(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049794
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】食器洗浄機
(51)【国際特許分類】
A47L 15/42 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
A47L15/42 B
A47L15/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156249
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】佐橋 敏男
【テーマコード(参考)】
3B082
【Fターム(参考)】
3B082BA04
3B082BB02
3B082BB06
(57)【要約】
【課題】洗浄槽に対する蓋体の幅方向の位置決め精度を向上させることができる食器洗浄機を提供する。
【解決手段】食器洗浄機1において、昇降機構5は、付勢手段59と、当接部78と、一対の被案内凸部85と、各被案内凸部85に一対一で対応するように筐体9の内壁面9Wに支持された少なくとも一対の案内部50であって、蓋体8が閉塞位置と退避位置との間で移動するときに被案内凸部85を案内溝58に沿って摺動させる各案内部50と、を有する。各案内部50は、洗浄槽7が収容位置にあるときに、幅方向の外側から洗浄槽7の側壁7Sに当接することで洗浄槽7の幅方向の位置ずれを規制する第1規制部100と、第1規制部100よりも上方に位置し、蓋体8が閉塞位置にあるときに、幅方向の外側から蓋体8の側端縁8Sに当接することで蓋体8の幅方向の位置ずれを規制する第2規制部200と、を有する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方が開放された筐体と、
前記筐体内に収容された収容位置と、前記収容位置から前方に移動して前記筐体の外部に露出する引き出し位置と、の間で移動可能であり、上方が開放された槽開口を有して被洗浄物を収容可能な洗浄槽と、
前記筐体内に設けられ、前記洗浄槽が前記収容位置にあるときに前記槽開口を閉塞する閉塞位置にある蓋体であって、前記閉塞位置と、前記閉塞位置から最も上方に離れて前記槽開口を開放する退避位置と、の間で移動可能な前記蓋体と、
前記洗浄槽が前記収容位置と前記引き出し位置との間で移動するのに連動し、前記蓋体を前記閉塞位置と前記退避位置との間で移動させる昇降機構と、を備えた食器洗浄機であって、
前記昇降機構は、前記筐体と前記蓋体との間に設けられ、前記蓋体を前記退避位置に向けて付勢する付勢手段と、
前記洗浄槽に設けられ、前記洗浄槽が前記引き出し位置から前記収容位置に移動するときに前記蓋体に当接して前記蓋体を前記退避位置から前記閉塞位置に移動させる当接部と、
前記蓋体の側端縁から互いに離間するように幅方向の外側に突出する少なくとも一対の被案内凸部と、
各前記被案内凸部に一対一で対応するように前記筐体の内壁面に支持された少なくとも一対の案内部であって、後方かつ下方に傾斜するように延びて前記被案内凸部を内挿する案内溝が形成され、前記蓋体が前記閉塞位置と前記退避位置との間で移動するときに前記被案内凸部を前記案内溝に沿って摺動させる各前記案内部と、を有し、
各前記案内部は、前記洗浄槽が前記収容位置にあるときに、前記幅方向の前記外側から前記洗浄槽の側壁に当接することで前記洗浄槽の前記幅方向の位置ずれを規制する第1規制部と、
前記第1規制部よりも上方に位置し、前記蓋体が前記閉塞位置にあるときに、前記幅方向の前記外側から前記蓋体の前記側端縁に当接することで前記蓋体の前記幅方向の位置ずれを規制する第2規制部と、を有していることを特徴とする食器洗浄機。
【請求項2】
前記第1規制部は、前記幅方向の内側を向いて前記幅方向の前記内側かつ後方に傾斜し、前記洗浄槽が前記引き出し位置から前記収容位置に移動するときに前記洗浄槽の前記側壁に当接可能な第1傾斜面を有している請求項1記載の食器洗浄機。
【請求項3】
前記洗浄槽の前記側壁は、前記洗浄槽が前記引き出し位置から前記収容位置に移動するときに前記幅方向の内側から前記第1規制部に当接可能な第1被規制部を有し、
前記第1被規制部は、前記洗浄槽が前記収容位置にあるときに前記第1規制部に当接する第1部分と、
前記第1部分よりも後方に位置し、前記幅方向の前記外側を向いて前記幅方向の前記内側かつ後方に傾斜する槽傾斜面であって、前記洗浄槽が前記引き出し位置から前記収容位置に移動する途中で前記第1規制部に当接可能な前記槽傾斜面と、を有している請求項1又は2記載の食器洗浄機。
【請求項4】
前記第2規制部は、前記幅方向の内側を向いて前記幅方向の前記外側かつ上方に傾斜し、前記蓋体が前記退避位置から前記閉塞位置に移動するときに前記蓋体の前記側端縁に当接可能な第2傾斜面を有している請求項1記載の食器洗浄機。
【請求項5】
前記第2規制部は、前記幅方向の前記内側を向いて前記幅方向の前記内側かつ後方に傾斜し、前記蓋体が前記退避位置から前記閉塞位置に移動するときに前記蓋体の前記側端縁に当接可能な第3傾斜面を有している請求項4記載の食器洗浄機。
【請求項6】
前記蓋体の前記側端縁は、前記蓋体が前記退避位置から前記閉塞位置に移動するときに前記幅方向の前記内側から前記第2規制部に当接可能な第2被規制部を有し、
前記第2被規制部は、前記蓋体が前記閉塞位置にあるときに前記第2規制部に当接する第2部分と、
前記第2部分よりも下方に位置し、前記幅方向の前記外側を向いて前記幅方向の前記内側かつ下方に傾斜する蓋傾斜面であって、前記蓋体が前記退避位置から前記閉塞位置に移動する途中で前記第2規制部に当接可能な前記蓋傾斜面と、を有している請求項4又は5記載の食器洗浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食器洗浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の食器洗浄機の一例が開示されている。この食器洗浄機は、筐体、洗浄槽、蓋体及び昇降機構を備えている。
【0003】
筐体は、前方が開放されている。洗浄槽は、筐体内に収容された収容位置と、収容位置から前方に移動して筐体の外部に露出する引き出し位置との間で移動可能である。洗浄槽は、上方が開放された槽開口を有して被洗浄物を収容可能である。
【0004】
蓋体は、筐体内に設けられている。蓋体は、洗浄槽が収容位置にあるときに槽開口を閉塞する閉塞位置にある。蓋体は、閉塞位置と、閉塞位置から最も上方に離れて槽開口を開放する退避位置と、の間で移動可能である。昇降機構は、洗浄槽が収容位置と引き出し位置との間で移動するのに連動し、蓋体を閉塞位置と退避位置との間で移動させる。
【0005】
より詳しくは、昇降機構は、スプリング、二対のL字形状のリンク、及び二対のガイド部材を有している。スプリングは、筐体と蓋体との間に設けられ、蓋体を退避位置に向けて付勢している。各リンクの一端は、蓋体の側端縁に連結されている。各リンクの他端は、筐体の内壁面に揺動可能に支持されている。各リンクの屈曲部には、ローラが回転可能に支持されている。各ガイド部材は、各リンクに一対一で対応するように洗浄槽の側壁に設けられている。各ガイド部材は、各リンクのローラを下方に押圧可能な位置にある。
【0006】
昇降機構は、洗浄槽が引き出し位置から収容位置に移動するときに、各ガイド部材が後方に移動して各リンクのローラを下方に押圧し、スプリングに抗して各リンクを揺動させることで、蓋体を閉塞位置に移動させる。
【0007】
その一方、昇降機構は、洗浄槽が収容位置から引き出し位置に移動するときに、各ガイド部材が前方に移動して各リンクのローラから離れることで、スプリングが各リンクを逆向きに揺動させながら蓋体を退避位置に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記従来の食器洗浄機において、筐体に移動可能に支持された洗浄槽は、筐体に対して幅方向の遊びを有している。筐体に揺動可能に支持された各リンクは、筐体に対して幅方向の遊びを有している。各リンクに連結された蓋体は、各リンクに対して幅方向の遊びを有している。
【0010】
このため、洗浄槽が収容位置に移動するのに連動して蓋体が閉塞位置に移動するときに、洗浄槽と蓋体とが筐体及び各リンクを介在させて幅方向で位置決めを行うと、それらの遊びによる誤差が累積され易い。その結果、この食器洗浄機は、洗浄槽に対する蓋体の幅方向の位置決め精度を向上させることが難しい。
【0011】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、洗浄槽に対する蓋体の幅方向の位置決め精度を向上させることができる食器洗浄機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の食器洗浄機は、前方が開放された筐体と、
前記筐体内に収容された収容位置と、前記収容位置から前方に移動して前記筐体の外部に露出する引き出し位置と、の間で移動可能であり、上方が開放された槽開口を有して被洗浄物を収容可能な洗浄槽と、
前記筐体内に設けられ、前記洗浄槽が前記収容位置にあるときに前記槽開口を閉塞する閉塞位置にある蓋体であって、前記閉塞位置と、前記閉塞位置から最も上方に離れて前記槽開口を開放する退避位置と、の間で移動可能な前記蓋体と、
前記洗浄槽が前記収容位置と前記引き出し位置との間で移動するのに連動し、前記蓋体を前記閉塞位置と前記退避位置との間で移動させる昇降機構と、を備えた食器洗浄機であって、
前記昇降機構は、前記筐体と前記蓋体との間に設けられ、前記蓋体を前記退避位置に向けて付勢する付勢手段と、
前記洗浄槽に設けられ、前記洗浄槽が前記引き出し位置から前記収容位置に移動するときに前記蓋体に当接して前記蓋体を前記退避位置から前記閉塞位置に移動させる当接部と、
前記蓋体の側端縁から互いに離間するように幅方向の外側に突出する少なくとも一対の被案内凸部と、
各前記被案内凸部に一対一で対応するように前記筐体の内壁面に支持された少なくとも一対の案内部であって、後方かつ下方に傾斜するように延びて前記被案内凸部を内挿する案内溝が形成され、前記蓋体が前記閉塞位置と前記退避位置との間で移動するときに前記被案内凸部を前記案内溝に沿って摺動させる各前記案内部と、を有し、
各前記案内部は、前記洗浄槽が前記収容位置にあるときに、前記幅方向の前記外側から前記洗浄槽の側壁に当接することで前記洗浄槽の前記幅方向の位置ずれを規制する第1規制部と、
前記第1規制部よりも上方に位置し、前記蓋体が前記閉塞位置にあるときに、前記幅方向の前記外側から前記蓋体の前記側端縁に当接することで前記蓋体の前記幅方向の位置ずれを規制する第2規制部と、を有していることを特徴とする。
【0013】
本発明の食器洗浄機において、昇降機構は、洗浄槽が引き出し位置から収容位置に移動するときに、洗浄槽の当接部が後方に移動して蓋体に当接することで、洗浄槽に対する蓋体の前後方向の位置を規制する。
【0014】
次に、当接部は、付勢手段に抗して蓋体を後方に押圧し、閉塞位置に移動させる。この際、各案内部が被案内凸部を案内溝に沿って後方かつ下方に摺動させるので、蓋体が確実性高く閉塞位置に移動できる。
【0015】
そして、各案内部の第1規制部は、洗浄槽が収容位置にあるときに、幅方向の外側から洗浄槽の側壁に当接することで洗浄槽の幅方向の位置ずれを規制する。また、各案内部における第1規制部よりも上方に位置する第2規制部は、蓋体が閉塞位置にあるときに、幅方向の外側から蓋体の側端縁に当接することで蓋体の幅方向の位置ずれを規制する。
【0016】
その一方、昇降機構は、洗浄槽が収容位置から引き出し位置に移動するときに、当接部が前方に移動して蓋体から離れることで、付勢手段が蓋体を退避位置に移動させる。
【0017】
こうして、この食器洗浄機は、蓋体を洗浄槽に対して幅方向で位置決めするときに、第1規制部及び第2規制部を有する各案内部を介在させた位置決めを行う。これにより、筐体に移動可能に支持された洗浄槽の筐体に対する幅方向の遊びがあるとしても、その遊びが洗浄槽に対する蓋体の幅方向の位置決めに影響を及ぼし難い。
【0018】
その結果、この食器洗浄機は、洗浄槽と蓋体とが筐体及び各リンクを介在させた位置決めを行う上記従来の食器洗浄機と比較して、誤差の累積を抑制できる。
【0019】
したがって、本発明の食器洗浄機は、洗浄槽に対する蓋体の幅方向の位置決め精度を向上させることができる。
【0020】
第1規制部は、幅方向の内側を向いて幅方向の内側かつ後方に傾斜し、洗浄槽が引き出し位置から収容位置に移動するときに洗浄槽の側壁に当接可能な第1傾斜面を有していることが望ましい。
【0021】
この場合、洗浄槽が引き出し位置から収容位置に移動するときに、各案内部の第1規制部は、第1傾斜面が洗浄槽の側壁に当接することで、洗浄槽を幅方向において適切な位置に案内し易くなる。その結果、この食器洗浄機は、洗浄槽に対する蓋体の幅方向の位置決め精度を一層向上させることができる。
【0022】
洗浄槽の側壁は、洗浄槽が引き出し位置から収容位置に移動するときに幅方向の内側から第1規制部に当接可能な第1被規制部を有していることが望ましい。そして、第1被規制部は、洗浄槽が収容位置にあるときに第1規制部に当接する第1部分と、第1部分よりも後方に位置し、幅方向の外側を向いて幅方向の内側かつ後方に傾斜する槽傾斜面であって、洗浄槽が引き出し位置から収容位置に移動する途中で第1規制部に当接可能な槽傾斜面と、を有していることが望ましい。
【0023】
この場合、洗浄槽が引き出し位置から収容位置に移動するときに、各案内部の第1規制部は、側壁の第1被規制部の槽傾斜面に当接することで、洗浄槽を幅方向において適切な位置に案内し易くなる。そして、洗浄槽が収容位置にあるときに、各案内部の第1規制部は、第1被規制部の第1部分に当接することで、洗浄槽の幅方向の位置ずれを確実性高く規制できる。その結果、この食器洗浄機は、洗浄槽に対する蓋体の幅方向の位置決め精度を一層向上させることができる。
【0024】
第2規制部は、幅方向の内側を向いて幅方向の外側かつ上方に傾斜し、蓋体が退避位置から閉塞位置に移動するときに蓋体の側端縁に当接可能な第2傾斜面を有していることが望ましい。
【0025】
この場合、蓋体が退避位置から閉塞位置に移動するときに、各案内部の第2規制部は、第2傾斜面が蓋体の側端縁に当接することで、蓋体を幅方向において適切な位置に案内し易くなる。その結果、この食器洗浄機は、洗浄槽に対する蓋体の幅方向の位置決め精度を一層向上させることができる。
【0026】
第2規制部は、幅方向の内側を向いて幅方向の内側かつ後方に傾斜し、蓋体が退避位置から閉塞位置に移動するときに蓋体の側端縁に当接可能な第3傾斜面を有していることが望ましい。
【0027】
この場合、蓋体が退避位置から閉塞位置に移動するときに、各案内部の第2規制部は、第3傾斜面が蓋体の側端縁に当接することで、蓋体を幅方向において適切な位置に案内し易くなる。その結果、この食器洗浄機は、洗浄槽に対する蓋体の幅方向の位置決め精度をより一層向上させることができる。
【0028】
蓋体の側端縁は、蓋体が退避位置から閉塞位置に移動するときに幅方向の内側から第2規制部に当接可能な第2被規制部を有していることが望ましい。そして、第2被規制部は、蓋体が閉塞位置にあるときに第2規制部に当接する第2部分と、第2部分よりも下方に位置し、幅方向の外側を向いて幅方向の内側かつ下方に傾斜する蓋傾斜面であって、蓋体が退避位置から閉塞位置に移動する途中で第2規制部に当接可能な蓋傾斜面と、を有していることが望ましい。
【0029】
この場合、蓋体が退避位置から閉塞位置に移動するときに、各案内部の第2規制部は、蓋体の第2被規制部の蓋傾斜面に当接することで、蓋体を幅方向において適切な位置に案内し易くなる。そして、蓋体が閉塞位置にあるときに、各案内部の第2規制部は、第2被規制部の第2部分に当接することで、蓋体の幅方向の位置ずれを確実性高く規制できる。その結果、この食器洗浄機は、洗浄槽に対する蓋体の幅方向の位置決め精度を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の食器洗浄機によれば、洗浄槽に対する蓋体の幅方向の位置決め精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、実施例の食器洗浄機の模式断面図であって、洗浄槽が収容位置にあり、蓋体が閉塞位置にある状態を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1と同様の模式断面図であって、洗浄槽が引き出し位置にあり、蓋体が退避位置にある状態を示す図である。
【
図7】
図7は、当接部、被案内凸部及び案内部を主に示す部分斜視図である。
【
図8】
図8は、当接部、被案内凸部及び案内部を主に示す部分斜視図である。
【
図10】
図10は、収容位置にある洗浄槽と、閉塞位置にある蓋体とを示す部分斜視図であって、第1被規制部及び第2被規制部を説明する図である。
【
図11】
図11は、洗浄槽が収容位置に向けて移動するときの当接部、被案内凸部及び案内部の作用を説明する部分上面図である。
【
図12】
図12は、洗浄槽が
図11からさらに収容位置に向けて移動するときの当接部、被案内凸部及び案内部の作用を説明する部分上面図である。
【
図13】
図13(a)~(c)は、
図10のA-A断面を示す部分断面図である。
図13(a)は、洗浄槽が収容位置に向けて移動する途中であって、蓋体が退避位置にある状態を示す図である。
図13(b)は、洗浄槽が収容位置に向けて移動する途中であって、蓋体が退避位置から閉塞位置に向けて移動する途中の状態を示す図である。
図13(c)は、洗浄槽が収容位置にあり、蓋体が閉塞位置にある状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0033】
(実施例)
図1に示すように、実施例の食器洗浄機1は、本発明の食器洗浄機の具体的態様の一例である。食器洗浄機1は、システムキッチンの天板CT1の下方に設置された前面引き出し式のものである。
【0034】
本実施例では、システムキッチンを利用するユーザが筐体9と対向する側、すなわち
図1の紙面左側を筐体9の前方と規定し、その反対側である
図1の紙面右側を筐体9の後方と規定する。また、ユーザが筐体9に対向する状態で左に来る側、すなわち
図1の奥側を筐体9の左方と規定し、右に来る側、すなわち
図1の紙面手前側を筐体9の右方と規定する。そして、
図2以降の各図に示す前後方向、左右方向及び上下方向は、全て
図1に対応させて表示する。本実施例では、食器洗浄機1の幅方向は、左右方向である。
【0035】
<筐体、洗浄槽及び蓋体>
食器洗浄機1は、筐体9、洗浄槽7及び蓋体8を備えている。
【0036】
筐体9は略箱状体である。筐体9の上は、天板CT1に覆われている。筐体9は、筐体開口9Hを有している。筐体開口9Hによって、筐体9の前部の上端から下端までの広い範囲が開放されている。筐体開口9Hは、筐体9内と外部とを連通させている。
【0037】
洗浄槽7は、筐体9内に収容されている。
図1に示す洗浄槽7の位置を収容位置とする。洗浄槽7は、収容位置にある状態で、筐体開口9Hを閉塞している。
【0038】
洗浄槽7は、略箱状体である。本実施例では、洗浄槽7は、加熱された洗浄水や乾燥用の加熱空気の温度域において耐熱性を有する樹脂成形品である。
【0039】
洗浄槽7と筐体9との間には、図示しないスライドレール機構が配置されている。
図2に示すように、洗浄槽7は、そのスライドレール機構によって筐体9に対して前後方向にスライド可能となっている。
【0040】
図3及び
図4に示すように、洗浄槽7は、槽開口7Hを有している。槽開口7Hによって、洗浄槽7の上方が開放されている。また、洗浄槽7は、槽開口7Hを囲む環状の周縁7Eを有している。
【0041】
洗浄槽7における前端かつ上端と、周縁7Eとの間に位置する部分には、樹脂製のカバー部材77が組み付けられている。カバー部材77の後端縁は、周縁7Eの前端縁に隣接している。
【0042】
図1に示すように、洗浄槽7の前部の上端には、取っ手7Gが設けられている。ユーザが取っ手7Gを把持し、手動操作で洗浄槽7を
図1に示す収容位置から筐体9の前方にスライドさせることにより、
図2に示すように、洗浄槽7が筐体開口9Hを介して筐体9の外部に露出する引き出し位置に移動する。また、
図2に示す引き出し位置にある洗浄槽7をユーザが手動操作で筐体9の後方にスライドさせることにより、洗浄槽7が
図1に示す収容位置に復帰する。
【0043】
図2に示すように、洗浄槽7が引き出し位置に移動した状態で、ユーザは槽開口7Hを介して、食器類TW1を洗浄槽7に収容したり、洗浄槽7から取り出したりすることができる。
【0044】
食器類TW1は、例えば、茶碗、皿、グラス等の飲食用器や、箸、スプーン、フォーク等の飲食用具等である。食器類TW1は、本発明の「被洗浄物」の一例である。
【0045】
図1に示すように、洗浄槽7内の底部には、食器類TW1を洗浄する洗浄水を貯水可能な貯水部71が設けられている。また、洗浄槽7内には、食器かご70が配置されている。食器かご70には、食器類TW1が載置される。
【0046】
図1及び
図2に示すように、蓋体8は、筐体9内の上部に配置されている。
図5及び
図6に示すように、蓋体8は略矩形平板であり、補強のためのリブや凹凸が形成されている。本実施例では、蓋体8は、洗浄槽7と同様に、加熱された洗浄水や乾燥用の加熱空気の温度域において耐熱性を有する樹脂成形品である。
【0047】
蓋体8の左右の側端縁8S及び前端縁には、補強枠8W1、8W2、8W3が位置している。補強枠8W1~8W3は、断面略コ字形状に折り曲げられた鋼板である。補強枠8W1~8W3は、蓋体8の反りや捩じれ等の変形を抑制するように蓋体8を補強している。
【0048】
図5に示すように、蓋体8の下面には、封止部材80が設けられている。封止部材80は、その上部分が蓋体8の左右の側端縁8S、前端縁及び後端縁に凹設された嵌合溝に嵌め込まれ、補強枠8W1~8W3によってその嵌合溝から外れないように保持されている。
【0049】
封止部材80は、洗浄槽7における槽開口7Hを囲む周縁7Eに整合する環状である。封止部材80は、ゴム等の弾性体や独立気泡の発泡体等によって構成される。
【0050】
封止部材80の下部分は、例えば断面円環形状とされており、槽開口7Hを囲む周縁7Eに当接したときに、上下方向に潰れながら水平方向に拡幅するように変形し易くなっている。
【0051】
図1に示すように、蓋体8は、洗浄槽7が収容位置にあるときに槽開口7Hを閉塞する閉塞位置にある。この際、封止部材80は、槽開口7Hを囲む周縁7Eと、閉塞位置にある蓋体8との隙間を封止する。
図3において、周縁7Eにおける封止部材80が当接する領域E1を網掛けして図示する。
【0052】
蓋体8は、
図1に示す閉塞位置と、
図2に示すように、筐体9内で閉塞位置から最も上方かつ前方に離れて槽開口7Hを開放する退避位置と、の間で移動可能である。
【0053】
<昇降機構>
図1及び
図2に示すように、食器洗浄機1は、昇降機構5をさらに備えている。昇降機構5は、以下に詳しく説明するように、洗浄槽7が
図1に示す収容位置と
図2に示す引き出し位置との間で移動するのに連動し、蓋体8を
図1に示す閉塞位置と、
図2に示す退避位置との間で移動させる。
【0054】
【0055】
【0056】
<引っ張りコイルバネ>
図6に示すように、引っ張りコイルバネ59は、蓋体8の左方の側端縁8S側と、蓋体8の右方の側端縁8S側とに一対設けられている。各引っ張りコイルバネ59のそれぞれの後端は、補強枠8W1、8W2の中間部に凸設された係止片8W1A、8W2Aに係止されている。
【0057】
図1及び
図2に示すように、各引っ張りコイルバネ59のそれぞれの前端は、筐体9の上壁の前端に係止されている。各引っ張りコイルバネ59は、筐体9と蓋体8との間に設けられて、蓋体8を
図2に示す退避位置に向けて前向きに付勢している。
【0058】
<被案内凸部>
図5に示すように、被案内凸部85は、蓋体8の左右の側端縁8Sの前端側及び後端側に二対設けられている。各被案内凸部85は、金属製の略円柱部材である。各被案内凸部85の先端は、抜け止めのためにフランジ状に拡径されている。
【0059】
前方に位置する一対の被案内凸部85は、補強枠8W1、8W2の前端側に締結されて、蓋体8の左右の側端縁8Sから互いに離間するように幅方向の外側に突出している。後方に位置する一対の被案内凸部85は、補強枠8W1、8W2の後端側に締結されて、蓋体8の左右の側端縁8Sから互いに離間するように幅方向の外側に突出している。
【0060】
<案内部>
図7に示すように、案内部50は、各被案内凸部85に一対一で対応するように筐体9の側壁9Sの内壁面9Wに支持されている。案内部50は、筐体9の側壁9Sと、蓋体8の左右の側端縁8Sとの間に配置されている。
図8では、筐体9の側壁9Sの図示を省略しているが、側壁9Sは、案内部50に対して紙面手前側に位置している。
【0061】
案内部50は、前方に位置する一対の被案内凸部85に対応して一対設けられ、また、後方に位置する一対の被案内凸部85に対応して一対設けられている。
【0062】
図7及び
図8では、筐体9内の前方かつ右方に位置する案内部50を示している。
図11及び
図12では、筐体9内の前方かつ左右に位置する一対の案内部50を示している。
図13~
図15では、筐体9内の後方かつ右方に位置する案内部50を示している。筐体9内の後方かつ左方に位置する案内部50についても同様であるので、図示は省略する。
【0063】
図8に示す支持軸50Xは、幅方向に短く延びる多段円柱であり、幅方向の外側の端部が筐体9の側壁9Sに締結されている。
図8に二点鎖線で示す規制片9S1は、側壁9Sから幅方向の内側に突出するように切り起こされた小片である。
図8に二点鎖線で示す規制端縁9S2は、規制片9S1を切り起こすための切り欠きの周縁の一部である。
【0064】
案内部50は支持軸50Xに外挿されるとともに、その後部分に係合する規制片9S1及び規制端縁9S2によって支持軸50Xから外れないように規制されることにより、側壁9Sの内壁面9Wに支持されている。
【0065】
本実施例では、案内部50は樹脂成形品であり、凸部51Tと、一対の変形部51U、51Dとを一体に有している。
【0066】
図8及び
図9に示すように、凸部51Tは、案内部50の下端部から幅方向の内側に突出する円柱である。一対の変形部51U、51Dはそれぞれ略U字形状である。、
図8に示すように、規制片9S1を上下方向において挟んでいる。
【0067】
案内部50は、変形部51U、51Dが弾性変形することにより、支持軸50X周りに小さい角度範囲で揺動可能である。
【0068】
図7~
図9に示すように、案内部50の上部分には、案内溝58が形成されている。案内溝58は、前端58Fから後向きに下り傾斜するように延び、さらに下り傾斜角度が徐々に小さくなっておおよそ水平になるように後向きに延びている。
図7及び
図8に示すように、案内溝58は、被案内凸部85を内挿している。
【0069】
蓋体8が
図1に示す閉塞位置と
図2に示す退避位置との間で移動するときに、被案内凸部85が案内溝58に沿って摺動する。
図7及び
図8に示す蓋体8の位置は閉塞位置であって、被案内凸部85が案内溝58の前端58Fから後方に離れている。
図7及び
図8に示す洗浄槽7の位置は収容位置である。
【0070】
図10に示す蓋体8の位置も閉塞位置であり、
図10に示す洗浄槽7の位置も収容位置である。
【0071】
図11及び
図12に示す蓋体8の位置は退避位置であって、蓋体8が各引っ張りコイルバネ59に付勢されて被案内凸部85が案内溝58の前端58Fに当て止まっている。
図11及び
図12に示す洗浄槽7の状態は、引き出し位置から収容位置に向けて移動する過渡的な状態である。
【0072】
<カム部>
図4、
図8、
図10及び
図13に示すように、カム部57は、各案内部50に一対一で対応するように洗浄槽7の左右の側壁7Sに一体に形成されている。カム部57は、洗浄槽7の左右の側壁7Sから幅方向の外側に突出するリブによって構成されている。
【0073】
カム部57は、前方に位置する一対の案内部50に対応して一対設けられ、また、後方に位置する一対の案内部50に対応して一対設けられている。
【0074】
図4及び
図8では、洗浄槽7の右方の側壁7Sの前部分に位置するカム部57を示している。
図10及び
図13では、洗浄槽7の右方の側壁7Sの後部分に位置するカム部57を示している。洗浄槽7の右方の側壁7Sの前部分及び後部分に位置する2つのカム部57についても同様であるので、図示を省略する。
【0075】
カム部57の下面は、後端から前向きに下り傾斜した後、水平に前向きに延びている。洗浄槽7が
図2に示す引き出し位置から
図1に示す収容位置に向かって移動し、後述するように洗浄槽7の一対の当接部78によって蓋体8が後方に押圧されると、各被案内凸部85が各案内溝58に沿って後向きに下り傾斜するように摺動する。これにより、蓋体8が下降し、封止部材80が洗浄槽7の周縁7Eに当接する。
【0076】
この際、
図8及び
図13(c)に示すように、カム部57の下面が案内部50の凸部51Tの外周面に上から当接する。これにより、案内部50は、封止部材80が圧縮変形するときの復元力に確実性高く対抗できる。その結果、洗浄槽7が収容位置に到達したときに、封止部材80は、槽開口7Hを囲む周縁7Eと、閉塞位置にある蓋体8との隙間を確実性高く封止できる。
【0077】
<当接部>
図4及び
図11に示すように、当接部78は、洗浄槽7に一対設けられている。当接部78は、洗浄槽7における槽開口7Hを囲む周縁7Eに一体に形成されている。
【0078】
左方の当接部78は、周縁7Eにおける槽開口7Hよりも前方かつ左方の位置から上向きに突出している。右方の当接部78は、周縁7Eにおける槽開口7Hよりも前方かつ右方の位置から上向きに突出している。各当接部78における後方を向く面は、上下方向及び幅方向に延びる平坦面である。
【0079】
カバー部材77には、一対の補強凸部77Aが一体に形成されている。左方の補強凸部77Aは、カバー部材77における後方かつ左方の角部から上向きに突出し、左方の当接部78に前方から当接して、左方の当接部78を補強している。右方の補強凸部77Aは、カバー部材77における後方かつ右方の角部から上向きに突出し、右方の当接部78に前方から当接して、右方の当接部78を補強している。
【0080】
<被当接部>
図6及び
図11に示すように、被当接部88は、蓋体8に一対設けられている。左方の被当接部88は、蓋体8における前方かつ左方の角部であって左方の当接部78に対応する位置に凹設されている。右方の被当接部88は、蓋体8における前方かつ右方の角部であって右方の当接部78に対応する位置に凹設されている。
【0081】
各被当接部88における前方を向く面は、各当接部78に当接可能に上下方向及び幅方向に延びる平坦面である。
【0082】
図11に示すように、洗浄槽7が引き出し位置から収容位置に向けて移動する過渡的な状態において、各当接部78が各被当接部88に接近する。
【0083】
洗浄槽7が
図11に示す状態からさらに収容位置に向けて移動し、
図12に示す状態になると、各当接部78における後方を向く面が各被当接部88における前方を向く面に当接することで、洗浄槽7に対する蓋体8の前後方向の位置が規制される。
【0084】
この状態で、各当接部78における幅方向の内側を向く面と、各被当接部88に幅方向の内側で隣接する斜面との間には、充分な隙間が確保されている。
【0085】
その後、各当接部78は、実質的に蓋体8を後方に押圧する押圧部となって、各引っ張りコイルバネ59に抗して蓋体8を
図1に示す閉塞位置に移動させる。
【0086】
<第1規制部、第2規制部、第1被規制部及び第2被規制部>
食器洗浄機1は、洗浄槽7が
図2に示す引き出し位置に移動するのに連動して蓋体8を
図2に示す退避位置に移動させるときに、洗浄槽7に対する蓋体8の幅方向の位置決め精度を向上させるため、以下の構成を有している。
【0087】
【0088】
【0089】
図9に示すように、第1規制部100は、各案内部50の凸部51Tにおける幅方向の内側の端部に形成されている。第1規制部100は、第1傾斜面101を有している。第1傾斜面101は、幅方向の内側を向いて幅方向の内側かつ後方に傾斜している。
【0090】
第2規制部200は、各案内部50における第1規制部100よりも上方に位置し、幅方向の内側を向く部分に形成されている。第2規制部200は、第2傾斜面202及び第3傾斜面203を有している。
【0091】
第2傾斜面202は、案内溝58の後端よりも上方かつ後方に位置し、幅方向の内側を向いて幅方向の外側かつ上方に傾斜している。第2傾斜面202は、上方で前後方向に延びる第1辺と、第1辺の後端に接続して第1辺と直交し、幅方向の内側かつ下方に延びる第2辺と、第1辺の前端と第2辺の下端とを接続する斜辺と、を有する略直角三角形状である。
【0092】
第3傾斜面203は、第2傾斜面202の斜辺に接続し、第2傾斜面202よりも下方に延びている。第3傾斜面203の下部分は、案内溝58の後端よりも後方に位置している。第3傾斜面203は、幅方向の内側を向いて幅方向の内側かつ後方に傾斜している。第3傾斜面203は、略台形状である。
【0093】
図8、
図10、
図13及び
図14に示すように、第1被規制部110は、各案内部50の第1規制部100に一対一で対応するように洗浄槽7の側壁7Sに一体に形成されている。第1被規制部110は、洗浄槽7の側壁7Sから幅方向の外側に突出し、かつ前後方向に延びるリブ110Rを有している。
【0094】
第1被規制部110は、前方に位置する一対の案内部50の第1規制部100に対応して一対設けられ、また、後方に位置する一対の案内部50の第1規制部100に対応して一対設けられている。
【0095】
図8では、洗浄槽7の右方の側壁7Sの前部分に位置する第1被規制部110を示している。
図10、
図13及び
図14では、洗浄槽7の右方の側壁7Sの後部分に位置する第1被規制部110を示している。洗浄槽7の左方の側壁7Sの前部分及び後部分に位置する2つの第1被規制部110についても同様であるので、図示を省略する。
【0096】
図8及び
図10に示すように、第1被規制部110は、第1部分111及び槽傾斜面115を有している。第1部分111は、リブ110Rにおける前後方向の中間部に位置する部分であって、
図8、
図13(c)及び
図14(c)に示すように、洗浄槽7が収容位置にあるときに第1規制部100の第1傾斜面101の後端に当接する部分である。
【0097】
第1規制部100は、洗浄槽7が収容位置にあるときに、第1傾斜面101の後端が幅方向の外側から洗浄槽7の側壁7Sに、より詳しくは、第1被規制部110の第1部分111に当接することで洗浄槽7の幅方向の位置ずれを規制する。
【0098】
この際、第1傾斜面101の後端は、第1被規制部110の第1部分111に必ず当接する訳ではなく、設計上許容された僅かな隙間を有して第1被規制部110の第1部分111に対向する場合もある。
【0099】
図8及び
図10に示すように、槽傾斜面115は、リブ110Rの後端部分であって、第1部分111よりも後方に位置している。槽傾斜面115は、幅方向の外側を向いて幅方向の内側かつ後方に傾斜している。
【0100】
図14(a)及び(b)に示すように、槽傾斜面115は、洗浄槽7が引き出し位置から収容位置に移動する途中で、洗浄槽7の幅方向の位置ずれが大きい場合に、第1規制部100の第1傾斜面101に幅方向の内側から当接可能である。リブ110Rも、洗浄槽7が引き出し位置から収容位置に移動する途中で、第1規制部100の第1傾斜面101に幅方向の内側から当接可能である。
【0101】
換言すると、洗浄槽7が引き出し位置から収容位置に移動するときに、第1規制部100の第1傾斜面101は、第1被規制部110の槽傾斜面115及びリブ110Rに幅方向の外側から当接可能である。
【0102】
図8、
図10、
図13及び
図15に示すように、第2被規制部220は、各案内部50の第2規制部200に一対一で対応するように蓋体8の左右の側端縁8Sの補強枠8W1、8W2に形成されている。
【0103】
第2被規制部220は、前方に位置する一対の案内部50の第2規制部200に対応して一対設けられ、また、後方に位置する一対の案内部50の第2規制部200に対応して一対設けられている。
【0104】
図8では、蓋体8の右方の側端縁8Sの前部分に位置する第2被規制部220を示している。
図10、
図13及び
図15では、蓋体8の右方の側端縁8Sの後部分に位置する第2被規制部220を示している。蓋体8の左方の側端縁8Sの前部分及び後部分に位置する2つの第2被規制部220についても同様であるので、図示を省略する。
【0105】
図8、
図10及び
図13に示すように、第2被規制部220は、蓋体8の側端縁8Sにおける被案内凸部85よりも後方に位置している。第2被規制部220は、第2部分222及び蓋傾斜面225を有している。第2部分222は、蓋体8の側端縁8Sの上部分であって鉛直方向、かつ前後方向に延びて幅方向の外側を向く平坦面であって、
図13(c)及び
図15(c)に示すように、蓋体8が閉塞位置にあるときに第2規制部200の第3傾斜面203の後端に当接する部分である。
【0106】
第2規制部200は、蓋体8が閉塞位置にあるときに、第3傾斜面203の後端が幅方向の外側から蓋体8の左右の側端縁8Sに、より詳しくは、第2被規制部220の第2部分222に当接することで蓋体8の幅方向の位置ずれを規制する。
【0107】
この際、第3傾斜面203の後端は、第2被規制部220の第2部分222に必ず当接する訳ではなく、設計上許容された僅かな隙間を有して第2被規制部220の第2部分222に対向する場合もある。
【0108】
図8、
図10及び
図13に示すように、蓋傾斜面225は、第2部分222よりも下方に位置している。蓋傾斜面225は、幅方向の外側を向いて幅方向の内側かつ下方に傾斜している。
【0109】
図13(a)及び(b)に示すように、蓋傾斜面225は、蓋体8が退避位置から閉塞位置に移動する途中で、蓋体8の幅方向の位置ずれが大きい場合に、第2規制部200の第2傾斜面202に幅方向の内側から当接可能である。
【0110】
図15(a)~(c)に示すように、第2規制部200の第3傾斜面203は、蓋体8が退避位置から閉塞位置に移動するときに、蓋体8の左右の側端縁8Sに、より詳しくは、第2被規制部220の蓋傾斜面225及び第2部分222に幅方向の内側から当接可能である。
【0111】
換言すると、蓋体8が退避位置から閉塞位置に移動するときに、第2規制部200の第2傾斜面202及び第3傾斜面203は、第2被規制部220の蓋傾斜面225及び第2部分222に幅方向の外側から当接可能である。
【0112】
<給水管、給水電磁弁、排水管、ノズル及びポンプ>
図1に示すように、食器洗浄機1は、給水管P1、給水電磁弁69、排水管P2、ノズル61及びポンプ62をさらに備えている。
【0113】
給水管P1は、食器洗浄機1の外部に設けられた図示しない給水源から洗浄槽7に水を供給する。給水電磁弁69は、給水管P1を開閉して洗浄槽7への水の供給と停止とを切り替える。排水管P2は、洗浄槽7内の洗浄水を食器洗浄機1の外部に排水する。
【0114】
ノズル61は、洗浄槽7内に配置されている。ポンプ62は、洗浄槽7の貯水部71の下部に組み付けられている。
【0115】
ノズル61は、複数の吐出孔から洗浄槽7内に洗浄水を噴射可能である。ノズル61の噴射方向は、洗浄槽7内で重ねられた複数の食器類TW1を確実に洗浄したり、洗浄槽7の内壁面や食器かご70を洗浄したりするために、様々な方向に変化するようになっている。
【0116】
ポンプ62は、正転作動時、洗浄槽7の貯水部71に貯められた洗浄水をノズル61に供給して洗浄槽7内に噴射させる。その噴射された洗浄水は貯水部71に貯められるので、ポンプ62によって繰り返しノズル61に供給される。また、ポンプ62は、逆転作動時、洗浄槽7内の洗浄水を残菜フィルタ67及び排水管P2を介して食器洗浄機1の外部に排水する。
【0117】
<ヒータ、温度センサ及び乾燥ファン>
食器洗浄機1は、ヒータ63、温度センサ31及び乾燥ファン68をさらに備えている。
【0118】
ヒータ63は、洗浄槽7の貯水部71に貯水された洗浄水、又は洗浄槽7内の空気を加熱する。温度センサ31は、洗浄槽7の貯水部71に貯水された洗浄水、又は洗浄槽7内の空気の温度をヒータ63の近傍において検知する。
【0119】
乾燥ファン68は、ヒータ63を作動させた状態で回転作動することにより、加熱された空気を洗浄槽7内に送り込んで食器類TW1を乾燥させる。乾燥ファン68により洗浄槽7内に送り込まれた空気は、洗浄槽7の前面に開口して洗浄槽7内と連通する排気通路79を経由して食器洗浄機1の外部に排気される。
【0120】
<洗浄運転>
上記構成である食器洗浄機1では、ユーザが食器類TW1を洗浄槽7内に収容するために洗浄槽7を
図2に示す収容位置まで引き出すことにより、昇降機構5が洗浄槽7の移動に連動して蓋体8を
図2に示す退避位置に移動させる。
【0121】
ユーザが食器類TW1を洗浄槽7内に収容して洗浄運転の設定及び開始指示操作を行った後に洗浄槽7を
図1に示す収容位置まで押し込むことにより、昇降機構5が洗浄槽7の移動に連動して蓋体8を
図1に示す閉塞位置に移動させる。
【0122】
そして、図示しない制御部は、洗浄槽7が収容位置でロックされて槽開口7Hが蓋体8によって閉塞されたことをセンサ等によって確認した後、ポンプ62を作動させ、ノズル61から洗浄槽7内に洗浄水を噴射する洗浄運転を実行する。
【0123】
制御部は、洗浄運転において、洗剤を含む洗浄水を用いた洗浄工程と、清浄な洗浄水を用いたすすぎ工程とを順次実行し、洗浄槽7内の食器類TW1を綺麗に洗浄する。制御部は、洗浄運転の最後に乾燥工程を実行し、ヒータ63及び乾燥ファン68を適宜作動させて洗浄槽7内の食器類TW1を乾燥させた後、洗浄運転を終了する。
【0124】
<作用効果>
実施例の食器洗浄機1において、昇降機構5は、洗浄槽7が
図2に示す引き出し位置から
図1に示す収容位置に移動するときに、
図11及び
図12に示す過渡的な状態になって、洗浄槽7の各当接部78を蓋体8の各被当接部88に接近させる。
【0125】
そして、
図12に示すように、昇降機構5は、洗浄槽7の各当接部78が蓋体8の各被当接部88に当接することで、洗浄槽7に対する蓋体8の前後方向の位置を規制する。
【0126】
次に、各当接部78は、実質的に蓋体8を後方に押圧する押圧部となって、各引っ張りコイルバネ59に抗して蓋体8を
図1に示す閉塞位置に移動させる。この際、各案内部50が被案内凸部85を案内溝58に沿って後方かつ下方に摺動させるので、蓋体8が確実性高く閉塞位置に移動できる。
【0127】
そして、
図13(c)及び
図14(c)に示すように、各案内部50の第1規制部100は、洗浄槽7が収容位置にあるときに、第1傾斜面101の後端が幅方向の外側から洗浄槽7の側壁7Sに、より詳しくは、第1被規制部110の第1部分111に当接することで洗浄槽7の幅方向の位置ずれを規制する。
【0128】
また、
図13(c)及び
図15(c)に示すように、各案内部50における第1規制部100よりも上方に位置する第2規制部200は、蓋体8が閉塞位置にあるときに、第3傾斜面203の後端が幅方向の外側から蓋体8の左右の側端縁8Sに、より詳しくは、第2被規制部220の第2部分222に当接することで蓋体8の幅方向の位置ずれを規制する。
【0129】
その一方、昇降機構5は、洗浄槽7が
図1に示す収容位置から
図2に示す引き出し位置に移動するときに、各当接部78が前方に移動して蓋体8の各被当接部88から離れることで、各引っ張りコイルバネ59が蓋体8を
図2に示す退避位置に移動させる。
【0130】
こうして、この食器洗浄機1は、蓋体8を洗浄槽7に対して幅方向で位置決めするときに、第1規制部100及び第2規制部200を有する各案内部50を介在させた位置決めを行う。これにより、筐体9に移動可能に支持された洗浄槽7の筐体9に対する幅方向の遊びがあるとしても、その遊びが洗浄槽7に対する蓋体8の幅方向の位置決めに影響を及ぼし難い。
【0131】
その結果、この食器洗浄機1は、洗浄槽と蓋体とが筐体及び各リンクを介在させた位置決めを行う上記従来の食器洗浄機と比較して、誤差の累積を抑制できる。
【0132】
したがって、実施例の食器洗浄機1は、洗浄槽7に対する蓋体8の幅方向の位置決め精度を向上させることができる。その結果、この食器洗浄機1は、洗浄槽7が収容位置に到達したときに、
図3に示す領域E1に精度良く当接する封止部材80によって、槽開口7Hを囲む周縁7Eと、閉塞位置にある蓋体8との隙間を確実性高く封止でき、その隙間からの水漏れを確実性高く抑制できる。そして、洗浄槽7又は蓋体8について経年劣化による撓みや変形が発生するとしても、封止部材80がその撓みや変形をある程度吸収できるので、槽開口7Hを囲む周縁7Eと、閉塞位置にある蓋体8との隙間を封止する状態を長期に亘って安定的に維持できる。
【0133】
また、この食器洗浄機1において、
図13及び
図14に示すように、第1規制部100は、第1傾斜面101を有している。この構成により、洗浄槽7が引き出し位置から収容位置に移動するときに、各案内部50の第1規制部100は、第1傾斜面101が洗浄槽7の側壁7Sに形成された第1被規制部110に当接することで、洗浄槽7を幅方向において適切な位置に案内し易くなる。その結果、この食器洗浄機1は、洗浄槽7に対する蓋体8の幅方向の位置決め精度を一層向上させることができる。
【0134】
さらに、この食器洗浄機1において、第1被規制部110は、第1部分111及び槽傾斜面115を有している。この構成により、洗浄槽7が引き出し位置から収容位置に移動するときに、各案内部50の第1規制部100は、第1傾斜面101が第1被規制部110の槽傾斜面115に当接することで、洗浄槽7を幅方向において適切な位置に案内し易くなる。そして、洗浄槽7が収容位置にあるときに、各案内部50の第1規制部100は、第1傾斜面101の後端が第1被規制部110の第1部分111に当接することで、洗浄槽7の幅方向の位置ずれを確実性高く規制できる。その結果、この食器洗浄機1は、洗浄槽7に対する蓋体8の幅方向の位置決め精度を一層向上させることができる。
【0135】
また、この食器洗浄機1において、
図13及び
図15に示すように、第2規制部200は、第2傾斜面202及び第3傾斜面203を有している。この構成により、蓋体8が退避位置から閉塞位置に移動するときに、各案内部50の第2規制部200は、第2傾斜面202及び第3傾斜面203が蓋体8の左右の側端縁8Sに形成された第2被規制部220に当接することで、蓋体8を幅方向において適切な位置に案内し易くなる。その結果、この食器洗浄機1は、洗浄槽7に対する蓋体8の幅方向の位置決め精度を一層向上させることができる。
【0136】
また、この食器洗浄機1において、第2被規制部220は、第2部分222及び蓋傾斜面225を有している。この構成により、蓋体8が退避位置から閉塞位置に移動するときに、各案内部50の第2規制部200は、第2傾斜面202及び第3傾斜面203が第2被規制部220の蓋傾斜面225及び第2部分222に当接することで、蓋体8を幅方向において適切な位置に案内し易くなる。そして、蓋体8が閉塞位置にあるときに、各案内部50の第2規制部200は、第3傾斜面203の後端が第2被規制部220の第2部分222に当接することで、蓋体8の幅方向の位置ずれを確実性高く規制できる。その結果、この食器洗浄機1は、洗浄槽7に対する蓋体8の幅方向の位置決め精度を一層向上させることができる。
【0137】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0138】
実施例では、昇降機構5が第1規制部100及び第2規制部200を有する案内部50を二対有しているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、実施例について、前方又は後方に位置する一対の案内部50から第1規制部100及び第2規制部200を削除し、昇降機構5が第1規制部100及び第2規制部200を有する案内部50を一対有するように変更した構成も本発明に含まれる。また、実施例について、前方又は後方に位置する一対の被案内凸部85と一対の案内部50との組を削除し、残った一対の被案内凸部85と一対の案内部50との組について、筐体9内における前後方向の位置を適宜調整するように変更した構成も本発明に含まれる。
【0139】
実施例では、第1規制部100が突出する形状であるが、本発明はこの構成には限定されず、突出しない摺接面等、どのような形状であってもよい。第2規制部200、第1被規制部110についても同様である。
【0140】
実施例では、第2被規制部220が突出しない摺接面であるが、本発明はこの構成には限定されず、突出する凸部やリブ等、どのような形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は例えば、食器洗浄機、乾燥機能を備えた食器洗浄乾燥機、又は厨房設備等に利用可能である。
【符号の説明】
【0142】
1…食器洗浄機
9…筐体
7H…槽開口
TW1…被洗浄物(食器類)
7…洗浄槽
8…蓋体
5…昇降機構
59…付勢手段(引っ張りコイルバネ)
78…当接部
8S…蓋体の側端縁
85…被案内凸部
9W…筐体の内壁面
50…案内部
58…案内溝
7S…洗浄槽の側壁
100…第1規制部
200…第2規制部
101…第1傾斜面
110…第1被規制部
111…第1部分
115…槽傾斜面
202…第2傾斜面
203…第3傾斜面
220…第2被規制部
222…第2部分
225…蓋傾斜面