第2の比較例の構成では、ピーク電流PCを抑えることができる反面、増幅回路31のスルーレートが低下してしまう。
【0065】
これに対し、本実施例の出力バッファ28では、
図6に示すようにピーク電流を2段階に変化させることにより、ゲート制御出力GSを2段階に信号変化させ、その信号波形を定電流源による電流制限がない場合の信号波形に近づけることができる。また、本実施例の出力バッファ28では、ピーク電流を2段階に変化させることにより、ピーク電流に起因するノイズの発生、すなわち電流の瞬間的な変化に起因するノイズの発生を第2の比較例と同等に抑えることができる。
【0066】
したがって、本実施例の出力バッファ28によれば、増幅回路31のスルーレートの低下を抑えつつ、瞬間的な電流の変動量及びそれに起因して発生するノイズの大きさを抑えることができる。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施例では、ベース定電流源32、33及びブースト用定電流源34、35がそれぞれ同じ電流能力を有する場合を例として説明した。しかし、これとは異なり、例えばトランジスタPM2とPM3、NM2とNM3を異なるサイズのトランジスタとすることにより、ベース定電流源32、33とブースト用定電流源34、35とが異なる電流能力を有するように構成してもよい。その際、ブースト用定電流源34及び35の電流能力は、ベース定電流源32及び33の電流能力よりも低く設定されることが好ましい。そのように電流能力を設定することにより、電流変動に起因するノイズの大きさをベース定電流源のみを有する構成(例えば、上記の第2の比較例)と同程度に抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0068】
100 表示装置
11 表示パネル
12 タイミングコントローラ
13 ゲートドライバ
14 ソースドライバ
21 受信部(PLL)
22 データ処理部
23 設定レジスタ
24 ソース制御部
25 データラッチ群
26 DAC
27 ゲート制御部
28 出力バッファ
31 増幅回路
32,33 ベース定電流源
34,35 ブースト用定電流源