(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049785
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】電解槽
(51)【国際特許分類】
C25B 15/08 20060101AFI20240403BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240403BHJP
【FI】
C25B15/08 302
C25B9/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156233
(22)【出願日】2022-09-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】592250414
【氏名又は名称】株式会社テックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】岡 力矢
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021CA01
4K021CA08
4K021CA09
4K021CA10
4K021EA05
(57)【要約】
【課題】電解液の旋回流によって電極上の気泡を良好に除去できる電解槽を提供する。
【解決手段】第1方向(X方向)に交互に、かつ第1方向と直交する第2方向(Y方向)に沿う姿勢で設けられる陽極(21)及び陰極(22)と、陽極及び陰極を収容する槽本体(3)と、を備え、槽本体の第1方向における一端側には、電解液を第1方向に沿う軸(A)の周りに旋回させながら槽本体内に供給し、槽本体内に第1方向の他端側に進む電解液の旋回流を発生させる供給機構(5)が設けられ、陽極及び陰極の第2方向における外周端と、槽本体の内周壁との間には、旋回流の経路となる隙間(S)がある電解槽(1)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に並んで、かつ前記第1方向と直交する第2方向に沿う姿勢で設けられる陽極及び陰極と、
前記陽極及び前記陰極を収容する槽本体と、を備え、
前記槽本体の前記第1方向における一端側には、電解液を前記第1方向に沿う軸の周りに旋回させながら前記槽本体内に供給し、前記槽本体内に前記第1方向の他端側に進む前記電解液の旋回流を発生させる供給機構が設けられ、
前記陽極及び前記陰極の前記第2方向における外周端と、前記槽本体の内周壁との間には、前記旋回流の経路となる隙間があることを特徴とする電解槽。
【請求項2】
請求項1に記載の電解槽において、
前記槽本体は、
前記陽極及び前記陰極を収容する柱状の内部空間を有する収容部と、
前記収容部の前記第1方向における一端側の開口を閉塞する前記供給機構とを備え、
前記供給機構は、
前記軸を中心とする円環状で前記第1方向の他端側に開いた第1ガイド溝部と、
前記第1ガイド溝部を構成する外側の内周壁に開口し、前記電解液を前記第1ガイド溝部内に供給することで前記旋回流を発生させる入口と、を備えることを特徴とする電解槽。
【請求項3】
請求項2に記載の電解槽において、
前記供給機構は、直線状に延びて前記入口に接続する前記電解液の供給路を備え、
前記供給路の仮想延長線から、前記第1ガイド溝部を構成する内側の内周壁は離れていることを特徴とする電解槽。
【請求項4】
請求項3に記載の電解槽において、
前記槽本体は、前記収容部の前記第1方向における他端側の開口を閉塞する第1排出機構を備え、
前記第1排出機構は、
前記軸を中心とする円環状で前記第1方向の一端側に開き、前記旋回流を受ける第2ガイド溝部と、
前記第2ガイド溝部を構成する外側の内周壁に前記旋回流の流れに沿って開口する前記旋回流の出口と、を備えることを特徴とする電解槽。
【請求項5】
請求項2に記載の電解槽において、
前記陽極及び前記陰極の中心部には、前記旋回流の経路となる孔が空いていることを特徴とする電解槽。
【請求項6】
請求項5に記載の電解槽において、
前記槽本体は、前記収容部の前記第1方向における他端側の開口を閉塞する第2排出機構を備え、
前記第2排出機構の前記第1方向の一端側の端面において、前記軸が通る位置には、前記旋回流の出口が開口することを特徴とする電解槽。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の電解槽において、
前記陽極及び前記陰極は、それぞれ複数あり前記第1方向に交互に並ぶことを特徴とする電解槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解槽に関する。
【背景技術】
【0002】
電気分解時に電極から生じる気泡が電極に付着すると、電極と電解液との接触面積が減少し、電解効率が低下する。そこで、電解液に流れを生じさせ、この電解液の流れによって電極上から気泡を除去する電解槽が開発されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、円筒状の電解槽の中に、複数の電極が電解槽の軸方向と平行に設けられている。電解槽の上部側面から注入された海水は、旋回流となって電極間を通りながら下方へ進み、電極間で電気分解されながら電極上の気泡を除去する。そして、海水は、電解槽の下部側面から排出される。電極上から除去された気泡は、電解槽内を上昇し、電解槽内の上部から外部へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、電解槽の軸方向と平行な各電極によって、旋回流の周方向の進行が妨げられる。また、特許文献1では、径方向最外側の電極と電解槽の内周壁との間に絶縁スペーサが設けられており、この絶縁スペーサによって、径方向最外側の電極と電解槽の内周壁との隙間への旋回流の進行が妨げられる。これらの結果、特許文献1では、旋回流による電極上の気泡の除去効果が著しく低下してしまう。
【0006】
本発明は、電解液の旋回流によって電極上の気泡を良好に除去できる電解槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、参照のために図面の符号を付して説明すると、以下のとおりである。
(1)第1方向(X方向)に並んで、かつ前記第1方向(X方向)と直交する第2方向(Y方向)に沿う姿勢で設けられる陽極(21,21A~21D)及び陰極(22,22A~22D)と、
前記陽極(21,21A~21D)及び前記陰極(22,22A~22D)を収容する槽本体(3)と、を備え、
前記槽本体(3)の前記第1方向(X方向)における一端側には、電解液を前記第1方向(X方向)に沿う軸(A)の周りに旋回させながら前記槽本体(3)内に供給し、前記槽本体(3)内に前記第1方向(X方向)の他端側に進む前記電解液の旋回流を発生させる供給機構(5)が設けられ、
前記陽極(21,21A~21D)及び前記陰極(22,22A~22D)の前記第2方向(Y方向)における外周端と、前記槽本体(3)の内周壁との間には、前記旋回流の経路となる隙間(S)があることを特徴とする電解槽(1,1A~1D)。
(2)(1)に記載の電解槽(1,1A~1D)において、
前記槽本体(3)は、
前記陽極(21,21A~21D)及び前記陰極(22,22A~22D)を収容する柱状の内部空間(V)を有する収容部(4)と、
前記収容部(4)の前記第1方向(X方向)における一端側の開口(431)を閉塞する前記供給機構(5)とを備え、
前記供給機構(5)は、
前記軸(A)を中心とする円環状で前記第1方向(X方向)の他端側に開いた第1ガイド溝部(55)と、
前記第1ガイド溝部(55)を構成する外側の内周壁(552)に開口し、前記電解液を前記第1ガイド溝部(55)内に供給することで前記旋回流を発生させる入口(555)と、を備えることを特徴とする電解槽(1,1A~1D)。
(3)(2)に記載の電解槽(1,1A~1D)において、
前記供給機構(5)は、直線状に延びて前記入口(555)に接続する前記電解液の供給路(57)を備え、
前記供給路(57)の仮想延長線(K1)から、前記第1ガイド溝部(55)を構成する内側の内周壁(551)は離れていることを特徴とする電解槽(1,1A~1D)。
(4)(3)に記載の電解槽(1,1A,1C)において、
前記槽本体(3)は、前記収容部(4)の前記第1方向(X方向)における他端側の開口(441)を閉塞する第1排出機構(6)を備え、
前記第1排出機構(6)は、
前記軸(A)を中心とする円環状で前記第1方向(X方向)の一端側に開き、前記旋回流を受ける第2ガイド溝部(65)と、
前記第2ガイド溝部(65)を構成する外側の内周壁(652)に前記旋回流の流れに沿って開口する前記旋回流の出口(655)と、を備えることを特徴とする電解槽(1,1A,1C)。
(5)(2)に記載の電解槽(1B,1D)において、
前記陽極(21B,21D)及び前記陰極(22B,22D)の中心部には、前記旋回流の経路となる孔(212,222)が空いていることを特徴とする電解槽(1B,1D)。
(6)(5)に記載の電解槽(1B,1D)において、
前記槽本体(3)は、前記収容部(4)の前記第1方向(X方向)における他端側の開口(441)を閉塞する第2排出機構(6B)を備え、
前記第2排出機構(6B)の前記第1方向(X方向)の一端側の端面(64)において、前記軸(A)が通る位置には、前記旋回流の出口(68)が開口することを特徴とする電解槽(1B,1D)。
(7)(1)から(6)のいずれか一つに記載の電解槽(1C,1D)において、
前記陽極(21C,21D)及び前記陰極(22C,22D)は、それぞれ複数あり前記第1方向(X方向)に交互に並ぶことを特徴とする電解槽(1C,1D)。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、陽極及び陰極が、旋回流の進行方向である第1方向に直交する第2方向に沿って設けられ、かつ、それらの外周端と槽本体の内周壁との間には、旋回流の経路となる隙間があるので、従来に比べて旋回流を円滑に流すことができ、電極上の気泡を良好に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(A)は、電解槽の断面図、
図1(B)は、陽極の平面図である。
【
図4】
図4(A)は入口側フランジの、
図4(B)は出口側フランジの構成及び作用を説明するための模式的な平面図である。
【
図5】
図5(A)は第2実施形態の電解槽の断面図、
図5(B)は第2実施形態の陽極の平面図である。
【
図6】
図6(A)は第2実施形態の入口側フランジの、
図6(B)は第2実施形態の出口側フランジの構成及び作用を説明するための模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1(A)は、電解槽1の断面図、
図1(B)は、陽極21の平面図である。
電解槽1は、陽極21及び陰極22と、槽本体3と、を備える。
【0011】
陽極21及び陰極22は、円板状であり、X方向(第1方向)に並んで、かつX方向と直交するY方向(第2方向)に沿う姿勢で設けられる。+X方向側を
図1(A)の右側とし、-X方向側を
図1(A)の左側とする。+Y方向側を
図1(A)の上側とし、-Y方向側を
図1(A)の下側とする。-X方向側から陽極21、陰極22の順で並ぶものとする。陽極21は、外端部に保持部材92が接続し、保持部材92に保持される。陰極22は、外端部に保持部材93が接続し、保持部材93に保持される。
【0012】
保持部材92,93は、X方向に延び、後述するガイド溝部55の底面553を貫通する。保持部材92,93は、導電性を有し、直流電源91に電気的に接続する。陽極21の外端部には、陰極22の保持部材93を通す孔211が形成されている(
図1(B)も参照)。孔211に替え、陽極21の外周縁で開放する切り欠きが形成されていてもよい。保持部材92,93は、適宜の形状、配置を取り得、また、複数設けられてもよい。
図2に示すように、保持部材92A,93Aは、陽極21または陰極22の側面等に接続してY方向に延び、後述する収容部4の内周壁を貫通してもよい。
【0013】
図1に戻り、槽本体3は、陽極21及び陰極22を収容する。槽本体3は、収容部4、入口側フランジ5(供給機構)、出口側フランジ6(第1排出機構)を備える。
【0014】
収容部4は、円筒状の部材のX方向両端に矩形状のフランジ41,42が設けられた形状をしている。収容部4は、陽極21及び陰極22をX方向に並ぶように収容する円柱状の内部空間Vを有する。陽極21及び陰極22は、中心軸が収容部4の円筒部分の中心軸Aと一致するように設置される。以下、中心軸Aを単に軸Aと記載する場合がある。
【0015】
陽極21及び陰極22のY方向における外周端と収容部4の内周壁との間には、旋回流の経路となる隙間Sがある。収容部4のX方向の両端面43,44(
図1(A)の下側に記載)には、内部空間Vによる円状の開口431,441(
図1(A)の下側に記載)が形成される。開口431は入口側フランジ5に、開口441は出口側フランジ6に閉塞される。フランジ41には孔411(
図1(A)の下側に記載)が、フランジ42には孔421(
図1(A)の下側に記載)がそれぞれ軸Aを中心とする周方向に沿って複数形成される。
【0016】
入口側フランジ5は、槽本体3の-X方向側に設けられる。入口側フランジ5は、電解液を、X方向に沿う軸Aの周りに旋回させながら槽本体3内に供給し、槽本体3内に+X方向に進む電解液の旋回流を発生させる。
【0017】
入口側フランジ5は、外形がフランジ41の外形と重なる矩形の板状であり(
図3参照)、複数の孔51(
図1(A)の下側に記載)が軸Aを中心とする周方向に沿って形成される。入口側フランジ5は、この各孔51及びフランジ41の各孔411を挿通する不図示のボルト-ナット等の締結具により、収容部4に締結される。入口側フランジ5と収容部4の間には、円環状のシール部材52(
図1(A)の下側に記載)が設けられる。
【0018】
出口側フランジ6は、槽本体3の+X方向側に設けられる。出口側フランジ6は、入口側フランジ5と基本構成が共通しており、外形がフランジ42の外形と重なる矩形の板状である。出口側フランジ6には、複数の孔61(
図1(A)の下側に記載)が軸Aを中心とする周方向に沿って形成される。出口側フランジ6は、この各孔61及びフランジ42の各孔421を挿通する不図示のボルト-ナット等の締結具により、収容部4に締結される。出口側フランジ6と収容部4の間には、円環状のシール部材62(
図1(A)の下側に記載)が設けられる。
【0019】
図3は、入口側フランジ5の斜視図である。
入口側フランジ5の+X方向側の端面54には、シール部材52が挿入される溝521があり、溝521の内側にガイド溝部55(第1ガイド溝部)が形成されている。ガイド溝部55は、収容部4の中心軸Aを中心とする円環状で+X方向側に開いた溝である。ガイド溝部55は、軸Aに対して径方向内側の内周壁551と、軸Aに対して径方向外側の内周壁552と、底面553とを含む。外側の内周壁552の内径は、本実施形態では、収容部4の内径とほぼ同一である。本実施形態では、ガイド溝部55における軸Aを中心とする径方向の幅は、収容部4の内径の四分の一以下である。
【0020】
ガイド溝部55の内側には、上記内側の内周壁551を有して頂面が端面54と同一平面に配置される円柱状部554が形成されている。本実施形態では、内周壁551,552は、底面553に直交するものとするが、底面553との間にRが付けられていてもよいし、底面553側が狭くなるように傾斜していてもよい。
【0021】
外側の内周壁552には、電解液である水の槽本体3への入口555が開口する。入口555は、水をガイド溝部55内に供給することで槽本体3内に旋回流を発生させる。電解液として水以外のものを利用してもよい。
【0022】
図4(A)は、入口側フランジ5の構成及び作用を説明するための模式的な平面図である。
入口側フランジ5の側面56には、水を入口側フランジ5内に供給する配管94が接続する。入口側フランジ5内には、配管94と入口555とを繋ぐ供給路57が形成されている。入口555からガイド溝部55内に供給される水は、ガイド溝部55により軸Aの周りを旋回する。
【0023】
本実施形態では、供給路57の仮想延長線K1(
図4(A)では供給路57の仮想延長線K1の左側の部分のみを図示)から、内側の内周壁551は離れている。これにより、供給路57から入口555を介してガイド溝部55内に供給される水は、直接外側の内周壁552に当たり軸Aの周りを旋回することとなる。従って、本実施形態では、入口555から供給される水が、内側の内周壁551に当たってその勢いが削がれる事が防止される。このように、入口555に接続する通路部分である供給路57は、直線状で、かつその仮想延長線K1から、内側の内周壁551が離れていることが好ましい。また、そのような供給路57が入口側フランジ5の側面56まで直線状に延びることは、供給路57全体を形成しやすいという利点がある。
【0024】
図1(A)に戻り、ガイド溝部55により軸Aの周りを旋回する水は、後述する出口655から水が排出されることによる負圧によって、+X方向に進み、旋回流となる。旋回流は、旋回しながら陽極21と陰極22の間を通るとともに、陽極21及び陰極22の外周端と収容部4の内周壁の隙間Sを通って+X方向に進み、出口側フランジ6に向かう。この際、旋回流は、陽極21及び陰極22の間で電気分解されつつ、陽極21及び陰極22の表面に付着する気泡を除去する。除去された気泡は、旋回流の遠心力により収容部4の内周壁側に寄り、該内周壁に沿って出口側フランジ6側に流される。
【0025】
本実施形態では、陽極21及び陰極22は、旋回流の進行方向(+X方向)に直交するY方向に沿って設けられているので、旋回流の周方向の進行を妨げない。また、陽極21及び陰極22の外周端と収容部4の内周壁の間には、隙間Sが形成されているので、旋回流を収容部4内において出口側フランジ6側に向けて円滑に流すことができ、陽極21及び陰極22上の気泡を良好に除去できる。従って、本実施形態では、電気分解の効率を良好に維持できる。
【0026】
本実施形態では、保持部材92,93は、X方向に延び、かつ陽極21及び陰極22の径方向内側に位置するので、旋回流に対する抵抗を小さくできる。
【0027】
図4(B)は、出口側フランジ6の構成及び作用を説明するための模式的な平面図である。
出口側フランジ6は、ガイド溝部65、側面66、例えば排出路67a、配管95a、排出路67a及び配管95aに繋がる出口655を備える。これらの要素65、66、67a、95a、655は、入口側フランジ5のガイド溝部55、側面56、供給路57、配管94、入口555と同様の構成を有する。
図4(B)では、水の排出経路として、上記の排出路67aと配管95aのほか、排出路67bと配管95b、及び排出路67cと配管95cを描いているが、これら3つの排出経路のうち、いずれか一つの排出経路の出口655のみが開口し、他の2つの排出経路の出口655はパテ等により塞がれている。本実施形態では、排出路67bと配管95b、及び排出路67cと配管95cの出口655は塞がれているものとする。このように、本実施形態では、ガイド溝部65に繋がる複数の排出経路が形成されており、電解槽1の要求性能に応じて、適宜の排出経路の出口655を塞ぐことができるので、出口側フランジ6の利便性が良い。
【0028】
ガイド溝部65は、入口側フランジ5のガイド溝部55とX方向に対称であり、軸Aに対して径方向内側の内周壁651と、径方向外側の内周壁652と、底面653とを含む。ガイド溝部65は、軸Aを中心とする円環状で-X方向側に開いた溝であり、旋回流を受ける。ガイド溝部65の外側の内周壁652には、旋回流の出口655が、旋回流の流れに沿って開口する。「出口655が旋回流の流れに沿って開口する」とは、出口655が、旋回流の流れ方向(
図4(B)において時計回り)において、その流れを妨げない方向に開口することを意味する。これらの特徴は入口555も同様に有する。
【0029】
旋回流は、除去した気泡と共にガイド溝部65内に進んだ後、ガイド溝部65にガイドされて旋回しながら出口655内に進み、例えば、排出路67a及び配管95aを介して電解槽1の外部へ排出される。あるいは、旋回流を、排出路67b及び配管95b、若しくは排出路67c及び配管95cを介して電解槽1の外部へ排出してもよい。
【0030】
排出路67aは、直線状に出口655に接続し、排出路67aの仮想延長線K2(
図4(B)では排出路67aの仮想延長線K2の右側の部分のみを図示)から、内側の内周壁651は離れている。これにより、外側の内周壁651に沿って勢いよく流れ、出口655から排出路67aに導入される水に対する排出路67aの抵抗を抑えることができる。排出路67aが出口側フランジ6の側面66まで直線状に延びることは、排出路67a全体を形成しやすいという利点もある。他の排出路67b、67cも同様の構成を有する。
【0031】
入口側フランジ5及び出口側フランジ6の少なくとも一方は、収容部4と一体でもよいところ、本実施形態では、入口側フランジ5及び出口側フランジ6を収容部4に着脱可能にしたので、収容部4内に陽極21及び陰極22を設置しやすく、また、電解槽1のメンテナンスも容易である。
【0032】
本実施形態では、収容部4の内周壁と陽極21及び陰極22の外周端との隙間Sを旋回流の経路とし、旋回流の旋回半径を大きくした。そのため、本実施形態では、陽極21及び陰極22間における旋回流の遠心力を大きくでき、陽極21及び陰極22上の気泡の泡切れを良好にできる。
【0033】
本実施形態では、出口側フランジ6及び入口側フランジ5は、ガイド溝部55,65を有する共通の部材に供給路57または排出路67a~67cが形成されたものであり、基本構成が共通しているので、電解槽1の構成を簡素にできる。
【0034】
(第2実施形態)
図5(A)は、電解槽1Bの断面図、
図5(B)は、陽極21Bの平面図である。
図6(A)は入口側フランジ5の構成及び作用を、
図6(B)は出口側フランジ6Bの構成及び作用を説明するための模式的な平面図である。
図6(B)では、ガイド溝部65及び出口68に着色している。
【0035】
電解槽1Bにおいて、第1実施形態の電解槽1と異なる点は、陽極21B及び陰極22Bの一部の構成と、出口側フランジ6B(第2排出機構)の一部の構成である。以下では、第1実施形態と異なるそれらの構成について説明し、電解槽1Bのその他の構成は、電解槽1と同様であるので、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0036】
本実施形態でも、入口555からガイド溝部55内に供給される水により、収容部4内に旋回流が生じる。陽極21B及び陰極22Bの中心部には、旋回流の経路となる中央孔212,222が空いている。旋回流は、陽極21B及び陰極22Bの間を旋回しながら電気分解され、陽極21B及び陰極22B上から気泡を除去する。そして、旋回流は、陽極21B及び陰極22Bの外周端と収容部4の内周壁との隙間S及び中央孔212,222を通って出口側フランジ6Bに至る。旋回流は、中央孔212,222を通る際に旋回速度を速める。
【0037】
本実施形態では、旋回流が中央孔212,222を通ることにより旋回中心の圧力が低くなるので、除去した気泡が旋回中心に集まる。従って、除去した気泡は、旋回流が出口側フランジ6B側に進む際に、隙間Sよりも中央孔212,222を通る。
【0038】
出口側フランジ6Bは、収容部4の+X方向側の開口441を閉塞する。出口側フランジ6Bの-X方向の端面64には、ガイド溝部65が形成されるとともに、軸Aが通る位置(円柱状部654の頂面)に旋回流の出口68が開口する。出口68は、本実施形態では、X方向に延び、出口側フランジ6Bを貫通する。出口68の径は、本実施形態では、中央孔212,222の径と同一または略同一であるものとするが、適宜の大きさでよい。旋回流は、除去した気泡と共に、出口68内に進み、電解槽1Bの外部に排出される。
【0039】
本実施形態でも、陽極21B及び陰極22Bは、旋回流の進行方向(+X方向)に直交するY方向に沿って設けられ、かつ、それらの外周端と収容部4の内周壁の間に隙間Sが形成されている。そのため、旋回流を収容部4内において出口側フランジ6B側に向けて円滑に流すことができ、陽極21B及び陰極22B上の気泡を良好に除去できる。また、本実施形態では、陽極21B及び陰極22B上から除去した気泡の多くが中央孔212,222を通って出口側フランジ6B側に進むので、気泡を円滑に出口68から排出できる。本実施形態でも、陽極21B及び陰極22Bの保持部材92,93は、X方向に延び、かつ陽極21B及び陰極22Bの径方向内側に位置するので、旋回流に対する抵抗を小さくできる。以上により、本実施形態でも、電気分解の効率を良好に維持できる。
【0040】
出口側フランジ6Bを、第1実施形態の出口側フランジ6の出口655を塞ぎ、中央に出口68を貫通させることで実現できるので、2つの出口側フランジ6,6Bの製作を容易にできる。
【0041】
(第3実施形態)
図7は、電解槽1Cの断面図である。
電解槽1Cは、電解槽1において、陽極21C及び陰極22Cをそれぞれ複数、X方向に間隔を空けて交互に設置したものである。陽極21Cの保持部材92C及び陰極22Cの保持部材93Cは、1つのみ図示しているが、複数設けられてもよい。保持部材92C,93Cは、X方向に直線状に延び、不図示の直流電源91(
図1)に接続される。陽極21Cの外端部には、陰極22Cの保持部材93Cを通す孔211が形成される。陰極22Cの外端部には、陽極21Cの保持部材92Cを通す孔221が形成される。電解槽1Cのその他の構成は、電解槽1と同様である。
【0042】
(第4実施形態)
図8は、電解槽1Dの断面図である。
電解槽1Dは、第2実施形態の電解槽1Bにおいて、陽極21D及び陰極22Dをそれぞれ複数、X方向に間隔を空けて交互に設置したものである。陽極21D及び陰極22Dには、旋回流が通る中央孔212,222が中央に形成される。陽極21D及び陰極22Dは、第3実施形態と同様、不図示の保持部材92C,93Cにより保持されて直流電源91に接続されるとともに、保持部材92C,93Cを通す不図示の孔211,221が形成される。電解槽1Dのその他の構成は、電解槽1Bと同様である。
【0043】
(変形例)
ガイド溝部55,65は、軸Aから径方向外側に向かう、または軸Aから径方向外側かつ+X方向側にも向かう螺旋状であってもよく、電解液を軸Aの周りに旋回させる適宜の形状を取り得る。入口側フランジ5(供給機構)及び出口側フランジ6(第1排出機構)は、収容部4の中心軸Aからずれた軸の周りに電解液を旋回させてもよい。
【0044】
本発明は、その特徴から逸脱することなく、実施形態で実施できる。実施形態、変形例、効果は単なる例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。実施形態及び変形例の特徴、構造は、追加でき、また代替の構成を得るために様々な方法で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0045】
1,1A~1D…電解槽、3…槽本体、4…収容部、5…入口側フランジ(供給機構)、6…出口側フランジ(第1排出機構)、6B…出口側フランジ(第2排出機構)、21,21A~21D…陽極、22,22A~22D…陰極、55…ガイド溝部(第1ガイド溝部)、57…供給路、65…ガイド溝部(第2ガイド溝部)、68…出口、212,222…中央孔(孔)、431…開口、441…開口、551…内側の内周壁、552…外側の内周壁、555…入口、652…外側の内周壁、K1…仮想延長線、S…隙間、V…内部空間、X方向…第1方向、Y方向…第2方向。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に並んで、かつ前記第1方向と直交する第2方向に沿う姿勢で設けられる陽極及び陰極と、
前記陽極及び前記陰極を収容する槽本体と、を備え、
前記槽本体において、前記陽極及び前記陰極のうち最も前記第1方向における一方側に位置するものよりも前記第1方向の前記一方側には、電解液を前記第1方向に沿う軸の周りに旋回させながら前記槽本体内に供給し、前記槽本体内に前記第1方向の他方側に進む前記電解液の旋回流を発生させる供給機構が設けられ、
前記陽極及び前記陰極の前記第2方向における外周端と、前記槽本体の内周壁との間には、前記旋回流の経路となる隙間があることを特徴とする電解槽。
【請求項2】
請求項1に記載の電解槽において、
前記槽本体は、
前記陽極及び前記陰極を収容する柱状の内部空間を有する収容部と、
前記収容部の前記第1方向における前記一方側の開口を閉塞する前記供給機構とを備え、
前記供給機構は、
前記軸を中心とする円環状で前記第1方向の前記他方側に開いた第1ガイド溝部と、
前記第1ガイド溝部を構成する外側の内周壁に開口し、前記電解液を前記第1ガイド溝部内に供給することで前記旋回流を発生させる入口と、を備えることを特徴とする電解槽。
【請求項3】
請求項2に記載の電解槽において、
前記供給機構は、直線状に延びて前記入口に接続する前記電解液の供給路を備え、
前記供給路の仮想延長線から、前記第1ガイド溝部を構成する内側の内周壁は離れていることを特徴とする電解槽。
【請求項4】
請求項3に記載の電解槽において、
前記槽本体は、前記収容部の前記第1方向における前記他方側の開口を閉塞する第1排出機構を備え、
前記第1排出機構は、
前記軸を中心とする円環状で前記第1方向の前記一方側に開き、前記旋回流を受ける第2ガイド溝部と、
前記第2ガイド溝部を構成する外側の内周壁に前記旋回流の流れに沿って開口する前記旋回流の出口と、を備えることを特徴とする電解槽。
【請求項5】
請求項2に記載の電解槽において、
前記陽極及び前記陰極の中心部には、前記旋回流の経路となる孔が空いていることを特徴とする電解槽。
【請求項6】
請求項5に記載の電解槽において、
前記槽本体は、前記収容部の前記第1方向における前記他方側の開口を閉塞する第2排出機構を備え、
前記第2排出機構の前記第1方向の前記一方側の端面において、前記軸が通る位置には、前記旋回流の出口が開口することを特徴とする電解槽。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の電解槽において、
前記陽極及び前記陰極は、それぞれ複数あり前記第1方向に交互に並ぶことを特徴とする電解槽。