(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049797
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ガスタービン
(51)【国際特許分類】
F23R 3/46 20060101AFI20240403BHJP
F23R 3/26 20060101ALI20240403BHJP
F02C 3/05 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F23R3/46
F23R3/26 Z
F02C3/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156252
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】鴨井 靖治
(72)【発明者】
【氏名】塩田 智紀
(72)【発明者】
【氏名】西本 真仏
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の燃焼室の温度分布のバラツキを抑制できるガスタービンを提供する。
【解決手段】ガスタービン10は、燃焼器18、空気導出部40、外周カバー部74、内周カバー部21及び燃料供給部23を備える。空気導出部40の導出口44は、燃焼器18の一端部の径方向外方に位置する。燃焼器18は、互いに隣接する燃焼筒56を繋ぐように設けられて空気を空気流路78から連通路96を介して内側空間86へと案内する案内壁部62を有する。燃焼筒56の外周面には、内側空間86に開口して内側空間86の空気を燃焼室66の下流側に流入させる貫通孔64が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサと、
環状に配置された複数の燃焼筒を有する燃焼器と、
前記コンプレッサから供給された空気を前記燃焼器に導出する空気導出部と、
前記燃焼器の径方向外方から当該燃焼器を覆う環状の外周カバー部と、
前記燃焼器の径方向内方から当該燃焼器を覆う環状の内周カバー部と、
前記複数の燃焼筒の燃焼室の上流部に燃料を供給する複数の燃料供給部と、
を備えたガスタービンであって、
前記燃焼器は、前記燃焼器の軸方向の一端部である第1端部と、前記軸方向の他端部である第2端部とを有し、
前記空気導出部の導出口は、前記第1端部の径方向外方に位置し、
前記燃焼器と前記外周カバー部との間には、前記空気導出部から導かれた前記空気を前記第1端部から前記第2端部へ向けて流す空気流路が形成され、
前記燃焼器と前記内周カバー部との間には、前記燃焼器の前記第2端部に設けられた連通路を介して前記空気流路から前記空気が流入する内側空間が形成され、
前記複数の燃焼筒の各々には、前記燃焼器の前記第2端部に位置して前記空気流路を流通した前記空気を前記燃焼室の前記上流部に流入させるための空気流入口が設けられ、
前記燃焼器は、前記複数の燃焼筒における互いに隣接する燃焼筒を繋ぐように設けられて前記空気を前記空気流路から前記連通路を介して前記内側空間へと案内する案内壁部を有し、
前記複数の燃焼筒の各々の外周面には、前記内側空間に開口して前記内側空間の前記空気を前記燃焼室の下流側に流入させる貫通孔が形成されている、ガスタービン。
【請求項2】
請求項1記載のガスタービンであって、
前記貫通孔は、前記複数の燃焼筒の各々の径方向内方に向かって開口する、ガスタービン。
【請求項3】
請求項2記載のガスタービンであって、
前記複数の燃焼筒の各々には、前記貫通孔が2つ形成され、
2つの前記貫通孔は、前記複数の燃焼筒の各々の軸線を挟んで互いに向かい合うように配置されている、ガスタービン。
【請求項4】
請求項1記載のガスタービンであって、
前記燃焼器は、互いに隣接する前記燃焼筒の前記燃焼室を連通させる複数の連通管を有し、
前記案内壁部は、
前記複数の連通管から前記燃焼器の前記第1端部に向かって延出した第1壁部と、
前記複数の連通管から前記燃焼器の前記第2端部に向かって延出した第2壁部と、を含む、ガスタービン。
【請求項5】
請求項1記載のガスタービンであって、
前記外周カバー部は、互いに隣接する前記燃焼筒の間に入り込むように前記燃焼器の径方向内方に窪んだ外周凹部と前記複数の燃焼筒の外周面に沿うように前記燃焼器の径方向外方に突出した外周凸部とが前記燃焼器の周方向に交互に連続して配置されるようにして形成されている、ガスタービン。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のガスタービンであって、
前記案内壁部は、前記軸方向から見て、前記燃焼器の径方向内方又は径方向外方に向かって円弧状に突出している、ガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、燃焼器と、燃料供給部と、コンプレッサから供給された空気を燃焼器に導出する空気導出部と、環状の外周カバー部と、環状の内周カバー部とを備える(例えば、特許文献1参照)。燃焼器は、例えば、環状に配置された複数の燃焼筒を含む。燃料供給部は、複数の燃焼筒の燃焼室の上流部に燃料を供給する。各燃焼筒は、燃焼室の上流部に空気を流入させるための空気流入口を有する。外周カバー部は、燃焼器の径方向外方から燃焼器を覆う。内周カバー部は、燃焼器の径方向内方から燃焼器を覆う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したガスタービンにおいて、燃焼器の一端部の径方向外方に空気導出部の導出口を位置させると共に燃焼器の他端部に空気流入口を位置させた場合、空気導出部から導かれた空気は、燃焼器と外周カバー部との間の空気流路を流通する。すなわち、空気流路では、燃焼器の一端部から他端部に向かって空気が流通する。そのため、空気流路を流通する空気によって燃焼器の外周面を冷却できる。
【0005】
このような燃焼器では、空気流路の流路幅(燃焼器の径方向に沿った間隔)を狭く設定すると、空気流路を流通する空気の流速が大きくなるため燃焼器の外周面を効率よく冷却できる。
【0006】
また、例えば、空気流路の上流部(空気導入部に近い部分)を流通する空気を燃焼室の上流部よりも下流側に導入する貫通孔を各燃焼筒に形成すれば、貫通孔から燃焼室に導入される空気によって燃焼室内の燃焼ガスを希釈できる。
【0007】
しかしながら、空気流路の流路幅を狭く設定するほど、部品寸法のバラツキによって空気の流速が変化し易くなるため、貫通孔から燃焼室に流入する空気の流量及び入射角を均一にすることが難しく、複数の燃焼室の燃焼ガスの温度分布にバラツキが生じ易くなる。また、この場合、燃焼器と内周カバー部との間の内側空間に空気が滞留し易くなるため、燃焼筒の外周面をバランスよく冷却できないことがある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、コンプレッサと、環状に配置された複数の燃焼筒を有する燃焼器と、前記コンプレッサから供給された空気を前記燃焼器に導出する空気導出部と、前記燃焼器の径方向外方から当該燃焼器を覆う環状の外周カバー部と、前記燃焼器の径方向内方から当該燃焼器を覆う環状の内周カバー部と、前記複数の燃焼筒の燃焼室の上流部に燃料を供給する複数の燃料供給部と、を備えたガスタービンであって、前記燃焼器は、前記燃焼器の軸方向の一端部である第1端部と、前記軸方向の他端部である第2端部とを有し、前記空気導出部の導出口は、前記第1端部の径方向外方に位置し、前記燃焼器と前記外周カバー部との間には、前記空気導出部から導かれた前記空気を前記第1端部から前記第2端部へ向けて流す空気流路が形成され、前記燃焼器と前記内周カバー部との間には、前記燃焼器の前記第2端部に設けられた連通路を介して前記空気流路から前記空気が流入する内側空間が形成され、前記複数の燃焼筒の各々には、前記燃焼器の前記第2端部に位置して前記空気流路を流通した前記空気を前記燃焼室の前記上流部に流入させるための空気流入口が設けられ、前記燃焼器は、前記複数の燃焼筒における互いに隣接する燃焼筒を繋ぐように設けられて前記空気を前記空気流路から前記連通路を介して前記内側空間へと案内する案内壁部を有し、前記複数の燃焼筒の各々の外周面には、前記内側空間に開口して前記内側空間の前記空気を前記燃焼室の下流側に流入させる貫通孔が形成されている、ガスタービンである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空気導出部から導かれた空気は、空気流路及び連通路を介して内側空間に流入した後、貫通孔から燃焼室の下流側に導入される。これにより、内側空間に空気が滞留することを抑制できるため(内側空間を流れる空気の流量を増加できるため)、燃焼器から導出される空気の流量を増加することなく燃焼筒の外周面を効率よく冷却できる。また、空気流路の流路幅を比較的狭く設定した場合であっても、内側空間に導かれるまでに空気の流速が低下するため、部品寸法にバラツキがあっても貫通孔から燃焼室に流入する空気の流量及び入射角が変化し難い。よって、複数の燃焼室の温度分布のバラツキを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るガスタービンの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るガスタービン10は、例えば、発電機の動力源として用いられる。また、ガスタービン10は、航空機又は船舶の動力源として用いられてもよい。ガスタービン10は、タービン部12、コンプレッサ14、ディフューザ16、燃焼器18、ケーシング部材19、内周カバー部21、複数の燃料供給部23及び補機部材25を備える。
【0013】
タービン部12は、タービン20、シャフト22及びタービンハウジング24を有する。タービン20は、耐熱性を有する金属材料によって構成されている。タービン20は、ラジアルタービンとして構成されている。タービン20は、径方向外方から導入される燃焼ガスを受ける複数の羽根27を有する。
【0014】
シャフト22は、一方向(矢印X方向)に延在している。シャフト22の一端部(矢印X1方向の端部)には、例えば、図示しない出力軸が連結される。出力軸は、発電機の回転軸であってもよいし、航空機又は船舶のプロペラの回転軸等であってもよい。なお、ガスタービン10をジェットエンジンとして用いる場合等には、シャフト22の一端部に出力軸が連結されていなくてもよい。シャフト22の他端部(矢印X2方向の端部)は、タービン20に連結されている。シャフト22の軸線は、タービン20の回転軸線上に位置する。
【0015】
タービンハウジング24は、タービン20を収容する。タービンハウジング24は、タービン20を径方向外方から覆っている。タービンハウジング24は、タービンノズル26、第1ハウジング28及び第2ハウジング30を有する。タービンノズル26は、円環状に形成されている。タービンノズル26は、タービン20の羽根27を径方向外方から覆うように配置されている。タービンノズル26は、燃焼器18から導かれる燃焼ガスをタービン20の羽根27に導く。タービンノズル26は、第1ハウジング28及び第2ハウジング30によって支持されている。
【0016】
第1ハウジング28は、タービン20のうちタービンノズル26よりも矢印X1方向の部分(タービン20の一端部)を覆うように環状に形成されている。第2ハウジング30は、タービン20のうちタービンノズル26よりも矢印X2方向の部分(タービン20の他端部)を覆うように環状に形成されている。第2ハウジング30は、タービン20の他端部よりも矢印X2方向に延出している。第2ハウジング30の延出端には、矢印X2方向を向く排出口32が形成されている。排出口32は、タービンハウジング24内の燃焼ガスを外部に排出する。
【0017】
コンプレッサ14は、例えば、遠心圧縮機として構成されている。コンプレッサ14は、コンプレッサホイール34と、コンプレッサホイール34を収容するシュラウドケース36と有する。コンプレッサホイール34には、シャフト22が挿入される挿入孔38が形成されている。
【0018】
コンプレッサホイール34の回転軸線は、シャフト22の軸線上に位置する。コンプレッサホイール34は、シャフト22と一緒に回転できるようにシャフト22に連結されている。シャフト22は、タービン20の回転力をコンプレッサホイール34に伝達して当該コンプレッサホイール34を回転させる。
【0019】
シュラウドケース36は、コンプレッサホイール34を覆っている。シュラウドケース36には、シュラウドケース36の内部に外部の空気を流入させるための図示しない開口部が設けられている。シュラウドケース36の内部の空気は、コンプレッサホイール34が回転することにより圧縮される。
【0020】
ディフューザ16は、コンプレッサ14から供給された空気(圧縮空気)を燃焼器18に導出する空気導出部40と、空気導出部40を覆うディフューザハウジング42とを備える。空気導出部40は、コンプレッサホイール34の径方向外方に位置する。空気導出部40は、コンプレッサ14から供給された空気を矢印X2方向に導く。空気導出部40の導出口44は、矢印X2方向を向いている。
【0021】
燃焼器18は、耐熱性を有する金属材料によって環状に形成されている。燃焼器18の軸線Ax1は、タービン20及びシャフト22と同軸に配置されている。燃焼器18は、当該燃焼器18の軸方向の一端部(矢印X1方向の端部)である第1端部18a、軸方向の他端部(矢印X2方向の端部)である第2端部18bとを有する。
【0022】
図1~
図3に示すように、燃焼器18は、環状に形成されている。燃焼器18の第1端部18aの径方向外方には、空気導出部40の導出口44が位置している(
図1参照)。燃焼器18は、複数の燃焼筒56、複数の連通管58、環状導出部60、複数の案内壁部62及び複数の貫通孔64(希釈孔)を有する。
【0023】
複数の燃焼筒56は、燃焼器18の軸方向(矢印X方向)に延在している(
図1及び
図3参照)。
図2において、複数の燃焼筒56は、環状に配置されている。具体的に、
図2の例では、7つの燃焼筒56が燃焼器18の軸線Ax1の周りに等間隔に配置されている。なお、燃焼筒56の数は、7つに限定されない。燃焼筒56は、円筒状に形成されている。
【0024】
図1及び
図3に示すように、燃焼筒56の一端部(矢印X1方向の端部)には、環状導出部60が繋がっている。燃焼筒56の他端部(矢印X2方向の端部)には、燃焼筒56の内部の燃焼室66の上流部に空気を流入させるための空気流入口68を有する旋回流発生翼部69が設けられている。空気流入口68は、燃焼器18の第2端部18bに位置している。空気流入口68は、矢印X2方向を向いている。空気流入口68の孔径(直径)は、燃焼筒56の延在方向の中間部分の内径よりも小さい。
【0025】
図1において、旋回流発生翼部69は、内側筒体71、外側筒体73及び旋回羽根75を有する。内側筒体71の内部には、燃料供給部23の後述するインジェクタ84の先端部が位置する。内側筒体71とインジェクタ84の先端部との間には、空気が流通する空間が形成されている。内側筒体71と外側筒体73との間には、空気が流通する空間が形成されている。旋回羽根75は、空気流入口68から燃焼室66に流入する空気に旋回流を発生させる。旋回羽根75は、内側筒体71と外側筒体73との間に設けられている。なお、詳細な図示は省略するが、旋回羽根75は、内側筒体71とインジェクタ84の先端部との間にも設けられている。
【0026】
図2及び
図3において、連通管58は、燃焼器18の周方向に隣接する燃焼筒56を互いに連結する。連通管58の内孔70は、燃焼器18の周方向に隣接する燃焼筒56の燃焼室66を互いに連通させる(
図2参照)。連通管58は、燃焼筒56の延在方向の中間部分に位置している(
図2及び
図3)。
【0027】
環状導出部60は、円環状に形成されている(
図1及び
図3参照)。
図1において、環状導出部60は、タービンノズル26に繋がっている。環状導出部60は、複数の燃焼室66に連通する環状の導出流路72を有する。導出流路72は、複数の燃焼室66で発生した燃焼ガスをタービンノズル26に導く。複数の案内壁部62及び貫通孔64の具体的な構成については、後述する。
【0028】
ケーシング部材19は、外周カバー部74と端部カバー部76とを有する。外周カバー部74は、環状に形成されている(
図2参照)。外周カバー部74は、燃焼器18の径方向外方から燃焼器18を覆う。
【0029】
図1において、外周カバー部74の一端部(矢印X1方向の端部)は、ディフューザハウジング42に連結している。外周カバー部74の他端部(矢印X2方向の端部)は、燃焼器18の第2端部18bよりも矢印X2方向に位置する。燃焼器18と外周カバー部74との間には、空気導出部40から導かれた空気を燃焼器18の第1端部18aから第2端部18bへ向けて流す空気流路78が形成されている。空気流路78は、環状に延在している。
【0030】
図2において、外周カバー部74は、外周凹部80と外周凸部82とが燃焼器18の周方向に交互に連続して配置されるようにして形成されている。外周凹部80は、互いに隣接する燃焼筒56の間に入り込むように燃焼器18の径方向内方に窪んでいる。外周凹部80は、燃焼器18の径方向内方に向かって円弧状に突出している。外周凸部82は、複数の燃焼筒56の外周面に沿うように燃焼器18の径方向外方に突出している。外周凸部82は、燃焼器18の径方向外方に向かって円弧状に突出している。これにより、空気流路78の流路幅(燃焼器18の径方向に沿った幅)を狭く設定できる。
【0031】
図1に示すように、端部カバー部76は、環状に形成されている。端部カバー部76は、燃焼器18を矢印X2方向から覆う。端部カバー部76は、外周カバー部74の矢印X2方向の端部から燃焼器18の径方向内方に延出している。端部カバー部76は、各燃焼筒56の空気流入口68を覆っている。
【0032】
燃料供給部23は、複数の燃焼筒56の各々に設けられている。つまり、燃料供給部23は、燃焼筒56と同数設けられている。燃料供給部23は、インジェクタ84を有する。インジェクタ84の先端部は、燃焼筒56の空気流入口68から燃焼室66に挿入されている。インジェクタ84の中心線(燃料噴射口)は、燃焼筒56の軸線Ax2上に位置する。インジェクタ84は、燃焼筒56の軸方向(矢印X方向)に沿って延びている。インジェクタ84は、燃料を燃焼室66に噴射する。インジェクタ84は、端部カバー部76に取り付けられている。
【0033】
内周カバー部21は、環状に形成されている(
図2参照)。内周カバー部21は、燃焼器18を径方向内方から覆う。内周カバー部21の一端部(矢印X1方向の端部)は、環状導出部60に繋がっている。内周カバー部21の他端部(矢印X2方向の端部)は、端部カバー部76に連結している。燃焼器18と内周カバー部21との間には、燃焼器18の第2端部18bに設けられた連通路96を介して空気流路78から空気が流入する内側空間86が形成されている。内側空間86は、環状に延在している。
【0034】
図2において、内周カバー部21は、内周凹部88と内周凸部90とが燃焼器18の周方向に交互に連続して配置されるようにして形成されている。内周凹部88は、互いに隣接する燃焼筒56の間に入り込むように燃焼器18の径方向外方に窪んでいる。内周凸部90は、燃焼筒56の外周面に沿うように燃焼器18の径方向内方に突出している。内周凸部90は、燃焼器18の径方向内方に向かって円弧状に突出している。
【0035】
図3及び
図4に示すように、案内壁部62は、燃焼器18の周方向に隣り合う燃焼筒56を繋ぐように設けられている。すなわち、案内壁部62は、燃焼器18の周方向に隣り合う燃焼筒56の間に設けられている。案内壁部62は、空気を空気流路78から連通路96を介して内側空間86へと案内する(
図4参照)。
【0036】
案内壁部62は、第1壁部92と第2壁部94とを有する。第1壁部92は、連通管58から燃焼器18の第1端部18a(矢印X1方向)に向かって延出している。第1壁部92は、矢印X1方向に向かって燃焼器18の径方向外方に傾斜するように延出している。第1壁部92の延出端部は、環状導出部60に繋がっている。第1壁部92は、燃焼器18の軸方向から見て、燃焼器18の径方向外方に向かって円弧状に突出している(
図5参照)。なお、第1壁部92の横断面は、燃焼器18の径方向内方に向かって円弧状に突出してもよい。
【0037】
図3及び
図4に示すように、第2壁部94は、連通管58から燃焼器18の第2端部18b(矢印X2方向)に向かって延出している。第2壁部94の延出端部は、燃焼筒56の他端部よりも矢印X1方向にずれた位置にある。第2壁部94は、燃焼器18の軸方向から見て、燃焼器18の径方向内方に向かって円弧状に突出している(
図3参照)。なお、第2壁部94の横断面は、燃焼器18の径方向外方に向かって円弧状に突出してもよい。
【0038】
図4において、連通管58と案内壁部62は、外周カバー部74と内周カバー部21との間の空間を、燃焼器18の径方向外方に位置する空気流路78と燃焼器18の径方向内方に位置する内側空間86とに仕切る。この場合、燃焼器18は、燃焼器18の第2端部18b(矢印X2方向の端部)において、空気流路78と内側空間86とを互いに連通させる連通路96を有する。
【0039】
図4及び
図5に示すように、貫通孔64は、1つの燃焼筒56に対して2つ設けられている。これら貫通孔64は、内側空間86の空気を燃焼室66の下流側に導く。貫通孔64は、第1壁部92と内周カバー部21との間に位置する。貫通孔64は、第1壁部92と環状導出部60との境界部に隣接している。貫通孔64は、燃焼筒56の外周面のうち環状導出部60に隣接する位置(矢印X1方向の端部)に形成されている。
図4において、貫通孔64は、連通管58よりも矢印X1方向に位置する。貫通孔64は、連通管58よりも燃焼器18の径方向外方に位置している。
【0040】
図5に示すように、貫通孔64は、燃焼筒56の径方向内方に向かって開口している。換言すれば、燃焼筒56の軸線Ax2に向かって開口している。燃焼筒56の軸方向において、2つの貫通孔64は、同じ高さ位置にある。2つの貫通孔64は、燃焼筒56の軸線Ax2を挟んで互いに向かい合うように配置されている。2つの貫通孔64は、燃焼筒56の周方向に180°ずれて位置している。
【0041】
図1及び
図2に示すように、補機部材25は、1つのセンサ98と、2つの点火装置100とを備える。センサ98は、空気流路78を流通する空気の物理量を検出する。具体的に、センサ98は、例えば、空気流路78を流通する空気の圧力を検出する圧力センサである。センサ98は、一方向に延在している。センサ98は、その先端が空気流路78に露出するように外周カバー部74の外周凹部80に取り付けられている。センサ98は、外周カバー部74に取り付けられた状態で燃焼器18の径方向に沿って延在している。センサ98は、連通管58よりも矢印X2方向に位置している。ただし、燃焼器18の軸方向において、センサ98の取付位置は、適宜設定可能である。
【0042】
図2において、点火装置100は、燃焼室66で放電するイグナイタである。点火装置100は、一方向に延在している。点火装置100は、その先端が燃焼室66に露出するように外周カバー部74の外周凹部80に取り付けられている。なお、点火装置100は、センサ98が取り付けられる外周凹部80とは異なる外周凹部80に取り付けられる。また、2つの点火装置100は、互いに異なる外周凹部80に取り付けられる。この場合、2つの点火装置100は、燃焼器18の周方向に互いに最も離れた位置となるように外周カバー部74に取り付けられる。
【0043】
点火装置100は、外周カバー部74に取り付けられた状態で燃焼器18の径方向に対して傾斜するように延在している。点火装置100の先端は、燃焼筒56の軸線Ax2を向いている。点火装置100は、燃焼器18の軸方向に連通管58と位置が揃うように配置されている。点火装置100は、1つであってもよい。ただし、点火装置100を2つ設けた場合、点火装置100の片方が故障しても燃焼室66の混合気(燃料及び空気)を点火できる。
【0044】
図1及び
図4に示すように、上述したガスタービン10では、コンプレッサ14から供給される空気(圧縮空気)は、空気導出部40の導出口44から空気流路78に導かれる。導出口44から空気流路78に導かれた空気は、案内壁部62及び燃焼筒56に沿って燃焼器18の第2端部18bまで矢印X2方向に流通した後、連通路96で端部カバー部76に当たり180°向きを変えて内側空間86に導かれる。この時、空気の一部は、空気流入口68から燃焼室66に流入する(
図1参照)。
【0045】
燃焼室66では、空気流入口68から流入した空気とインジェクタ84から噴射された燃料とが混合される。ガスタービン10の起動時では、点火装置100が燃焼室66で放電する。これにより、燃焼室66内に火炎が発生する。点火装置100により燃焼室66に発生した火炎は、連通管58の内孔70を介して点火装置100が取り付けられていない燃焼筒56の燃焼室66に伝わる(
図2参照)。これにより、全ての燃焼筒56の燃焼室66に火炎を発生させることができる。各燃焼室66は、燃焼筒56の軸線Ax2の部分(中心部分)が最も高温になる。
【0046】
本実施形態では、内側空間86に導かれた空気は、2つの貫通孔64から燃焼室66に流入する。この時、
図5に示すように、2つの貫通孔64から燃焼室66に流入した空気は、燃焼室66の下流側で燃焼筒56の軸線Ax2上で衝突(正面衝突)する。これにより、比較的温度の低い空気を燃焼筒56の軸線Ax2付近(中心付近)に留まらせることができる。よって、燃焼室66の中心部分の燃焼ガスをバランスよく希釈できる。なお、貫通孔64から燃焼室66に流入して正面衝突した空気の一部は、燃焼室66の上流側に向かい燃料と混合されて燃焼に使用される。そのため、燃焼に必要な空気を効率よく燃焼室66に供給できる。
【0047】
また、燃焼室66は、燃焼器18の外側を流通する空気によっても冷却される。具体的に、
図4に示すように、空気流路78を流通する空気は、燃焼筒56の外周面を冷却する。本実施形態では、外周カバー部74が環状に配置された燃焼筒56の形状に対応した凹凸形状を有しているため、空気流路78の流路幅が比較的狭く設定されている(
図2参照)。そのため、空気流路78を流通する空気の流速が高められ、燃焼筒56の外周面を効率よく冷却できる。
【0048】
さらに、本実施形態では、空気が滞留し易い内側空間86の空気が貫通孔64から燃焼室66に流入するため、内側空間86に空気が滞留し難い。そのため、内側空間86を流通する空気によって燃焼筒56の外周面を効率よく冷却できる。
【0049】
各燃焼室66の燃焼ガスは、環状導出部60の導出流路72で合流してタービンノズル26を介してタービン20に向かって流通する。これにより、タービン20が回転する。なお、タービン20の回転力は、シャフト22を介してコンプレッサホイール34に伝達される。
【0050】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0051】
本実施形態によれば、空気導出部40から導かれた空気は、空気流路78及び連通路96を介して内側空間86に流入した後、貫通孔64から燃焼室66の下流側に導入される。これにより、内側空間86に空気が滞留することを抑制できるため(内側空間86を流れる空気の流量を増加できるため)、燃焼器18から導出される空気の流量を増加することなく燃焼筒56の外周面を効率よく冷却できる。また、空気流路78の流路幅を比較的狭く設定した場合であっても、内側空間86に導かれるまでに空気の流速が低下するため、部品寸法にバラツキがあっても貫通孔64から燃焼室66に流入する空気の流量及び入射角が変化し難い。よって、複数の燃焼室66の温度分布のバラツキを抑制できる。
【0052】
貫通孔64は、複数の燃焼筒56の各々の径方向内方に向かって開口する。
【0053】
このような構成によれば、燃焼室66の中心部の燃焼ガスをバランスよく希釈できる。
【0054】
複数の燃焼筒56の各々には、貫通孔64が2つ形成されている。2つの貫通孔64は、燃焼筒56の軸線Ax2を挟んで互いに向かい合うように配置されている。
【0055】
このような構成によれば、2つの貫通孔64から流入する空気を燃焼室66の中央部で互いに衝突させることができるため、燃焼室66の中央部の燃焼ガスをバランスよく希釈できる。
【0056】
燃焼器18は、互いに隣接する燃焼筒56の燃焼室66を連通させる複数の連通管58を有する。案内壁部62は、複数の連通管58から第1端部18aに向かって延出した第1壁部92と、複数の連通管58から第2端部18bに向かって延出した第2壁部94と、を含む。
【0057】
このような構成によれば、燃焼器18の剛性を向上させることができる。
【0058】
外周カバー部74は、互いに隣接する燃焼筒56の間に入り込むように燃焼器18の径方向内方に窪んだ外周凹部80と燃焼筒56の外周面に沿うように燃焼器18の径方向外方に突出した外周凸部82とが燃焼器18の周方向に交互に連続して配置されるようにして形成されている。
【0059】
このような構成によれば、空気流路78の流路幅を簡単に狭く設定できる。これにより、空気流路78を流通する空気の流速を高めることができるため、燃焼筒56の外周面を効率よく冷却できる。また、内側空間86を介して貫通孔64から燃焼室66に空気が流入することにより内側空間86を流通する空気の流速を高めることができるため、燃焼筒56の外周面を効率よく冷却できる。
【0060】
案内壁部62は、燃焼器18の軸方向から見て、燃焼器18の径方向内方又は径方向外方に向かって円弧状に突出している。
【0061】
このような構成によれば、案内壁部62と燃焼筒56との境界部に発生する熱応力を効果的に緩和できる。
【0062】
本実施形態は、以下の内容を開示している。
【0063】
上記実施形態は、コンプレッサ(14)と、環状に配置された複数の燃焼筒(56)を有する燃焼器(18)と、前記コンプレッサから供給された空気を前記燃焼器に導出する空気導出部(40)と、前記燃焼器の径方向外方から当該燃焼器を覆う環状の外周カバー部(74)と、前記燃焼器の径方向内方から当該燃焼器を覆う環状の内周カバー部(21)と、前記複数の燃焼筒の燃焼室(66)の上流部に燃料を供給する複数の燃料供給部(23)と、を備えたガスタービン(10)であって、前記燃焼器は、前記燃焼器の軸方向の一端部である第1端部(18a)と、前記軸方向の他端部である第2端部(18b)とを有し、前記空気導出部の導出口(44)は、前記第1端部の径方向外方に位置し、前記燃焼器と前記外周カバー部との間には、前記空気導出部から導かれた前記空気を前記第1端部から前記第2端部へ向けて流す空気流路(78)が形成され、前記燃焼器と前記内周カバー部との間には、前記燃焼器の前記第2端部に設けられた連通路(96)を介して前記空気流路から前記空気が流入する内側空間(86)が形成され、前記複数の燃焼筒の各々には、前記燃焼器の前記第2端部に位置して前記空気流路を流通した前記空気を前記燃焼室の前記上流部に流入させるための空気流入口(68)が設けられ、前記燃焼器は、前記複数の燃焼筒における互いに隣接する燃焼筒を繋ぐように設けられて前記空気を前記空気流路から前記連通路を介して前記内側空間へと案内する案内壁部(62)を有し、前記複数の燃焼筒の各々の外周面には、前記内側空間に開口して前記内側空間の前記空気を前記燃焼室の下流側に流入させる貫通孔(64)が形成されている、ガスタービンを開示している。
【0064】
上記のガスタービンにおいて、前記貫通孔は、前記複数の燃焼筒の各々の径方向内方に向かって開口してもよい。
【0065】
上記のガスタービンにおいて、前記複数の燃焼筒の各々には、前記貫通孔が2つ形成され、2つの前記貫通孔は、前記複数の燃焼筒の各々の軸線を挟んで互いに向かい合うように配置されてもよい。
【0066】
上記のガスタービンにおいて、前記燃焼器は、互いに隣接する前記燃焼筒の前記燃焼室を連通させる複数の連通管(58)を有し、前記案内壁部は、前記複数の連通管から前記燃焼器の前記第1端部に向かって延出した第1壁部(92)と、前記複数の連通管から前記燃焼器の前記第2端部に向かって延出した第2壁部(94)と、を含んでもよい。
【0067】
上記のガスタービンにおいて、前記外周カバー部は、互いに隣接する前記燃焼筒の間に入り込むように前記燃焼器の径方向内方に窪んだ外周凹部(80)と前記複数の燃焼筒の外周面に沿うように前記燃焼器の径方向外方に突出した外周凸部(82)とが前記燃焼器の周方向に交互に連続して配置されるようにして形成されてもよい。
【0068】
上記のガスタービンにおいて、前記案内壁部は、前記軸方向から見て、前記燃焼器の径方向内方又は径方向外方に向かって円弧状に突出してもよい。
【0069】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0070】
10…ガスタービン 14…コンプレッサ
18…燃焼器 20…タービン
21…内周カバー部 23…燃料供給部
25…補機部材 40…空気導出部
44…導出口 56…燃焼筒
58…連通管 62…案内壁部
64…貫通孔 66…燃焼室
68…空気流入口 74…外周カバー部
78…空気流路 80…外周凹部
82…外周凸部 86…内側空間
92…第1壁部 94…第2壁部
96…連通路 98…センサ
100…点火装置