(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049850
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240403BHJP
E02F 9/16 20060101ALI20240403BHJP
E05B 83/00 20140101ALI20240403BHJP
【FI】
E02F9/00 C
E02F9/16 E
E02F9/16 F
E05B83/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156331
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞邊 岳夫
【テーマコード(参考)】
2D015
2E250
【Fターム(参考)】
2D015EA03
2E250AA21
2E250HH06
2E250JJ03
2E250JJ45
2E250LL01
(57)【要約】
【課題】信号線に加わる負荷を軽減することにより、キーレスエントリーシステムのためのロック装置を長寿命化した作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、車体と、車体に支持されたキャブ本体と、キャブ本体に支持され、キャブ本体の出入口を閉塞する閉塞位置、及び出入口を開放する開放位置の間を移動可能な開閉扉と、被係合部材と係合して開閉扉を閉塞位置に固定するロック機構と、車体またはキャブ本体に搭載されて、無線鍵から送信されるロック機構の状態変化を指示する指示信号に基づいて、ロック機構の動作を制御するコントローラと、コントローラとロック機構とを接続する信号線とを備える。ロック機構は、信号線を通じてコントローラから出力される制御信号に従って、被係合部材との係合状態を変化させるアクチュエータを備える。被係合部材は、開閉扉に設けられ、ロック機構は、キャブ本体に設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に支持されたキャブ本体と、
前記キャブ本体に支持され、前記キャブ本体の出入口を閉塞する閉塞位置、及び前記出入口を開放する開放位置の間を移動可能な開閉扉と、
被係合部材と係合して前記開閉扉を前記閉塞位置に固定するロック機構と、
を備える作業機械において、
前記車体または前記キャブ本体に搭載されて、無線鍵から送信される前記ロック機構の状態変化を指示する指示信号に基づいて、前記ロック機構の動作を制御するコントローラと、
前記コントローラと前記ロック機構とを接続する信号線と、
を備え、
前記ロック機構は、前記信号線を通じて前記コントローラから出力される制御信号に従って、前記被係合部材との係合状態を変化させるアクチュエータを備え、
前記被係合部材は、前記開閉扉に設けられ、
前記ロック機構は、前記キャブ本体に設けられること
を特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記キャブ本体の外面に取り付けられて、前記ロック機構を、前記開閉扉を前記閉塞位置に固定する状態から前記開閉扉が前記開放位置に移動するのを許容する状態に変化させる操作を受け付ける操作部を備えることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、
前記閉塞位置から前記開放位置に向けて前記開閉扉を付勢する付勢部材を備えることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記キャブ本体に設けられ、前記ロック機構を覆うカバーを備えることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーレスエントリーシステムを搭載した作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、キャブ本体の出入口を閉塞する閉塞位置、及び出入口を開放する開放位置の間を移動する開閉扉とを備える作業機械には、開閉扉を閉塞位置で施錠するための機構が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、キャブ本体に設けられたストライカと、開閉扉に設けられたロック機構とによって、開閉扉を閉塞位置でロックする構成が開示されている。また、このようなロック機構は、開閉扉に設けられた鍵穴に鍵を差し込んで回動させることによって、施錠及び開錠を切り替えるのが一般的である。一方で、近年、オペレータの操作を簡素化することを目的として、無線鍵を開閉扉に近接させることによって施錠及び開錠を切り替える、所謂「キーレスエントリーシステム」の開発が進んでいる。但し、特許文献1の作業機械にキーレスエントリーシステムを適用すると、一般にコントローラが搭載されているキャブ本体側から、ロック機構が搭載されている開閉扉に亘って信号線を配策する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、信号線は開閉扉の開閉に追従して変形(例えば、伸縮、屈曲など)する必要があるので、開閉扉の開閉に伴って信号線に負荷が生じることになる。つまり、頻繁に開閉が繰り返されることによって、信号線が断線する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、信号線に加わる負荷を軽減することにより、キーレスエントリーシステムのためのロック装置を長寿命化する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体に支持されたキャブ本体と、前記キャブ本体に支持され、前記キャブ本体の出入口を閉塞する閉塞位置、及び前記出入口を開放する開放位置の間を移動可能な開閉扉と、被係合部材と係合して前記開閉扉を前記閉塞位置に固定するロック機構と、を備える作業機械において、前記車体または前記キャブ本体に搭載されて、無線鍵から送信される前記ロック機構の状態変化を指示する指示信号に基づいて、前記ロック機構の動作を制御するコントローラと、前記コントローラと前記ロック機構とを接続する信号線と、を備え、前記ロック機構は、前記信号線を通じて前記コントローラから出力される制御信号に従って、前記被係合部材との係合状態を変化させるアクチュエータを備え、前記被係合部材は、前記開閉扉に設けられ、前記ロック機構は、前記キャブ本体に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、信号線に加わる負荷を軽減することにより、キーレスエントリーシステムのためのロック装置を長寿命化することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る油圧ショベル1(作業機械)の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、作業機械の具体例は油圧ショベル1に限定されず、ホイールローダ、クレーン、ダンプトラック等でもよい。また、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、油圧ショベル1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
図1は、油圧ショベル1の側面図である。
図1に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2により支持された上部旋回体3とを備える。下部走行体2及び上部旋回体3は、車体の一例である。下部走行体2は、無限軌道帯である左右一対のクローラ4を備える。そして、走行モータ5の駆動により、左右一対のクローラ4が独立して回転する。その結果、油圧ショベル1が走行する。但し、下部走行体2は、クローラ4に代えて、装輪式であってもよい。
【0012】
上部旋回体3は、旋回モータ6によって旋回可能に下部走行体2に支持されている。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム7と、旋回フレーム7の後部に配置されたカウンタウェイト9と、旋回フレーム7の前方中央に上下方向に回動可能に取り付けられたフロント作業機10(作業装置)と、旋回フレーム7の前方左側に配置されたキャブ(運転席)20とを主に備える。
【0013】
フロント作業機10は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム11と、ブーム11の先端に回動可能に支持されたアーム12と、アーム12の先端に回動可能に支持されたバケット13と、ブーム11を駆動させるブームシリンダ14と、アーム12を駆動させるアームシリンダ15と、バケット13を駆動させるバケットシリンダ16とを含む。カウンタウェイト9は、フロント作業機10との重量バランスを取るためのもので、上面視円弧形状を成す重量物である。
【0014】
図2は、キャブ20の斜視図である。
図1に示すように、キャブ20は、車体の一部である下部走行体2に支持されている。また、
図1及び
図2に示すように、キャブ20は、キャブ本体21と、開閉扉22とを主に備える。
【0015】
キャブ本体21は、油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗する内部空間を有する箱形である。キャブ本体21の内部空間には、オペレータが着席するシートと、シートに着席したオペレータにより操作される操作装置とが配置されている。操作装置は、油圧ショベル1を動作させるためのオペレータの操作を受け付ける。オペレータによって操作装置が操作されることによって、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、フロント作業機10が動作する。なお、操作装置の具体例としては、レバー、ステアリングホイール、ペダル、スイッチ等が挙げられる。
【0016】
また、キャブ本体21は、支柱23、24を有する。支柱23は左前隅に配置され、支柱24は左側面に配置されている。すなわち、支柱23、24は、前後方向に所定の間隔を隔てて、各々が概ね上下方向に延設されている。そして、キャブ本体21の右側面(より詳細には、支柱23、24の間)には、出入口25が形成されている。出入口25は、キャブ本体21の内部空間を外部に連通させる開口である。すなわち、オペレータは、キャブ本体21の内部空間に対して出入口25を通じて出入りする。
【0017】
開閉扉22は、出入口25を開閉するようにキャブ本体21に支持されている。本実施形態に係る開閉扉22は、ヒンジ26、27によって支柱24に回動可能に取り付けられている。そして、開閉扉22は、
図1に示す閉塞位置と、
図2に示す開放位置との間を、ヒンジ26、27を通って上下方向に延びる回動軸線周りに回動(移動)する。但し、閉塞位置と開放位置との間における開閉扉22の移動は、回動に限定されず、前後方向のスライドなどでもよい。
【0018】
閉塞位置は、出入口25を閉塞する開閉扉22の位置である。すなわち、開閉扉22が閉塞位置のとき、オペレータは、出入口25を通じてキャブ本体21の内部空間に出入りすることができない。開放位置は、出入口25を開放する開閉扉22の位置である。すなわち、開閉扉22が開放位置のとき、オペレータは、出入口25を通じてキャブ本体21の内部空間に出入りすることができる。
【0019】
また、開閉扉22の回動先端(閉塞位置のときに支柱23に接する部分)には、被係合部材の一例であるストライカ28が設けられている。ストライカ28は、開閉扉22と共に回動(移動)する。ストライカ28は、概ねU字形状の外形を呈する線状の部材である。そして、ストライカ28は、両端部が開閉扉22の回動先端に取り付けられて、全体として環状となっている。そして、ストライカ28は、開閉扉22が閉塞位置のときに後述するロック機構30の凹溝37に進入し、開閉扉22が開放位置のときに凹溝37が退出する。
【0020】
さらに、開閉扉22は、付勢部材29によって閉塞位置から開放位置に向けて付勢されている。一例として、付勢部材29は、一端がキャブ本体21に接続され、他端が開閉扉22に接続されたガスダンパでもよい。他の例として、付勢部材29は、ヒンジ26、27に組み込まれた捩じりコイルバネでもよい。なお、付勢部材29の付勢力は、開閉扉22を開放位置まで移動させるほど大きくなく、ストライカ28が凹溝37から退出する程度の大きさに設定されるのが望ましい。
【0021】
図3は、ロック機構30の斜視図である。
図2に示すように、キャブ本体21(より詳細には、支柱23の背面)には、ロック機構30が設けられている。また、ロック機構30は、キャブ本体21に設けられたカバー31によって覆われている。そして、カバー31には、ロック機構30の凹溝37を外部に露出させる切り欠き32が設けられている。すなわち、ストライカ28は、切り欠き32を通じて凹溝37に進入及び退出(以下、「進退」と表記する。)する。
【0022】
ロック機構30は、ストライカ28と係合して開閉扉22を閉塞位置にロックする機構である。
図3に示すように、ロック機構30は、筐体33と、係合部の一例である係合爪34と、ロック部35(
図4参照)と、アクチュエータの一例である電動モータ36(
図4参照)とを主に備える。筐体33は、係合爪34、ロック部35、及び電動モータ36を収容する。また、筐体33には、ストライカ28を受け入れる凹溝37が設けられている。
【0023】
係合爪34は、
図3(A)に示す係合位置と、
図3(B)に示す解除位置との間を移動可能に構成されている。係合位置は、筐体33の内部から凹溝37に突出する係合爪34の位置である。また、係合位置は、凹溝37内の環状のストライカ28の内部に進入する係合爪34の位置である。すなわち、係合位置の係合爪34は、凹溝37内のストライカ28に係合して、開閉扉22を閉塞位置に固定する(換言すれば、開閉扉22が開放位置に移動するのを阻止する)。解除位置は、筐体33の内部に没入する係合爪34の位置である。すなわち、解除位置の係合爪34は、凹溝37内のストライカ28との係合が解除されて、開閉扉22が開放位置に移動するのを許容する。
【0024】
係合爪34は、例えば、不図示の付勢部材によって係合位置に向けて付勢されている。そして、係合爪34は、開閉扉22が開放位置から閉塞位置に向けて移動する過程でストライカ28に当接されて、付勢部材の付勢力に抗して解除位置に移動する。一方、係合爪34は、開閉扉22が閉塞位置に到達したことによってストライカ28から離間して、付勢部材の付勢力によって係合位置に復帰する。さらに、係合爪34は、後述する操作部38がオペレータによって操作されたことによって、付勢部材の付勢力に抗して解除位置に移動する。一方、係合爪34は、オペレータによる操作部38の操作が停止されたことによって、付勢部材の付勢力によって係合位置に復帰する。
【0025】
ロック部35は、電動モータ36の駆動力によって、施錠状態と、開錠状態とに状態変化が可能に構成されている。施錠状態とは、係合爪34を係合位置にロックするロック部35の状態である。すなわち、ロック部35が施錠状態のとき、オペレータが操作部38を操作しても係合爪34が解除位置に移動しない。開錠状態は、係合爪34を解除位置への移動を許容するロック部35の状態である。すなわち、ロック部35が開錠状態のとき、オペレータが操作部38を操作すれば係合爪34が開放位置に移動する。ロック部35は、例えば、施錠状態において係合爪34に当接して解除位置への移動を阻止し、開錠状態において係合爪34から離間して解除位置への移動を許容してもよい。ロック部35の具体的な構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0026】
電動モータ36は、後述するコントローラ40から出力される制御信号に従って、施錠状態及び開錠状態の間でロック部35の状態(すなわち、ストライカ28に対する係合爪34の係合状態)を変化させる。なお、電動モータ36は、キャブ本体21に設けられていれば、筐体33の外部でもよい。また、アクチュエータの具体例は、電動モータ36に限定されず、エアシリンダ、ソレノイドなどでもよい。
【0027】
操作部38は、キャブ本体21の外面(本実施形態では、支柱23の下端)に設けられている。操作部38は、出入口25を通じてキャブ本体21の内部空間に進入(すなわち、キャブ20に搭乗)しようとするオペレータによって操作される。操作部38は、例えば、ワイヤーによって係合爪34に接続されている。そして、オペレータによって操作部38が操作されると、ワイヤーが引っ張られて係合爪34が解除位置に移動する。また、操作部38の操作が停止されると、ワイヤーが元に戻って係合爪34が係合位置に復帰する。なお図示は省略するが、キャブ本体21の内部にも操作部38が設けられている。
【0028】
さらに、キャブ本体21には、アンテナ39が設けられている。本実施形態に係るアンテナ39は、支柱23に取り付けられている。但し、アンテナ39の設置位置は、
図2の例に限定されず、開閉扉22を開閉しようとするオペレータが所持する無線鍵(図示省略)と無線通信可能な位置であればよい。
【0029】
アンテナ39は、所定の距離まで近接された無線鍵から送信された無線信号を受信する。アンテナ39と無線鍵との間の無線通信は、例えば、所定の距離の範囲内で通信可能な「近距離無線通信」であり、中継器を介さずに直接通信する「直接無線通信」である。無線通信方式の具体例としては、例えば、Bluetooth(登録商標)、FeliCa(登録商標)などが挙げられる。また、無線鍵としては、例えば、無線チップを搭載した鍵やカード、スーマートフォン等が挙げられる。
【0030】
図4は、油圧ショベル1の制御ブロック図である。
図4に示すように、油圧ショベル1は、CPU41(Central Processing Unit)と、メモリ42とを有するコントローラ40を備える。メモリ42は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはこれらの組み合わせで構成される。コントローラ40は、メモリ42に格納されたプログラムコードをCPU41が読み出して実行することによって、後述する処理を実現する。
【0031】
但し、コントローラ40の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0032】
コントローラ40は、電気配線であるハーネス43(信号線)によってアンテナ39に有線接続されている。そして、アンテナ39は、無線鍵から受信した無線信号を、ハーネス43を通じてコントローラ40に出力する。また、コントローラ40は、電気配線であるハーネス44(信号線)によって電動モータ36に有線接続されている。そして、コントローラ40は、電動モータ36を駆動するための制御信号(例えば、駆動電流)を、ハーネス44を通じて電動モータ36に出力する。後述するように、コントローラ40は、ハーネス43を通じて無線鍵から送信される指示信号に基づいて、ロック機構30の動作を制御する制御信号をハーネス44を通じて電動モータ36に出力する。
【0033】
図2に示すように、コントローラ40は、例えば、キャブ本体21の背面に搭載されている。そして、
図2に破線で示すように、一端がアンテナ39及び電動モータ36に接続されたハーネス43、44は、キャブ本体21の前下隅を右方に延び、キャブ本体21の右下隅を後方に延びて、他端がコントローラ40に接続されている。但し、コントローラ40の搭載位置は、
図2の例に限定されず、開閉扉22が開閉されてもアンテナ39及び電動モータ36との相対位置(相対距離)が変化しない位置であればよい。
【0034】
[開閉扉22を開放する手順]
次に、オペレータがキャブ20に搭乗するために、開閉扉22を開放する手順を説明する。まず、オペレータは、無線鍵をアンテナ39に近接させる。これにより、コントローラ40は、アンテナ39が無線鍵から無線受信した指示信号を、ハーネス43を通じて取得する。指示信号は、ロック部35の状態変化を指示する信号である。指示信号は、例えば、開閉扉22を開錠及び施錠する権限を有することを示す識別情報を含む。
【0035】
次に、コントローラ40は、ロック部35が施錠状態のときに、指示信号に含まれる識別情報とメモリ42に予め記憶された識別情報とが一致すると判定した場合、ロック部35を施錠状態から開錠状態に状態変化させるための制御信号を、ハーネス44を通じて電動モータ36に出力する。これにより、ロック部35が開錠状態に状態変化して、係合爪34の係合位置から解除位置への移動が許容される。但し、係合爪34は係合位置に向けて付勢されているので、この時点では未だ係合位置のままである。
【0036】
次に、オペレータは、操作部38を操作する。これにより、付勢部材の付勢力に抗して係合爪34が解除位置に移動する。操作部38に対するオペレータの操作は、ロック機構30を、開閉扉22を閉塞位置に固定する状態から開閉扉22が開放位置に移動するのを許容する状態に変化させる操作の一例である。また、付勢部材29の付勢力によって開閉扉22が開放位置に向けて僅かに移動することによって、ストライカ28が凹溝37から退出する。これにより、オペレータが操作部38の操作を止めても係合爪34が再びストライカ28に係合することがない。そして、オペレータは、開閉扉22を開放位置まで開放して、キャブ20に搭乗する。
【0037】
[開閉扉22を施錠する手順]
次に、キャブ20から退室したオペレータが開閉扉22を施錠する手順を説明する。まず、キャブ20から退出したオペレータは、開閉扉22を開放位置から閉塞位置に回動させる。このとき、係合爪34は、凹溝37に進入したストライカ28に当接されて一時的に解除位置に移動し、その後にストライカ28から離間して係合位置に復帰する。これにより、係合爪34がストライカ28に係合して、開閉扉22が閉塞位置に固定される。但し、この時点ではロック部35が未だ開錠状態なので、オペレータが操作部38を操作すれば、係合爪34を解除位置に移動させることができる(すなわち、開閉扉22を開放位置に回動させることができる)。
【0038】
次に、オペレータは、無線鍵をアンテナ39に近接させる。これにより、コントローラ40は、アンテナ39が無線鍵から無線受信した指示信号を、ハーネス43を通じて取得する。次に、コントローラ40は、ロック部35が開錠状態のときに、指示信号に含まれる識別情報とメモリ42に予め記憶された識別情報とが一致すると判定した場合、ロック部35を開錠状態から施錠状態に状態変化させるための制御信号を、ハーネス44を通じて電動モータ36に出力する。これにより、ロック部35が施錠状態に状態変化して、係合爪34の解除位置への移動が阻止される。その結果、無線鍵を所持していないオペレータが操作部38を操作しても、開閉扉22を開放することができなくなる。
【0039】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0040】
上記の実施形態によれば、ストライカ28を開閉扉22に設置し、ロック機構30をキャブ本体21に設置したので、開閉扉22を開閉しても、電動モータ36とコントローラ40との相対位置が変化しない。これにより、ロック機構30を開閉扉22に設置する場合と比較して、電動モータ36とコントローラ40とを接続するハーネス44に加わる負荷を軽減することができる。その結果、キーレスエントリーシステムのためのロック装置(ストライカ28、ロック機構30、及びハーネス43、44の総称)を長寿命化することができる。
【0041】
また、上記の実施形態によれば、操作部38をキャブ本体21に設置することによって、開閉扉22を開閉しても、操作部38と係合爪34との相対位置も変化しない。その結果、操作部38と係合爪34とを接続するワイヤーに加わる負荷も軽減できる。
【0042】
但し、操作部38をキャブ本体21に設置したことによって、開閉扉22を開放しようとするオペレータは、一方の手で操作部38を操作しながら、他方の手で開閉扉22を開放する必要が生じる。そこで、上記の実施形態によれば、付勢部材29によって開閉扉22を開放位置に向けて付勢することによって、操作部38の操作を止めてもストライカ28が再び係合爪34に係合されなくなる。その結果、オペレータの一方の手が塞がっていたとしても、開閉扉22を開放することができる。
【0043】
さらに、上記の実施形態によれば、ロック機構30をカバー31で覆うことによって、開閉扉22を開閉した際に、ロック機構30が塵埃や液滴(例えば、雨水)に曝されるのを防止できる。但し、カバー31には、凹溝37を露出させるための切り欠き32が必要になるので、ロック機構30を完全に覆うことはできない。そこで、上記の実施形態によれば、ロック機構30がキャブ本体21(より詳細には、支柱23の背面)に設置されているので、開閉扉22の回動先端に設置する場合と比較して、塵埃や液滴への接触を低減することができる。
【0044】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 クローラ
5 走行モータ
6 旋回モータ
7 旋回フレーム
9 カウンタウェイト
10 フロント作業機
11 ブーム
12 アーム
13 バケット
14 ブームシリンダ
15 アームシリンダ
16 バケットシリンダ
20 キャブ
21 キャブ本体
22 開閉扉
23,24 支柱
25 出入口
26,27 ヒンジ
28 ストライカ
29 付勢部材
30 ロック機構
31 カバー
32 切り欠き
33 筐体
34 係合爪
35 ロック部
36 電動モータ
37 凹溝
38 操作部
39 アンテナ
40 コントローラ
41 CPU
42 メモリ
43,44 ハーネス(信号線)