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特開2024-4982工作機械のびびり振動抑制方法及びびびり振動抑制システム
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  • 特開-工作機械のびびり振動抑制方法及びびびり振動抑制システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004982
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】工作機械のびびり振動抑制方法及びびびり振動抑制システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/12 20060101AFI20240110BHJP
   G05B 19/404 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B23Q15/12 A
G05B19/404 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104922
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506214736
【氏名又は名称】株式会社オーツー・パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】藤瀬 憲則
(72)【発明者】
【氏名】善生 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 俊介
(72)【発明者】
【氏名】宮本 俊介
(72)【発明者】
【氏名】川島 淳
【テーマコード(参考)】
3C001
3C269
【Fターム(参考)】
3C001KA07
3C001KB04
3C001KB09
3C001TA03
3C001TA06
3C001TB08
3C269AB05
3C269AB31
3C269BB03
3C269EF02
3C269JJ09
3C269MN47
(57)【要約】
【課題】びびり振動周波数を同定することなく安定限界線図を作成して切削条件を変更可能とする。
【解決手段】初期切削条件で加工した後(S1)、エンドミルで加工されたワークの側面の加工面模様をカメラで取得し(S2,S6)、取得した加工面模様の画像から、工具系の振動変位及び/又は振動周波数を算出し(S3,S7)、取得した振動変位及び振動周波数から伝達関数を同定し(S8~S10)、同定した伝達関数に基づいて安定限界線図を作成して(S11)、作成した安定限界線図に基づいて、主軸回転速度及び/又は切込量を変更する(S12)。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に装着した切削工具を回転させてワークの側面を切削加工する工作機械において、加工に伴うびびり振動を抑制する方法であって、
加工された前記側面の加工面模様を取得する加工面模様取得ステップと、
取得した前記加工面模様から工具系の振動情報を算出する振動情報取得ステップと、
取得した前記振動情報から伝達関数を同定する伝達関数同定ステップと、
同定した前記伝達関数に基づいて安定限界線図を作成する安定限界線図作成ステップと、
作成した前記安定限界線図に基づいて主軸回転速度及び/又は前記切削工具による切込量を変更する切削条件変更ステップと、
を実行することを特徴とする工作機械のびびり振動抑制方法。
【請求項2】
前記振動情報は、振動変位及び/又は振動周波数であることを特徴とする請求項1に記載の工作機械のびびり振動抑制方法。
【請求項3】
前記振動情報取得ステップでは、前記切削工具の回転方向に配置された刃が1回転毎に生成する加工面模様の幅の大小に基づいて前記振動変位を算出することを特徴とする請求項2に記載の工作機械のびびり振動抑制方法。
【請求項4】
前記振動情報取得ステップでは、前記切削工具の回転方向に配置された刃が1回転毎に生成する加工面模様の幅が変動する周期に基づいて、前記振動周波数を算出することを特徴とする請求項2又は3に記載の工作機械のびびり振動抑制方法。
【請求項5】
前記伝達関数同定ステップでは、複数の主軸回転速度で加工して得られるそれぞれの前記振動周波数に対応したコンプライアンス値を、複数の主軸回転速度で加工して得られるそれぞれの前記振動変位と切削力との比から算出し、前記振動周波数と前記コンプライアンス値との関係に基づいて前記伝達関数を同定することを特徴とする請求項2又は3に記載の工作機械のびびり振動抑制方法。
【請求項6】
前記伝達関数同定ステップでは、複数の主軸回転速度で加工して得られるそれぞれの前記振動周波数に対応したコンプライアンス値を、複数の主軸回転速度で加工して得られるそれぞれの前記振動変位と切削力との比から算出し、前記振動周波数と前記コンプライアンス値との関係に基づいて前記伝達関数を同定することを特徴とする請求項4に記載の工作機械のびびり振動抑制方法。
【請求項7】
前記安定限界線図作成ステップでは、前記伝達関数に対し、カーブフィッティングしてモーダルパラメータを同定し、同定した前記モーダルパラメータに基づいて前記安定限界線図を作成し、前記主軸回転速度及び/又は前記切込量を変更することを特徴とする請求項5に記載の工作機械のびびり振動抑制方法。
【請求項8】
主軸に装着した切削工具を回転させてワークの側面を切削加工する工作機械において、加工に伴うびびり振動を抑制するシステムであって、
加工された前記側面の加工面模様を取得する加工面模様取得手段と、
取得した前記加工面模様から工具系の振動情報を算出する振動情報取得手段と、
取得した前記振動情報から伝達関数を同定する伝達関数同定手段と、
同定した前記伝達関数に基づいて安定限界線図を作成する安定限界線図作成手段と、
作成した前記安定限界線図に基づいて主軸回転速度及び/又は前記切削工具による切込量を変更する切削条件変更手段と、
を備えることを特徴とする工作機械のびびり振動抑制システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械において、エンドミル加工によるびびり振動を抑制する方法及び、びびり振動を抑制するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンドミル加工において、びびり振動は、工作機械、工具、ワークの動特性と切削過程とがある条件を満たしたときに発生する。この工作機械、工具、ワークの動特性は、高価な測定器及び専門知識を必要とするハンマリング試験によって伝達関数が測定される。そして、ハンマリング試験により測定された伝達関数から安定限界線図を作成し、主軸回転速度を変更することで、びびり振動を抑制できることが知られている。
一方で、特許文献1,2及び非特許文献1,2には、びびり振動の加工面模様から、びびり振動周波数を同定し、主軸回転速度を変更することを繰返し行うことで、ハンマリング試験による伝達関数の測定無しに、びびり振動を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6727578号公報
【特許文献2】特開2020-49626号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「エンドミル加工面のびびり振動模様に基づく現象の逆解析と安定ポケットの探索方法」日本機械学会論文集,Vol.83,No.848,2017
【非特許文献2】「エンドミルびびり加工面模様の二次元離散フーリエ変換を用いた画像処理に基づく状態推定方法の検討」日本機械学会論文集,Vol.85,No.879,2019
【非特許文献3】「切削加工におけるびびり振動の発生機構と抑制」電気製鋼,第82巻2号,2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1,2及び非特許文献1,2は、びびり振動を発生させるため、工具にダメージが生じる。また、びびり振動の加工面模様から同定可能なのはびびり振動周波数であり、安定限界線図を作成するために必要なモーダルパラメータである、「質量m、ばね定数k、減衰係数c」は同定できない。よって、びびり振動抑制のためには、びびり振動の加工面模様からびびり振動周波数を同定し、主軸回転速度を変更することを繰返し行う必要がある。
【0006】
そこで、本開示は、びびり振動周波数を同定することなく安定限界線図を作成して切削条件を変更することができる工作機械のびびり振動抑制方法及びびびり振動抑制システムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の構成は、主軸に装着した切削工具を回転させてワークの側面を切削加工する工作機械において、加工に伴うびびり振動を抑制する方法であって、
加工された前記側面の加工面模様を取得する加工面模様取得ステップと、
取得した前記加工面模様から工具系の振動情報を算出する振動情報取得ステップと、
取得した前記振動情報から伝達関数を同定する伝達関数同定ステップと、
同定した前記伝達関数に基づいて安定限界線図を作成する安定限界線図作成ステップと、
作成した前記安定限界線図に基づいて主軸回転速度及び/又は前記切削工具による切込量を変更する切削条件変更ステップと、を実行することを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記振動情報は、振動変位及び/又は振動周波数であることを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記振動情報取得ステップでは、前記切削工具の回転方向に配置された各刃が1回転毎に生成する加工面模様の幅の大小に基づいて前記振動変位を算出することを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記振動情報取得ステップでは、前記切削工具の回転方向に配置された各刃が1回転毎に生成する加工面模様の幅が変動する周期に基づいて、前記振動周波数を算出することを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記伝達関数同定ステップでは、複数の主軸回転速度で加工して得られるそれぞれの前記振動周波数に対応したコンプライアンス値を、複数の主軸回転速度で加工して得られるそれぞれの前記振動変位と切削力との比から算出し、前記振動周波数と前記コンプライアンス値との関係に基づいて前記伝達関数を同定することを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記安定限界線図作成ステップでは、前記伝達関数に対し、カーブフィッティングしてモーダルパラメータを同定し、同定した前記モーダルパラメータに基づいて前記安定限界線図を作成し、前記主軸回転速度及び/又は前記切込量を変更することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本開示の第2の構成は、主軸に装着した切削工具を回転させてワークの側面を切削加工する工作機械において、加工に伴うびびり振動を抑制するシステムであって、
加工された前記側面の加工面模様を取得する加工面模様取得手段と、
取得した前記加工面模様から工具系の振動情報を算出する振動情報取得手段と、
取得した前記振動情報から伝達関数を同定する伝達関数同定手段と、
同定した前記伝達関数に基づいて安定限界線図を作成する安定限界線図作成手段と、
作成した前記安定限界線図に基づいて主軸回転速度及び/又は前記切削工具による切込量を変更する切削条件変更手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、高価な測定器及び専門知識を必要とするハンマリング試験無しに、エンドミルによる側面加工の加工面模様から伝達関数を同定し、伝達関数を基に安定限界線図を作成し主軸回転速度及び/又は切込量を変更することで、びびり振動を抑制することができる。本開示では、びびり振動の加工面模様から、びびり振動周波数を同定し、主軸回転速度を変更することを繰返し行う必要が無いため、工具にダメージが生じない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】マシニングセンタにおけるびびり振動抑制システムの概略図である。
図2】(A)は、エンドミルにおける側面加工の加工面模様を示す説明図、(B)はエンドミルの説明図である。
図3】モーダルパラメータである「質量m、ばね定数k、減衰係数c」を同定する方法を示すグラフである。
図4】同定したモーダルパラメータから作成した安定限界線図の説明図である。
図5】びびり振動抑制方法のフローチャートである。
図6】レーザ式変位計による加工面模様取得方法を示す説明図である。
図7】接触式変位計による加工面模様取得方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、工作機械の一例であるマシニングセンタ1において、第2の構成に係るびびり振動抑制システムSを構成した一例を示す概略図である。ここではエンドミル9による側面加工の構成を示している。
マシニングセンタ1において、ワーク4は、ベッド2の上で移動するテーブル3に治具を介して固定されている。マシニングセンタ1は、ベッド2上に固定されたコラム5上で移動するサドル6及び主軸頭7を有している。エンドミル9は、ホルダ8を介して主軸頭7の主軸7aに保持されている。マシニングセンタ1は、ワーク4とエンドミル9とが制御装置12の指令により相対移動することで切削加工をする。
そして、マシニングセンタ1には、カメラ10及び解析装置11が設けられている。カメラ10は、エンドミル9によるワーク4の加工面模様を撮影する。カメラ10は、本開示の加工面模様取得手段の一例である。
解析装置11は、加工面模様解析手段13と、伝達関数算出手段14と、安定限界線図作成手段15と、推奨切削条件算出手段16とを備えている。
【0011】
加工面模様解析手段13は、カメラ10から取得した加工面模様を解析して、工具系の振動情報である振動変位及び/又は振動周波数を算出する。加工面模様解析手段13は、本開示の振動情報取得手段の一例である。
伝達関数算出手段14は、加工面模様解析手段13から得た振動情報から伝達関数を同定する。伝達関数算出手段14は、本開示の伝達関数同定手段の一例である。
安定限界線図作成手段15は、伝達関数算出手段14から取得した伝達関数を基に安定限界線図を作成又は推測する。安定限界線図作成手段15は、本開示の安定限界線図作成手段の一例である。
推奨切削条件算出手段16は、安定限界線図作成手段15から取得した安定限界線図に基づいて、最適な主軸回転速度及び/又は切込量を算出する。
制御装置12は、推奨切削条件算出手段16から取得した推奨切削条件に基づいて、主軸回転速度及び/又は切込量を変更する。推奨切削条件算出手段16及び制御装置12は、本開示の切削条件変更手段の一例である。
【0012】
図2は、エンドミル9によるワーク4の側面加工の加工面模様から振動変位及び振動周波数を算出する方法を示す説明図である。図2(A)のように加工面模様21は、切削力によりエンドミル9が加振され微小に振動しながら切削されるため、1刃送りの加工面模様(回転方向に配置された刃が1回転毎に生成する加工面模様)22は、均一な幅ではなく幅が変動する。なお、1刃送りの加工面模様22は、図2(B)に示すエンドミル9のねじれ角28により、図2(A)の下から上方向に切削加工され、最小幅23のとき振動によってエンドミル9が加工面から遠ざかって加工し、最大幅24のとき振動によってエンドミル9は加工面に近づいて加工している。最小幅(wmin)23と最大幅(wmax)24のとき、どの程度の深さ(ymin、ymax)で加工しているかは、以下の式(1)で算出できる。ここで、Dは工具直径である。
【0013】
【数1】
【0014】
振動変位(x)は、深さの差であり、以下の式(2)で算出できる。
【0015】
【数2】
【0016】
下方向から上方向への切削速度(Vc(up))27は、円周方向の切削速度(V)26とねじれ角(β)28とから、以下の式(3)で算出できる。
【0017】
【数3】
【0018】
また、下方向から上方向への切削速度27と加工面模様22の幅とが変動する長さ(L)25とから、振動周波数fは、以下の式(4)で算出できる。
【0019】
【数4】
【0020】
図3は、モーダルパラメータである「質量m、ばね定数k、減衰係数c」を同定する方法の説明図である。主軸回転速度を変更して加工した加工面模様から振動変位及び振動周波数を算出し、振動変位と、切削力シミュレーションで求めた切削力との比をコンプライアンスとし、縦軸:コンプライアンス、横軸:振動周波数としてプロットしたものが伝達関数のグラフ31である。なお、切削力は、切削力シミュレーションを行わず、実測してもよいし、予め作成しておいたデータベースを参照して取得してもよい。プロット点32に対し、ガウス関数(以下の式(5))でカーブフィッティング33して、伝達関数を推定する。なお、カーブフィッティングの方法はガウス関数以外を用いても良い。
【0021】
【数5】
【0022】
ガウス関数から、コンプライアンス(Gmax)、固有振動数(f)、減衰率(ξ)は、以下の式(6)~(8)で算出できる。
【0023】
【数6】
【0024】
また、モーダルパラメータである質量(m)、ばね定数(k)、減衰係数(c)は、以下の式(9)~(11)で算出できる。
【0025】
【数7】
【0026】
図4は、伝達関数を基に安定限界線図を作成し、主軸回転速度及び切込量を変更する図である。伝達関数を基にした安定限界線図の作成方法は、非特許文献3の方法を用いる。以下、手順を説明する。
(1)加工面模様から同定した伝達関数の実部が負となる領域においてびびり振動周波数ωを仮定する。
(2)以下の式(12)より、安定限界alimを算出する。ここで、Kは比切削抵抗、Gは伝達関数の実部である。
【0027】
【数8】
【0028】
(3)以下の式(13)より、それぞれの波数k=0,1,2・・に対して回転速度nを算出する。
【0029】
【数9】
【0030】
式(13)をTについて解くと、以下の式(14)が求められる。ここで、Tは回転周期、nは主軸回転速度である。
【0031】
【数10】
【0032】
(4)共振周波数近傍でωを変えて(1)から(3)を繰り返す。
そして、作成された図4の安定限界線図41から、加工プログラムで最初に設定された初期切削条件42より安定限界切込量の高い推奨切削条件43に主軸回転速度を変更すると、初期切削条件42より大きな切込量に変更しても安定して加工が可能となる。切込量の変更範囲は、初期切削条件42の切込量以上かつ、安定限界線図41の安定限界切込量以下である。
【0033】
図5は、びびり振動抑制システムSにおいて実行する第1の構成に係るびびり振動抑制方法の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップ(以下「S」)1では、制御装置12が、初期切削条件42で加工を行う。
S2では、加工面模様21をカメラ10で撮影する(加工面模様取得ステップ)。
S3では、S2で取得した加工面模様21の画像から、加工面模様解析手段13が工具系の振動変位及び振動周波数を算出する。
S4では、加工面模様解析手段13が振動周波数から主軸回転速度の変動幅を算出する(S3,S4:振動情報取得ステップ)。
S5では、制御装置12が、変動幅に基づいて主軸回転速度を変更して再び加工する。
S6では、加工面模様21をカメラ10で撮影する(加工面模様取得ステップ)。
【0034】
S7では、S6で取得した加工面模様21の画像から、加工面模様解析手段13が工具系の振動変位及び振動周波数を算出する(振動情報取得ステップ)。
S8では、伝達関数算出手段14が、振動変位を切削力シミュレーションで求めた切削力で除してコンプライアンスを算出する。
S9では、伝達関数算出手段14が、縦軸:コンプライアンス、横軸:振動周波数としてプロットし、カーブフィッティングで伝達関数を推定する(S8,S9:伝達関数同定ステップ)。
S10では、安定限界線図作成手段15が、推定した伝達関数からモーダルパラメータ「質量m、ばね定数k、減衰係数c」を同定する。
S11では、安定限界線図作成手段15が、モーダルパラメータをもとに安定限界線図41を作成する(S10,S11:安定限界線図作成ステップ)。
S12では、推奨切削条件算出手段16が、安定限界線図41から最適な主軸回転速度及び切込量を算出する(切削条件変更ステップ)。
【0035】
上記形態のびびり振動抑制システムSでは、エンドミル9(切削工具の一例)で切削加工されたワーク4の側面の加工面模様21をカメラ10で取得し(S2,S6)、取得した加工面模様21から、工具系の振動変位及び振動周波数(振動情報の一例)を算出し(S3,S7)、取得した振動変位及び振動周波数から伝達関数を同定し(S8~S10)、同定した伝達関数に基づいて安定限界線図41を作成して(S11)、作成した安定限界線図41に基づいて、主軸回転速度及び切込量を変更する(S12)。
この構成によれば、高価な測定器及び専門知識を必要とするハンマリング試験無しに、エンドミル9による側面加工の加工面模様21から伝達関数を同定し、伝達関数を基に安定限界線図41を作成し主軸回転速度及び切込量を変更することで、びびり振動を抑制することができる。この構成では、びびり振動の加工面模様21から、びびり振動周波数を同定し、主軸回転速度を変更することを繰返し行う必要が無いため、工具にダメージが生じない。
【0036】
なお、上記形態では、カメラによる加工面模様の撮影と振動情報の取得とを2回行っているが、3回以上行ってもよい。
上記形態では、振動情報として工具系の振動変位及び振動周波数を取得しているが、振動変位と振動周波数との何れか一方のみを取得してもよい。
上記形態では、推奨切削条件として主軸回転速度及び切込量を変更しているが、主軸回転速度と切込量との何れか一方のみを変更してもよい。
上記形態では、加工面模様をカメラにより取得しているが、加工面模様取得手段は、カメラに限らず、例えば図6に示すように、加工面模様21は、レーザ式の変位計101で取得したり、図7に示すように、接触式の変位計102で取得したりしてもよい。
工作機械は、マシニングセンタ以外であってもよい。
びびり振動抑制システムは、上記形態のように制御装置と解析装置とを別に設ける他、制御装置に解析装置を組み込んで構成してもよい。また、解析装置は、工作機械と別に外部に設置してもよい。この場合、1つの解析装置で複数の工作機械の解析を行って個々の制御装置に推奨切削条件を提示することで、各工作機械でびびり振動抑制を図ることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1・・マシニングセンタ、2・・ベッド、3・・テーブル、4・・ワーク、5・・コラム、6・・サドル、7・・主軸頭、7a・・主軸、8・・ホルダ、9・・エンドミル、10・・カメラ、11・・解析装置、12・・制御装置、13・・加工面模様解析手段、14・・伝達関数算出手段、15・・安定限界線図作成手段、16・・推奨切削条件算出手段、21・・側面加工の加工面模様、22・・1刃送りの加工面模様、23・・加工面模様の最小幅、24・・加工面模様の最大幅、25・・加工面模様の幅が変動する長さ、26・・円周方向の切削速度、27・・下方向から上方向への切削速度、28・・ねじれ角、31・・伝達関数のグラフ、32・・プロット点、33・・カーブフィッティング、41・・安定限界線図、42・・初期切削条件、43・・推奨切削条件。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7