(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049856
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ブレイディング方法及び組成体の製造方法
(51)【国際特許分類】
D04C 3/42 20060101AFI20240403BHJP
D04C 3/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
D04C3/42
D04C3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156341
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】金平 裕次
【テーマコード(参考)】
4L046
【Fターム(参考)】
4L046AA01
4L046AA05
4L046AB01
4L046AB05
4L046AD01
4L046BA00
(57)【要約】
【課題】組成を簡便に開始可能なブレイディング方法及び組成体の製造方法を提供する。
【解決手段】ブレイディング方法は、結合工程と、巻き付け工程とを備える。結合工程では、第1ボビン31bに巻き回された第1糸条31cと、第2ボビン32bに巻き回された第2糸条32cとを結合する。巻き付け工程では、第1環状軌道11に沿って第1キャリア31aを時計回りに移動させるとともに、第2環状軌道12に沿って第2キャリアを反時計回りに移動させることによって、結合された第1及び第2糸条31c,32cを水素タンク40に巻き付ける。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1キャリアに回動可能に支持された第1ボビンに巻き回された第1糸条と、第2キャリアに回動可能に支持された第2ボビンに巻き回された第2糸条とを結合する工程と、
面盤上の第1環状軌道に沿って前記第1キャリアを時計回りに移動させるとともに、前記面盤上の第2環状軌道に沿って前記第2キャリアを反時計回りに移動させることによって、結合された前記第1及び第2糸条を前記面盤の軸心上に配置されたマンドレルに巻き付ける工程と、
を備えるブレイディング方法。
【請求項2】
第1キャリアに回動可能に支持された第1ボビンに巻き回された第1糸条と、第2キャリアに回動可能に支持された第2ボビンに巻き回された第2糸条とを結合する工程と、
面盤上の第1環状軌道に沿って前記第1キャリアを時計回りに移動させるとともに、前記面盤上の第2環状軌道に沿って前記第2キャリアを反時計回りに移動させることによって、結合された前記第1及び第2糸条を前記面盤の軸心上に配置されたマンドレルに巻き付ける工程と、
前記軸心に沿って前記マンドレルを移動させることによって、前記第1及び第2糸条が組み上げられた組成体を形成する工程と、
を備える組成体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレイディング方法及び組成体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレイダ(編組機)を用いて、マンドレルの外周に複数の糸条を組み上げることによって組成体を形成するブレイディング方法が知られている。マンドレルとは、組成体による被覆対象であるワーク(例えば、円筒状のライナなど)、又は、組成体を先導するための棒状冶具である。
【0003】
従来のブレイディング方法では、組成を開始する際、作業者が、多数のボビンそれぞれから引き出した糸条を束ねた糸条群をマンドレルに取り付ける必要があり煩雑であった。
【0004】
そこで、特許文献1では、糸状の引き出し作業の効率向上を目的として、糸条群を一時的に保持するための補助装置を用いる手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の手法においても、糸状の引き出し作業および糸条群の取り付け作業を人手で行わなければならないため作業効率を向上するにも限界がある。
【0007】
本開示は、組成を簡便に開始可能なブレイディング方法及び組成体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るブレイディング方法は、結合工程と、巻き付け工程とを備える。結合工程では、第1キャリアに回動可能に支持された第1ボビンに巻き回された第1糸条と、第2キャリアに回動可能に支持された第2ボビンに巻き回された第2糸条とを結合する。巻き付け工程では、面盤上の第1環状軌道に沿って第1キャリアを時計回りに移動させるとともに、面盤上の第2環状軌道に沿って第2キャリアを反時計回りに移動させることによって、結合された第1及び第2糸条を面盤の軸心上に配置されたマンドレルに巻き付ける。
【0009】
本開示に係る組成体の製造方法は、結合工程と、巻き付け工程と、組成体形成工程とを備える。結合工程では、第1キャリアに回動可能に支持された第1ボビンに巻き回された第1糸条と、第2キャリアに回動可能に支持された第2ボビンに巻き回された第2糸条とを結合する。巻き付け工程では、面盤上の第1環状軌道に沿って第1キャリアを時計回りに移動させるとともに、面盤上の第2環状軌道に沿って第2キャリアを反時計回りに移動させることによって、結合された第1及び第2糸条を面盤の軸心上に配置されたマンドレルに巻き付ける。組成体形成工程では、軸心に沿ってマンドレルを移動させることによって、第1及び第2糸条が組み上げられた組成体を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、組成を簡便に開始可能なブレイディング方法及び組成体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施形態に係る搬送ギアを省略したブレイダの平面図
【
図3】実施形態に係る連結ユニットの構成を示す側面図
【
図4】実施形態に係るブレイディング方法を説明するための模式図
【
図5】実施形態に係るブレイディング方法を説明するための模式図
【
図6】実施形態に係るブレイディング方法を説明するための模式図
【
図7】実施形態に係るブレイディング方法を説明するための模式図
【
図8】実施形態に係るブレイディング方法を説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ブレイダ1)
図1は、ブレイダ1の平面図である。
図2は、搬送ギア20を省略したブレイダ1の平面図である。
【0013】
ブレイダ1は、面盤10、複数の搬送ギア20、複数の連結ユニット30及び水素タンク40を備える。
【0014】
[面盤10]
面盤10は、環状の板部材である。面盤10は、図示しない基台によって支持される。面盤10は、軌道面10a及び挿通孔10bを有する。
【0015】
軌道面10aは、面盤10の主面である。軌道面10aには、第1環状軌道11及び第2環状軌道12が設けられる。
【0016】
第1及び第2環状軌道11,12それぞれは、軌道面10aの平面視において環状に形成される。第1及び第2環状軌道11,12は、軸心AX周りの周方向に沿って蛇行しながら、互いに交差するように形成されている。具体的には、第1及び第2環状軌道11,12は、軸心AXを中心とする径方向における外側及び内側を交互に通り、かつ、一方の軌道が外側に向かって凸状に湾曲するとき他方の軌道は内側に向かって凸状に湾曲するように形成されている。
【0017】
挿通孔10bは、軌道面10aの中央に形成される。挿通孔10aは、軸心AXに沿って水素タンク40を挿通可能な形状及びサイズを有する。
【0018】
[搬送ギア20]
複数の搬送ギア20は、周方向において互いに近接して配置される。各搬送ギア20は、面盤10に回転可能に支持される。各搬送ギア20は、図示しない駆動機構によって、軸心AXに平行な中心軸を中心として回転駆動される。或る搬送ギア20は、当該搬送ギア20の両側に配置された搬送ギア20と逆方向に回転する。
【0019】
各搬送ギア20には、後述する第1及び第2キャリア31a,32aを係合するための複数の搬送溝20aが形成されている。第1及び第2キャリア31a,32aは、隣接する各搬送ギア20の搬送溝20aに順次受け継がれながら、第1及び第2環状軌道11,12に沿って移動する。
【0020】
[連結ユニット30]
図3は、連結ユニット30の構成を示す側面図である。連結ユニット30は、第1ユニット31及び第2ユニット32によって構成される。
【0021】
第1ユニット31は、第1キャリア31a、第1ボビン31b及び第1糸条31cを有する。第1キャリア31aは、第1ボビン31bを回転可能に支持する。第1ボビン31bには、第1糸条31cが巻き回されている。
【0022】
第2ユニット32は、第2キャリア32a、第2ボビン32b及び第2糸条32cを有する。第2キャリア32aは、第2ボビン32bを回転可能に支持する。第2ボビン32bには、第2糸条32cが巻き回されている。
【0023】
ここで、第1ボビン31bに巻き回された第1糸条31cは、第2ボビン32bに巻き回された第2糸条32cに結合されている。第1及び第2糸条31c,32cの結合方法は特に限られず、例えば、糸条同士を周知の結び方で結ぶ方法や、糸条同士を接着剤によって繋げる方法を採用することができる。
【0024】
なお、
図3では、第1糸条31cの先端と第2糸条32cの先端とが結合された結合部分30xが図示されているが、各糸条の先端以外を結合してもよい。また、結合部分30xの形状及びサイズは特に限られない。
【0025】
複数の連結ユニット30それぞれは、第1及び第2環状軌道11,12に順次供給される。
図1に示すように、第1ユニット31は、第1供給ギア33を介して第1環状軌道11に供給され、各搬送ギア20の搬送溝20aに順次受け継がれることによって第1環状軌道11に沿って時計回りに蛇行しながら移動する。同様に、第2ユニット32は、第2供給ギア34を介して第2環状軌道12に供給され、各搬送ギア20の搬送溝20aに順次受け継がれることによって第2環状軌道12に沿って反時計回りに蛇行しながら移動する。
【0026】
第1ユニット31が時計回りに移動し、かつ、第2ユニット32が時計回りに移動すると、結合された第1及び第2糸条31c,32cが水素タンク40に自動的に巻き付けられる。その後、水素タンク40を軸心AXに沿って移動させると、第1及び第2糸条31c,32cが互いに交差するように組み上げられることによって組成体が形成される。
【0027】
なお、連結ユニット30の数は特に制限されず、搬送ギア20の数を考慮して適宜設定することができる。
【0028】
[水素タンク40]
水素タンク40は、本開示に係る「マンドレル」の一例である。マンドレルとは、組成体による被覆対象であるワーク、又は、組成体を先導するための冶具であり、水素タンク40は前者に相当する。
【0029】
水素タンク40は、中空円柱状に形成される。水素タンク40の中心は、面盤10の軸心AXと一致していることが好ましい。水素タンク40は、図示しない移動機構によって、軸心AXに沿って移動可能である。
【0030】
組成を開始する際、すなわち、連結ユニット30が供給される際、水素タンク40の先端部は、面盤10の挿通孔10bの内側に配置される。連結ユニット30が供給された後に水素タンク40を軸心AXに沿って移動させると、第1及び第2糸条31c,32cが組み上げられた組成体によって水素タンク40の外周が被覆される。このように、水素タンク40を組成体で被覆することによって、水素タンク40を強化することができる。
【0031】
(ブレイディング方法及び組成体の製造方法)
次に、本実施形態に係るブレイディング方法及び組成体の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図4~
図8は、ブレイディング方法を説明するための模式図である。
図4~
図8では、第1環状軌道11及び第2環状軌道12以外の構成は省略されている。各図(a)は平面図であり、各図(b)は側面図である。
【0032】
まず、第1ボビン31bに巻き回された第1糸条31cと第2ボビン32bに巻き回された第2糸条32cとを結合する(
図3参照)。このようにして作製される連結ユニット30を必要数だけ準備する。
【0033】
次に、複数の連結ユニット30それぞれを第1及び第2環状軌道11,12に順次供給する。第1ユニット31の第1キャリア31aは、第1供給ギア33を介して第1環状軌道11に供給された後、第1環状軌道11に沿って時計回りに移動する。第2ユニット32の第2キャリア32aは、第2供給ギア34を介して第2環状軌道12に供給された後、第2環状軌道12に沿って反時計回りに移動する。これによって、
図4~
図6に示すように、結合された第1及び第2糸条31c,32cが水素タンク40に巻き付けられる。
【0034】
次に、第1及び第2キャリア31a,32aの周回を重ねることによって、第1及び第2糸条31c,32cを水素タンク40に更に巻き付ける。これによって、
図7に示すように、巻き付けられた第1及び第2糸条31c,32cが水素タンク40に固定される。
【0035】
次に、軸心AXに沿って水素タンク40を移動させることによって、第1及び第2糸条31c,32cを互いに交差するように組み上げる。これによって、
図8に示すように、水素タンク40の外周を被覆する組成体50が徐々に形成される。
【0036】
(特徴)
本実施形態に係るブレイディング方法及び組成体の製造方法は、第1ボビン31bに巻き回された第1糸条31cと第2ボビン32bに巻き回された第2糸条32cとを結合する工程と、第1環状軌道11に沿って第1キャリア31aを時計回りに移動させるとともに第2環状軌道12に沿って第2キャリア32aを反時計回りに移動させる工程とを備える。
【0037】
従って、第1及び第2糸条31c,32cを水素タンク40に自動的に巻き付けることができるため、第1及び第2糸条31c,32cそれぞれを引き出して束ねる作業や束ねた糸条群を水素タンク40に取り付ける作業を人手で行う必要がない。よって、第1及び第2糸条31c,32cの組成を簡便に開始することができる。
【0038】
(実施形態の変形例)
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0039】
[変形例1]
上記実施形態では、マンドレルの一例として水素タンク40を用いる場合について説明したが、マンドレルは水素タンク40に限られない。マンドレルとしては、水素タンク40以外のワーク(例えば、各種容器、各種棒状部材)や、組成体50を先導するための冶具(例えば、棒状治具など)を用いることができる。組成体50を先導するための冶具は、第1及び第2糸条31c,32cの組成開始点を形成するためだけに用いられ、組成体50は被覆体としてではなく単独のチューブ体として形成される。
【0040】
[変形例2]
上記実施形態では、第1及び第2キャリア31a,32aの周回を重ねることによって、巻き付けられた第1及び第2糸条31c,32cを水素タンク40に固定することとしたが、固定方法はこれに限られない。例えば、水素タンク40の組成開始点付近、又は、結合部分30xの外表面に接着剤を配置しておき、接着剤によって第1及び第2糸条31c,32cを水素タンク40に固定してもよい。この場合には、第1及び第2キャリア31a,32aの周回を重ねる必要がないため、迅速に組成を開始することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…ブレイダ、10…面盤、10a…軌道面、10b…挿通孔、11…第1環状軌道、12…第2環状軌道、20…搬送ギア、30…連結ユニット、31…第1ユニット、31a…第1キャリア、31b…第1ボビン、31c…第1糸条、32…第2ユニット、32a…第2キャリア、32b…第2ボビン、32c…第2糸条、40…水素タンク、AX…軸心