(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049792
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】吸着装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20240403BHJP
B25J 15/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B25J15/06 C
B25J15/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156244
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】古賀 直幸
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼村 悠登
(72)【発明者】
【氏名】林 功二
(72)【発明者】
【氏名】中島 匠
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS01
3C707DS02
3C707FS01
3C707FU01
3C707FU02
3C707FU04
3C707HS14
3C707HS27
3C707HT22
3C707LV08
3C707LV22
3C707MS02
3C707MS30
3C707MT04
3C707NS06
3C707NS19
3C707NS26
(57)【要約】
【課題】物品に過度な負荷がかかるのを抑制して物品を載置面に置くことが可能な吸着装置を提供する。
【解決手段】上側支持機構11で上側が吸着保持されて持ち上げられた物品Wを、上側支持機構11の下降に伴って下げて、載置面Gに置く吸着装置10において、ベース部23に対して上側支持機構11と一体となって昇降する昇降体25と、昇降体25をベース部23に対して固定する状態A、及び、昇降体25を自重によりベース部23に対して下降させる状態Bが切り替えられる切替手段と、切替手段を制御する制御手段と、昇降体の下降に抵抗力を与える抵抗力付与手段とを備え、制御手段は、切替手段を状態Bにし、持ち上げられている物品Wを上側支持機構11及び昇降体25と共に下降させ、物品Wの底部を載置面Gに接触させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側支持機構で上側が吸着保持されて持ち上げられた該物品を、該上側支持機構の下降に伴って下げて、載置面に置く吸着装置において、
ベース部に対して前記上側支持機構と一体となって昇降する昇降体と、
前記昇降体を前記ベース部に対して固定する状態A、及び、前記昇降体を自重により前記ベース部に対して下降させる状態Bが切り替えられる切替手段と、
前記切替手段を制御する制御手段と、
前記昇降体の下降に抵抗力を与える抵抗力付与手段とを備え、
前記制御手段は、前記切替手段を前記状態Bにし、持ち上げられている前記物品を前記上側支持機構及び前記昇降体と共に下降させ、該物品の底部を前記載置面に接触させることを特徴とする吸着装置。
【請求項2】
請求項1記載の吸着装置において、前記制御手段によって制御されて前記ベース部の移動及び静止を行う移送ユニットを更に備え、前記制御手段は、前記移送ユニットを制御して前記ベース部を静止状態にし、前記切替手段を前記状態Bにして、持ち上げられている前記物品を下降させることを特徴とする吸着装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の吸着装置において、前記昇降体としてのロッド及び前記ベース部としてのシリンダチューブを有するエアシリンダを具備することを特徴とする吸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着して持ち上げた物品を載置面に置く吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の積み下ろしや移動を行う現場では、物品の上側を吸着して持ち上げ載置面に置く吸着装置が利用され、そのような吸着装置の具体例が、例えば特許文献1、2、3に開示されている。この種の吸着装置は、物品の高さ情報を用いて持ち上げている物品の下降量を決定し、物品を下降させて載置面に置いた後、物品の吸着状態を解除する。高さのばらつきがある複数の物品を順次持ち上げ載置面に置く場合、吸着装置は、画像認識技術等を用いて検出した個々の物品の高さを基に物品に応じた下降量を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-198542号公報
【特許文献2】特開2020-168700号公報
【特許文献3】特開平11-70917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、物品の高さの検出精度が一定未満であると、物品の下降量が過大となったり、不足したりする。物品の下降量が過大となった場合、
図6に示すように、物品100を載置面101に下ろした際に、物品100の上側を吸着している上側支持機構102から物品100に物品100を押し潰す向きに過度な負荷が与えられるという問題が発生する。また、物品の下降量が不足した場合、物品が載置面まで距離を有する位置で吸着状態が解除されて物品が落下し物品に過度な負荷を与えるという問題が生じる。
【0005】
この点、物品の高さの検出精度が一定以上のシステムを採用して、上述した問題を解消することが考えられるが、当該システムの採用は、物品の高さを検出するまでの時間が長くなったり、吸着装置全体の製造コストが高くなったりするという別の問題を招来させる。
また、物品毎の形状を揃える(例えば、物品の上側に上方に突出した突起部が形成されないようにする)精度や、設備(例えば、物品を置くパレット)の製造精度にも限界があるため、物品の高さの検出精度を一定以上にしても、物品に過度な負荷が生じる上述した問題は生じる。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、物品に過度な負荷がかかるのを抑制して物品を載置面に置くことが可能な吸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る吸着装置は、上側支持機構で上側が吸着保持されて持ち上げられた該物品を、該上側支持機構の下降に伴って下げて、載置面に置く吸着装置において、ベース部に対して前記上側支持機構と一体となって昇降する昇降体と、前記昇降体を前記ベース部に対して固定する状態A、及び、前記昇降体を自重により前記ベース部に対して下降させる状態Bが切り替えられる切替手段と、前記切替手段を制御する制御手段と、前記昇降体の下降に抵抗力を与える抵抗力付与手段とを備え、前記制御手段は、前記切替手段を前記状態Bにし、持ち上げられている前記物品を前記上側支持機構及び前記昇降体と共に下降させ、該物品の底部を前記載置面に接触させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る吸着装置は、ベース部に対して上側支持機構と一体となって昇降する昇降体と、昇降体をベース部に対して固定する状態A、及び、昇降体を自重によりベース部に対して下降させる状態Bが切り替えられる切替手段と、切替手段を制御する制御手段と、昇降体の下降に抵抗力を与える抵抗力付与手段とを備え、制御手段は、切替手段を状態Bにし、持ち上げられている物品を上側支持機構及び昇降体と共に下降させ、物品の底部を前記載置面に接触させるので、物品に過度な負荷がかかるのを抑制して物品を載置面に置くことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る吸着装置の説明図である。
【
図3】(A)、(B)はそれぞれ、吸着装置が載置面に置かれた物品を持ち上げるまでの工程を説明する説明図である。
【
図4】(A)、(B)はそれぞれ、吸着装置が載置面に置かれた物品を持ち上げるまでの工程を説明する説明図である。
【
図5】(A)、(B)はそれぞれ、吸着装置が物品を載置面に置く工程を説明する説明図である。
【
図6】従来例に係る吸着装置が物品に負荷をかける様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る吸着装置10は、上側支持機構11で上側が吸着保持されて持ち上げられた物品Wを、上側支持機構11の下降に伴って下げて、載置面Gに置く装置である。以下、詳細に説明する。
【0011】
本実施の形態における物品Wは、
図1に示すように、飲料入りのペットボトルを収容した略直方体の段ボール箱であり、上側(本実施の形態では、上側面)には重なり合った段ボール紙片がホットメルトHによって接着された継ぎ目(接着部)が形成されている。
【0012】
吸着装置10は、物品Wの上側に接触する上側吸着パッド12及び上側吸着パッド12が接着剤によって下側端部に接着された上側吸引ユニット13を有する上側支持機構11と、物品Wの側方(本実施の形態では、側面)に接触する側方吸着パッド14及び側方吸着パッド14が接着剤によって水平方向一側に接着された側方吸引ユニット15を有する側方支持機構16を備えている。
【0013】
上側吸着パッド12及び上側吸引ユニット13は共に、平面視して同じ大きさの矩形状(正方形状を含む)である。上側吸引ユニット13には図示しない孔が形成され、上側吸引ユニット13は下側端部からその孔内に空気を取り込むことができる。上側吸引ユニット13は、
図2に示すように、電磁弁17及びレギュレータ18を介してエアコンプレッサ19に接続され、電磁弁17及びエアコンプレッサ19は電子回路等によって構成可能な制御手段20に接続されている。
【0014】
制御手段20は電磁弁17及びエアコンプレッサ19に指令信号を送信して電磁弁17及びエアコンプレッサ19を制御できる。以下、特に記載しない限りエアコンプレッサ19は作動している(圧縮空気を電磁弁17等に送れる状態にある)ものとして説明する。
【0015】
制御手段20が電磁弁17をエアコンプレッサ19から送られる圧縮空気を上側吸引ユニット13に与える状態にすることによって、上側吸引ユニット13は上側吸引ユニット13に形成された孔内が負圧となって下側端部から空気を吸い込む。一方、制御手段20が電磁弁17をエアコンプレッサ19からの圧縮空気を上側吸引ユニット13に送らない状態にすることによって、上側吸引ユニット13は空気の吸い込みを停止する。よって、制御手段20は、電磁弁17及びエアコンプレッサ19を制御することより、間接的に上側吸引ユニット13(上側支持機構11)を制御する、即ち、上側吸引ユニット13の状態を切り替える。
【0016】
上側吸着パッド12は弾性体によって形成され、上側吸着パッド12には上側吸着パッド12を鉛直方向に貫通する図示しない複数の貫通孔が形成されている。そのため、上側吸引ユニット13が下側端部から空気を吸い込む状態になると、上側吸着パッド12の下方の空気が上側吸着パッド12に形成された複数の貫通孔を経由して上側吸引ユニット13に吸引される。
【0017】
上側吸引ユニット13の上方には、
図1に示すように、移送ユニットの一例であるロボットアーム22に連結されたベース部の一例であるシリンダチューブ23、シリンダチューブ23内で昇降するピストン24、及び、鉛直に配され上側端部がピストン24に連結された昇降体の一例であるロッド25を有するエアシリンダ26が設けられている。シリンダチューブ23から下方に突出しているロッド25の下側端部には、上側吸引ユニット13が下側に固定された連結部材27が取り付けられている。
【0018】
軸心が鉛直に配されたシリンダチューブ23は、
図2に示すように、制御手段20に接続された切替手段の一例である電磁弁29及びレギュレータ30を介してエアコンプレッサ19に接続されている。制御手段20は、電磁弁29を制御して、エアコンプレッサ19からの圧縮空気がシリンダチューブ23内のピストン24より下側の下側領域に与えられるようにすることや、シリンダチューブ23内の下側領域及びシリンダチューブ23内のピストン24より上側の上側領域のいずれか一方又は双方を大気開放にすることや、シリンダチューブ23内の上側領域及び下側領域に対する空気の流出入がなされないようにすることができる。
【0019】
電磁弁29がシリンダチューブ23内の下側領域に圧縮空気が送られる状態(この際、シリンダチューブ23内の上側領域は大気開放となる、以下同様)になることにより、ピストン24に上向きの力が作用して、上側吸引ユニット13、連結部材27、ピストン24及びロッド25はシリンダチューブ23に対して一体となって上昇する。このときの電磁弁29の状態を「状態A」と言う。電磁弁29が状態Aになると、ロッド25にはピストン24を介して上向きの力が作用する。
【0020】
また、電磁弁29は、シリンダチューブ23内全体(シリンダチューブ23内の上側領域及び下側領域の双方、以下同様)を大気開放させる状態になることにより、ロッド25を、上側吸引ユニット13、連結部材27及びピストン24と共に、ロッド25、上側吸引ユニット13、連結部材27及びピストン24等の自重により、シリンダチューブ23に対して下降させる状態にする。このときの電磁弁29の状態を「状態B」と言う。
従って、ロッド25はシリンダチューブ23に対して上側吸引ユニット13(即ち、上側支持機構11)と一体となって昇降する。
【0021】
そして、シリンダチューブ23に対してロッド25及びピストン24が上限位置に配された状態で、電磁弁29がシリンダチューブ23内の下側領域に圧縮空気を送る状態になることにより、ロッド25は、上側吸引ユニット13、連結部材27及びピストン24と共シリンダチューブ23に対して固定される。このときの電磁弁29の状態も「状態A」である。よって、電磁弁29は、制御手段20によって状態A及び状態Bが切り替えられる。
また、制御手段20には、シリンダチューブ23内の圧力を計測する圧力センサ28が接続されている。
【0022】
また、連結部材27には、
図1に示すように、ロッド31が水平配置されたエアシリンダ32のシリンダチューブ33が固定されている。軸心が水平に配されたシリンダチューブ33内にはロッド31の一端部に連結されたピストン34が設けられている。シリンダチューブ33から突出しているロッド31の他端部には鉛直方向に長いアーム35の上側が固定され、側方吸引ユニット15はアーム35の下側に取り付けられている。
【0023】
側方支持機構16が有する側方吸引ユニット15及び側方吸着パッド14は共に側面視して同じ大きさの矩形状(正方形状を含む)である。側方吸着パッド14は側方吸引ユニット15の水平方向一側(アーム35への取り付け側とは反対側)に接着剤で接着されている。側方吸引ユニット15には水平方向一側端部に開口する図示しない孔が形成されている。
【0024】
側方吸引ユニット15は、
図2に示すように、制御手段20に接続された電磁弁36及びレギュレータ18を介してエアコンプレッサ19に接続されている。制御手段20は電磁弁36に指令信号を送信して電磁弁36を制御できる。制御手段20が電磁弁36をエアコンプレッサ19から送られる圧縮空気を側方吸引ユニット15に与える状態にすることによって、側方吸引ユニット15は水平方向一側端部に開口する孔内が負圧となって水平方向一側端部から空気を吸い込む。
【0025】
一方、制御手段20が電磁弁36を制御してエアコンプレッサ19からの圧縮空気を側方吸引ユニット15に送らない状態にすることによって、側方吸引ユニット15は空気を吸い込まなくなる。よって、制御手段20は、電磁弁36及びエアコンプレッサ19を制御することにより、間接的に側方吸引ユニット15を制御する(側方吸引ユニット15の状態を切り替える)。
【0026】
側方吸着パッド14は弾性体によって形成され、側方吸着パッド14には側方吸着パッド14を水平方向に貫通する図示しない複数の貫通孔が形成されている。そのため、側方吸引ユニット15が水平方向一側端部から空気を吸い込む状態になることによって、側方吸着パッド14の水平方向一側周辺の空気が側方吸着パッド14に形成された複数の貫通孔を経由して側方吸引ユニット15に吸引される。
【0027】
シリンダチューブ33は、
図2に示すように、制御手段20に接続された電磁弁37及びレギュレータ30を介してエアコンプレッサ19に接続されている。制御手段20は、電磁弁37を制御して、エアコンプレッサ19からの圧縮空気がシリンダチューブ33内のピストン34より水平方向一側の領域(以下、「第1領域」と言う)及びシリンダチューブ33内の水平方向他側の領域(以下、「第2領域」と言う)のいずれか一方に与えられるようにすることや、シリンダチューブ33内の第1領域及び第2領域のいずれか一方又は双方を大気開放にすることや、シリンダチューブ33内全体を空気の流出入がないようにすることができる。
【0028】
側方吸引ユニット15、ピストン34及びロッド31は、シリンダチューブ33内の第1領域に圧縮空気が送られ、第2領域が大気開放されることによってシリンダチューブ33に対して一体となって水平方向他側(ロッド31のシリンダチューブ33からの突出長が長くなる向き)に移動する。また、側方吸引ユニット15、ピストン34及びロッド31は、シリンダチューブ33内の第1領域が大気開放され、第2領域に圧縮空気が送られることによってシリンダチューブ33に対して一体となって水平方向一側(ロッド31のシリンダチューブ33からの突出長が短くなる向き)に移動する。
【0029】
そして、シリンダチューブ33内への空気の流出入がなされないようにすることにより、側方吸引ユニット15、ピストン34及びロッド31は、シリンダチューブ33に対して固定された状態となる。制御手段20には、シリンダチューブ33内の圧力を計測する圧力センサ28aが接続されている。
【0030】
また、制御手段20には、上側吸引ユニット13の下側端部に開口する孔内の圧力を検出する圧力センサ38、側方吸引ユニット15の水平方向一側端部に開口する孔内の圧力を検出する圧力センサ39及び撮像手段40で物品Wを撮像した撮像画像を基に物品Wの位置を検出する画像解析手段41が接続されている。
【0031】
次に、吸着装置10を用いて載置面G上の物品Wを持ち上げ、持ち上げた物品Wを載置面Gに置く処理について説明する。
【0032】
<工程1>
画像解析手段41は、載置面Gに置かれた物品Wを撮像手段40で撮像した撮像画像を基に、物品W全体の位置、物品Wの上側の高さ位置、物品Wの高さ、及び、側方支持機構16によって支持する物品Wの側方の位置等を検出する。
【0033】
<工程2>
制御手段20は、画像解析手段41から物品Wの各種位置情報を取得し、当該情報を基にロボットアーム22を作動させて、エアシリンダ26、32、上側支持機構11及び側方支持機構16等を移動させ、
図3(A)に示すように、上側吸引ユニット13が載置面Gに置かれた状態の物品Wの真上の所定位置に配されるようにし、ロボットアーム22を停止させる。上側吸引ユニット13が物品Wの真上の所定位置に配された際、上側吸着パッド12は物品Wの上側に接触していても接触していなくてもよい。
【0034】
但し、上側吸引ユニット13は、上側吸引ユニット13が上側吸着パッド12を介して物品Wの上部に過度な負荷(例えば、物品Wを押し潰すような負荷)を与えず、かつ、ロッド25のシリンダチューブ23からの突出長を長くすることにより上側支持機構11が物品Wを載置面Gから持ち上げることなく物品Wの上側を吸着保持できる高さ位置の範囲に配されている必要がある。
【0035】
そして、上側吸引ユニット13が物品Wの真上の所定位置に配された際、側方吸着パッド14は、物品Wの側方に接触せず、かつ、ロッド31のシリンダチューブ33からの突出長を短くすることにより側方支持機構16が物品Wの側方を吸着保持可能な位置に配されている必要がある。
【0036】
<工程3>
次に、制御手段20は、電磁弁29を制御して、シリンダチューブ23内全体を大気開放にすることにより、ロッド25を自重で下降する状態にし(即ち、電磁弁29を状態Bにし)、物品Wの上方に配された上側吸引ユニット13をロッド25等と共に下降させ、
図3(B)に示すように、載置面Gに置かれた状態の物品Wの上側を上側支持機構11に吸着保持させる。
【0037】
ここで、シリンダチューブ23は下側領域からの空気の単位時間当たりの放出量が図示しないスピードコントローラ(昇降体の下降に抵抗力を与える抵抗力付与手段の一例)によって制限されている。当該制限によって、上側吸引ユニット13及びロッド25等の下降は、当該制限がない場合に比べて低速となる。なお、工程3及び後述する工程4では、シリンダチューブ23はロボットアーム22によって静止された状態(静止状態)が保たれる。
【0038】
本実施の形態では、上側吸引ユニット13をロッド25等と共に下降させる際、制御手段20は、電磁弁17を制御して上側吸引ユニット13を吸引状態にし、上側吸引ユニット13の上側吸着パッド12を介した空気の吸引力を上側吸引ユニット13及びロッド25等の下降に寄与させる。制御手段20は、圧力センサ38の計測値が所定値以上となったのを検出して上側吸着パッド12(上側支持機構11)が物品Wの上側を吸着保持したことを検知する。
【0039】
本実施の形態において、上側支持機構11が物品Wの上側を吸着保持した状態とは、圧力センサ38の計測値が予め設定した値以上になった状態(上側支持機構13が予め定められた大きさ以上の力で物品Wの上側を吸着している状態)を意味する。
【0040】
<工程4>
次に、制御手段20は、電磁弁37を制御してシリンダチューブ33内の第2領域に圧縮空気が送られ、同内の第1領域が大気開放される状態にすることによって、シリンダチューブ33に対してロッド31を側方支持機構16及びアーム35と共に水平方向一側に移動させ、
図4(A)に示すように、側方吸着パッド14を物品Wの側方に接触させる。本実施の形態では、ロッド31及び側方支持機構16等を水平方向一側に移動させる際、制御手段20は、電磁弁36を制御して側方吸引ユニット15を吸引状態にする。
【0041】
ロッド31及び側方支持機構16等は、側方吸着パッド14が側方吸引ユニット15及び物品Wに挟まれて水平方向に圧縮変形し、側方支持機構16が物品Wを吸着保持した状態となるまで水平方向一側に移動して停止する。従って、本実施の形態において、制御手段20は、上側支持機構11に物品Wの上側を吸着保持させた状態にし、側方吸引ユニット15に吸引を開始させて側方支持機構16に物品Wの側方を吸着保持させる。なお、側方支持機構16が物品Wを吸着保持した状態とは、側方支持機構16が所定の力以上で物品Wを吸着している状態を意味する。
【0042】
その後、制御手段20は、圧力センサ39の計測値が所定値以上となったのを検出して側方支持機構16が物品Wの側方を吸着保持したことを検知し、電磁弁37の制御によってシリンダチューブ33内に対する空気の流出入がなされないようにして、ロッド31をシリンダチューブ33に対して固定する。
【0043】
<工程5>
上側支持機構11が物品Wの上側を吸着保持し、側方支持機構16が物品Wの側方を吸着保持した状態で、制御手段20は、
図4(B)に示すように、電磁弁29の制御によってシリンダチューブ23内の下側領域に圧縮空気が送られ、同内の上側領域が大気開放されるようにして、ロッド25をシリンダチューブ23に対して上昇させると共に、ロボットアーム22の制御により、シリンダチューブ23を上昇させるようにロボットアーム22を作動させ、物品Wを載置面Gから持ち上げる。そして、制御手段20は電磁弁29の制御によってシリンダチューブ23内に対する空気の流出入がなされないようにして、ロッド25をシリンダチューブ23に対して固定する。
【0044】
<工程6>
次に、制御手段20はロボットアーム22を作動させて、上側支持機構11及び側方支持機構16にそれぞれ吸着保持された物品Wを、シリンダチューブ23と共に載置面Gの該物品Wを置く予定位置の上方まで移動させ、ロボットアーム22を停止させて、シリンダチューブ23、ロッド25、上側支持機構11及び側方支持機構16等と共に物品Wを静止させる。よって、ロボットアーム22は、制御手段20に制御されて、シリンダチューブ23の移動及び静止を行う。
ここで、制御手段20は、工程1で検出した物品Wの高さ(本実施の形態では、物品Wの上側面から底部までの距離)を基に、上側支持機構11を静止させる高さ(載置面Gから上側支持機構11までの距離)を決め、ロボットアーム22を作動させる。
【0045】
制御手段20は、物品Wの底部が載置面Gに対し確実に非接触となる高さ位置を、上側支持機構11の静止高さとして決定する。
なお、物品Wが元々置かれていた載置面Gと物品Wの移動先となる載置面とは同一面であってもよいし、別の面であってもよいのは言うまでも無い。例えば、物品Wが元々置かれていたのが床面の一の位置で物品Wの移動先が同床面の別の位置であってもよいし、物品Wが元々置かれていたのがパレットの上面で物品Wの移動先が台車の荷台の上面であってもよい。
【0046】
<工程7>
制御手段20は、
図5(A)に示すように、電磁弁29の制御により、シリンダチューブ23内全体を大気開放にして、シリンダチューブ23内の下側領域から空気が放出されてロッド25が自重で下降する状態にし(即ち、電磁弁29を状態Bにし)、持ち上げられている物品Wを上側支持機構11及びロッド25等と共に下降させ、物品Wの底部を載置面Gに接触させる。
【0047】
よって、制御手段20は、ロボットアーム22を制御してシリンダチューブ23を静止状態にし、電磁弁29を状態Bにして、持ち上げられている物品Wを下降させて物品Wの底部を設置面Gに接触させる。
このように、シリンダチューブ23内全体の大気開放による物品Wの下降により物品Wの底部を載置面Gに接触させることによって、物品Wの底部が載置面Gに接触する際に物品Wに過度な負荷が生じるのを回避する。
【0048】
しかも、本実施の形態では、制御手段20が、電磁弁29の制御によりシリンダチューブ23内の下側領域からの空気の単位時間当たりの放出量を調節し(シリンダチューブ23内の上側領域への空気の単位時間当たりの流入量の調節であってもよい)、物品W、上側吸引ユニット13及びロッド25等の下降速度を調整して、物品Wの底部が載置面Gに接触する際に物品Wに過度な負荷が生じるのを安定的に避けるようにしている。
【0049】
<工程8>
制御手段20は、物品Wの底部の載置面Gへの接触を圧力センサ28の計測値により検出した後、電磁弁17、36を制御して上側吸引ユニット13の吸引及び側方吸引ユニット15の吸引を停止させると共に、電磁弁37を制御してシリンダチューブ33内の第1領域に圧縮空気が送られ同内の第2領域が大気開放される状態にすることによって、シリンダチューブ33に対してロッド31を側方支持機構16及びアーム35と共に水平方向他側に移動させ、
図5(B)に示すように、物品Wの側方に接触していた側方吸着パッド14を物品Wの側方から離す。
【0050】
その後、制御手段20は、電磁弁29の制御によってシリンダチューブ23の下側領域に圧縮空気が送られ、同内の上側領域が大気開放されるようにして(つまり、電磁源29を状態Aにして)、ロッド25をシリンダチューブ23に対して上昇させると共に、ロボットアーム22の制御により、シリンダチューブ23を上昇させるようにロボットアーム22を作動させる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、吸着装置によって吸着保持される物品は、飲料入りのペットボトルを収容した段ボール箱に限定されないのは言うまでもない。物品の形状は、上側支持機構及び側方支持機構により吸着される形状であればよく、例えば、三角柱状や円柱状であってもよい。
【0052】
また、昇降体を有するエアシリンダを採用しなくてもよい。エアシリンダの代わりに、例えば、昇降体としてのロッドを有する電動シリンダを採用することや、昇降体としてのラック、ラックに噛み合うピニオン及びラックに回転力を与えるモータを有する機構を採用することができる。
【0053】
但し、電動シリンダを採用する場合、上側支持機構が物品の上側を吸着保持した状態となってからその状態を検知するまでに要する時間が、エアシリンダを採用する場合に比べて長くなる。また、ラック、ピニオン及びモータを有する機構を採用する場合、ピニオンをニュートラルにしてラックを昇降可能の状態にできるようにする必要等があり、エアシリンダを採用する場合に比べて設計が複雑となる。
【0054】
エアシリンダの代わりに電動シリンダを採用する場合、ロッドに動力を与えるモータ(ラック、ピニオン及びモータを有する機構を採用する場合、ピニオンに回転力を与えるモータ)が切替手段及び抵抗力付与手段として機能し、制御手段はモータをニュートラル状態にすることにより、モータを状態Bにする。
【0055】
ベース部を移送する移送ユニットを省略して、ベース部を固定してもよい。移送ユニットを採用する場合、切替手段を状態Bにした後にベース部を静止状態にしてもよい。
また、側方支持機構は昇降体及び上側吸引ユニットと一体となって昇降しなくてもよい。その場合、側方支持機構のみを昇降させる機構を設けて、側方支持機構を昇降すればよい。
【0056】
更に、前記本実施の形態では、上側吸着パッド及び側方吸着パッドの双方を弾性体により形成したが、実質的に弾性変形しない上側吸着パッド及び側方吸着パッドを採用できることは言うまでもない。
また、物品の位置の検出を、画像手段及び画像解析手段によって行う必要はなく、例えば、レーザー距離計や光電センサを用いて物品の位置を検出してもよい。
【符号の説明】
【0057】
10:吸着装置、11:上側支持機構、12:上側吸着パッド、13:上側吸引ユニット、14:側方吸着パッド、15:側方吸引ユニット、16:側方支持機構、17:電磁弁、18:レギュレータ、19:エアコンプレッサ、20:制御手段、22:ロボットアーム、23:シリンダチューブ、24:ピストン、25:ロッド、26:エアシリンダ、27:連結部材、28、28a:圧力センサ、29:電磁弁、30:レギュレータ、31:ロッド、32:エアシリンダ、33:シリンダチューブ、34:ピストン、35:アーム、36、37:電磁弁、38、39:圧力センサ、40:撮像手段、41:画像解析手段、G:載置面、H:ホットメルト、W:物品