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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049837
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】動植物デジタルツインシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240403BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240403BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156314
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 伯恭
(72)【発明者】
【氏名】得平 洋史
(72)【発明者】
【氏名】津金 榮則
(72)【発明者】
【氏名】宮田 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】北野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲雄
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】現実世界の動植物に関するデータを利用して構築された動植物に関するデジタルツインを用いて、動植物に関する予測をする。
【解決手段】動植物デジタルツインシステム10は、データベースサーバ14と、アプリケーションサーバ15と、ユーザが利用する情報端末13とを含む。データベースサーバ14のデジタルツイン記憶部144には、現実世界の動植物に関するデータから構築された動植物に関する動植物デジタルツインが格納されている。アプリケーションサーバ15は、動植物デジタルツインから得られるデータを取得し、取得したデータに基づいて、所定のシミュレーションを実行することにより、現実世界の動植物に関する予測データを計算し、予測データを情報端末13へ送信する。情報端末は、予測データを自らの表示部へ表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データベースサーバと、アプリケーションサーバと、ユーザが利用する情報端末とを含む動植物デジタルツインシステムであって、
前記データベースサーバのデジタルツイン記憶部には、現実世界の動植物に関するデータから構築された動植物に関する動植物デジタルツインが格納されており、
前記アプリケーションサーバは、前記動植物デジタルツインから得られるデータを取得し、取得した前記データに基づいて、所定のシミュレーションを実行することにより、現実世界の動植物に関する予測データを計算し、前記予測データを前記情報端末へ送信し、
前記情報端末は、前記予測データを自らの表示部へ表示する、
動植物デジタルツインシステム。
【請求項2】
前記情報端末は、動植物を指定する指定データを受け付けると、前記指定データと前記情報端末の位置データとを前記アプリケーションサーバへ送信し、
前記アプリケーションサーバは、前記指定データと、前記位置データと、前記動植物デジタルツインから得られるデータとに基づいて、前記所定のシミュレーションを実行することにより、前記指定データにより指定された前記動植物が現実世界において出現する位置及び時刻を含む前記予測データを計算し、前記予測データを前記情報端末へ送信し、
前記情報端末は、前記予測データを地図データ上へ付加して表示する、
請求項1に記載の動植物デジタルツインシステム。
【請求項3】
前記指定データには、地図上における範囲を表す範囲データが含まれており、
前記アプリケーションサーバは、地図上における前記範囲データが表す範囲内に、前記指定データにより指定された前記動植物が出現すると予測された場合に、前記予測データを前記情報端末へ送信する、
請求項2に記載の動植物デジタルツインシステム。
【請求項4】
前記情報端末は、所定の動植物の配置を指定する配置指定データを受け付けると、前記配置指定データを前記アプリケーションサーバへ送信し、
前記アプリケーションサーバは、前記配置指定データと、前記動植物デジタルツインから得られるデータとに基づいて、前記所定のシミュレーションを実行することにより、前記予測データを計算し、前記予測データを前記情報端末へ送信し、
前記情報端末は、前記予測データを地図データ上へ付加して表示する、
請求項1に記載の動植物デジタルツインシステム。
【請求項5】
前記情報端末は、動植物としての植栽についての地図上におけるモニタリング範囲を指定するモニタリング範囲指定データを受け付けると、前記モニタリング範囲指定データを前記アプリケーションサーバへ送信し、
前記アプリケーションサーバは、前記モニタリング範囲指定データと、前記動植物デジタルツインから得られるデータとに基づいて、前記所定のシミュレーションを実行することにより、前記予測データを計算し、前記モニタリング範囲指定データが表す地図上の範囲内における前記予測データを前記情報端末へ送信し、
前記情報端末は、前記予測データを自らの表示部へ表示する、
請求項1に記載の動植物デジタルツインシステム。
【請求項6】
前記動植物デジタルツインは、動物種と植物種との間の関係を表す関係データに基づいて予め構築されたデジタルツインである、
請求項1に記載の動植物デジタルツインシステム。
【請求項7】
前記動植物デジタルツインは、動物種と気象条件との間の関係を表す気象条件データに基づいて予め構築されたデジタルツインである、
請求項1に記載の動植物デジタルツインシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動植物デジタルツインシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物や動物などの観察対象の生息状況を提供する技術が知られている(例えば、特許文献1-3)。また、害獣情報を提供する技術が知られている(例えば、特許文献4-5)。また、緑地計画のための技術が知られている(例えば、特許文献6-10)。また、植物のための臨床サービスをもたらす方法が知られている(例えば、特許文献11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-228817号公報
【特許文献2】特開2007-34342号公報
【特許文献3】特開2002-342690号公報
【特許文献4】特開2013-165652号公報
【特許文献5】特開2018-143215号公報
【特許文献6】特開2015-23842号公報
【特許文献7】特開2013-168135号公報
【特許文献8】特開2003-132139号公報
【特許文献9】特開2002-41986号公報
【特許文献10】特開2014-135944号公報
【特許文献11】特開2019-004874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、現実世界から収集した様々なデータをコンピュータ上で再現する技術が知られており、この技術はデジタルツインとも称されている。このため、例えば、現実世界における植物に関するデータをコンピュータ上で再現することにより、植物デジタルツインを実現することも可能であると考えられる。
【0005】
上記従来技術では、植物データベース(例えば、特許文献8)、樹木データベース(例えば、特許文献9)、及び植物カタログ(例えば、特許文献11)といった形で、植物のデータベースが利用されている。また、特許文献2の技術には、動植物などの観察対象物の関連情報を蓄積する観察対象関連情報蓄積部が開示されている。
【0006】
しかし、植物は動物の影響を受け、また、動物は植物の影響を受けることから、単に植物のデータベースを利用するのみでは、現実世界における植物の状況を精度良く予測することはできないと考えられる。
【0007】
また、特許文献2の技術は、情報提供希望者からの要望を受け付けると、単に動植物などの観察対象物の関連情報を情報提供希望者に提供するのみで、なんらかの予測に基づく情報を提供するものではない。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、現実世界の動植物に関するデータを利用して構築された動植物に関するデジタルツインを用いて、動植物に関する予測をすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第1の態様は、データベースサーバと、アプリケーションサーバと、ユーザが利用する情報端末とを含む動植物デジタルツインシステムであって、前記データベースサーバのデジタルツイン記憶部には、現実世界の動植物に関するデータから構築された動植物に関する動植物デジタルツインが格納されており、前記アプリケーションサーバは、前記動植物デジタルツインから得られるデータを取得し、取得した前記データに基づいて、所定のシミュレーションを実行することにより、現実世界の動植物に関する予測データを計算し、前記予測データを前記情報端末へ送信し、前記情報端末は、前記予測データを自らの表示部へ表示する、動植物デジタルツインシステムである。これにより、現実世界の動植物に関するデータを利用して構築された動植物に関するデジタルツインを用いて、動植物に関する予測をすることができる。
【0010】
また、本発明に係る第2の態様の前記情報端末は、動植物を指定する指定データを受け付けると、前記指定データと前記情報端末の位置データとを前記アプリケーションサーバへ送信し、前記アプリケーションサーバは、前記指定データと、前記位置データと、前記動植物デジタルツインから得られるデータとに基づいて、前記所定のシミュレーションを実行することにより、前記指定データにより指定された前記動植物が現実世界において出現する位置及び時刻を含む前記予測データを計算し、前記予測データを前記情報端末へ送信し、前記情報端末は、前記予測データを地図データ上へ付加して表示する。これにより、ユーザによって指定された動植物との触れ合い又は接触の抑制をすることができる。
【0011】
また、本発明に係る第3の態様の前記指定データには、地図上における範囲を表す範囲データが含まれており、前記アプリケーションサーバは、地図上における前記範囲データが表す範囲内に、前記指定データにより指定された前記動植物が出現すると予測された場合に、前記予測データを前記情報端末へ送信する。これにより、動植物の指定だけではなく、その範囲を指定することにより、より高い確度で、動植物との触れ合い又は接触の抑制をすることができる。
【0012】
また、本発明に係る第4の態様の前記情報端末は、所定の動植物の配置を指定する配置指定データを受け付けると、前記配置指定データを前記アプリケーションサーバへ送信し、前記アプリケーションサーバは、前記配置指定データと、前記動植物デジタルツインから得られるデータとに基づいて、前記所定のシミュレーションを実行することにより、前記予測データを計算し、前記予測データを前記情報端末へ送信し、前記情報端末は、前記予測データを地図データ上へ付加して表示する。これにより、ユーザが所定の動植物(例えば、樹木)の配置を指定する配置指定データを指定することにより、その動植物の成長に応じてどのような生物が誘引されるのかを予測することができる。
【0013】
本発明に係る第5の態様の前記情報端末は、動植物としての植栽についての地図上におけるモニタリング範囲を指定するモニタリング範囲指定データを受け付けると、前記モニタリング範囲指定データを前記アプリケーションサーバへ送信し、前記アプリケーションサーバは、前記モニタリング範囲指定データと、前記動植物デジタルツインから得られるデータとに基づいて、前記所定のシミュレーションを実行することにより、前記予測データを計算し、前記モニタリング範囲指定データが表す地図上の範囲内における前記予測データを前記情報端末へ送信し、前記情報端末は、前記予測データを自らの表示部へ表示する。これにより、動植物デジタルツインのデータに基づいて、そのモニタリング範囲内において植栽がどのように成長するのかを予測することができる。
【0014】
本発明に係る第6の態様の前記動植物デジタルツインは、動物種と植物種との間の関係を表す関係データに基づいて予め構築されたデジタルツインである。これにより、予測データの予測精度を向上させることができる。
【0015】
本発明に係る第7の態様の前記動植物デジタルツインは、動物種と気象条件との間の関係を表す気象条件データに基づいて予め構築されたデジタルツインである。これにより、予測データの予測精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、現実世界の動植物に関するデータを利用して構築された動植物に関するデジタルツインを用いて、動植物に関する予測をすることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る動植物デジタルツインシステムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】動植物デジタルツインを説明するための図である。
図3】実施形態の動植物デジタルツインシステムの各装置のコンピュータの構成例を示す図である。
図4】実施形態の動植物デジタルツインシステムにおいて実行されるシーケンスの一例を示す図である。
図5】実施形態の動植物デジタルツインシステムにおいて実行されるフローチャートの一例を示す図である。
図6】動植物デジタルツインを構築する際に利用されるデータの一例を示す図である。
図7】動植物デジタルツインを構築する際に利用されるデータの一例を示す図である。
図8】動植物デジタルツインを構築する際に利用されるデータの一例を示す図である。
図9】実施形態の動植物デジタルツインシステムにおいて実行されるシーケンスの一例を示す図である。
図10】予測データの表示形式の一例を示す図である。
図11】ユーザが害獣の一例である熊と遭遇する場面の図である。
図12】実施形態の動植物デジタルツインシステムにおいて実行されるシーケンスの一例を示す図である。
図13】実施形態の動植物デジタルツインシステムにおいて実行されるシーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0019】
[実施形態の概要]
【0020】
本実施形態は、動植物を包含する自然のデジタルツインを利用することにより、人々のQOL(Quality of life)向上、植栽計画と維持管理の効率化、及び外来種対策と生物防除等を促進することを目的とする。本実施形態では、まず、現実世界の動植物に関するデータを利用して動植物デジタルツインを構築するために、現実世界の動植物に関するデータが格納されているデータベースを用意する。このデータベースに格納されているデータは、現実世界に設置された各種センサによって得られたデータが含まれている。次に、その動植物デジタルツインを用いて、各種のアプリケーションを構築する。具体的には、動植物デジタルツインから得られる各種データを用いて、動植物に関する所定のシミュレーション(例えば、植物が成長する、動物が去来する等のシミュレーション)を実行することにより、現実世界における動植物に関する予測データを計算する。そして、この予測データを利用して、ユーザが動植物と触れ合う機会の創出、ユーザが害獣と鉢合わせることの抑制、生物を誘引する緑地計画の策定、及び植栽剪定のモニタリングをする。以下、具体的に説明する。
【0021】
[第1実施形態]
<動植物デジタルツインシステムの構成>
図1は、第1実施形態に係る動植物デジタルツインシステム10の構成の一例を示すブロック図である。動植物デジタルツインシステム10は、機能的には、図1に示されるように、複数のセンサ12A,12B,・・・と、情報端末13と、データベースサーバ14と、アプリケーションサーバ15とを含んだ構成で表すことができる。複数のセンサ12A,12B,・・・と、情報端末13と、データベースサーバ14と、アプリケーションサーバ15とは、インターネット等の通信ネットワーク16によって通信可能に接続されている。また、具体的接続先が決められているデータベースサーバ、アプリケーションサーバだけでなく、同様の機能サービスのクラウドシステムを利用することもある。
【0022】
第1実施形態の動植物デジタルツインシステム10は、ユーザと動植物(例えば、動物の一例である鳥類、昆虫類、及び樹木等)との触れ合いの機会を創出するアプリケーションを提供する。
【0023】
複数のセンサ12A,12B,・・・は、現実世界において配置される各種のセンサである。複数のセンサ12A,12B,・・・は、現実世界における動植物に関するセンサデータを検知する。
【0024】
複数のセンサ12A,12B,・・・の各々は、例えば、カメラ、温度計、湿度計、音センサ、及びGPS等の位置センサ等である。より具体的には、複数のセンサ12A,12B,・・・の各々は、例えば、バードバスカメラ、止まり木を撮像するカメラ、RFIDタグ、集音マイク、及びカメラトラップ等であり、動植物の動態データをセンサデータとして収集する。また、センサとしてドローン搭載カメラ等を利用してもよく、例えば、樹木類の点群データを収集してもよい。複数のセンサ12A,12B,・・・の各々によって検知された各種のセンサデータは、後述するデータベースサーバ14に送信される。なお、以下では、複数のセンサ12A,12B,・・・のうちの1つのセンサを単にセンサ12とも称する。
【0025】
情報端末13は、ユーザによって操作される。情報端末13は、例えば、パーソナルコンピュータ又はスマートフォン等である。
【0026】
データベースサーバ14は、複数のセンサ12A,12B,・・・の各々によって検知された各種のセンサデータを取得し、それら複数のセンサデータに基づいて、現実世界の動植物に関する動植物デジタルツインを生成する。図2に、動植物デジタルツインを説明するための図を示す。図2に示されているように、現実世界の動植物に関するデータRを利用して、データベースサーバ14上に動植物デジタルツインが構築される。
【0027】
データベースサーバ14は、機能的には、データベース制御部140と、データベース記憶部142と、デジタルツイン記憶部144を備える。
【0028】
アプリケーションサーバ15は、デジタルツイン記憶部144に格納された動植物デジタルツインの各種のデータに基づいて、ユーザと生物(例えば、鳥類)との触れ合う機会を創出するアプリケーションを提供する。アプリケーションサーバ15は、機能的には、サーバ制御部150と、サーバ記憶部152とを備える。
【0029】
センサ12、情報端末13、データベースサーバ14、及びアプリケーションサーバ15は、例えば、図3に示すようなコンピュータ60によって実現することができる。センサ12、情報端末13、データベースサーバ14、及びアプリケーションサーバ15を実現するコンピュータ60は、CPU61、一時記憶領域としてのメモリ62、及び不揮発性の記憶部63を備える。また、コンピュータ60は、入出力装置等(図示省略)が接続される入出力interface(I/F)64、及び記録媒体69に対するデータの読み込み及び書き込みを制御するread/write(R/W)部65を備える。また、コンピュータは、インターネット等のネットワークに接続されるネットワークI/F66を備える。CPU61、メモリ62、記憶部63、入出力I/F64、R/W部65、及びネットワークI/F66は、バス67を介して互いに接続される。
【0030】
記憶部63は、Hard Disk Drive(HDD)、Solid State Drive(SSD)、フラッシュメモリ等によって実現できる。記憶媒体としての記憶部63には、コンピュータを機能させるためのプログラムが記憶されている。CPU61は、プログラムを記憶部63から読み出してメモリ62に展開し、プログラムが有するプロセスを順次実行する。
【0031】
<動植物デジタルツインシステム10の作用>
【0032】
次に、第1実施形態の動植物デジタルツインシステム10の作用を説明する。
【0033】
複数のセンサ12A,12B,・・・の各々によって検知されたセンサデータがデータベースサーバ14に送信される際に、図4に示されるようなシーケンスが実行される。なお、図4に示されるシーケンスは、1つのセンサ12からデータベースサーバ14へセンサデータが送信される場合のシーケンスである。
【0034】
ステップS100において、センサ12は、自らが取得したセンサデータをデータベースサーバ14へ送信する。例えば、センサ12は、自らの位置を表す位置データと、自らの周辺を撮像した画像データと、それらのデータが取得された時刻を表す時刻データとをデータベースサーバ14へ送信する。なお、他の種類のセンサ12は、例えば、位置データと温度データと時刻データとの組み合わせ等の他の種類のデータをデータベースサーバ14へ送信する。
【0035】
次に、ステップS102において、データベースサーバ14のデータベース制御部140は、センサ12から送信されたセンサデータを受信する。
【0036】
そして、ステップS104において、データベース制御部140は、データベース記憶部142へセンサデータを格納する。
【0037】
図4に示されるシーケンスが繰り返し実行されることにより、複数のセンサデータがデータベース記憶部142へ格納される。なお、データベース記憶部142には、人手によって収集された動植物に関する各種データも格納される。データベース記憶部142には、動植物の画像、動植物の位置データ座標、動植物の点群データ、動植物の出現回数、動植物の出現場所、動植物の時期、及び動植物の出現の時間帯等を表す各種データが格納される。なお、以下では、データベース記憶部142に格納されているデータを、単に「動植物データ」とも称する。
【0038】
次に、データベース制御部140は、データベース記憶部142に格納された複数の動植物データに基づいて、現実世界の動植物に関するデジタルツインを構築する。データベースサーバ14は、図5に示されるようなフローチャートを実行する。
【0039】
ステップS106において、データベース制御部140は、データベース記憶部142から、複数の動植物データを読み出す。
【0040】
ステップS108において、データベース制御部140は、ステップS106で読み出された複数の動植物データに基づいて、現実世界の動植物に関するデジタルツインである動植物デジタルツインを構築する。具体的には、データベース制御部140は、データベース化された複数の動植物データに基づいて、季節性、時間推移性、及び場所性等のパラメータを用いて動植物の生息域分布を予測及び補間し、それらのデータを3次元空間に反映させることにより、3次元の動植物デジタルツインを構築する。なお、この動植物デジタルツインは、新たな動植物データがデータベース記憶部142に格納される毎に逐次更新される。
【0041】
なお、動植物デジタルツインを構築する際には、各動物種が選好する条件例に関するデータを考慮ことにより、動物と植物との相互の影響度をより精緻に再現することが可能となる。これにより、後述の各アプリケーションの予測精度を向上させることもできる。例えば、以下のデータを反映した動植物デジタルツインが構築される。
【0042】
図6図8に、動植物デジタルツインを構築する際に利用されるデータの一例を示す。図6図8は、動物種と植物種との間の関係を表す関係データ又は動物種と気象条件との間の関係を表す気象条件データの一例である。
【0043】
図6は、季節性及び樹木特性を考慮した生物の種毎の生存確率モデルを表す図である。図6に示される「高木層密度」「高木層面積」「低木層密度」のうちの「高木層」「低木層」は樹木の種別を表す。図6に示されるグラフの横軸は「密度」又は「面積」の大きさを表すスコアであり、グラフの縦軸は各鳥類b1~b5の生存確率(又は出現確率)を表す。
【0044】
図6に示されるように、鳥類の種別b1~b5に応じて、その樹木付近での生存確率は異なるものとなる。また、図6に示されるように、樹木の「密度」又は「面積」によっても鳥類の生存確率(又は出現確率)は異なるものとなる。また、図6に示されるグラフの実線、点線、及び一点鎖線は、季節性(より詳細には、季節による気象条件の差)を表す。
【0045】
例えば、データベースサーバ14のデータベース制御部140は、図6に示されているグラフのデータを利用して、動植物の生息域分布を予測及び補完することにより動植物デジタルツインを構築する。これにより、後述する各アプリケーションの予測精度を向上させることができる。
【0046】
図7は、動物が集まりやすい植物及び植生のデータを表す図である。例えば、データベースサーバ14のデータベース制御部140は、図7に示されているような、樹木の階層毎の密度や樹種の情報と、動物の集まりやすさを表すスコアとを対応付けたデータを参照することにより動植物デジタルツインを構築する。図7は、樹木の階層と各種の動物の集まりやすさを表すスコアとが対応付けられたテーブルの一例であり、スコアが高ければ高いほど、動物が集まりやすいことを表している。図7は、あくまで一例を示したものである。樹木の階層や動物種に関しては、より詳細にしてもよい。例えば、餌資源(虫類の発生場所、果実の結実状況、魚類の滞在ポイント等)と営巣場所(樹洞、カワセミだったら土壁等)との間に関する相互作用に関連するデータを利用しても良い。または、例えば、餌資源と営巣場所との間の距離が短いほど、餌資源の場所には多くの動物が出現するというデータを利用しても良い。
【0047】
図8は、外部環境要因による動物と植物とのマッチングデータを表す図である。例えば、データベースサーバ14のデータベース制御部140は、図8に示されているような、気象条件と動物の挙動に関するスコアとを対応付けたデータを参照することにより動植物デジタルツインを構築する。図8は、気象条件と各種の動物の出現しやすさを表すスコアとが対応付けられたテーブルの一例であり、スコアが高ければ高いほど、その動物が出現しやすいことを表している。図8は、あくまで一例を示したものであるが、例えば、晴れの日にチョウが飛びやすい、強風時に猛禽類が飛びやすい等、動物種や気象条件をより詳細にしてもよい。
【0048】
例えば、データベースサーバ14のデータベース制御部140は、図6図8に示されるような動物種と植物種との間の関係を表す関係データ及び動物種と気象条件との間の関係を表す気象条件データとに基づいて、現実世界の動植物に関するシミュレーションを実行し、そのシミュレーション結果を参照して動植物の生息域分布を予測及び補完することにより動植物デジタルツインを構築する。
【0049】
次に、アプリケーションサーバ15は、データベースサーバ14のデジタルツイン記憶部144に格納されている動植物デジタルツインの各種データに基づいて、動植物の動態を予測するための予測データを生成する。アプリケーションサーバ15は、図9に示されるようなシーケンスを実行する。なお、図9に示されるシーケンスは、ユーザ自らが触れ合いたい動植物を指定し、その動植物がいつどこで現れるのかに関する予測データがアプリケーションサーバ15によって生成される場合のシーケンスである。
【0050】
まず、ユーザは自らが触れ合いたい動植物を指定し、その情報を情報端末13へ入力する。
【0051】
次に、ステップS200において、情報端末13は、ユーザ自らが触れ合いたい動植物の指定を受け付け、当該動植物の指定を表す指定データと情報端末13の位置データとをアプリケーションサーバ15へ送信する。
【0052】
ステップS202において、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、ステップS200で情報端末13から送信された指定データと位置データとの組み合わせを受信する。
【0053】
ステップS204において、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、位置データが表す位置の周辺(例えば、予め定めらた範囲)における、指定データが表す動植物が関係しているデータの要求を表す要求信号をデータベースサーバ14へ送信する。
【0054】
ステップS206において、データベースサーバ14のデータベース制御部140は、アプリケーションサーバ15から送信された要求信号に応答して、デジタルツイン記憶部144に格納されている動植物デジタルツインからデータを読み出す。そして、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、動植物デジタルツインから読み出したデータをアプリケーションサーバ15へ送信する。
【0055】
例えば、指定データが鳥類Aを表し、位置データがある場所Pを表している場合を考える。この場合、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、過去1年において、ある場所Pの周辺の緑地において鳥類Aの出現が所定回数以上観測された場所、時刻、及び環境に関するデータの要求を表す要求信号を、データベースサーバ14へ送信する。なお、環境に関するデータとは、例えば、天候、気温、及び湿度に関するデータである。
【0056】
この場合、データベースサーバ14のデータベース制御部140は、動植物デジタルツインから要求信号に対応するデータを取得し、取得したデータをアプリケーションサーバ15へ送信する。
【0057】
ステップS208において、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、ステップS206でデータベースサーバ14から送信されたデータを受信し、サーバ記憶部152へ一旦格納する。そして、ステップS208において、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、指定データと、位置データと、動植物デジタルツインから得られるデータとに基づいて、所定のシミュレーションを実行することにより、指定データにより指定された動植物が現実世界において出現する位置及び時刻を含む予測データを計算する。
【0058】
例えば、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、指定データと、位置データと、動植物デジタルツインから得られるデータと、図6図8に示されるような動物種と植物種との間の関係を表す関係データ及び動物種と気象条件との間の関係を表す気象条件データとに基づいて、現実世界の動植物に関するシミュレーションを実行することにより、動植物に関する予測データを計算する。
【0059】
例えば、指定データが表す鳥類Aが鳥類b1である場合には、図6に示される鳥類b1のグラフの情報を用いて、位置データが表す場所Pの周辺の緑地において鳥類b1が出現する位置及び日付(時刻を含む)を含む予測データを計算する。
【0060】
ステップS210において、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、ステップS208で計算された予測データを情報端末13へ送信する。
【0061】
ステップS212において、情報端末13は、ステップS210でアプリケーションサーバ15から送信された予測データを自らの表示部(図示省略)へ表示させる。例えば、情報端末13は、予測データを地図データ上へ付加して表示部(図示省略)へ表示させる。
【0062】
図10に、予測データの表示形式の一例を示す。例えば、指定データが鳥類Aを表している場合、図10に示されるように、その鳥類Aが出現する位置と時刻(図では表記省略)とを表す予測データを地図データ上へ付加して表示部(図示省略)へ表示させる。または、指定データが昆虫類Bを表している場合、図10に示されるように、その昆虫類Bが出現する位置と時刻とを表す予測データを地図データ上へ付加して表示部(図示省略)へ表示させる。または、指定データがある樹木Cを表している場合、図10に示されるように、その樹木Cの位置と開花する日時とを表す予測データを地図データ上へ付加して表示部(図示省略)へ表示させる。
【0063】
以上説明したように、第1実施形態の動植物デジタルツインシステムは、データベースサーバと、アプリケーションサーバと、ユーザが利用する情報端末とを含む動植物デジタルツインシステムであって、データベースサーバのデジタルツイン記憶部には、現実世界の動植物に関するデータから構築された動植物に関する動植物デジタルツインが格納されており、アプリケーションサーバは、動植物デジタルツインから得られるデータを取得し、取得したデータに基づいて、所定のシミュレーションを実行することにより、現実世界の動植物に関する予測データを計算し、予測データを情報端末へ送信し、情報端末は、前記予測データを自らの表示部へ表示する。これにより、現実世界の動植物に関するデータを利用して構築された動植物デジタルツインを用いて、動植物に関する予測データを計算し、各種のアプリケーションに利用することができる。具体的には、ユーザが触れ合いたい動植物を事前に指定することにより、アプリケーションサーバはデータベースサーバによって構築された動植物デジタルツインから得られるデータに基づいて、指定した動植物がいつ頃どこに出現するのかを予測することができるため、ユーザと動植物との触れ合う機会を高い確度で創出することができる。
【0064】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態の動植物デジタルツインシステム10は、アプリケーションサーバ15が害獣をモニタリングするアプリケーションを提供する点が第1実施形態と異なる。なお、第2実施形態の動植物デジタルツインシステム10は、第1実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。
【0065】
第2実施形態の動植物デジタルツインシステム10のアプリケーションサーバ15が提供するアプリケーションは、ユーザが害獣と鉢合わせする機会を抑制するアプリケーションである。
【0066】
図11に、ユーザUが害獣の一例である熊B1と遭遇する場面の図を示す。第1実施形態では、動植物との触れ合いを目的として動植物が出現する位置と時刻とを表す予測データを地図データ上へ付加して情報端末13の表示部へ表示する場合を例に説明したが、図11に示される熊B1のように接触を避けたい害獣も存在する。そこで、第2実施形態では、ユーザが害獣と鉢合わせする機会を抑制するためのアプリケーションを提供する。
【0067】
<動植物デジタルツインシステム10の作用>
第2実施形態の動植物デジタルツインシステム10の作用を説明する。
【0068】
第2実施形態の動植物デジタルツインシステム10は、第1実施形態と同様に、図4及び図9のシーケンス及び図5のフローチャートを実行する。
【0069】
第2実施形態において、まず、ユーザは接触を避けたい対象の動植物(例えば、熊等の害獣)を指定し、その情報を情報端末13へ入力する。
【0070】
このため、図9のステップS200においてアプリケーションサーバ15へ送信される指定データは、ユーザが接触を避けたい対象の動植物を表すデータである。
【0071】
ステップS202~ステップS212は、第1実施形態と同様に実行される。
【0072】
なお、ステップS212において情報端末13に表示される予測データは、害獣との接触を避けるためのアラートとして機能する。
【0073】
以上説明したように、第2実施形態の動植物デジタルツインシステムでは、ユーザが接触を避けたい動植物を事前に指定することにより、アプリケーションサーバは動植物デジタルツインに基づいて、その動植物がいつ頃どこに出現するのかを予測することができるため、ユーザと動植物との接触を高い確度で抑制することができる。
【0074】
なお、上記の第1実施形態及び第2実施形態における指定データに、地図上における範囲を表す範囲データを含ませるようにしてもよい。この場合には、アプリケーションサーバ15は、地図上における範囲データが表す範囲内に、指定データにより指定された動植物が出現すると予測された場合に、予測データを情報端末13へ送信する。これにより、動植物の指定だけではなく、その範囲を指定することにより、より高い確度で、動植物との触れ合い又は接触の抑制をすることができる。また、範囲を指定することにより、アプリケーションサーバ15からのデータ出力の頻度を低下させることができ、アプリケーションサーバ15の処理負荷を低減させることができる。
【0075】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態の動植物デジタルツインシステム10は、アプリケーションサーバ15が生物誘引する緑地計画のアプリケーションを提供する点が第1実施形態及び第2実施形態と異なる。なお、第3実施形態の動植物デジタルツインシステム10は、第1実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。
【0076】
第3実施形態の動植物デジタルツインシステム10のアプリケーションサーバ15が提供するアプリケーションは、生物誘引する緑地計画のアプリケーションである。
【0077】
第3実施形態では、まず、ユーザが、所定の樹木や植物を動植物デジタルツイン上に仮想的に配置することによって動植物デジタルツイン上において緑地計画を策定する。そして、第3実施形態のアプリケーションサーバ15は、仮の緑地計画において仮想的に配置された樹木や植物にどのような動物種が誘引されるのかについて予測する。
【0078】
<動植物デジタルツインシステム10の作用>
第3実施形態の動植物デジタルツインシステム10の作用を説明する。
【0079】
第3実施形態の動植物デジタルツインシステム10は、第1実施形態と同様に、図4のシーケンス及び図5のフローチャートを実行する。また、第3実施形態の動植物デジタルツインシステム10は、図9のシーケンスに代えて図12のシーケンスを実行する。
【0080】
第3実施形態において、まず、ユーザは、所定の動植物(例えば、樹木や植物)の配置を指定し、その情報を情報端末13へ入力する。この指定は、樹木や植物の配置を指定する配置指定データとして情報端末13へ入力される。
【0081】
図12のステップS300において、情報端末13は、ユーザから入力された動植物の配置の指定を受け付け、その指定を表す配置指定データをアプリケーションサーバ15へ送信する。
【0082】
ステップS302において、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、ステップS300で情報端末13から送信された配置指定データを受信する。
【0083】
ステップS304において、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、配置指定データが表す箇所において動植物が関係しているデータの要求を表す要求信号をデータベースサーバ14へ送信する。
【0084】
ステップS306において、データベースサーバ14のデータベース制御部140は、アプリケーションサーバ15から送信された要求信号に応答して、デジタルツイン記憶部144に格納されている動植物デジタルツインからデータを読み出す。そして、データベースサーバ14のデータベース制御部140は、動植物デジタルツインから読み出したデータをアプリケーションサーバ15へ送信する。
【0085】
例えば、動植物デジタルツイン内の配置指定データが表す箇所において、他の動植物が存在している場合には、それを表すデータをアプリケーションサーバ15へ送信する。
【0086】
ステップS308において、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、ステップS300で受け付けた配置指定データと、動植物デジタルツインから得られるデータとに基づいて、所定のシミュレーションを実行することにより予測データを計算する。具体的には、サーバ制御部150は、配置指定データが表す樹木や植物を動植物デジタルツイン上に仮想的に配置し、動植物に関するシミュレーションを実行することにより、その後の時間経過に応じて仮想的に配置された樹木や植物に誘引される動植物に関する予測データを計算する。なお、この際、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、図6図8に示されているような各種データを参照して、予測データを計算する。
【0087】
ステップS310において、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、ステップS308で計算された予測データを情報端末13へ送信する。
【0088】
ステップS312において、情報端末13は、ステップS310でアプリケーションサーバ15から送信された予測データを自らの表示部(図示省略)へ表示させる。例えば、情報端末13は、予測データを地図データ上へ付加して表示部(図示省略)へ表示させる。
【0089】
以上説明したように、第3実施形態の動植物デジタルツインシステムでは、ユーザが所定の動植物(例えば、樹木)の配置を指定することにより、アプリケーションサーバは動植物デジタルツインから得られるデータと、そこに新たな動植物が配置されたこととに基づいて、その動植物の成長に応じてどのような生物が誘引されるのかを予測することができる。
【0090】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態の動植物デジタルツインシステム10は、アプリケーションサーバ15が植栽剪定モニタリングアプリケーションを提供する点が第1~第3実施形と異なる。なお、第4実施形態の動植物デジタルツインシステム10は、第1実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。
【0091】
第4実施形態の動植物デジタルツインシステム10のアプリケーションサーバ15が提供するアプリケーションは、植栽剪定のモニタリングをするアプリケーションである。
【0092】
第4実施形態では、まず、ユーザが、動植物としての植栽についての地図上におけるモニタリング範囲を指定する。そして、第4実施形態のアプリケーションサーバ15は、モニタリング範囲内の植栽がどのように成長するのかを予測する。
【0093】
<動植物デジタルツインシステム10の作用>
第4実施形態の動植物デジタルツインシステム10の作用を説明する。
【0094】
第4実施形態の動植物デジタルツインシステム10は、第1実施形態と同様に、図4のシーケンス及び図5のフローチャートを実行する。また、第4実施形態の動植物デジタルツインシステム10は、図9のシーケンスに代えて図13のシーケンスを実行する。
【0095】
第4実施形態において、まず、ユーザは、動植物としての植栽についての地図上におけるモニタリング範囲を指定し、その情報を情報端末13へ入力する。この指定は、動植物としての植栽についての地図上におけるモニタリング範囲を指定するモニタリング範囲指定データとして情報端末13へ入力される。
【0096】
図13のステップS400において、情報端末13は、ユーザから入力されたモニタリング範囲の指定を受け付け、その指定を表すモニタリング範囲指定データをアプリケーションサーバ15へ送信する。
【0097】
ステップS402において、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、ステップS400で情報端末13から送信されたモニタリング範囲指定データを受信する。
【0098】
ステップS404において、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、モニタリング範囲指定データが表す箇所において動植物が関係しているデータの要求を表す要求信号をデータベースサーバ14へ送信する。
【0099】
ステップS406において、データベースサーバ14のデータベース制御部140は、アプリケーションサーバ15から送信された要求信号に応答して、デジタルツイン記憶部144に格納されている動植物デジタルツインからデータを読み出す。そして、データベースサーバ14のデータベース制御部140は、動植物デジタルツインから読み出したデータをアプリケーションサーバ15へ送信する。
【0100】
例えば、動植物デジタルツイン内のモニタリング範囲指定データが表す箇所において、他の動植物が存在している場合には、それを表すデータをアプリケーションサーバ15へ送信する。
【0101】
ステップS408において、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、ステップS400で受け付けたモニタリング範囲指定データと、動植物デジタルツインから得られるデータとに基づいて、所定のシミュレーションを実行することにより予測データを計算する。具体的には、サーバ制御部150は、動植物デジタルツイン内のモニタリング範囲指定データが表す範囲内に仮想の植栽を配置し、動植物に関するシミュレーションを実行することにより、その後の時間経過に応じて仮想的に配置された植栽がどのように成長するのかに関する予測データを計算する。なお、この際、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、図6図8に示されているような各種データを参照して、予測データを計算する。
【0102】
ステップS410において、アプリケーションサーバ15のサーバ制御部150は、ステップS408で計算された予測データを情報端末13へ送信する。
【0103】
ステップS412において、情報端末13は、ステップS410でアプリケーションサーバ15から送信された予測データを自らの表示部(図示省略)へ表示させる。例えば、情報端末13は、予測データを地図データ上へ付加して表示部(図示省略)へ表示させる。
【0104】
以上説明したように、第4実施形態の動植物デジタルツインシステムでは、ユーザが植栽についての地図上におけるモニタリング範囲を指定することにより、アプリケーションサーバ15は動植物デジタルツインのデータに基づいて、そのモニタリング範囲内において植栽がどのように成長するのかを予測することができる。
【0105】
ちなみに、従来技術では、予め定められた範囲でシミュレーション等を実行するが、それでは、その他の箇所との相互作用が得られないため、適切なシミュレーション結果とならない。これに対し、第4実施形態では、モニタリング範囲は設定しつつも、動植物デジタルツインを構築してモニタリング範囲外との相互作用も考慮したシミュレーションが実行されるため、より適切なシミュレーション結果を得ることができる。
【0106】
また、上記第3実施形態及び第4実施形態によれば、動植物のことも考慮して、より適切な環境を実現するような緑地計画を策定することもできる。
【0107】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0108】
例えば、上記実施形態では、データベースサーバ14にはセンサ12によって検知されたデータを格納する場合を例に説明したがこれに限定されるものではない。動植物それ自体にセンサ12を搭載させることは困難であるため、動植物デジタルツインを構築するためのデータが不足する場合もある。そのため、それを補完するような処理(例えば、仮の動植物を動植物デジタルツイン上へ反映する)を実行するようにしてもよい。
【0109】
また、上記第1実施形態によれば、ユーザの屋外への外出を促進させ緑地利用を誘発するツール(例えば、生物生息マップ等)を作成することができる。また、第1実施形態によれば、動植物に関する予測データに基づいて、対象となる生物を指定の場所に誘引させつつ、モニタリングする仕組みを整備することも可能となる。また、第1実施形態によれば、ユーザの屋外への外出と緑地利用の誘因とにより歩行によってユーザの健康が促進される。また、第1実施形態によれば、動植物に関する予測データに基づいて生成された生物生息マップを地域情報発信に活用することで、地域コミュニティの活性化、地域観光産業振興に繋がる。また、生物生息マップを環境学習ツールに活用することで、生物環境保全への意識を高めることができる。また、第1実施形態によれば、ユーザが生物と触れ合うことや、ユーザが自然を感じることができる空間を創出することで、ユーザはリラックス及び癒し効果を得ることができる。また、第1実施形態によれば、緑地に訪れる生物や四季の移ろいをタイムリーに伝えるシステムによって社内間や近隣コミュニティ等とのコミュニケーションが促進される。
【0110】
また、第2実施形態によれば、侵略的外来種及び生物被害を与える生物の管理と防除の迅速化に資する仕組みを構築することができる。具体的には、第2実施形態によれば、敷地内の生態系に悪影響を与える侵略的外来種の侵入初期からの対策が可能になる。また、第2実施形態によれば、管理域内の侵略的外来種の根絶に繋がり得る。また、第2実施形態によれば、人に被害を与える害鳥(ハト及びカラス等)や害獣(ネズミ及びアライグマ等)の侵入防止によって屋外及び建屋内環境を快適に整えることができる。また、第2実施形態によれば、害獣被害の初期段階のタイムリーな把握や予想と、効果の高い威嚇技術と組み合わせることにより、追い払い効果の最大化に繋がる。
【0111】
また、第3実施形態及び第4実施形態によれば、外構及び植栽の計画と維持管理の効率化を図ることができる。具体的には、第3実施形態及び第4実施形態によれば、緑地の規模等による生物種の生息シミュレーションにより、最適な緑地の将来計画に活かすことができる。また、植栽の最適剪定箇所の特定をすることで、維持管理の効率化に繋がる。また、例えば、移動プランターロボットの活用により、植栽の維持管理における最適な生育環境を整えることもできる。また、自動清掃ロボットの活用により、屋外環境保全の効率化を促進することもできる。また、害虫駆除ロボットの活用により、屋外環境保全の効率化を促進することもできる。
【0112】
また、上記では本発明に係るプログラムが記憶部に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、本発明に係るプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM及びマイクロSDカード等の記録媒体に記録されている形態で提供することも可能である。
【符号の説明】
【0113】
10 動植物デジタルツインシステム
12 センサ
13 情報端末
14 データベースサーバ
15 アプリケーションサーバ
16 通信ネットワーク
60 コンピュータ
140 データベース制御部
142 データベース記憶部
144 デジタルツイン記憶部
150 サーバ制御部
152 サーバ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13