(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049813
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】誘電泳動装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240403BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156275
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】青戸 隆志
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029AA23
4B029BB01
4B029GB05
(57)【要約】
【課題】導電率の変化が大きい導電率変化膜を提供することで微小材料の移動やソーティングを容易にする。
【課題手段】第1電極と第2電極との間に配置されるシリコン半導体層は、第1の不純物濃度を有する第1導電型の第1シリコン層と、前記第1シリコン層と接し、前記第1の不純物濃度よりも小さい第2の不純物濃度を有する、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2シリコン層と、前記第2シリコン層と接し、前記第2の不純物濃度よりも大きい第3の不純物濃度を有する、前記第1導電型の第3シリコン層とを含む。前記第1シリコン層と前記第2シリコン層とにより、第1の極性を有するの第1フォトダイオードが形成され、前記第2シリコン層と前記第3シリコン層とにより、第2の極性を有し前記第1フォトダイオードと直列接続される第2フォトダイオードが形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作対象の微小物体を含む溶媒を内部に含む溶媒保持部と、
前記溶媒保持部の第1面側に配置される第1電極と、
前記溶媒保持部の第2面側に配置される第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置されるシリコン半導体層と
を含み、
前記シリコン半導体層は、
第1の不純物濃度を有する第1導電型の第1シリコン層と、
前記第1シリコン層と接し、前記第1の不純物濃度よりも小さい第2の不純物濃度を有する、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2シリコン層と、
前記第2シリコン層と接し、前記第2の不純物濃度よりも大きい第3の不純物濃度を有する、前記第1導電型の第3シリコン層と
を含み、
前記第1シリコン層と前記第2シリコン層とにより、第1の極性を有する第1フォトダイオードが形成され、
前記第2シリコン層と前記第3シリコン層とにより、前記第1の極性とは反対の第2の極性を有し前記第1フォトダイオードと直列接続される第2フォトダイオードが形成される
ことを特徴とする誘電泳動装置。
【請求項2】
前記第1シリコン層と前記第2シリコン層との間に形成される真正半導体層である第4シリコン層と、
前記第2シリコン層と前記第3シリコン層との間に形成される真正半導体である第5シリコン層と
を更に備える、請求項1に記載の誘電泳動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電泳動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞等や微粒子等の微小物体を液中で操作することができる装置として、誘電泳動装置が知られている(ここで「微小物体」とは、直径数nm~100μm程度の無機物、有機物を意味する)。誘電泳動装置は、導電率変化膜に光を照射することにより、導電率変化膜における導電率の変化を与えると共に、対向する電極との間に交流電圧信号を印加することによって誘電泳動現象を生じさせる装置である。誘電泳動現象により、微小物体を所望の位置に移動又はソーティングすることができる。
【0003】
非特許文献1や特許文献1に開示されている従来の誘電泳動装置は、光により導電率が変化する導電率変化膜としてアモルファスシリコン膜を用いている。アモルファスシリコンは、光を当てることにより、導電率が1.0×10-10S/m程度から5×10-6S/m程度に変化する。一方、純水などの溶媒の導電率は2.0×10-4S/m程度である。この場合、導電率の比率が100倍程度であるので、溶媒中に誘電泳動に必要な電圧が印加することができる。
【0004】
しかし、細胞培養などに使用される緩衝液であるPBS(Phosphate-buffered saline)やDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)の導電率は1.6S/mであり、アモルファスシリコン膜の導電率よりも約106倍ほど大きい。このように両者間の導電率の差が大きいため、特許文献1のようなアモルファスシリコン膜を導電率変化膜として用いる場合、溶媒中に所望の電圧が印加できず、誘電泳動を行うことが困難になる。
【0005】
アモルファスシリコン膜の導電率の変化幅を大きくするために、特許文献2は、フォトトランジスタを構成する多層膜を備える誘電泳動装置を開示している。しかし、フォトトランジスタ構造では、ベース層が薄膜状態でないと回路が機能しないという問題がある。薄膜のベース層は導電率を変化する空乏層の領域(高さ方向の幅)が小さく光吸収効率が悪いため、導電率の変化が小さくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007-537729号公報
【特許文献2】特表2016-505349号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Shuailong et al., Small 2018, 14, 1803342, Patterned Optoelectronic Tweezers: A New Scheme for Selecting, Moving, and Storing Dielectric Particles and Cells
【非特許文献2】Hsu et al., Lab Chip, 2010, 10, 165-172, Phototransistor-based optoelectronic tweezers for dynamic cell manipulation in cell culture media
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、導電率の変化が大きい導電率変化膜を提供することで微小材料の移動やソーティングを容易にすることができる誘電泳動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る誘電泳動装置は、操作対象の微小物体を含む溶媒を内部に含む溶媒保持部と、前記溶媒保持部の第1面側に配置される第1電極と、前記溶媒保持部の第2面側に配置される第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置されるシリコン半導体層とを含む。前記シリコン半導体層は、第1の不純物濃度を有する第1導電型の第1シリコン層と、前記第1シリコン層と接し、前記第1の不純物濃度よりも小さい第2の不純物濃度を有する、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2シリコン層と、前記第2シリコン層と接し、前記第2の不純物濃度よりも大きい第3の不純物濃度を有する、前記第1導電型の第3シリコン層とを含む。前記第1シリコン層と前記第2シリコン層とにより、第1の極性を有する第1フォトダイオードが形成され、前記第2シリコン層と前記第3シリコン層とにより、前記第1の極性とは反対の第2の極性を有し前記第1フォトダイオードと直列接続される第2フォトダイオードが形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、誘電体の変化が大きい導電率変化膜を提供することで微小材料の移動やソーティングを容易にすることができる誘電泳動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施の形態に係る誘電泳動装置を説明する概略図である。
【
図2】第2の実施の形態に係る誘電泳動装置を説明する概略図である。
【
図3】第3の実施の形態に係る誘電泳動装置を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0013】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0014】
[第1の実施の形態]
次に、第1の実施の形態に係る誘電泳動装置1を、
図1を参照して説明する。この誘電泳動装置1は、一例として、泳動部10、交流電源20、光源30、CCDカメラ40、制御部50を備えて構成される。
【0015】
泳動部10は、誘電泳動現象を利用して、泳動部10中の微小物体(例えば細胞PT)を分離するための部分である。交流電源20は、泳動部10において誘電泳動現象を生じさせるための交流電力を供給する。光源30は、泳動部10において導電率変化膜であるシリコン層において導電率を変化させるための光を照射する。CCDカメラ40は、泳動部10を撮像して、分離された細胞PTの位置等を判定するための撮像装置である。制御部50は、CCDカメラ40で撮像された画像を解析すると共に、誘電泳動装置1の全体の制御を司る。
【0016】
泳動部10は、溶媒保持部11と、第1電極12と、第2電極13と、シリコン層14~16から構成される。シリコン層14~16は、後述するように、光源30からの光を照射されることにより、その導電率を部分的に変化させることができる。
【0017】
泳動部10は、操作対象の微小物体PT(細胞等)を含む溶媒を内部に含む溶媒保持部11を備える。溶媒保持部11は、微小物体PTが細胞の場合、溶媒SL(緩衝液)としてのPBS(Phosphate-buffered saline)やDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)を内部に保持し、その溶媒SL内に微小物体としての細胞PTを含んでいる。この細胞PTが、誘電泳動現象を利用して溶媒保持部11中の所望の位置に移動されることにより、細胞PTが分離・特定され得る。
【0018】
溶媒保持部11の下面(第1面)側には第1電極12(ITO電極)12が配置され、上面(第2面)側には、後述するシリコン層14~16を介して第2電極13(P型シリコン基板)が配置されている。第1電極12は、酸化インジウムスズ(ITO)等を材料として形成される透明電極である。この第1電極12と第2電極13との間に交流電源20から交流電力が供給される。また、溶媒保持部11に対し、第1電極12を介して光源30から光を照射される。これにより光照射位置において溶媒SLの導電率を変化させ、誘電泳動現象を用いて細胞PTを分離することができる。
【0019】
溶媒保持部11の第2面と第2電極13(p型シリコン基板)との間には、下方から順に、p型シリコン層14(高濃度ドーピングp型シリコン層)、n-型シリコン層15(低濃度ドーピングn-型シリコン層)、及びp型シリコン層16(高濃度ドーピングp型シリコン層)が堆積され、この3つのシリコン層により導電率変化膜が形成されている。p型シリコン層14、及び16は、n-型シリコン層15に比べ高い不純物濃度を有する。n-型シリコン層15はp型シリコン層14に接しており、両者の間にpn接合を形成する。また、p型シリコン層16は、反対側の面においてn-型シリコン層15と接し、両者の間にpn接合を形成する。
【0020】
p型シリコン層14及びn-型シリコン層15とは、下方から上方に向かう方向を順方向とする第1フォトダイオードD1を形成する。p型シリコン層16及びn-型シリコン層15は、上方から下方に向かう方向を順方向とする第2フォトダイオードD2を形成する。第1フォトダイオードD1と第2フォトダイオードD2とは、直列に接続されると共に(両者のカソード同士が接続され)、互いに逆極性である。第1電極12と第2電極13との間に交流電圧が印加される場合、第1フォトダイオードD1と第2フォトダイオードD2とのいずれか一方が順バイアス状態となり、他方が逆バイアス状態となる。
【0021】
一例として、p型シリコン層14、及びp型シリコン層16の積層方向の厚さは、1000~2000Å程度、不純物濃度は1×1018cm-3前後とすることができる。また、n-型シリコン層15の積層方向の厚さは、p型シリコン層14及び16よりも厚い、例えば5000Å~1μm程度、不純物濃度はp型シリコン層14及び16よりも小さい1×1015cm-3程度とすることができる。n-型シリコン層15の厚さを大きくし、且つ低不純物濃度とすることにより、n-型シリコン層15における空乏層の幅を大きくすることができる。空乏層の幅が大きくなることで、光源30からの光照射時と光未照射時との間でシリコン層の導電率の差を大きくすることができ、誘電泳動の発生が容易になり得る。
【0022】
第1の実施の形態の誘電泳動装置1の動作を説明する。誘電泳動では、交流電圧が交流電源20から第1電極12及び第2電極13を介して泳動部10に印加される。
【0023】
交流電圧により、第2電極13(p型シリコン基板)に正の電圧が印加されている間においては、p型シリコン層16とn-型シリコン層15が形成する第2フォトダイオードD2では、ダイオードの順方向に電圧が印加される。一方、n-型シリコン層15とp型シリコン層14が形成するフォトダイオードD1では、ダイオードの逆方向の電圧が印加される。フォトダイオードD1では抵抗値が上昇し、その部分に電圧がかかり、溶媒保持部11には電圧が印加されない。このような電圧値が上昇した部分において、光源30から光を照射させると、照射光により、逆バイアスが印加されたフォトダイオードD1のn型シリコン層内に形成された空乏層に光が吸収され、電子正孔対が発生する。この電子正孔対によって、光照射部分にのみ特異的に電流が流れて溶媒SLに電圧が印加される。このため、局所的な電場を形成し、誘電泳動を生じさせることができる。
【0024】
一方、交流電圧により、第1電極12に正の電圧が印加されている間においては、p型シリコン層14とn-型シリコン層15が形成する第1フォトダイオードD1では、ダイオードの順方向に電圧が印加される。一方、n-型シリコン層15とp型シリコン層16が形成するフォトダイオードD2では、ダイオードの逆方向の電圧が印加される。フォトダイオードD2では抵抗値が上昇し、その部分に電圧がかかり、溶媒保持部11には電圧が印加されない。このような電圧値が上昇した部分において、光源30から光を照射させると、照射光により、逆バイアスが印加されたフォトダイオードD2のn-型シリコン層15内に形成された空乏層に光が吸収され、電子正孔対が発生する。この電子正孔対によって、光照射部分にのみ特異的に電流が流れて溶媒SLに電圧が印加される。このため、局所的な電場を形成し、誘電泳動を生じさせることができる。
【0025】
以上説明したように、第1の実施の形態の誘電泳動装置1においては、シリコン層14~16がP/N/P構造を有し、極性が逆で直列接続されたフォトダイオードD1、D2を形成する。このため、光源30から光が照射された位置において、シリコン層14~16の導電率を上げて、その導電率が上昇した部分にある溶媒での誘電泳動を生じさせることができる。この構成の場合、P/N/P構造により空乏層が生じる幅を所望の長さにすることができ、これにより、電極抵抗を所望の値に変更することが可能となる。その結果、分離の対象である細胞PTへの悪影響も少なくすることができる。より低い電圧印加条件や導電率の高い溶媒での誘電泳動が可能となるので、誘電泳動技術を適用することができる細胞種の数を増加させることができ、動作環境をより柔軟に設定することが可能になる。
【0026】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る誘電泳動装置1を、
図2を参照して説明する。
図2において、第1の実施の形態と共通する構成要素については、
図1と同一の参照符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。この第2の実施の形態は、導電率変化膜としてのシリコン層の構造が第1の実施の形態とは異なっている。
【0027】
第2の実施の形態の導電率変化膜を構成するシリコン層は、n型シリコン層14Aと、p-型シリコン層15Aと、n型シリコン層16Aとを順次積層して構成される。すなわち、第2の実施の形態の誘電泳動装置のシリコン層はN/P/N構造を有しており、この点で第1の実施の形態と異なる。
【0028】
具体的には、n型シリコン層14A及びp-型シリコン層15Aとは、上方から下方に向かう方向を順方向とする第1フォトダイオードD3を形成する。n型シリコン層16A及びp-型シリコン層15Aは、下方から上方に向かう方向を順方向とする第2フォトダイオードD4を形成する。第1フォトダイオードD3と第2フォトダイオードD4とは、直列に接続されると共に(両者のカソード同士が接続され)、互いに逆極性である。
【0029】
n型シリコン層14A、及びn型シリコン層16Aの積層方向の厚さは、1000~2000Å程度、不純物濃度は1×1018cm-3前後とすることができる。また、p-型シリコン層15Aの積層方向の厚さは、n型シリコン層14A及び16Aよりも厚い、例えば5000Å~1μm程度、不純物濃度はn型シリコン層14A及び16Aよりも小さい1×1015cm-3程度とすることができる。p-型シリコン層15Aの厚さを大きくし、且つ低不純物濃度とすることにより、溶媒保持部11の溶媒SLに光が照射された部分と照射されない部分に大きな電位差ができることになり、誘電泳動の発生が容易になり得る。
【0030】
この構成によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、第1電極12と第2電極13間に交流電圧が印加されると、第1フォトダイオードD3と第2フォトダイオードD4のいずれか一方には順方向に電圧が印加され、他方は逆方向の電圧が印加され、抵抗値が上昇する。しかし、光源30から光が照射されることで、その光照射部分の空乏層に電子正孔対を発生させ、誘電泳動を生じさせることができる。
【0031】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態に係る誘電泳動装置1を、
図3を参照して説明する。
図3において、第1の実施の形態と共通する構成要素については、
図1と同一の参照符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。この第3の実施の形態は、導電率変化膜としてのシリコン層の構造が第1の実施の形態とは異なっている。
【0032】
第3の実施の形態の導電率変化膜を構成するシリコン層は、p型シリコン層14とn-型シリコン層15との間に不純物を含まないi型シリコン層17(真正シリコン層)が形成され、n-型シリコン層15とp型シリコン層16との間にi型シリコン層18が形成されている。すなわち、第3の実施の形態のシリコン層はP/I/N/I/P構造を有しており、この点で前述の実施の形態と異なっている。ここで、「不純物を含まない」、「真正」とは、含まれる不純物が完全にゼロであることに限定される意図ではなく、熱エネルギー等により発生する自由電子と正孔の数がほぼ等しく、不純物から発生する自由電子の数が無視できるほど小さいシリコン層を意味している。
【0033】
n-型シリコン層15はi型シリコン層17を介してp型シリコン層14に接しており、両者の間にpin接合を形成する。また、n-型シリコン層16は、反対側の面においてi型シリコン層18を介してp型シリコン層15と接し、両者の間にpin接合を形成する
【0034】
p型シリコン層14、i型シリコン層17、及びn-型シリコン層15とは、下方から上方に向かう方向を順方向とする第1フォトダイオードD5を形成する。p型シリコン層16、i型シリコン層18及びn-型シリコン層15は、上方から下方に向かう方向を順方向とする第2フォトダイオードD6を形成する。第1フォトダイオードD5と第2フォトダイオードD6とは、直列に接続されると共に(両者のカソード同士が接続され)、互いに逆極性である。
【0035】
この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と略同一の効果を得ることができる。この第3の実施の形態では、シリコン層がi型シリコン層17、18を含み、互いに逆極性で直列接続された2つのpin型フォトダイオードD5、D6を形成することにより、逆バイアスが印加されたフォトダイオードにおいて空乏層を広範囲に形成することができ、光照射時における電子正孔対の発生を容易にすることができる。なお、図示は省略するが、P/I/N/I/P構造に代えて、N/I/P/I/N構造のシリコン層を採用することも可能である。
【0036】
[その他]
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1...誘電泳動装置
10...泳動部
11...溶媒保持部
12...第1電極
13...第2電極
14...p型シリコン層
14A...n型シリコン層
15...n-型シリコン層
15A...p-型シリコン層
16...p型シリコン層
16A...n型シリコン層
17...i型シリコン層
18...i型シリコン層
20...交流電源
30...光源
40...CCDカメラ
50...制御部
D1~D6...フォトダイオード
PT...細胞
SL...溶媒