(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049793
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】デッサン自動採点システム
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20240403BHJP
G09B 11/10 20060101ALI20240403BHJP
G06Q 50/20 20120101ALI20240403BHJP
【FI】
G09B19/00 H
G09B11/10 Z
G06Q50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156245
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】522207442
【氏名又は名称】西嶋 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 正司
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC34
5L050CC34
(57)【要約】
【課題】学習者が描いたデッサンを複数の評価項目毎に共通化した基準で自動採点して数値化する事で評価し、数値化した評価結果を学習者に提供するデッサン自動採点システムを提供する。
【解決手段】システムサーバと、学習者が所持する学習者端末と、が公衆通信回線網で互いに通信可能に接続され、学習者端末は、システムサーバからのモチーフ情報を受信するモチーフ情報受信手段と、当該学習者が描いたデッサン画像をシステムサーバに送信するデッサン画像送信手段と、を備え、システムサーバは、モチーフ情報を記憶するモチーフ情報記憶手段と、デッサン画像を複数の評価項目ごとに数値化して評価するデッサン評価手段と、デッサン評価手段の評価結果を学習者端末に送信する評価結果送信手段と、を備えたことを特徴とするデッサン自動採点システムとした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムサーバと、
学習者が所持する学習者端末と、
が公衆通信回線網で互いに通信可能に接続されたデッサン自動採点システムであって、
前記学習者端末は、
前記システムサーバから送信されるモチーフ情報を受信するモチーフ情報を受信するモチーフ情報受信手段と、
当該学習者が描いたデッサンをデッサン画像として前記システムサーバに送信するデッサン画像送信手段と、
を備え、
前記システムサーバは、
前記学習者が描くデッサンのモチーフ情報を記憶するモチーフ情報記憶手段と、
前記学習者端末から受信したデッサン画像を複数の評価項目ごとに数値化して評価するデッサン評価手段と、
前記デッサン評価手段の評価結果を前記学習者端末に送信する評価結果送信手段と、
を備えたことを特徴とするデッサン自動採点システム。
【請求項2】
前記デッサン評価手段で評価されるデッサン画像の複数の評価項目は、デッサン画像のモチーフの形、陰影、構図、完成度、彩度の5項目であることを特徴とする請求項1に記載のデッサン自動採点システム。
【請求項3】
前記モチーフ情報記憶手段に記憶されているモチーフ情報は、胸像、人物モデル、静物(卓上を含む)、イラストで構成されていることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載のデッサン自動採点システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習者のデッサン技術の向上に寄与する、学習者の描いたデッサンを自動採点及び評価するデッサン自動採点システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、美術教育における絵画の基礎技術であるデッサンの指導は、学習者が所定のモチーフを描いたデッサンを、美術教師(指導者)が肉眼で評価して、デッサン力の向上のために必要となる技術的な点を指導するといったことで行われている。
【0003】
美術教師は、デッサンを評価する場合、複数の評価項目(例えば、形、陰影、構図、完成度、彩度等)に対してデッサンを分析・評価して、それぞれの項目に応じたアドバイスを学習者に対して行っている。そのため、デッサンの評価に対して美術教師の感性が影響してしまい、評価にバラつきが生じる。つまり、複数の美術教師が、学習者の描いたデッサンを複数の項目ごとに共通化して評価することは現実問題として困難であった。また、デッサンに対する指導を受けるためには、学習者が美術学校等に赴く必要があり、移動時間がかかるばかりか、指導を受けられる時間(授業時間)は決まっているため、学習者の望ましい時間での指導は対応することが難しかった。
【0004】
そこで、デッサンを分析して評価項目ごとの評価値を出すことでデッサンの評価を詳細に行い、更にこの評価値の組み合わせからデッサンの誤り傾向を割り出し、データベースからこの誤り傾向に応じたアドバイスを引き出すことにより、デッサンに最適なアドバイスを引き出せ、しかも簡単且つ迅速でばらつきのないデッサンの評価が得られるデッサンの分析・アドバイス生成のためのプログラム、それを記録した記録媒体、並びに装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示すデッサンの分析・アドバイス生成プログラムは、デッサンを分析して複数の評価項目(例えば、線、形状、陰影等)ごとに特徴量を抽出して評価を行うものであるが、この評価項目(例えば、線、形状、陰影等)ごとに特徴量を抽出する具体的な方法が不明確であるばかりか、評価基準も具体的でなく不明瞭であり、これでは、デッサンの評価を共通化して行うことはできない。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、学習者が描いたデッサンを複数の評価項目(例えば、形、陰影、構図、完成度、彩度等)毎に共通化した基準で自動採点して数値化する事で評価し、数値化した評価結果を学習者にフィードバックするデッサン自動採点システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、システムサーバと、学習者が所持する学習者端末と、が公衆通信回線網で互いに通信可能に接続されたデッサン自動採点システムであって、前記学習者端末は、前記システムサーバから送信されるモチーフ情報を受信するモチーフ情報を受信するモチーフ情報受信手段と、当該学習者が描いたデッサンをデッサン画像として前記システムサーバに送信するデッサン画像送信手段と、を備え、前記システムサーバは、前記学習者が描くデッサンのモチーフ情報を記憶するモチーフ情報記憶手段と、前記学習者端末から受信したデッサン画像を複数の評価項目ごとに数値化して評価するデッサン評価手段と、前記デッサン評価手段の評価結果を前記学習者端末に送信する評価結果送信手段と、を備えたことを特徴とするデッサン自動採点システムとした。
【0009】
また、前記デッサン評価手段で評価されるデッサン画像の複数の評価項目は、デッサン画像のモチーフの形、陰影、構図、完成度、彩度の5項目であることを特徴とする。
【0010】
また、前記モチーフ情報記憶手段に記憶されているモチーフ情報は、胸像、人物モデル、静物(卓上を含む)、イラストで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、システムサーバと、学習者が所持する学習者端末と、が公衆通信回線網で互いに通信可能に接続されたデッサン自動採点システムであって、前記学習者端末は、前記システムサーバから送信されるモチーフ情報を受信するモチーフ情報を受信するモチーフ情報受信手段と、当該学習者が描いたデッサンをデッサン画像として前記システムサーバに送信するデッサン画像送信手段と、を備え、前記システムサーバは、前記学習者が描くデッサンのモチーフ情報を記憶するモチーフ情報記憶手段と、前記学習者端末から受信したデッサン画像を複数の評価項目ごとに数値化して評価するデッサン評価手段と、前記デッサン評価手段の評価結果を前記学習者端末に送信する評価結果送信手段と、を備えたことを特徴とするデッサン自動採点システムである。
【0012】
すなわち、学習者は自身が描いたデッサンを撮像し、その撮像されたデッサン画像をシステムサーバに送信する。デッサン画像を受信したシステムサーバは、デッサン評価手段により複数の項目ごとに評価を行う。評価の結果をシステムサーバから学習者端末へ送信する。これにより、学習者が描いたデッサンに対して、美術教師(指導者)ごとに異なる感性にとらわれた評価ではなく、共通化した評価を学習者は得ることができる。学習者は、得られた評価に従って、評価の低い項目を重点的に改善することで、絵画における基礎技術であるデッサン力の向上を速やかに図ることができる。
【0013】
さらに、本発明のデッサン自動採点システムは、学習者が所有する学習者端末との公衆通信回線網(インターネット等)を介したオンラインで、デッサンの評価を受けられるため、学習者が所望するタイミングで、自身が描いたデッサンの評価を受けることができ、学習者は時間や場所にとらわれずにデッサン力の向上を図ることができる。
【0014】
また、システムサーバのデッサン評価手段で評価されるデッサン画像の複数の評価項目は、デッサン画像のモチーフの形、陰影、構図、完成度、彩度の5項目である。5項目の詳細は、形とは、描いたモチーフの縦横比、モチーフとの相似性、描いたモチーフのバランス、パース(遠近法)の正確性を数値化したものである。特に本発明では、描いたモチーフの縦横の比率を算出して評価する。具体的には、描いたモチーフの縦横の比率が、「美」を数値で定義した所謂、黄金比に近いか否かにより判断を行う。陰影とは、デッサン画像の明暗のバランス(明度)とその周囲の空間(光源との関係)による表現やモチーフの凹凸表現、モチーフの固有色による色の表現を数値化したものである。特に本発明では、デッサン画像におけるモチーフのトーンの色数を算出して評価する。
【0015】
構図とは、描いたモチーフと背景のバランス、モチーフを描く時の視点(どの位置からモチーフを描いているか)、モチーフの切り取り方と余白の取り方を数値化したものである。特に本発明では、デッサン画像におけるモチーフと背景との面積比を算出して評価する。具体的には、形と同様にモチーフの描かれた面積と背景の面積の比が黄金比に近いか否かにより判断を行う。完成度とは、デッサン画像におけるモチーフの質感、すなわちモチーフの材質による表面の風合い等の表現を数値化したものである。特に本発明では、デッサン画像におけるモチーフの異なるトーンの色数のうちグレートーン・ダークトーンの量やモチーフの材質ごとの描画表現を算出して評価する。彩度とは、デッサン画像におけるモチーフの色の鮮やかさの度合いを数値化したものである。彩度の高低表現は、デッサンにおいて画用紙の目の潰れ方による差で一般的に表現される。すなわち、柔らかい鉛筆で画用紙の目を潰さないように描くことで彩度の高い表現を、描いたあとに表面を擦る等して画用紙の目を潰すほど彩度の低い表現とすることができる。特に本発明では、デッサン画像におけるモチーフのトーンの色数によりトーンの強弱(画用紙の目の粗さを含む)を算出して評価する。
【0016】
このように、デッサン画像を5項目に分けて数値で評価することで、学習者は、自身のデッサンのどの項目が優れており、どの項目が劣っているかを具体的に把握することができる。そして、学習者は、劣っている項目(数値の低い項目)を改善することで、自身の絵画における基礎技術であるデッサン力の向上を速やかに図ることができる。
【0017】
また、モチーフ情報記憶手段に記憶されているモチーフ情報は、胸像、人物モデル、静物(卓上を含む)、イラストで構成されている。すなわち、本発明で学習者に提供されるデッサン対象のモチーフは、デッサンのモデルとして一般的に用いられる人物の胸部より上を模った石膏像である胸像、一定の姿勢を保った実在の人物もしくはその人物を撮像した画像である人物モデル、静物画の題材として好適な静止していて大きく動かない物体(例えば、器物・植物・立方体や円錐等の幾何形体)である静物、さらに静物の中でも比較的小さく動かない物体(例えば、果物や花卉やグラス)を卓上に載せた状態で描く卓上、漫画やアニメーションの登場人物のイラスト等から構成されている。
【0018】
このように、異なる複数種類のモチーフを、デッサンの題材として学習者に提供することで、学習者のデッサンに対する意欲の向上を図ることができる。また、絵画を学習しようとする学習者以外にも、例えば、イラストレータや漫画家を目指す学習者も本発明のデッサン自動採点システムを利用することが期待でき、学習者を広く募ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態のデッサン自動採点システムの構成を示す図である。
【
図2】本実施形態のデッサン自動採点システムのシステムサーバの電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態のデッサン自動採点システムの会員登録・モチーフ選択処理を説明するフローチャートである。
【
図4】本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像自動採点処理を説明するフローチャートである。
【
図5】本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像の撮像方法を説明する図である。
【
図6】本実施形態のデッサン自動採点システムの撮像したデッサン画像を説明する図である。
【
図7】本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像の黄金比を説明する図である。
【
図8】本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像のトーンの数を説明する図である。
【
図9】本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像の背景との比率を説明する図である。
【
図10】本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像の構図を説明する図である。
【
図11】本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像の構図を説明する図である。
【
図12】本実施形態のデッサン自動採点システムの項目ごとの評価数値の配分を説明する図である。
【
図13】本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像の評価結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の要旨は、システムサーバと、学習者が所持する学習者端末と、が公衆通信回線網で互いに通信可能に接続されたデッサン自動採点システムであって、前記学習者端末は、前記システムサーバから送信されるモチーフ情報を受信するモチーフ情報を受信するモチーフ情報受信手段と、当該学習者が描いたデッサンをデッサン画像として前記システムサーバに送信するデッサン画像送信手段と、を備え、前記システムサーバは、前記学習者が描くデッサンのモチーフ情報を記憶するモチーフ情報記憶手段と、前記学習者端末から受信したデッサン画像を複数の評価項目ごとに数値化して評価するデッサン評価手段と、前記デッサン評価手段の評価結果を前記学習者端末に送信する評価結果送信手段と、を備えたことにある。
【0021】
また、前記デッサン評価手段で評価されるデッサン画像の複数の評価項目は、デッサン画像のモチーフの形、陰影、構図、完成度、彩度の5項目であることにも特徴を有する。
【0022】
また前記モチーフ情報記憶手段に記憶されているモチーフ情報は、胸像、静物、イラストで構成されていることにも特徴を有する。
【0023】
以下、本実施形態に係るデッサン自動採点システムの一例について、図面を参照して説明する。また、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0024】
図1は、本実施形態のデッサン自動採点システムの構成を示す図である。
図2は、本実施形態のデッサン自動採点システムのシステムサーバの電気的構成を示すブロック図である。
図3は、本実施形態のデッサン自動採点システムの会員登録・モチーフ選択処理を説明するフローチャートである。
図4は、本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像自動採点処理を説明するフローチャートである。
図5は、本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像の撮像方法を説明する図である。
図6は、本実施形態のデッサン自動採点システムの撮像したデッサン画像を説明する図である。
図7は、本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像の黄金比を説明する図である。
図8は、本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像のトーンの数を説明する図である。
図9は、本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像の背景との比率を説明する図である。
図10は、本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像の構図を説明する図である。
図11は、本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像の構図を説明する図である。
図12は、本実施形態のデッサン自動採点システムの項目ごとの評価数値の配分を説明する図である。
図13は、本実施形態のデッサン自動採点システムのデッサン画像の評価結果を説明する図である。
【0025】
[1.デッサン自動採点システムの構成]
図1に示すように、デッサン自動採点システム1は、デッサン自動採点システム1を運営する管理業者100が管理するシステムサーバ10と、デッサン自動採点システム1を利用する複数の学習者200がそれぞれ所持する複数の学習者端末20とにより構成され、システムサーバ10と複数の学習者端末20とは、公衆通信回線網60を介してそれぞれ相互に通信可能に接続されている。
【0026】
システムサーバ10としては、周知のコンピュータ(サーバやデスクトップパソコン等)が好適に用いられるが、公衆通信回線網60を介して学習者端末20と相互に通信可能に接続できる機能を備えたものであればよい。学習者端末20は、公衆通信回線網60を介してシステムサーバ10と相互に通信可能な機能を備えた周知のデスクトップパソコン、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット端末等であり、特に携帯に優れたスマートフォンが好適に用いられる。また、公衆通信回線網60は、周知の通信キャリア(電気通信事業者)が提供しているWAN(Wide Area Network)、インターネット回線、携帯電話通信回線、電話回線、通信衛星回線等である。
【0027】
上記構成において、管理業者100は、システムサーバ10においてデッサン自動採点システム1の専用のWebサイトを開設している。そして、このWebサイトで学習者200を会員として募集し、会員となった利用者の個人情報を登録する。具体的には、デッサン自動採点システム1のWebサイトへの入会を希望する学習者200は、所持する学習者端末20を介してシステムサーバ10のECサイトにアクセスして、自身の個人情報を入力して会員登録する。なお、この会員登録では、同時にデッサン自動採点システム1において、学習者200がデッサンするモチーフのグループと、このグループにおけるモチーフのタイプを選択する。
【0028】
会員登録を希望する学習者200は、学習者端末20によりシステムサーバ10にアクセスし会員登録が完了すると、学習者端末20に対してシステムサーバ10から専用の会員IDとパスワードが発行される。以後、この会員IDやパスワードにより、学習者200は学習者端末20からシステムサーバ10にアクセスすることで、詳細は後述するが、システムサーバ10に学習者200が描いて、学習者端末20で撮像したデッサン画像を送信することで、デッサン評価手段によりデッサン画像が複数の評価項目ごとに数値化して評価され、そして、その評価結果がシステムサーバ10から学習者端末20に送信される。
【0029】
つまり、システムサーバ10は、学習者端末20から学習者200が描いたデッサンをデッサン画像として受信すると、このデッサン画像をデッサン評価手段(後述のデッサン画像自動採点処理)により複数の評価項目ごとに数値化することで自動採点して数値化により評価するとともに、この複数の評価項目ごとに数値化して評価した評価結果が、システムサーバ10から学習者端末20に送信される。これにより、複数の学習者200がそれぞれ描いたデッサン画像に対して、美術教師(指導者)毎に異なる感性にとらわれない共通化した数値によりデッサン画像の評価が行われるので、デッサン画像の評価を学習者200が認識して受け入れやすく、評価の低い項目を改善することで、学習者200の絵画における基礎技術であるデッサン力の向上を速やかに図ることができる。
【0030】
さらに、本発明のデッサン自動採点システム1は、学習者200が所有する学習者端末20との公衆通信回線網(インターネット等)を介したオンラインで、デッサン画像の自動評価を受けられるので、学習者200は自身が所望するタイミングでデッサンの評価を確認することができるので、学習者200は、時間や場所にとらわれずに、デッサン力の向上を図ることができる。
【0031】
また、学習者200がデッサン自動採点システム1に会員登録する際に、学習者200の学習者端末20に、専用のアイコンがシステムサーバ10からダウンロードされ、この専用のアイコンを選択することでシステムサーバ10とのアクセスが可能なように構成してもよい。これにより、学習者200は、学習者端末20を介したシステムサーバ10のWebサイトへのアクセスが容易となる。
【0032】
[2.システムサーバの電気的構成]
以下、
図2を参照して、本実施形態のデッサン自動採点システム1におけるシステムサーバ10の電気的構成を説明する。
図2に示すように、システムサーバ10は、記憶部11、入出力制御部12、制御部13、外部通信制御部14などから構成されている。
【0033】
記憶部11は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の大容量記憶装置により構成されている。記憶部11は、学習者200に提供できるデッサンのモチーフ情報を記憶するモチーフ情報記憶領域、会員登録した学習者200の個人情報を記憶する学習者情報記憶領域、学習者200毎に、学習者200が描いたデッサン画像の評価情報を記憶する評価情報記憶領域等が設けられている。
【0034】
入出力制御部12は、システムサーバ10に接続されている図示しない液晶表示装置、キーボード/マウス、プリンタなどの外部入出力装置との通信を制御する。
【0035】
制御部13は、図示しないCPU(中央演算装置)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどで構成されている。また、この制御部13のCPUは、ROM又は記憶部11に予め記憶されている各種プログラムを実行することにより、本実施形態における後述する各種処理(学習者200の会員登録・モチーフ選択処理、デッサン画像の複数の評価項目ごとのデッサン画像自動採点処理等)を実行することになる。
【0036】
外部通信制御部14は、外部の公衆通信回線網60と接続され、制御部13の指示に基づいて、デッサン自動採点システム1における、複数の学習者端末20との通信を制御する。すなわち、外部通信制御部14は、詳細は後述するが、制御部13の指示に基づいて、学習者端末20からの会員登録した学習者200が描いたデッサン画像の受信、デッサン画像が複数の項目ごとに数値化して評価された評価結果の学習者端末20への送信等を制御する。
【0037】
[3.デッサン自動採点システムの会員登録・モチーフ選択処理]
以下、
図3を参照して、本実施形態のデッサン自動採点システム1への学習者200の会員登録・モチーフ選択処理を説明する。
【0038】
最初に、学習者200は、学習者端末20により公衆通信回線網60(例えば、インターネット回線)を介して、システムサーバ10のデッサン自動採点システム1を実行するWebサイトにアクセス(接続)する(ステップS1)。本実施形態のデッサン自動採点システム1の利用を希望する学習者200は、予めシステムサーバ10で開設されているWebサイトに会員登録する必要がある。このため、学習者200が学習者端末20によりシステムサーバ10にアクセスすると、Webサイトの初期画面(図示せず)が学習者端末20に送信される(ステップS2)。このWebサイトの初期画面は、例えば、本実施形態のデッサン自動採点システム1のシステム構成、Webサイトの利用方法、会員登録の案内等で構成されている。
【0039】
本実施形態のデッサン自動採点システム1の利用を希望する学習者200は、学習者端末20に表示される初期画面から会員登録を選択する(ステップS3)。システムサーバ10は、会員登録のための学習者情報入力フォーマットを学習者端末20に送信する(ステップS4)。
【0040】
学習者情報入力フォーマットを受信した学習者端末20は、学習者端末20の表示装置(液晶表示装置等)に学習者情報入力フォーマットを表示し、この状態で、学習者200は、学習者情報である自身の氏名、年齢、性別、住所、メールアドレス等を入力する。そして、学習者情報入力フォーマットは、学習者端末20からシステムサーバ10に送信される(ステップS5)。
【0041】
システムサーバ10は、学習者端末20から受信した学習者200の個人情報を、記憶部11の会員の学習者情報記憶領域に登録(ステップS6)して、学習者200の学習者端末20に会員登録の完了を送信する(ステップS7)。このとき、正規会員の会員ID及びパスワードも送信する。会員IDは会員毎に自動で割り当てられる番号(例えば、5桁の数字)であり、パスワードは会員毎に自動で割り当てられる英数字からなる文字列(例えば8桁の文字列)である。なお、「パスワード」は、学習者200が任意に設定変更可能としている。
【0042】
システムサーバ10は、学習者200がデッサンのモチーフとして選択可能なモチーフ情報を学習者端末20に送信する(ステップS8)。このモチーフ情報は、システムサーバ10の記憶部11のモチーフ情報記憶領域に記憶されたものであり、上述した、複数の胸像、人物モデル、静物(卓上を含む)、イラスト等のモチーフのグループから構成され、さらに、このモチーフのグループには複数のモチーフのタイプから構成されている。この中から学習者200は、デッサンの対象となるモチーフのグループ及びモチーフのタイプを選択できるようにしている。
【0043】
学習者200はシステムサーバ10から提供されたモチーフ情報から学習者200が希望するデッサンの対象となるモチーフのグループ及びモチーフのタイプを選択すると、学習者端末20は学習者200が選択したモチーフのグループ及びモチーフのタイプをシステムサーバ10に送信する(ステップS9)。システムサーバ10は、学習者200が選択したモチーフを学習者200毎に、システムサーバ10の記憶部11の学習者情報記憶領域に学習者200が選択したモチーフのグループ及びモチーフのタイプを登録する。このように、本実施形態のデッサン自動採点システム1においては、システムサーバ10が提供する異なる複数種類のモチーフのグループ及びタイプから学習者200が希望するモチーフを選択することで、学習者200が描いたデッサン画像のモチーフの形、陰影、構図、完成度、彩度の5項目において自動採点で数値化して評価することができる。
【0044】
[4.デッサン自動採点システムのデッサン画像自動採点処理]
以下、
図4~
図13を参照して、本実施形態のデッサン自動採点システム1のデッサン画像自動採点処理を説明する。このデッサン画像自動採点処理は、本実施形態のデッサン評価手段として機能する。なお、以下の説明では、システムサーバ10が提供する異なる複数種類のモチーフのグループから、所定のタイプの胸像(周知のデッサンのモデルとして用いられる人物の体の胸部より上を表現した石膏像)が選択されたものとして説明する。
【0045】
図4に示すように、学習者200は、自身が選択したモチーフのデッサンDを学習者端末20で撮像する(ステップS10)。このとき、
図5に示すように、学習者端末20の撮像カメラは、学習者200が描いたデッサンDと平行に位置し、十分な部屋の照明Rの下で撮像することが望ましい。すなわち、
図6(a)に示すように、学習者端末20の表示装置の画面全体にデッサンDの枠が入らないようにトリミングしてデッサン画像DTが撮像された状態が最適であり、
図6(b)に示すように、学習者端末20の表示装置の画面全体のデッサン画像DTの下部にパース(角度)がついていたり、
図6(c)に示すように、学習者端末20の表示装置の画面全体よりデッサン画像DTが小さかったり、
図6(d)に示すように、学習者端末20の表示装置のデッサン画像DTに部屋の照明Rが反射したりしていた場合は、正確なデッサン画像DTの評価ができないので、
図6(b)~
図6(d)の場合は、
図6(a)になるように撮像をやり直すことになる。
【0046】
また、撮像する際の補助機能を学習者端末20に備えることも考えられる。具体的には、学習端末20からシステムサーバ10にアクセス可能とするWebサイトもしくはアプリケーション内の機能として、撮像カメラにより撮像する際に学習者端末20の表示装置の画面内にパースが付いているか否かを視覚的に判断できるグリッドやデッサン画像DTが適切な大きさであるかを判断できる枠を表示させるようにしてもよい。また、撮像する際に画像内で光の反射でデッサン画像DTが不鮮明となる際に、学習者端末20の表示装置の画面上で注意を表示することも考えられる。また、撮像したデッサン画像DTをトリミングする機能を同様に備えることも考えられる。
【0047】
図6(a)に示すデッサン画像DTを撮像できたら、学習者200は、撮像したデッサン画像DTを学習者端末20からシステムサーバ10に送信する(ステップS11)。学習者端末20からのデッサン画像DTを受信(ステップS12)したシステムサーバ10は、評価されるデッサン画像DTの複数の評価項目であるデッサン画像DTのモチーフの形、陰影、構図、完成度、彩度の5項目のうち、最初の評価項目であるデッサン画像DTの胸像Bの形について数値評価する(ステップS13)。
【0048】
このデッサン画像DTの胸像Bの形の数値評価としては、本発明において主として
図7に示すように、デッサン画像DTの胸像Bの縦横の比率に応じて自動採点される。すなわち、
図7(a)に示すように、デッサン画像DTの胸像Bの横軸を基準(つまり1)として縦軸が1.618、つまり、横1:縦1.681の黄金比率となるときに最高点100点とし、以下、黄金比率から外れる毎に、横1:縦1.456のときは90点・・・横1:縦0.809のときは50点・・・横1:縦0ときは0点と段階的に評価される。
図7(b)に示すように、横1:縦1.288の場合は70点と評価される。
【0049】
また、形の評価としては、モチーフとの相似性と全体や細部のバランス、パースの正確性によっても評価を行う。この3点の評価基準は、以下に詳しく説明する内容を単独で判断するのではなく、デッサン画像DTと実際のモチーフ(胸像Bや胸像Bの画像)と比較を行い総合的に判断する。
【0050】
モチーフとの相似性は、いかにモチーフを正確に模写できているかを判断する。具体的には、学習者200が描いたデッサン画像DTとそれと同じ角度から見たモチーフ(胸像B)との比較によって行う。比較を行い実際のモチーフ(胸像B)とデッサン画像DTとの一致しているポイント(アウトラインや胸像Bの顔や胴体の角度等の一致度合い)が多いほど良い評価となる。
【0051】
全体や細部のバランスは、デッサン画像DTにおいて、モチーフとした胸像Bの顔に対する胴体といった全体の正確性や顔輪郭に対する目や口といった細部の正確性により判断する。具体的には、学習者200が描いた角度から見た胸像Bと比較を行い、顔と胴体との大きさのバランスがとれているか、また、輪郭とその輪郭に収まる目や口といった細部のパーツの大きさのバランスや位置関係のバランスがとれているかを判断し、正確性が高いほど良い評価となる。
【0052】
パースの正確性は、学習者200が描いた角度により実際に見えるパース(遠近感)が正確に描けているかを判断する。具体的には、学習者200が描いた角度から見た胸像Bと比較を行い、パースが正確にとれているかの判断を行う。
【0053】
このため、本実施形態においては、予め描写対象の胸像Bの種類に応じて、複数の位置から撮像した画像データを撮像しており、学習者200から送信されたデッサン画像DTがどの位置で模写されたデッサン画像DTで有るかを画像データと比較して、デッサン画像DTの胸像Bの形の数値評価をしている。そして、ここで数値化されたデッサン画像DTの胸像Bの形の数値評価は、システムサーバ10の記憶部11の評価情報記憶領域等に記憶される。
【0054】
続いて、次の評価項目であるデッサン画像DTの胸像Bの陰影を数値評価する(ステップS14)。このデッサン画像DTのモチーフの陰影の数値評価は、
図8(a)に示すように、デッサン画像DTの胸像Bを構成するトーンの数で自動採点される。すなわち、
図8(b)に示すように、胸像Bを構成する異なる色のトーンの数がT1からT2、T3・・・T9、T10と段階的に濃くなる10色以上(T1~T10)であった場合は最高点の100点と評価される。以下、異なる色のトーンの数が9色(T1~T9)の場合は90点、異なる色のトーンの数が8色(T1~T8)の場合は80点と、デッサン画像DTの胸像Bを構成する異なる色のトーンの数が減る毎に低い点数として評価され、最終的に、一色(白)の場合は最低の0点として評価される。
【0055】
また、この陰影の数値評価の際には、学習者200が描いた角度から見た胸像Bと比較を行い、光源の位置関係により生じる陰影の表れ方が正確であるかも判断基準となる。これは、上述したように、表現された陰影のトーン数が多いほど評価点が高くなるため正確でない位置への陰影表現(過度な陰影表現)を行った際に高得点となってしまわないようにするものである。すなわち、学習者200が描いた胸像Bと同じ角度から見た画像データを用いて陰影をつける場所が正しいか否かを判定する。
【0056】
陰影表現は、明暗の度合い(明度)を示しており、光源や周囲環境が胸像B(モチーフ)に与える影響を表現する、すなわち空間を把握した表現と胸像B(モチーフ)の正確な凹凸が表現できているかを判断している。光源の位置は、学習者200が与えられた課題により実際の胸像Bの位置決めを行う場合や、与えられた課題画像を基に描くことで一致させる方法や、システムサーバ10上で3Dモデリングを用いて光源位置を変え一致させる方法等が用いられる。ここで数値化されたデッサン画像DTの胸像Bの陰影の数値評価は、システムサーバ10の記憶部11の評価情報記憶領域等に記憶される。
【0057】
次に、評価項目であるデッサン画像DTの胸像Bの構図を数値評価する(ステップS15)。このデッサン画像DTの胸像Bの構図の数値評価としては、本発明において主として、デッサン画像DTの胸像Bと背景Hとの面積の比率を採点対象としている。具体的には、
図9に示すように、背景Hを1として、胸像Bの比率が1.618(黄金比率)のときに最高点100点が付与され、以下、この黄金比率から外れる毎に低い点数が数値化されて評価される。
【0058】
ところで、胸像Bのデッサンには、それぞれの胸像Bごとにデッサンに適した角度(どの方向から描写するか)が存在する。この適した角度とは、表情やポーズが魅力的に見えることや立体感が出しやすいことや紙に収めやすいことといった理由から定石として広く認知されているものである。そのため、デッサン画像DTの胸像Bの構図の数値評価は、胸像Bをどの方向から描写したかでも評価される。すなわち、
図10に示すように、胸像Bを中心として、所定位置(図中はP1~P9の9カ所)のどの位置から描写したかも数値評価の対象となる。具体的には、
図11に示すように、描写対象の胸像B毎に評価数値の高い描写位置が決められている。
【0059】
具体的には、
図11(a)に示すマルス胸像では、P3の位置が最も数値評価の高い100点であり、P7の位置70点、P5の位置が最低の10点、他の位置もそれに応じた点数が決められている。
図11(b)に示すアリアス胸像では、P7の位置が最も数値評価の高い100点であり、P3の位置70点、P6の位置が最低の10点、他の位置もそれに応じた点数が決められている。
図11(c)に示すブルータス胸像では、P3の位置が最も数値評価の高い100点であり、P7の位置70点、P5の位置が最低の10点、他の位置もそれに応じた点数が決められている。
【0060】
また、胸像Bのデッサンには、描写の方向(角度)以外にもいくつかの定石が存在する。具体的には、画面上部において、胸像Bの頭頂部は用紙からはみ出すように描くことや、画面下部において、胴体部分まで用紙に描くこと(このとき胸像Bの装飾台は切り取り、装飾台のないものは設置した台との接地部分まで描く)や、胸像Bの顔が向いている方向(視線の方向)の余白をやや広く空けること等である。そのため、デッサン画像DTの胸像Bの構図の評価は、胸像Bを描写する際の上下左右の切り取りかたのバランスや余白の取り方も評価される。
【0061】
すなわち、デッサン画像DTの胸像Bの構図の数値評価は、背景Hと胸像Bとの面積比率、胸像Bをどの方向から描写したかの位置及び用紙への描き方(胸像Bの切り取り方や余白の取り方)の総合評価で数値化される。ここで数値化されたデッサン画像DTの胸像Bの構図の数値評価は、システムサーバ10の記憶部11の評価情報記憶領域等に記憶される。
【0062】
次に、評価項目であるデッサン画像DTの胸像Bの完成度を数値評価する(ステップS16)。完成度とは、デッサン画像におけるモチーフの質感、すなわちモチーフの材質による表面の風合い等の表現を数値化したものである。このデッサン画像DTの胸像Bの完成度の数値評価としては、本発明において主として、学習者200が描いた胸像Bを構成するトーンの表現が豊かであるか否かにより判断を行う。
【0063】
具体的には、デッサン画像DTの胸像Bを構成する複数のトーンの数が多いほど高得点となり、
図8(b)に示す胸像Bを構成する異なる色のトーンの数(T1~T10)が、最大である10トーン以上であれば最高点の100点と評価される。すなわち、グレートーン(T2~T5)・ダークトーン(T6~T10)の数、つまり、胸像Bを描写するグラデーションのトーンのパターン数(グレートーン(T2~T5)・ダークトーン(T6~T10)の数)が多いほど、デッサンにおけるトーン表現が豊かであると判断される。以下、グラデーションのトーンのパターン数が9色(T1~T9)の場合は90点、8色(T1~T8)の場合は80点と、デッサン画像DTの胸像Bを構成するグラデーションのトーンのパターン数が減る毎に低い点数として評価される。
【0064】
また、この完成度の数値評価の際には、学習者200が描いた実際のモチーフの素材から描画表現が的確であるか否かも判断基準となる。具体的には、モチーフの素材に適したコントラストや陰影の境界線をどのように描いているかである。例えば、静物デッサンの場合、半透明なプラスチックを描く際には、全体に柔らかなコントラストで描き光の映り込みや重なりにより後ろに透けている他の物体が描けているか等の判断となり、アルミホイルを描く際には、コントラストの差を際立たせ、陰影の境界線をはっきりと描きエッジを効かせて描けているか等の判断を行う。このような描画表現も評価の基準の一つとなり、完成度の数値評価に反映される。ここで数値化されたデッサン画像DTの胸像Bの完成度の数値評価は、システムサーバ10の記憶部11の評価情報記憶領域等に記憶される。
【0065】
次に、評価項目であるデッサン画像DTの胸像Bの彩度を数値評価する(ステップS17)。彩度とは、デッサン画像におけるモチーフの色の鮮やかさの度合いを数値化したものである。この彩度は、デッサンの表現技術として、画用紙の目の潰れ方による差を出すことで一般的に表現することができる。すなわち、柔らかい鉛筆で画用紙の目を潰さないように描くことで彩度の高い表現を、描いたあとに表面を擦る等して画用紙の目を潰すほど彩度の低い表現とすることができる。
【0066】
そこで、このデッサン画像DTの胸像Bの彩度の数値評価は、
図8(b)に示す胸像Bを構成するトーンの強弱により評価を行う。トーンの強弱は、デッサン画像DTを構成するトーンの表現が多彩であるかと、画用紙の表面の状態から判断を行う。トーン表現の多彩さは、モチーフの色彩に影響する彩度と、さらに色彩部分にかかる陰影による彩度の変化がデッサン画像DT内で適切に表現できているかどうかを判断する。つまり、陰影や完成度の評価と同様に、胸像Bを描写するライトトーン(T1)、グレートーン(T2~T5)、ダークトーン(T6~T10)の数で色の鮮やかさの度合いを表現できているかを評価する。
【0067】
すなわち、モチーフとなる物(本実施形態においては胸像B)の画像データから実物の彩度を判別し、さらに学習者200が描いた構図で陰影により彩度見え方が変化する箇所を判別する。デッサン画像DTは、その判別された箇所内において、構成されるトーンの数が多いほどトーン表現が多彩であるとして高得点が得られる。つまり、彩度の変化がみられる一定範囲内でのトーンの数が10以上で高評価となる。以下、このトーン数が9色、8色と数が減るにつれて低い点となっていく。
【0068】
画用紙の表面状態は、画用紙の目の潰れ具合から判定する。この判定は、上述したように、柔らかい鉛筆で画用紙の目を潰さないように描くことで彩度の高い表現を、描いたあとに表面を擦る等して画用紙の目を潰すほど彩度の低い表現とすることを基準としている。具体的には、デッサン画像DTのモチーフとなる画像データから実際の彩度を判別し、彩度の違いのある箇所ごとの彩度にあう画用紙の目の状態を判断する。デッサン画像DTの彩度表現箇所が実際の彩度に合う画用紙の目の状態に近いほど高得点となる。
【0069】
すなわち、彩度の評価方法は、上述したトーンの多彩さと画用紙の目の状態により判定する。言い換えればこの二つの基準は、トーンの強弱が適切であるか否かにより評価を行っている。このトーンの強弱が適切であると判定されるほど点数が高く、不適切であると判断されるほど点数が低くなる。例えば、彩度の違いがみられる箇所が一色のトーンで画用紙の目の潰れ具合が一定で描かれている場合には、最低評価の0点と判定される。
【0070】
また、本実施形態においては、胸像Bのデッサンをモデルとしているが、例えばイラスト等の色彩を有した作品の評価に際しては、実際のモチーフが存在すれば、そのモチーフの画像データから彩度を判別し、それを基に評価が行われる。モチーフが存在しない場合には、イラスト内の同色部分から、例えば人体の骨格や服のしわ等を考慮し、それに合わせて変化する適切な彩度の表現を判別し、それを基に評価が行われる。ここで数値化されたデッサン画像DTの胸像Bの彩度の数値評価は、システムサーバ10の記憶部11の評価情報記憶領域等に記憶される。
【0071】
上述したように、デッサン画像DTの形、陰影、構図、完成度、彩度の5項目の評価を終えると、システムサーバ10は、システムサーバ10の記憶部11の評価情報記憶領域等に記憶されたデッサン画像DTの胸像Bの形、陰影、構図、完成度、彩度の5項目の評価結果を所定配分で換算する(ステップS18)。
図12に示すように、デッサン画像DTの胸像Bの5項目の評価項目30毎に評価された得点31(数値評価)に応じて、所定の配分32(合計100%の中に占める割合)が設定されている。
【0072】
そして、得点31と配分32を掛け合わせることで、換算値33が算出される。具体的には、評価項目30が形、得点31が90、配分32が40%の場合は、換算値33は「90×0.4=36」で36として算出される。以下、同様に評価項目30が陰影、得点31が90、配分32が30%の場合は、換算値33は27、評価項目30が構図、得点31が100、配分32が10%の場合は、換算値33は10,評価項目30が完成度、得点31が50、配分32が10%の場合は、換算値33は5、評価項目30が彩度、得点31が100、配分32が10%の場合は、換算値33は10として算出され、換算値の合計値は88として算出される。つまり、デッサン画像DTの胸像Bの形、陰影、構図、完成度、彩度の5項目の評価に配分32をつけることにより、5項目の評価に優先順位(重み付け)を行うことができる。
【0073】
最後に、システムサーバ10は、学習者200のデッサン画像DTの5項目の評価結果を学習者端末20に送信する(ステップS19)。学習者端末20は、システムサーバ10による学習者200のデッサン画像DTの5項目の評価結果を学習者端末20の表示装置21(液晶表示装置)に表示する(ステップS20)。
図13に示すように、学習者200が胸像Bを描いたデッサン画像DTの評価結果は、学習者端末20の表示装置21の最上段に、学習者200が選択したモチーフ情報M(モチーフのグループ選択が胸像、選択した胸像のタイプ(種類)がマルス胸像)が表示される。モチーフ情報Mの下部には、学習者200がシステムサーバ10に送信したデッサン画像DTが表示され、その下部に学習者200のデッサン画像DTの5項目の評価が表示される。デッサン画像DTの5項目の評価は、左から、評価項目、評価数値(
図12に示す換算値33)、評価項目毎の評価コメントKの順で表示される。
【0074】
評価項目毎の評価コメントKは、評価数値(
図12に示す換算値33)に応じて、システムサーバ10において自動的に付与されるものであり、評価項目毎に評価数値の多寡に応じて複数用意された評価コメントKがランダムに選択されたものである。デッサン画像DTの5項目の評価の下部には、当該評価結果を保存する画像登録ボタンB1、当該評価結果を削除する画像削除ボタンB2、デッサン自動採点システム1の利用を終了する終了ボタンB3が左から順に一列に表示されている。学習者200が終了ボタンB3を選択すると、学習者端末20によるシステムサーバ10へのアクセスが切断され、本実施形態のデッサン自動採点システム1の学習者200による利用が終了する。
【0075】
上述してきたように、本実施形態のデッサン自動採点システム1によれば、システムサーバ10が学習者端末20から学習者200が描いたデッサンをデッサン画像DTとして受信すると、デッサン評価手段(デッサン画像自動採点処理)により複数の項目ごとにデッサン画像DTを数値化して評価するとともに、この複数の項目ごとに数値化して評価した評価結果が、システムサーバ10から学習者端末20に送信される。これにより、複数の学習者200がそれぞれ描いたデッサン画像DTに対して、美術教師(指導者)毎に異なる感性にとらわれない共通化した数値によりデッサン画像DTを複数の項目毎に評価できるので、デッサン画像DTの評価を学習者200が容易に理解・認識して受け入れ易く、評価の低い項目を改善することで、学習者200の絵画における基礎技術であるデッサン力の向上を速やかに図ることができる。
【0076】
さらに、本発明のデッサン自動採点システム1は、学習者200が所有する学習者端末20との公共通信回線網(インターネット等)を介したオンラインで、デッサン画像DTの評価を受けられるので、学習者200が所望するタイミングで自身が描いたデッサンの評価を確認することができるので、時間や場所にとらわれずに、デッサン力で向上を図ることができる。
【0077】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、上述した各種効果は、本発明から生じる好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0078】
1 デッサン自動採点システム
10 システムサーバ
11 記憶部
12 入出力制御部
13 制御部
14 外部通信制御部
20 学習者端末
100 管理業者
200 学習者