(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049819
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】剥離紙
(51)【国際特許分類】
D21H 19/34 20060101AFI20240403BHJP
D21H 19/24 20060101ALI20240403BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
D21H19/34
D21H19/24 Z
D21H27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156286
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 卓哉
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AG34
4L055AG46
4L055AG81
4L055AH38
4L055BE08
4L055EA08
4L055EA14
4L055EA29
4L055FA19
4L055GA43
(57)【要約】
【課題】耐溶剤性に優れた剥離紙を提供すること。
【解決手段】紙基材10と、前記紙基材10の一方の面11に設けられた酢酸セルロースを含む目止め層20と、前記目止め層20の前記紙基材10側とは反対側の面に設けられたシリコーン変性アルキド樹脂及びメラミン樹脂を含む剥離剤層30と、を備える剥離紙100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、
前記紙基材の一方の面に設けられた酢酸セルロースを含む目止め層と、
前記目止め層の前記紙基材側とは反対側の面に設けられたシリコーン変性アルキド樹脂及びメラミン樹脂を含む剥離剤層と、
を備える剥離紙。
【請求項2】
請求項1に記載の剥離紙において、
前記目止め層の厚さが、2μm以上、20μm以下である、
剥離紙。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の剥離紙において、
前記酢酸セルロースの酢化度が、50%以上、62%以下である、
剥離紙。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の剥離紙において、
前記酢酸セルロースのアセチル基総置換度が、2.3以上、2.6以下である、
剥離紙。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の剥離紙において、
前記目止め層は、前記酢酸セルロースが有機溶剤に溶解した塗布液をコーティングしてなる層である、
剥離紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は剥離紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、剥離紙は、粘着シートなどが有する粘着剤層の保護用シート、樹脂シート作製用工程紙、及び合成皮革製造用工程紙などの各種用途に幅広く用いられている。剥離紙は、例えば、紙基材と、紙基材上に設けられた剥離剤層とを有し、必要に応じて、紙基材と剥離剤層との間に、目止め層が設けられる場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、紙基材層と、前記紙基材層の上に設けられた電離放射線硬化樹脂層と、前記電離放射線硬化樹脂層の上に形成された厚みが0.01~20μmの剥離層とからなる合成皮革製造用離型紙が提案されている。特許文献1に記載される合成皮革製造用離型紙において、前記電離放射線硬化樹脂層を構成する電離放射線硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)からなり、または(メタ)アクリル酸エステル35~80質量部、グリシジル(メタ)アクリル酸エステル20~60質量部、他の(メタ)アクリル酸エステル0~30質量部からなる共重合体に、(メタ)アクリル酸を10~30質量部反応させてなる(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(II)からなる。前記電離放射線硬化樹脂層は、乾燥電離放射線硬化樹脂層中に、フェノール類とアルデヒド類との反応生成物からなるフェノール樹脂を含有する平均粒子径1~30μmのフェノール系粒子を10~80質量%の範囲で含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
剥離紙の用途の一つである合成皮革製造用の剥離紙(合成皮革用工程紙とも称する)は、例えば、ポリウレタン樹脂などの樹脂を主原料とした合成皮革を製造するために用いられる。ポリウレタン樹脂などの樹脂を主原料とした合成皮革は、ポリウレタン樹脂と有機溶剤とを含む合成皮革形成用の樹脂組成物を剥離紙の剥離剤層上に塗布して、乾燥し、合成樹脂層を形成する。そして、当該合成樹脂層を、最終的に、剥離剤層の界面から剥離することで得られる。このように、有機溶剤を含む塗布液を剥離紙の剥離剤層上に塗布する用途においては、耐溶剤性が求められる。
【0006】
本発明の目的は、有機溶剤を含む塗布液を剥離紙の剥離剤層上に塗布する用途に適用された場合であっても、耐溶剤性に優れた剥離紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 紙基材と、
前記紙基材の一方の面に設けられた酢酸セルロースを含む目止め層と、
前記目止め層の前記紙基材側とは反対側の面に設けられたシリコーン変性アルキド樹脂及びメラミン樹脂を含む剥離剤層と、
を備える剥離紙。
【0008】
[2] [1]に記載の剥離紙において、
前記目止め層の厚さが、2μm以上、20μm以下である、
剥離紙。
【0009】
[3] [1]又は[2]に記載の剥離紙において、
前記酢酸セルロースの酢化度が、50%以上、62%以下である、
剥離紙。
【0010】
[4] [1]から[3]のいずれかに記載の剥離紙において、
前記酢酸セルロースのアセチル基総置換度が、2.3以上、2.6以下である、
剥離紙。
【0011】
[5] [1]から[4]のいずれかに記載の剥離紙において、
前記目止め層は、前記酢酸セルロースが有機溶剤に溶解した塗布液をコーティングしてなる層である、
剥離紙。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、有機溶剤を含む塗布液を剥離紙の剥離剤層上に塗布する用途に適用された場合であっても、耐溶剤性に優れた剥離紙が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る剥離紙の一例を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<剥離紙>
本実施形態に係る剥離紙は、紙基材と、前記紙基材の一方の面に設けられた酢酸セルロースを含む目止め層と、前記目止め層の前記紙基材側とは反対側の面に設けられたシリコーン変性アルキド樹脂及びメラミン樹脂を含む剥離剤層と、を備える。
【0015】
本実施形態に係る剥離紙は、上記構成を備えることにより、有機溶剤を含む塗布液を剥離紙の剥離剤層上に塗布する用途に適用された場合であっても、耐溶剤性に優れた剥離紙が得られる。理由は定かではないが、酢酸セルロースは、目止め効果が高いと考えられるため、剥離剤層を設けるときに、シリコーン変性アルキド樹脂及びメラミン樹脂を含む剥離剤組成物の紙基材への染み込みが抑制されると考えられる。これにより、得られた剥離紙も耐溶剤性に優れると推測される。
【0016】
本実施形態に係る剥離紙について、図面を参照して説明する。
図1に示される剥離紙100は、紙基材10と、紙基材10の一方の面(紙基材10の第一主面11)に設けられた目止め層20と、目止め層20の紙基材10側とは反対側の面(目止め層20の主面21)に設けられた剥離剤層30とを備えており、紙基材10、目止め層20、及び剥離剤層30が、紙基材10から剥離剤層30に向かって、この順で順次積層されている。紙基材10の第二主面13には、目止め層20及び剥離剤層30が設けられておらず、紙基材10の第二主面13が露出している。目止め層20は、酢酸セルロースを含み、剥離剤層30は、シリコーン変性アルキド樹脂及びメラミン樹脂を含む。剥離紙100において、剥離剤層30の主面31は、被剥離物が接触する面(剥離面)となる。ここで、主面とは、紙基材、目止め層、又は剥離剤層の最大面であり、厚さ方向(すなわち、各層の積層方向)に向く面を表す。
【0017】
以上、
図1を参照して、本実施形態に係る剥離紙の一例を説明したが、本実施形態に係る剥離紙は、これに限定されるものではない。本実施形態に係る剥離紙は、上記構成を有していれば、種々の形態を採用し得る。
【0018】
(紙基材)
紙基材としては、後述の目止め層を支持できれば、特に限定されるものではない。紙基材としては、例えば、クラフト紙、グラシン紙、非コート紙(例えば、上質紙、中質紙、及び薄葉紙など)、及びコート紙(例えば、アート紙、クレーコート紙、及びキャストコート紙など)などが挙げられる。
【0019】
本明細書において、コート紙は、パルプ繊維を主成分とする原紙と、原紙の上に設けられた顔料コート層とを備えている。原紙は、例えば、パルプ繊維を主成分として、目的とする添加剤が添加され、公知の方法で得られる。顔料コート層は、原紙の上に、公知の方法で設けられる。顔料コート層は、単層構造でもよく、多層構造でもよい。顔料コート層は、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、サチンホワイト、酸化チタン、及びプラスチックピグメントなどの一種又は二種以上の顔料100質量部に対して、例えば、水性樹脂などの接着剤を、2質量部以上、50質量部以下の範囲で含有する。
【0020】
紙基材が、顔料コート層を備えることで、酢酸セルロースを含む目止め層の目止め効果が高まりやすい。また、目止め層上に剥離剤層を設けるときの目止効果も向上しやすい。
【0021】
紙基材の坪量は、特に限定されず、例えば、50g/m2以上であることが好ましく、100g/m2以上であることがより好ましい。紙基材の坪量は、例えば、300g/m2以下であることが好ましく、200g/m2以下であることがより好ましい。紙基材の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。紙基材の厚さは、例えば、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
【0022】
紙基材が、コート紙である場合、原紙の厚さは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。原紙の厚さは、250μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。顔料コート層の厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。顔料コート層の厚さは、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
【0023】
(目止め層)
目止め層は、酢酸セルロースを含んでいる。目止め層には、樹脂成分として酢酸セルロースが含まれていればよく、樹脂成分として酢酸セルロースのみが含まれていてもよい。
【0024】
目止め層の厚さは、特に限定されない。目止め層の厚さは、耐溶剤性が得られやすくなる観点で、例えば、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、4μm以上であることがさらに好ましい。目止め層の厚さは、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。なお、目止め層の厚さは、20μm以下であると、例えば、カールの発生が抑制されやすい。
【0025】
本実施形態に係る剥離紙において、目止め層の厚さは、10μm未満(例えば、9μm以下)であっても目止め効果に優れる。したがって、従来から用いられているポリエチレン樹脂による目止め層の厚さに比べ、薄くできるという利点がある。
【0026】
環境影響を考慮すると、酢酸セルロースは、生分解性が得られやすくなる観点で、酢化度が50%以上であることが好ましい。酢酸セルロースは、酢化度が52%以上でもよく、53%以上でもよく、54%以上でもよい。酢酸セルロースは、生分解性が得られやすくなる観点で、酢化度が62%以下であることが好ましい。
【0027】
酢酸セルロースの酢化度は、ASTM D-817-91(セルロースアセテートなどの試験方法)の酢化度の測定方法に準拠して測定することができる。
【0028】
環境影響を考慮すると、酢酸セルロースのアセチル基総置換度は、生分解性が得られやすくなる観点で、2.3以上であることが好ましく、2.4以上であることがより好ましい。酢酸セルロースのアセチル基総置換度は、生分解性が得られやすくなる観点で、2.6以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましい。
【0029】
酢酸セルロースのアセチル基総置換度は、酢酸セルロースの酢化度から、下記数式(F1)で換算することにより求められる。
DS=162.14×AV/(6005.2-AV×42.037)・・・(F1)
数式(F1)中、DSは、アセチル基総置換度、AVは、酢化度(%)を表す。
【0030】
また、酢酸セルロースは、25±1℃における6%粘度(6%に希釈した際の粘度)が50mPa・s以上200mPa・s以下であることが好ましい。なお、6%粘度は、例えば、乾燥試料3gを95%アセトン水溶液39.9gで溶解させた濃度6wt/vol%(質量/体積%)の溶液を、オストワルド粘度計を用いて測定できる。
【0031】
酢酸セルロースは、融点が230℃以上、300℃以下であることが好ましい。酢酸セルロースの融点は、例えばJIS K7121:1987で規定される方法に準拠して測定できる。
【0032】
後述の目止め層形成用組成物の塗布液のように、酢酸セルロースを含有する溶液の粘度は、例えばJIS K7117-1:1999で規定される方法に準拠して測定できる。
【0033】
目止め層は、(i)酢酸セルロースを溶融押出法によって設けられた層(樹脂層)であってもよく、(ii)酢酸セルロースを有機溶剤に溶解した塗布液をコーティングしてなる層であってもよい。目止め層の形成のしやすさの観点、及び紙基材との密着性の観点で、目止め層は、酢酸セルロースを有機溶剤に溶解した塗布液(目止め層形成用組成物の塗布液)をコーティングしてなる層であることが好ましい。
【0034】
目止め層は、酢酸セルロースの他にも、本実施形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、添加剤など(例えば、可塑剤など)のその他の成分を含有してもよい。
【0035】
(剥離剤層)
剥離剤層は、シリコーン変性アルキド樹脂とメラミン樹脂の混合樹脂を含む剥離剤組成物から形成される。シリコーン変性アルキド樹脂は、ポリオルガノシロキサンで化学修飾されたアルキド樹脂である。メラミン樹脂は、剥離剤組成物の硬化剤成分である。
【0036】
シリコーン変性アルキド樹脂及びメラミン樹脂を含む剥離剤層は、硬化剤成分としてメラミン樹脂を含むことから、シリコーン変性アルキド樹脂がメラミン樹脂で架橋されることで、剥離剤層が硬化して、剥離性が向上する。剥離剤層に、シリコーン変性アルキド樹脂及びメラミン樹脂を含むことにより、剥離紙を、例えば、合成皮革製造用の工程紙として使用した場合に、合成皮革を繰り返し製膜しても変性成分が剥離剤層の表面にとどまる。そのため、当該剥離剤層は、剥離性が維持されやすくなる。なお、シリコーン変性アルキド樹脂がメラミン樹脂で架橋された際にアミノ基が生成される。そのため、シリコーン変性アルキド樹脂とメラミン樹脂とを含む剥離剤層は、シリコーン変性アミノアルキド樹脂を含む剥離剤層でもある。
【0037】
剥離剤層の厚さは、特に限定されず、乾燥および硬化後の剥離剤層として、3μm以上であることが好ましい。剥離剤層の厚さは、特に限定されず、乾燥および硬化後の剥離剤層として、15μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。
【0038】
剥離剤層は、シリコーン変性アルキド樹脂及びメラミン樹脂の他にも、本実施形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、添加剤などのその他の成分を含有してもよい。
【0039】
(剥離紙の製造方法)
本実施形態に係る剥離紙の製造方法は、特に限定されない。本実施形態に係る剥離紙の好ましい製造方法の一例としては、例えば、紙基材を準備する工程と、前記紙基材の一方の面に、酢酸セルロースを含む目止め層を設ける工程と、前記目止め層の前記紙基材側とは反対側の面に、シリコーン変性アルキド樹脂及びメラミン樹脂を含む剥離剤層を設ける工程と、を備える。
【0040】
紙基材を準備する工程は、前述の紙基材で説明した紙基材を準備すればよい。
【0041】
目止め層を設ける工程は、紙基材の一方の面に、酢酸セルロースを含む目止め層を設けることができれば、特に限定されない。
前記目止め層を設ける工程は、具体的には、酢酸セルロースを含む目止め層形成用組成物を調製した後、前記目止め層形成用組成物を紙基材上に塗布、乾燥して塗膜を形成する工程であってもよい。紙基材上に目止め層を設ける方法は、例えば、酢酸セルロースを含む目止め層形成用材料を有機溶剤で溶解した目止め層形成用組成物の塗布液を、紙基材上にコーティングする方法が挙げられる。目止め層形成用組成物の塗布液を、紙基材上にコーティングした後、乾燥することで、目止め層が形成される。
【0042】
酢酸セルロースを溶解する有機溶剤としては、特に限定されず、例えば、ケトン類(アセトン、シクロヘキサノン、及びメチルエチルケトン(MEK)など)、エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、及びエステル類(酢酸エチル、及び酢酸ブチルなど)などが挙げられる。これらの有機溶剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの有機溶剤の中でも、酢酸セルロースの溶解のし易さの観点から、エチルメチルケトン、ジメチルホルムアミド、及びシクロヘキサノンからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0043】
目止め層形成用組成物の塗布液の25℃での粘度は、20mPa・s以上、2000mPa・s以下であることが好ましい。当該粘度が前記範囲内であれば、塗布液を用いて適切な目止め層を形成し易くなる。この粘度は、例えばJIS K7117-1:1999で規定される方法に準拠して測定できる。目止め層形成用組成物の塗布液における不揮発分濃度は、25℃での粘度が上記範囲内に調製することができれば、特に限定されない。
【0044】
目止め層形成用組成物の塗布液を紙基材の上にコーティングする方法としては、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、カーテンコート法、及びグラビアコート法などが挙げられる。目止め層形成用組成物の塗布液のコーティング量は、例えば、目止め層の乾燥後の厚さとして、2μm以上、20μm以下の範囲となる量であることが好ましい。目止め層が酢酸セルロースのみからなる層である場合、目止め層形成用組成物の塗布液のコーティング量は、特に限定されず、例えば、3g/m2以上、30g/m2以下であることが挙げられる。
【0045】
剥離剤層を設ける工程は、紙基材上に設けられた目止め層上に剥離剤層を設けることができれば、特に限定されない。
前記剥離剤層を設ける工程は、具体的には、シリコーン変性アルキド樹脂及びメラミン樹脂を含む剥離剤組成物を調製した後、紙基材上に形成された前記目止め層上に、前記剥離剤組成物を塗布、乾燥して塗膜を形成する工程であってもよい。目止め層上に剥離剤層を設ける方法は、例えば、紙基材上に設けられた目止め層上に、シリコーン変性アルキド樹脂及びメラミン樹脂を含む剥離剤組成物の塗布液を塗布した後、加熱して塗膜を形成し、目止め層上に剥離剤層を設ける。塗膜を形成するときの加熱は、乾燥させるとともに熱硬化させることが好ましい。塗膜を形成するときの加熱は、一段階で乾燥及び熱硬化させてもよく、初期乾燥工程と、その直後に行う後乾燥工程の複数段階で、乾燥させてもよい。
【0046】
剥離剤組成物の塗布液には、シリコーン変性アルキド樹脂とメラミン樹脂の混合樹脂以外に、有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、n-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、及びテトラヒドロフランなどが挙げられる。これらの有機溶剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
剥離剤組成物の塗布液における不揮発分濃度は、コーティング適性および乾燥性の観点で、5質量%以上、60質量%以下であることが好ましい。当該不揮発分濃度は、10質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。当該不揮発分濃度は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよい。
【0048】
剥離剤組成物の塗布方法としては、例えば、カーテンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、及びエアナイフ法などが挙げられる。
【0049】
以上の工程を得ることにより、本実施形態に係る剥離紙が得られる。
【0050】
(剥離紙の用途)
本実施形態に係る剥離紙は、一般的な剥離シートの用途に適用できる。本実施形態に係る剥離紙は、例えば、剥離紙の剥離剤層の剥離面にシート状物を形成する工程において用いられる工程紙として使用可能である。本実施形態に係る剥離紙は、具体的には、各種樹脂シート、合成皮革、又は各種複合材料などを作製するときの各種工程紙として適用できる。
【0051】
本実施形態に係る剥離紙は、耐溶剤性に優れるため、上記の各種用途の中でも、例えば、合成皮革用工程紙として適用することが有用である。
【0052】
本実施形態に係る剥離紙が適用される例として、当該剥離紙を用いて合成皮革を製造する方法を例に挙げて説明するが、本実施形態に係る剥離紙の適用例は、これに限定されない。
【0053】
合成皮革の製造方法は、特に限定されず、例えば、以下の工程を有する方法が挙げられる。合成皮革の製造方法は、本実施形態に係る剥離紙における剥離剤層の主面に、合成樹脂を含む塗工液を塗布する工程と、塗布された塗工液を乾燥して合成樹脂を含む合成皮革を形成する工程と、乾燥後、剥離紙を合成皮革から剥離する工程と、を含む。合成皮革を形成する工程は、塗布された塗工液を乾燥して合成樹脂層を形成し、合成樹脂層に接着剤を塗布した後、基布を貼り合わせて熟成する工程であってもよい。この場合、剥離紙を合成皮革から剥離する工程は、熟成後、基布ともに合成皮革から剥離紙を剥離する工程であってもよい。
【0054】
本発明は、前記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の目的を達成できる範囲での変形及び改良などを含むことができる。
【実施例0055】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。
【0056】
各実施例及び各比較例の剥離紙を作製するための原材料として、下記の原材料を準備した。
【0057】
(紙基材)
P-1:上質紙(日本製紙社製、npi上質、坪量64g/m2)
P-2:グラシン紙(リンテック社製、坪量62g/m2)
P-3:キャストコート紙(日本製紙社製、エスプリC、坪量157g/m2)
【0058】
(酢酸セルロース)
CA-1:酢化度55%(アセチル基総置換度2.4)の酢酸セルロース(ダイセル社製、L-20)
【0059】
(剥離剤)
MSAA:シリコーン変性アルキド樹脂とメラミン樹脂との混合物(昭和電工マテリアルズ社製、TA31-209E)
【0060】
<実施例1>
上質紙(P-1)の片面に、酢酸セルロース(CA-1)をメチルエチルケトンで溶解して調製した目止め層形成用組成物の塗布液(25℃での粘度1200mPa・s)を、アプリケーターでコーティングした後、120℃、1分間で乾燥して、厚さ3μmで、目止め層を形成した。次に、目止め層の表面に、乾燥後塗工量が8g/m2となるように、シリコーン変性アルキド樹脂とメラミン樹脂の混合物(MSAA)をマイヤーバーでコーティングした。コーティング後、180℃で60秒間乾燥及び硬化させ、硬化後の厚みが5μmである剥離剤層を形成して、実施例1の剥離紙を得た。
【0061】
<実施例2>
表1にしたがって、目止め層の厚さを変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の剥離紙を得た。
【0062】
<実施例3>
表1にしたがって、上質紙をグラシン紙に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の剥離紙を得た。
【0063】
<比較例1>
目止め層を設けずに、上質紙に、直接、剥離剤層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の剥離紙を得た。
【0064】
<比較例2>
上質紙をキャストコート紙に変更して、目止め層を設けずに、キャストコート紙に、直接、剥離剤層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の剥離紙を得た。
【0065】
[耐溶剤性の評価]
密閉容器内で、トルエンを染み込ませた紙ワイパー(日本製紙クレシア社製、キムワイプ(登録商標))を、各例で得られた剥離紙の剥離剤層の表面に載置した。30分後、1時間経過後、2時間経過後、4時間経過後、8時間経過後、16時間経過後、及び24時間経過後に、それぞれ、上記のトルエンを染み込ませた紙ワイパーを取り除き、当該紙ワイパーを取り除いた箇所に、ポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B、ポリエステル基材、アクリル系粘着剤)を貼付した。その後、貼付したポリエステル粘着テープを手で剥がして目視にて観察し、下記評価基準で評価した。
【0066】
(評価基準)
A:紙層破れが発生しない。
F:紙層破れが発生した。
【0067】
[剥離力の評価]
剥離剤層にポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B、ポリエステル基材、アクリル系粘着剤)を貼り合わせ、温度23℃、相対湿度50%の条件下で30分間放置後の剥離力を、JIS Z0237:2022に準拠して、剥離速度0.3m/分の条件で180°ピール試験を行い、測定した。
【0068】
【0069】
各実施例の剥離紙は、目止め層を設けない比較例1の剥離紙に比べ、耐溶剤性に優れることが分かる。
【0070】
各実施例の剥離紙は、酢酸セルロースを含む目止め層を設けている。このため、本実施形態に係る剥離紙は、生分解性に優れ、環境影響が低減されやすい。
10…紙基材、11…第一主面(紙基材10の第一主面)、13…第二主面(紙基材10の第二主面)、20…目止め層、21…主面(目止め層20の主面)、30…剥離剤層、31…主面(剥離剤層30の主面)、100…剥離紙。