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特開2024-49833半導体封止用樹脂組成物および半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049833
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】半導体封止用樹脂組成物および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240403BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240403BHJP
   C08L 61/04 20060101ALI20240403BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20240403BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/22
C08L61/04
C08G59/24
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156304
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】溝畑 賢
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4J002AC034
4J002AC074
4J002AC104
4J002CC03Y
4J002CC04Y
4J002CD04X
4J002CD05W
4J002CD05X
4J002CD06X
4J002CD07X
4J002CE00Y
4J002CP034
4J002DE146
4J002EN027
4J002EN107
4J002EU117
4J002EU137
4J002EW017
4J002EW177
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD14Y
4J002FD157
4J002FD204
4J002GJ02
4J002GQ05
4J036AD07
4J036AD11
4J036AD13
4J036FA03
4J036FB05
4J036FB06
4J036FB07
4J036FB16
4J036GA04
4J036HA12
4J036JA07
4M109AA01
4M109BA01
4M109BA04
4M109CA21
4M109CA22
4M109EA02
4M109EA03
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB07
4M109EB08
4M109EB09
4M109EB12
4M109EB16
4M109EB18
4M109EB19
4M109EC06
(57)【要約】
【課題】成形時において流動性が高く成形性に優れるとともに、硬化時において熱伝導率が高く放熱性に優れた封止用樹脂組成物、およびこれを用いて製造される信頼性に優れた電子装置を提供する。
【解決手段】式(EP1)で表される構造を有する第一のエポキシ化合物;およびアルミナ粉末、を含む半導体封止用の樹脂組成物であって、
【化1】
式(EP1)において、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(EP1)で表される構造を有する第一のエポキシ化合物;および
アルミナ粉末、
を含む半導体封止用の樹脂組成物であって、
【化1】
式(EP1)において、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す、
樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物は、ビフェニル型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、トリフェノールメタン型エポキシ化合物、およびビフェニルアラルキル型エポキシ化合物から選択される少なくとも1つの第二のエポキシ化合物を含む、樹脂組成物。
【請求項3】
前記第二のエポキシ化合物の配合量は、前記第一のエポキシ化合物と前記第二のエポキシ化合物との合計量に対して、80質量%以下の量である、
請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
低応力剤をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記低応力剤は、シリコーンオイル、シリコーンゴム、ポリブタジエン化合物、およびアクリロニトリル-ブタジエン共重合化合物から選択される少なくとも1種を含む、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の樹脂組成物であって、
前記低応力剤は、当該樹脂組成物全体に対し、0.1質量%以上5質量%以下の量である、樹脂組成物。
【請求項7】
フェノール系硬化剤をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記フェノール系硬化剤は、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、およびビフェニルアラルキル型フェノール樹脂から選択される少なくとも1種を含む、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
硬化促進剤をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
基板と、
前記基板上に搭載された半導体素子と、
前記半導体素子を封止する封止材と、を備える電子装置であって、
前記封止材が、請求項1乃至9のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物からなる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物、および当該封止用樹脂組成物を封止材として用いて製造される電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品のプリント配線板への高密度実装化に伴い、IC、LSI等の半導体素子を含む半導体装置は、従来の挿入型パッケージから表面実装型パッケージにその主流が変わってきている。表面実装型では、半導体素子のパッケージに対する占有体積も大きくなり、パッケージの肉厚は非常に薄くなっている。また、半導体素子の多機能化、大容量化によって、チップ面積の増大、多ピン化が進み、さらにパッド数の増加によって、パッドピッチ及びパッドサイズの縮小化、いわゆる狭パッドピッチ化も進み、それに伴い発熱量も増大している。このような事情により、高発熱量の半導体素子を封止する半導体封止材においても高い放熱特性が求められている。
【0003】
樹脂組成物の熱伝導性を向上するためには、窒化アルミニウムや窒化ホウ素、アルミナ、結晶性シリカなどの無機フィラーを充填することが一般的である。中でも、熱伝導性、化学的な安定性、コストのバランスに優れているアルミナは、放熱フィラーとして最も多く使用されている(たとえば、特許文献1)。しかしながら、樹脂に配合するアルミナ粉末の充填量が多くなると、樹脂組成物の粘度が上昇して成形性が悪くなり、その結果、生産性が低下するといった問題が生じる。
【0004】
また封止樹脂自体の熱伝導率や耐熱性を向上させることも提案されている。このような高熱伝導樹脂の取り組みとして、半導体封止用樹脂組成物にメソゲン基を導入したエポキシ樹脂を用いる技術が提案されている(特許文献2)。特許文献2では、メソゲン基を有する液晶性エポキシ樹脂等を重合することにより、熱伝導性を向上させた絶縁組成物を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-137627号公報
【特許文献2】特願2004-331811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載のメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂はその骨格の特性から高融点化する傾向があり、流動性が低下して成形が困難になる場合があった。また、特許文献の樹脂組成物は、熱伝導性の点においてさらなる改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、特定の構造を有するエポキシ化合物を配合することにより、流動性と高熱伝導性とを有する封止用樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明によれば、以下に示す半導体封止用樹脂組成物および半導体装置が提供される。
[1]式(EP1)で表される構造を有する第一のエポキシ化合物;および
アルミナ粉末、
を含む半導体封止用の樹脂組成物であって、
【化1】
式(EP1)において、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す、樹脂組成物。
[2]項目[1]に記載の樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物は、ビフェニル型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、トリフェノールメタン型エポキシ化合物、およびビフェニルアラルキル型エポキシ化合物から選択される少なくとも1つの第二のエポキシ化合物を含む、樹脂組成物。
[3]前記第二のエポキシ化合物の配合量は、前記第一のエポキシ化合物と前記第二のエポキシ化合物との合計量に対して、80質量%以下の量である、項目[2]に記載の樹脂組成物。
[4]低応力剤をさらに含む、項目[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記低応力剤は、シリコーンオイル、シリコーンゴム、ポリブタジエン化合物、およびアクリロニトリル-ブタジエン共重合化合物から選択される少なくとも1種を含む、項目[4]に記載の樹脂組成物。
[6]項目[4]または[5]に記載の樹脂組成物であって、
前記低応力剤は、当該樹脂組成物の固形分全体に対し、0.1質量%以上5質量%以下の量である、樹脂組成物。
[7]フェノール系硬化剤をさらに含む、項目[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]前記フェノール系硬化剤は、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、およびビフェニルアラルキル型フェノール樹脂から選択される少なくとも1種を含む、項目[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]硬化促進剤をさらに含む、項目[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]基板と、
前記基板上に搭載された半導体素子と、
前記半導体素子を封止する封止材と、を備える電子装置であって、
前記封止材が、項目[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物からなる、半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、封止時において流動性が高く成形性に優れるとともに、硬化時において熱伝導率が高く放熱性に優れる封止用樹脂組成物、ならびに当該封止用樹脂組成物を用いて製造された半導体装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の樹脂組成物を用いて製造される、両面封止型の電子装置の一例について、断面構造を示した図である。
図2】本実施形態の樹脂組成物を用いて製造される、片面封止型の電子装置の一例について、断面構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、「a以上b以下」のことを表す。例えば、「5~90質量%」とは「5質量%以上90質量%以下」を意味する。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の半導体封止用の樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称する場合がある)は、基板上に搭載された半導体素子を封止するための封止材として用いられる樹脂材料であり、式(EP1)で表される構造を有する第一のエポキシ化合物と、アルミナ粉末とを含む。
【0013】
【化2】
【0014】
式(EP1)において、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す。
【0015】
式(EP1)で表されるエポキシ化合物は、室温で固形の化合物であり、その硬化物は、高い熱伝導性を有する。したがって、このようなエポキシ化合物を含む本実施形態の樹脂組成物は、流動性を有するとともに、その硬化物は高い熱伝導性を有し、結果として、半導体素子の封止材として好適に使用することができる。
【0016】
以下、本実施形態の樹脂組成物に用いられる成分について説明する。
【0017】
(第一のエポキシ化合物)
本実施形態の樹脂組成物は、式(EP1)で表されるエポキシ化合物(本明細書中、「第一のエポキシ化合物」と称する)を含む。
【0018】
【化3】
【0019】
式(EP1)において、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す。
炭素数1~3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等を挙げることができ、メチル基が好ましい。好ましいR~Rとしては、それぞれ独立して、水素原子及びメチル基が挙げられ、より好ましくは、水素原子である。
【0020】
好ましい第一のエポキシ化合物としては、式(EP1')で表される化合物が挙げられる。
【0021】
【化4】
【0022】
式(EP1')において、R~Rは、上記式(EP1)におけるものと同義である。
【0023】
第一のエポキシ化合物の具体例としては、例えば、
4-{4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル 4-(2,3-エポキシプロポキシ)ベンゾエート、
4-{4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル 4-(2,3-エポキシプロポキシ)-2-メチルベンゾエート、
4-{4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル 4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3-メチルベンゾエート、
4-{4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル 4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3-エチルベンゾエート、
4-{4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル 4-(2,3-エポキシプロポキシ)-2-イソプロピルベンゾエート、および
4-{4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル 4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3,5-ジメチルベンゾエート、を挙げることができる。中でも、高い熱伝導性を有することから、4-{4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル 4-(2,3-エポキシプロポキシ)ベンゾエート、および4-{4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル 4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3-メチルベンゾエートを用いることが好ましい。
【0024】
第一のエポキシ化合物の配合量は、樹脂組成物全体に対して、例えば、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、封止工程において流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。また、樹脂組成物全体の配合割合の上限値についても、特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、22質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、樹脂組成物のガラス転移温度の低下が少ない。
【0025】
式(EP1)で表される第一のエポキシ化合物は、公知の方法により製造することができ、例えば、式(PH1)で表されるジヒドロキシ化合物と、式(EH1)で表されるエピハロヒドリンとを、アンモニウム塩および無機塩基の存在下で反応させる方法により製造することができる。
【0026】
【化5】
【0027】
式(PH1)において、R~Rは、上記式(EP1)におけるものと同義である。
【0028】
【化6】
【0029】
式(EH1)において、Xは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を表す。
【0030】
上記反応に用いられるアンモニウム塩としては、例えば、4級アンモニウムハライド等を挙げることができ、好ましくは、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリブチルアンモニウムヨージド等が挙げられ、好ましくは、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリ
メチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
アンモニウム塩の使用量は、ジヒドロキシ化合物(PH1)1モルに対して、例えば、0.0001~1モルであり、好ましくは、0.001~0.5モルである。
【0031】
上記反応に用いられる無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等を挙げることができる。
無機塩基としては、好ましくは、アルカリ金属水酸化物等が挙げられ、より好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
無機塩基の使用量は、ジヒドロキシ化合物(PH1)1モルに対して、例えば、0.1~20モルであり、好ましくは、0.5~10モルである。
無機塩基は、例えば、粒状などの固体として用いてもよいし、例えば、1~60重量%程度の濃度に調製した水溶液として用いてもよい。
【0032】
(第二のエポキシ化合物)
本実施形態の樹脂組成物は、上記第一のエポキシ化合物に加え、さらなるエポキシ化合物(本明細書中、「第二のエポキシ化合物」と称する)を含んでもよい。第二のエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物;ビフェニル型エポキシ化合物、スチルベン型エポキシ化合物、ハイドロキノン型エポキシ化合物等の結晶性エポキシ化合物;キシリレン型エポキシ化合物、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物等のアリールアルキレン型エポキシ樹化合物;クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ナフトールノボラック型エポキシ化合物等のノボラック型エポキシ化合物;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ化合物、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、アルコキシナフタレン骨格含有フェノールアラルキルエポキシ化合物等のフェノールアラルキル型エポキシ化合物;トリフェノールメタン型エポキシ化合物、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ化合物等の3官能型エポキシ化合物;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ化合物、テルペン変性フェノール型エポキシ化合物等の変性フェノール型エポキシ化合物;トリアジン核含有エポキシ化合物等の複素環含有エポキシ化合物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、溶融粘度を最適範囲に維持することができ、成形性が良好であり、低コストであることから、ビフェニル型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、トリフェノールメタン型エポキシ化合物、およびビフェニルアラルキル型エポキシ化合物を用いることが好ましい。
【0033】
第二のエポキシ化合物を用いる場合、その配合量の上限は、上記第一のエポキシ化合物と第二のエポキシ化合物との合計量に対して、例えば、80質量%以下であり、好ましくは、70質量%以下であり、より好ましくは、60質量%以下であり、さらにより好ましくは、50質量%以下であり、特に好ましくは、40質量%以下である。第二のエポキシ化合物を用いる場合、その配合量の下限は、例えば、0.1質量%以上であり、好ましくは、1質量%以上であり、より好ましくは、10質量%以上であり、さらにより好ましくは、15質量%以上であり、特に好ましくは、20質量%以上である。
上記範囲の量で第二のエポキシ化合物を用いることにより、得られる樹脂組成物の熱伝導性を維持しつつ、流動性の改善を図ることができる。
【0034】
(アルミナ粉末)
本実施形態の樹脂組成物に用いられるアルミナ粒子は、樹脂組成物に熱伝導性を付与する作用を有する。アルミナ粒子は、例えば、シリカ粒子のような他の無機フィラーに比べ、熱伝導性が高く、封止材として用いる際に熱設計が容易である。また、アルミナ粒子は、シリカ粒子よりも熱伝導率が高い他の無機フィラー(例えば、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミ、ダイヤモンドなど)に比べて低コストであり、また真球度を高くしやすく、耐熱性に優れる。
【0035】
一実施形態において、アルミナ粒子は、レーザー解析散乱法により測定した場合の50%体積累積粒径D50が、10~50μmの第一のアルミナ粒子を含む。
【0036】
好ましい実施形態において、アルミナ粒子は、上記第一のアルミナ粒子に加え、50%体積累積粒径D50が0.1~10μmの微粉の第二のアルミナ粒子を含む。
【0037】
アルミナ粒子の50%体積累積粒径D50が0.1μm未満である場合、樹脂組成物の粘度が非常に高くなるため、充填性、封止工程における作業性が悪化する。また、アルミナ粒子の50%体積累積粒径D50が0.1μm未満である場合、樹脂組成物の硬化物の弾性率が下がり、結果として得られるパッケージの反りが生じる。一方、アルミナ粒子の50%体積累積粒径D50が50μmを超える場合、充填不良が発生するおそれがある。また充填できたとしても充填時にボイドを巻き込むため、不適切である。上記の第一および第二のアルミナ粒子を組み合わせて含むことにより、本実施形態の樹脂組成物は、充填性と封止工程における作業性とを両立して備え得る。
【0038】
50%体積累積粒径D50が、10~50μmの第一のアルミナ粒子と、50%体積累積粒径D50が0.1μm~10μmの第二のアルミナ粒子とを組み合わせて用いる場合、アルミナ粒子全体に対する第一のアルミナ粒子の割合は、60~100体積%であり、好ましくは、70~95体積%であり、より好ましくは、75~90体積%である。
【0039】
上記の粒径分布を有するアルミナ粒子を用いることにより、流動性が改善され、よって封止工程における作業性が良好であるとともに、充填不良が低減された、封止材として好適な樹脂組成物を得ることができる。
【0040】
アルミナ粒子の形状は特に限定されず、球状、鱗片状、粒状、粉末状のいずれであってもよい。
【0041】
好ましい実施形態において、アルミナ粒子は、真球度が0.8以上、好ましくは0.9以上の球状アルミナ粒子を含むことが好ましい。このような球状アルミナ粒子は、封止材中で最密充填状態に近い状態で存在し、よって得られる封止材の熱伝導性が改善される。また、このような球状アルミナを含む樹脂組成物は、流動性が改善され、封止工程における取り扱い性が良好である。
【0042】
ここで、本明細書中において、「真球度」は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した二次元像における「粒子の最大径に対する最小径の比」と定義する。すなわち、本実施形態において、アルミナ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した二次元像における最大径に対する最小径の比が、0.8以上であることを指す。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物におけるアルミナ粉末の配合量は、樹脂組成物全体に対して、例えば、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが好ましい。これにより、樹脂組成物の硬化物における熱伝導率を向上させることができる。一方、樹脂組成物中のアルミナ粉末の含有量の上限は、樹脂組成物全体に対して、例えば、98質量%未満であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、93質量%以下であることが好ましい。これにより、樹脂組成物の粘度を、封止工程の際に好適な範囲に調節することができる。ここでアルミナ粉末の配合量は、使用するアルミナ粉末の合計量を指す。
【0044】
(他の無機フィラー)
本実施形態の樹脂組成物は、上述のアルミナフィラーに加え、他の無機フィラーを含んでもよい。無機フィラーとしては、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ、2次凝集シリカ等のシリカ;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化チタン、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタンホワイト、タルク、クレー、マイカ、カーボンブラック、ガラス繊維等が挙げられる。粒子形状は限りなく真球状であることが好ましく、また、粒子の大きさの異なるものを混合することにより充填量を多くすることができる。
【0045】
他の無機フィラーを使用する場合、その配合量は、樹脂組成物全体に対して、例えば、0.1~10質量%であり、好ましくは、0.1~5質量%の量である。
【0046】
(低応力剤)
本実施形態の樹脂組成物は、低応力剤を含んでもよい。
低応力剤としては、具体的には、シリコーンオイル、シリコーンゴムなどのシリコーン化合物;ポリブタジエン化合物;アクリロニトリル-カルボキシル基末端ブタジエン共重合化合物などのアクリロニトリル-ブタジエン共重合化合物などを挙げることができる。低応力剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。中でも、低応力剤として、シリコーンオイル、シリコーンゴム、ポリブタジエン化合物、およびアクリロニトリル-ブタジエン共重合化合物を用いることが好ましい。
【0047】
好ましい実施形態において、低応力剤は、室温(25℃)で液状の低応力剤(例えば、シリコーンオイル)を含む。別の好ましい実施形態において、低応力剤は、室温(25℃)で液状の低応力剤と、室温で固形の低応力剤(例えば、シリコーンゴムまたはアクリロニトリル-ブタジエン共重合体化合物)とを組み合わせて含む。
低応力剤を用いる場合、その配合量は、樹脂組成物全体に対し、例えば、0.1~5質量%であり、好ましくは、0.2~3質量%である。
また室温で液状の低応力剤と室温で固形の低応力剤とを組み合わせて用いる場合、液状低応力剤と固形低応力剤の合計量に対する液状低応力剤の量が、例えば、40質量%以上、好ましくは、50質量%以上、より好ましくは、60質量%以上となる配合割合で使用される。
【0048】
(フェノール系硬化剤)
本実施形態の樹脂組成物は、フェノール樹脂硬化剤を含んでもよい。用いることができるフェノール樹脂硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック、フェノール-ビフェニルノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、アリル化ノボラック型フェノール樹脂、およびキシリレンノボラック型フェノール樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格含有ナフトールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル型フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール化合物などが挙げられる。フェノール樹脂系硬化剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。フェノール樹脂系硬化剤としては、上記具体例のうち、ノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、およびビフェニルアラルキル型フェノール樹脂含むことが好ましい。これにより樹脂組成物において、エポキシ化合物を良好に硬化することができる。
【0049】
フェノール樹脂硬化剤の配合割合の下限値については、特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、十分な流動性を得ることができる。また、硬化剤の配合割合の上限値についても、特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、16質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、樹脂組成物の流動性および融け性を所望の範囲とすることができる。
【0050】
また、フェノール系硬化剤の配合量は、上述のエポキシ化合物のエポキシ基数(EP)とフェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が0.8以上、1.3以下となる量であることが好ましい。当量比がこの範囲内であると、樹脂組成物の成形時に十分な硬化性を得ることができる。また、当量比がこの範囲内であると、樹脂組成物の流動性および融け性を所望の範囲とすることができる。ここで、エポキシ化合物のエポキシ基数は、上記の第一のエポキシ化合物のエポキシ基数と第二のエポキシ化合物(使用する場合)のエポキシ基数との合計量を指す。
【0051】
(硬化促進剤)
本実施形態の樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤としては、上述のフェノール樹脂と上述のフェノール樹脂硬化剤との硬化反応を促進することができるものであれば、特に制限することなく使用することができ、例えば、オニウム塩化合物;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン等の有機ホスフィン;テトラ置換ホスホニウム化合物;ホスホベタイン化合物;ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物;スホニウム化合物とシラン化合物との付加物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)、2-フェニル-4-メチルイミダゾール(2P4MZ)、2-フェニルイミダゾール(2PZ)、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール(2P4MHZ)、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(1B2PZ)などのイミダゾール化合物;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(DBU)、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
硬化促進剤の含有量は、上述のエポキシ化合物とフェノール樹脂硬化剤との合計量に対して、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。硬化促進剤の含有量が上記下限値より少ないと、硬化促進効果を高めることができない場合がある。また、上記上限値より多いと、流動性や成形性に不具合を生じる傾向があり、また、製造コストの増加につながる場合がある。
【0053】
(その他の成分)
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、カップリング剤、流動性付与剤、離型剤、イオン捕捉剤、着色剤、難燃剤等の添加剤を含んでもよい。以下、代表成分について説明する。
【0054】
(カップリング剤)
カップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシラン;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリルシラン;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン;イソシアヌレートシラン;アルキルシラン;3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランなどのウレイドシラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシラン;チタン系化合物;アルミニウムキレート類;アルミニウム/ジルコニウム系化合物などが挙げられる。カップリング剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0055】
カップリング剤を用いる場合、その配合量は、樹脂組成物全体に対して、例えば、0.1質量%以上5質量%以下であり、好ましくは、0.1質量%以上3質量%以下である。
【0056】
(流動性付与剤)
流動性付与剤は、リン原子含有硬化促進剤などの潜伏性を有さない硬化促進剤が樹脂組成物の溶融混練時に反応するのを抑制するように働く。これにより、樹脂組成物の生産性を向上できる。流動性付与剤としては、具体的には、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体などの芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物などが挙げられる。
【0057】
(離型剤)
離型剤としては、具体的には、カルナバワックスなどの天然ワックス;モンタン酸エステルワックス、酸化ポリエチレンワックスなどの合成ワックス;ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩;パラフィン;エルカ酸アミドなどのカルボン酸アミドなどが挙げられる。離型剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0058】
(イオン捕捉剤)
上記イオン捕捉剤は、具体的には、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト状物質などのハイドロタルサイト類;マグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物などが挙げられる。イオン捕捉剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0059】
(着色剤)
着色剤としては、具体的には、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタンなどを挙げることができる。着色剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0060】
(難燃剤)
難燃剤としては、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼン、カーボンブラックなどを挙げることができる。難燃剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0061】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の樹脂組成物は、上述のエポキシ化合物、およびアルミナ粉末、ならびに必要に応じて用いられる添加剤を所定の含有量となるように、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサー等のミキサーやブレンダー等で均一に混合した後、ニーダー、ロール、ディスパー、アジホモミキサー、及びプラネタリーミキサー等で加熱しながら混練することにより製造できる。なお、混練時の温度としては、硬化反応が生じない温度範囲である必要があり、エポキシ化合物およびフェノール樹脂硬化剤の組成にもよるが、70~150℃程度で溶融混練することが好ましい。混練後に冷却固化し、混練物を、粉粒状、顆粒状、タブレット状、またはシート状に加工してもよい。
【0062】
粉粒状の樹脂組成物を得る方法としては、たとえば、粉砕装置により、混練物を粉砕する方法が挙げられる。混練物をシートに成形したものを粉砕してもよい。粉砕装置としては、たとえば、ハンマーミル、石臼式磨砕機、ロールクラッシャーを用いることができる。
【0063】
顆粒状または粉末状の樹脂組成物を得る方法としては、たとえば、混練装置の出口に小径を有するダイスを設置して、ダイスから吐出される溶融状態の混練物を、カッター等で所定の長さに切断するというホットカット法に代表される造粒法を用いることもできる。この場合、ホットカット法等の造粒法により顆粒状または粉末状の樹脂組成物を得た後、樹脂組成物の温度があまり下がらないうちに脱気を行うことが好ましい。
【0064】
上述のようにして製造された本実施形態の樹脂組成物は、その硬化物のレーザフラッシュ法により測定した場合の熱伝導率が、5.0W/m・K以上であり、好ましくは、5.2W/m・K以上であり、より好ましくは、5.4W/m・K以上であり、特に好ましくは、5.5W/m・K以上である。
【0065】
本実施形態の樹脂組成物の最低溶融粘度は、例えば、15kPa・s以下であり、12kPa・s以下であることより好ましい。上記値を超えると、充填性が低下し、ボイドや未充填部分が発生するおそれがある。
【0066】
(用途)
本実施形態に係る封止用樹脂組成物を封止材として用いて製造される電子装置の一例について説明する。
図1は本実施形態に係る両面封止型の電子装置100を示す断面図である。
本実施形態の半導体装置100は、電子素子20と、電子素子20に接続されるボンディングワイヤ40と、封止材50と、を備えるものであり、当該封止材50は、前述の樹脂組成物の硬化物により構成される。
【0067】
より具体的には、電子素子20は、基材30上にダイアタッチ材10を介して固定されており、電子装置100は、電子素子20上に設けられた図示しない電極パッドからボンディングワイヤ40を介して接続されるアウターリード34を有する。ボンディングワイヤ40は用いられる電子素子20等を勘案しながら設定することができるが、たとえばCuワイヤを用いることができる。
【0068】
図2は、本実施形態の樹脂組成物を用いて、回路基板に搭載した電子素子を封止して得られる片面封止型の電子装置の一例について、断面構造を示した図である。回路基板408上にダイアタッチ材402を介して電子素子401が固定されている。電子素子401の電極パッド407と回路基板408上の電極パッド407との間はボンディングワイヤ404によって接続されている。本実施形態の樹脂組成物の硬化体で構成される封止材406によって、回路基板408の電子素子401が搭載された面が封止されている。回路基板408上の電極パッド407は回路基板408上の非封止面側の半田ボール409と内部で接合されている。
【0069】
以下に、本実施形態に係る封止用樹脂組成物を用いた半導体装置の製造方法について説明する。
本実施形態に係る半導体装置は、例えば、上述した封止用樹脂組成物の製造方法により、封止用樹脂組成物を得る工程と、基板上に電子素子を搭載する工程と、前記封止用樹脂組成物を用いて、前記電子素子を封止する工程とにより製造される。封止材を形成するために用いられる手法として、例えば、トランスファー成形法、圧縮成形法、インジェクション成形法等を用いることができる。封止する工程は、樹脂組成物を、80℃から200℃程度の温度で10分から10時間程度の時間をかけて硬化させることにより実施される。
【0070】
封止される電子素子の種類としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子などの半導体素子が挙げられるが、これらに限定されない。得られる電子装置の形態としては、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップサイズ・パッケージ(CSP)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0072】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
実施例、比較例で用いた成分を以下に示す。
(第一エポキシ化合物)
・エポキシ化合物1:以下の方法で調製した式(1-1)で表されるエポキシ化合物
(エポキシ化合物1の調製)
(ジヒドロキシ化合物(2-1)の調製)
【0074】
【化7】
【0075】
ディーンスターク装置を取り付けた反応容器内にて、4-ヒドロキシ安息香酸11.0g(79.6mmol)、4-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)フェノール19.9g(式(6')で表される化合物、104mmol)、p-トルエンスルホン酸1.51g(7.96mmol)及びクロロベンゼン220gを約25℃の室温で混合した。得られた混合物を還流下で16時間攪拌した後、室温まで冷却した。尚、反応の進行に伴って生成した水はディーンスターク装置によって反応容器から除去された。その後、析出した固体を濾過し、粗生成物を得た。次いで、冷却装置を取り付けた反応容器内にて、粗生成物、クロロホルム700mL、エタノール100mLを混合し、55℃で1時間攪拌した。続いて、室温まで冷却し、さらに5℃で終夜冷却した。その後、析出した固体を濾過し、クロロホルム45mLで洗浄した後、50℃で4時間減圧乾燥させて、式(2-1)で表されるジヒドロキシ化合物(以下、ジヒドロキシ化合物(2-1)と記すことがある)を含む薄灰色結晶11.67gを得た。
該結晶を液体クロマトグラフィーによって分析し、得られたクロマトグラフの面積百分率を算出したところ、96.7%であり、該結晶中のジヒドロキシ化合物(2-1)の含有量を96.7重量%と仮定すると、4-ヒドロキシ安息香酸を基準とするジヒドロキシ化合物(2-1)の収率は、45%であった。
【0076】
得られたジヒドロキシ化合物(2-1)のスペクトルデータは以下のとおりであった。
H-NMR(δ:ppm,DMSO-d) 10.30(s,1H),9.13(s,1H),7.82(d,2H),7.05(d,2H),6.85(d,2H),6.68(d,2H),4.87(m,1H),1.28-2.62(c,9H)
【0077】
(エポキシ化合物(1-1)の製造)
【0078】
【化8】
【0079】
冷却装置を取り付けた反応容器内にて、上記で得られたジヒドロキシ化合物(2-1)11.0g(34.1mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド1.70g(5.28mmol)、エピクロロヒドリン130g(1410mmol)、及び2-メチル-2-プロパノール85.9g(1210mmol)を室温で混合し、さらに、70℃で22時間攪拌した後、18℃まで冷却した。次に、15重量%の水酸化ナトリウム水溶液を28.2g(106mmol)徐々に加えて、18℃で2時間攪拌した後、0℃まで冷却した。
次に、イオン交換水275mLを加え、室温で、クロロホルム825mLを加えた後、混合し、クロロホルム層と水層とを得た。クロロホルム層は、さらにイオン交換水で3回洗浄し、水洗したクロロホルム層に含まれる不溶分を濾過して除去し、得られた濾液を濃縮して粗生成物を得た。
冷却装置を取り付けた反応容器内にて、得られた粗生成物、トルエン143mLおよび2-プロパノール220mLを混合し、得られた混合物を70℃で3時間攪拌した。攪拌後の混合物を室温まで冷却し、さらに5℃で終夜保持した。その後、析出した固体を濾過により取り出した。取り出した固体を2-プロパノールで洗浄した後、乾燥し、式(1-1)で表されるジエポキシ化合物(1-1)(以下、ジエポキシ化合物(1-1)と記すことがある)を含む白色結晶12.51gを得た。
該結晶を液体クロマトグラフィーによって分析し、得られたクロマトグラフの面積百分率を算出したところ、93.7%であり、該結晶中のジエポキシ化合物(1-1)の含有量を93.7重量%と仮定すると、ジヒドロキシ化合物(2-1)を基準とするジエポキシ化合物(1-1)の収率は、81%であった。
【0080】
得られたジエポキシ化合物(1-1)のスペクトルデータは以下のとおりであった。
H-NMR(δ:ppm,CDCl) 8.01(d,2H),7.14(d,2H),6.95(d,2H),6.87(d,2H),4.99(m,1H),4.31(dd,1H),4.20(dd,1H),3.88-4.08(c,2H),3.30-3.45(c,2H),2.84-3.00(c,2H),2.70-2.80(c,2H),2.53(m,1H),2.10-2.32(c,2H),1.85-2.09(c,2H),1.50-1.80(c,4H)
【0081】
(第二エポキシ化合物)
・エポキシ化合物2:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YX4000HK)
【0082】
(硬化剤)
・硬化剤1:ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(明和化成製、MEH-7851SS)
・硬化剤2:フェノールノボラック(住友ベークライト製、PR-55617)
【0083】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:テトラフェニルフォスフォニウム2,3-ジヒドロキシナフタレート(住友ベークライト社製)
【0084】
(アルミナ粉末)
・アルミナ粉末1:アルミナ(マイクロン社製、TA943、平均粒子径(D50)20.3μm)
・アルミナ粉末2:アルミナ(デンカ社製、DAW-02、平均粒子径(D50)2.7μm)
(無機フィラー)
・無機フィラー1:シリカフィラー(トクヤマ社製、レオロシール CP-102)
・無機フィラー2:カーボンブラック(東海カーボン社製、ERS-2001)
【0085】
(カップリング剤)
・カップリング剤1:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、CF-4083)
・カップリング剤2:γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM803P)
(低応力剤)
・低応力剤1:ジメチルシロキサン-アルキルカルボン酸-4,4'-(1-メチルエチリデン)ビスフェノール グリシジルエーテル共重合体(住友ベークライト株式会社製、M69B)
・低応力剤2:カルボニル末端ブチルニトリルゴム(蝶理GLEX社製、CTBN1008SP)
・低応力剤3:シリコーンレジン(信越ケミカル社製、KR-480)
【0086】
(離型剤)
・離型剤1:モンタン酸エチレングリコールエステル(クライアント・ジャパン社製、リコワックスE)
(イオン捕捉剤)
・イオン捕捉剤1:マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレート(協和化学工業社製、DHT-4H)
(添加剤)
・添加剤1:3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール(日本カーバイド工業社製)
【0087】
(実施例1~6、比較例1~2)
表1で示す配合の原料をスーパーミキサーにより5分間粉砕混合したのち、この混合原料を同方向回転二軸押出機にて溶融混練した。次に、混練後に冷却固化した後、ロールクラッシャーを用いて粉砕し、粉粒状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、以下の項目について、以下に示す方法により評価した。
【0088】
(流動性(スパイラルフロー))
低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS-15)を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で、樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性の指標であり、数値が大きい方が、流動性が良好である。単位はcm。
【0089】
(曲げ強度)
樹脂組成物を用い、JIS K 6911に準じ、トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間15分で、80mm×10mm×4mm(厚さ)の試験片を成形し、260℃にて曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。
【0090】
(曲げ弾性率)
長さ80mm以上、高さ4mm、巾10mmの試験片を、ポストキュア後にクロスヘッド速度2mm/min、支点間距離64mmの条件で曲げ応力を徐々に加えて、荷重―歪み曲線を求め、試験片の曲げ弾性率を計算した。N=2で測定を行い、その平均値を代表値とした。
【0091】
(熱伝導性)
長さ1cm、巾1cm、厚さ1mmの試験片を作成し、熱拡散率の測定を行った。パウダーを使って比熱測定を行った。得られた熱拡散率、比熱、比重から熱伝導率を求めた。
【0092】
【表1】
【符号の説明】
【0093】
10 ダイアタッチ材
20 電子素子
30 基材
32 ダイパッド
34 アウターリード
40 ボンディングワイヤ
50 封止材
100 電子装置
401 電子素子
402 ダイアタッチ材
404 ボンディングワイヤ
406 封止材
407 電極パッド
408 回路基板
409 半田ボール
図1
図2