(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049781
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240403BHJP
F02M 35/12 20060101ALI20240403BHJP
F02M 35/16 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
E02F9/00 D
F02M35/12 C
F02M35/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156229
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚口 晶仁
(72)【発明者】
【氏名】山本 大介
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015CA02
2D015CA03
(57)【要約】
【課題】 抑制されるエンジンの吸気音の周波数成分を変化させ、吸気音の音色を容易に変更できるようにする。
【解決手段】 エンジン8の吸気音を抑えるためのレゾネータ18は、エアクリーナ17に接続された第1部材としての固定ケース19と、固定ケース19に対して相対的に移動されることにより、固定ケース19との間に形成される空間からなる共鳴室23の容積を変化させる可動ケース21と、を備えている。従って、可動ケース21の固定位置を前後方向に移動させるだけで共鳴室23の容積を変化させることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の支持構造体を形成するフレームと、
前記フレームに設けられたエンジンと、
前記エンジンの吸気側に設けられたエアクリーナと、
前記エンジンの吸気管路上に、前記エアクリーナに接続して設けられたレゾネータと、
を備えてなる建設機械において、
前記レゾネータは、
前記エアクリーナに接続された第1部材と、
前記第1部材に対して相対的に移動されることにより、前記第1部材との間に形成される空間の容積を変化させる第2部材と、
を備えていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記第1部材は、前記車体に固定的に取り付けられ、
前記第2部材は、固定位置を変更可能に前記車体に取り付けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において、
前記第1部材は、前記エアクリーナの吸込側に接続されていることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項2に記載の建設機械において、
前記車体は、前記エンジン、前記エアクリーナおよび前記レゾネータを覆う建屋カバーを備えており、
前記建屋カバーは、前記車体の車幅方向の側面を開閉可能に覆う側面ドアを有し、
前記レゾネータは、前記側面ドアを開いた状態で外部に露出する位置に配置され、
前記第2部材は、前記車体の前後方向に移動可能に前記車体に取り付けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項2に記載の建設機械において、
前記車体は、前記エンジン、前記エアクリーナおよび前記レゾネータを覆う建屋カバーを備えており、
前記建屋カバーは、上側を覆う上面部を有し、
前記第1部材は、前記建屋カバーの前記上面部に固定的に取り付けられ、
前記第2部材は、外側に延びたフランジ部を有し、
前記第1部材を内側に重ねた状態で、前記フランジ部が前記建屋カバーの前記上面部にねじ部材を用いて取り付けられていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体の上側に旋回可能に設けられた上部旋回体と、により構成され、上部旋回体の前側には、作業装置が回動可能に設けられている。
【0003】
上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、旋回フレームに設けられたエンジンと、エンジンに清浄な空気を吸い込ませるために、エンジンの吸気側に設けられたエアクリーナと、を備えている。
【0004】
また、油圧ショベルは、オペレータのストレスを軽減するため、また市街地で周囲に迷惑を及ぼさないようにするために、騒音の低減が求められている。油圧ショベルが発生する騒音としては、エンジンの排気音があり、この排気音を低減するためにマフラ(排気用消音器)が取り付けられている。一方で、マフラによってエンジンの排気音を低減した場合には、エンジンの吸気音が目立つようになる。
【0005】
そこで、油圧ショベルでは、エアクリーナに接続される箱形状の吸気用消音器を設け、エンジンの吸気音(音量)を抑えている(特許文献1)。また、エンジンの吸気音を低減するための手段としては、エンジンに向けて空気が流通する吸気管路の途中にレゾネータ(共鳴器)を接続することが広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、エンジンの吸気音のうち特定の周波数成分の音が抑えられても、吸気音の他の周波数成分の音が目立つようになる場合がある。このために、例えば、油圧ショベルのオペレータによっては、特許文献1の箱形状の消音器によって、特定の周波数成分が抑えられたエンジンの吸気音の音色(周波数)を不快な騒音と感じてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、抑制されるエンジンの吸気音の周波数成分を変化させ、吸気音の音色を容易に変更できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車体の支持構造体を形成するフレームと、前記フレームに設けられたエンジンと、前記エンジンの吸気側に設けられたエアクリーナと、前記エンジンの吸気管路上に、前記エアクリーナに接続して設けられたレゾネータと、を備えてなる建設機械において、前記レゾネータは、前記エアクリーナに接続された第1部材と、前記第1部材に対して相対的に移動されることにより、前記第1部材との間に形成される空間の容積を変化させる第2部材と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、抑制されるエンジンの吸気音の周波数成分を変化させ、吸気音の音色を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルを示す正面図である。
【
図2】
図1の油圧ショベルの上部旋回体を建屋カバーとレゾネータを省略した状態で示す平面図である。
【
図3】上部旋回体の左後部を建屋カバーの左側面ドアを省略した状態で示す斜視図である。
【
図4】
図3中のレゾネータを縮小させた状態で示す上部旋回体の左後部の斜視図である。
【
図5】拡大状態のレゾネータを建屋カバーの上面部、エアクリーナと一緒に示す断面図である。
【
図6】縮小状態のレゾネータを建屋カバーの上面部、エアクリーナと一緒に示す断面図である。
【
図9】変形例によるエアクリーナとレゾネータとの接続形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械の代表例として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、
図1ないし
図8に従って詳細に説明する。なお、本実施形態では、上部旋回体の前後方向に対し、この前後方向に直交した水平方向を左右方向とし、各機器、部材の構成、配置について説明する。
【0013】
図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に回動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置4と、を備えている。下部走行体2と上部旋回体3は、車体を構成している。
【0014】
旋回フレーム5は、上部旋回体3の支持構造体を構成している。
図2に示すように、旋回フレーム5は、中央に位置して前後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる平板状の底板5Aと、底板5A上に立設され、左右方向に所定の間隔をもって前後方向に延びた左縦板5B、右縦板5Cと、底板5A、左縦板5B、右縦板5Cから左右方向の外側に向けて張り出し、前後方向に間隔をもって複数本設けられた張出ビーム5Dと、左側に位置して各張出ビーム5Dの先端部に前後方向に延びて取り付けられた左サイドフレーム5Eと、右側に位置して各張出ビーム5Dの先端部に前後方向に延びて取り付けられた右サイドフレーム5Fと、を含んで構成されている。左縦板5Bと右縦板5Cの前側には、作業装置4を構成するブームのフート部が回動可能に支持されている。
【0015】
キャブ6は、旋回フレーム5の左前側に位置して設けられている。キャブ6は、オペレータが搭乗するもので、内部には、オペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー等(いずれも図示せず)が配設されている。
【0016】
カウンタウエイト7は、旋回フレーム5の左縦板5B、右縦板5Cの後部に取り付けられている。カウンタウエイト7は、作業装置4との重量バランスをとるもので、円弧状の重量物として形成されている。
【0017】
エンジン8は、キャブ6とカウンタウエイト7との間に位置して旋回フレーム5の後側に設けられている。エンジン8は、左右方向に延在する横置き状態で設けられている。エンジン8の左側には、吸い込み式の冷却ファン8Aが設けられ、左右方向の他側となる右側位置には、後述する油圧ポンプ10が設けられている。なお、エンジン8によって駆動される冷却ファン8Aに代えて、電動式の冷却ファンまたは油圧式の冷却ファンを用いることもできる。
【0018】
例えば、エンジン8の前側には、吸気マニホールド8Bが設けられ、後側には、排気マニホールド8Cが設けられている。吸気マニホールド8Bには、後述のエアクリーナ17から延びる吸気管路17Aが接続されている。また、排気マニホールド8Cには、排気管9Aを介して排気用消音器としてのマフラ9が接続されている。
【0019】
油圧ポンプ10は、エンジン8の右側に設けられている。油圧ポンプ10は、エンジン8によって駆動されることにより、後述の作動油タンク14から供給される作動油を昇圧(加圧)し、作業装置4等の各種アクチュエータに供給する。
【0020】
熱交換器11は、エンジン8の冷却ファン8Aに対面して旋回フレーム5の後側に設けられている。熱交換器11は、温度上昇した各種の流体を冷却風により冷却する。具体的には、熱交換器11は、左右方向の冷却風の流れ方向に対して直交する前後方向が横幅方向となるように配置された角枠状の枠体内に、エンジン冷却水を冷却するラジエータ、作動油を冷却するオイルクーラ等(いずれも図示せず)が収められている。
【0021】
前仕切板12は、キャブ6と熱交換器11との間を左右方向に延びるように旋回フレーム5に立設されている。また、後仕切板13は、熱交換器11とカウンタウエイト7との間を左右方向に延びるように旋回フレーム5に立設されている。前仕切板12と後仕切板13の左側は、左サイドフレーム5Eの近傍まで延びている。そして、前仕切板12と後仕切板13は、後述の建屋カバー16を支持する構造体を形成している。
【0022】
作動油タンク14は、作動油を貯えるもので、油圧ポンプ10の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。燃料タンク15は、エンジン8に供給される燃料を貯えるもので、作動油タンク14の前側に隣接して旋回フレーム5上に設けられている。
【0023】
図1に示すように、建屋カバー16は、キャブ6とカウンタウエイト7との間に位置して旋回フレーム5上に設けられている。建屋カバー16は、エンジン8、エアクリーナ17、レゾネータ18を含む旋回フレーム5上の搭載機器を覆っている。建屋カバー16は、キャブ6とカウンタウエイト7との間に位置して左側面を開閉可能に覆う側面ドアとしての左側面ドア16Aと、作動油タンク14とカウンタウエイト7との間に位置して右側面を開閉可能に覆う右側面ドア(図示せず)と、エンジン8、油圧ポンプ10、エアクリーナ17、レゾネータ18の上側を覆う上面部16Bと、を含んで構成されている。
【0024】
具体的には、左側面ドア16Aは、左サイドフレーム5Eから上側に延びつつ、キャブ6とカウンタウエイト7との間を前後方向に延びた側面パネルとして形成されている。この上で、左側面ドア16Aは、例えば、後端部が後仕切板13の左端部に水平方向に回動可能に取り付けられている。そして、左側面ドア16Aを開いた状態では、作業者の目の前にエアクリーナ17とレゾネータ18が配置される構成となっている。
【0025】
図3、
図4に示すように、上面部16Bのうち、熱交換器11よりも左側に位置する部分には、左右方向に所定の間隔をもって前後方向に並んで複数個のボルト挿通孔16Cが設けられている。複数個のボルト挿通孔16Cの間隔寸法は、後述する可動ケース21のねじ孔21Gの左右方向の間隔寸法に対応している。
【0026】
具体的には、複数個のボルト挿通孔16Cは、
図3、
図5、
図7に示すように、可動ケース21を最も後側に移動させた後位置(共鳴室23の最大容積)で可動ケース21のねじ孔21Gと連通する位置、
図4、
図6、
図8に示すように、可動ケース21を最も前側に移動させた前位置(共鳴室23の最小容積)で可動ケース21のねじ孔21Gと連通する位置、後位置と前位置の間で可動ケース21のねじ孔21Gと連通する位置(1つの位置または複数の位置)に配置されている。
【0027】
これにより、複数個のボルト挿通孔16Cは、可動ケース21の前後方向の移動位置に応じて、ボルト20を挿通するボルト挿通孔16Cを変えることにより、可動ケース21を前後方向の任意の位置に固定することができる。
【0028】
エアクリーナ17は、エンジン8の吸気側に設けられている。具体的には、エアクリーナ17は、建屋カバー16の左側面ドア16Aと熱交換器11との間の上側寄り、かつ前側寄りに設けられている。エアクリーナ17は、前仕切板12に取り付けられている。エアクリーナ17は、エンジン8が吸い込む空気を清浄化するもので、遠心力を利用して塵埃等の異物を除去する遠心分離型のエアクリーナとして構成されている。エアクリーナ17は、後述のレゾネータ18を介して吸込んだ空気(外気)を清浄化し、吸気管路17Aを介して清浄化した空気をエンジン8の吸気マニホールド8Bに供給する。エアクリーナ17は、左右方向に延びる円筒状の容器内にフィルタエレメント(図示せず)を内蔵しており、上部右側寄りには、上側に向けて吸気口17B(
図5、
図6参照)が設けられている。筒状の吸気口17Bは、その上部がレゾネータ18を構成する固定ケース19に接続されている。
【0029】
次に、本実施形態の特徴部分となるレゾネータ18の構成および機能について詳細に説明する。
【0030】
レゾネータ18は、エンジン8の吸気管路17A上に、エアクリーナ17の吸込側に接続して設けられている。レゾネータ18は、エアクリーナ17の上側に位置して建屋カバー16の上面部16Bに前後方向に延びて取り付けられている。レゾネータ18は、左側面ドア16Aを開いた状態で外部に露出する位置に配置されている。レゾネータ18は、後述の固定ケース19、可動ケース21を備え、固定ケース19に対して可動ケース21を移動させて内部空間の体積を変化させることにより、吸気音の音色を変えることができる。
【0031】
図7、
図8に示すように、第1部材としての固定ケース19は、内下面板19A、内前面板19B、内左面板19Cおよび内右面板19Dによって上側と後側が開口した箱状体として形成されている。また、内左面板19Cおよび内右面板19Dの上部には、左右方向の内側に屈曲して内フランジ部19Eがそれぞれ設けられ、この内フランジ部19Eには、複数個、例えば、前後方向に間隔をもって2個ずつ、合計4個のねじ孔19Fが設けられている。
【0032】
内下面板19Aの前側寄り(内前面板19Bの近傍)には、エアクリーナ17の吸気口17Bが差し込まれる接続口19Gが設けられている。この接続口19Gは、内前面板19Bに近い位置に配置されているから、可動ケース21の移動範囲を大きくできる。固定ケース19は、左右の内フランジ部19Eを上面部16Bの下面に押し当て、この状態で上面部16Bに挿通したねじ部材としてのボルト20をねじ孔19Fに螺着する。これにより、固定ケース19は、上側が上面部16Bに覆われるから、後側だけが開口した状態になる。さらに、固定ケース19は、左側面ドア16Aの近傍に位置しているから、左側面ドア16Aを開いた状態で外部に露出する位置(点検作業や調整作業を容易に行うことができる位置)に配置されている。
【0033】
第2部材としての可動ケース21は、左右方向と直交する前後方向に変更可能、即ち、固定位置を選択できる状態で建屋カバー16の上面部16Bに取り付けられている。可動ケース21は、固定ケース19に対して相対的に移動されることにより、固定ケース19との間に形成される空間(後述の共鳴室23)の容積を変化させることができる。
【0034】
可動ケース21は、固定ケース19の内下面板19Aに下側から重なる外下面板21Aと、内前面板19Bと前後方向に離れて対面する外後面板21Bと、内左面板19Cに左側から重なる外左面板21Cと、内右面板19Dに右側から重なる外右面板21Dと、により、上側と前側が開口した箱状体として形成されている。外後面板21Bには、後述の共鳴室23に外部から空気を流入させるための流入口21Eが設けられている。
【0035】
また、外左面板21Cおよび外右面板21Dの上部には、左右方向の外側に屈曲して延びたフランジ部としての外フランジ部21Fがそれぞれ設けられ、この外フランジ部21Fには、複数個、例えば、前後方向に間隔をもって2個ずつ、合計4個のねじ孔21Gが設けられている。4個のねじ孔21Gは、建屋カバー16の上面部16Bに設けられた複数個のボルト挿通孔16Cに対応している。具体的には、4個のねじ孔21Gの左右方向の間隔寸法は、ボルト挿通孔16Cの左右方向の間隔寸法に対応している。
【0036】
そして、可動ケース21は、内側に固定ケース19を重ねた状態で、外側に延びた外フランジ部21Fが上面部16Bにボルト20を用いて取り付けられている。従って、可動ケース21は、固定ケース19に対して相対的に移動させ、移動した位置でねじ孔21Gをボルト挿通孔16Cに位置合わせし、ボルト挿通孔16Cに挿通したボルト20をねじ孔21Gに螺着する。これにより、可動ケース21は、上面部16Bに対する取付位置を前後方向に移動させることができる。
【0037】
シール部材22は、固定ケース19の後側を縁取るように設けられている。シール部材22は、固定ケース19の内下面板19A、内左面板19C、内右面板19Dの後縁部に連続して設けられている。シール部材22は、可動ケース21の前後方向の移動を許しつつ、固定ケース19と可動ケース21との間を気密にシールしている。なお、シール部材は、可動ケース21に設けることもできる。
【0038】
共鳴室23は、建屋カバー16の上面部16Bと固定ケース19と可動ケース21とによって画成された空間として構成されている。共鳴室23は、前後方向に長尺な直方体状の空間からなり、可動ケース21の取付位置を前後方向に移動させることで、容積を変化させることができる。共鳴室23は、容積を小さくすることにより高周波成分の音量(振幅)を低減でき、容積を大きくすることにより低周波成分の音量を低減することができる。即ち、共鳴室23は、可動ケース21を前後方向に移動させて容積を調整(変更)することにより、特定の周波数域の音量を低減することができる。換言すると、エンジン8の吸気音の音色を個人の好みに応じて変更することができる。
【0039】
本実施形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0040】
油圧ショベル1のオペレータは、上部旋回体3のキャブ6に搭乗し、エンジン8を始動して油圧ポンプ10を駆動する。これにより、油圧ポンプ10から圧油が吐出され、この圧油は制御弁装置(図示せず)を介して、各種油圧アクチュエータに供給される。
【0041】
キャブ6に搭乗したオペレータは、走行用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、下部走行体2により車両を前進または後退させることができる。一方、作業用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、作業装置4を回動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0042】
エンジン8を始動させると、レゾネータ18の可動ケース21の流入口21Eから流入した空気が共鳴室23を通ってエアクリーナ17に吸い込まれる。このエアクリーナ17では、塵埃等の異物を除去して空気を清浄化する。これにより、エンジン8は、吸気管路17Aを通じて供給される清浄な空気を吸気マニホールド8Bから吸い込むことができる。
【0043】
レゾネータ18は、吸気時に生じる音を共鳴室23で共鳴させることにより、吸気音の音量を低減させることができる。しかし、オペレータによっては、レゾネータ18で低減した吸気音の音色が不快に感じる場合がある。
【0044】
そこで、吸気音の音色をレゾネータ18によって変更する場合の手順の一例について説明する。
【0045】
作業者は、上部旋回体3の左側に立ち、建屋カバー16の左側面ドア16Aを開く。このときに、レゾネータ18は、外部に露出する位置に配置されるから、作業者は、近い位置に対面するレゾネータ18に容易に手を伸ばすことができる。
【0046】
まず、可動ケース21を建屋カバー16の上面部16Bに固定している4本のボルト20を取り外し、可動ケース21を前後方向に移動させる。このときに、可動ケース21は、左右方向と直交する前後方向に移動する構造となっているから、作業者は、可動ケース21の移動寸法を容易かつ正確に把握することができる。
【0047】
そして、可動ケース21を移動させたら、可動ケース21のねじ孔21Gを上面部16Bのボルト挿通孔16Cに合わせ、4本のボルト20によって可動ケース21を上面部16Bに固定する。これにより、吸気音の特定の周波数域の騒音を低減し、オペレータの好みに応じた音色に変更することができる。
【0048】
かくして、本実施形態によれば、エンジン8の吸気管路17A上に設けられたレゾネータ18は、エアクリーナ17に接続された固定ケース19と、固定ケース19に対して相対的に移動されることにより、固定ケース19との間に形成される空間からなる共鳴室23の容積を変化させる可動ケース21と、を備えている。
【0049】
従って、可動ケース21の固定位置を前後方向に移動させるだけで共鳴室23の容積を変化させることができる。この結果、エンジン8の吸気音のうち、音量が抑制される周波数成分を変更(調整)できる。よって、エンジン8の吸気音の音色を好みに応じて容易に変更することができる。
【0050】
上部旋回体3は、エンジン8、エアクリーナ17およびレゾネータ18を覆う建屋カバー16を備えている。また、固定ケース19は、建屋カバー16の上面部16Bに固定的に取り付けられている。この上で、可動ケース21は、固定位置が変更可能に建屋カバー16の上面部16Bに取り付けられている。これにより、建屋カバー16の上面部16Bに対する可動ケース21の取付位置を移動させるだけで、吸気音の音色を容易に変更することができる。
【0051】
固定ケース19は、エアクリーナ17の吸込側となる吸気口17Bに接続されている。これにより、エアクリーナ17と固定ケース19とを、1つの固定ユニットとすることができる。
【0052】
建屋カバー16は、左側面を開閉可能に覆う左側面ドア16Aを有している。レゾネータ18は、左側面ドア16Aを開いた状態で外部に露出する位置に配置されている。可動ケース21は、上部旋回体3の前後方向に移動可能に建屋カバー16に取り付けられている。従って、建屋カバー16の左側面ドア16Aを開いたときには、レゾネータ18が外部に露出する位置に配置されるから、作業者は、レゾネータ18に容易に手を伸ばすことができる。また、可動ケース21の移動方向が前後方向となっているから、可動ケース21の移動寸法を容易かつ正確に把握することができる。
【0053】
建屋カバー16は、上側を覆う上面部16Bを有し、固定ケース19は、建屋カバー16の上面部16Bに固定的に取り付けられている。また、可動ケース21は、外側に延びた外フランジ部21Fを有し、固定ケース19を内側に重ねた状態で、外フランジ部21Fが建屋カバー16の上面部16Bにボルト20を用いて取り付けられている。これにより、ボルト20を取り外すだけで可動ケース21を移動させることができ、ボルト20を取り付けるだけで可動ケース21を固定することができる。
【0054】
なお、実施形態では、固定ケース19の内下面板19Aに接続口19Gを設け、この接続口19Gにエアクリーナ17の吸気口17Bを接続した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、
図9の変形例のように、内前面板19Bに接続口19G′を設け、この接続口19G′にエアクリーナ17の吸気口17B′を接続する構成としてもよい。この変形例では、固定ケース19に対する可動ケース21の移動寸法を大きくすることができ、音色の調整幅を広くすることができる。
【0055】
また、実施形態では、固定ケース19と可動ケース21を箱状体として形成し、共鳴室23を直方体状の空間として形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、固定ケースと可動ケースを半円筒体として形成し、共鳴室を半円柱状の空間として形成してもよい。
【0056】
さらに、実施形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、ホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン、ホイールローダ等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
5 旋回フレーム(フレーム)
8 エンジン
8B 吸気マニホールド(吸気側)
16 建屋カバー
16A 左側面ドア(側面ドア)
16B 上面部
17 エアクリーナ
17A 吸気管路
17B,17B′ 吸気口(吸込側)
18 レゾネータ
19 固定ケース(第1部材)
20 ボルト(ねじ部材)
21 可動ケース(第2部材)
21F 外フランジ部(フランジ部)
23 共鳴室(空間)