(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049860
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】油圧ユニット
(51)【国際特許分類】
F15B 21/045 20190101AFI20240403BHJP
F28D 7/10 20060101ALI20240403BHJP
F28F 1/00 20060101ALI20240403BHJP
F15B 21/0423 20190101ALI20240403BHJP
F04B 23/00 20060101ALI20240403BHJP
F04B 23/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F15B21/045
F28D7/10 A
F28F1/00 A
F15B21/0423
F04B23/00 A
F04B23/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156345
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】大浦 真人
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 宏年
【テーマコード(参考)】
3H071
3H082
3L103
【Fターム(参考)】
3H071AA03
3H071BB04
3H071CC06
3H071CC14
3H071CC33
3H071DD36
3H071DD72
3H082AA06
3H082AA25
3H082CC02
3H082DB10
3H082DB38
3H082DE06
3H082EE20
3L103AA16
3L103AA22
3L103BB01
3L103CC02
3L103CC08
3L103DD10
3L103DD37
3L103DD38
(57)【要約】
【課題】ドレン入口の圧損を低減できる油圧ユニットを提案する。
【解決手段】油圧ユニット(1)は、作動油を収容する油タンク(10)と、油タンク(10)内の作動油をアクチュエータに供給する油圧ポンプ(30)と、油圧ポンプ(30)とアクチュエータとの間の流路から作動油を油タンク(10)に戻す第1戻り配管(L1,L2,L3,L4)と、アクチュエータから排出された作動油を油タンク(10)に戻す第2戻り配管(L43,L44)と、第1戻り配管(L1,L2,L3,L4)を流れる作動油と冷却液との間で熱交換すると共に、第2戻り配管(L43,L44)を流れる作動油と冷却液との間で熱交換する第1熱交換部(70)とを備え、第1熱交換部(70)は、第1戻り配管(L1,L2,L3,L4)を流れる作動油と第2戻り配管(L43,L44)を流れる作動油と冷却液とが分離されている3重管である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油を収容する油タンク(10)と、
上記油タンク(10)内の作動油をアクチュエータに供給する油圧ポンプ(30)と、
上記油圧ポンプ(30)と上記アクチュエータとの間の流路から作動油を上記油タンク(10)に戻す第1戻り配管(L1,L2,L3,L4,L5,L6)と、
上記アクチュエータから排出された作動油を上記油タンク(10)に戻す第2戻り配管(L43,L44,L45,L46)と、
上記第1戻り配管(L1,L2,L3,L4,L5,L6)を流れる作動油と冷却液との間で熱交換すると共に、上記第2戻り配管(L43,L44,L45,L46)を流れる作動油と上記冷却液との間で熱交換する第1熱交換部(70,200)と
を備え、
上記第1熱交換部(70,200)は、上記第1戻り配管(L1,L2,L3,L4,L5,L6)を流れる作動油と上記第2戻り配管(L43,L44,L45,L46)を流れる作動油と上記冷却液とが分離されている3重管である、油圧ユニット(1,2)。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧ユニット(1,2)において、
上記第1熱交換部(70,200)の3重管は、断面が多葉形状の内管(70a)と、その内管(70a)を収容する中管(70b)と、その中管(70b)を収容する外管(70c)とを有し、
上記冷却液が上記内管(70a)内を流れ、
上記第2戻り配管(L43,L44,L45,L46)を介して上記油タンク(10)に戻る作動油が、上記内管(70a)の外周面と上記中管(70b)の内周面との間を流れ、
上記第1戻り配管(L1,L2,L3,L4,L5,L6)を介して上記油タンク(10)に戻る作動油が、上記中管(70b)の外周面と上記外管(70c)の内周面との間を流れる、油圧ユニット(1,2)。
【請求項3】
請求項2に記載の油圧ユニット(1,2)において、
上記冷却液を上記第1熱交換部(70,200)に供給するための冷却液配管(L11,L12,L13)と、
上記内管(70a)に上記冷却液配管(L11,L12,L13)が接続された第1接続部(TA1)と、上記中管(70b)の外周面と上記外管(70c)の内周面との間の流路に連通する上記第1戻り配管(L1,L2)が接続された第2接続部(TA2)と、上記内管(70a)の外周面と上記中管(70b)の内周面との間の流路に連通する上記第2戻り配管(L43,L44,L45,L46)が接続された第3接続部(TA3)とを有する継手構造(TA)と
を備える、油圧ユニット(1,2)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の油圧ユニット(1,2)において、
上記第2戻り配管(L43,L44,L45,L46)は、上記第1戻り配管(L1,L2,L3,L4,L5,L6)から独立した配管である、油圧ユニット(1,2)。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の油圧ユニット(1,2)において、
上記第1熱交換部(70,200)に供給される上記冷却液の流量を調整する流量制御弁(V1)と、
上記第1戻り配管(L1,L2,L3,L4,L5,L6)を流れる作動油の温度Toが所定の第1作動油温度To1以上かつ所定の第2作動油温度To2(>To1)以下になるように、上記流量制御弁(V1)の開度を調整する制御部(60)と、
を備える、油圧ユニット(1,2)。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載の油圧ユニット(1,2)において、
上記油圧ポンプ(30)を駆動するモータ(40)と、
上記モータ(40)を駆動するデバイス(61)と、
上記デバイス(61)と上記第1戻り配管(L1,L2,L3,L4,L5,L6)を流れる作動油との間で熱交換する第2熱交換部(80)と
を備える、油圧ユニット。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一項に記載の油圧ユニットにおいて、
上記油圧ポンプ(30)を駆動するモータ(40)と、
上記モータ(40)と上記第1戻り配管(L1,L2,L3,L4,L5,L6)を流れる作動油との間で熱交換する第3熱交換部(90)と
を備える、油圧ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ユニットとしては、油圧ポンプを駆動するモータと、作動油を冷却する空冷式冷却器とを備え、送風ファンにより発生する空気流によってモータおよび空冷式冷却器を冷却するものがある(例えば、特開2008-8252号公報(特許文献1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記油圧ユニットでは、周囲環境の温度が高くなると、作動油も高温となるため、空冷式冷却器の冷却能力が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、作動油の冷却能力を向上させるため、油圧ポンプからの漏らし油とドレン油とを合流させて、合流させた作動油と水との間で熱交換する熱交換器により作動油を冷却する油圧ユニットが考えられる。
【0006】
しかしながら、油圧ポンプからの漏らし油とドレン油とを合流させた作動油を熱交換器により作動油を冷却する油圧ユニットでは、ドレン入口の圧損が大きくなるという問題がある。このような油圧ユニットでは、ドレン油が流れにくいので、ドレン油を油圧ユニットに戻す返油ポンプを主機側に用いる必要がある。
【0007】
本開示では、ドレン入口の圧損を低減できる油圧ユニットを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様の油圧ユニットは、
作動油を収容する油タンクと、
上記油タンク内の作動油をアクチュエータに供給する油圧ポンプと、
上記油圧ポンプと上記アクチュエータとの間の流路から作動油を上記油タンクに戻す第1戻り配管と、
上記アクチュエータから排出された作動油を上記油タンクに戻す第2戻り配管と、
上記第1戻り配管を流れる作動油と冷却液との間で熱交換すると共に、上記第2戻り配管を流れる作動油と上記冷却液との間で熱交換する第1熱交換部と
を備え、
上記第1熱交換部は、上記第1戻り配管を流れる作動油と上記第2戻り配管を流れる作動油と上記冷却液とが分離されている3重管である。
【0009】
本開示によれば、第1戻り配管を流れる作動油と第2戻り配管を流れる作動油とを合流させて冷却液と熱交換する場合に比べて、第2戻り配管に作動油が流入するドレン入口の圧損を低減できる。
【0010】
また、本開示の第2の態様に係る油圧ユニットは、
第1の態様の油圧ユニットにおいて、
上記第1熱交換部の3重管は、断面が多葉形状の内管と、その内管を収容する中管と、その中管を収容する外管とを有し、
上記冷却液が上記内管内を流れ、
上記第2戻り配管を介して上記油タンクに戻る作動油が、上記内管の外周面と上記中管の内周面との間を流れ、
上記第1戻り配管を介して上記油タンクに戻る作動油が、上記中管の外周面と上記外管の内周面との間を流れる。
【0011】
本開示によれば、3重管の最も外側の流路に第1戻り配管を介して油タンクに戻る作動油が常時流れることにより、3重管表面の結露を効果的に抑制できる。
【0012】
また、本開示の第3の態様に係る油圧ユニットは、
第2の態様の油圧ユニットにおいて、
上記冷却液を上記第1熱交換部に供給するための冷却液配管と、
上記内管に上記冷却液配管が接続された第1接続部と、上記中管の外周面と上記外管の内周面との間の流路に連通する上記第1戻り配管が接続された第2接続部と、上記内管の外周面と上記中管の内周面との間の流路に連通する上記第2戻り配管が接続された第3接続部とを有する継手構造と
を備える。
【0013】
本開示によれば、第1戻り配管を流れる作動油と第2戻り配管を流れる作動油と冷却液とを3重管内の3つの流路に分離して流すことが容易にできる。
【0014】
また、本開示の第4の態様に係る油圧ユニットは、
第1の態様から第3の態様までのいずれか1つの油圧ユニットにおいて、
上記第2戻り配管は、上記第1戻り配管から独立した配管である。
【0015】
本開示によれば、第2戻り配管が第1戻り配管から独立した配管であるので、第1戻り配管を流れる作動油(漏らし油)の影響を受けることなく、作動油(ドレン油)が流入するドレン入口の圧損を低減できる。
【0016】
また、本開示の第5の態様に係る油圧ユニットは、
第1の態様から第4の態様までのいずれか1つの油圧ユニットにおいて、
上記第1熱交換部に供給される上記冷却液の流量を調整する流量制御弁と、
上記第1戻り配管を流れる作動油の温度Toが所定の第1作動油温度To1以上かつ所定の第2作動油温度To2(>To1)以下になるように、上記流量制御弁の開度を調整する制御部と、
を備える。
【0017】
本開示によれば、作動油を適切な温度に保つことができる。
【0018】
また、本開示の第6の態様に係る油圧ユニットは、
第1の態様から第5の態様までのいずれか1つの油圧ユニットにおいて、
上記油圧ポンプを駆動するモータと、
上記モータを駆動するデバイスと、
上記デバイスと上記第1戻り配管を流れる作動油との間で熱交換する第2熱交換部と
を備える。
【0019】
本開示によれば、第1戻り配管の第1熱交換部よりも下流側を流れる作動油を用いてデバイスを冷却でき、冷却水による冷却に比べて冷やし過ぎによる結露の発生を抑制できる。
【0020】
また、本開示の第7の態様に係る油圧ユニットは、
第1の態様から第5の態様までのいずれか1つの油圧ユニットにおいて、
上記油圧ポンプを駆動するモータと、
上記モータと上記第1戻り配管を流れる作動油との間で熱交換する第3熱交換部と
を備える。
【0021】
本開示によれば、第1戻り配管の第1熱交換部よりも下流側を流れる作動油を用いてモータを冷却でき、冷却水による冷却に比べて冷やし過ぎによる結露の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の第1実施形態の油圧ユニットの回路図である。
【
図2】第1実施形態の油圧ユニットの前面側を斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】第1実施形態の油圧ユニットの後面側を斜め上方から見た斜視図である。
【
図4】第1実施形態の油圧ユニットの第1,第2保護カバーを外した状態の斜視図である。
【
図5】第1実施形態の油圧ユニットの第1,第2保護カバーとモータと油圧ポンプなどを外した状態の斜視図である。
【
図6】第1実施形態の油圧ユニットの第1,第2保護カバーを外した状態を後面側かつ斜め上方から見た斜視図である。
【
図7】
図6の油圧ユニットからモータと油圧ポンプなどを外した状態の斜視図である。
【
図8】
図7の油圧ユニットを後面側から見た側面図である。
【
図9】第1実施形態の油圧ユニットの第1熱交換部の断面図である。
【
図10】第1実施形態の油圧ユニットの継手構造の断面図である。
【
図11】第1実施形態の油圧ユニットの第4熱交換部の断面図である。
【
図12】第1実施形態の油圧ユニットを後面側かつ斜め下方から見た斜視図である。
【
図13】第1実施形態の油圧ユニットのモータの側面図である。
【
図14】第1実施形態の配管を外した状態のモータの上面図である。
【
図15】第1実施形態の配管を外した状態のモータの下面図である。
【
図16】本開示の第2実施形態の油圧ユニットの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態を説明する。なお、図面において、同一の参照番号は、同一部分または相当部分を表わすものである。また、長さ、幅、厚さ、深さ等の図面上の寸法は、図面の明瞭化と簡略化のために実際の尺度から適宜変更されており、実際の相対寸法を表してはいない。
【0024】
〔第1実施形態〕
図1は、本開示の第1実施形態の油圧ユニット1の回路図である。この油圧ユニット1は、射出成形機、プレス機、工作機械などの産業機械(主機)に用いられる(第2実施形態の油圧ユニット2も同様)。なお、
図1において、L41はタンクポートT1に接続される配管であり、L42はタンクポートT2に接続される配管である。
【0025】
油圧ユニット1は、
図1に示すように、作動油を貯める油タンク10と、主機側のアクチュエータ(例えば油圧シリンダ)に作動油を供給する固定容量型の油圧ポンプ30と、油圧ポンプ30を駆動する回転数可変のモータ40と、油圧ポンプ30の吐出口30aに接続されたリリーフ弁50と、油圧ポンプ30の吐出圧力を検出する圧力センサPS1と、モータ40の回転数を制御するコントローラ60と、作動油を冷却する第1熱交換部70とを備えている。コントローラ60は、制御部の一例である。
【0026】
油圧ユニット1のポンプポートPを、配管(図示せず)を介して主機側に接続している。また、油圧ユニット1のタンクポートT1,T2を、配管(図示せず)を介して主機側に接続している。油圧ポンプ30は、サクションストレーナ32とサクションパイプ31を介して油タンク10内の作動油を吸込口30bから吸い込み、吐出口30aから作動油を吐出する。
【0027】
油圧ポンプ30の吸込口30bにサクションパイプ31の上端が接続されている。サクションパイプ31の下端(入口)にサクションストレーナ32が接続されている。サクションパイプ31は、吸込管の一例である。
【0028】
リリーフ弁50とドレンホースL10を介して作動油を油タンク10に戻す。
【0029】
油圧ポンプ30の吐出口30aとアクチュエータとの間の流路からの作動油が、絞り51と配管L1を介して第1熱交換部70に供給される。第1熱交換部70に供給された作動油は、第1熱交換部70から配管L2を介して第2熱交換部80に供給される。第2熱交換部80に供給された作動油は、第2熱交換部80から配管L3を介して第3熱交換部90に供給される。第3熱交換部90に供給された作動油は、配管L4を介して油タンク10に戻る。
【0030】
配管L1,L2,L3,L4は、第1戻り配管の一例である。
【0031】
また、冷却水を供給する外部供給源(図示せず)と第1熱交換部70の冷却水入口とを配管L11を介して接続している。第1熱交換部70の冷却水出口と第4熱交換部100の冷却水入口とを配管L12を介して接続している。第4熱交換部100の冷却水出口と外部とが配管L13と電磁弁V1と排水管L14とを介して接続されている。電磁弁V1は、流量制御弁の一例である。
【0032】
ドレンポートDR1と第1熱交換部70のドレン入口とを配管L43を介して接続している。第1熱交換部70のドレン出口と配管L44を介して油タンク10に接続している。また、ドレンポートDR2と第4熱交換部100のドレン入口とを配管L45を介して接続している。第4熱交換部100のドレン出口と配管L46を介して油タンク10に接続している。配管L41,L42,L43,L44は、第2戻り配管の一例である。
【0033】
コントローラ60は、主機側からの圧力指令信号,流量指令信号や圧力センサPS1からの圧力信号などに基づいて、モータ40の回転数を制御すると共に電磁弁V1の開閉を行う。なお、この実施形態では、固定容量型の油圧ポンプ30を用いたが、可変容量型の油圧ポンプを用いてもよい。
【0034】
この第1実施形態の油圧ユニット1は、
図1に示すように、第1熱交換部70により冷却された油タンク10内の作動油を、第2熱交換部80,第3熱交換部90に供給することにより、第2熱交換部80によりコントローラ60のデバイス61を冷却すると共に、第3熱交換部90によりモータ40を冷却する。
【0035】
油圧ユニット1は、油タンク10内の作動油の温度を検出する温度センサ34を備える。温度センサ34により検出された油タンク10内の作動油の温度Toは、配管L1,L2,L3,L4(第1戻り配管)を流れる作動油の温度にほぼ等しい。
【0036】
コントローラ60は、温度センサ34により検出された油タンク10内の作動油の温度Toに応じて、電磁弁V1の開閉を制御することにより、第1熱交換部70に流す冷却水の流量を最適にすることができる。なお、電磁弁V1の代わりに流量制御弁を用いて、流量制御弁の開度を制御することにより第1熱交換部70に流す冷却水の流量を制御してもよい。
【0037】
詳しくは、コントローラ60によって、油タンク10内の作動油の温度Toが所定の第1作動油温度To1以上かつ所定の第2作動油温度To2(>To1)以下になるように、電磁弁V1を制御して第1熱交換部70に流れる冷却水の流量を調整することによって、作動油を適切な温度に保つことができる。例えば、第1熱交換部70により冷却された作動油の温度を40℃程度になるようにするのが望ましく、これにより、モータ40やコントローラ60のデバイス61が冷え過ぎて結露が発生しないように、モータ40やデバイス61を冷却することができる。
【0038】
図2は、第1実施形態の油圧ユニット1の前面側を斜め上方から見た斜視図であり、
図3は、第1実施形態の油圧ユニット1の後面側を斜め上方から見た斜視図である。
図2において、35は、注油口兼エアブリーザである。
【0039】
図2,
図3に示すように、油圧ユニット1は、作動油を収容する油タンク10と、油タンク10の上部に取り付けられた架台20と、油圧ポンプ30と、油圧ポンプ30を駆動するモータ40と、油圧ポンプ30の吐出口30a(
図1に示す)に接続されたリリーフ弁50と、モータ40などを制御するコントローラ60とを備える。油圧ポンプ30とモータ40とリリーフ弁50およびコントローラ60は、架台20に載置されている。油タンク10の前面側の側壁10aに油面計99を取り付けている。油タンク10の側壁10aの油面計99の下方に排油口98が設けられている。
【0040】
図3において、11はモータ40に対して油圧ポンプ30と反対側と電磁弁V1(
図3に示す)などを覆う第1保護カバーであり、12はモータ40の要部を覆う第2保護カバーであり、70は作動油を冷却する第1熱交換部である。また、L10はドレンホース、Pはポンプポートであり、T1,T2はタンクポートであり、DR1,DR2はドレンポートである。
【0041】
図4は、油圧ユニット1の第1,第2保護カバー11,12を外した状態の斜視図であり、
図5は、油圧ユニット1の第1,第2保護カバー11,12とモータ40と油圧ポンプ30などを外した状態の斜視図である。
図4,
図5において、90はモータ40のハウジング40a(
図13~
図15に示す)に熱接触する第3熱交換部であり、V1は電磁弁であり、L11は第1熱交換器70の冷却水入口に接続された配管であり、L14は電磁弁V1の出口に接続された排水管である。
【0042】
また、
図6は、油圧ユニット1の第1,第2保護カバー11,12を外した状態を後面側かつ斜め上方から見た斜視図であり、
図7は、
図6の油圧ユニット1からモータ40と油圧ポンプ30などを外した状態の斜視図である。
【0043】
図8は、
図7の油圧ユニット1を後面側から見た側面図である。
【0044】
<第1熱交換部70>
図2~
図8に示すように、第1熱交換部70は、配管L1,L2,L3,L4を介して油タンク10に戻る作動油と冷却水との間で熱交換を行うことにより、作動油を冷却する。
【0045】
<第2熱交換部80>
コントローラ60は、モータ40を駆動するインバータ回路(図示せず)のデバイス61と、デバイス61に熱結合されたヒートシンク62とを有する。第1熱交換部70からの作動油が流れる配管L2をヒートシンク62に熱接触させている。配管L2とヒートシンク62で第2熱交換部80を構成している。コントローラ60は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)とメモリおよび入出力回路を備える。デバイス61は、例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのパワー半導体である。
【0046】
<第3熱交換部90>
第2熱交換部80からの作動油が、モータ40のハウジング40a(
図13~
図15に示す)に熱接触する配管L3に流入する。配管L3とモータ40のハウジング40aで第3熱交換部90を構成している。
【0047】
<第4熱交換部100>
第4熱交換部100は、配管L45,L46を介して油タンク10に戻る作動油(ドレン油)と冷却水との間で熱交換を行うことにより、作動油(ドレン油)を冷却する。配管L45,L46は、第2戻り配管の一例である。
【0048】
図9は、油圧ユニット1の第1熱交換部70の断面図である。
図9に示すように、第1熱交換部70は、断面が多葉形状の内管70aと、内管70aを収容する中管70bと、内管70aを収容する断面円管状の外管70cとを有する3重管である。中管70bの断面は、外周が複数箇所で湾曲して凹凸を繰り返す形状をしている。
【0049】
なお、第1熱交換部70は、
図9に示す3重管構造に限らず、他の構成の3重管構造の熱交換部を用いてもよい。
【0050】
<継手構造TA>
図10は、油圧ユニット1の継手構造TAの断面図である。この油圧ユニット1では、継手構造TAは第1熱交換部70の両端にあるが、
図10では、配管L1から作動油が流入する側の継手構造TAを示している。
【0051】
継手構造TAは、
図10に示すように、冷却水を第1熱交換部70に供給するための配管L12(冷却液配管)と、内管70aに配管L12が接続された第1接続部TA1と、中管70bの外周面と外管70cの内周面との間の流路に連通する配管L1(第1戻り配管)が接続された第2接続部TA2と、内管70aの外周面と中管70bの内周面との間の流路に連通する配管L45(第2戻り配管)が接続された第3接続部TA3とを有する。
図10において、71は、第2接続部TA2と第3接続部TA3とを有する4方継手である。
【0052】
上記継手構造TAでは、配管L12(冷却液配管)から冷却水が流出し、配管L1(第1戻り配管)から作動油(漏らし油)が流入し、配管L45(第2戻り配管)から作動油(ドレン油)が流入する。
【0053】
一方、配管L2から作動油が流出する側の継手構造TAでは、配管L11(冷却液配管)から冷却水が流入し、配管L2(第1戻り配管)から作動油(漏らし油)が流出し、配管L46(第2戻り配管)から作動油(ドレン油)が流出する。
【0054】
図11は、油圧ユニット1の第4熱交換部100の断面図である。
図11に示すように、第4熱交換部100は、断面が多葉形状の内管100aと内管100aを収容する断面円管状の外管100bとを有する2重管である。なお、断面円環状の内管と内管を収容する断面円環状の外管とを有する2重管構造の第4熱交換部であってもよく、第4熱交換部は、プレート熱交換器などでもよい。
【0055】
図12は、油圧ユニット1を後面側かつ斜め下方から見た斜視図である。
図12において、31は、油圧ポンプ30の吸込口30bに上端が接続されたサクションパイプ31であり、32は、サクションパイプ31の下端に取り付けられたサクションストレーナであり、33は仕切り壁であり、34は作動油の温度を検出する温度センサである。また、L4は第3熱交換部90からの作動油(漏らし油)を油タンク10に導く配管であり、L44は第1熱交換部70からの作動油(ドレン油)を油タンク10に導く配管である。
【0056】
図13は、油圧ユニット1のモータ40の側面図であり、
図14は、配管L3を外した状態のモータ40の上面図であり、
図15は、配管L3を外した状態のモータ40の下面図である。
【0057】
図13に示すように、モータ40のハウジング40aに、蛇行する配管L3が熱接触している。また、
図14に示すように、ハウジング40aの上部には、配管L6の一部が嵌まるU字形状の溝41が設けられている。また、
図15に示すように、ハウジング40aの上部には、配管L6の一部が嵌まるU字形状の溝42が設けられている。配管L3は、ハウジング40aの溝41,42に電熱セメントを用いて固定されている。モータ40のハウジング40aに溝41,42に配管L3を嵌め込むことによって、モータ40のハウジング40aと配管L3との接触面積を増大させて熱交換効率を向上させている。
【0058】
<作動油の流れ>
第1熱交換部70では、油圧ポンプ30からの作動油(漏らし油)が絞り51と配管L1とを介して中管70bの外周面と外管70cの内周面との間の流路に流入し、当該流路からの作動油が配管L2,L3,L4を介して油タンク10に戻る。ドレンポートDR1から配管L43(第2戻り配管)を介して油タンク10に戻る作動油(ドレン油)が、内管70aの外周面と中管70bの内周面との間の流路に流入し、当該流路からの作動油が配管L44を介して油タンク10に戻る。
【0059】
次に、第1熱交換部70で冷却された作動油(漏らし油)は、第2熱交換部80の配管L2に流入して、第2熱交換部80でコントローラ60のヒートシンク62を冷却する。これにより、ヒートシンク62に熱接合されたデバイス61を冷却する。
【0060】
次に、第2熱交換部80からの作動油は、第3熱交換部90の配管L3に流入して、第3熱交換部90でモータ40を冷却する。
【0061】
<冷却水の流れ>
また、外部供給源から供給された冷却水が配管L11を介して第1熱交換部70の内管70a内に流入し、内管70aからの冷却水が配管L12を介して第4熱交換部100の内管100aに流入して、配管L13を介して流出する。そして、第4熱交換部100からの冷却水は、電磁弁V1と排水管L14とを介して外部に排出される。
【0062】
ここで、冷却水は、冷却液の一例であり、この実施形態では工業用水を用いている。なお、冷却液は、冷却水循環装置から供給される冷却水などを用いてもよい。
【0063】
上記構成の油圧ユニット1によれば、第1熱交換部70に3重管を用いて、配管L1,L2,L3,L4(第1戻り配管)を流れる作動油(漏らし油)と配管L43,L44(第2戻り配管)を流れる作動油と冷却水とを分離することによって、配管L1,L2,L3,L4を流れる作動油(漏らし油)と配管L43,L44を流れる作動油(ドレン油)とを合流させて冷却水と熱交換する場合に比べて、作動油(ドレン油)が流入するドレンポートDR1(ドレン入口)の圧損を低減できる。
【0064】
また、第1熱交換部70において、冷却水が内管70a内を流れると共に、配管L43,L44(第2戻り配管)を介して油タンク10に戻る作動油(ドレン油)が、内管70aの外周面と中管70bの内周面との間を流れて、配管L1,L2,L3,L4(第1戻り配管)を介して油タンク10に戻る作動油(漏らし油)が、中管70bの外周面と外管70cの内周面との間を流れるので、3重管の最も外側の流路に配管L1,L2,L3,L4を介して油タンク10に戻る作動油(漏らし油)が常時流れることにより、3重管表面の結露を効果的に抑制できる。
【0065】
また、第1熱交換部70の内管70aに配管L11,L12(冷却液配管)が接続された第1接続部TA1と、中管70bの外周面と外管70cの内周面との間の流路に連通する配管L1,L2(第1戻り配管)が接続された第2接続部TA2と、内管70aの外周面と中管70bの内周面との間の流路に連通する配管L43,L44(第2戻り配管)が接続された第3接続部TA3と有する継手構造TAを用いることによって、第1戻り配管を流れる作動油と第2戻り配管を流れる作動油と冷却水とを3重管内の3つの流路に分離して流すことが容易にできる。
【0066】
また、配管L43,L44(第2戻り配管)が配管L1,L2(第1戻り配管)から独立した配管であるので、配管L1,L2を流れる作動油の影響を受けることなく、配管L43,L44に作動油が流入するドレンポートDR1(ドレン入口)の圧損を低減できる。
【0067】
また、コントローラ60(制御部)によって、配管L1,L2,L3,L4(第1戻り配管)を流れる作動油(漏らし油)の温度Toが所定の第1作動油温度To1以上かつ所定の第2作動油温度To2(>To1)以下になるように、電磁弁V1(流量制御弁)の開閉を制御して、第1熱交換部70の内管70a内を流れる冷却水の流量を調整することによって、作動油を適切な温度に保つことができる。
【0068】
また、第2熱交換部80によって、第1戻り配管の第1熱交換部70よりも下流側(配管L2)を流れる作動油を用いてデバイス61を冷却でき、冷却水による冷却に比べて冷やし過ぎによる結露の発生を抑制できる。
【0069】
また、第3熱交換部90によって、第1戻り配管の第1熱交換部70よりも下流側(配管L3)を流れる作動油を用いてモータ40を冷却でき、冷却水による冷却に比べて冷やし過ぎによる結露の発生を抑制できる。
【0070】
上記第1実施形態の油圧ユニット1では、第4熱交換部100は、ドレンポートDR2から配管L45,L46を介して油タンク10に戻る作動油(ドレン油)と冷却水との間で熱交換を行うことにより、作動油(ドレン油)を冷却したが、第4熱交換部100はなくともよく、ドレンポートDR2からの作動油(ドレン油)を油タンク10に直接戻してもよい。
【0071】
〔第2実施形態〕
図16は、本開示の第2実施形態の油圧ユニット2の回路図である。この第2実施形態の油圧ユニット2は、3重管を用いた第4熱交換部200を除いて第1実施形態の油圧ユニット2と同一の構成をしている。
【0072】
この第2実施形態の油圧ユニット2では、
図16に示すように、冷却水を供給する外部供給源(図示せず)と第1熱交換部70の冷却水入口とを配管L11を介して接続している。第1熱交換部70の冷却水出口と第4熱交換部200の冷却水入口とを配管L12を介して接続している。第4熱交換部200の冷却水出口と外部とが配管L13と電磁弁V1と排水管L14とを介して接続されている。配管L13は、冷却液配管の一例である。電磁弁V1は、流量制御弁の一例である。
【0073】
また、油圧ポンプ30の吐出口30aとアクチュエータとの間の流路からの作動油が、絞り51と配管L1,L5を介して第4熱交換部200に供給される。第4熱交換部200に供給された作動油は、配管L6を介して油タンク10に戻る。配管L5,L6は、第1戻り配管の一例である。
【0074】
第4熱交換部200は、第1熱交換部70と同様の構成をしており、断面が多葉形状の内管と、内管を収容する中管と、内管を収容する外管とを有する3重管である。この第2実施形態の第4熱交換部200は、第1熱交換部の一例である。第4熱交換部200の両端は、第1実施形態の継手構造TAと同じ構造をしている。
【0075】
<作動油の流れ>
第4熱交換部200では、油圧ポンプ30からの作動油が絞り51と配管L5とを介して第4熱交換部200の中管の外周面と外管の内周面との間の流路に流入し、当該流路からの作動油が配管L6を介して油タンク10に戻る。ドレンポートDR2から配管L45(第2戻り配管)を介して油タンク10に戻る作動油(ドレン油)が、第4熱交換部200の内管の外周面と中管の内周面との間の流路に流入し、当該流路からの作動油が配管L44を介して油タンク10に戻る。
【0076】
<冷却水の流れ>
また、外部供給源から供給された冷却水が、第1熱交換部70と配管L12とを介して第4熱交換部200の内管内に流入して、配管L13を介して流出する。そして、第4熱交換部100からの冷却水は、電磁弁V1と排水管L14とを介して外部に排出される。
【0077】
上記第2実施形態の油圧ユニット2は、第1実施形態の油圧ユニット2と同様の効果を有する。
【0078】
上記第1,第2実施形態では、第2熱交換部80から第3熱交換部90の順に作動油が流れるようにしたが、第3熱交換部90から第2熱交換部80の順に作動油が流れるようにしてもよい。
【0079】
上記第1,第2実施形態では、第1熱交換部70で冷却された作動油を、第2,第3熱交換部80,90を介して油タンク10に戻したが、第1熱交換部70で冷却された作動油を、第2,第3熱交換部80,90を介さずに油タンク10に直接戻し、モータ40およびコントローラ60(制御部)のヒートシンク62の両方に送風ファンから冷却用の空気を供給するようにしてもよい。
【0080】
本開示の具体的な実施の形態について説明したが、本開示は上記第1,第2実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0081】
1,2…油圧ユニット
10…油タンク
10a…側壁
10b…貫通穴
11…第1保護カバー
12…第2保護カバー
20…架台
30…油圧ポンプ
30a…吐出口
31…サクションパイプ
32…サクションストレーナ
33…仕切り壁
34…温度センサ
35…注油口兼エアブリーザ
40…モータ
40a…ハウジング
50…リリーフ弁
51…絞り
60…コントローラ(制御部)
70…第1熱交換部(3重管)
70a…内管
70b…中管
70c…外管
71…4方継手
80…第2熱交換部
90…第3熱交換部
98…排油口
99…油面計
DR1,DR2…ドレンポート
L1,L2,L3,L4,L5,L6…配管(第1戻り配管)
L10…ドレンホース
L11,L12,L13…配管(冷却液配管)
L14…排水管
L41,L42,L43,L44,L45,L46…配管(第2戻り配管)
P…ポンプポート
PS1…圧力センサ
T1,T2…タンクポート
V1…電磁弁(流量制御弁)